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「金融政策理論の最先端」 -2008年国際コンファランスの模様-

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IMES DISCUSSION PAPER SERIES

INSTITUTE FOR MONETARY AND ECONOMIC STUDIES

BANK OF JAPAN

日本銀行金融研究所

〒103-8660 東京都中央区日本橋本石町 2-1-1 日本銀行金融研究所が刊行している論文等はホームページからダウンロードできます。

http://www.imes.boj.or.jp

無断での転載・複製はご遠慮下さい。

「金融政策理論の最先端」

-2008年国際コンファランスの模様-

重見 し げ み 庸典 よ う す け ・高橋 たかはし 亘 わたる ・福田 ふ く だ 一雄 か ず お ・藤原 ふ じ わ ら 一平 いっぺい ・武藤 む と う 一郎 い ち ろ う

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備考: 日本銀行金融研究所ディスカッション・ペーパー・シ リーズは、金融研究所スタッフおよび外部研究者による 研究成果をとりまとめたもので、学界、研究機関等、関 連する方々から幅広くコメントを頂戴することを意図し ている。ただし、ディスカッション・ペーパーの内容や 意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究 所の公式見解を示すものではない。

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IMES Discussion Paper Series 2008-J-15 2008 年 9 月

「金融政策理論の最先端」

-2008年国際コンファランスの模様-

重見 し げ み 庸典 よ う す け *・高橋 たかはし 亘 わたる **・福田 ふ く だ 一雄 か ず お ***・藤原 ふ じ わ ら 一平 いっぺい ****武藤 む と う 一郎 い ち ろ う ***** * 日本銀行金融研究所経済研究担当総括(E-mail: yousuke.shigemi@boj.or.jp) ** 日本銀行金融研究所長(E-mail: wataru.takahashi@boj.or.jp) *** 日本銀行仙台支店長(E-mail: kazuo.fukuda@boj.or.jp) **** 日本銀行金融研究所企画役(E-mail: ippei.fujiwara@boj.or.jp) ***** 日本銀行国際局企画役補佐(E-mail: ichirou.mutou@boj.or.jp)

本稿は”Frontiers in Monetary Theory and Policy: Summary of the 2008 International Conference Organized by the Institute for Monetary and Economic Studies, the Bank of Japan , ” (IMES Discussion Paper Series No. 2008-E-18)の日本語版である。

本コンファランスのオーガナイザーとして、金融研究所の海外顧問であるベネット・ T・マッカラム教授とモーリス・オブストフェルド教授および全ての参加者に、有益 なプレゼンテーション、活発な議論を通じて、コンファランスに貢献してくれたこと に感謝の意を表したい。また、コンファランス運営を献身的に支えてくれた三好純子 と金融研究所のその他のスタッフにも感謝したい。ただし、本稿に示されている意見 は、日本銀行の公式見解を示すものではない。また、ありうべき誤りはすべて筆者た ち個人に属する。

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日本銀行金融研究所は、2008 年 5 月 28、29 日に、日本銀行本店にて、「金融政 策理論の最先端」と題する 2008 年国際コンファランスを開催した1。コンファラ ンスは、最新の金融論および金融政策理論を理解することを目的に開催され、 学界、国際機関、中央銀行より、約 100 名が参加した2。 コンファランスは、白川方明(日本銀行)の開会挨拶で始まり、次に、 金融研究所海外顧問であるベネット・T・マッカラム(カーネギー・メロン大学) による導入挨拶が行われた。その後、6 つのセッションと前川招待講演が続いた。 ジョン・B・テイラー(スタンフォード大学)が第 1 回の前川講演を行ったほか、 マイケル・ウッドフォード(コロンビア大学)、大津敬介(上智大学・前日本銀 行金融研究所)、マーク・ガートラー(ニューヨーク大学)、ジョージ・エバン ス(オレゴン大学)、ローレンス・クリスチアーノ(ノース・ウェスタン大学)、 クリストファー・シムズ(プリンストン大学)が論文を報告し、マイルス・キ ンボール(ミシガン大学)、セラハッティン・イムロホログル(南カリフォルニ ア大学)、マイケル・クラウス(ブンデスバンク)、ジェームス・ブラード(セ ントルイス連邦準備銀行)、アンドリュー・レビン(米国連邦準備制度理事会)、 フランク・スメッツ(欧州中央銀行)が指定討論を行った。コンファランスは、 西村清彦(日本銀行)が座長を務めた「金融政策理論の最先端」と題する、ウ ッドフォード、テイラー、ガートラー、ジョージ・エバンス、クリスチアーノ、 シムズ、モーリス・オブストフェルド(カリフォルニア大学バークレー校)、マ ッカラムによるパネル・ディスカッションの後、金融研究所海外顧問のオブス トフェルドによる閉会挨拶により、締めくくられた。 開会挨拶3において、白川は、まず、伝統的な意味での金融政策と金融シ ステムに関する政策は通常は別の政策として位置付けられるが、クリティカル な局面では、両者は複雑かつ微妙な形で関連しており、これらの政策の境界線 は時としてそれほど明確ではない、と強調した。そのうえで、中央銀行が直面 している課題として、(1)金融政策の目的である物価の安定をどのように定義し、 理解すべきか、 (2)金融システムに関する政策をどのように設計すべきか、(3) 金融システムが安定し、金融市場が十分に機能するためには、どのような政策 (すなわち、中央銀行のバンキング政策)を行うべきか、の 3 つを挙げた。最 後に、中央銀行がしばし遭遇する、既存の理論では説明できない事象を学界に 伝える努力をし、学界での理論の発展が中央銀行の金融政策運営に役立つよう な、学界と中央銀行の結びつきが重要だと主張した。 1 プログラムは参考1。 2 参加者リストは参考2(所属は開催時点のもの)。 3 詳細は、白川(2008)参照。

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導入挨拶4にて、マッカラムは、まず、金融論・金融政策理論における重 要な研究成果として、理論だけでなく現実(すなわち、実際に導入され、一定 の成果を収めているインフレーション・ターゲティング)とも整合的な構造モ デルが開発されてきたことを挙げた。次に、未解決の問題として、引き続きモ デルで説明できない重要な経済現象が存在するとしたうえで、コミュニケーシ ョンやコミットメント、金融政策とプルーデンス、財政、外国為替政策との関 係といった、未解決の問題を提示した。最後に、論文報告者の業績と論文の概 要を紹介して挨拶を締めくくった。 閉会挨拶5において、オブストフェルドは、まず、コンファランスでの報 告と議論の模様を要約した。次に、今回のコンファランスにも関連した重要な テーマとして、グローバル・インバランスを挙げ、これは、シムズによる財政 政策の物価決定理論や、テイラーによる固定為替相場制度の下でのグローバ ル・インフレーションにも関係のある、重要なトピックであるとした。そのう えで、米国の巨大な経常収支赤字は、これを持続可能なレベルにとどめるのに、 米国内需要の抑制と米国外需要の増加が必要となる、という意味で、ドルの減 価を示唆するものである、と報告した6。最後に、グローバル・インバランスを 解消するうえでは、金融協調に明確な役割を見出すことができる、と主張した。 以下では、前川講演、6 つの論文報告とこれに続く議論、そして、パネ ル・ディスカッション「金融政策理論の最先端」の模様を要約する。

