空間補間による異種解像度センサデータの統合手法
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(2) Vol. 49. No. SIG 7(TOD 37). 空間補間による異種解像度センサデータの統合手法. 45. クが混在する場合には,どのセンサからデータを取得. 2.1 空間補間に基づくメッシュデータの生成 本研究では,アプリケーション側でのオーバレイ. するかという基準も明確ではない.異種センサネット. 処理に基づく異種データの統合を想定しているため,. ワーク環境においては,様々な解像度を要求するアプ. クエリ処理の結果としてメッシュデータを要求する.. リケーションに対応するため,センサネットワークの. アプリケーションが異なる種類ごとに同一のメッシュ. 空間解像度を考慮して,センサデータを検索・統合す. データを取得できれば,メッシュの構成要素であるセ. 稀である.ある領域に,密度の異なるセンサネットワー. るシステムが必要となる. 地理情報システム(Geographic Information Sys-. ルごとに数値の統合や比較が可能となる.GIS の分野 では,こうしたメッシュデータを,空間補間(Spatial. tems:GIS)の分野では,空間分析に関する様々な手 法が開発されており,異なる種類の空間データを分析・. Interpolation)を用いて生成することができる14) .空 間補間は,地理的に近接しているデータは関連性が高. 統合する方法として,オーバレイ手法14) がある.GIS. いという前提に基づいて,指定した地点の値を周辺の. のオーバレイ手法では,異なる種類のデータに対して,. データから推定する方法である.メッシュの構成要素. 同一のメッシュ構造を生成することで,対応するメッ. であるセルごとに,補間処理を行っていくことで,ク. シュのデータを重ね合わせることで,容易に比較した. エリ領域に対する補間結果としてメッシュデータが得. り,組み合わせたりすることが可能である.本研究で. られる.通常の GIS ソフトウェアでは,単一のデー. は,アプリケーションにおいて,GIS におけるオーバ. タソースからのデータを対象としているが,分散デー. レイ手法を用いて異種センサネットワークからの多様. タベースからのデータ取得を想定していない.また,. なデータを処理することを想定して,クエリに対して,. 分散データベースから補間に必要なすべてのデータ. 指定した解像度のメッシュデータを生成するための手. を取得し,アプリケーション側で集中的に処理する方. 法を提案する.. 法も考えられるが,通信コストやアプリケーションの. 本論文では,異なる解像度のセンサデータを統合す. 負荷の面で現実的ではない.空間補間に基づいてメッ. るための空間補間に基づく手法を提案する.本手法は,. シュデータを生成する場合には,前述のように,各セ. アプリケーションからのクエリに対して,複数のデー. ルごとに,補間処理を行うための周辺のセンサデータ. タベースシステム(以下,DB ピア)が連携して,統. を取得する必要があるため,該当する領域の多数のセ. 合処理を行う.各 DB ピアの管理する分布領域や空. ンサデータを取得しなければならないが,そうした大. 間解像度を考慮して,補間処理が行われ,アプリケー. 量のデータを用いて,空間補間のような高度な統合処. ションの指定した解像度のメッシュデータが生成され. 理を集中的に行う場合,アプリケーション側での統合. る.全体的な手順としては,まず各 DB ピアにおい. 処理コストが大きくなる可能性がある.特に,携帯端. て,クエリ領域と重なる部分のメッシュデータを作成. 末のような処理性能の高くないコンピュータ上のアプ. するための補間処理を行い,そのうえで,各 DB ピア. リケーションを想定した場合,アプリケーション側で. の補間結果を用いて,クエリ領域全体の補間処理を行. の高度な統合処理は適さないと考えられる.さらに,. い,クエリ領域全体のメッシュを生成する.本手法は,. 多数の分散データベースから,大量のセンサデータを. データ分布や解像度の異なるセンサネットワークが混. 受信する場合には,各データベースからのデータ転送. 在する環境においても,指定した解像度のセンサデー. コストが増大し,アプリケーション側でのデータ受信. タ(メッシュデータ)を生成し,アプリケーションに. コストも大きくなると考えられる.本研究では,イン. 提供することができる.. ターネット上に分散した複数のデータベースを連携さ. 本論文の構成は,以下のとおりである.2 章で,問 題点とアプローチについて説明する.3 章で,本シス テムの構成を述べ,検索・統合手法について説明する.. 4 章では,実験結果に基づいて提案手法の評価を行う. 5 章で,関連研究および今後の課題について述べ,最 後に,6 章で結論を述べる.. せて,クエリ領域に対する補間処理を実現する.. 2.2 分散データベースシステムによる空間補間処理 本研究では,データの種類,センサノードの設置範 囲およびデータの分布密度の異なるセンサネットワー クが混在する環境(「異種センサネットワーク環境」) を想定する.各センサネットワークごとに対応する DB. 2. 問題点とアプローチ. ピアが存在し,センサネットワークの構成要素である. 本章では,解決すべき問題点を明らかにし,我々の. に時系列として蓄積されていくものと仮定する.本論. アプローチについて説明する.. センサノードからの観測データが,対応する DB ピア 文では,オーバレイ処理のためのメッシュデータの生.
(3) 46. 情報処理学会論文誌:データベース. Mar. 2008. 成を目的とするため,単一種類のセンサデータを管理. アとも重ならない(つまり,データが存在しない)領. する複数の DB ピアが分散している環境を考え,特に,. 域が含まれるため,この領域のメッシュデータを生成. DB ピアおよびクエリの空間解像度に注目する.DB ピアの空間解像度はデータの分布密度と考え,クエリ に指定する空間解像度はメッシュデータの細かさを表. し,提供できることが望ましい.. すものとする.DB ピアの空間解像度は必ずしもアプ. 合手法を設計する.. リケーションの要求するものとは限らないため,クエ リに指定した地点や範囲にセンサデータが存在しない 場合や要求以上に細粒度のデータが提供されてしまう 場合もありうる.そこで,クエリのパラメータとして 空間解像度を導入し,分散データベースシステム側で 適切な粒度のメッシュデータを生成することができれ ば,アプリケーション側での効率的な処理が期待でき る.本論文では,空間解像度が指定されたクエリに対 して,各 DB ピアの管理する分布領域や空間解像度を 考慮して,センサデータを補間・統合する手法を提案 する. しかし,クエリ領域が単一の DB ピアの管理領域に 含まれている場合には,容易に補間処理を行うことが できるが,異種センサネットワーク環境においては, クエリ領域が複数の DB ピアの管理領域にまたがって いる場合や,クエリ領域の一部がどの DB ピアの管. 前述のような状況に対応するために,本論文では, 次の方針に基づいて,異種解像度のセンサデータの統. • 空間解像度に基づいてクエリをメッシュに分割し, そのメッシュに沿って空間補間処理を行い,クエ リ処理の結果としてメッシュデータを取得する. • 複数の DB ピアの管理領域がクエリ領域と交差 する場合,その中から適切な解像度の DB ピアの データを用いて補間処理を行う.. • クエリ領域が,どのピアとも交差しない領域を含 む場合,周辺の DB ピアの補間結果を利用して, その空白領域の補間処理を行う.. 3. 空間補間に基づく異種解像度センサデータ の統合手法 本章では,異種の解像度のセンサデータを統合する ための手法について説明する.. 3.1 構 成 要 素 前提とする環境の全体像を図 2 に,提案手法の構成. 理領域とも重なっていない場合など,様々な状況が発. 要素を表 1 に示す.DB ピア DBP は,単一種類のセ. 生しうる.たとえば,図 1 に示されるように,DB ピ. ンサノードから得られる観測データを管理する.本論. ア C は,クエリに指定された解像度と同一であるた. 文では,複数の DB ピアを構成要素とする分散データ. め,その交差領域については DB ピア C の保持する. ベースシステムを想定する.アプリケーションは,こ. データを返せばよいが,それに対して,DB ピア A と. の分散データベースシステムに対して,クエリ Q を. DB ピア B の解像度は異なるため,DB ピア A,B と. 要求し,複数の DBP が連携動作することで,クエリ. クエリ領域が交差する領域については解像度を調整す. 処理を行う.提案手法では,空間補間に基づいて統合. るための補間処理が必要である.クエリ領域に対して,. 処理を行うが,クエリに対して補間処理を行う DBP. 複数の DB ピアの領域が重なっている場合のデータ処. を DBPH ,全体を統合する DBP を DBPI ,クエ. 理も自明でないため,統合方法を考案する必要がある. さらに,図 1 では,クエリ領域の中に,どの DB ピ. 図 1 異なる解像度のセンサデータの補間 Fig. 1 Interpolation for sensor data with different resolutions.. 図 2 想定環境 Fig. 2 Overview of distributed database system..
