甘果オウトウ(Pm〃U5∂扉umL.)花粉の発芽特性
別府賢治・片岡郁雄CharaCteristicsofpollengerminationinsweet
chenγ(P用乃〟∫α血∽L.)
KeIljiBEPPUandIkuoKATAOKA
Summary
Factors a飴cting germination and tube growth of‘Takasago sweet cherTypOllen onthe I
CulturemediumandintheplStilwerestudiedu Additionally,germinationof‘Takasago,and
‘Napoleon,pollenstoredatdi飽IenttemPeratureSWaSinvestigated・
TheadditionofborontotheculturemediummarkedlyincIeaSedbothgeIminationpercentage
andpollentubelength.However,Calcium,magneSiumandmanganeSeWerenOtSOef托ctiveas boronin stimulating gemination.Sucrose concentrationand pH of media andincubation
temperatureaffbctedpollengemlinationandtubegrowth;thesee飴ctsweremoreprominentwhen
boronwasaddedtothemedium.TheagarmediumcontaininglO%sucroseand5ppmboron,
a句ustedpH4.5to5.5andkeptat25℃wasmostsuitablefor‘Takasago’pollengeImina−
tionandtubegrowth.
Theoptimumtemperaturesforpo11entubegrowthinthepistilranged丘om15℃to25℃.At
these temperatures,pOllen tubes reachedthemicrDpyle240r48houIS after pollination.
However,at5℃and30℃,pOllentubeswerestillinstigmaorstyle72houISafterpo11ination.
Pollens of‘Takasago’and‘Napoleon’storedat27℃for4months resultedincomplete
lossofgeIminationability..Ontheotherhand,pOllenspreservedattemperaturesbelowl℃
retained relatively high geImination abilities even a鮎rlO months storage.The highest percentageofpollengerminationafter・10monthsofstoragewasfoundattemperatureof−196℃ (1iquidnitrogen). KeyWords:Sweet cheITy,Pollengermination,Boron,Sucrose,pH,TempeIature,Storage 緒 甘果オウトウは,開花期前後の気象条件や樹体の栄養状態の影響を強く受け,結実が不安定にな りやすい(1).この原因を明らかにし,結実の安定化を図るためには,受粉や受精に関わる諸条件を 把握しておく必要がある.これまでに筆者らは雌性器官の発達と開花期前後の温度環境の関係を明 らかにし,結実性との関連について報告した(2)が,花粉の発芽や花粉管の伸長特性についての詳細 は十分に解明されていない。一方,甘果オウトウでは栽培条件により授粉樹の開花期のずれや花粉 の発芽不良などが生じることがあり,これに備えて花粉の貯蔵が必要な場合があり,貯蔵条件と花 粉の発芽の関係についても検討↓ておくことが重要である. 本実験では,甘栗オウトウの花粉の人工培地上および雌ずい中の発芽と花粉管の伸長に影響する 要因について調査した.さらに,異なる温度条件で貯蔵した花粉の発芽についても検討を加えた.
材料および方法
実験1.人工培地上での花粉の発芽と花粉管の伸長に影響を及ぼす要因 香川県綾歌郡国分寺町の農園で栽培されている10年生の甘果オウトウ‘高砂’(伽乃〟∫ αV血肌 L.)の花粉を供試した.開花直後の花を採取し,やくを20℃の恒温券に−・晩置いて充分開やくさ せた後,花粉を以下の処理培地に置床した. り 無機要素の影響 1)−1無機要素濃度の影響 ホウ酸,硫酸マグネシウム,硝酸カルシウムおよび硫酸マンガンを用いて,培地のB,Mg,Ca,Mn濃度を各々10−3,10 ̄2,10,1,1,5,10,40,100ppmに調整し
た.いずれの培地もショ糖濃度15%,寒天濃度1%とし,pHは5.5に調整した.1)−2 花粉発芽および花粉管の伸長の経時的変化に及ぼすホウ素涛加の影響 ホウ素(5
ppm)添加および無添加の培地とした.いずれの培地もショ糖濃度15%,寒天濃度1%とし,pHは 5.5に調整した.2)ショ糖濃度の影響 ホウ素(5ppm)添加および無添加の培地のショ糖濃度を0,5,10,
15,20,25,30%に調整した.いずれの培地も寒天濃度1%とし,pHは5.5に調整した.
