1
論 文】 UDC ;691.
32 :666.
982 日本建 築 学 会 構 造 系 論 文 報 告集 第404 号・
1989 年 10月繊 維補強
コン
ク
リ
ー
ト
の .
破
壊
力
学
に
関
す
る
研 究
一
その1
各種繊 維
に よ る補 強効 果
一
正 会 員 正 会 員 正 会 員 正 会 員 正 会 員村
三岸
平
鹿
上
井
谷
居
毛
宜
孝
孝
忠
聖
*之
**_
* * *之
* ** *継
* * * * *1.
序 論 コ ン クリー
ト中へ の短 繊 維の分散混 入 は,
靱 性に乏し い コ ン クリー
トの脆性 的性質を材 料レ ベ ル で改 善 するも の と して,
現 在 各 種の素材,
例えば金 属,
炭 素,
ガ ラス,
セ ラ ミック ス, 有 機 高分子 材 料な ど を短 繊 維と して利用 する試みが 盛 んに行わ れて いる。 し かし なが ら,
コ ンク リー
トの よ うな脆 性マ ト リックス に対する繊 維 強 化 機 構 に関し て は,
そ の理論 的 背景 が 欠如し て い る た め に, 繊 維 補強コ ン クリー
トの適 用は特殊な用途に限ら れ,
繊 維 素 材の もつ 特 性 を十 分に隼
か し た用 途の 開 発は,
試 行 錯 誤の状 態にある のが現 状である。
これ まで に,
繊 維 強 化 理 論 とし てRomuaidy
らに よ る線 形弾性破壊 力学に よる考 察に基づい た繊 維 間 隔理論 があり]),
繊 維補強コ ン クリー
トの実用化のた めの理論 的 根 拠を与え た と さ れて い る。 し か し, そ の 理論では,
繊 維素材の もつ 特性やマ トリックスの性質が繊維補強 効 果に及ぼ す影 響やマ トリックス ひ び 割 れ 発 生後の繊 維の 引き抜 けによる靱 性の増大などの繊維 強化機構における 本 質的 部 分が考 慮されず, ま た繊維間 隔を狭く すれ ば,
そ れ だ け補強 効 果が大き く な るこ と は 定 性 的に理解さ れ るところであ り,
その理 論に よ り新 しい知 見を得ること は困難で あ る な どの限 界がある。そこ で, 本 研 究で は
,
各種 繊 維に よる補 強 効果 を非 線 形 破 壊 力学の適用に よっ て定 量 化し,
繊 維 素 材の もつ特 性と繊 維 補 強 効 果との関係につ い て考 察 を試み る。
2.
解 析 方 法こ こ で利 用し た破壊 力 学モ デル につ い て は既報の と お 本研究は
,
平 成 元 年 度 日本 建 築 学 会 九 州 支 部 研究 報告に おい て発 表 した。
・ 熊本大学 講師・
工博 艸 熊 本 大 学 教 授・
工 博 1# 日本大学 教授・
工博 (東京 大学 名 誉 教 授〉 * * * * 大 分 大 学 教 授・
工博 * *i* * 熊 本 大学 大 学 院 生・
工修 (1989年3月17日原 稿 受 理,
コ989fi
7月27日採 用決 定) り である2,
。
本モ デ ル は, き裂 先 端 前 方の幅の狭い破 壊 過 程 域の進 展 を, 仮 想の き裂面にその開口に抵 抗す る力 (その力 とし て繊 維の引き抜け抵 抗 力,
マ ト リッ クスの 残 余 断 面での応 力伝 達,
ひ び 割 れ 面で の骨 材の橋か け に よる ひび割れ開口抵抗力な ど が考え られ る が, こ こ で は 総 称 して結 合 力と呼ぶ)が作用 す る も の と し て 近似し た 結 合 力モデル で あり,
任 意の結 合 カー
き裂開口変 位 関 係 をその 曲線 下の面 積 (」積 分を表す)が等価にな る よう に,一
定の 結 合 力が作 用 するモ デル (Dugdale
モ デル と呼ばれ る)に置き換えて,
非 線 形 問 題を線形 化 す る手 法で あ る (図一1
に本 手法の基 礎 概 念を, 表一
1に本解 析の基 礎と な るDugdale
モ デル解 析 結 果 をそれ ぞ れ示 す)。
し たがっ て,
本 手 法の逆解法に よ り,
測 定される 荷 重一
変 位 曲 線か ら結 合カー
き裂 開口変 位 関 係を一
意 的に 求め ること が で き る。以 下に,
そ の方 法につ い て述べ る。
