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放射線の人体影響

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Academic year: 2021

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(1)

放射線の人体影響

(独)放射線医学総合研究所 REMAT 医療室 立﨑英夫 NIRS染色体研修会 201503

(2)

話の内容

 イントロ:単位/バックグラウンド  被ばくの種類(確率的影響、確定的影響)  急性全身被ばく  局所放射線障害  晩発影響

(3)

放射能・放射線と単位

 放射線を放出する能力・性質  放射線を放出する物質(放射性物質) 放射性物質 吸収線量 (Gy) 物理的エネルギー 実効線量(Sv) 人の全身への影響 放射能 放射線  エネルギーを伝える能力を持つ電磁波及び 粒子線 放射線 等価線量(Sv) 組織臓器の生物学的影響 放射能 (Bq) ((Ci)) ベクレル キューリー 表面汚染密度:Bq/cm2 サーベイメーター: (CPM, min-1)

(4)

暮らしの中の放射線

宇宙から 0.38mSv/y 食べ物から 0.24mSv/y 大地等から 1.76mSv/y 一人あたり年間 2.4mSvの 自然放射線の中で 暮らしている

(5)

暮らしの中の放射線

胃のX線集団検 診 0.6mSv 胸部X線CT(コン ピューター断層撮影 検査 6.9mSv 胸のX線集団検診 0.05mSv

(6)
(7)

DNA→細胞→人体

人体 細胞 障害なし 細胞死/ 細胞変性 損傷 (化学変化) 修復酵素 急性影響、胎児影響 がん、遺伝性影響 修復成功 修復失敗 傷が残る 突然変異 DNA (放医研:「図説ハンドブック 放射線の基礎知識」,2012,より改変)

(8)

急性被ばく、慢性被ばく

 急性被ばく(大量の放射 線を短時間に受けた場 合など) • 急性障害  慢性被ばく(少量づつ長 時間に) • 晩発性障害 (新・放射線の人体への影響,2001年より改変) 急性障害は 急性被ばく (高線量率被ばく) でおこる

(9)

全身被ばくと部分被ばく

 同じ線量→全身被ばくの 方が影響大  影響が現れる可能性のあ る部分→全身被ばくではす べての臓器  臓器により放射線感受性 が異なる。特に放射線感 受性の高い臓器が問題。 (新・放射線の人体への影響,2001年より改変) 全 身 被 ば く 部 分 被 ば く

(10)

内部被ばくと外部被ばく

 身体の外から放射線を受ける=外部被ばく(X線、γ線、中性子線)  身体の中にある放射性物質から放射線を受ける=内部被ばく  内部被ばくの体内への侵入経路:呼吸、食物、皮膚を介して体内に取り込 まれる •ヨウ素 甲状腺 •セシウム 60%は筋肉 •鉄 造血組織 (新・放射線の人体への影響,2001年より改 変)

(11)

被ばくの形態 ((独)放射線医学総合研究所:医学教育における被ば く医療関係の教育・学習の ための参考資料(2012.6.6改 訂)より)

(12)

確定的影響および確率的影響

(ICRP 41, 1984, より改変) 発 生 率 重 篤 度 確定的影響 線量 病的状態となるレベル 被ばく者間の感受性 の違い 〔線量反応関係〕 発 生 率 重 篤 度 確率的影響 確率的影響 線量 〔線量影響関係〕 線量 線量 ( a>b>c ) (a) (b) (c) 確定的影響 病的状態となるしき い線量(それ以下で は発症しない線量)

(13)

推定される閾値

(障害)

急性被ばく、1%の発生閾値 効果 臓器/組織 潜伏期 吸収線量 (Gy) 一時的不妊 精巣 3-9 w ~0.1 (約) 永久不妊 精巣 3 w ~6 永久不妊 卵巣 < 1 w ~3 造血能低下 骨髄 3-7 days ~0.5 皮膚紅斑 皮膚(大きな範 囲) 1-4 w <3-6 皮膚熱傷 皮膚(大きな範 囲) 2-3 w 5-10 一時的脱毛 皮膚 2-3 w ~4 白内障(視力低下) 眼 数年 ~1.5 (その後改定)

