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監修の言葉 比企直樹 公益財団法人がん研究会有明病院消化器外科胃外科部長栄養管理部部長 富塚 健 公益財団法人がん研究会有明病院歯科部長 化学 ( 抗がん剤 ) 療法や放射線療法は がん細胞に直接作用してがん細胞を減らしたり 増えないようにする治療法ですが 正常な細胞の中には 抗がん剤や放射線の作用

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口腔ケア

サポートブック

公益財団法人 がん研究会有明病院 消化器外科胃外科部長 栄養管理部部長

比企直樹

歯科部長

富塚 健

監修

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監修の言葉

比企直樹

公益財団法人 がん研究会有明病院 消化器外科胃外科部長 栄養管理部部長  化学(抗がん剤)療法や放射線療法は、がん細胞に直接作用してがん細胞を 減らしたり、増えないようにする治療法ですが、正常な細胞の中には、抗がん剤や 放射線の作用の影響を受けやすいものがあり、吐き気・貧血・脱毛・皮膚障害 など様々な副作用が起こります。口の中では口内炎や口腔内乾燥、味覚障害な どが起きやすくなります。中でも口内炎がひどくなると、痛みにより水や食事が摂 りづらくなり、体力や免疫力が落ちてしまうことも心配されます。こうしたトラブルを できるだけ防ぐためには口の中を清潔に保つことが重要で、医療スタッフは、医師 や歯科医師はじめ様々な職種が協力して、口の中のクリーニングやむし歯、歯周 病の治療、入れ歯の調整などを行っています。さらに"食べる"ことも大切なことか ら、口からの食事がしやすいようサポートすることに努めています。  本冊子では、がん治療時の口の中のトラブルを防ぐためのポイントを紹介し、栄 養を摂ることの重要性などについて解説しています。がん治療中の患者さんが治 療を無事に終えられる一助となれば幸いです。

C O NTENTS

Chapter 1●がん治療時には口腔内の副作用が起こりやすい! 1 Chapter 2●がん治療を受ける前のケアで口腔内トラブルを最小限に 3 Chapter 3●がん治療時の口腔粘膜炎の症状 5 Chapter 4●口腔粘膜炎の症状をやわらげるための口腔ケアのポイント❶【衛生の保持】 7 Chapter 5●口腔粘膜炎の症状をやわらげるための口腔ケアのポイント❷【口腔内の保湿】 9 Chapter 6●口腔粘膜炎の痛みへの対処(疼痛コントロール) 11 Chapter 7●がん治療中の栄養管理 12

富塚 健

公益財団法人 がん研究会有明病院 歯科部長

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Chapter 1●がん治療時には口腔内の副作用が起こりやすい!  1

がん治療時には

口腔内の副作用が起こりやすい!

 普段の生活でも口の中の炎症(口内炎など)の痛みで食事の時などつらい思いをされた方 は多いと思います。がんの薬物療法や放射線療法を行うと、こうした口内炎が生じる確率が高 く、特に抗がん剤治療と放射線治療を同時に受けている場合は口腔内副作用が起こる割合 が高くなることが知られています。

❶がん治療の影響で生じる口内炎は、特に「口腔粘膜炎」と呼ばれます

「口腔粘膜炎」はなぜ起こる? ● 口腔粘膜の細胞に抗がん剤が直接または血流を介して間接的に作用することで、ダメージ を受けた部分に口腔粘膜炎が発症します。 ● 頭頸部がん治療などでは、放射線が粘膜に直接当たることで口腔粘膜炎が発症します。 ● 多くの抗がん剤には白血球減少作用があり、全身の抵抗力が弱まることで、口腔粘膜の細 胞の抵抗力も低下し、口腔粘膜炎の原因となります。 口腔粘膜炎の予防は、全身状態の悪化、QOL(生活の質)の低下を防ぐためにも大切です  口腔粘膜炎はひどくなると食事や会話ができないほどの痛みを伴います。食事ができなけれ ば栄養状態、さらには体力の低下を招き、嚥下障害や肺炎などの合併症を引き起こすこともあり、 患者さんのADL(行動力)やQOL(生活の質)の低下につながります。

(米国国立歯科頭蓋顔面研究所(NIDCR)ホームページ「DENTAL TEAM Oral Complications of Cancer Treatment」) http://www.nidcr.nih.gov/ (2016 年 8月29日) 【がん治療により口腔内副作用(口内炎など)が起こる確率】

抗がん剤治療時 ▼40% 骨髄移植時 ▼80% 頭頸部がんの放射線治療時 ▼ほぼ 100%

(参考:国立がん研究センターがん対策情報センターホームページがん情報サービス「粘膜障害:口内炎」) http://ganjoho.jp/ (2016 年 8月29日)

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2  Chapter 1●がん治療時には口腔内の副作用が起こりやすい!