1) 仮 想き裂長さω の値を仮定し,
表一
1か ら そ れに 対 応 す る 無次元パ ラ メー
ター
X,
Y,
Z の値 を求め る。 いま,
そ の値をそ れぞれ α,
β,
γとすると,
只 如 o屮 ・一器
一 ・ β = 砺耳
E
=y
γ=
ψW
=
Z
鞠・
…・
………・
・
…・
…・
一
(1 ) φ1σ
〔φ, σり
φ1 φi き裂闘 口変位 φ笠
ル デ モ ー6 曲 D 価 等 J 図一
1 」等 価Dugda且eモ デル の基 礎 概 念表
一
1Dugdale モ デル解析 結 果Z
72036991318699210
80141446059709545
3680360520057
・
・
。
・
・
・
・・
・
・
・
・
・
・…
1781
00011122345681126
5306293114706
0500042522805
827285586
・
…
・
・。
・
。
・
。・
・
0444
0112234571125
30300807U80
蘯
oo
310168
・
曹
・・
。
・・
。
・
189
、
123457113
X
49849999487070086
13867470561595913
12357038397688
.
…
・
・
・・
・
・
・
…
。
…
075
00000111223457113
6003384601498
2883575651234
12470408975
。
9・
…
。
…
疊
・
・
43
0000112235813
348630036
317524038
13595403
。。
・
・ ・・
…
6
000012471
Y
65897923907970755
器
98
塾
麗
55
男
蹴899603
拶
●
O ・ O●
・
O・
・
,.
●
●
●
・
・
.
00011111111112222
2399821788861
6122108529628
3567899011233
0 ■■
■
O
・
■■
O
●
●
●
・
0000000111111
013640051
107395048
233445666
■
■
●
●
O・
●
.
●000000000
響 ノ ω50505050505050505
01122334455667788
・
■
●●
.
●
●
O■
O●
●
O O・
.
000000000000000000
5050505050505
0112233445566
■
●●
●
○
●
●●
●
←
●
O●
0000000000000
505050505
011223344
,
●
.●
・
・
O●
●000000000
珂 ノ a 」0
30
あO
P↓
3v 一 P P:荷 璽 a:き:
裂長 さ ω:仮.
思 き裂長 さ V:Ctり せ い oり:降伏 強度 φ:き裂 開匚1変位 ψ:き綴口変位 仮 想き 裂 長 さω 2BβE9 γ醜
値\
Y
= σb/σ り,X
=(
E
φ)
!(
σ り刊)
,Z
=(
E
ψ
)
!(
σりW
)
,
き裂q
変位 図一
2 逆解法に よ る結 合 カー
き裂開 口 変位 関 係の推 定 (1
) り J+AJ J / △Jさ
△ φ
}
φ φ+△ φ き裂 開 口 変 位 図一
3 逆解法に よ る結 合 カー
き裂 開口変位 関 係の推 足 (ll
) 2) こ こで, スパ ン, 高さ比=3
の3
点 曲げにつ い て 公 称 曲 げ応 力は,
ab=
9P /2BW,
た だ し 」P :荷 重,
B :は り幅,
W : は り せ いだか ら,
P
− 2
孕
L2
畢
…・
・
一 ・
一 …・
・
・
……
(・) 上 式に as=
Eψ/γW を代入・
して,
P −
2罪
ψ…・
…………・
……・
……一 ・
t・
・
(3
) 上 式に おい て B,
E ,
β,
γ は既 知で あ る か ら,
仮 定 し た ω の値
に対して, 荷重P
とき裂口変位 ψとの 間に モ デ ル解 析 上直線関係が成 り立つ。
3
) 図一2
に 示 す よ うに,
測定さ れた荷 重一
き裂口変 位曲線と,
上述の直線との交点が対 応 す る解を 与え, そ の と き の荷 重P
か ら,
以 下の よ うに 」積 分 とき裂 開口 変 位 φが求め ら れ る。一
表
一
2 使用材料.