(14)

骨髄障害 急性障害 晩発性 障害 急性放射線症 皮膚の紅斑 脱毛 不妊など 白内障 がん 白血病 遺伝病 消化管障害 神経障害 確 的 影 響 確 率 的 影 響

放射線の人体への影響

身体的影響 (本人のみ) 遺伝的影響 (子孫に現れる) 出生前被ばく の影響 奇形、精神遅滞など 確定的影響、 他 確率的影響もあり

(15)

全身被ばく(1Gy↑)後、数時間〜数週間後 に起こる臨床症状の総称 →多くの組織や臓器障害をおこす. 特に細胞増殖の盛んな組織(造血器,消化管粘膜, 皮膚,生殖腺の幹細胞など)が影響を受けやすく, これらの臓器の障害による症状が主体.

急性放射線症とは?

(16)

急性放射線症:被ばく線量と症状

臨床症状 なし 血液・骨髄障害 消化管障害 血管神経障害 線 量

(17)

急性放射線症の病期

被ばく 時間 前駆期(〜48h) 潜伏期 発症期 回復期(死亡) 無症状 嘔気・嘔吐 下痢 頭痛 意識障害 発熱 造血障害 (感染・出血) 消化管障害 皮膚障害 神経・血管障害 (0〜3w)

(18)

W orkers 意識障害 嘔吐 下痢 悪心・嘔吐 悪心 A B C 時間 事 故 発 生 10 11 12 13 14 15 16 1 0 : 4 3 1 0 : 4 6 1 1 : 2 7 1 1 : 4 9 1 3 : 4 3 1 4 : 1 6 1 4 : 4 5 1 0 : 3 5 1 2 : 0 7 1 4 : 5 8 1 5 : 2 5 救 急 車 要 請 救 急 車 到 着 ( 玄 関 ) 救 急 車 に 3 名 収 容 救 急 車 出 発 国 立 水 戸 病 院 に 収 容 国 立 水 戸 病 院 出 発 水 戸 ヘ リ ポ ー ト 離 陸 千 葉 ヘ リ ポ ー ト 着 ( 平 河 ) 千 葉 ヘ リ ポ ー ト 出 発 放 医 研 到 着 悪心 前駆症状:東海村事故例(1999年) 18GyEq 9.3GyEq 2.9GyEq

(19)

線量推定

 生物学的線量評価 臨床症状 リンパ球数 染色体分析 電子スピン共鳴(ESR)  物理学的線量評価 線量再構築 作業環境評価 個人線量計の緊急読み取り

(20)

急性放射線症

発症期,骨髄障害,消化管障害, 肺障害について

(21)

血液・骨髄障害

白血球減少

免疫機能の低下 感染症

血小板減少

出血症状 貧血

(22)

経過日数 16 12 8 4 0 0 2 4 6 8 10 300 200 100 0 0 10 20 30 40 50 60 血小板 ヘモグロビン 好中球 リンパ球 血小板 ヘ モ グ ロ ビ ン (g / d l) 好中球 ン パ 球

全身被ばくした時の末梢血の変化例 ( 2 Sv )

(23)
(24)

((独)放射線医学総合研究所:医 学教育における被ばく医療関係の 教育・学習のための参考資料 (2012.6.6改訂)より)

(25)

消化管障害(2) 1.粘膜上皮細胞の再生障害  腸管蠕動障害、吸収障害、食欲不振、悪心・ 嘔吐、下痢、粘膜剥脱が進行すると制御不能 の消化管出血、体液の漏出 2.バリア−機能不全  細菌の粘膜面から血流への移行  敗血症

(26)

肺障害

(27)

肺障害 症状:乾性咳嗽,呼吸困難,発熱。 重症例では低酸素血症、呼吸不全。 診断:非特異的、除外診断。 気管支肺胞洗浄( (BAL)Bronchoalveolar Lavage等による感 染症の診断 (サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus:CMV), ヘルペスウィ ルス(herpes), 細菌、真菌)