前 川 講 演 :

The Way Back to Stability and Growth in the Global

Economy

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(グローバル経済の安定と成長への復帰)

テイラーは、“The Way Back to Stability and Growth in the Global Economy”と題す る第 1 回前川講演を行った。本招待講演は、1979 年より 1984 年にかけて第 24 代日本銀行総裁を務めた前川春雄氏に因んで名付けられたものである。テイラ ーは、まず、1970 年代、80 年代前半の困難な経済情勢の下での前川総裁の功績 を称え、次に、当時と現在では、経済環境は非常に異なってはいるものの、今 日の経済問題に対処するためには、「前川的(包括的)アプローチ」が重要であ る、と強調した。また、現在直面している課題として、(1)高水準であり、かつ 上昇を続けるグローバルなインフレ率、(2)金融市場の不安定性とリスク、(3)高 4 詳細は、McCallum(2008)参照。 5 詳細は、Obstfeld (2008)参照。

6 詳細は、Obstfeld and Rogoff (2007)参照。

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水準かつ上昇を続けるエネルギー、食料、商品価格、(4)大幅かつ持続的な経常 収支不均衡、(5)グローバルな整合性を欠く為替相場政策、(6)保護主義と孤立主 義への傾倒、を挙げた。そのうえで、前川総裁が数十年前に強調したように、 政策担当者にとってのチャレンジは、これらの問題を個別に取り扱うのではな く、各問題間の重要な相互作用を認識したうえで、包括的かつ国際的な政策を 採用することである、と指摘した。最後に、政策当局者は、「グローバル・イン フレーション・ターゲット」といった論点についても議論を始める必要がある かもしれないとしたうえで、もしも、前川総裁が 1980 年代に主張したような提 言より何かを学ぶことができれば、世界経済の安定と成長を再び取り戻すこと ができるだろう、として講演を締めくくった。

Credit Frictions and Optimal Monetary Policy

8 (信用摩擦と最適金融政策) ウッドフォードは、内生的、外生的要因から貸し手と借り手の間の金利スプレ ッドが変動するようなメカニズムをニュー・ケインジアン・モデルに組み込ん だ、カーディア(ニューヨーク連邦準備銀行)との共著論文を発表した。彼ら は、平均的にスプレッドが存在すること自体は、定量的にみて、金融政策効果 に大きな影響はもたらさない、としたうえで、時間を通じたスプレッドの変動 は、政策と総需要、実体経済活動とインフレーションといった均衡関係に重要 な影響をもたらす、と報告した。しかし、彼らは、標準的なニュー・ケインジ アン・モデルで最適であったターゲティング・ルールは、クレジット・スプレ ッドが変動するような経済においても、引き続き、最適金融政策を十分に近似 できている、と主張した。また、同時に、クレジット・スプレッドに応じてテ イラー・ルールの切片が調整されるような「スプレッド調整型テイラー・ルー ル」についても考察し、このルールは確かに通常のテイラー・ルールよりも経 済厚生を改善させるが、スプレッドの変動に対し、短期金利を 100%調整するよ うな政策は望ましくない、とした。そのうえで、仮に、スプレッドに対し望ま しい反応をするようにした「スプレッド調整型テイラー・ルール」を用いても、 そのパフォーマンスはターゲティング・ルールに及ばない、と結論づけた。 指定討論者であるキンボールは、まず、金融ショックの解釈について、 より深い思考に基づく直観的な説明を加えた方がよい、とコメントした。次に、 ニュー・ケインジアン・モデル全般に関する論点として、特に、景気循環の中 で投資やその他の耐久財が果たす重要な役割に焦点を当てた議論を展開した。 彼は、投資や耐久財がモデルに組み込まれると、借り手にとっての異時点間代

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替の弾力性は、貸し手に比べてかなり高いものとなり、その場合、政策金利を スプレッドに 1 対 1 で反応させることは、この論文で示されているよりも望ま しくなるのではないか、と推測した。さらに、現代の標準的モデルは、現実的 な大きさの投資の調整コストを導入しながら、投資や耐久財を組み込んだもの となるべきだと、主張した。最後に、彼は、非常に高い財間の価格弾力性を仮 定することによって、2 次近似された損失関数の物価安定にかかるウェイトが極 めて大きくなっていることについても、疑問を投げかけた。 フロアからは、このモデルで想定されているような形での不完全性がミ クロ・データからも確認されるのか、また、最近の金融市場の混乱にどれだけ 関連しているのか、といった質問があり、ウッドフォードは、このモデルでは、 金融市場の不完全性を所与として考えており、例えば、連邦準備制度が、通常 の金利政策では想定されていないような流動性供給をどのように行うべきか、 といった点について答えるものではない、と返答した。また、モデルが単純化 されていることは認めたうえで、金融市場の不完全性の動向が、金融政策の影 響を受けるのであれば、金融政策と信用政策とを切り離して考えることはでき ない、と付言した。企業倒産をモデルに含めるとインプリケーションが変わる のではないか、という問いに対しては、ウッドフォードは、モデルは既に銀行 資本を生産要素の 1 つとして間接的に組み込んでいるため、結果に大きな変更 はないはずである、と答えた。また、参加者の 1 人は、名目金利の非負制約が 存在する下では、クレジット・スプレッドの存在は金融政策にとって、どのよ うなインプリケーションを持つのかと質問した。これに対し、ウッドフォード は、名目金利の非負制約の下では、政策金利が平均的な金利として算出される 自然利子率よりも低く維持される必要があるため、信用市場の不完全性はより 重要な問題となってこよう、と答えた。

The Global Impact of Chinese Growth

9 (中国の経済成長のグローバル・インパクト) 藤原一平(日本銀行金融研究所)、大津、斉藤雅士(日本銀行)は、中国の改革 開放政策とその後の急成長が、中国とその他諸国に、経済厚生でみて、どのよ うな影響を与えてきたかを分析した。最初に、中国の成長の 3 つの特徴として、 (1) 中国の開放度(貿易量/GDP)が 1978 年の改革開放政策の施行後すぐに、 10%程度から 40%程度にまで急増したこと、(2) 中国の 1 人当たり GDP 成長率 が 1978 年に、2.5%程度から 8%程度にジャンプしたこと、(3) 貿易収支は、概ね、 特に 1978 年以前には、均衡していたこと、を挙げ、それぞれが、どのような影