SFRC,
PFRC セメン ト 普 通ポル トラン ド 細骨材 川砂 表 乾比 重需
2.
57 吸水宰=
3.
3嘔 最 大 寸法=
5皿 粗 粒串 =2.
78 粗骨 材 川砂 利 表 乾比重=
2.
66 吸水 率冨
2.
BO蕗 最大寸法=
20m 粗 遊 率=
6.
65 実積 寧=
65.
5男 鋼繊 維 異形 カッ トワイヤー
寸法 O,
5φκ30 合成繊維 ポリプロピレ ン 寸 法 LO似30 CFRC.
セ メ ン ト 早強 ボルト ラン ド 骨 材.
硅砂:シ弧 バ 幽一
ン=
3:1 (重量比) 分散 剤 メ チ ル セ ルロー
ス 炭 素緩 維 ピッチ 系 寸 法 14μロφκ16 表一
3 使 用 調 合 SFRC 材 令4週 (水 中)+気 中 乾 煥 重 量 (』z!。・) r Ψ Zs ユ c口 り!C 男 s!a 男 c 駈 SG f6kg 九 ゴ Eαlo5) kg〆c 酢 o19.
5 銘 謝 197655109940D2.
69 o.
5 田.
2 姻 428.
214 窟 眠 4082.
57 1.
D15.
8.
5030 脚 931644 柵 2.
沁 1,
5iB.
2 714942471051444 鰤 2.
57 2.
o16.
3 825282 醜 ll騙 2615U2.
51 PFRC 材令4週 (水 中)十気中乾 煙 重量 〔kz!国3).
FV 男 S ユ c口 wc 鑑 s !a 猶 c 冒 S6 fckg !c EαkOslk 匹!c が o17.
6 認 3941976551099 細 2.
66 0.
516.
5 45420210736 鏘23442.
75 1.
o15.
65052・
4462236227B63432,
47 L514.
7 6047223B9165323872,
56 2.
o20.
2 田 4962489895044492.
57 Vr:織維 体積率,
sl :スランフ’
,
fc:圧縮強度.
E:ヤング係数,
骨材は裏乾状箙 CFRC 材 令2避 (水 中)+ 気 中 乾 燃 Ur 茎 f1 皿 貿!C 瓢 S/C 男 分 散剤 〔xc)露 f。
kz!cm2E αLO5) kg/c o一 1
2B31.
21 Lo157 3151.
30 2.
o14160600.
252611.
田 3.
O124 283.
L26 fl:フロー
値,
骨材は絶乾状態(
関
5 糊 1500 10co 500 o 10co(
閣 δ 圖 に 瓢 O、
5 1噛
0 1.
5 塵裂口変位 〔mm) 図一
4(a) 荷 重一
き裂口変位曲線k
〈t・
=.
L.
一
_
.
t =:=一
’
:二:二 : :ニー一
PFRC 雛 体 積寧〔痔}幽
一
一
一
.
…
o o.
5一
一
t−−
1.
D−.
一・
−
1.
52.
o e 1500{
蟶〕
圓 1000 500 ’ F ’ D,
5 1.
Q 1.
5 き裂ロ変位 〔an) 図:
−
4(b) 荷 重一
き裂口変 位 曲線”一
’
噌
’
、
.
、
「
〆
.
丶
.