3)pHの影響 ホウ素(5ppm)添加および無添加の培地について,PHを3.5,4.5,5.5,6.5,
7.5,8.5に調整した.いずれの培地もショ糖濃度15%,寒天濃度1%とした. 1)から3)について−,花粉を置床後,20℃の恒温室で6時間培養した後,コットンブルーで染 色して,光学顕微鏡により花粉の発芽率と花粉管の伸長畳を調査した.1)−2については,花粉を置床後0,5,1,2,12時間後にも発芽率と花粉管の伸長畳を調査した.花粉の発芽率は,1
シャーレにつき約250粒の花粉について,花粉管が花粉の直径以上に伸長したものを発芽とみなし て調査した.花粉管の伸長畳は,1シヤ・−レにつき20粒の花粉について,ミクロメータで計測した. 各処理につき3反復の発芽試験を行った.4)温度の影響 ショ糖15%および寒天1%を含む,ホウ素(5ppm)添加および無添加の培地
(pH5.5)に花粉を置床し,0,10,15,20,25,30,35℃の恒温室で6時間培養した後,花粉の
発芽率と花粉管の伸長畳を調査した. 実験2.雌ずい中での花粉の発芽と花粉管の伸長に及ぼす温度の影響 実験1と同一・の農園内で栽培されている10年生の甘果オウトウ‘佐藤錦’の花を開花直前に採取 した.がく片,花弁および雄ずいを除去し,花柄を子房の付け根から2∼3mm残して切除した. これについて,ショ糖15%および寒天1%を含む培地を入れた直径35mmのシャーレに15個ずつ,花柄を下に垂直に植え付けた.5,10,15,20,25,30℃の恒温室に10分間置いた後,‘高砂’の
花粉を柱頭に筆で授粉した.12,24,48(5℃を除く),72時間後にそれぞれ雌ずいを10個ずつ採取し,FAAで固定した.これを水洗後,8N−NaOHで軟化し,0.1%アニリンブル・−(溶媒:0..1
Mリン酸三カリウム)で染色した後,花粉管の伸長状態を蛍光顕微鏡により観察した.花柱部分は 押しつぶしにより,また子房部分は縦方向に半裁した切断面を用いて観察した.花粉管の最深到達 部位を,柱頭,花柱上部,花柱中央部,花柱基部,子室内の柔組織,珠孔の6段階に区分して調査 した. 実験3.貯蔵中の温度が花粉の発芽および花粉管伸長に及ぼす影響 実験1と同一の農園内で栽培されている12年生の‘ナポレオン’および12年生の‘高砂’の花粉 を供試した.開花直後の花を採取し,やくを18℃の恒温器に−・晩置いて開やくさせた.得られた花 粉をパラフィン紙に包み,シリカゲルを入れたポリエチレン袋に密封し,27±1℃,4.5±1℃,液体窒素(−196℃)中で貯蔵した.貯蔵開始から10カ月後まで,2カ月毎に花粉を取り出し,
ショ糖15%,ホウ素5ppmを含む1%寒天培地(pH5.5)に置床して,25℃の恒温室で6時間培養
した後,花粉の発芽率および花粉管の伸長畳を調査した.
