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低速度レジスタンス運動時の筋内活動分布の解析

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(1)理学療法学 第 30 46 巻第 1 号 30 ∼ 37 頁(2019 年) 理学療法学 第 46 巻第 1 号. 研究論文(原著). 低速度レジスタンス運動時の筋内活動分布の解析* ─高密度表面筋電図を用いて─. 中 谷 友 哉 1)# 福田真知子 2) 北 川 裕 樹 3) 宮 本 俊 朗 4). 要旨 【目的】低速度レジスタンストレーニング(以下,LRT)時における筋活動動態を明らかにすること。 【方法】健常成人男性 13 名を対象に,LRT,高強度運動(以下,HI),低強度運動の 3 条件で膝関節伸展 運動を 3 セット実施した。運動中の外側広筋の筋活動を高密度表面筋電図で測定し,各条件で,電極内の %MVC(Maximum Voluntary Contraction) ,電極内の異質性を表す修正エントロピー,積分筋電図(以下, iEMG)で比較した。 【結果】LRT の %MVC は高強度運動と比較して, 1 セット目では有意に低値を示した が,3 セット目には同等の筋活動が認められた。LRT と高強度運動では修正エントロピーに有意差を認 めなかった。iEMG では 3 条件間に有意差を認めなかった。【結論】LRT は HI, LI と同様の iEMG を示し, セット数を重ねる毎に HI と同等の %MVC,運動単位の動員様式となり,HI と同等の活動になることが 示唆された。 キーワード サルコペニア,高密度表面筋電図,スロートレーニング. るとされている. はじめに. 12)13). 。また,60 歳以上の高齢者に対し. て継続的に高負荷トレーニングを行った結果,最大筋力 5).  超高齢社会に突入した我が国では,加齢によって生じ. が増大したという報告もある. る筋量減少と筋機能の低下をきたすサルコペニアが高齢. 比較して筋力に大きく寄与するため. 1‒5). 。速筋線維は遅筋線維と 7). ,筋力を増強する. 。サ. ためには速筋線維の動員が必要不可欠である。速筋線維. ルコペニアでは骨格筋の速筋線維が優位に減少するた. を増強させるためには,サイズの原理にしたがって,高. め,速筋線維の減少の予防が重要であるものと考えられ. 負荷で実施する必要があるが,身体機能の低下した高齢. 者に多く認められることが明らかとなっている. ている. 3)6‒8). 。. 者では,運動による血圧の上昇作用が心血管系リスクを.  一般的に,高齢者であっても筋力増強を行うために. 高めることなどから困難な場合が多い。. は,高負荷でのレジスタンス運動がもっとも推奨されて.  そのため,近年,低強度かつ低速度で実施するレジス. 9‒11). ,one repitition maximum( 以 下,1RM) の. タンス運動が,一般的なレジスタンス運動の代替的手段. 65 ∼ 80% 負荷でのレジスタンス運動を週 2,3 回,10. として注目されている。低強度低速度レジスタンスト. 回× 1 ∼ 3 セットの頻度で行うと筋力増強効果が得られ. レーニング(Low-velocity Resistance Training:以下,. おり. *. Analysis of Spatial EMG Potential Distribution during Lowvelocity Resistance Training: Using the High-density Surface EMG 1)奈良県立医科大学附属病院 (〒 634‒8522 奈良県橿原市四条町 840) Yuya Nakatani, PT: Nara Medical University Hospital 2)日本海員掖済会神戸掖済会病院 Machiko Fukuda, PT: Kobe Ekisaikai Hospital 3)行岡医学研究会行岡病院 Hiroki Kitagawa, PT: Yukioka Hospital 4)兵庫医療大学リハビリテーション学部理学療法学科 Toshiaki Miyamoto, PT, PhD: Hyogo University of Health Sciences # E-mail: [email protected] (受付日 2018 年 2 月 8 日/受理日 2018 年 10 月 29 日) [J-STAGE での早期公開日 2019 年 1 月 30 日]. LRT)は,最大筋力の 30 ∼ 40% の筋力発揮下で,筋内 圧の上昇に伴う筋血流の制限が起こることを利用し,筋 出力を持続しながら動作を行うことで早期のうちに筋を 疲労させ,筋肥大を生じる筋内環境を達成しようとする ものである. 14). 。LRT を行うと,発揮張力あたりの筋活. 動の増加,アドレナリン,成長ホルモン(以下,GH), 乳酸などの血中濃度の増加が高負荷レジスタンス運動を 実施した場合に比べて有意に高値を示し,LRT 時の疲 労度が一般的な高強度のレジスタンス運動と同等であっ たとしている. 15) 16). 。また,Westcott 17)や絹川ら 18)は,.