”
丶 z、
’ h /」
『
丶 丶、
’、
、
tm.
−t・
NXSr
丶 4 丶 CFRC 織 継 体積 串 (簿’
LL
.
.
.
一
・
・
o−一
曽
一
一
Lo−・
一・
尸 2.
0 3.
o o 0.
5 図一
一
4(c)9P
av=
2B
βW
aayW φ=
EJ
=
ayφ 1.
e 1.
5 きN口変 位〔rm} 荷重一
き裂口変位曲線.
∵…
7・
77
∵…
77・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
一・
(4}’
4 ) 以上の ステッ プを反 復す れ ば,
図一
3に.
示 すよう・
に 」 積分 と き裂 開口変 位との 関 係が得 ら れる の で,
結 合力σ はその曲線の こ う配, す な わ ちdJ
/d
φと して求 め られ る。
3
.
実 験 方 法 使 用 材 料およ び調 合にっ い て は表一
2,3に示すと おり一
SFRC 醗 体積 率 編〕
.
.
』
』
一
・
…
o−
o.
59
毳
駒農
4。 30 10 0 40萼
翫
器
貿 2e10 0竃
≧
40竈
塘 30 5 10 15 甞観開 口慶位 {XLor3c”) 図S (a) 結合 カー
き裂開口変位 関係 PFRC 繊維体磧 串 〔勁 o 5 10 15 20 き裂 開ロ蛮位CXIo’
3ca) 図一
5(b) 結合カー
き裂開口変位関 係 CFRC 協 椎体積串〔x)一
一
』
一
一
一
〇一
一一
一
一
1.
0 2Dt°
0 5 10 1S 20 臼裂圜 口蛮 位 〔XIO
’
3cm〕 図一
5(C} 結合カー
き裂開口変位関係 で あ る。 鋼繊維補強コ ンク リー
ト (以 下,SFRC
と称 する)および ポリプロ ピレ ン繊 維 補 強コンクリT ト(以 下,
PFRC と称 する〉につ いて は, 水セ メン ト比 を50
% と一
定に し, ス ラン プ= 18・cm を 目標に試 し練り に より調 合 を 定めた。
また,炭素繊 維 補 強コ ン ク リー
ト(以 下,CFRC
と 称 する)に 関し ては,
繊 維 体 積 率=2.0
% を基準に水セ メ ン ト比および砂セ メ ン ト比 を変 化さ せて, 打 設 可 能 な 軟 度の 範 囲,
こ こ で は フロー
値≡
130 mm 以上の う ち か ら最 も曲げ強 度の値が大きい調 合 を 選 定し た。
た だ し,
曲げ強 度 試 験は セ メン トの物 理 試 験 方 法JIS
R5201
に準 じ,
材 令は1週 (水 中 養 生 )とし た。
ま た,CFRC
の 混 練に は,
容 量30t
の オムニ ミキ サー
を使 用した。 破 壊 靱 性 試 験は,
寸法10
×10
×41
〕cm の ノッ チつ き は り (ノ ッ チ深さは 3cm )の 3 点曲げ (ス パ ン・
高さ 比=3
)で行い,
供試体は各シ リー
ズにつ い て3
個 ずっ 作 製 し,
材 令冨 4週 (た だ し,CFRC
につ い て は材 令=
2週)まで水中養生した後, 試 験 時まで気 中に放 置し た。
また, 荷 重 と, ノッチ肩口にナ イフエ ッジを介して 取 りつ け たク リッ プゲー
ジの変 位 (き裂口変 位 )との関 係は,X −Y
レコー
ダに よ り自動 記 録し た。
また, 本 解 析に必要なヤング係 数の値は,
φ10×20cm 円 柱 供 試 体 を 用いてコ ン プレッ ソメー
ター
に より計 測し た圧 縮 応 カー
ひ
ずみ関係か ら1
/3
割線係 数と して求め た、
,
4.
