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スはアカデミックとビジネス 両 方 の 場 面 に 対 応 できる 文 書 作 成 能 力 を 育 成 するためには 十 分 なものではなかった その 後 2 年 間 の 試 行 錯 誤 を 経 て 2010 年 度 から 特 定 課 題 研 究 も 視 野 に 入 れたシラバスを 目 指 して 体

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Academic year: 2021

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文書系科目に関するシラバス・教材について

向山陽子・村野節子 1. はじめに 武蔵野大学大学院ビジネス日本語コースにおいて、修了時までに身に付けるべき文書作 成能力とはどのようなものか。本コースは高度外国人材の育成を主たる目的とする専門家 養成大学院である。修了時に与えられる学位は修士(日本語)であるが、「修士論文」では なく「特定課題研究論文」の提出が修了のための要件となっている。そして、多くの学生 が修了後に日本と関連する企業に就職することを目指している。 このような背景を踏まえると、本コースにおける文書系科目での指導目標は、論文を執 筆できる文書作成能力(アカデミック・ライティング能力)と高度外国人材として企業で 求められる文書作成能力(ビジネス・ライティング能力)を身に付けさせることであると 言える。本稿では筆者らがそれらの能力を養成するためにどのようなシラバスを組んで教 育実践をしているかを報告した上で今後の課題を明確にする。 2. 養成すべき文書作成能力 特定課題研究では学生自らが解決すべき問題を発見し、その解決方法を探るために研究 を行う。アンケート、インタビューなどの調査計画を立てて実行し、調査で得られたデー タを分析、解釈して論文にまとめる。そのプロセスにおいては物事を批判的、かつ論理的 に考える力が不可欠である。 一方、ビジネス場面における文書作成においてもそれらの能力は必要とされる。納品書、 請求書といったフォーマットに記入すれば事足りる文書と異なり、提案書、企画書などの ビジネス文書は、レポートや論文のようなアカデミックな文章と連続した線上にあると言 える。すなわち、問題を提起し、その解決策を読み手が納得するように書くということは アカデミックかビジネスかに関わらない共通した作業である。 そこで、2 年間の文書系科目では、批判的、かつ論理的に考える能力、及び、伝えるべき ことが読み手に伝わるような文章になっているかどうかをモニターするメタ認知能力の養 成、そして、スキルとしてのパラグラフ・ライティングの習得を基盤に据えた。 これらの基盤の上に論文作成に向けた指導、ビジネス文書作成の指導を体系的に組み立 てるようにした。文書系科目は1 年次、2 年次を半期ごとの 4 期に分け、インターンシップ や就職活動などの本コース特有の事情を踏まえ、各期で何を指導すれば効果的であるかを 考えた。4 期のシラバスは以下で説明するとおりである。 ただし、ここに報告するシラバスは2006 年の開講当初からのものではない。初めの 2 年 間は文書系科目の学習が 1 年次だけであったため、ビジネス文書作成指導に主眼が置かれ ていた。3 年目の 2008 年度から 2 年次にも文書系科目が設けられたが、その当時のシラバ

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スはアカデミックとビジネス、両方の場面に対応できる文書作成能力を育成するためには 十分なものではなかった。その後2 年間の試行錯誤を経て、2010 年度から特定課題研究も 視野に入れたシラバスを目指して体系化を試みた。 3. 各期のシラバス 2010 年度に用いたシラバスの概略と、それに基づいて行った指導の概要を期ごとに説明 する。 3.1 1 年前期 1 年前期で扱う内容は、①メールの基本、②文献検索法、③パラグラフ・ライティング基 礎(エントリーシート・履歴書)、④パラグラフ・ライティング応用(企業研究・説明文) である。これを期末試験、振り返りを含め16 回の授業で指導した。 本コースでは各種連絡、課題提出などを電子メールによって行っている。これにはビジ ネス現場でメールという通信手段が主流となっている現状を踏まえ、在学中にマナーに則 ったメール利用法を身に付けさせるという狙いがある。そのために、最初にインターネッ トでのメールの作法を指導する。この段階ではメールの作成練習にはそれほど焦点を当て ず、メールの形式、構成要素、マナーなど基本事項の確認を主な目的とした。 次に行ったのはライティングに必要な情報を収集する実習である。図書館の司書と連携 して、文献検索方法、本学で使用可能なデータベースの使い方、情報の整理方法など、情 報収集の基本を指導した。 これらの基本事項を押さえてから、パラグラフ・ライティングの基礎を指導した。その 際、インターンシップとの関連でエントリーシート、履歴書などの就職関連の材料を用い た。本コースでは開講当初は夏休みと春休みの年2 回インターンシップが実施されていた。 しかし、諸般の事情から夏休みだけになったため、学生は入学後すぐにインターンシップ に向けて準備を始める必要が出てきた。そのため、1 年前期の文書作成クラスでは、パラグ ラフ・ライティングの導入に就職関連の材料を用いることにした。自己分析や志望動機な どは非常に短い文章の中にトピックセンテンス、主張の根拠などを要領よくまとめる必要 がある。そのため、1 つのパラグラフをどのように構成すればいいかということを意識させ る練習として使うことが可能である。つまり、初めからパラグラフ・ライティングによっ て長文を書かせるのではなく、就職関連文書の作成を通してスモールステップでパラグラ フの構成法を学んでいくという指導方法を取った。 パラグラフ・ライティングの基礎に続き、応用として業界・企業分析をより長い文章に まとめさせることを課題とした。そして、最後に自分の関心のある事物について読み手を 意識して説明文を書かせた。いわゆるテクニカル・ライティングである。これらの課題を 通して、列挙、具体例、比較、意見・理由などの文章の型も習得させるようにした。 以上のように 1 年前期にはパラグラフ・ライティングという概念を理解し、そのスキル の習得を目標とした。