結 果実験1.人工培地上での花粉の発芽と花粉管の伸長に影響を及ぼす要因
1)無機要素の影響1)−1無機要素濃度の影響 ホウ素については,0.1ppm以上の添加で,花粉の発芽および
花粉管の伸長の促進効果が認められた(Fig.1).花粉発芽率は1∼10ppmの濃度範囲で約70%と
高く,花粉管の伸長量は5ppmで最大となった.マグネシウムについては,5∼10ppmを添加した
場合には発芽率,花粉管の伸長畳ともにわずかに増加したが,40ppm以上では発芽は完全に阻害さ
れた.カルシウムについては,10ppmの添加で発芽率がわずかに増加したが,花粉管の伸長量は0
∼100ppmの範囲では差異はなかった.マンガンについては,0∼10ppmの範囲では発芽率に影響
はなかったが,40ppm以上では,発芽を完全に抑制した.花粉管の伸長畳は5∼10ppmのマンガン
添加によりわずかに増加した. 0 0 0 0864つL
uO莞⊆巨星ごb乳首∪むULむd 0 0 0 0 8642 U〇一le⊆∈﹂註︼○乱吾∪むUJUd 0 0 0 0 0 0 1 0 3 2 ︵∈ヱぷ⊃≡望Odち吉PU﹂ 0 0 0 0 0 0 0 1 2 3 ︵∈ヱぷコ;些Odち吉ぎヱ 0 05 1 2 6 1Z HoursinincubatonFig.2 Time−COurSeOfpollengermination(A)
andtubegrOWth(B)of‘Takasago’sweet
cherTy.PollengralnSWereincubatedonl %agar・med血n witb15%sucrりSe andwith(●)or without(○)5ppm boron
at pH5.5andkept at20℃for12hr.
BaI・Smean SE. 0 00010010.1 1 5 10 40 100
Concentration(PPm)
Fig.1Effbct ofB,Mg,Caand Mn concen− tration on pollen gemination(A)and tube growth(B)of‘Takasago’sweet
CheIIy.Po11engrainswereincubatedonl
%agarmediumwith15%sucroseatpH 5.5and kept at 20℃fbr 6hr.Bars mean SE.
1)−2 花粉発芽および花粉管の伸長の経時的変化に及ぼすホウ素添加の影響 ホウ素無添加 では,花粉を置床してから12時間後までゆるやかに発芽率が上昇したのに対して,ホウ素5ppm添 加では,置床後すぐに大きく上昇し,2時間後には最大値に達した(Fig.2(a)).いずれの培地で も培養開始12時間後まで花粉管の伸長が続いたが,花粉管の伸長速度はホウ素の添加により著しく 増大した(Fig.2(b)). 2)ショ糖濃度の影響 ホウ素添加培地では,ショ糖濃度10∼20%で花粉発芽率が最も高くなっ たが,25%以上では著しく減少した(Fig.3(A)).花粉管の伸長量は,ショ糖濃度10%で最大と なったが,15%以上ではしだいに減少した(Fig.3(B)).−溝,ホウ素無添加培地では,ホウ素添 加培地に比べ,全般に発芽率は著しく低かった.ホウ素無添加培地では,ショ糖濃度5∼15%で花 粉発芽率がわずかに高い傾向があったが,花粉管の伸長量は濃度の増加に伴ってゆるやかに減少し た(Fig.3). 3)pHの影響 ホウ素添加培地では,pH4.5∼5.5で花粉発芽率は高く,花粉管伸長畳も大き かったが,6.5以上ではしだいに低下した(Fig.4).一男,pH3.5では花粉は全く発芽しなかった. ホウ素無添加培地においても同様の傾向が認められたが,花粉発芽率,花粉管伸長量とこもにホウ素 添加培地と比べて著しく低い億を示した. 4)温度の影響 花粉発芽は10℃以上で認められ,ホウ素添加培地では,15∼25℃で発芽率が約 75%と高かったが,30℃以上では減少し,35℃では15%まで低下した(Fig.5(a)).ホウ素無添加 0 0 0 0 0 08642 uO︼︸空一∈﹂註ち註e⊆むU﹂¢d uO烏⊆∈﹂乱ち乳首uむULむd 0 0 0 QU 6 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4321 ︵∈ヱぷコ︸⊆些Odち二島uヱ 0 0 0 0 0 <U O 1 3 2 ︵∈ヱぷコ;望Odち吉Pむ﹂ 0 5 10 1S 20 25 30 Sucroseconcentration(%)
Fig.3 Effbct ofsucrose concentration on pollen
germination(A)andtubegrowth(B)of ‘Takasago sweetcherry・PollengralnS I
wereincubatedonl%agarmediumwith
(●)or without(○)5ppm boron at pH5.5andkeptat20℃fbr6hr.Bars mean SE.