(2) 低速度レジスタンス運動時の筋内活動分布の解析. 31. 図 1 測定手順 膝伸展最大筋力を含むデータ測定を行った後,低強度低速度レジスタンス運動(LRT;Lowvelocity Resistance Training) ,高強度レジスタンス運動(HI;High-Intensity) ,低強度レジス タンス運動(LI;Low-Intensity)をランダムに実施した.. 8 ∼ 10 週の LRT は,高負荷強度を用いた一般的なトレー ニング実施時と同等の筋力および筋横断面積の上昇を認. 対象および方法. めたと報告している。このように,低強度での運動を余. 1.対象者. 儀なくされる低体力者の場合でも,LRT により,高負.  対象者は神経筋,循環系,膝関節疾患の既往がない成. 荷で運動を行った場合と同等の効果が得られることが示. 人健常男子大学生 13 名(21.5 ± 0.9 歳,172.1 ± 5.8 cm,. 唆されているが. 14). ,LRT が一般的なレジスタンス運動. 61.7 ± 7.9 kg)とした。対象者には研究参加に先立ち,. と同等の筋力増強効果を及ぼす生理学的メカニズムにつ. 研究内容,注意点について十分な説明を行い,書面によ. いては完全には明らかとなっていない。. る同意を得たうえで実施した。.  そこで,本研究では,運動時の筋活動や運動単位の動 員様式を空間的・時間的に捉えることができる高密度表. 2.研究デザイン. 面筋電図を用いて,一般的な高強度のレジスタンス運動.  まずはじめに,レジスタンス運動時の運動負荷を設定. と LRT 時の筋活動の空間的分布や運動単位の動員様式. するため,すべての対象者は通常速度(45 °/sec)と低. の違いを明らかにし,LRT の筋力増強効果の神経生理. 速度(22.5 °/sec)の 2 条件下において膝伸展最大筋力. 学的メカニズムを検討することを目的とした。一般的. を測定した。その後,筋力測定実施 3 日以降において,. に,疲労が生じると,最大筋力では発揮筋力と筋活動量. LRT,高強度レジスタンス運動(High-intensity:以下,. が低下するが,最大下筋力では発揮筋力が一定もしくは. HI),低強度レジスタンス運動(Low-intensity:以下,. 低下しても,運動単位の動員の増加やインパルスの同期. LI)の 3 条件のレジスタンス運動をランダムに別々の日. 化による代償的な反応によって,筋電図上の振幅が増大. に実施した(図 1)。レジスタンス運動施行日は少なく. するとされている. 19‒21). 。さらに,同一筋内においては,. 異なったタイプの筋線維や運動単位が集合しているとさ 22)23). とも 1 日あけ,各測定実施前には 20 分程の安静とセル フストレッチを行わせ,測定直前にも 5 分間の安静時間. ,高密度表面筋電図を使用した筋活動の. を設けた。また,被験者には,測定前日の激しい運動を. 空間的解析は,運動単位の動態の推測が可能であるとさ. 禁止した。筋力測定および各レジスタンス運動時におい. れており れている. 24)25). 。以上のことから,低強度であっても,. て,外側広筋の筋活動を高密度表面筋電図を用いて測定. LRT が一般的なレジスタンス運動と同等の筋力増強効. した。なお,本研究は兵庫医療大学倫理審査委員会の承. 果が得られるのであれば,LRT の疲労によって,筋電. 認を得たうえで実施した(第 15017 号) 。. 振幅や運動単位の動員様式が,高負荷レジスタンス運動 実施時と同様の変化を生じるものと考えられる。. 3.最大膝伸展筋力測定  対象者のレジスタンス運動時の負荷量を設定するため に,多用途筋機能評価運動装置(酒井医療株式会社製, BIODEX4 pro)を用いて,膝伸展最大筋力を測定した。.