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響を G7 諸国に与えていたかを考察した。この目的のため、Backus, Kehoe, and Kydland (1994)に基づく標準的な 2 国モデルを中国と G7 諸国についてカリブレ ートし、上記 3 つの特徴を再現できるよう、中国での最終財生産におけるホー ム・バイアス、中国の中間財生産の技術進歩、輸入関税の 3 つのショック(ウ ェッジ)で再現した。そして、それぞれのショックが、G7 諸国にどのような経 済厚生上の影響を与えていたかを、シミュレーションを行うことによって分析 した。結論として、貿易を均衡させるような制約の下では、開放自体が中国に とって経済厚生を改善させるものであったが、その他諸国には、ほとんど影響 を与えなかった、とした。また、中国国内での技術進歩は中国と G7 諸国の経済 厚生を改善させた、としたうえで、仮に、貿易を均衡させるような制約がなけ れば、中国の経済厚生は改善されるが、G7 諸国の厚生は悪化していたであろう、 と報告した。 指定討論者であるイムロホログルは、結果の頑健性の確認と全要素生産 性(TFP)計測の重要性についてコメントした。特に、アーミントン・アグリゲ ーター10における代替の弾力性、ホーム・バイアスについて、様々な値を試すよ うなセンシティビティ分析が重要、と主張した。また、データ制約は認識しつ つも、相互貿易データ等を用いて中国の TFP を計測することの重要性を訴えた。 最後に、例えば、中国の資本財輸入が中国の最終財生産における生産性上昇に つながるような、技術伝播モデルの経済厚生上のインプリケーションを評価す ることを、将来の研究課題の 1 つとして提起した。 イムロホログルのコメントに対し、藤原・大津・斉藤は、まず、中国の TFP 計測の重要性を認めたうえで、代替の弾力性を変えても結果に大きな変化 は生じない、と返答した。フロアからは、開放政策が障壁の撤廃といった形で はなく、選好のシフトとして捉えられていることは、経済厚生を計測するうえ で、重要な影響を与えているのではないか、間接的に計測された関税のデータ は現実のデータとマッチしないのではないか、中国の開放政策の結果、財のバ ラエティが増えたことが、どのような経済厚生上の影響をその他諸国に与えて いたのか、といった質問があった。最初の質問に対しては、ホーム・バイアス のシフトは生産技術の変化であり、中国の開放度の変化を他のショックで表現 することは難しい、と返答した。2 つ目の質問については、このモデルでのショ ックは、ウェッジ(歪み)として捉えられるべきである、とし、最後の質問に 対しては、Melitz (2003)にみられるような財の数が内生的に決定されるようなモ デルは、将来取り組みたいモデル拡張であり、この場合、財が増えることから の効用と、その他諸国にとっての交易条件の改善という、経済厚生のトレード・ 10 国内生産財と海外生産財を投入要素とする最終財生産関数。

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オフを評価できるようになる、と答えた。

An Estimated Monetary DSGE Model with Unemployment and

Staggered Nominal Wage Bargaining

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(失業率と非同時的名目賃金交渉を加えた DSGE モデルの推計)

ガートラーは、バロー(Barro, 1977)批判をクリアすることのできるモデルを提示 した。既存モデルでは、労働投入量は、非同時的な名目賃金交渉のもと、イン テンシブ・マージン12で調整されることになっている。また、この賃金の硬直性 が、労働市場の説明に加え、Blanchard and Galí (2007)で考えられたような産出量 とインフレーションの短期的トレード・オフの説明についても、重要な要素で あるとされている。しかし、このようなモデルでは、再交渉を通じて、人々が 新たな利得を得ることができてしまうという問題点(バロー批判)がある。ガ ートラーは、Christiano, Eichenbaum, and Evans (2005)や Smets and Wouters (2007) をベースとした動学的確率一般均衡(DSGE)モデルに、失業率と非同時的な名目 賃金交渉を加えたモデルを推定した。具体的には、失業率を、ダイアモンド・ モルテンセン・ピサリデス型のサーチ・アンド・マッチング・モデル13の改良版 を考えることによって考慮し、名目賃金の硬直性を、Gertler and Trigari (2006)で 用いられた非同時的なナッシュ交渉を組み込むことにより、表現した。労働は、 エクステンシブ・マージンにおいても調整されるため、バロー批判に耐えるこ とができるほか、現実とも整合的なモデルが構築されたこととなる。最後に、 賃金の硬直性は、モデルの定量的なパフォーマンスを改善し、Smets and Wouters (2007)と同程度のフィットを得ることができる、としたうえで、労働市場を規定 するパラメーターを識別する際の頑健性をチェックする必要がある、とも付言 した。

指定討論者であるクラウスは、カルボ型の名目賃金の硬直性とナッシュ 交渉を組み合わせた最初のリサーチとしたうえで、全体の賃金が企業レベルの 賃金へ与えるスピルオーバー効果や、Smets and Wouters (2007)に代表される標準 的なモデルと同程度のフィットを得ることができるといった、新しい観点も提 示したペーパーと評価した。次に、採用コスト関数の形状がどの程度結果に影

11 詳細は、Gertler, Sala, and Trigari (2008)参照。

12 労働供給量は、人々の労働市場への参入・退出を表すエクステンシブ・マージン(就業

の選択)と、労働時間の変化を表すインテンシブ・マージン(労働時間の選択)という 2 つの労働供給行動により変化しうる。

13 求職活動と採用活動の間に摩擦の存在を仮定することによって、失業率等の動きの説明

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響を与えるのか、Shimer (2004)の結果と異なり、なぜ、モデルは賃金の硬直性な しでも高いパフォーマンスを示すのか、モデルでは考慮されていないインテン シブ・マージンでの調整が短期の説明には重要ではないのか、実質賃金の硬直 性が構造的でないインデクセーションによって組み込まれているのが不自然で はないか、といった点を質問した。 ガートラーは、クラウスのコメントに対し、2 次関数で定義されるコス ト関数が賃金の粘着性に関連している可能性がある、としたうえで、現実的な 労働市場変数の分散を説明するための外生ショック・プロセスについても、賃 金の粘着性があるかないかで異なった推定値が得られた、と返答した。フロア からも、労働時間の調整は重要な問題であり、この点を考慮していないという ことは、バロー批判を克服できていないのではないか、という質問があった。 これに対し、ガートラーは、1 人あたり労働時間には、フリッシュ弾力性とは関 係のない、大きな長期変動が観察されるとしつつも、この点を考慮することの 重要性は認めた。さらに、推定の際に与える先見値(prior)の妥当性、インデ クセーション、カルボ型の硬直性についての質問があり、ガートラーは、先見 値を広めにとっても結果は大きく変化しないこと、インデクセーションを組み 込んだのはこの影響がどの程度大きいかを考察するためであること、カルボ型 の硬直性は計算上の簡便性から導入したこと、をそれぞれ返答した。

Robust Learning Stability with Operational Monetary Policy Rules

14 (オペレーショナルな金融政策ルールの下での頑健な学習の安定性) ジョージ・エバンスは、ニュー・ケインジアン・モデルにおいて、代替的な利 子率ルールの下での合理的期待均衡が、最小 2 乗学習の下での安定性を満たす かどうかを分析した。その際、彼は、幾つかの実証研究の結果に基づき、古い データと比べて最近のデータに重いウェイトを置いた、割引(コンスタント・ ゲイン)最小 2 乗学習15を導入している。この学習のアルゴリズムは、人々が、 経済に構造変化が生じる可能性を念頭に置いていることを意味している。合理 的期待均衡の「頑健な安定性(robust stability)」とは、その均衡が、ある範囲の コンスタント・ゲインの値に対して、割引最小 2 乗学習の下での安定性を満た すこととして定義される。彼は、McCallum (1999)が議論した意味での、オペレ ーショナルな形状を持つ政策ルール、すなわち、集計化された内生変数の当期 の値には依存しない政策ルールに関しては、政策変数を機械的に操作するルー