❷ がん治療にともなう口腔乾燥にも注意してください

 抗がん剤と放射線を併せて行った場合等では、治療後に唾液の出にくい状態が長く続く ことがあります。また、のどの周囲の感覚や運動が鈍り、嚥下がうまくできない状態が起こ る場合があります。これらの症状は「口腔乾燥」と呼ばれます。

「口腔乾燥」はなぜ起こる?

 放射線が口腔周囲に照射されると唾液分泌細胞がダメージを受け、唾液が出にくい状態に なります。口やのどの乾きがひどくなり、唾液もねばねば感が強くなります。  このような状態になると、 ● 口の中の粘膜が歯や義歯にこすれて炎症を起こしやすくなります。 ● 食べ物を口の中でうまくまとめることができず、飲み込みにくくなります。 ● 唾液の抗菌作用が働きにくくなり、虫歯になりやすくなります。 カンジダなどのカビ類が増えることもあります。 ● 味がわかりにくくなります。

頻繁にうがいをしたり、市販の口腔保湿剤で対処を

 口が渇いていると感じたら、ペットボト ル等を利用していつでもうがいできるよ うにしましょう。 市販の口腔保湿剤等を利用して口腔内 を湿らせておくようにしましょう。  場合によっては、医師が塩酸ピロカル ピンという唾液腺を刺激して唾液を出す 薬(公的医療保険適用)を処方する場合 もあります。

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Chapter 2●がん治療を受ける前のケアで口腔内トラブルを最小限に  3

がん治療を受ける前のケアで

口腔内トラブルを最小限に

 がん治療の際は、口腔トラブルをできるだけ防ぎたいもの。そのためには、治療前の歯科で の検査と口腔ケアで口の中をできるだけ良い状態にしておくことが大切です。

❶ がん治療前の歯科での検査・治療は大切

 がんの治療にともなって口の中では様々な弊害が起こりやすくなります。例えば、虫歯や歯周 病などがある場合や、義歯が合わないと口腔粘膜炎の発症を来たしやすく、悪化しやすくなりま す。がん治療を受ける前に歯科を受診し、必要に応じて歯の治療や義歯の調整を済ませておくこ とが大切です。 がんの治療中に口腔内のトラブルが起きないように、 予め口の中の状態を整えておくことをお勧めします。

❷ 歯科で専門的な口腔ケアを受けましょう

 さらに、歯の病気などにより口の中が汚れて細菌の繁殖が多い状態だと、口腔内の細菌が体 の中に侵入しやすくなり、様々な合併症の引き金になる可能性が高くなります(次ページ❹参照)。 口の中を清潔な状態に保ち、口腔内のトラブルや合併症をできるだけ防ぎ、食事がしやすいよう にするために、専門的な口腔ケアやその指導を受けることは重要です。

口腔ケアの主な目的

● 口腔内の細菌繁殖を抑え、肺炎などの二次感染を防止する。 ● 口腔内の汚れをとることで口腔粘膜炎の症状や痛みをやわらげ、できるだけ食事を摂れるようにする。 ● 唾液の分泌を促し、自浄作用を促す。 ● 口腔内に残った食べカスや歯垢を取り除き、う歯や歯周病を予防する。 ● 口腔内の不快感を除去し、食欲亢進を図る。 口腔ケアだけで口腔粘膜の細胞の損傷自体を防ぐことはできませんが、 感染症を予防する上で、非常に重要な役割を担っています。

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4  Chapter 2●がん治療を受ける前のケアで口腔内トラブルを最小限に 口腔機能の管理による在院日数に対する削減効果 (日) 60 50 40 30 20 10 0 Mannwhitney test

p-value<0.05(=0.0019) Mannwhitney testp-value<0.05(=0.038)

非管理群 n=52 消化器外科 心臓血管外科 管理群 n=108 42 (日) 29 (日) (日) 50 40 30 20 10 0 非管理群 n=53 管理群n=110 38.6 (日) 29 (日)

❸ 手術を受ける前の口腔ケアも大切

 治療を受ける前の口腔ケアをおろそかにすると、口腔粘膜炎や口腔乾燥が重症化しやすくな るだけでなく、全身麻酔で手術を受けた患者さんでは、術後の発熱や肺炎などにより入院期間 が長引くことがあります。

