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2 又吉直樹 23 風工学シンポシンポ HP 登載用原稿 ができる 4) また 気圧 外気温 露点の観測も可能である 超音波速度計は 気象観測用の風速計として広く利用さ れている超音波風速計をベースに 航空機用としてより高速域でも使用できるよう JAXA で測定部の形状変更等の改良を加えたものである

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Academic year: 2021

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ドップラーライダ、ヘリコプタを用いた都市境界層の風観測

WIND MEASUREMENTS OVER URBAN CANOPY USING DOPPLER LIDAR AND HELICOPTER

又吉 直樹1)、田村 哲郎2)

Naoki MATAYOSHI1), Tetsuro TAMURA2) ABSTRACT

The Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA) has conducted wind measurements over urban canopy to build numerical wind model for roof-top heliport operation on high-rise building. Doppler lidar and the JAXA’s research helicopter which is capable of measuring winds at 40Hz were used to measure winds aloft. In the measurement, larger power exponent of wind speed profile, more intensive turbulent intensity and smaller turbulence scale length were observed in urban canopy compared to the existing standard. These acquired data will be incorporated into the numerical wind model.

Key Words: Urban canopy, Doppler lidar, Helicopter 1. はじめに 近年運航実績が拡大しているドクターヘリや大都市圏の旅客輸送で使用される機会が多いビル屋上ヘリポートは、ヘリ ポートのあるビル自体が乱気流源となり得るため、風の影響を受けやすい環境下にある。特に高層ビル屋上は、一般に地 表面に比べて風が強くなるため、より厳しい環境下にあると言える。このため、独立行政法人宇宙航空研究開発機構 (JAXA)では、高層ビル屋上ヘリポートでのヘリコプタ運航の安全性および就航率の向上を目的として、離着陸を模擬した 飛行シミュレーションによりヘリコプタが運航可能な風の条件を検討・設定する手法の研究を進めている。この一環として、 飛行シミュレーションに必要な高層ビル屋上ヘリポート周辺の風情報(平均風や乱流特性の高度プロファイル等)を取得す べく、JAXA、東京工業大学、気象庁気象研究所の共同研究により、東京都港区赤坂のアークヒルズヘリポート(地上高 154m、標高 166m、図 1)を対象として、風洞試験、現地観測、数値流体解析等を実施した。1), 2) 特に現地観測では、ヘリ ポート上の風に加えて、ヘリポート上空の都市境界層の風を観測するため、ドップラーライダ、ヘリコプタを用いた風観測を 実施した。本稿では、このドップラーライダ、ヘリコプタを用いた都市境界層の風観測について報告する。 2. 風観測手法 2.1 ドップラーライダ ドップラーライダは、空中にレーザ光を発し、その散乱光を受信する装置で ある。散乱光のドップラーシフトを用いて散乱源となる空中の微粒子の移動 速度、即ち風速を観測する。主に、非降水時の風観測に適している。本観測 で用いたライダの外観と主要諸元を図2、表 1 に示す。ライダは、アークヒル ズヘリポートの南西端に設置した。また同ヘリポートの北西端、および南東 端には、3 成分超音波風速計(ヤング社 CYG-81000、観測レート 20Hz)を設 置した(図1)。 2.2 ヘリコプタ 本観測では、JAXAの実験用ヘリコプタ(図3)を用いて風観測を実施した。 一般に、航空機による風観測では、航空機の対地速度ベクトルと対気速度 ベクトルの差として風ベクトルが求められる。同ヘリコプタは、対気速度ベクト ルを観測する超音波速度計、対地速度ベクトルを観測する DGPS/INS

(Differential Global Positioning System / Inertial Navigation System)を装備し

3)、飛行中に遭遇した風の3 軸成分を 40Hz、約 1m/s の精度で観測すること

1) 宇宙航空研究開発機構 航空本部 主任研究員 (〒181-0015 東京都三鷹市大沢 6-13-1)

2) 東京工業大学大学院 総合理工学研究科 教授 (〒226-8502 神奈川県横浜市緑区長津田町 4259)

