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あたらしい 農業技術 No.510 環境にやさしい柑橘の草生栽培 平成 20 年度 - 静岡県産業部 -

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(1)

-静 岡 県 産 業 部-

あたらしい

農 業 技 術

No.510

環境にやさしい柑橘の草生栽培

平成 20 年度

(2)
(3)

要 旨

1 技術、情報の内容及び特徴 ( 1 )イ ネ 科 の 1 年草ナギナタガヤを用いた草生栽培は、降雨時の柑橘園からのリン流出量 を 10%以下に削減できる。カンキツ園全面への草生栽培でなく、1/4 の面積を被覆す る 部 分 草 生 栽 培 で も 同 等 の 効 果 が 得 ら れ る 。 ( 2 )ナ ギ ナ タ ガ ヤ 草 生 栽 培 の リ ン 流 出 軽 減 効 果 は 、ナ ギ ナ タ ガ ヤ の 根 の 伸 張・枯 死 に よ る 土 壌 の 透 水 性 向 上 に よ り 、土 の 表 面 を 流 れ る 水 の 量( 表 面 流 去 水 量 )が 減 少 し たこと に 起 因 す る 。 ( 3 )ナ ギ ナ タ ガ ヤ 草 生 栽 培 は 、カ ン キ ツ 園 の 土 壌 水 分 や 地 温 に 対 す る 緩 衝 効 果 、ナ ギ ナ タ ガ ヤ 地 上 部 の 土 壌 還 元 に よ る 有 機 物 施 用 効 果 、土 着 天 敵 増 強 効 果 等 の 多 面 的 効 果 を有 す る 。 ( 4 )導 入 初 年 度 に は 種 子 購 入 費 を 要 す る が 、除 草 剤 、殺 虫 剤 、有 機 物 に よ る 資 材 費 を 抑 え ら れ る た め 、 長 期 的 に は 生 産 コ ス ト を 減 ら す こ と が で き る 。 2 技術、情報の適用効果 リ ン 流 出 軽 減 や そ の 他 の 多 面 的 効 果 を 持 つ ナ ギ ナ タ ガ ヤ 草 生 栽 培 を カ ン キ ツ 園 に 導 入 す る こ と で 、自 然 環 境 に や さ し く 経 済 的 な( 環 境 負 荷 を 減 ら し 、生 産 コ ス ト を 減 ら す )カ ン キ ツ 生 産 技 術 が 確 立 さ れ る 。 3 適用範囲 県 下 の カ ン キ ツ 栽 培 園 4 普及上の留意点 ( 1 ) ナ ギ ナ タ ガ ヤ の 播 種 前 に 、 除 草 剤 等 で 十 分 に 雑 草 を 除 去 す る 必 要 が あ る 。 ( 2 )カ ン キ ツ の 株 元 へ の 播 種 は 、カ ン キ ツ と ナ ギ ナ タ ガ ヤ と の 養 分 競 合 を 招 く 可 能 性 が あ る の で 、 全 面 草 生 栽 培 の 場 合 で も 株 元 は 除 草 す る の が 望 ま し い 。 ( 3 ) 作 業 道 や 水 路 脇 等 の 土 壌 流 亡 が 起 こ り や す い 箇 所 へ の 部 分 草 生 栽 培 が 効 果 的 で あ る 。 ( 4 )ナ ギ ナ タ ガ ヤ は 1 年生草本であるが、自然に散布された種子により草地が維持される。

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目 次

は じ め に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1 ナギナタガヤの生育 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2 早生系ナギナタガヤと晩生系ナギナタガヤの違い ・・・・・・・・・・・・・・・ 1 3 ナギナタガヤ草生栽培による降雨時のリン流出軽減効果 ・・・・・・・・・・・・ 3 ( 1 )リ ン 流 出 軽 減 効 果 の 推 移 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 ( 2 )ナ ギ ナ タ ガ ヤ を 刈 り 取 っ た 後 の リ ン 流 出 軽 減 効 果 ・・・・・・・・・・・・・ 3 4 ナギナタガヤ草生栽培による夏秋季の地温上昇抑制 ・・・・・・・・・・・・・・ 4 5 ナギナタガヤ草生栽培による夏秋季の土壌水分保持 ・・・・・・・・・・・・・・ 5 6 ナギナタガヤ草生栽培が‘青島温州’の果実品質に及ぼす影響 ・・・・・・・・・ 5 7 導入方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 8 導入コストと導入後の経済効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 お わ り に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