専門的な口腔ケアの効果―在院日数の短縮

 歯科医師や歯科衛生士による治療 前の専門的な口腔ケアにより、誤嚥性 肺炎などの術後感染の減少や、それに 伴う平均在院日数の短縮、抗生剤の 投与量の減量など様々な効果が報告 されています。  例えば、消化器外科や心臓血管外 科などの手術では、全身麻酔による気 管挿管の細菌感染や誤嚥性肺炎の 減少により入院する患者さんの在院日 数は30%ほど短縮されたというデー タがあります(右図)。

❹口の中の細菌を減らそう

 口の中には様々な細菌が生息しています。口の中がきたないと細菌が手術時の人工呼吸器 を通して気管や肺に侵入して気管支炎や肺炎を起こしたりします。  また、舌がん等の口腔がんや咽頭がん等の手術後は、手術した部位に細菌が感染し、術後の 回復を遅らせる危険性もあります。 こうした副作用、合併症を防ぐために、 治療前から口の中を清潔に保つ練習をしておくことは非常に大切です。 (図:厚生労働省ホームページ「口腔機能の管理による評価 千葉大学医学部附属病院における介入試験結果」) http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000030114.pdf (2016 年 8月29日)

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Chapter 3●がん治療時の口腔粘膜炎の症状  5 ( 写真提供:公益財団法人 がん研究会有明病院 歯科部長 富塚 健先生) 抗がん剤による口腔粘膜炎 (肺癌:舌縁(舌のへり)) (横紋筋肉腫:下くちびるの粘膜)抗がん剤による口腔粘膜炎 口腔乾燥 (舌の表面が赤く、平らになっている) 同時化学放射線治療に伴う口腔粘膜炎 (中咽頭癌:上あご、ほほ内側、舌の粘膜)

がん治療時の

口腔粘膜炎の症状

❶ がん治療時の口腔粘膜炎の症状

 口腔粘膜炎の症状は、痛み、粘膜の発赤・はれ・潰瘍・出血等です。

口腔粘膜炎の状態

● 軽い…口の中がザラザラしたり、のどに違和感が現れる。   ↓ ● 中度… 口の中がヒリヒリする。口の中の痛みが強くなって飲食物を飲み込むと痛みが出るようになる。   ↓ ● 強い…口の中の痛みが強くなって話せない、食べ物を飲み込めない、食事ができない。

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6  Chapter 3●がん治療時の口腔粘膜炎の症状 POINT POINT POINT

❷口腔粘膜炎の症状はこのような経過をたどります

抗がん剤治療の場合

投与開始3~5日 口腔粘膜がはれぼったい感じ、表面がつるつるした感じ 7日前後 口腔粘膜が赤くなり、一部がはがれ潰瘍に 10~12日 潰瘍、痛みなど症状がピーク! 21~28日 粘膜が再生して治癒 抗がん剤投与のたびに、この経過が繰り返される可能性があります。抗がん剤による口腔粘 膜炎が生じやすい部位は唇の裏側、頬の粘膜、舌の側面などです。

放射線治療の場合(頭頸部がん)

照射開始2週間後 口腔粘膜が熱を持ったような感じ。一部がはがれ潰瘍に 4~ 8週 潰瘍、痛みなど症状のピーク! 照射終了後2週間頃 粘膜が再生しはじめる 抗がん剤治療に比べて口腔粘膜炎の症状が強く、治癒までに比較的長期間を要します。

抗がん剤治療と放射線治療併用の場合(頭頸部がん)

口腔粘膜炎が相乗的に強くなります。粘膜の再生には治療終了後4週間程度を要します。 これらの経過は典型例であり、実際には症状も期間も様々です。

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歯ブラシ 歯みがき剤 ●毛の素材はナイロン ●毛の固さはやわらかめ ●へッドは小さめ ●刺激の少ないものを選びます ●発泡剤を含むものは、口腔粘膜に 刺激を与え炎症を悪化させる場合 があるので使用を避けましょう Chapter 4●口腔粘膜炎の症状をやわらげるための口腔ケアのポイント❶ 【衛生の保持】  7

口腔粘膜炎の症状をやわらげるための

口腔ケアのポイント❶ 【衛生の保持】

 口腔ケアの目的はいくつかありますが(3ページ参照)、ポイントは大きく分けると以下の2つです。

【衛生の保持】 と 【口腔内の保湿】

❶ 歯みがき

 口腔粘膜炎はほとんどの場合、強い痛みを伴い、この状態で歯みがきをするのは非常に辛い ことです。  しかし、潰瘍部分は外部からの刺激や異物の侵入に非常に弱くなっているので、細菌感染等を 防ぐためにも適切な歯みがきは重要です。