(4) Vol. 49. No. SIG 7(TOD 37). 47. 空間補間による異種解像度センサデータの統合手法. 表 1 提案手法の構成要素 Table 1 Components of our proposed method. 構成要素. 説明. DBP Q DBPG DBPH DBPI. データベース(DB)ピア データベースに対する問合せ(クエリ) クエリを受け付ける任意の DBP クエリに対して補間処理を行う DBP 補間処理の制御と統合を行う DBP. 表 3 クエリのパラメータ Table 3 Parameters of a query. パラメータ ˆ A(Q) ˆ (Q) DT TˆI(Q). dW Rˆs (Q). 説明 クエリの指定する矩形領域 データの種類 時系列を要求するための時区間 メッシュ幅(セルのサイズ) 空間解像度. 表 2 DB ピア(DBP )の属性情報 Table 2 Attributes of each database peer (DBP ). 記号. 説明. A(DBPi ) DT (DBPi ) Rs (DBPi ) P L(DBPi ) SL(DBPi ). DBPi の管理するセンサデータの分布領域 DBPi の管理するセンサデータの種類 管理領域に分布するセンサデータの空間解像度 他の DBP の属性情報を管理するリスト 自身が管理するセンサノードの情報を 保持するリスト. リを受け付けた DBP を DBPG と呼ぶ. 各 DBPi は,センサデータを管理するだけでなく, センサデータの分布範囲および分布密度(空間解像度) などの属性情報を保持する.表 2 に,DBP の属性情 報を示す.. 図 3 全体の処理の流れ Fig. 3 Processing flow of our proposed method.. 本手法において,最小構成要素であるセンサノード は属性情報として,データの種類,センサの位置情報,. シュの各セルの大きさ(メッシュ幅)をクエリに指定. センシング時間間隔を保持する.センサの位置情報は,. する.各セルの縦横のメッシュ幅をともに dW とす. 2 次元座標 (x, y) で表現する.これらの各センサノー ドに関する情報は,リスト SL(DBPi ) に保持する.. るとき,各セルの面積は,dW × dW で表現できるた め,クエリの要求する空間解像度 Rˆs (Q) は,式 (2). A(DBPi ) は,DBPi の管理するすべてのセンサノード. で計算される.. の位置を含む最小包囲矩形として定義する.Rs (DBPi ) は,空間密度を表すように,単位面積あたりのセンサ ノードの数として表現する.DBPi が保持するセンサ. Rˆs (Q) =. 1 dW 2. (2). 3.2 異種解像度センサデータの統合手法. ノードの数を Ni ,管理領域の面積を |A(DBPi )| と. 提案手法の全体的な処理の流れを,図 3 に示す.. すると,Rs (DBPi ) は式 (1) で計算される.. 図 3 に示すように,アプリケーションは,クエリ Q. Rs (DBPi ) =. Ni |A(DBPi )|. (1). を分散データベースシステムの構成要素である任意 の DB ピア DBPG に送信する.DBPG は,(a) 基準. DBPi は,他のすべての DBPj (i = j )の属性情 報 pej = A(DBPj ), DT (DBPj ), Rs (DBPj ) をリ スト P L(DBPi ) の中に保持する.すなわち,各 DB. メッシュを生成し,(b) 統合 DB ピア DBPI を選択し,. ピアは,互いの属性情報を知っていることとする. ˆ は 表 3 に,クエリ Q のパラメータを示す.A(Q). 補間処理を要求する.各 DBPH は,(c) 空間補間処理. ˆ (Q) は表 2 の DB ピアの属性 矩形領域で表現し,DT 情報 DT (DBPi ) と同様に表記する.TˆI(Q) は,時 区間 [ts , te ] で表現する.本手法において,アプリケー. Q を DBPI に転送する.DBPI は,クエリ領域と重 なる複数の DB ピア DBPH を選択し,各 DBPH に を実行し,その処理結果を DBPI に返す.DBPI は, 各 DBPH から補間結果を受信し,(d) 補間・統合処 理を行い,最終的な結果としてメッシュデータを返す. 以下,本手法における重要な手順 (a),(b),(c),(d). ションはメッシュデータを要求する.メッシュの構成要. について,まず,基本概念を説明する.. 素であるセルの中心点に対する値が計算され,結果と. (a) 基準メッシュの生成. して,格子状に均一分布したデータが返される.この. DBPG は,クエリに指定された領域と空間解像度. メッシュの細かさを空間解像度ととらえて,要求メッ. に基づいて,メッシュ状のデータ構造(基準メッ.