14 詳細は、Evans and Honkapohja (2007)参照。

15 最小 2 乗学習とは、人々が、毎期最新のデータを織り込み、最小 2 乗法をかけ直すこと

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ル(instrument rule)や、裁量政策ないしコミットメント政策の下での最適な政策反 応関数も含めて、多くのルールが頑健な安定性を満たさないことを示した。彼 はまた、民間主体の期待に適切に反応するような、期待ベースの最適ルール (expectations-based optimal rules)は、頑健な安定性を満たすことを示した。

指定討論者のブラードは、学習の下での安定性は、マクロ経済学におい てまだ十分に分析されていない、と述べた。彼は、特に、学習の下で経済が不 安定になる現象は、それが現実に観察されることが稀である、という理由によ って十分に分析されてこなかった、と述べた。しかし、彼は、論文の中で示さ れている不安定性や、ブレトン・ウッズ体制の崩壊などの幾つかの歴史的事例 は、安定性に関する議論が、政策運営に対して潜在的に重要であることを示唆 している、と主張した。そのうえで、合理的期待の下で最適な金融政策でも、 それが学習の下での安定性を満たさないならば、その政策は学習の下では最適 にはなり得ない、とし、政策担当者が合理的期待の成立をナイーブに想定する ことに対して警告を発した。彼は、最後に、期待を計測することの難しさや、 人々と政策担当者の間に生じうる駆け引きの存在など、人々の期待に反応する ことに纏わる幾つかの論点を提示した。 フロアからは、何人かの参加者が、学習行動を用いた分析は、局所的な 動学におけるよりも大局的な動学においてより重要である、と主張した。ジョ ージ・エバンスはこの点に同意し、そのような分析は、ハイパー・インフレー ションや流動性の罠などに関する彼の別の論文で行っている、と説明した。 また、別の参加者からは、民間主体が構造変化の発生に関心を払っているにも 関わらず、実際の経済には構造変化が生じていないという意味で、この研究の 状況設定はリーズナブルでない、との指摘があった。ジョージ・エバンスは、 論文の状況設定は自然なベンチマークに過ぎない、と主張した。彼は、別の研 究において構造変化が実際に生じる場合の最適なコンスタント・ゲインの値を 分析した、と述べた。何人かの参加者からは、学習の下での安定性は現在の内 生変数に関する予測を計算する際に政策担当者が利用可能な情報に依存する可 能性があることを指摘した。ジョージ・エバンスは、情報の利用可能性に関し ては、より現実的な設定を導入する余地があるだろうが、それを行うには連続 時間の設定を必要とし、それをこの種の分析に導入することは困難である、と 述べた。

Monetary Policy and Stock Market Boom-Bust Cycles

16 (金融政策と株式市場のボラティリティ)

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クリスチアーノは、資産価格の非常に高いボラティリティの原因を金融政策に 帰することができるか、という点について検討した論文を発表した。彼は、資 産価格の上昇が、事後的には実現しないが、事前の生産性改善期待によっても たらさせるような状況を想定している。そして、名目賃金の硬直性が存在する 経済においては、インフレーション・ターゲットを行う中央銀行は、望ましく ない形で資産価格の分散を拡大させてしまう、と報告した。彼は、このような バブルとその崩壊については、金融政策の役割を抜きに理解することは難しい、 と主張した。すなわち、将来の生産性改善期待は、将来の限界費用を低下させ ることから、価格や賃金の粘着性が存在する下では、足許のインフレ率が低下 することとなる。このとき、インフレーション・ターゲティングに従う中央銀 行は、政策金利を引き下げるため、資産価格が上昇する。この結果は、株式市 場のブームに際してインフレ率が上昇するという、これまでの一般的な考え方 とは異なるが、クリスチアーノは、インフレ率はブームの最中には低く、その 終焉が近づくと上昇する傾向があるという経験則を示したうえで、自身のモデ ルはこれらの事実を説明することができる、と主張した。彼はさらに、一般的 なテイラー・ルールと、ラムゼイ政策の観点で最適な政策ルールを比較し、テ イラー・ルールのパフォーマンスは低いとしつつも、賃金インフレ率に反応す るような修正をテイラー・ルールに加えると、パフォーマンスがかなり改善す る、と結論づけた。 指定討論者のレビンは、経済には、マクロ計量的には同値に見えても、 ミクロ経済的には異なるメカニズムが存在する可能性があり、金融政策の厚生 分析を行ううえで、この点を注意することが重要である、と主張した。次に、 発表で述べられていた過去のイベントそれぞれについてコメントし、1928-29 年 の資産価格上昇は、おそらく、将来の生産性上昇期待から発生したのではなく、 金融市場規制に関する様々な不完全性を反映したものである、と反論した。ま た、1960 年代については、実質資産価格のトレンドからの乖離は極めて一時的 なもので、バブルのような傾向を示していない、と述べた。さらに、1970 年代 に発生した資産価格の低下は、石油価格の上昇と長期的なインフレ率がアンカ ーされていなかったことによるのではないか、との疑問を示した。最後に、1990 年代後半の資産価格上昇は、確かに、将来の生産性上昇を反映したものかもし れないが、2000-2001 年の株価の急落について、当時のエコノミスト予測をみる と、1999 年から 2003 年までは長期的な期待成長率は高いままで維持されていた ことから、このメカニズムでは説明することができないのではないか、とコメ ントした。 フロアからも、同様の趣旨の質問があり、クリスチアーノは、モデルで 想定されるようなメカニズムと歴史的経験について深く考察することは重要、

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と返答した。また、将来の期待にショックが発生するような状況下でのラムゼ イ最適政策は、実際の経済でどのようにして実行されるものなのか、といった 質問があった。これに対し、クリスチアーノは、そのような政策をテイラー・ ルールのようなわかりやすい形で実行することは難しいが、その政策の下での 望ましい資源配分が、ターゲティング・ルールの下で実現可能かどうかを検討 することは重要である、と締めくくった。