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3.2 1 年後期 1 年後期は 2年次に取り組むことになる特定課題研究のための基礎作りとして位置付けた。 論文・レポートに求められる要件、論文のテーマを設定することの重要性などを理解させ るために、夏休み(秋生の場合は春休み)に戸田山(2002)、酒井(2007)を読んでおくこ とを課題とした。また、刈谷(1996)も参考図書とした。 授業ではまず、新聞の社説などを批判的に読んで自分の意見をまとめる作業を繰り返し、 考えを深めること、自分の主張を明確にすることを指導した。そして、1 年後期の目標であ るレポート作成の前段階として、テーマを与えて1000 字程度の意見文を書かせた。これは 根拠を示して論証することを学ばせることを目的とした基礎練習で、向後(2010)を参考 にしたものである。 このような短い意見文を書いた後で、次の段階としてより分量の多いレポート作成を課 題とした。レポート作成に当たっては、大島他(2005)などを参考にし、①マインドマッ プ作成、②アウトライン作成、③目標規定文作成、④草稿執筆、⑤中間発表(ポスター発 表形式)、⑥ピア推敲、⑦改稿、というプロセスを踏んで最終稿を提出させた。 1 年後期はこのようなシラバスにより、批判的に考える力、自分の主張を自分のことばで 論理的に書く能力を身に付けることを目標として授業を進めた。 3.3 2 年前期 2 年次の文書系科目では、1 年次の様々な科目で培ったスキルを総合し、ビジネス場面で の文書作成能力を養成することを目標とした。この目標を達成するためにツアー企画作成 という課題を設定した。財団法人海外技術者研修協会(2011)1はプロジェクトベーストラ ーニングの教材であるが、その一部を文書作成のために利用した。ツアー企画自体はグル ープ活動としたが、各種文書(グループによる話し合いの議事録、パッケージツアーの現 状分析報告書、ツアー企画提案書、説明用ハンドアウト、販売促進用パンフレット、プレ ゼンテーション用スライドなど)作成は個人作業とした。なお、ツアー企画に入る前に、 練習として教師が与えた状況やデータを基に報告書と提案書を作成させた。つまり、ここ でも初めから大きな企画書を作成させるのではなく、スモールステップ方式による指導を 試みた。 説明力や論証力はアカデミックであるか、ビジネスであるかに関係なく求められるもの である。この授業では 1 年後期のレポート作成で身に付けた論理的文章を書く能力をビジ ネス場面で応用することを目的としている。そのため、企画提案書の最終稿提出までの授 業はレポート作成の場合とほぼ同様のプロセスで進めた。レポートの場合と異なるのは、 最終課題として企画のプレゼンテーションを課したことである。 1 この教材は武蔵野大学大学院がアジア人財資金構想のプロジェクトベーストラーニング教材として作成 を担当したものである。そのため、財団法人海外技術者研修協会(2011)で無償提供される以前から使用 許可が下りていた。