(3) 32. 理学療法学 第 46 巻第 1 号. 対象者の測定開始肢位は股関節・膝関節屈曲 90°とし, シートの背もたれに背中が触れた状態で,測定側の膝関 節軸とダイナモメーターの回転軸を合わせたうえで,体 幹,大. ,下. をベルクロストラップで固定した。測定. 側は利き足(ボールを蹴る側の足)とし,膝関節 0 ° ∼ 90 ° 間において,2 種類の等速性運動(45 °/sec,22.5 °/ sec)における最大膝伸展トルクを測定した。筋力測定 課題は各 3 回行い,測定課題間は十分な休息を設けた。 なお,それぞれの角速度における膝伸展最大トルク値は 3 回の平均値とした。また,最大膝伸展筋力測定時には 高密度表面筋電図(OT Bioelettronica 社製,EMG-USB2) を使用して外側広筋の筋活動を測定した。 4.レジスタンス運動  3 条件のレジスタンス運動は多用途筋機能評価運動装 置を用いて実施した。それぞれの運動課題は等張性運動. 図 2 高密度表面筋電図 電極の直径:4 mm,電極間距離:4 mm,チャンネル数:64 チャンネル. とし,各対象者の最大膝伸展筋力の値を基に負荷量を設 定した。各施行条件は① LRT ―角速度:22.5 °/sec,負 荷:最大トルクの 40%,回数:7 回× 3 セット,② HI. 出し,1 セット目の 1 回目,2 セット目の 4 回目(LI は. ―角速度:45 °/sec,負荷:最大トルクの 80%,回数:7. 7 回目) ,3 セット目の 7 回目(LI は 14 回目)の運動時. 回× 3 セット,③ LI ―角速度:45 °/sec,負荷:最大ト. の RMS をチャンネル毎に算出した。チャンネル毎に算. ルクの 40%,回数:14 回× 3 セットとし,条件間で仕. 出した RMS は,64 チャンネルで平均化し,膝伸展最大. 事量が同程度となるようにした。また,施行中はメトロ. 随意収縮時(以下,%MVC)の RMS の平均値で正規化. ノームを用いて角速度を規定するとともに,多用途筋機. して %MVC とした。また,LRT,HI,LI の 3 条件での. 能評価装置から出力された角速度のシグナルを基に角速. 実際の総筋活動を比較するため,各条件それぞれで得ら. 度の実測値を算出した。運動区間は膝関節屈曲 0 ° ∼. れた筋電図を整流平滑化し,その後,総放電量として積. 90 ° とし,各測定のセット間の休憩は 2 分間とした。各. 分筋電図(Integrated EMG:以下,iEMG)を算出した。. レジスタンス運動施行中においても,高密度表面筋電図.  さらに,筋内の空間的活動を評価するため,修正エン. にて外側広筋の筋活動を測定した。. トロピーを我々の先行研究と同様に以下の式で算出し た. 27). 。. 5.筋電図測定  筋電図測定には,我々の先行研究で用いた高密度表面 筋電図を使用し. 24)26).  修正エントロピー = ‒∑64 p2(i) log2 p2(i) i=1. ,測定は単極導出で行った。電極. は直径 4 mm,電極間距離 4 mm の 13 行× 5 列のもの.  p(i) はチャンネル i での %MVC を示し,修正エント. を用い,チャンネル数は 64 チャンネルとした(図 2) 。. ロピーの減少は空間内の筋活動の異質性が増加すること.  電極を貼付する前に,貼付部位をアルコールで清拭. を意味する. し,電極と皮膚を接触させる際にコンダクティブジェル. 論においての「乱雑さ」を表す尺度であり,本研究では,. を各々の電極に塗布した。その後,膝関節 90 ° で膝蓋骨. 筋電図の空間的な筋活動の大きさのばらつきを示す尺度. 上縁と上前腸骨棘を結んだ線の遠位 1/3 に電極の中央を. として使用する. 合わせ,外側広筋の筋腹に貼付した。なお,アースは利. ことであり,今回の研究において異質性が増加すること. き足の外果とした。各電極からのシグナルは増幅器で. は,測定した空間内における筋活動の大きさのばらつき. 1,000 倍とし,サンプリング周波数は 2,048 Hz とした。. が大きくなることを指す。. 筋電図のシグナルは多用途筋機能評価装置から出力され.  各施行で疲労による筋活動の変化を捉える解析に用い. たトルク,角速度,関節角度のシグナルとともに 12 bit. るため,解析に用いる %MVC および修正エントロピー. で A/D 変換された。記録保存された筋電図シグナルは. の代表値は,1 セット目の 1 回目の運動時,2 セット目. 10 ∼ 500 Hz のバンドパスフィルターで処理した後,各. の 4 回目(LI は 7 回目) ,3 セット目の 7 回目(LI は 14. チャンネルにおける Root Mean Square(以下,RMS). 回目)の運動時の筋電波形とした。. を算出した。その後,膝関節屈曲 65 ∼ 70° の区間を抽. 28). 。エントロピーとは,量子力学や情報理. 27)28). 。「異質性」とは「ばらつき」の.