結果お よび考 察SFRC ,
PFRC
お よ びCFRC
に 関し て,
荷 重一
き裂 口変位 曲線 (測定値の平 均)を図一
4 (a),
(b
>,
(c)に, ま た本 手 法に よ り推 定され た結 合 カー
き裂 開口変 位 関 係 を図一
5(a),
(b
),
(c)にそれぞれ示す。
ま た,
繊 維 補 強 効果を表 示する た めに, プレー
ンマ ト リッ ク ス に対 する 」積 分の相 対 比の き裂 開口変 位の増 加に伴 う変 化 を図一
6(a),
(b
),
(c)に示すQ 特に図一
6か ら,
繊 維 素 材の違い に よ る繊 維 補 強 効 果 の差 異 をみることができる。 す なわち,
ヤング係 数がマ ト リックス のそ れ よ り も大きい鋼 繊 維お よ び炭 素 繊 維 (ヤン グ係数は と もに約 2 × 10fikg
/cm2)の場合に は, マ ト リックスに対す る繊維補 強 効果が 非 常に大き く,
ま た繊維 体 積 率が増 加す る ほ ど,
き裂開口変位の増加に伴 う繊維補強 効 果の増 大 も大きくなる こと, さらにき裂 開 口変 位の小さいう ちか ら繊 維 補 強 効 果が現れ ること が わ LO.
o 0 5 褄 騨 e 索 駆 b ゆ輳
”層
K へ 奏 罫 み レ 1.
0 SFRC 繊維体積4($]−
o.
5−1−一
一
1.
0−・
一・
−
1,
5 2.
o/
/
/
//
1/ ! /
L
_ _
_ _ o 5 10 1S き 裂 闥口変位 (XIO’
コcm) 図一
f(a) 繊維 補 強 効 果0 5 乞 L 鞍 靼 e 宍 ぬ 、 ゆ
輳
”膿
K へ 斜 島亠
い 1.
O 20。
0む
む 臥 “ 1
1 鞍 釋 e 中 嘱
騨
『 ゆ輳
”
闇
K へ h 急 亠 膨 5.
O Lo一
〇 5 1O IS き裂開 口変位 (XIO−
3cn〕 図一
6(b)繊維補 強効 果 CFRC.
! ’ ’ ’’
,
it
’
’
0 5 10 夏5 き 裂 開 口変位 (Xlor3cm ) 図一
6(c) 繊 維 補 強 効果 かる。 ま た,
マ「
トリックス に対す る繊 維の ヤング係 数の 比が大き く な る ほ ど,
す な わ ちSFRC
よ り もCFRC
の 方が (CFRC
の 場 合,
炭 素 繊 維 自 体の ヤン グ係 数は鋼 繊維とほとんど 変 わ らない もの の,
マ トリッ ク スが軽 量 モ ル.
タル である ために,
マ トリック ス の ヤン グ係 数はSFRC
の コ ン ク リー
トマ ト リッ ク ス の それ よ り も か な り小さい, 表一3
参照 ), その傾 向 が 顕 著 となっ ている。
一
方.
繊 維のヤン グ係 数がマ トリックス の そ れ よ り も小
さい ポ リプロ ピレ ン繊 維 (ヤン グ係 数は約 5× 10’
kg/cm2 )で は,
鋼 繊 維お よび炭 素 繊 維に比べ て繊 維 補 強 効 果は か な り劣り,
ま た合成繊維に特 有の鎖 状 分 子 構 造に起 因す る初 期の ゆ る みによっ て,
き裂開口変位が あ る程 度 大き く な る まで, 本 実 験で は約 4×10r3 cm , 繊 維 補 強 効 果が ほとんど現れ ない こと が わ か る。 ところで,
繊 維 補強 効 果 は繊 維 体 積 率が増 加 する ほど 大き くなるが,SFRC
お よびCFRC
の場 合に は, 前 者 につ いて繊 維 体 積 率が1.
5
% 以 上で,
後者につ い て は 2.