Stepping on a Rake: The Role of Fiscal Policy in the Inflation of the

1970s

17 (1970 年代の米国のインフレーションにおける財政政策の役割) 1970 年代の米国における高インフレは、単純に金融政策の誤りによってもたら された、と主張されることが多い。これとは異なり、シムズは、財政政策の物 価決定理論(FTPL)に基づき、財政政策こそがこの時期の高インフレ率に大きな 役割を果たしていた、という見解を提示した。まず、財政政策に不確実性が存 在する下では、テイラー・プリンシプルに従った金融政策は効果を失うだけで なく、逆の影響をもたらすことさえある、とした。すなわち、インフレ率の上 昇に対する政策金利の引き上げは、名目政府債務残高の増加を促し、仮に民間 主体がこの債務増加が将来の税収によって一部だけしか賄われないと信じてい る場合には、インフレ率が加速することとなる。シムズは、この経済では、金 融政策が金利を固定することによって、均衡の物価水準が安定的かつユニーク に決定される、と主張した。最後に、2 つのカリブレートされたモデル(伸縮価 格、粘着価格)と推定された構造 VAR モデルを用いて、財政政策、金融政策シ ョックのインパルス応答を示し、このモデルのメカニズムを計量的に検証した。 指定討論者であるスメッツは、まず、粘着価格、消費の慣習効果、長期 債務といったモデルに組み込まれた他の特徴が、インパルス応答にそれぞれど のような影響を与えているのか、といった点を質問した。さらに、ここで紹介 されている金融政策ショックに対する反応は、Sims (1980)の論文で発見された物 価パズルと整合的ではないこと、特に、物価パズルが 1980 年代以前の方が以後 に比べて顕著となっており、1970 年代は、米国の政策は「積極的な財政政策/ 消極的な金融政策(Active Fiscal Policy/ Passive Monetary Policy、以下 AF/PM)」 、 1980 年代には、「消極的な財政政策/積極的な金融政策(Passive Fiscal Policy/ Active Monetary Policy、以下 PF/AM)」であったとする仮説と整合的ではないこ と、を指摘した。また、FTPL が、財政政策ショックを映じた民間消費の反応に 与えるインプリケーションと 1970 年代、1980 年代の VAR から得られる結果が、

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整合的なものとなっているのではないか、と指摘した。最後に、経済厚生上、 AF/PM、PF/AM のいずれが望ましいのか、といった点を質問した。 シムズは、物価パズルが発生するかどうかは、価格の粘着性といったパ ラメーター設定に依存するところがある、としたうえで、構造 VAR を推定する 際には、緊縮的な金融政策ショックが最終的にはインフレーションを低下させ ることを仮定している、と返答した。望ましい政策レジームに関しては、彼は、 しばしば、同一の均衡が、PF/AM と AF/PM の両方で実現されることがあるため、 AF/PM が必ず望ましいとはいえない、と主張した。その一方で、彼は、金融経 済学者は、財政政策がインフレ率のコントロールに果たす役割を完全に無視し てはいけない、と主張した。 フロアからは、1990 年代後半、日本では、政府債務が非常に大きい中、 金融政策が名目金利の非負制約に制約されていたことを考えると、AF/PM の状 況になっていたと考えられるが、なぜ、物価水準は上昇しなかったのか、とい った質問があった。これに対し、シムズは、日本の経験はパズルである、と述 べたうえで、当時、日本国民が、将来の財政政策に関して、どのような予測を 立てていたかを理解することが極めて重要であろう、と返答した。

Panel Discussion on Frontiers in Monetary Theory and Policy

(

パネル・ディスカッション: 金融政策理論の最先端) 西村が座長となったパネル・ディスカッションでは、ウッドフォード、テイラ ー、ガートラー、ジョージ・エバンス、クリスチアーノ、シムズ、オブストフ ェルド、マッカラムの順に、それぞれが自身の研究分野のこれまでの研究成果、 限界、将来の展望について議論した。その後、フロアも含めた一般討論に移っ た。

マイケル・ウッドフォード

ウッドフォードは、金融政策分析にとって最も重要なことは、様々な政策提言 の頑健性をチェックすることである、と主張した。次に、頑健な金融政策を探 求するには、(1)政策のターゲット基準(targeting criteria)を定義すること、(2)ター ゲット基準を満たす政策にコミットすること、(3)現在の経済状況に関する情報 を所与としたうえで、そのターゲット基準を実現するように努めること、が重 要であるとした。そして、そのような政策運営方法は、何かの変数の関数とし て表現される、ある特定のルールを導入することよりも頑健性が高い、と述べ た。また、民間の期待がどのように形成されるかという点は、中央銀行にとっ て明らかでないため、最も頑健なアプローチは、人々の実際の期待を観察し、

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これに応じて、ターゲット基準を満たすようにすることであると述べ、ジョー ジ・エバンスの論文の含意に同意した。彼は、クリスチアーノの分析に関連し て、インフレーション・ターゲットに従った政策が望ましくない均衡をもたら す、という結果に疑問を示した。彼は、問題は政策の目標にあるのではなく、 論文で用いている特定の機械的なフィード・バック・ルールにある可能性があ る、と述べた。彼は、将来の重要な研究分野の 1 つは、中央銀行の情報入手可 能性に関して現実的な仮定を置いたうえで、ターゲットを実現するための方法 について分析することである、と述べた。また、複雑な経済環境の下での最適 金融政策を近似するようなターゲット基準をどのように定義するかということ を、もう 1 つの重要な研究課題として提起した。

ジョン・テイラー

テイラーは、ウッドフォードの議論をフォローし、頑健性は重要な研究課題で、 今後、新しいリサーチが出てくることを期待している、と述べた。彼はまた、 シミュレーション技術の向上やモデルの蓄積により、頑健性に関する分析を行 うことは、過去と比べると容易になってきている、と述べた。次に、研究のフ ロンティアとして、金融市場における金融政策のオペレーションについて言及 した。近年の金融市場の混乱に関しては、例えば、リスクの増大、流動性需要 の急増、といった幾つかの説明があるが、銀行間のカウンター・パーティー・ リスクが、LIBOR と OIS のスプレッドのほぼ全てを説明してしまう、という持 論を展開した。また、連邦準備制度による、例えば、ターム・オークション・ ファシリティといった政策について議論し、初期には何らかの影響があったか もしれないが、最近では、このような市場介入が増加するなか、金利は上昇し てしまっているとし、影響を見出すことは難しい、と述べた。そして、この分 野には、今後も様々な分析が必要とされているとし、これは中央銀行業務の本 質に関わるものであり、米国をはじめとする各国中銀における重要な政策課題 となっている、と主張した。最後に、日本はこのような金融危機を 1990 年代に 経験しているため、日本から多くのことが学べるはずである、として議論を締 めくくった。

マーク・ガートラー

ガートラーは、最適化行動に基づくマクロ・モデルは、非常に大きな進歩を遂 げた、と述べる一方で、それと同時に、ほぼ全ての中央銀行が同じようなモデ ルを用いているため、同じような間違いを犯す可能性があり、そのことが、次 のグローバルな経済収縮を発生させるおそれがあるというシニカルな見方も存

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在する、と述べた。そして、このようなモデルは、過去の問題の解決にはとて も役立った、としたうえで、今後チャレンジすべき課題として、以下の点を列 挙した。まず、ヘッドラインないしコアのどちらのインフレ率を目標とすべき か、という問題があるが、インフレ率のコストがニュー・ケインジアン・モデ ルの枠組みで考えられる限りは、ヘッドラインよりもコアのインフレ率を目標 とすべき、ということとなるが、近年の持続的な石油や商品価格の上昇の下で は、この見方を考え直す必要があるかもしれない、と問題提起した。次に、発 展途上国による為替操作について、理論的には変動相場制度が望ましいにもか かわらず、多くの国が為替相場の安定化を試み、これがグローバル・インフレ ーションの重要な要因となっている可能性があるとしたうえで、発展途上国に ついて、ミクロ的基礎を持つモデルを構築する際には、何らかの制度的制約を 加えることが重要となろう、と主張した。最後に、金融市場の脆弱性に関連し、 既存のモデルは中央銀行が懸念するような流動性危機を捉えきれておらず、こ の点、金融市場の脆弱性に関する問題を理解するためにも、金融機関を明示的 に構造モデルで表現することが重要である、と述べた。特に、非常に多くの資 金が、規制の枠組みの外側にいる機関により仲介されている点を注目すべき論 点として指摘した。