(4) 低速度レジスタンス運動時の筋内活動分布の解析. 33. 表 1 各条件における %MVC,修正エントロピー,iEMG の結果. %MVC(%). 修正エントロピー. iEMG(mV・s). セット数. LRT. HI. LI. 1. 30.2 ± 4.1*. 66.2 ± 8.7. 25.0 ± 1.9*. 2. 25.1 ± 3.1*. 52.4 ± 6.2. 27.8 ± 3.6. 3. 52.7 ± 10.2. 73.7 ± 7.1. 29.8 ± 2.8*. 1. 0.191 ± 0.0010. 0.189 ± 0.00035. 0.191 ± 0.00086. 2. 0.192 ± 0.0014. 0.192 ± 0.0012. 0.192 ± 0.0012. 3. 0.192 ± 0.0011. 0.190 ± 0.00084. 0.190 ± 0.00084. 10.7 ± 1.0. 13.9 ± 1.3. 15.8 ± 1.8. p値. 0.000. 0.17. 0.11. LRT;Low-velocity Resistance Training,HI;High-Intensity,LI;Low-Intensity,%MVC;%Maximum Voluntary Contraction,iEMG;Integrated EMG,*; p < 0.05 vs HI(平均値±標準誤差). 示す。Friedman 検定で有意差を認め(p = 0.000),事 後検定として Steel-Dwass 検定を行った結果,セット毎 の比較では,1 セット目の HI(66.2 ± 8.7%)は LRT(30.2 ± 4.1%,p = 0.03)や LI(25.0 ± 1.9%,p = 0.003)と 比較して有意に高い値を示した。2 セット目はそれぞれ HI(52.4 ± 6.2%) ,LRT(25.1 ± 3.1%) ,LI(27.8 ± 3.6%) であり,HI は LRT と比較して有意に高い値を示した(p = 0.04) 。また,3 セット目では LI では HI より有意に 低い値を示したが(HI:73.7 ± 7.1%,LI:29.8 ± 2.8%, p = 0.002),LRT と HI 間には有意差を認めなかった 図 3 各条件の 1 ∼ 3 セット目における外側広筋の %MVC %MVC;%Maximum Voluntary Contraction, LRT;Low-velocity Resistance Training, HI;High-Intensity,LI;Low-Intensity, *; p < 0.05 vs HI,平均値±標準誤差. (LRT:52.7 ± 10.2%,HI:73.7 ± 7.1%,p = 0.08)。また, %MVC におけるその他の要因および水準間には有意差 は見られなかった(すべて p > 0.05) 。  また,表 1 および図 4A に各レジスタンス運動時の修 正エントロピーを,図 4B に 3 セット目の筋活動の空間 的分布の図を示す。Friedman 検定の結果,筋活動の空. 6.統計処理. 間的分布を表す修正エントロピーには有意差を認めな.  3 条件毎の %MVC,修正エントロピー,iEMG の比較. かった(p = 0.17) 。なお,iEMG は LRT で 10.7 ± 1.0 mV・. には,まずはじめに正規性の確認のため,Shapiro-Wilk. s,HI で 13.9 ± 1.3 mV・s,LI で 15.8 ± 1.8 mV・s で. 検定を用い,正規分布に従わないことを確認した。そし. あり,3 条件間に有意差を認めなかった(p = 0.11) 。. て,ノンパラメトリック検定として Friedman 検定を用 いた後,事後検定として Steel-Dwass 検定を用いた。な. 考   察. お,有意水準は 5% とし,測定値はすべて平均値±標準.  本研究では,高密度表面筋電図を用いて,LRT 時の. 誤差で示した。統計処理には,統計処理ソフト(IBM. 筋活動と筋活動の空間的分布を測定した。LRT の筋活. 社製,SPSS Ver.21 および IBM 社製,R)を使用した。. 動は 1 セット目では HI より有意に低値を示したが,3. 結   果. セット目には HI と同等の筋活動が認められた。また, LRT では,HI と同等の筋活動の空間的分布が認めら.  