歯ブラシと歯みがき剤の選び方

口腔粘膜炎が悪化した場合は、「超軟毛」歯ブラシなどを使って汚れをとりましょう。 ただし、感染リスクがある場合は、歯ぐきを傷つけないように注意してください。

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8  Chapter 4●口腔粘膜炎の症状をやわらげるための口腔ケアのポイント❶ 【衛生の保持】

❷ 義歯の手入れ

義歯の清掃方法

 義歯が合わないと口腔粘膜炎の症状を悪化させる場合があります。がん治療の前に歯科 で調整してもらいましょう。口の中に入っていた義歯の表面には細菌等が繁殖しています。 上手に手入れして、義歯を清潔に保ちましょう。 ❶ 義歯をはずす うまくいきません。装着したままでは義歯の清掃は ❷ 全体の汚れを   落とす 義歯清掃用のブラシで目に見える汚れを落とし、 すすぎます。 ❸ 微細な汚れを   落とす 義歯を市販の入れ歯洗浄剤につけておきます。 洗浄剤の使用法は商品の表示に従ってください。 ❹ 夜間は   はずしておく きれいな水に浸して、清潔なケースに保管して ください。

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Chapter 5●口腔粘膜炎の症状をやわらげるための口腔ケアのポイント❷ 【口腔内の保湿】  9

口腔粘膜炎の症状をやわらげるための

口腔ケアのポイント❷ 【口腔内の保湿】

うがいと保湿剤

 がん治療中および治療後は、口腔内が乾燥しないように留意しましょう。口腔内が乾燥すると、 様々な不都合が生じます(2ページ、5ページ参照)。 ❶ 水分をよく摂る  1日1500mLを目安に水分摂取を心がけましょう(脱水を引き起こすため濃いお茶やコー ヒーは不適当です)。嘔吐や下痢などで脱水が心配な場合は、食塩とブドウ糖を含んだ経口補水 液の利用が有効です。また口腔乾燥を防ぐためには正しいうがいの励行が大切です。 ❷ うがいをよくする(10ページ参照)  可能なら2時間おきくらいが理想です。少なくとも1日3回以上を目安に行いましょう。特に食後 や就寝前のうがいは重要です。  うがいは水だけでも効果的ですし、食塩水を使う方法もあります。口腔リンスも多種類販売さ れています。口腔粘膜炎のあるときや口腔乾燥が気になるときは、アルコール分を含まないもの を選択しましょう。 ❸ 口腔ケア用保湿剤  乾燥がひどいときには保湿剤を利用します。減少した唾液を補い、口腔乾燥を軽減することを 目的に開発されたもので、液体とジェルに大別されます。ジェルは粘性が高く、口腔内に比較的 長くとどまるため、長時間の保湿に向いています。 保湿剤について一言: 口腔の保湿剤にはジェル、スプレーなどがあります。 手軽に利用できるスプレーでも粘性の高いものもあります。 また、医師が唾液の分泌を促す薬剤を 処方する場合もあります。

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10  Chapter 5●口腔粘膜炎の症状をやわらげるための口腔ケアのポイント❷ 【口腔内の保湿】 「刺激の少ないうがい液」の作り方  生理食塩水(0.9%)は人間の体液に近い食塩水です。さらに粘 膜への刺激がもっとも少ない濃度(0.5%)に調節することで、口腔 粘膜炎があるときのうがい液として利用できます。※作ったその日に 使いきりましょう。 ❶容量が1リットルの容器(ペットボトルなど)を用意します。 ❷容器に小さじ1杯(約 5g)の食塩と  ボトルいっぱい(1リットル)の水、  またはぬるま湯を入れます。 ❸ふたをしてよく振り、食塩を溶かせばできあがりです。

うがいの方法

❶うがい液を作る 希釈方法等はそれぞれのうがい液の表示に従ってください。 ❷口のうがい 口にうがい液を含み、頬を動かして口全体に行き渡らせてから吐き出します。 ❸ のどのうがい 口にうがい液を含み、上を向いて15 秒程度ガラガラしてから吐き出します。 のどのうがいは 2 度行います。

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Chapter 6●口腔粘膜炎の痛みへの対処(疼痛コントロール)  11 【少し痛い】 対処法 【やや痛い】 【とても痛い】 う が い + ジェルやスプレー+鎮 痛薬 うが い うが +鎮痛薬 +医療用麻薬

口腔粘膜炎の痛みへの対処

(疼痛コントロール)