(5) 48. 情報処理学会論文誌:データベース. 図 4 クエリ領域と DB ピア領域の例 Fig. 4 Query region and regions of DB peers.. Mar. 2008. 図 6 クエリ領域の補間 Fig. 6 Mesh integration for query region.. 本手法においては,次の手順 ( c ) において,最も 多く補間処理を行う(すなわち,補間すべきセル を最も多く含む)DB ピアを DBPI として選択 するものとする.DBPG は,P L(DBPG ) を参照 し,他の DB ピアの属性情報(領域,解像度)に 基づいて,DBPI の選択を行う.図 6 において, 灰色の部分は,クエリ領域と DB ピアの領域が重 なっている領域であり,この場合,各 DB ピアは, 図 5 基準メッシュの生成 Fig. 5 Generating mesh structure for spatial interpolation.. それぞれ重なっている領域に含まれるセルの補間 処理を割り当てられる.この例では,DBP1 が最 も多くのセルを割り当てられるため,統合 DB ピ アとして選択される.選択された DBPI は,手. シュ)を生成する.本手法では,検索結果として. 順 ( c ) で,自分の担当領域の補間処理も行うが,. メッシュデータを返すが,メッシュの構成要素で. 手順 ( d ) に示すように,統合処理を行うために,. ある各セルに対して空間補間処理が必要となる.. 他の DB ピアの補間結果を受信する.したがって,. DB ピアにおける空間補間処理は,この基準メッ シュに沿って行われ,各セルに対する補間処理が, いずれかの DB ピアに割り当てられることにな. 外に存在する場合,その DB ピアからのデータ転 送コストが大きくなるだけでなく,その DB ピア. る.基準メッシュに従って補間処理を行うことで,. での補間処理も大きくなるため,全体として応答. クエリ領域と重なる複数の DB ピアの解像度を. 時間が長くなる可能性がある.それに対して,補. 調整し,仮想的に,均一なデータ分布を生成す. 間処理の多い DB ピアが DBPI として選択され. ることができる.ここで,図 4 のような,クエ ˆ と複数の DB ピア領域 A(DBP1 ), リ領域 A(Q). 較的小さくなり,応答時間を短くできる可能性が. もし仮に,補間処理の多い DB ピアが DBPI 以. れば,他の DB ピアからの転送データサイズが比. A(DBP2 ),A(DBP3 ) を想定する.図 4 の +, × の記号は,センサノードを示し,各 DB ピア. ある.. のセンサノードの密度(すなわち,解像度)は異. が,図 7 では,互いの DB ピアの領域が重なり. なっている.図 4 に対しては,たとえば,図 5 の ˆ ような基準メッシュが生成され,A(Q) に含まれ. 合っており,図中の濃い色の部分は,2 つ以上の. るセルの補間処理は,いずれかの DB ピアによっ て実行される.. (b) 統合 DB ピアの選択 DBPG は,基準メッシュを生成した後に,統合. 図 6 では,DB ピアの管理領域が重なっていない. DB ピアの領域が重なっている.このように DB ピアの管理領域が重複するような場合には,その DB ピアの境界領域によって,クエリ領域が複数 の部分領域に分割され,それらの各分割領域は, 補間対象となる複数のセルと関連づけられるため,. DB ピア DBPI を選択する.DBPI は,本手法. この分割領域を単位として,補間処理を行う DB. において中心的な役割を果たす DB ピアである.. ピアを割り当てることができる.各分割領域に対.
(6) Vol. 49. No. SIG 7(TOD 37). 空間補間による異種解像度センサデータの統合手法. 49. アのデータを偏りなく利用することが期待できる. 次に,(a) 基準メッシュの生成,(b) 統合 DB ピア の選択については 3.2.1 項で,(c) 各 DB ピアにおけ る空間補間処理については 3.2.2 項で,(d) 統合 DB ピアにおける補間・統合処理については 3.2.3 項で, 詳細なアルゴリズムについて説明する.. 3.2.1 メッシュの生成と統合 DB ピアの選択 図 7 DB ピアが重なり合う場合の分割領域の割当て Fig. 7 Allocating partitioned regions to overlapped DB peers.. して,複数の DB ピアが重なっている場合には,. クエリ Q を受信した DB ピア DBPG は,クエリ ˆ に対して,拡大クエリ領域 L(Q)(L(Q) ⊇ 領域 A(Q). ˆ A(Q) )を定義し,指定されたメッシュ幅 dW に基づ いて,L(Q) をメッシュに分割する(図 5).L(Q) に ˆ の左下端点を基準 対して,図 5 に示すように,A(Q) としたメッシュを生成する.メッシュの構成要素をセ. それらの DB ピアの解像度とクエリの解像度を. ル c とするとき,c の縦横の幅がそれぞれ dW とな. 比較することによって適切な DB ピアの選択を行. る.こうして作成された基準メッシュに従って,複数. う.各分割領域に対して,補間処理を行う DB ピ. の DB ピアにおいて補間・統合処理が行われ,結果と. アが割り当てられれば,どの DB ピアが最も多く. して,メッシュの構成要素である各セルごとに補間結. 補間処理を行うか分かるため,図 6 の場合と同様. 果が割り当てられる.. に,DBPI を選出することができる.. (c) 各 DB ピアにおける空間補間処理. 拡大クエリ領域 L(Q) は,各 DB ピアの管理領域. A(DBPk ) の境界によって,複数の領域に分割される.. 各 DB ピア DBPH は,割り当てられた分割領域. ここで,いずれかの A(DBPk ) と重なる分割領域を. に対して,基準メッシュに沿った補間処理を行う.. ap,i ,どの A(DBPk ) とも重ならない分割領域を ab,j. 分割領域と関連づけられるセルごとに,その DB. と定義する.また,それぞれの総数を Np ,Nb とする.. ピアが管理するデータのうち,そのセルの周辺の. ap,i ,ab,j については,以下の関係が成り立っている. ∀i ap,i ⊆ L(Q) (1 ≤ i ≤ Np ) (3). データを利用して,空間補間処理を行う.これに より,クエリ領域の中で,いずれかの DB ピアが 重複する領域については,指定された空間解像度 のメッシュデータが生成される.たとえば,図 6 の例では,図中の丸点の部分が各 DBPH によっ て補間されるセルとなる.. (d) 統合 DB ピアにおける補間・統合処理 DBPI は,複数の DBPH の補間結果を受信し, それらの補間結果を利用して,どの DB ピアとも 重ならない領域(空白領域)の補間処理を行う. 図 6 では,△印の部分が空白領域に含まれてい るため,周辺の補間結果を用いて補間処理が行わ れることになる.A(DBP2 ) と A(DBP3 ) の間 の空白領域の補間処理を行う際,図 4 に示され. ∀ i ∃ k ap,i ⊆ A(DBPk ) ∀j ab,j ⊆ L(Q) (1 ≤ j ≤ Nb ). (4) (5). ∀ j ∀ l ab,j ∩ A(DBPl ) = φ. (6). ここで,ap,i の集合を RL,担当領域の割当てに利 用する作業用リストを OL,最終的に,各 DBPk に割 り当てられる分割領域のリストを AL(DBPk ) とする.. NP L ,NOL は,リスト P L(DBPG ),OL の要素数と する.H high は,クエリの解像度 Rˆs (Q) より高い解像 度の DB ピアの集合,H low は,Rˆs (Q) より低い解像 度の DB ピアの集合とする.Nhigh ,Nlow は,それぞ ˆ に,ど れ H high ,H low の要素数を示す.なお,A(Q) のピア領域とも包含されない空白領域が存在しない場 ˆ とする. 合には,領域拡大を行わずに,L(Q) = A(Q). るセンサデータ分布を考えると,その周辺には,. 図 8,図 9 に,DBPG による DBPI の選択手順. A(DBP2 ) に含まれるデータが多く存在するため, A(DBP2 ) のデータの値の影響が強いと考えられ る.一方,図 6 に示されるように,各 DBPH に. を示す.まず,L3∼L6 で,初期化処理を行う.次に,. L7∼L16 で,補間ピア DBPH の分類とソートを行 う.DBPG の管理する DB ピアリスト P L(DBPG ). よって補間結果が生成されれば,A(DBP2 ) の領域. から要素 pei を取り出し,A(DBPi ) が L(Q) と重. のデータ分布は低解像度に,A(DBP3 ) の領域の. なっているものを対象として,Rˆs (Q) より解像度の. データ分布は高解像度に変換され,全体として解. 高いものがあれば,Rs (DBPi ) の値の小さいものか. 像度が調整された状態になるため,周辺の DB ピ. ら順番に H high に挿入する(L10∼L11).Rs (DBP ).