35 45 55 65 75 85 PH
Fig.4 Effヒct of pH on po11en germination (A)andtubegrowth(B)of‘Takasago’
SWeet Cherry.Pollen grains were
incubatedonl%agarmediumwith15% sucroseandwith(●)orwithout(○)5 ppm boron and kept at20℃for6hr. Barsmean SE.
0 0 0 0 00642 uO焉∪∈﹂註罵壷欝苫芦屠 0 0 0 0 0 0 0 0 1 32 ︵∈ヱぷコ;些Odち壬昂5﹂ 0 5 10 15 ZO 2S 30 35 Temperature(℃)
Fig.5 Effbct of temperature on po11en geImination(A)and tube growth(B)of‘Takasago’
sweetcherTy.Pollengrains wereincubatedonl%agarmediumWith15%sucrose andwith (●)or・Without(○)5ppmboron atpH5.5andkeptateachtemperaturefbr6hr・Barsmean SE.
I TablelEffbctoftemperatureontheelongationof‘Takasago sweetcherTypO11entubesin lsatohnishiki,pistils・
HoursafterTreatment No.ofpistilswiththemostadvancedpo11entubereaching NohOfpistils
po11ination Stigma Topoisty1e Middleofstyle BottomofstyIe Obturator Micropyle exmained
000000 000000 000000 000909 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 ℃℃℃℃℃℃ 505050 1 122 3 12 ℃℃℃℃℃℃ ℃℃℃℃℃ ℃℃℃℃℃℃ 505050 05050 505050 11223 1122−3 11223 48 72 Pistilswereincubatedonl%agarmediumwith15%sucroseateachtemperaturel
培地においても同様の傾向が認められたが,発芽率は15℃から25℃の範囲においても著しく低い億
を示した.花粉管の伸長畳は,ホウ素添加培地では25℃で最大となったが,ホウ素無添加培地では,
15∼30℃の範囲では処理間の差異はほとんど見られなかった(Fig.5(b)).
実験2.雌ずい中での花粉の発芽と花粉管の伸長に及ぼす温度の影響
雌ずい中での花粉管の伸長速度は,15∼25℃で大きく,20℃および25℃では授粉24時間後,15℃
では48時間後には,花粉管が珠孔に到達しているものも観察された(Tablel).最も伸長の速
かった20℃では,授粉72時間後にはほとんどの雌ずいで花粉が珠孔に達していた.−・方,10℃では
花粉管の伸長がやや抑制され,72時間後に初めて珠孔に到達している花粉管が確認されたリ 5℃で
は花粉管の伸長が遅く,72時間後においても花柱中部までしか到達していないものが多かった.30
℃では花粉管はほとんど伸長せず,72時間後においても柱頭あるいは花柱上部に留まっていた.
実験3.貯蔵中の温度が花粉の発芽および花粉管伸長に及ぼす影響
‘高砂,では,貯蔵前の花粉発芽率は55%であり,液体窒素中,−196での貯蔵では,花粉の発
芽率は10カ月後でも全く低下していなかった.また,1℃および−22℃でも貯蔵期間中,花粉発芽
率は比較的高く維持され,10カ月間貯蔵彼の花粉発芽率はそ・れぞれ48%,46%であった拝ig.6(A))..
0 0 0 0 0 0 065432一1
uO烏u苫監−○註男uUUJUd ︵∈ヱぷコご︼些Odちエ忘uむ﹂ 0 0 0 6 ﹁⊃ 4 0 0 0 0 0 0 0 3 2 6 8 10 0 2 4 6 8 10 0 2 4 Periodofstorage(months)Fig。6 Geminationpercentage(top)andtubelength(bottom)of‘Takasago’(1eft)and‘Napoleon’
(right)sweetcherTypOllen afterstorageat27℃(●),4。5℃(III),1℃(△),−22℃(○)
and−196℃(□).Afterstorage,pOllengrainswereincubatedonl%agarmediumwith15%sucroseand5ppmboronatpH5.5andkeptat25℃fbr6hr.