 口腔ケアを行っても口腔粘膜炎による痛みがでてしまうことは珍しくありません。その場合 は我慢せずにすぐに担当の医師・看護師・薬剤師に相談しましょう。  痛みが軽ければ、うがいだけでも効果が得られますが、治まらない場合は医師や歯科医師 に薬を処方してもらうほか、ジェルやスプレーによる口の中の粘膜保護などで痛みをやわらげ るようにします。口腔粘膜炎の疼痛緩和の目的で主に使われるのは解熱鎮痛薬です。痛みが 激しい場合は、医療用麻薬が使われることもあります。

痛みに応じた3段階の対処法

  ※うがいの方法は9〜10ページで紹介した口腔内の保湿の場合と同様です。 炎症が起こる前にジェルを使うことで、歯と舌のこすれなどによる痛みを やわらげたり、炎症が起きにくくなることが期待できます。

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Chapter 7

12  Chapter 7●がん治療中の栄養管理 がんによる 体重減少の機序 比企直樹 . 臨床栄養 Vol.120 No.7 2012.6 一部改変 がん治療 代謝異常 炎症 消化管の狭窄・閉塞 悪液質 体重減少 QOL QOLの低下 告知による摂食不良

がん治療中の栄養管理

❶ 食事(栄養)を摂ることはがんの治療中でもとても大切です

 抗がん剤治療や化学療法中の患者さんは、治療に伴い、吐き気や口腔粘膜炎等の理由で食 欲不振に陥りがちです。そのため、十分な栄養が摂れずに、免疫力や体力が低下し、口腔機能の 低下に繋がります。口腔機能の低下は、口腔粘膜炎のさらなる悪化を招いたり、嚥下障害や誤嚥 性肺炎などの合併症の原因となります。

❷ 栄養をしっかり摂ることは、体重減少を防ぐためにも重要です

 がん患者さんは、以下の理由で体重が減少することが少なくありません。 ❶ がんによってのどや消化管が圧迫されて食物が通れなくなる。特に、咽頭がんや喉頭がん、 食道がんなどの場合に多く見られます。 ❷ がんを宣告されたことによる精神的な食欲不振。 ❸ 抗がん剤や放射線治療の副作用による食欲の減退。 ❹ 抗がん剤、放射線治療にともなう炎症やがんによる炎症、代謝異常(がん患者さんは症状 がなくても炎症が生じています)。  こうした理由による体重減少やがんによる炎症を放っておくと、栄養状態がどんどん低下して衰 弱(この病態をがん悪液質と呼んでいます)し、QOLの著しい低下を招きます。

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Chapter 7●がん治療中の栄養管理  13 経腸栄養剤は、きれいに洗ったコップ等に 移し替えて飲みましょう。 経腸 栄養剤  体重を維持するためにもしっかりと食事を摂ることが重要ですが、食欲不振のときは以下のよ うな工夫も有効です。 ● 十分な食事量が摂れない場合は、経腸栄養剤 を飲むことで不足するエネルギーを補うことが できます。また、経腸栄養剤には炎症を抑える 効果を有するオメガ 3系脂肪酸や良質の植物 性たんぱく質(大豆たんぱく質等)を多く含むも のもあり、そうしたがん患者さんに有用な栄養 素を無理なく摂ることもできます。 経腸栄養剤は医師が処方します。ミルク風味、 コーヒー風味、バナナ風味、コーン風味など色々 な栄養剤があるので、医師等と相談して好みの 風味を見つけましょう。 ● 料理の味付けを調整(だしのみの味にする、逆 に味を濃くする等)してもらい、量を半分にして栄 養価の高い飲みやすい飲料を利用しましょう。 ● 食べたいもの*を少量でも食べるようにしましょう。 *酢味の物(お寿司、酢の物)、ソース味の物(焼きそば、お好み焼き)、味がしっかりとした物(カ レー、ラーメン)、薄味の物(茶碗蒸し、奴豆腐)、麺類(うどん、ソーメン)、パン類(サンドイッチ、ピザ) などを好まれる方が多いようです。 栄養はとても大切!! だけど無理して食べる必要はありません。 食べれる時に食べたい物を少しでも食べればOK。 水分はしっかりと摂るように心がけてください。 がん治療を受けられる患者さんのための 口腔ケア サポートブック 発 行 日: 2016 年10 月 第1版発行 編 集 ・ 発 行: 株式会社ジェフコーポレーション 提 供: イーエヌ大 製薬株式会社 (参考:公益財団法人がん研究会有明病院ホームページ「がんに関する情報 がん治療と食事」) http://www.jfcr.or.jp/hospital/ (2016 年 8月29日)

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