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1 -はじめに カンキツ園では、長年施肥し続けて果樹に吸われなかったリンが土に貯まっています。この リンは、強い雨が降ると土と一緒に流れることがあります。カンキツ園は傾斜地にある場合が 多いので、平らな園地よりも土が流れやすいのです。また最近、樹の老齢化に伴う生産力低下 を避けるため、改植頻度が多い傾向にあります。若木を植えることで樹冠に覆われていない裸 地の面積が増加し、土が流れやすくなっている園地が増えていることも確かです。 下草を生やして地表面を管理する「草生栽培」は、雑草抑制や有機物補給といった効果だけ でなく土の流出を防ぐ効果もあり注目されています。ここでは代表的な草生栽培草種であるナ ギナタガヤが持つ優れたリン流出軽減効果とともに、地温の上昇を抑える効果や土壌水分を保 つ効果について紹介します。 1 ナギナタガヤの生育 「ナギナタガヤ」は、草生栽培に用いられるイネ科ウシノケグサ属の一年草で、秋に発芽し、 春になると草丈 70cm 程度に生長し穂を出します。最大の特徴は、初夏になると自然に倒れて枯 れることです。 表 1 生育の特徴 時期 生 育 8~10 月 発芽する。 11~2 月 10cm 程度に伸びて冬を越す。 3~4 月 草丈 60~70cm 程に急生長する。 5 月 倒れ始める。 6 月 枯れて倒れ、ワラを敷いたような状態になる。 8~10 月 夏に落ちた種子が秋に再び発芽する。 2 早生系ナギナタガヤと晩生系ナギナタガヤの違い 市販されているナギナタガヤ種子は、出穂や倒伏の早晩が異なる「早生系」と「晩生系」の 2 つの系統があります。2 つの系統は、形態にも若干の違いがあります。早生系は茎がやや硬く、 小穂のノギ(先端のトゲのような部分)がやや長い(約 19mm)特徴があります。これに対し、 晩生系は茎がやや柔らかく(従って倒伏しやすい)、小穂のノギがやや短い(約 14mm)特徴が あります。ナギナタガヤはノギが軍手や靴下に刺さり、チクチク痛いという欠点がありますが、 晩生系はやや緩和される印象です。 生育の経過の中では、被度の推移は早生系でも晩生系でもほぼ同じです(図 1)。2 つの系統

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2 -0 20 40 60 80 100 9/19 11/13 1/23 3/19 5/22 7/18 被度( %) 早生系 晩生系 0 20 40 60 80 100 9/19 11/13 1/23 3/19 5/22 7/18 草丈( c m ) 早生系 晩生系 に発芽や分けつの様子に違いはなく、同じように地表面を被覆しています。土壌やリンの流出 を防止する効果に大きな違いはないと思われます。 これに対し、草丈の推移は異なりました。12 月中は、どちらも 10cm 程度でしたが、1 月にな ると早生系は徐々に高くなり、3 月下旬には約 30cm、4 月下旬には約 70cm に達しました。とこ ろが、晩生系は 3 月下旬までは 10cm 程度の低い草丈を保ち、4 月下旬から急に高くなり 5 月下 旬には早生系とほぼ同じ約 70cm に達しました(図 1)。 図1 早生系と晩生系における草丈と被度の推移(2006 年 9 月にタネまき) 大きく異なったのが出穂と倒伏の経過です(表 2)。調査時の気象条件によっても変化すると 思われますが、2007 年では早生系は 1 月から早くも出穂が始まり、3 月下旬には出穂が揃い 4 月下旬には倒伏が始まりました。ただ、徐々に出穂や倒伏が進む傾向があり、7 月になっても 倒伏が揃いませんでした。晩生系は 4 月下旬になってようやく出穂が始まりましたが、5 月上 旬には出穂が揃い 5 月下旬に倒伏が始まりました。倒伏が揃うのも早く、6 月初めには全て倒 伏しました。早生系と晩生系の特徴を表 3 にまとめました。 表2 早生系と晩生系における出穂、倒伏時期の違い 出穂始め 出穂揃い 倒伏始め 倒伏揃い 早生系 1/10 3/27 4/20 7 月末で全体の 1/3 が倒伏 晩生系 4/23 5/9 5/21 6/1 表 3 早生系と晩生系の特徴 特 徴 早生系 春の生育が早い。穂の出る時期が早い。 晩生系 ノギの長さが短い。穂が出るのは遅いが倒れやすい。