最大膝伸展トルクは,45 °/sec では 172.4 ± 15.4 Nm. れた。. であり,22.5 °/sec では 174.7 ± 12.6 Nm であったため,.  本研究結果から,1 セット目では,%MVC は HI 群に. LRT,HI,LI の 実 施 負 荷 は そ れ ぞ れ 順 に,69.9 ±. 比べ LRT 群で有意に低値を示している。LRT では持続. 5.0 Nm,137.9 ± 12.4 Nm,69.0 ± 6.2 Nm であった。ま. 的に筋力発揮を行い,筋内圧の上昇による筋血流の制限. た,各レジスタンス運動中の角速度の実測値は,LRT. を起こすことで,早期から筋疲労を引き起こし,HI 群. で 23.3 ± 0.6 °/sec,HI で 44.8 ± 0.6 °/sec,LI で 43.4 ±. と同等の筋出力を発揮すると考えられたが,本研究結果. 1.0 °/sec であった。. から,1 セット目ではこの変化が生じていないことがう.  表 1 および図 3 に各レジスタンス運動時の %MVC を. かがえる。中江. 29). ,吉野 30) らは,筋出力は運動強度.

(5) 34. 理学療法学 第 46 巻第 1 号. 図 4 筋活動の空間的分布の変化 (A)各条件の 1 ∼ 3 セット目における修正エントロピー LRT;Low-velocity Resistance Training HI;High-Intensity,LI;Low-Intensity 平均値±標準誤差 (B)各条件の 3 セット目における外側広筋の筋活動の空間的分布 %MVC;%Maximum Voluntary Contraction. に比例して増加すると報告しており,本研究では,LRT.  一般的に,最大下筋力では発揮筋力が一定もしくは低. は最大トルクの 40%,HI は 80% であったため,1 セッ. 下しても,疲労に伴って筋活動の振幅が増大するとされ. ト目では,運動強度の違いに依存して筋活動に差が生じ. ており. ているものと考えられる。しかしながら,3 セット目に. る代償的な運動単位の活動動員の増加や,インパルスの. おいては,%MVC について LRT と HI で有意差が認め. 同期化によると考えられている. られなかった。低負荷低速度運動を行うことで,高負荷. 活動の空間的分布を示す修正エントロピーは,LRT と. 通常速度でのトレーニングと同等の筋力増強,筋断面積. HI で 3 セット目において有意な差は認められなかった。. の増大効果が得られたという先行研究から. 16)17). ,LRT. 19)20). ,これは筋疲労に伴う筋張力の低下に対す 19). 。しかしながら,筋. 同一筋内においては,異なったタイプの筋線維や運動単 22)23). ,高密度表面筋電. 時の筋活動は HI と同等になる,あるいは疲労の観点か. 位が集合しているとされており. ら,3 セット目に近づくにつれて同等の筋活動様式に変. 図を使用した同一筋内の活動分布の解析によって,運動. 化するのではないかと仮説を設定していた。今回の結果. 単位の動態の推測が可能であるとされている. では,LRT では徐々に筋活動が増加し,セット数を重. 正エントロピーの値が減少することは,測定した空間内. ねることにより HI とほぼ同等の %MVC に変化してい. で運動単位の活動分布の乱雑さが大きくなっていること. た。また,iEMG は,筋電図信号の振幅の絶対値を一定. を示す。速筋線維,遅筋線維では運動単位の大きさが違. の時間範囲で整流化し,被験者毎に総筋活動時間で積分. うため,修正エントロピーの値によって優位に活動して. 31). 24)25). 。修. ,3 セットを通した総筋活動量は 3. いる線維を推測することができる。本研究では,LRT. 条件で有意差を認めなかったため,各条件間での実際の. と HI の修正エントロピーの値に有意差が見られなかっ. 総筋活動量は同等であるものと考えられる。本研究で. たことから,それぞれで同じような運動単位の動員様式. は,「HI」と「LRT・LI」では運動に用いた負荷量が異. となっているものと考えられる。高齢者や 2 型糖尿病患. なるため,運動開始直後の %MVC には負荷量の影響が. 者を対象とした我々の先行研究では,10%MVC の等尺. 生じやすいと考えられる。. 性収縮を 120 秒間行った結果,外側広筋の筋活動の空間. したものであるが.