(7) 50. 情報処理学会論文誌:データベース. Mar. 2008. L1 : function select integration peer() L2 : begin. L1 : function decide integration peer() L2 : begin. L3 : for i = 1, . . . , Np { L4 : OL ← ap,i ∈ RL //OL に追加. L3 : size = 0 //面積の値を格納する変数 L4 : for i = 1, 2, . . . , NP L {. L5 : } ˆ L6 : 空白領域が存在しない場合,L(Q) = A(Q) と する. L5 : L6 : L7 :. L7 : for i = 1, . . . , NP L { L8 : pei ∈ P L(DBPG ). L8 : L9 :. L9 : if A(DBPi ) ∩ L(Q) = φ { L10: if Rs (DBPi ) ≥ Rˆs (Q) { L11: pei をソートしながら H high に挿入. L10: } L11: } L12: }. }else{ pei をソートしながら H low に挿入. L13: end. L12: L13:. り,いずれかの DB ピアと重なる分割領域 ap,j は,ク エリに指定した解像度 Rˆs (Q) より高い DB ピアが複. L17: for i = 1, . . . , Nhigh { L18: H high から pei を取り出す ˆ L19: region = A(DBPH,i ) ∩ Q(A). り当てられる.また,解像度が高いものがなく,解像 度が低いものが複数あった場合は,その中で,最も高 い解像度の DB ピアに割り当てられることになる.最. ap,j ∈ OL if region ∩ ap,j = φ {. L24: L25: L26: L27: L28:. 数ある場合,その中で最も低い解像度の DB ピアに割. if region = φ { for j = 1, . . . , NOL {. L22: L23:. DBPH,i を DBPI とする size = size i. 図 9 DBPI の決定 Fig. 9 Procedure for deciding DBPI .. L14: } L15: } L16: }. L20: L21:. if AL(DBPH,i ) = φ { size i = Σj=1 |ap,j | if size ≤ size i {. 後に,図 9 に示す手順で,decide integration peer() で DBPI を決定する.. ap,j を AL(DBPH,i ) に挿入 remove(ap,j , OL) // OL から削除 if OL == φ then go to L35. 本手法では,前述したように,最も多く補間処 理 を 行 う DB ピ ア を ,DBPI と し て 選 択 す る .. decide integration peer()(図 9)では,P L(DBPG ). } }. の要素である各 DBPH,i に割り当てられた分割領域 の面積の総和 size i が最も大きいものを DBPI とし. L29: } L30: }. て選出する.. 3.2.2 解像度調整のための DB ピアによる補間 DBPI は,DBPG からクエリ Q を受信し,図 8 の. L31: for i = 1, . . . , Nlow { L32: H low から pei を取り出す L33: H high の場合と同様の手順で処理. L3∼L34 と同様の手順で,拡大クエリ領域 L(Q) と 重なる各 DB ピア DBPH,i に対する担当領域リスト. L34: } L35: call decide integration peer(). AL(DBPH,i ) を計算する.DBPI は,自分に割り当 てられた領域に対して,自身で空間補間処理を行い, 自分以外の DB ピアに割り当てられた領域リストに対. L36: end 図 8 DBPG における DBPI の選択手順 Fig. 8 Procedure for selecting DBPI .. しては,領域を割り当てられた DB ピア DBPH,i に それぞれ領域リスト AL(DBPH,i ) を送信する.. AL(DBPH,i ) を受信した DBPH,i は,割り当て および Rˆs (Q) は,それぞれ式 (1),(2) より計算する. Rˆs (Q) より解像度が低い場合には,Rs (DBPi ) の値. られた領域に対して空間補間処理を行い,その結果を. の高いものから順番に H low に挿入する(L12∼L13) .. シュを構成するセルの総数を Nc ,領域リストの要素. L17∼L30 で,H high の各要素に対して,分割領域 ap,j. 数を NAL とする.各 DBPH,i での空間補間処理は,. low. high. DBPI に返答する.セル ck の中心点を pos(ck ),メッ. の場. 図 10 のように行われる.セルの中心点が割り当てら. 合と同様に,分割領域 ap,j を割り当てる.これによ. れた分割領域 ap,j に含まれる場合に,その中心点の値. を割り当てる.H. の要素についても,H.
(8) Vol. 49. No. SIG 7(TOD 37). 空間補間による異種解像度センサデータの統合手法. L1 : function exec spatial interpolation() L2 : begin L3 : for j = 1, 2, . . . , NAL { L4 : AL(DBPH,i ) から ap,j を取り出す L5 : L6 : L7 :. for k = 1, 2, . . . , Nc { if pos(ck ) ⊆ ap,j { call exec idw(pos(ck )) // IDW を実行. L8 : L9 :. } }. L10: } L11: end 図 10 DBPH,i における空間補間処理 Fig. 10 Procedure for spatial interpolation at DBPH,i .. 51. 表 4 シミュレーション環境 Table 4 Specification of simulation environment.. CPU Memory OS. Intel Core2Duo 6600 (2.4 GHz) 3.5 GB Windows Vista Ultimate Edition. 4.1 シミュレーション手法 システムの評価を行うため,1 台のコンピュータを 用いてシミュレーション実験を行った.実験に用いた コンピュータの性能を表 4 に示す. 各 DB ピア(DBPG ,DBPI ,DBPi )の通信以外の 部分を実装し,各処理にかかる時間を計測した.図 11 に示すように,通信時間を仮定して,アプリケーショ ンがクエリを送信してから,統合処理を終了するまで の時間を応答時間として算出した.. を IDW(付録 A.1 参照)に基づいて計算する.IDW. 本章では,提案手法を「分散補間法」,比較対象を. では,指定した点の補間処理に周辺の sample num 個. 「単純統合法」と呼ぶ.単純統合法は,解像度を考慮せ. の点データを必要とするが,A(DBPH,i ) 内の点デー. ずに DB ピアの領域の判定のみを行い,センサデータ. タのみを利用する.. の統合をアプリケーション側で処理する手法である.. 以上のような各 DB ピアにおける補間処理の結果,. 図 11 の下部に分散補間法の測定時間,上部に比較対. 拡大クエリ領域の空白領域以外の部分については,指. 象である単純統合法の測定時間を示す.. 定したメッシュ幅のメッシュデータが生成される.もし ˆ 空白領域が存在しない場合(すなわち,L(Q) = A(Q). ケーション内で指定した解像度で統合処理(T4 )を行. 