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3 -全面草生 0 2 0 4 0 6 0 8 0 1 0 0 1 / 1 4 / 1 7 / 1 1 0 / 1 1 / 1 4 / 1 7 / 1 ( 月/ 日) リン 流 出 量 部分草生 0 2 0 4 0 6 0 8 0 1 0 0 1 / 1 4 / 1 7 / 1 1 0 / 1 1 / 1 4 / 1 7 / 1 ( 月/ 日) リン 流 出 量 2 0 0 6 2 0 0 7 2 0 0 6 2 0 0 7 倒れて 枯れる 倒れて 枯れる 倒れて 枯れる 倒れて 枯れる 3 ナギナタガヤ草生栽培による降雨時のリン流出軽減効果 (1)リン流出軽減効果の推移 草生栽培に土の流出を防ぐ効果があることから、土の粒に含まれるリンの流出も同様に防い でいることが推定されました。そこで、草生栽培がどれだけリンの流出を防いでいるかを確か めるため、傾斜地カンキツ園に「無底ライシメーター」という調査枠を設置し、雨が降った時 のリン流出量を測定しました。 カンキツ園にナギナタガヤ草生栽培を導入すると、降雨時に泥水として流れるリンの量が減 少することがわかりました(図 2)。この効果は、ナギナタガヤが生長し、枯れて倒れることに よって変化します。導入 1 年目の場合、生長の著しい 4 月以降にその効果は大きくなります。 そして初夏に倒れて地面を覆うと、効果はさらに高くなります。草生面積を全体面積の下端 1/4 とした場合(部分草生)でも、6 月以降のリンの流出を清耕栽培(裸地で管理)の 1 割以下に 減らすことができました。6 月~9 月は梅雨や台風の時期でもあり強い雨が降りやすいので、こ の時期に軽減効果が高くなるのはとても重要なことです。また 2 年目以降も同じようにリンの 流出を防ぎます。また、スピードスプレーヤーの通路や水路脇などの泥水が流れやすい場所に 草生栽培を導入するだけでも、カンキツ園からのリンの流出を減らす効果があると思われます。 図 2 ナギナタガヤのリン流出軽減効果(清耕栽培のリン流出量を 100 とした指数) (2)ナギナタガヤを刈り取った後のリン流出軽減効果 ナギナタガヤの地上部を刈り取った後のリン流出軽減効果を調査しました。その結果、刈り 取った後でも刈り取る前と同様に、土の表面を流れる水(表面流去水)がほとんど発生せず、 流出するリンの量もわずかであることが分かりました(図 3)。枯れた後、種子を取るためにナ ギナタガヤを刈り取っても、ある程度リンの流出軽減効果が持続するということを示していま す。このことから、ナギナタガヤ草生栽培によるリン流出軽減効果は、根が伸びたり、枯れた りすることによって土壌の透水性が増し、カンキツ園の表面を流れる水が少なくなったことが 要因であると考えられます。

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4 -地表下5cm 22 24 26 28 30 32 9/1 9/3 9/5 9/7 9/9 9/11 地温( ℃) 草生 清耕 地表下25cm 22 24 26 28 30 32 9/1 9/3 9/5 9/7 9/9 9/11 地温 ( ℃) 草生 清耕 0 20 40 60 80 草生 刈り取り 敷きわら 清耕 表面流去水量(k L ・ha -1 ) 0 2 0 0 4 0 0 6 0 0 8 0 0 1 0 0 0 草生 刈り取り 敷きわら 清耕 リ ン 流 出 量 (g ・ha -1 ) 図 3 刈り取った後の表面流去水量とリン流出量 (①草生=ナギナタガヤ草生、②刈り取り=ナギナタガヤの地上部を刈り取り、③敷き わら=ナギナタガヤの地上部を敷設、④清耕=裸地) 4 ナギナタガヤ草生栽培による夏秋季の地温上昇抑制 気温が高い時期の例として、9 月初旬における地温の変化を図 4 に示しました。この時期の ナギナタガヤは、枯れて倒れた草の間から春にこぼれた種子の発芽が始まっている状態です。 地表下 5cm のナギナタガヤ草生栽培の地温は、清耕栽培よりも低く保たれていることが確認さ れました。特に暑い昼間ほど、地温の差は大きいことがわかります。一般的にカラタチの根は 30℃を超えると生育が阻害されると言われています。草生栽培は地温上昇を抑え、根の生育を 保護する効果があると考えられます。 図4 9 月初旬における地温の推移