(6) 低速度レジスタンス運動時の筋内活動分布の解析. 的分布の異質性は高かったが 24),今回の研究結果では 異質性は低かったといえる。今回,40% の強度で実施. 35. 結   語. した LI においても異質性が低かったため,10%MVC で.  本研究では,高密度表面筋電図を用いて筋活動の大き. 実施した先行研究とでは実施強度が影響した可能性があ. さや筋活動の空間的分布,さらに全体としての筋の活動. る。一般的には速筋線維を支配する運動単位は遅筋線維. 量について比較検討することができた。LRT 時の筋活. を支配する運動単位よりも大きいため,速筋線維を支配. 動と筋活動の空間的分布,筋活動の積分値である iEMG. する運動単位が動員されるにしたがって,同一筋内の活. を測定した結果,LRT では徐々に筋活動が増加し,セッ. 動分布は全体的に活動し,異質性が低下する. 24). 。これ. ト数を重ねることにより HI とほぼ同等の %MVC に変. らのことから,LI や LRT における 40% での強度では,. 化した。また,1 ∼ 3 セットにおける LRT と HI の修正. 既に比較的多くの運動単位が動員されていた可能性があ. エントロピーの値に有意差が見られなかったことから,. る。本研究では,修正エントロピーに LRT と HI の間. それぞれで同じような運動単位の動員様式となっている. に有意差がなかったため,両施行の運動単位の動員に違. ものと考えられる。HI と同等の筋活動を得るには 3 セッ. いを認めなかったものと考えられる。したがって,3. トが必要であることが明らかとなり,筋活動の空間的分. セット目に LRT の %MVC が HI と同等になった要因と. 布においても同等の特徴が認められたことから,複数. しては,インパルスの同期化が関与している可能性が考. セットによって,動員される運動単位の増加よりもイン. えられた。. パルスの同期化が関与している可能性が示唆された。本.  LRT は高齢者や低負荷での運動を余儀なくされる低. 研究では高密度表面筋電図は同一筋内の詳細な活動を測. 体力者においても,安全かつ効果的にレジスタンス運動. 定できる利点があり,LRT が筋肥大に及ぼす生理学メ. を行うことができ,速筋線維を動員することによって筋. カニズムを明らかにする一助になる。. 肥大をもたらすとされる. 14). 。しかし,高密度表面筋電. 図を用いた今回の神経・筋活動の結果より,LRT を実. 利益相反. 施する際は 3 セット以上の複数セットが必要である可能.  本論文作成にあたり,開示すべき利益相反関係にある. 性が考えられた。また,石井は,LRT による筋内圧の. 企業,組織,団体は存在しない。. 上昇によって筋血流の抑制を生じさせるためには,1) 50%1RM 程度の負荷強度を用いる,2)脱力する瞬間を つくらず常に筋の緊張を解かない,3)慣性による発揮 筋力の低下が起こらないようにする,などが基本的条件 であるとしている. 32). 。LRT では 2)と 3)の条件を満. たすには十分な練習が必要であると考えられ,被検者の 習熟度も結果に影響を与える可能性も考えられる。  本研究の限界点は以下の通りである。まずはじめに, LRT による筋肥大効果のメカニズムとして,筋活動, 運動単位の活動の増加によって生じるものと,成長ホル モンなどの血中濃度が増加することで生じる代謝・内分 泌のものがあるとされている. 33)34). 。今回の研究では,. 筋活動,運動単位の活動にのみ焦点をあてており,乳酸 などの代謝産物や成長ホルモンの測定を実施していな い。次に,被検者は LRT の施行は今回の研究参加がは じめての経験であり,施行前に慣れてもらうために練習 は実施しているが,十分習熟しているとはいえない。最 後に,本研究は比較対照研究に留まったが,先行研究で は,2 ∼ 3 回 / 週の頻度で,8 ∼ 10 週程度継続して運動 を行った介入研究. 15‒18). が大半であり,一定期間の介入. によって異なる結果をもたらす可能性も考えられる。本 研究結果をさらに確実なものとするために,これらのこ とを考慮に入れた研究が今後必要であると考えられる。. 文  献 1)内 閣 府 ホ ー ム ペ ー ジ  平 成 27 年 度 版 高 齢 社 会 白 書. http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2015/ zenbun/pdf/1s1s_1.pdf(平成 27 年 9 月 16 日引用) 2)Cruz-Jentoft AJ, Baeyens JP, et al.: Sarcopenia: European consensus on definition and diagnosis: Report of the European Working Group on Sarcopenia in Older People. Age Aging. 2010; 39: 412‒423. 3)町田修一:加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)発症の分 子機構の解明とその治療・予防法の開発.Jpn J Rehabil Med. 2007; 44: 144‒149. 4)Lexell J: What is the cause of the ageing atrophy? J Neurol Sci. 1988; 84: 275‒294. 5)藤田 聡:効果的な筋肥大を目的としたトレーニングと 栄養摂取の役割─加齢による影響─.J Clin Phys Ther. 2011; 14: 15‒20. 6)藤田 聡:サルコペニア予防における運動と栄養摂取の役 割.基礎老化研究.2011; 35: 23‒27. 