0%以 上で,
繊維補強効果の増 大 が 頭 打 ち とな っ てい る。
こ れ が繊維の分散の影響か, あ るいは本 質 的なもの か にっ い て は さ らに実 験 的 検 討 を積み重ね る 必要がある が,
仮に本 質 的な もの である と す れば,
次の よ う な理 由 が考え られる :繊 維体積率が増加す る と,
塑 性 拘 束と類 似の現 象に よ り繊維一
マ トリッ クス界面の付着応力が増 大す るの で限界 繊 維長 さ が減少し,
破 壊の様 相 も繊 維の 引き抜け か ら破断に移行す る た めに,
そ れに伴 う靱 性の 減少に よっ て,
繊維体積率の増 加に伴う靱性の増 大が相 殺 さ れ ることに な る。
も し そ うで あ れ ば,
繊 維 体 積 率の 大き い範囲 では, 繊維素材の引 張 強さも繊 維 補 強 効 果に 影 響 を及ぼ すことが 予想される。
5.
結 論 本 実 験の範 囲 内で次の ような知見が得られ た ;繊 維 素 材の特 性の うちヤング係 数がマ トリッ クス のそ れ よ り も 大きい ものと小さ い もの に大 別し て繊 維 補 強 効果の差異 を み る と,
前 者の方が後 者の場 合よりも繊 維補強 効 果は ずっ と大き く,
き裂 開口変 位の小 さい うちか ら補強効果 が現れ は じめる。 特に,
マ ト リックス に対す る 繊維のヤ ン グ係 数の比 が 大き く,
なる ほど, その傾 向が顕著と なる よ うに思わ れ る。・
また,
補 強 効 果の増 大 を示す繊維 体 積 率に は限 界 が あ り, その限 界 は 繊維素材の特 性や繊 維 長 さなどの因子に影 響され る の で はない かと思わ れ る。 こ れ に関して は, さ らに実 験 的検 討 を 行う 予定で あ る。 謝 辞 本 実 験を行うに当たっ て,
熊 本 大 学 大 学 院 生 浦 野登志 雄,
昭 和63年 度 熊 本 大 学卒論 生 後 藤 省一,
松 田 雄二,
熊本大学甲斐定夫 技官諸氏の協力をい ただき ま し た。
ま た,
三菱 化 成 (株 )か ら炭 素 繊 維の 提 供を受け ま し た。
こ こ に記して感謝
致し ま す。
参考 文 献工)
J,
P,
Romualdi,
G.
B.
Batson;Mechanics of CrackArrest in Concrete
,
Proc.
ASCE,
Vol.
89,
No.
EM3,
pp.
147−.
168,
1963.
6 2) 岸 谷 孝一,
村 上 聖,
平 居 孝 之 :コ ンクリー
トの破 壊 力 学に関 する研 究一
その 1 破 壊 過程域の損傷解析一,
日 本 建 築 学 会 構 造 系 論 文 報 告 集,
第368号,
pP.
11〜
17,
昭和6ユ年10月 3) 浦野登 志 雄,
村 上 聖,
三井 宜 之 :繊 維 補 強コ ン クリー
トの破 壊 靱 性に関す る研 究一
各種 繊 維に よる補 強 効 果一,
日本 建築 学会九州 支部 研究 報告 集,
pp.
101〜
104,
平 成 元 年3月5
SYNOPSIS
UDC:691.32:666.982
STUDY
ON
FRACTURE
MECHANICS
OF
FIBER
REINFORCED
CONCRETE
Part
1.
Effect
of reinforcernentby
variousfibers
by Dr.KIYOSHI MURAKAMI, Lectllrerof Kume.rnoto
sity, Dr,YOSHIYUKI MITSUL Professor of Kumameto Uniyersity,DT.KOICH] KISHETANI, Professorof
Nihon
University,Dr.TAKAYUKI HIRAI, ProfessorofOitayersity, TADATSUGUKAGE, GradttateStudent of
Kumamoto University,Members of A.I.
J.
Inthis study quantitativeanalyses of