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ができる4)。また、気圧、外気温、露点の観測も可能である。 超音波速度計は、気象観測用の風速計として広く利用さ れている超音波風速計をベースに、航空機用としてより高 速域でも使用できるよう、JAXA で測定部の形状変更等の 改良を加えたものである(図3)。実験用ヘリコプタは、メイン ロータの吹き下ろし等の機体の周りの気流の影響(位置誤 差)を小さくするため、測定部をノーズブーム先端に装備し ているが、対気速度 10m/s 以下ではメインロータの吹き下 ろしの影響が大きく、正確な対気速度観測は不可能となる。 このため、風観測は対気速度約40m/s で実施した。 3. ドップラーライダによる風観測結果 3.1 平均風の高度プロファイルの観測 ドップラーライダを用いて、アークヒルズ上空の平均風の 高度プロファイルの観測を行った。観測諸元を表2 に示す。 ライダはレーザ視線方向の1 軸の風速しか観測できないた め、円錐状に視線方向を変えるPPI スキャンを行い、スキャ ン中は風が一定と仮定して 3 軸風速を算出した。観測範囲 の最低高度である地上高330m で風速10m/s 以上のデータ について、風速分布のべき指数を算出した結果を表3 に示 す。べき指数は、地上高330~530m の 4 高度(約65m 間隔) の10 分間平均風速を用いて算出した。大気安定度の影響 を見るため、一般に安定(安定度が正)と考えられる夜間(21 ~6 時)と、中立~不安定(安定度がゼロ~負)と考えられる 日中(11~14 時)で分類している。また、風速 10m/s 以上の データ数が最も多かった南南西の風向について、10 分間 平均風速と、気象庁のメソ数値予報モデル GPV(MSM)を 用いて算出した仮温位の高度プロファイルを図4 に示す。 仮温位は、MSM 地上面からの温位差を示している。以下、 結果を示す。  べき指数は、風向に関わらず、夜間の方が日中より大 きい。日中のべき指数の平均値は0.28 であるのに対し、 夜間のべき指数の平均値は0.54 に達する。  夜間にべき指数が大きい要因として、大気安定度の影 響が考えられる。図 4 に示すように、夜間は上空の仮 温位が地上面より高く大気が安定しているのに対し、 日中は上空の仮温位が地上面より低く大気が不安定 化している。 さらに、大気安定度とべき指数の関係を定量化するため、 大気安定度の指標として勾配リチャードソン数を導入する。 図4 から、べき指数に対しては地表面付近の安定度の影響 が大きいと考えられるため、勾配リチャードソン数 Ri は MSM 地上面と 1000hPa 面(地上高 100m 前後に相当)の仮 温位差、風速差を用いて算出した(式(1))。 ‹ ൌሺ௚Ȁ்ሻሺడఏȀడ௭ሻሺడ௨Ȁడ௭ሻమ (1) ただし、g:重力加速度、T:絶対温度、:仮温位、u:風速、z:地上高である。図 4 と同条件で抽出したデータについて、勾 図2 ドップラーライダ 表1 ドップラーライダの主要諸元 型式 三菱電機 LR-09FLⅢ 送信光波長、 出力 1.5m 帯(アイセーフ波長) クラス1M(JIS C 6802:2005) 観測項目 視線方向風速、風速幅、SN 比 観測範囲 最大1.5km(分解能 75m 時) 距離分解能 30/75/150m より選択 最大観測風速 ±30m/s(視線方向) ビーム走査 PPI、RHI、VPPI、VRHI 等 寸法、重量 本体:約60×55×30cm 光学アンテナ:約23×16×46cm 本体:30kg、光学アンテナ:8kg 消費電力 200VA(AC100V) 図3 JAXA 実験用ヘリコプタ 表2 ライダによる平均風の高度プロファイルの観測諸元 観測期間 2011 年 3 月 29 日~6 月 1 日の内の 約32 日間 (雨天時等は観測せず) 観測手法 PPI 観測 (仰角 60 度一定で、 方位角±90 度を 2 度/秒でスキャン) 観測範囲 地上高330~1500m (約 65m 間隔、 観測範囲は気象条件により変動) ─ 38 ─