7)重本和宏:筋萎縮(サルコペニア)における代謝変換のメ カニズムの役割.実験医学.2014; 32: 1366‒1371. 8)若林秀隆:外科領域におけるサルコペニア リハビリテー ション栄養とサルコペニア.外科と代謝・栄養.2016; 50: 43‒49. 9)山田 実:サルコペニアの予防.総合リハ.2016; 44: 661‒ 666. 10)石井直方:サルコペニア─研究の現状と臨床への応用─ サルコペニア予防のための運動プログラム.Geriat Med. 2010; 48: 201‒204. 11)大藏倫博:サルコペニア─研究の現状と臨床への応用─ サルコペニア予防のエビデンス─レジスタンストレーニン グを中心として─.Geriat Med. 2010; 48: 197‒200. 12)Wikkiam J, Ratamess NA: Fundamentals of Resistance.

(7) 36. 理学療法学 第 46 巻第 1 号. Training: Progression and Exercise Prescription. Med Sci Sports Exerc. 2004; 36: 674‒688. 13)新井武志,大渕修一,他:高負荷レジスタンストレーニン グを中心とした運動プログラムに対する虚弱高齢者の身体 機能改善効果とそれに影響する身体・体力諸要素の検討. 理学療法学.2003; 30: 377‒385. 14)Macaluso A, De Vito G: Muscle strength, power and adaptations to resistance training in older people. Eur J Appl Physiol. 2004; 91: 450‒472. 15)Tanimoto M, Ishii N: Effects of low-intensity resistance exercise with slow movement and tonic force generation on muscular function in young men. J Appl Physiol. 2006; 100: 1150‒1157. 16)Goto K, Ishii N, et al.: Hormonal and metabolic responses to slow movement resistance exercise with different durations of concentric and eccentric actions. Eur J Appl Physiol. 2009; 106: 731‒739. 17)Westcott WL, Winett RA, et al.: Effects of regular and slow speed resistance training on muscle strength. J Sports Med Phys Fitness. 2001; 41: 154‒158. 18)絹川真太郎,菅 唯志,他:筋力増強に最も有効な血流制 限下トレーニング運動条件の検索─筋内エネルギー代謝の 検討─.健康医科学研究助成論文集.2010; 25: 46‒51. 19)Moritani T, Muro M, et al.: Intramuscular and Surface electromyogram changes during muscle fatigue. J Appl Physiol. 1986; 60: 1179‒1185. 20)矢部京之助:筋疲労の神経機構.体育の科学.1990; 40: 365‒371. 21)正門由久,野田幸男,他:表面筋電図周波数分析による筋 疲労の検討─同一筋内での topographical analysis ─.リ ハ医学.1994; 31: 409‒414. 22)Chanaud CM, Macpherson JM: Functionally complex muscles of the cat hindlimb. III. Differential activation within biceps femoris during postural perturbations. Exp Brain Res. 1991; 85: 271‒280.. 23)Lexell J, Downham DY: The occurrence of fibre-type grouping in healthy human muscle: a quantitative study of cross-sections of whole vastus lateralis from men between 15 and 83 years. Acta Neurophathol. 1991; 81: 377‒381. 24)Watanabe K, Miyamoto T, et al.: Type 2 diabetes mellitus patients manifest characteristic spatial EMG potential distribution pattern during sustained isometric contraction. Diabetes Res Clin Pract. 2012; 97: 468‒473. 25)Farina D, Leclerc F, et al.: The change in spatial distribution of upper trapezius muscle activity is correlated to contraction duration. J Electromyogr Kinesiol. 2008; 18: 16‒25. 