急性呼吸窮迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome, ARDS) の除外。

肺感染症の合併もあり。

予後:治療技術の進歩により、4Gy程度での骨髄障害、 6Gy程度での消化管障害による死亡が克服できても、 そのあと問題になる。

(28)

((独)放射線医学総合研究所:医学教育における被ばく医療関係の 教育・学習のための参考資料(2012.6.6改訂)より)

(29)

神経血管症候群(>

20Gy)

 前駆症状:被ばく後数分以内に嘔吐、下痢な どが出現  中枢神経症状:錯乱、見当識障害  血管透過性亢進による浮腫、肺水腫、胸腹 水貯留、低血圧、ショック、高熱  原因:脳の透過性亢進→高度の浮腫,血管 障害,脳炎などの可能性が考えられている.  治療しなければ、1~2日で死亡

(30)

急性放射線症 治療の基本方針 (Gy) 1-2 2-4 4-6 6-8 >8 治療 入院、経過観察 入院,速やかに無菌室へ 速やか(1W以内)にG-CSF かGM-CSF投与開始 GM-CSF/G-CSF +EPO+TPO 広域スペクトル抗生物質(潜伏期が終わる頃〜),抗 真菌剤・抗ウィルス剤(必要に応じ),SDD(Selective Digestive Decontamination)(6Gy↑) 成分輸血:血小板,赤血球(必要に応じて) L-グルタミン,エレメンタリ−ダイエット投 与,完全経静脈栄養,電解質補正 血漿交換(必要に応じ第2または3週〜) DICの予防(必要に応じ第2週〜) 骨髄幹細胞移植(第1週) (IAEA/WHO Safety Report Series No.2 Diagnosis and Treatment of Radiation Injury 1988より改変)

*1-2Gyが予測される場

合,線量が確定するまで は線量がより高いことを 想定し対処する.

(31)

局所放射線障害

放射線皮膚障害:全身被ばくに合併 すれば予後を左右する大きな因子と

(32)

放射線熱傷の経過

被ばく当日~数日 初期紅斑(一過性) 血管作動性アミンや毛細血管拡張による。 2~3週 紅斑・乾性落屑・水疱形成・湿性落屑 。(線量に依存) 数カ月後 湿性落屑や潰瘍→上皮化. 高線量部分→難治性潰瘍や壊死. 一旦上皮化した部分→再び潰瘍形成(真皮層の血流障害) 6ヵ月後 真皮萎縮、毛細血管拡張、色素脱失、色素沈着.

(33)

壊死(1)(>25Gy, >21日)  右大腿部の上 1/3に広がる 大きな壊死病 変. (イリジウム-192による 高線量被ばく.ペ ルー,ヤナンゴ, 1999年.) 深い壊死の切除と皮膚移植などの外科的治療が不可欠に なる.

(34)

晩発影響(晩発性障害)

被ばく後、数ヶ月以上経過した後に現 れる影響で、生殖能力の低下、皮膚 損傷、白内障、白血病やその他の悪 性腫瘍(固形癌)等を主としている。

(35)

慢性期皮膚障害(6ヶ月以降)

慢性放射線皮膚炎

 湿疹様病変  潰瘍形成 瘢痕化,変形,可動域制限. 繊維化や硬化,骨萎縮を併発. 悪性化.(基底細胞癌が多い.治療により 治癒するものが大部分を占める.)

(36)

固形癌過剰相対リスク

Excess Relative Risk for Solid Cancer

(LSS A-bomb Report 14) (from Ozasa k et al.; Radiat Res 177:229-243, 2012)

(37)

(from UNSCEAR report 2006, Annex A, Fig. VII)

原爆被爆者に見られる白血病の

相対リスク

相対リスク

(38)

原爆

LSS

report 14

(39)

放射線によるがん・白血病の増加

(3)