27℃では2カ月後に発芽率は激減し,4カ月後には花粉は発芽しなかった.発芽した花粉の伸長量 については,貯蔵温度間の差異はほとんど認められなかった(Fig.6(B)).‘ナポレオン’では,貯 蔵前の花粉発芽率は61%であり,−196℃では,貯蔵中,花粉発芽率は最も高く維持され,10カ月 後には46%になった.1℃および一22℃では貯蔵中に発芽率がゆるやかに低下し,10カ月後にはそ れぞれ30%,33%となった(fig.6(C)).4.5℃では貯蔵4カ月後から発芽率が急速に低下し,10カ 月後には5%となった.27℃では2カ月後に発芽率が激減し,4カ月後には花粉の発芽カは完全に 失われた.花粉管の伸長畳については,花粉発芽率の推移と同様の傾向を示した(Fig.6(D)). 考 察 −・般に,花粉発芽培地へのホウ素の添加は,花粉の発芽や花粉管の伸長を促進することが知られ ており,いくつかの果樹においても,この効果が認められている(345).本実験により,甘栗オウト ウ‘高砂,において,培地へのホウ素の添加が花粉の発芽および花粉管伸長を著しく促進し,5 ppm前後で最も効果が大きいことが示された(Fig.1).また,ホウ素添加により発芽率が最大値 に達するまでの所要時間が大きく短縮された(Fig.2)ことから,ホウ素は,最終的な発芽率を高 めるだけでなく,発芽そのものを早める効果をもつことが示された.培地のショ糖濃度やpH,温 度の影響も,ホウ素添加培地においてより明確に現れ(Fig.3,4,5),甘果オウトウの花粉発芽試 験に用いる培地にはホウ素の添加が重要であることが示された.甘果オウトウでは,土壌乾燥等に よりホウ素欠乏を生じやすく,このことにより結実不良となることが知られているが1),花粉の発 芽,花粉管伸長におけるホウ素への依存性が大きいことが関係しているのかもしれない.−・方,酸 果オウトウ(6〉ヤア・−モンド(7),ブドウ(8)では,ホウ素の菓面散布により翌春の結実が向上したと報 告されており,小林・岡本(8)はその−・因が花のホウ素濃度の増加による花粉管伸長の促進にある と推察していることから,甘栗オウトウについても,ホウ素の菓面散布により翌春の結実の向上が 望めるかもしれない. カルシウムやマグネシウム,マンガンなどの花粉発芽培地への添加が花粉の発芽や花粉管の伸長 を促進したという報告もあるが910),本実験では,これらの無機要素の効果はわずかであった(Fig. 2).しかし,BrewbakerandKwack(11)は,カルシウムやマグネシウムを単独で与えて花瀞の発芽を 促進しない場合でも,他の無機要素と組み合わせて添加することにより発芽を促進したことを認め ていることから,甘果オウトウにおいても,これらの要素と他の無機要素,特にホウ素との相互作 用を検討する必要があろう. 花粉の発芽培地へのショ糖の添加の役割は,浸透圧調節による花粉の破裂防止や,花数管伸長の 際の養分供給にある(9).ショ糖の最適濃度は作物によって異なっており,キウイフルーツでは5%(5〉, クルミでは15∼20%(4)と最適濃度には大きな差異がある.甘果オウトウ‘高砂’の場合,花粉発芽 率および花粉管の伸長畳からみて,培地のショ糖濃度は10%が最適であるとみられた(Fig.3). 一億に花粉は弱酸性の培地を好むことが知られており,果樹においてもビワでpH5.5(12),キウイ フル・−ツでpH4(5),クリでpH5∼6(13)の弱酸性が好適であると報告されている.本実験の結果, 甘果オウトウ‘高砂’の花粉も,pH4.5−5.5の弱酸性の培地で,発芽および花瀞管伸長が優れる ことが示された(Fig.4). 果樹の花粉の培地上での発芽適温は,核果類については,ウメでは20∼25℃(14),モモ,アーモン ドではそれぞれ23℃,16℃(15)と報告されている.本実験の結果,甘果オウトウ‘高砂’の花粉の培 地上での最適温度は,25℃にあることが示されたが,花粉管伸長の適温は花粉発芽の適温よりもや や高い傾向があった(Fig.5).このことは,モモやアt−モンド(15),ウメ(14〉でも認められている.