単純統合法では,収集したデータに基づいて,アプリ. の場合)には,この時点で,クエリ領域に対応したメッ. う.分散補間法では,DBPG における DBPI 決定処. シュデータが生成されているため,最終結果として各. ,DBPI における領域分割処理(T6 ) ,DBPI , 理(T5 ). DBPH,i から得られた補間結果をアプリケーションに. DBPi における補間処理(T7 ,T8 ,T9 ),DBPI に. 返答する.. おける統合処理(T10 )を実装し,各処理時間を計測. 3.2.3 統合 DB ピアによるクエリ領域の完全補間. した.. 3.2.2 項の処理により,分割領域リストを割り当てら. DB ピア間で転送されるクエリは XML で記述し, DB ピアはクエリを受信すると,そのクエリの要求 を判断し,各処理を行う.同様に,クエリ処理結果も. れた DBPH,i からは,分割領域(ap,j ⊆ L(Q))に対す る空間補間処理の結果が返される.クエリ領域の中に, ˆ どの DB ピアとも重ならない空白領域(ab,k ⊆ A(Q) ) が存在する場合には,各 DB ピアの補間結果を利用し. XML で記述する.そして,すべてのデータが指定し た帯域幅で損失なく送受信されるものとし,その通信. て,空白領域に対する補間処理を行い,その統合結果. 帯域と XML のファイルサイズから通信時間を計算し. をアプリケーションに返答する.. た.なお,本実験では,各 DB ピアは,PostgreSQL. 具体的には,セル cl の中心点 pos(cl ) が空白領 の値を補間する.このとき,3.2.2 項では,補間処理. 8.1,PostGIS 1.2,Java SE5 上で動作し,センサデー タはあらかじめ蓄積されているものと想定している. センサデータの管理のために,PostgreSQL を利用し,. に利用する点データの範囲を各ピア領域に制限してい. 分割領域の表現や領域の交差判定などを行うために. たが,ここでは,複数の DB ピアの補間結果を利用. PostGIS モジュールを利用している.. 域 ab,k に含まれるとき,IDW に基づいて,pos(cl ). する.この補間結果を用いた空白領域の補間により,. 評価に用いる各 DB ピアのセンサデータは,気象. クエリ領域に対して,指定したメッシュ幅のメッシュ. (気象 データ CD-ROM「アメダス観測年報 2000 年」. データが生成される.. 庁提供,気象業務支援センター発行)に収録されてい. 4. 実装と評価. るデータより,想定する DB ピアの解像度と管理領域. 本章では,DB ピアのプロトタイプ実装に基づくシ. 成した.各実験におけるピアの解像度と管理領域につ. ミュレーションによる評価について述べる.. に合わせて,IDW 法に基づいてメッシュデータを作 いては,4.2 節で述べる..
(9) 52. 情報処理学会論文誌:データベース. Mar. 2008. 図 11 測定時間 Fig. 11 Time measurement.. 図 12 想定 DB ピア環境 Type I Fig. 12 Assumed environment: Type I.. 図 13 想定 DB ピア環境 Type II Fig. 13 Assumed environment: Type II.. 本論文においては,各 DB ピアのセンサデータ分布 を作成する際および,分散補間法,単純統合法におい て IDW 法による補間を行う際に利用するサンプル数 sample num を 8 として実験した.. 4.2 想定 DB ピア環境 解像度の異なる複数の DB ピアが異なる配置関係と なる 3 種類の関係について評価する. 図 12,図 13,図 14 に,実験で想定する DB ピア 環境を示す.各図の矩形は各 DB ピアの管理領域を表 し,点線の矩形はクエリ領域を表す.本実験では,各 DB ピアは,均一に分布するセンサノードからのデー タを管理するものとし,凡例(100 m,250 m,500 m など)は,各 DB ピアにおいて,センサノードの分布. 図 14 想定 DB ピア環境 Type III Fig. 14 Assumed environment: Type III..
(10) Vol. 49. No. SIG 7(TOD 37). 空間補間による異種解像度センサデータの統合手法. 図 15 拡大率と補間に使用されたデータ数 Fig. 15 Expand rate and used data count.. 53. 図 16 Type I,帯域幅 1 kbps における応答時間 Fig. 16 Response time on Type I (bandwidth = 1 kbps).. する間隔を示している.. Type I(図 12)は,広範囲の管理領域を持つが,セ ンサの密度が低い DB ピアに加え,それより狭いが, センサの密度が高い DB ピアが存在する環境で問合 せがなされる場合とする.Type II(図 13)は,クエ リ領域の中に管理領域が重なっている複数の DB ピア が存在しているが,いずれの DB ピアの管理領域にも なっていない問合せ領域がある場合とする.Type III (図 14)では,いずれの DB ピアも重なっていない状 態において,問合せが行われる場合を想定する.. 図 17 Type I,帯域幅 10 kbps における応答時間 Fig. 17 Response time on Type I (bandwidth = 10 kbps).. 4.3 予 備 実 験 分散補間法では,いずれの DB ピアの管理領域にも 含まれていない空白領域の補間処理を行うために,ク ˆ に対して,拡大クエリ領域 L(Q) を定 エリ領域 A(Q) 義し,その範囲のデータを要求する.ここでは,L(Q) ˆ を,A(Q) に対して,どの程度拡大するかを決定する. ˆ ための予備実験を行う.A(Q) および L(Q) の辺の長 さを,それぞれ WA ,WL とするとき,拡大率 dL を 式 (7) で計算する.. dL =. WL WA. (7). 図 18 Type I,帯域幅 100 kbps における応答時間 Fig. 18 Response time on Type I (bandwidth = 100 kbps).. なお,縦横どちらの辺も同じ割合で拡大するものと する. 予備実験は,Type III(図 14)の DB ピア配置に. 4.4 本 実 験. 間で 0.1 刻みに変化させ,どの DB ピアの管理領域に. Type I,Type II,Type III の各環境において, dW = 100 m,200 m,300 m,400 m,500 m,750 m, 1000 m,1500 m,2000 m の 9 通りのクエリ解像度で. も含まれていない領域に対する補間処理(IDW)に. の問合せを行い,アプリケーションがクエリを送信し. 利用するデータの総数を比較した.異なるメッシュ幅. てからすべての統合処理を終了するまでの応答時間を. dW = 100 m,500 m,1000 m,1500 m,2000 m に 対する実験の結果を,図 15 に示す. 図 15 に示されるように,すべてのメッシュ幅につい. 比較した.. おいて,クエリ領域の辺の拡大率 dL を 1.0∼3.0 の. Type I における異なる帯域幅(1 kbps, 10 kbps, 100 kbps)に対する応答時間のグラフを,それぞれ. て,領域拡大率が 1.8 以下のときは,補間に利用する. 図 16,図 17,図 18 に示す.さらに,Type II に対. サンプルデータの総数にばらつきが見られるが,拡大. する応答時間のグラフを,図 19,図 20,図 21 に,. 率が 1.8 を超えるとサンプル数が一定になることが分. Type III に対する応答時間のグラフを,図 22,図 23,. かった.そこで,dL = 1.8 として以降の実験を行った.. 図 24 に示す..