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配リチャードソン数とべき指数の関係を図5 に示す。変動は大きいものの、勾配リチャードソン数が正(大気が安定)の時に べき指数が大きく、負(大気が不安定)の時にべき指数が小さくなる傾向が見られる。特に、勾配リチャードソン数が-0.2 以 下では、べき指数は0.3 以下と小さくなっている。 3.2 乱流強度、乱れスケールの観測 ヘリポートへの流入風の乱流強度、乱れスケールを観測するため、ライダの視線方向を水平・風上方向に固定し、水平風 速の主流成分を連続観測した。ライダの観測諸元を表4に、観測範囲を図6に示す。ライダの視線方向(真北、0度)と観測 中の平均風向(5 度)の差は小さいので、以下、ライダが観測した視線方向風速を水平風速の主流成分と見なす。視線方 向風速の平均値、乱流強度(風速の標準偏差と平均値の比)の算出に加えて、ライダ観測値の欠測が十分小さい(データ 取得率 99%以上)観測レンジに対しては、風速時刻歴の自己相関関数を算出し、それを積分することにより乱れスケール を算出した。算出結果を図7、表 5 に示す。  アークヒルズ近傍(アークヒルズから 400m 以下)では、ヘリポート上と同じく、風速 10m/s 前後の風 が観測されており、乱流強度は0.2~0.3 の値を示す。  アークヒルズから約 400~800m の領域は、観測範囲の脇にある高層ビル S(図 6)の影響を受けて、平 均風速が低下すると共に乱流強度が大きくなり、最大0.7 近くに達している。  アークヒルズの北側 330~440m の範囲において、乱れスケールは 60~80m の値を示し、ヘリポート上 の風速計の観測値(90m)に近い。 4. ヘリコプタによる観測 JAXA 実験用ヘリコプタにより、アークヒルズ周辺の半径 5km 以内を螺旋状に上昇・降下して、アークヒルズ上空の風観 測を実施した。さらに観測後に調布飛行場に着陸する際にも風観測を実施した。観測日時、風の条件を表6 に示す。40Hz で観測した風データを平均時間30 秒間で移動平均して平均風と乱流強度を算出し、さらに高度 100m 間隔で平均して平 図4 アークヒルズ直上の 10 分間平均風速、および観測時 の仮温位差の高度プロファイル (抽出条件:地上高330m で風速10m/s 以上、風向が南南西) 表3 アークヒルズ直上の風速の高度プロファイル 時間帯 データ数*1 (イベント数*2) べき指数の平均値 (標準偏差) 全風向 南南西 全風向 南南西 日中 (11~14時) 107(7) 74(6) (0.28 0.28) (0.28 0.26) 夜間 (21~6 時) 253(9) 128(6) (0.54 0.22) (0.52 0.18) *110 分間毎に算出した 10 分間平均風速を 1 データとする *23 時間以内で連続しているデータは 1 イベントとみなす 図5 アークヒルズ直上でのべき指数と勾配リチャードソン 数の関係 (抽出条件:地上高330m で風速 10m/s 以 上、風向が南南西)

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均風と乱流強度の高度プロファイルを算出した。結果を図8に示し、風速分布のべき指数を表6 に示す。また、大気安定度 を評価するため、ヘリコプタで観測した気圧、気温、露点から算出した仮温位も図8 に示す。なお、移動平均時間の 30 秒 間は、風観測中のヘリコプタの上昇・降下速度が約150m/分であることを考慮し、100mの高度分解能が確保できる時間と して選定している。風観測時のヘリコプタの対気速度が約40m/s なので、30 秒間の移動平均時間は、風速10m/s 時におけ る2 分間の平均時間に相当する。アークヒルズ上空では高度 200~1500m、調布飛行場では高度 25~400m の範囲で風 データが得られている。以下、結果を示す。 (1) 風速分布のべき指数  アークヒルズと調布飛行場での観測の時間差が小さく、仮温位の分布にも大きな差がない(図 8)にも 関わらず、風速分布のべき指数は、アークヒルズ上空の方が調布飛行場より大きい(表 6)。アークヒ ルズ周辺は高層ビルが林立する都市部(地表面粗度区分 VI~V 相当)であるのに対し、調布飛行場周 辺は住宅地(地表面粗度区分II 相当)であり、地表面粗度によるべき指数の違いが現れている。  高度 400m 以下で大気安定度がほぼ中立である 3 日の方が、同高度帯でやや不安定な 9 日に比べて、風 速分布のべき指数が大きくなっている。両日の大気安定度の違いは、天候(3 日は曇り、9 日は晴れ) が影響していると考えられる。 (2) 乱流強度  アークヒルズと調布飛行場での観測の時間差が小さいにも関わらず、高度約 400m 以下では、アークヒ ルズの方が乱流強度が大きく、高度200m で 0.2~0.3 に達している(図 8)。べき指数と同じく、地表面 粗度の影響と考えられる。  アークヒルズの高度約 400m 以下では、南風の 9 日の方が、北風の 3 日より乱流強度が大きい。9 日の 同高度帯では大気がやや不安定であることに加えて、アークヒルズの南側に隣接する地上高約200m の 高層ビルの影響が現れていると考えられる。 表4 ライダによる乱流強度、乱れスケールの観測諸元 観測期間 2011 年 5 月 30 日 13:50~14:20 (30 分間) 観測手法 固定観測 (真北方向・水平に視線方向を固定) 観測範囲 地上高156.5m、 アークヒルズの北180~900m(75m 間隔) 観測レート 0.5Hz (2 秒間隔) 観測期間 の平均風 風向5 度、風速 11.3m/s (ヘリポート北東端設置の3 成分超音波風速計 による観測値) 図6 ライダによる観測範囲 表5 ライダによる乱流強度、乱れスケールの算出結果 距離*1 0m*2 335m 372m 410m 443m 平均風速 11.3m/s 9.9m/s 9.3m/s 8.6m/s 7.9m/s 乱流強度 0.38 0.27 0.29 0.33 0.40 乱れ スケール 90m 79m 75m 77m 64m *1 アークヒルズからの距離 *2 ヘリポート北東端設置の3 成分超音波風速計の観測値 図7 ライダによる視線方向風速(南風成分)の観測結果 ─ 40 ─