一男,リンゴで報告されているように,同じ種類の果樹でも品種間で花粉発芽の好適温度に大きな
差異があること(16)から,甘栗オウト引こついても,品種間で比較調査する必要があろう.
雌ずい中での花粉管伸長は15℃から25℃で優れており(Tablel),酸果オウトウにおける報告(17)
とほぼ−・致した.雌ずい中と人工漕地上での花粉管伸長の適温を比較すると,全体的に雌ずい中で
の花粉管伸長の適温は,人工培地上に比べやや低かった.また,5℃では,人工培地上では花粉が
発芽しなかったのに対して,雌ずい中では花粉の発芽および花粉管の伸長が認められた.これにつ
いては,柱頭あるいは花柱から供給される花粉発芽の促進作用をもつ成分が,低温域での花粉の発
芽を可俄にしているものと推察される.−・方,高温下では,人工培地上では30℃においても花粉管
の伸長が認められたのに対・して,雌ずい中ではほとんど伸長しなかった.したがって,高温による
雌ずい中の花粉管伸長の抑制の原因には,花粉の生理活性そのものの低下に加えて,高温による雌
ずい中の促進物質の供給の減少あるいは抑制物質の発現が関与していることが考えられる・一般に果樹の花粉の貯蔵条件としては,低温・乾燥が適することが知られており,クリ(13),アボ
カド(18),カンキツ(19)などで低温が花粉の貯蔵に有効であることが報告されている.また,有機溶媒
への浸済も有効であるとされている(9).甘果オウトウについても,本実験の結果から,低温が花粉
の貯蔵に有効であり,特に1℃以下の低温により花粉の貯蔵寿命がかなり長くなることが認められ
た(Fig.6).また,液体窒素中の一196℃での貯蔵では,10カ月後でも花粉の発芽率の低下はわ
ずかであり,この方法が花粉の長期貯蔵に極めて有効であることが示された.このような液体窒素
による花粉の長期貯蔵は,クルミ(20)やピスタチオ(21),パパイヤ(22),アボカド(18〉などでも報告されて
いるが,クルミやピスタチオでは品種によって反応が異なり,長期貯蔵が可瀧でない品種もあるこ
とから,甘果オウトウにおいても他の品種について詳しく調べる必要があろう.
本実験の結果,甘果オウトウ‘高砂,の人工培地上および雌ずい中での花瀞の発芽および花粉管
の伸長特性と,‘高砂,および‘ナぜレオン’の花粉の貯蔵温度条件が明らかになった.これらの
知見をもとに,結実性を向上させるための栽培条件の改善を進める必要があると思われる・
摘 要甘果オウトウ‘高砂,の花瀞の人工培地上および雌ずい中での発芽と花粉管伸長に影響する要因
について調査した.さらに,異なる温度条件で貯蔵した‘高砂’と‘ナポレオン’の花粉の発芽に
ついても検討を加えた.培地へのホウ素の添加は,花粉の発芽および花粉管の伸長を著しく促進したのに対して,カルシ
ウムやマグネシウム,マンガンの添加の効果は小さかった.また,培地のショ糖濃度,pHおよび
温度も花粉の発芽や花粉管の伸長に影響を及ぼし,特にホウ素を添加した培地でその影響は顕著で
あった.‘高砂,の花粉の発芽および花粉管の伸長に最適な培地条件は,ショ糖濃度10%,pH4.5
∼5.5,温度25℃,ホウ素5ppm添加であった.
雌ずい中での花粉管伸長に好適な温度は15℃∼25℃であり,これらの温度では,授粉後24∼48時
間後に花粉管が珠孔に到達していた.一坊,5℃や30℃では授粉後72時間後においても,花粉管が
柱頭あるいは花柱に留まっていた.‘高砂,や‘ナポレオン,の花粉は,27℃では4カ月後に発芽力を全く失ったのに対して,1℃
以下の低温では,貯蔵期間中,花粉発芽率が比較的高く維持された.10カ月間貯蔵彼の花粉発芽率
は,液体窒素中(一196℃)で最も優れていた.
引 用 文 献
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