ジョージ・エバンス

ジョージ・エバンスは、学習の先行研究の貢献を要約し、その主要な成果とし て、(1)最小 2 乗学習の下での E-stability の原則に関する理論的基礎、(2)その様々 なモデルに対する応用、の 2 点を挙げた。金融政策への応用に関しては、幾つ かの研究では、学習の下での安定性について分析され、その他の研究では、学 習の下での最適金融政策について分析されている、と述べた。また、学習の下 で生じる重要な現象として、逸脱経路(escape routes)の発生があり、これがハイ パー・インフレーションや流動性の罠のような動学を説明できる、とした。ま た、別の種類の研究では、米国における高インフレやその後のディスインフレ を説明するのに、政策担当者や民間主体による学習を導入している、と述べた。 金融政策の頑健性に関しては、ジョージ・エバンスは、とりわけ政策担当者サ イドの学習という観点が、分析に取り入れられるべきである、と述べた。彼は また、彼の最近の論文において、経済主体が収益率の期待値だけでなく、その 条件付分散に関しても、学習を行う際に、資産価格のバブルが生じうることを 示した、と説明した。将来の研究トピックとしては、経済主体が潜在的には定 式化の誤りを含むモデルを持つ下で、学習過程を通じてモデル選択を行うよう な、動学的なモデル選択について分析することを挙げた。彼はまた、その他の 論点として、学習過程における構造的知識(structural knowledge)の導入や、異質

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な経済主体を導入したモデルにおける学習動学の分析について言及した。

ローレンス・クリスチアーノ

クリスチアーノは、経済研究は観察によって動機づけられているものであるか ら面白い、としたうえで、近年の米国での金融市場の混乱は、金融市場の不完 全性に関する分析を、少なくとも今後 10 年の最重要課題にするであろう、と推 測した。次に、DSGE モデルに関する幾つかのチャレンジとして、まず、非常に 解決が困難な問題として、カバーなし金利裁定パズルを挙げた。このパズルは、 標準的な異時点間のオイラー方程式により規定されるものであり、これがパズ ルであるということは、現在頻繁に用いられているモデルの中核に問題が存在 することを意味することになる、と指摘した。次に、金融市場や労働市場の不 完全性をモデル化することは引き続き残された課題と述べたうえで、情報の不 完全性をモデルに組み込むことが将来大きな注目を集める研究課題となる可能 性がある、とした。そして、情報に関する困惑によって、何故インフレ率は金 融政策に対してはゆっくりとしか反応しないにもかかわらず、技術進歩に対し ては直ちに反応するのか、という点を説明できる可能性がある、と主張した。 同時に、ガートラーの議論をフォローし、どのようなモデルが用いられるべき か、という点については、驚くべき、そしておそらく不健全なほどのコンセン サスが存在している、とし、現在は、経済学において異例な時期であるように 思われる、と述べた。

クリストファー・シムズ

シムズは、中央銀行のバランス・シートに関する議論を提起した。標準的なモ デルでは、統合された政府予算制約式が導入されており、中央銀行はその中に 他の政府と共に含まれてしまうことになるため、中央銀行がどの程度の資本を 有するべきかといった論点を、議論することができない。このようなモデルは、 中央銀行が財政当局から独立していて、正のシニョリッジを得ている場合には、 よく機能する、としながらも、実際には、多くの中央銀行が慢性的な負の純資 産、ないし負のシニョリッジに直面している、と報告した。シムズは、この場 合、中央銀行が政府から完全に独立であれば、中央銀行は財政資源を持たなく なってしまうため、中央銀行の独立性に何らかの制約が加わる可能性がある、 と述べた。さらに、このような中央銀行は正のシニョリッジを政府に移転させ ることができないため、財政当局は、中央銀行に政府債務をファイナンスする ように命じる可能性があるとし、中央銀行による金融政策決定は、非常に大き な影響を受ける結果、例えば、テイラー・ルールにおけるインフレ率への反応

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度に上限が設定されるような状況となってしまうかもしれない、と主張した。 さらに、中央銀行の独立性を維持するために、中央銀行がインフレと経済の安 定という目的を的確に果たしているかを確認するような機関が必要とされてい るかもしれない、とした。そのうえで、これらはすべて金融市場の問題とも関 連しており、すべてを整合的な形で議論できるモデルが必要とされている、と して議論をしめくくった。

モーリス・オブストフェルド

オブストフェルドは、金融政策とプルーデンス政策という 2 つの役割が、国際 金融システムの発展に、どのように影響を与えてきたかを歴史的に整理した。 1971 年の金本位制の崩壊以降、金融市場は、国内、国際的にも自由化が進展し てきた。しかし、1970 年代に深刻なインフレーションが発生し、この結果、多 くの時間が、インフレーション・ターゲットのモデル化に費やされてきた。し かし、これまでの研究は現実を完全にフォローできるまでには至っておらず、 非線形で、かつ不連続に発生する金融危機といった現象を捉えることはできて いない、と述べた。また、国際金融の分野では、不完備市場におけるポートフ ォリオ選択モデル等の発展が確かにみられるが、金融機関によるクロス・ボー ダーでの資産・負債取引に内在する倒産リスクなどを十分に評価できるまでに はなっていない、とした。そして、クロス・ボーダーで資金が循環する現在の 規制緩和された国際金融市場においては、このようなリスクは、単に国内の問 題として捉えられるべきではないとし、中央銀行が、金利政策に加えて、マク ロ・プルーデンス政策を行うべきか、という点について、グローバルな観点か ら分析することが重要である、と主張した。一方で、グローバルな観点での金 融取引に制約を設けることは、国内機関に不利に働くだけでなく、純粋な国内 規制とは異なり、その制約を回避する余地を残してしまうという点で、望まし くないとした。そのうえで、金融市場の問題の波及に、為替相場がどのような 役割を果たしているかを分析することも重要な研究テーマの 1 つである、とし て議論を締めくくった。

ベネット・T・マッカラム

マッカラムは、まず、合理的期待は、現在ではそれが仮定であるということを 明示しなくてもよいほど、経済研究において中心的な役割を果たしている、と した。その一方で、合理的期待に代わるものとして、未だそれらのコンセプト について完全な合意が得られているわけではないが、非決定性、学習可能性と いったものも存在するとし、期待に関する科学的な研究を有益な形で行うこと