26)Watanabe K, Gazzoni M, et al.: Motor unit firing pattern of vastus lateralis muscle in type 2 diabetes mellitus patients. Muscle Nerve. 2013; 48: 806‒813. 27)小暮陽三:なっとくする演習・熱力学.講談社,東京, 1997,pp. 145‒175. 28)竹内純一:現代技術への数学入門 情報理論と学習理論. 若山正人(編),講談社,東京,2008,pp. 74‒78. 29)中江秀幸,村田 伸,他:負荷方法の違いによる筋活動 の比較─主動筋,拮抗筋,遠位筋の筋活動分析─.Jpn J Health Promot Phys Ther. 2015; 4: 177‒182. 30)吉野智佳子,下村義弘,他:表面筋電図,筋音図,筋血 液動態に及ぼす収縮強度の影響.日作療研会誌.2014; 17: 1‒6. 31)木塚朝博,増田 正,他:表面筋電図.東京電機大学出版 局,東京,2006,pp. 43‒46. 32)石井直方:スロートレーニングの効果とそのメカニズム. 日臨スポーツ医会誌.2013; 21: 506‒509. 33)中島敏明:加圧トレーニングと心臓リハビリテーション. 心臓リハ.2007; 12: 217‒226. 34)石井直方:加圧トレーニングのメカニズム.日臨スポーツ 医会誌.2004; 21: 215‒223..

(8) 低速度レジスタンス運動時の筋内活動分布の解析. 〈Abstract〉. Analysis of Spatial EMG Potential Distribution during Low-velocity Resistance Training: Using the High-density Surface EMG. Yuya NAKATANI, PT Nara Medical University Hospital Machiko FUKUDA, PT Kobe Ekisaikai Hospital Hiroki KITAGAWA, PT Yukioka Hospital Toshiaki MIYAMOTO, PT, PhD Hyogo University of Health Sciences. Purpose: The purpose of this study was to elucidate the spatial electromyography (EMG) potential distribution in a working muscle during low-velocity resistance training (LRT). Methods: Thirteen healthy adult men participated in this study. The participants randomly performed three sessions (LRT, high intensity [HI], and low intensity [LI]) of three sets of knee extension exercise. The action potential of the lateral vastus muscle during each session was measured using high-density surface EMG. Percent maximum voluntary contraction (%MVC), modified entropy, and integrated EMG (iEMG) were used to compare the degree and heterogeneity of the working muscle among the sessions. Result: Whereas %MVC was significantly lower in the LRT session than in the HI session in the first set, it showed no significant difference in the third set among the sessions. Modified entropy showed no significant difference among the sessions in all the sets. iEMG also indicated no significant difference among the sessions. Conclusion: This study demonstrated that multiple sets may be required for LRT to activate the degree of action potential to the same extent that HI does and that the difference in synchronization of motor units between them may have influenced the present findings. The results of our analysis using high-density surface EMG may partly elucidate the mechanism underlying LRT-induced muscle hypertrophy. Key Words: Sarcopenia, High-density surface EMG, Slow-training. 37.

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