(11) 54. 情報処理学会論文誌:データベース. Mar. 2008. 図 19 Type II,帯域幅 1 kbps における応答時間 Fig. 19 Response time on Type II (bandwidth = 1 kbps).. 図 22 Type III,帯域幅 1 kbps における応答時間 Fig. 22 Response time on Type III (bandwidth = 1 kbps).. 図 20 Type II,帯域幅 10 kbps における応答時間 Fig. 20 Response time on Type II (bandwidth = 10 kbps).. 図 23 Type III,帯域幅 10 kbps における応答時間 Fig. 23 Response time on Type III (bandwidth = 10 kbps).. 図 21 Type II,帯域幅 100 kbps における応答時間 Fig. 21 Response time on Type II (bandwidth = 100 kbps).. 図 24 Type III,帯域幅 100 kbps における応答時間 Fig. 24 Response time on Type III (bandwidth = 100 kbps).. Type I(図 12)の環境では,図 16,図 17,図 18. また,分散補間法では,クエリ領域に含まれる DB ピ. に示されるように,帯域幅が 100 kbps のときは,分. アの数が多いほど,高速化が期待できる.重なり合っ. 散補間法と単純統合法にほとんど差はないが,帯域幅. ている DB ピアが多い場合には,各分割領域の補間処. が狭くなるにつれて,単純統合法の応答時間が大きく. 理が,いずれか 1 つのピアに割り当てられるため,効. なり,その差が広がる傾向がある.Type I の場合,ク. 率的であると考えられる.ただし,図 16 では,要求. エリ領域は,いずれの DB ピアの領域とも重なってい. メッシュ幅が非常に小さく(すなわち,解像度が高く). るため,分散補間法で,クエリ領域の拡大は必要ない.. なると,分散補間法の応答時間が,単純統合法より若. そのため,図 11 の統合処理部分(T10 )において統. 干大きくなる場合が見受けられる.これは,単純統合. 合処理は行われず,すべての補間処理は各 DB ピアで. 法では,各 DB ピアから転送されるデータサイズは,. 分散して行われる.それに対して,単純統合法では,. 各 DB ピアで補間処理を行わないため,要求メッシュ. アプリケーションですべての補間・統合処理(図 11. 幅にかかわらず一定であるのに対し,分散補間法の場. の T4 )を行うため,複数の DB ピアによる分散処理の. 合では,要求メッシュ幅が小さくなると,各 DB ピア. 結果,分散補間法の応答時間が短くなると考えられる.. で高解像度の補間処理が行われるため,統合 DB ピア.
(12) Vol. 49. No. SIG 7(TOD 37). 空間補間による異種解像度センサデータの統合手法. 55. からアプリケーションに送信されるデータサイズが大. と,100 kbps のグラフの応答時間の差は,帯域の変. きくなり,図 16 のように通信帯域が十分でない場合. 化による影響を示しているが,変化しない部分は,単. には,分散補間法の応答時間が単純統合法よりも長く. 純統合法におけるアプリケーション側での統合処理時. なってしまう.. 間に対応しており,この統合処理の時間は,動作コン. 狭い領域に対するクエリの場合は,そのクエリ領域. ピュータの処理性能に大きく依存すると考えられる.. が,ある 1 つのピアに含まれる場合もあると考えられ. また,本実験において,要求メッシュ幅が 100 (m) の. るが,実際には,クエリ領域が複数のピア領域にまた. 場合は,クエリ領域の一辺が 5000 (m) であることか. がる場合や,空白領域を含む場合もあると考えられる.. ら,50 × 50 のメッシュに対して補間処理を行うこと. Type II(図 19,図 20,図 21),Type III(図 22,. になるが,携帯端末のような小型のコンピュータにお. 図 23,図 24)では,Type I とは異なり,空白領域. いて,検索(補間)結果であるメッシュデータを閲覧. が存在するため,クエリ領域を拡大し,Type I の場. することを考えると,より大きい要求メッシュ幅(す. 合より広い領域の補間処理が必要とされる.Type II,. なわち,より低解像度)のクエリでも十分であると考. Type III の場合は,要求メッシュ幅が大きい(すなわ ち,解像度が低い)場合には,単純統合法より分散補 間法の方が応答時間が短いが,要求メッシュ幅が小さ. えられる.以上のことから,アプリケーションにおけ. くなる(すなわち,解像度が高い)と,単純統合法が 優位になる傾向が見られる.Type II,Type III の場. る処理能力やユーザの要求する解像度を想定すると, 提案手法は十分有効であると考えられる.. 5. 関連研究および今後の課題. 合は,分散補間法では,空白領域の補間処理が必要と. センサデータベースに関する研究は,大きく 2 つに. なるため,要求メッシュ幅が小さいほど,図 11 の統. 分けることができる.1 つは,ネットワーク内問合せ処. 合処理の時間(T10 )が大きくなる.さらに,この補間. 理(in-network query processing),もう 1 つは,ス. 処理には,各 DB ピアの補間結果が必要であり,要求. トリームデータ処理(stream data processing)であ. メッシュ幅が小さいほど,各 DB ピアから統合ピアに. る8) .ネットワーク内問合せ処理では,バッテリの寿命. 転送される補間結果のデータサイズ,および,統合ピ. や通信帯域などの物理的な制約の中で,センサネット. アからアプリケーションに転送される最終的な補間・. ワーク内でのデータ収集やデータ集約(aggregation). 統合結果のデータサイズが大きくなるため,通信コス. のための問合せを効率的に処理するための様々な手法. トの占める割合が大きくなり,図 19,図 20,図 21,. が提案されている9),10) .ストリーム処理に関する研. 図 22,図 23,図 24 のような結果が得られると考え. 究では,データソースから時々刻々と到着するデータ. られる.. に対して,統計処理,結合演算,マイニングのための. 全体を通して,解像度が低い場合は,帯域幅が狭く. たくさんの手法が提案されている20)–22) .ネットワー. なるにつれて,分散補間法の応答時間が単純統合法よ. ク内問合せ処理に関する研究は,結合演算や単純な集. り短く,分散補間法が有効であることがグラフより示. 約処理(最小値,最大値,平均など)を対象としたも. されている.解像度が低い場合には,分散補間法は帯. の19) から,近年,点的なセンサデータ分布から等高. 域幅の変化に影響されないが,単純統合法は,各 DB. 線や連続的な面分布を計算するなど,より高度な処理. ピアからアプリケーションへのデータ転送時間が大き. を対象とした研究へと進んでいる11),24) .ニッテルら. くなるため,帯域幅が狭いほど応答時間が長くなる傾. の研究11) では,地理情報システム(GIS: Geographic. 向がある.一方で,解像度が高くなると(たとえば,要. Information System)の空間補間処理をセンサネット. 求メッシュ幅が 100 m の場合),Type II と Type-III. ワーク内で実行するための手法を提案しているが,地. の環境においては,分散補間法の応答時間が単純統. 理情報システムとセンサネットワーク・データベース. 合法より長くなり,帯域幅が狭いほど,その傾向は強. の分野横断的な研究領域として,地理センサネット. い.ただし,実験環境では,単純統合法におけるアプ. ワーク(Geo-sensor network)23) に関する研究も行わ. リケーションの統合処理部も,分散補間法における各. れている.これらの研究では,センサノード単位で処. DB ピアの処理部も,同一コンピュータ上で実行し,. 理が行われているのに対し,我々の提案手法では,セ. その処理時間を計測しており,携帯端末のような処理. ンサノードからデータを収集したデータベース管理シ. 性能の低いコンピュータ上でアプリケーションを動作. ステム群によって「ネットワーク内問合せ処理」が行. させることを考えると,単純統合法の応答時間は,よ. われる点が異なる.白石らは,異種センサネットワー. り長くなる可能性がある.1 kbps,10 kbps のグラフ. ク環境を想定したセンサデータの検索・統合手法を提.