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5 -5 ナギナタガヤ草生栽培による夏秋季の土壌水分保持 6~8 月における土壌水分の変化を図 5 に示しました。グラフは値が大きくなるほど土壌が乾 燥していることを示します。この時期のナギナタガヤは枯れて倒れている状態です。初めに、 急な傾斜(傾斜角度 15°)の園地の事例を見てみましょう。ここは丘陵斜面で土が浅く、乾き やすい園地だと思われます。このような園地の場合、ナギナタガヤ草生栽培と清耕栽培とで土 壌水分に大きな開きがあることがわかります。このことから急傾斜園地にナギナタガヤを導入 すると、夏季の土壌乾燥を防ぐ効果があると思われます。 一方、緩い傾斜(傾斜角度 5°)の園地ではどうでしょうか?このような園地では草生栽培 と清耕栽培の土壌水分の差が、急な傾斜(傾斜角度 15°)の園地ほど大きくありませんでした。 緩い傾斜の園地ではナギナタガヤ草生栽培が土壌水分に及ぼす影響は比較的小さいと考えられ ます。 秋季の土壌水分についてはどうでしょうか?現在までの調査では、夏季と同様に急な傾斜(傾 斜角度 15°)の園地では草生栽培の方が清耕栽培より高くなりやすく、緩い傾斜(傾斜角度 5°) の園地ではあまり違いがみられないという傾向が出ています。 図5 土壌水分の推移(値が大きくなるほど土壌が乾燥していることを示す) 6 ナギナタガヤ草生栽培が‘青島温州’の果実品質に及ぼす影響 静岡県浜松市北区三ヶ日町の現地栽培園において、ナギナタガヤ草生栽培が‘青島温州’の 果実品質に及ぼす影響を 3 年間にわたって調査しました。この調査では、果実肥大・糖度・酸 度ともに草生栽培の有無で一定の傾向がみられていません(表 4)。よって、ナギナタガヤ草生 栽培が果実品質に及ぼす影響は小さいのではないかと思われます。しかし、栽培する場所(土 性や傾斜など)やカンキツの品種が異なれば、その影響も変わってくる可能性があります。今 後は果実品質への影響を様々な園地で調査し、その影響を明確にしていくことが必要であると 考えられます。 湿潤 乾燥 傾斜5°(黄色土) 0 40 80 120 7/1 7/16 7/31 8/15 (日付) 土壌 水分張力( -k pa ) 草生 清耕 傾斜15°(赤色土) 0 40 80 120 7/1 7/16 7/31 8/15 (日付) 土壌水 分張力( -k pa ) 草生 清耕