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の意義は引き続き大きい、と述べた。次に、現在の日本銀行の金融政策に触れ ながら、金融政策研究の最先端に関するトピックについてコメントした。まず、 物価の安定と経済の安定という中央銀行の使命の間に階層的な構造を想定すべ きなのかという点について議論した。日本銀行法は、金融政策は物価の安定を 通じて、国民経済の健全な成長に貢献すべきと述べており、階層的な構造を仮 定していると解釈できる、とした。次に、コミュニケーション・ポリシーに関 する論点を提起し、金融政策の最終目的はある程度明確であるべきだが、政策 金利の将来のパスは経済状況に大きく左右されるものであり、これが事前に公 表されると、経済状況が変化したことによる政策変更の場合でも、政策の方針 自体が変更されたという印象を人々に与えてしまうため、そのパスを公表すべ きでないだろう、と主張した。さらに、中央銀行は、政策金利、政策の枠組み、 目的関数等について、どれをどこまで明示的に民間とコミュニケートすべきな のか、研究する必要がある、と付言した。彼はまた、コミュニケーションは、 行動を通じて行われるべきものである、と強く主張した。この点に関し、彼は、 ドイツのブンデスバンクでは、アナウンスメントの明確化ではなく、実際に政 策行動をとることによって、インフレの防止が、全ての政策目標の中で優先度 の高いものであると、民間主体に認識させるようになったことを紹介した。

ディスカッション

ディスカッションでは、まず市場流動性についての議論が活発に交わされた。 白川は、市場流動性がどのようにして生み出され、どのようにして維持される かは必ずしも自明でないが、金融政策がその点に関し何らかの影響を与えてい るように窺われると述べ、市場流動性に纏わる問題提起を行った。デビッド・ アルティグ(アトランタ連邦準備銀行)は、市場流動性の定義はパネリストの 間でも異なることを指摘し、ウッドフォードのモデルに代表されるような、オ ーバー・ナイト金利の操作を通じた金融政策を想定したモデルで、流動性を捉 えることができるのか、と質問した。同様に、ジャン・マルク・バーク(オラ ンダ中銀)は、今回のコンファランスで発表されていたような、貨幣残高が考 慮されていない現在の標準モデルでは、実際に経済に何が起きているかを説明 するのに限界があるのではないか、と述べた。さらに、岩田一政(東京大学名 誉 教 授 ) は 、 テ イ ラ ー の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン で と り あ げ ら れ て い た LIBOR-TIBOR スプレッドは、量的緩和と銀行への公的資金の注入の影響を受け ているのではないか、と指摘した。また、ブラードは、ガートラーに同意し、 多額の資金が規制対象外の機関によって仲介されているが、このような状況に 対しては、どのような政策対応が望ましいのか、という問題を提起した。 テイラーは、白川の提起した問題に同意し、流動性と呼ばれているもの

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を計測する必要があるとした。また、流動性という概念自体は、CD レートと LIBOR のグラフが示すように重要な論点ではないのかもしれないが、例えば、 無裁定モデルで計測することができるかもしれない、と付言した。この点に関 し、シムズは、カウンター・パーティー・リスクと流動性とを区別するのは容 易ではない、とし、資産価値の情報に不完全性が存在するならば、どの主体が ある資産のカウンター・パーティーとなっているかを知りえない可能性がある ため、流動性に関する問題は、カウンター・パーティー・リスクになりうる、 と述べた。この点および最近の金融市場の混乱に関連し、西村は、テイル・イ ベントでの測度について信頼できる計測手法が存在しないことは、適切な政策 を考案する際に大きな障害となっている、と指摘した。アルティグ、バークの 質問に対し、ガートラーは、彼とクリスチアーノのモデルでは、流動性は(十 分な資本のない企業の)バランス・シートについて考えられており、これが景 気変動をもたらす、と返答した。ウッドフォードは、最近の金融情勢で重要と されたことと、例えば、貨幣残高のモニタリングを行っている欧州中央銀行の ような機関における伝統的な考え方とはあまり関連がない、とした。そのうえ で、ブラードの質問に対しても、バランス・シート問題が商業銀行以外の金融 機関に関係したものであるならば、伝統的な貨幣残高は以前ほどには重要では ない、と付け加えた。さらに、ガートラーは、仮に、規制対象外の金融機関が あったとしても、彼らは、最終的には、直接的ないし間接的に、連邦準備制度 の短期資金の支援を求めることになるが、これらの金融機関と銀行との間には 幾つかの重要な違いがあるため、このこと自体は、これらの金融機関に資本規 制を課すべきことを意味しない、と述べた。テイラーは、実際に、規制の対象 外にあるグループの方が、高いパフォーマンスを示しているとし、規制対象を 拡げるかについては、慎重に判断されなければならない、と主張した。さらに、 テイラーは、岩田による問題提起にも同意したうえで、常に公的資金が必要と いうわけではない、と返答した。多くの金融機関が資本を提供するなか、今日 の金融システムは非常に柔軟で適応能力が高く、実際の市場では多くの資本が 存在しており、通常考えられているほど、クレジット・クランチは収縮的では ないと考えられる、と主張した。 チャールズ・エバンス(シカゴ連邦準備銀行)は、中央銀行コミュニケ ーションに関する議論を提示し、中央銀行員としてどのようにコミュニケート すればよいのか、そして、リスク・マネージメント、頑健性のある政策が重視 される下では、政策は、本来あるべき姿とは異なり、裁量的なものとなってし まう可能性があるのではないか、といった問題意識を提起した。 ジョージ・エバンスは、金利の将来パスを示すべきかについて、明確な 答えは持っていないが、金融政策がどのような前提条件に依拠しているかをア

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ナウンスすることはできる、と述べた。彼は、例えば、金利は当面低く維持さ れるが、経済が後退局面より脱したことが明確な場合には引き上げる、といっ たことを伝えることによって、中央銀行は、条件付きの見通しを説明すること が可能となる、と主張した。レビンは、長期的なインフレ率の目標値を明示的 に導入することについて、金融政策理論と実際の(少なくとも幾つかの先進国 の)金融政策との間には、かなりのギャップが存在するとし、理論は明示的な インフレ目標を持つことについて説得力のある論理的根拠を示すことできるが、 政策担当者の中には、明確なインフレ目標が実体経済の安定を目指す金融政策 に、何らかの制約を与えてしまうと危惧する向きもみられる、と発言した。さ らに、須田美矢子(日本銀行)は、金融政策決定における投票行動を分析する ことは、最先端のリサーチ分野として重要であると述べた。シェリル・ケネデ ィ(カナダ中銀)は、この議論をフォローし、例えば、6 人ないし 12 人の政策 決定者がいる場合、全員が納得するような金利パスを設定することは容易では ない、と述べた。また、このことは、実務家にとってフロンティアの研究分野 であるといえ、このような環境の下における有効なコミュニケートの仕方を分 析する必要がある、と提言した。 高橋亘(日本銀行金融研究所)は、このコンファランスで議論されたよ うに、グローバル化が進展する下では、どのような国際協調が望ましいのか、 また、今日の金融市場の混乱に対し、政策協調することによって、どのような ゲインを得ることができるのか、と質問した。これに対し、テイラーは、合理 的期待、非同時的契約、自由な資本移動の下では、それぞれの国が最適なルー ルに従う限り、協調からのゲインは小さい、とした。そのうえで、実際には、 全ての国が、例えば、インフレーション・ターゲティングといった同じような 最適政策をとっていないことが問題となっている、と指摘した。さらに、固定 為替相場制度を選択する国もあるような状況では、これまでの政策協調に関す る分析から得られたものとは異なった形での協調からのゲインが存在する可能 性がある、との見解を示した。 このほかにも、パネリストのプレゼンテーションに対するコメントがあ った。キンボールは、コア、ノンコアのインフレ率に関する議論について、コ ア・インフレはより粘着的であると考えられるため、これを注視する必要があ るが、実際に、どの価格が粘着的であるかを明確に示せるように分析していく ことが重要である、と主張した。チャールズ・エバンスは、モデルについてコ ンセンサスができすぎているという点について、これは、何らかの代替モデル を開発すべきということを意味しているのか、と質問した。トニー・ブラウン (東京大学)はこの議論をフォローし、コンセンサスは得られているかもしれ ないが、これらモデルは、近年、米国が直面しているような信用に関連する問