(13) 56. 情報処理学会論文誌:データベース. Mar. 2008. 案した12),13) が,本提案と異なり,アプリケーション. 十分適用領域は広いと考えている.たとえば,アメダ. が存在するクライアント側でのデータ統合を対象とし. スのような広域にわたる気象センシングのためのセン. ている.. サネットワーク4) と,都市内の局所的な細粒度のセン. 近年では,こうした高度な問合せ処理を対象とした 研究以外にも,センサデータの不確実性を考慮した 16),17),29),30). サネットワーク3) では,同種のセンサデータを測定し ていても,そのセンサ密度は大きく異なっている.. ,センサデータの蓄積に着目した研. そのほか,提案手法の問題点として,アプリケーショ. 究21),25),27),28) など新しい展開も見られる.不確実性. ンのクエリ領域は,矩形でしか指定できないことがあ. を考慮した研究として,MauveDB 16) では,回帰や補. げられる.アプリケーションが実際に利用するシナリ. 間といったアルゴリズムを用いてメッシュデータを作. オを考慮すると,クエリ領域として,点,線,ポリゴ. 成し,ビューとして提供する手法を提案している.不. ンなどでも指定できることが望ましい.今後,実装の. 確実なセンサデータを含む場合でも,センサデータの. 中で矩形以外の範囲指定にも対応できるよう拡張して. ビュー定義によって,元データはユーザからは見えな. いきたい.最後に,提案手法は空間補間の方法として. い.ストリーム処理に関する研究では,到着したデー のデータと統合するといった研究が見られるが,近年. IDW 法を採用している.しかし,空間補間の基本概 念は,補間対象座標に近いデータほど補間に大きな影 響を与えるというきわめて自然な発想に基づくもので. では,センサからのデータを時々刻々とアーカイブと. あり,IDW 法はその実現手法の 1 つである.したがっ. 研究. タを逐次的に処理する,あるいは,別のデータベース. 21). .過去のデータと. て,空間的な近接性に基づいて,補間のためのデータ. の統合を考えた場合,センサデータの蓄積は重要であ. を収集するという点では,提案手法を拡張することで. る.Kraft では,鮮度とリアルタイム性を考慮して,. 他の空間補間手法を適用できると考えられる.提案手. データを蓄積するための手法を提案しており,時系列. 法の汎用性を測定するためにも,他の空間補間手法を. の類似度計算など高度な問合せ処理もサポートしてい. 用いた評価も行っていきたい.. して蓄積する方向性も見られる. る25) .MauveDB および Kraft では,こうした高度な 処理が可能であるが,分散アーキテクチャとなってい ない点で,我々の提案手法と異なる. 本論文では,DB ピア間の空間解像度の違いに注目. 6. お わ り に 本論文では,異種解像度のセンサデータを補間・統 合する手法を提案した.本手法は,異なる空間解像度. し,それを補間統合するシステムを提案した.しかし,. を有する DB ピアから構成される分散データベースシ. 異種センサデータの統合において,空間解像度のほか. ステムから,指定した空間解像度のセンサデータを生. に,時間解像度への対応も考慮すべき大きな課題であ データであっても時間解像度が違うデータは容易に利. 成・提供することができる.アプリケーションは,各 DB ピアの所在やその空間解像度を意識することなく, 分散データベースシステムの補間・統合処理の結果と. 用できない.空間解像度の違いを補間によって解決し. して,要求した解像度のメッシュデータを受け取る.. た手法と同様に,時間解像度も意識したシステム設計. シミュレーションに基づく評価実験によって,アプリ. を行い,異種センサデータの時空間解像度を補間統合. ケーション側で空間補間処理を行うよりも,提案手法. するシステムを設計する予定である.また,実験では,. を用いて分散データベース内で処理した方が応答時. センサノードが均一に分布している環境を想定してい. 間が短くなることを示した.都市環境において,モバ. るが,現実的には,センサノードの分布は不均一であ. イル端末からも応答性高く異種センサネットワークを. ると考えられる.その場合,クエリ領域中の部分領域. 利用できる環境を整えるためには,分散センサデータ. を各 DB ピアに割り当てる際に,各 DB ピア全体の解. ベースのようにセンサネットワークインフラストラク. 像度とクエリの部分領域と重なる部分の解像度とが異. チャ側でセンサデータを利用可能な形式に補間するこ. なると,不適切な DB ピアが選択されてしまう可能性. とが重要であり,今後,さらに検討を進めていきたい.. が少なからず存在するため,そうしたセンサノードの. 謝辞 本論文の執筆にあたり,東京電機大学の大野. 分布の不均一性に対応できるように,提案したアルゴ. 貴弘氏,石田泰之氏,金井圭介氏,三尋木織氏には,. リズムを拡張していきたいと考えている.ただし,各. 活発なご議論とご協力をいただきました.ここに記し. DB ピアの管理領域が重ならない場合や,重なってい. て感謝いたします.. る.アプリケーションは,たとえ空間解像度が揃った. ても各 DB ピアの解像度が離れている場合には,こう した不均一性の影響は受けないため,現状の実装でも.