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6 -表 4 草生栽培が‘青島温州’の果実肥大と果実品質に及ぼす影響(12 月収穫時) 処理区 横径(mm) 糖度(%) 酸度(%) 年度 2005 2006 2007 2005 2006 2007 2005 2006 2007 草生 67 71 70 11.6 11.7 11.1 0.92 1.04 0.95 清耕 69 71 71 12.1 11.7 10.3 0.97 1.20 0.83 有意性 n.s.z n.s. n.s. n.s. n.s. * ** ** ** z:**は 1%、*は 5%水準で有意差あり、n.s.は有意差なし 7 導入方法 9 月~10 月に 2~3kg(10a 当たり)種子をまきます。種子をまく前に雑草を抜くか、茎葉処 理剤を使って除草を徹底します。全面草生でも株元は草を生やさないようにします。雨が降っ た直後もしくは直前にまくのが良いでしょう。土を耕した所にまくと、早く発芽すると思われ ます。導入 2 年目以降の場合は、初夏にこぼれて落ちた種子の発芽状況を観察し、発芽にムラ のある部分を見つけます。その部分に保管していた種子や新たに購入した種子をまきます。残 暑や乾燥が厳しいと発芽後枯れてしまうので、数回に分けて種子をまくと良いでしょう。 ナギナタガヤ草生栽培は、今回説明した効果の他に雑草抑制や有機物補給などの効果があり、 草生面積を大きくすればそれらの効果も高くなります。しかし、養分を下草が吸ってしまうこ とで果樹の養分が不足したり、枯れた下草の分解によって養分が意外な時に遅効きしてしまう 可能性もあります。そこで、目的により草生栽培の導入場所や導入面積を変える必要がありま す。 肥料成分を流出させないことが主な目的であれば、園地の周囲やスピードスプレーヤーの通 路、畝(うね)の下部など、果樹の根があまり伸びていない場所への部分的な草生栽培(図 6) で十分な効果が得られます。この方法なら樹体や果実への影響を抑えられ、ナギナタガヤの種 子代も節約できて、作業性も比較的低下しにくいと思われます。 一方、有機物補給や雑草抑制を目的として、園地のほぼ全面にナギナタガヤを導入する場合 もあります。その場合、草生面積が大きいので、草の上で滑りやすくなる等作業しにくい場面 が出てくることも配慮する必要があります。よって全面的な草生栽培は、平坦地や緩い傾斜の カンキツ園に向いていると思われます。 図6 部分草生栽培の導入例 畝(うね)の下に草を生やします。 作業道に草を生やします。

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7 -8 導入コストと導入後の経済効果 ナギナタガヤを導入する場合、初期費用(種子代)がかかりますが、その後の生産管理にお いて除草や有機物施用、病害虫防除費が削減できると試算されました(表 5)。清耕栽培で管理 すると 147,568 円かかるのに対して、全面草生栽培ではそのコストを 85,669 円、部分草生栽培 では 119,548 円に抑えることができると考えられます。 表 5 園地 10a 当りのコスト(資材費+労働費) 作業項目 全面草生栽培 部分草生栽培 清耕栽培 ナギナタガヤの種子z 7,815 1,954 0 除草 7,960 22,960 27,960 有機物施用 0 24,740 24,740 病害虫防除 y 69,894 69,894 94,868 合計 (清耕との比較) 85,669 円 (41.9%減) 119,548 円 (19.0%減) 147,568 円 z:種子をまく量を 1 年目 3kg/10a、2 年目以降 1.5kg/10a としたときの、導入後 10 年間の種子代の平均 値 y:病害虫防除については平成 19 年度発行のあたらしい農業技術 №492 「土着天敵とナギナタガヤ草 生栽培によるミカンハダニの減農薬防除体系」を参照 おわりに ここ数年、日本各地において記録的な集中豪雨が発生しています。今後も地球温暖化の影響 で、柑橘類の収量や価格に大きな影響を及ぼす豪雨や干ばつ等の異常気象が増えていくことが 予測されています。草生栽培には、急激な地温上昇・土壌の乾燥を防ぎ、土壌環境を安定させ る役割があります。豪雨や干ばつの影響を少なくする技術として注目される可能性も考えられ ます。 草生栽培が重要な役割を担うもう一つの背景として、資源の枯渇から肥料の値段が高くなっ ていることが挙げられます。特にリン資源は、近い将来入手困難になることが予測されていま す。「草を生やす」ことは、リンが含まれる土を流出させないだけでなく、下草に吸わせ有機物 として土に還すことで土に蓄積したリンの有効利用にもつながると思います。 限られた資源を有効活用する技術として、草生栽培の特徴に興味を持っていただき、今後の カンキツ栽培に少しでも力添えできれば幸いです。 農林技術研究所果樹研究センター 技 師 山家一哲(現 中遠農林事務所) 主任研究員 杉山泰之 研 究 主 幹 高橋和彦

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-平成20年10月発行

静岡県産業部振興局研究調整室

〒420-8601

静岡市葵区追手町 9-6

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参照

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