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3.4 2 年後期 最後の期である 2 年後期はより実践的なビジネス文書作成を課題とし、ビジネス・商談 場面に必要とされる文書作成能力の伸張を目指した。具体的にはビジネス文書、電子メー ル等の一般的な表現、マナーをマスターし、その上で、取引先との間でビジネス文書のや り取りが円滑にできることを目標とした。 授業では社内外の文書全般を扱ったが、近年ビジネスにおいて電子メールでやり取りを することが多くなっているため、ビジネス電子メール作成の比重を大きくした。そして、 依頼、連絡・通知、お礼、回答、督促、お詫びなど、機能に基づいて配列した教材を作成 した。一例を示すと次のようなものである。 あなたは(株)ヤナガワの大山京子さんです。アオイ製紙(株)に○月○日に、花粉対策マスク(商 品コード KTM333)50 箱、○月○日の納期で発注しました。50 箱注文したはずが、40 箱しか届きませ んでした。アオイ製紙担当者、営業部の鈴木由紀夫さんに、事情を調べて、不足分の商品を至急送っ てほしいと思っています。 この教材は単に文章の文体を敬語に変換する、状況をそのまま文章にするというような 課題ではない。与えられた状況の中で何が問題となっていて、それに対してどのように行 動すべきかを考え、その上で適切な文章を作成することを求めている。例えば、問い合わ せる前に注文書を確認するという行動を思いつくかどうか、そのような点まで考えさせる ことを目的としている。このような課題に繰り返し取り組むことで、文書作成能力だけで なく問題発見解決能力も養成されると考えた。 電子メールの作成課題のほかに定型ビジネス文書として、通知文、稟議書、依頼・回答 文、詫び状、報告書、始末書などを取り上げた。ビジネス文書にはこの他にも様々なもの があるが、留学生が就職後に作成する可能性が高いものだけに焦点を当てた。本コースで は 1 年次にビジネス日本語情報処理という科目があり、ここで社内通知書、社外通知書、 社外案内状、社内案内状、企画書、パンフレット、社内報、稟議書、議事録、見積書、納 品書、請求書、調査報告書などを、見やすいレイアウトで作成するスキルを学んでいる。 そのスキルを用いて、自分で何をどのように書くべきかを考えてビジネス文書を作成でき るようにすることが2 年後期の授業の目標と言える。 4. 今後の課題 2 年間の文書系科目では以上のようなシラバスで指導を行っているが、今後の教育実践に おいて解決すべき課題について述べる。第一はシラバスの有効性と教材に関することであ り、第二は他の科目との連携に関わることである。 上述のとおり、このような体系のシラバスに落ち着いたのは2010 年度である。したがっ て、このシラバスが実効性のあるものであるかどうか、今後、このシラバスによる指導の

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効果を検証していくことが必要である。また、「何を」教えるべきかは定まってきたが、そ れを「どのように」教えるかということに関しては課題として残されている部分が多い。1 年次の授業の教材を作成することが必要であるし、2 年次の教材の更なる精緻化も必要であ る。 本コースの修了要件である特定課題研究の指導はゼミで行われているが、ゼミでは論文 作成のスキルを指導する時間的余裕はない。論文執筆の基礎は文書系科目が担当すべきと 考え、本稿で報告したようなシラバスを設定した。しかしながら、論文やレポートのテー マを絞り込んで文章を書くという作業は、すなわち考えることであり、それを文書系科目 だけで指導することには限界がある。物事を批判的に捉える能力など、考える力の養成は ゼミや読解クラスとの連携が必要であろう。 また、2 年後半で扱っているビジネスメールは、口頭表現と文書表現の中間に位置するも のである。したがって、メール作成には相手に配慮した適切な表現の習得が不可欠である。 この点においては口頭表現クラスとの連携が重要である。 そして、情報処理クラスとの連携も課題となる。現在でも定型ビジネス文書作成に関し ては情報処理クラスで習得したスキルの上に積み上げていくことを意識しているが、今後 は情報処理クラスの指導項目も含め、より大きな枠組みで文書系科目のシラバスを体系化 していくことが必要であろう。 【参考文献】 大島弥生・池田玲子・大場理恵子・加納なおみ・高橋淑郎・岩田夏穂(2005)『ピアで学ぶ 大学生の日本語表現・プロセス重視のレポート作成』ひつじ書房 苅谷剛彦(1996)『知的複眼思考法』講談社 向後千春(2010)「スタディスキル」http://kogolab.jp/wordpress/?page_id=473 財団法人海外技術者研修協会(2011)『留学生のためのビジネス日本語シリーズ-人財-』 「自国を売り込むツアー企画プロジェクト(旅行観光業)リソース集」 ©2011 The Association for Overseas Technical Scholarship(AOTS)

酒井聡樹(2007)『これからレポート・卒論を書く若者のために』共立出版 戸田山和久(2002)『論文の教室 レポートから卒論まで』日本放送協会

参照

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