(14) Vol. 49. No. SIG 7(TOD 37). 参. 考 文. 空間補間による異種解像度センサデータの統合手法. 献. 1) Microsoft. http://atom.research.microsoft.com/sensormap/ 2) Live E! ∼活きた地球の環境情報∼. http://www.live-e.org/ 3) Ito, M., Katagiri, Y., Ishikawa, M. and Tokuda, H.: Airy Notes: An Experiment of Microclimate Monitoring in Shinjuku Gyoen Garden, 4th International Conference on Networked Sensing Systems (INSS 2007 ), pp.260–266 (2007) 4) 日本気象協会:ワンクリック気象情報サイト. http://tenki.jp/ 5) 環境省:大気汚染物質広域監視システム. http://w-soramame.nies.go.jp/ 6) 日本道路交通情報センター. http://www.jartic.or.jp/ 7) 防 災 科 学 技 術 研 究 所 ,高 感 度 地 震 観 測 網 (Hi-net).http://www.hinet.bosai.go.jp/ 8) 白石 陽:センサネットワークのためのデータ ベース技術,情報処理,Vol.47, No.4, pp.387–393 (2006). 9) Gehrke, J. and Madden, S.: Query Proceesing in Sensor Networks, IEEE Pervasive Computing, Vol.3, No.1, pp.46–55 (2004). 10) Madden, S., Franklin, M.J., Hellerstein, J.M. and Hong, W.: TinyDB: An acquisitional query processing system for sensor networks, ACM Trans. Database Syst., Vol.30, No.1, pp.122–173 (2005). 11) シルビア・ニッテル,グァン・ジン,白石 陽: センサネットワークにおけるネットワーク内空 間推定,電子情報通信学会論文誌 A,Vol.J88-A, No.12, pp.1413–1421 (2005). 12) 白石 陽,安西祐一郎:分散センサデータの 閲覧のためのインクリメンタルなデータ提供方 式,情報処理学会論文誌:データベース,Vol.44, No.SIG12 (TOD 19), pp.123–138 (2003). 13) 白石 陽,安西祐一郎:センサデータの視覚化の ためのインクリメンタルな空間集約手法,情報処 理学会論文誌:データベース,Vol.45, No.SIG7 (TOD 22), pp.63–76 (2004). 14) Longley, P.A., Goodchild, M.F., Maguire, D.J. and Rhind, D.W.: Geographic Information Systems and Science, John Wiley & Sons, Ltd. (2001). 15) McCoy, J. and Johnston, K.: Using ArcGIS Spatial Analyst, ESRI (2001). 16) Deshpande, A. and Madden, S.: MauveDB: Supporting Model-based User Views in Database Systems, SIGMOD 2006, pp.73–84 (2006). 17) Balazinska, M., Deshpande, A., Franklin, M., Gibbons, P., Gray, J., Hansen, M., Liebhold,. 57. M., Nath, S., Szalay, A. and Tao, V.: Data Management in the Worldwide Sensor Web, IEEE Pervasive Computing, Vol.6, No.2, pp.30–40 (2007). 18) 田中孝浩,中尾太郎,小川剛史,塚本昌彦,西尾 章治郎:大規模な街角センサネットワークにおけ るデータ収集・管理システムの設計,情報処理学会 論文誌:データベース,Vol.46, No.SIG5 (TOD 25), pp.1–11 (2005). 19) Madden, S.R., Franklin, M.J., Hellerstein, J.M. and Hong, W.: TAG: A Tiny AGgregation Service for Ad-Hoc Sensor Networks, Proc. 5th Symposium on Operating System Design and Implementation (OSDI ), (2002). 20) The STREAM Project. http://www-db.stanford.edu/stream/ 21) Abadi, D., Carney, D., Cetintemel, U., Cherniack, M., Convey, C., Lee, S., Stonebraker, M., Tatbul, N. and Zdonik, S.: Aurora: A New Model and Architecture for Data Stream Management, The VLDB Journal, Vol.12, No.2, pp.120–139 (2003). 22) The Borealis Project. http://nms.lcs.mit.edu/projects/borealis/ 23) Stefanidis, A. and Nittel, S.: Geo Sensor Networks, CRC Press (2004). 24) Hellerstein, J., Hong, W., Madden, S. and Stanek, K.: Beyond Average: Towards Sophisticated Sensing with Queries, Proc. IPSN (2003). 25) 川島英之,遠山元道,今井倫太,安西祐一郎:セ ンサデータベースシステム KRAFT の設計と実 装,情報処理学会論文誌:データベース(TOD 24)(2004). 26) 山田真一,渡辺陽介,北川博之:実世界情報ス トリーム高度利用のための統合環境,日本デー タベース学会 Letters,Vol.4, No.1, pp.105–108 (2005). 27) Ganesan, D., Greenstein, B., Estrin, D., Heidemann, J. and Govindan, R.: Multiresolution storage and search in sensor networks, ACM Trans. Storage (TOS ), Vol.1, No.3, pp.277–315 (2005) 28) Ganesan, D., Greenstein, B., Perelyubskiy, D., Estrin, D. and Heidemann, J.: An evaluation of multi-resolution storage for sensor networks, Proc. 1st international conference on Embedded networked sensor systems (SenSys’03 ), pp.89–102 (2003). 29) Barbara, D., Garcia-Molina, H. and Porter, D.: The management of probabilistic data, IEEE TKDE, Vol.4, No.5, pp.487–502 (1992). 30) Neugebauer, L.: Optimization and evaluation of database queries including embedded.
(15) 58. Mar. 2008. 情報処理学会論文誌:データベース. interpolation procedures, ACM SIGMOD Record, Vol.20, No.2, pp.118–127 (1991). 31) Shepard, D.: A two-dimensional interpolation function for irregularly-spaced data, Proc. 23rd ACM national conference, pp.517–524 (1968).. 白石. 陽(正会員). 東京大学空間情報科学研究セン ター助教.2002 年慶應義塾大学大学 院理工学研究科博士課程単位取得退 学.2002 年より慶應義塾大学理工学. 付. 部情報工学科特別研究助手.2004 年. 録. より東京大学空間情報科学研究センター研究機関研究. A.1 Inverse Distance Weighted(IDW)法 本論文では,補間の手法として Inverse Distance Weighted(IDW)法14),15),31) を採用する.IDW で. 員.2006 年より同センター助手を経て,2007 年よ. は,ある地点 x の値 z(x) を,近接する複数の点 i. センサデータベース,空間情報処理に関する研究に興. (i = 1, . . . , n)の値 zi を利用し,式 (8) を用いて計. 味を持つ.地理情報システム学会,日本データベース. CREST 研究員.博士(工学).時空間データベース,. 学会,ACM 等会員.. 算する.. n wi zi z(x) = i=1 n i=1. り現職.2006 年より独立行政法人科学技術振興機構. (8). wi. 石塚 宏紀(学生会員). wi は,zi に対する重みであり,点 x と点 i の間の距 離 di を用いて,式 (9) で計算する.. 2006 年東京電機大学工学部情報 メディア学科卒業.現在,同大学院. wi = 1/d2i ただし,di = 0 となる点がある場合は z(x) = zi. 工学研究科情報メディア学専攻修士. (9). 課程在籍中.2006 年情報処理学会第. (10). とする.. 68 回全国大会大会奨励賞受賞.セン サネットワーク,データベースに関する研究に従事.. また,IDW では,補間に利用する点(サンプル)の 数 n を制限するために,サンプル数(sample num )を 指定したりする.ほかにも,補間する点からの距離を 指定することでサンプルの範囲を制限したりする.. (平成 19 年 9 月 17 日受付) (平成 20 年 1 月 5 日採録). 戸辺 義人(正会員). 1984 年東京大学工学部電気工学 科卒業.1986 年同大学院修士課程 修了.1986∼1997 年株式会社東芝 にて産業用ネットワークの研究開発 に従事.1992 年カーネギーメロン. (担当編集委員. 山根 康男). 大学 Electrical and Computer Engineering 修士課程 修了.2000 年慶應義塾大学博士(政策・メディア).. 石井那由他(学生会員). 2006 年フィンランド VTT 客員教授.現在,東京電機大. 2004 年東京電機大学理工学部情. 学教授および独立行政法人科学技術振興機構 CREST. 報社会学科卒業.2006 年同大学院. 研究員.ユビキタスコンピューティング,センサネッ. 理工学研究科情報社会学専攻修了.. トワークの研究に従事.. 現在,同大学院先端科学技術研究科 情報通信メディア工学専攻博士課程 在籍中.センサネットワーク,データベースに関する 研究に従事.ACM,IEEE 各学生会員..
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