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題に対してはあまり有益ではない、としたうえで、過去に、銀行問題は何度も あったにもかかわらず、未だにこのことに焦点を当てることが金融論の課題と なっている、と発言した。

参考文献

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参考1: プログラム

Wednesday, May 28, 2008

Morning Opening Remarks

Chairperson: Speaker:

Kiyohiko G. Nishimura, Bank of Japan Masaaki Shirakawa, Bank of Japan

Introductory Remarks Chairperson:

Speaker:

Charles Evans, Federal Reserve Bank of Chicago Bennett T. McCallum, Carnegie Mellon University

Session 1 : “Credit Frictions and Optimal Monetary Policy”

Chairperson: Presenter: Discussant:

Charles Evans, Federal Reserve Bank of Chicago Michael Woodford, Columbia University

Miles Kimball, University of Michigan

Mayekawa Lecture Chairperson:

Presenter:

Wataru Takahashi, Bank of Japan John B. Taylor, Stanford University Afternoon Session 2: “Global Impact of Chinese Growth”

Chairperson: Presenter:

Discussant:

Sheryl Kennedy, Bank of Canada

Ippei Fujiwara, Keisuke Otsu and Masashi Saito,

Bank of Japan

Selahattin Imrohoroglu, University of Sourthern

California

Session 3: “An Estimated Monetary DSGE Model with

Unemployment and Staggered Wage Contracting”

Chairperson: Presenter: Discussant:

Sheryl Kennedy, Bank of Canada Mark Gertler, New York University Michael Krause, Deutsche Bundesbank

(25)

Session 4: “Robust Learning Stability with

Operational Monetary Policy Rules”

Chairperson: Presenter: Discussant:

Enrique Marshall, Central Bank of Chile George Evans, University of Oregon

James Bullard, Federal Reserve Bank of St. Louis

Session 5: “Monetary Policy and Stock Market

Boom-Bust Cycles”

Chairperson: Presenter: Discussant:

Enrique Marshall, Central Bank of Chile Lawrence Christiano, Northwestern University Andrew Levin, Board of Governors of the Federal

Reserve System

Thursday, May 29, 2008

Morning Session 6: “Stepping on a Rake: The Role of Fiscal Policy in the Inflation of the 1970's”

Chairperson: Presenter: Discussant:

Jan Marc Berk, De Nederlandsche Bank Christopher Sims, Princeton University Frank Smets, European Central Bank Concluding Panel: “Discussion on Frontiers in

Monetary Theory and Policy”

Moderator: Panelists:

Kiyohiko G. Nishimura, Bank of Japan Michael Woodford, Columbia University John B. Taylor, Stanford University Mark Gertler, New York University George Evans, University of Oregon

Lawrence Christiano, Northwestern University Christopher Sims, Princeton University

Bennett T. McCallum, Carnegie Mellon University Maurice Obstfeld, University of California at Berkeley

Concluding Remarks Chairperson:

Speaker:

Kiyohiko G. Nishimura, Bank of Japan

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参考2: 参加者リスト

Yoga Affandi Bank Indonesia

David Altig Federal Reserve Bank of Atlanta Yoichi Arai University of Tokyo

Akira Ariyoshi International Monetary Fund Jan Marc Berk De Nederlandsche Bank Alex Bowen Bank of England Anton Braun University of Tokyo

James Bullard Federal Reserve Bank of St. Louis Mathieu Chantalat French Embassy

Lawrence Christiano Northwestern University Alberto Cogliati Bank of Italy

Francisco Dakila, Jr. Bangko Sentral ng Pilipinas

Richard Dennis Federal Reserve Bank of San Francisco Julen Esteban-Pretel University of Tokyo

Charles Evans Federal Reserve Bank of Chicago George Evans University of Oregon

Ippei Fujiwara Bank of Japan Kazuo Fukuda Bank of Japan Shin-ichi Fukuda University of Tokyo

Esther L. George Federal Reserve Bank of Kansas City Mark Gertler New York University

Masazumi Hattori Bank of Japan

Dong He Hong Kong Monetary Authority Charles Horioka Osaka University

Kiyoto Ido Bank of Japan

Ayse Imrohoroglu University of Sourthern California Selahattin Imrohoroglu University of Sourthern California Mohd Fraziali Ismail Bank Negara Malaysia

Kazumasa Iwata Professor Emeritus, University of Tokyo Shigeru Iwata University of Kansas

Jarkko Jaaskela Reserve Bank of Australia Toshiki Jinushi Kobe University

Keimei Kaizuka Professor Emeritus, University of Tokyo Takashi Kano University of Tokyo

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Miles Kimball University of Michigan Yukinobu Kitamura Hitotsubashi University

Yutaka Kosai Japan Center for Economic Research Michael Krause Deutsche Bundesbank

Jong Kyu Lee The Bank of Korea Samuel Lelarge Banque de France

Andrew Levin Board of Governors of the Federal Reserve System Roong Mallikamas Bank of Thailand

Enrique Marshall Central Bank of Chile Yoichi Matsubayashi Kobe University

Bennett T. McCallum Carnegie Mellon University Ichiro Muto Bank of Japan

Tomoyuki Nakajima Kyoto University Jean-Marc Natal Swiss National Bank Kiyohiko G. Nishimura Bank of Japan

Maurice Obstfeld University of California at Berkeley Mitsuaki Okabe Meiji Gakuin University

Tatsuyoshi Okimoto Yokohama National University Tsunao Okumura Yokohama National University Kjetil Olsen Norges Bank

Keisuke Otsu Sophia University

Simon Potter Federal Reserve Bank of New York Tuomas Saarenheimo Bank of Finland

Masashi Saito Bank of Japan

Jean-Luc Schneider Organisation for Economic Co-operation and Development Yousuke Shigemi Bank of Japan

Mototsugu Shintani Vanderbilt University Etsuro Shioji Hitotsubashi University Masaaki Shirakawa Bank of Japan

Christopher Sims Princeton University Frank Smets European Central Bank Miyako Suda Bank of Japan

Hiroo Taguchi Hosei University Wataru Takahashi Bank of Japan

Kenshi Taketa Aoyama Gakuin University John B. Taylor Stanford University

Takayuki Tsuruga Kansai University

参照

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