が ん に よ る 死 亡 率 30% 0 mSv 100 mSv 200 mSv 300mSv [受けた放射線の線量] 放射線のみによる死亡率の増加分 0.5% 1% 100mSvより低い線 量では放射線が原 因でがんにより死 亡するかどうかは、 わからない 個々のがんの原因は 特定されていないが食 事、喫煙、ウィルス、細 菌などと考えられてい る 個人の生活習慣などによるがん 1000人が100mSv受 けた場合、生涯で305 人ががんで死亡し、 そのうち5人が放射線 によると推定できる

(40)

40 喫煙 成人期の食事・肥満 座業の生活様式 職業要因 がんの家族歴 ウィルス・他の生物因子 周産期要因・成長 生殖要因 飲酒 社会経済的情況 環境汚染 電離放射線・紫外線 医薬品・医療行為 塩蔵品・他の食品添加物・汚染物 喫煙 成人期の食事・肥満 座業の生活様式 職業要因 がんの家族歴 ウィルス・他の生物因子 周産期要因・成長 生殖要因 飲酒 社会経済的情況 環境汚染 電離放射線・紫外線 がん要因のがん死亡への推定寄与割合(米国人)

Harvard Center for Cancer Prevention, 1996, より改変)

30%

30% 2% 

(41)
(42)

0 10 20 30 40 年 被ばく後の年数 白血病以外の癌 白血病 原爆放射線誘発癌発生の時間的経過 相 対 リ ス ク 1.0

(43)

遺伝的影響

(44)

遺伝的影響

 遺伝的影響のリスク(第2世代まで) = 約 0.2%/Gy (1Gyあたり1000人に2人)  遺伝的影響は過去に過大評価されていた  両親の放射線被ばくが子孫の遺伝病を増加させ るという直接の証拠は人間ではない (注:広島、長崎の原爆被爆者2世の調査でも検 出されていない) ICRP 103, 2007 (74, 79)

(45)

原爆被爆者における遺伝的影響の調

調査内容 対象者数(人) 調査期間 生まれたときの体 の異常 77,000 1948-1954 染色体の異常 16,000 1967-1985 血液蛋白質の異常 23,000 1975-1984 がんと死亡 77,000 1946-現在も継続中 生活習慣病 12,000 2000-2006 (放影研:わかりやすい放射線と健康の科学, 2008)

(46)

数値はすべて1Gy当たりの百分率(%) 何世代にもわたって放射線に被ばくしたときの生殖年齢集 団と全集団に対する、第2世代までのリスク係数 疾患のクラス 生殖年齢集団 全集団 幅 平均a) 平均 b) (a)メンデル性疾患 0.13~0.25 0.19 0.08 (b)慢性疾患 0.03~0.12 0.08 0.03 (c)先天異常 0.24~0.30 0.27 0.11 全クラスの合計 0.54 0.22 a) 表示された範囲の両端の平均値 b) 生殖年齢集団に対する平均値の40% (ICRP 103, 2007; 表A.6.6. より)

(47)

• ICRP Publication 103, 2007

A.6. Risk of Heritable diseases, p. 217-241

– 和訳:ICRP,国際放射線防護委員会の2007年勧 告, 日本アイソトープ協会, 2009

A.6. 遺伝性疾患のリスク; p. 169-193

• BEIR VII Phase 2, Health Risks from Exposure to Level Levels of Ionizing

Radiation, National Research Council, 2006 Chapter 4, Heritable genetic effects of

radiation in human population, p. 91-131

(48)

• UNSCEAR 2001 Report: Hereditary effects of radiation, UN, 2001 – 和訳: UNSCEAR 原子放射線の影響に関する国 連科学委員会2001年報告,放射線の遺伝的影響 ;(独)放射線医学総合研究所監訳,実業広報社, 2003.1

放射線の遺伝性疾患リスク-参考文献

(49)

重要ポイント

 確定的影響と確率的影響の2種類の影響が あり、時期により急性期影響と晩発影響があ る  放射線の種類や被ばくする期間によって影響 は変わる  線量評価は、予後の推定や治療方針決定に 必要  正確な線量推定は時間がかかっても、早期 に大まかな安全側の推定が必要 NIRS染色体研修会

参照

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