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 アークヒルズ上空の高度 400m 以上では、乱流強度は 0.1~0.2 の値を示す。  変動は大きいものの、高度約 400m 以上では、乱流強度は等方性を有していると考えられる。一方、高 度約400m 以下では等方性が崩れ、特に上下風の乱流強度の減少が顕著になる。 5. 観測結果に対する考察 5.1 ライダ観測結果とヘリコプタ観測結果の比較 ドップラーライダとヘリコプタの両手段によるアークヒルズ周辺での観測結果を比較する。  ヘリコプタで観測した風速分布のべき指数(表 6)は、ライダ観測結果の平均値(表 3)に比べて大き い。特に、3 月 3 日の観測結果は 0.69 と大きいが、図 5 に示すように大気が中立に近い状態ではべき指 数の変動が大きく、ヘリコプタ観測結果もその範囲内である。  ライダとヘリコプタの観測結果は、共に大気安定度が不安定な方が、べき指数が小さくなっている。(図 5、8、表 6)  ヘリコプタ観測で得られた北風時の高度 200m での乱流強度 0.21(図 8)は、ライダ観測で得られた北 風時の高度156.5mでの乱流強度 0.27~0.40(表 5)と比べてやや小さい。ライダ観測の乱流強 度はアークヒルズからの水平距離により変化 していることから、高層ビルと同程度の高さ である高度200m 以下では、乱流強度の観測位 置(水平位置、高度)への依存性は大きいと 考えられる。このため、ライダとヘリコプタ の観測空間の違い(前者は水平75m 間隔・高 度156.5m、後者は半径 5km の円内・高度 200m) が、乱流強度の観測値の差の一因と考えられ る。 以上の通り、ライダとヘリコプタの観測結果は整合性が あり、両観測結果は信頼できると考えられる。 8 ヘリコプタ観測による平均風、乱流強度、仮温位の高度プロファイル 表6 ヘリコプタ観測日時と風の条件 日時 風向/風速 (10 分間平均) 天候 べき指数 2011 年 3 月 3 日 13 時 58 分~ 14 時 28 分 N/5.1m/s アークヒルズ屋上 曇り 0.69 (高度200~ 400m) 2011 年 3 月 3 日 14 時 32 分~ 14 時 35 分 N/5.5m/s 調布飛行場 0.20 (高度0~ 350m) 2011 年 3 月 9 日 13 時 56 分~ 14 時 24 分 S/4.3m/s アークヒルズ屋上 晴れ 0.40 (高度200~ 400m) 2011 年 3 月 9 日 14 時 28 分~ 14 時 32 分 SSW/5.0m/s 調布飛行場 0.18 (高度0~ 350m)

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5.2 観測結果と建築物荷重指針の風分布との比較 今回のアークヒルズ周辺での観測結果を、建築物荷重指針5)で示される風速分布と比較する。 (1) 風速分布のべき指数 アークヒルズ周辺は、高層ビルが林立する都市部(地表面粗度区分VI~V 相当)であり、建築物荷重指針では、風速分 布のべき指数として0.27~0.35 の値が示されている。今回の観測結果では、日中は指針と近い平均値 0.28 が得られたも のの、夜間は指針よりかなり大きい0.5 を超える平均値となった(表 3)。また、べき指数は大気安定度の影響を強く受け、安 定時には大きく、不安定時には小さくなる傾向があることも定量的に明らかとなった(図4、5)。日中の平均値が不安定時の データも含めていることを考えると、強風時(中立時)では、べき指数は0.28 より大きい値になるものと判断される。なお、今 回はMSMを用いて算出した勾配リチャードソン数を大気安定度の指標としたが、MSMによる地表面付近の気象の再現性 については、観測値との比較等による検証が今後も必要と考えられる。 (2) 乱流強度 今回の観測では、高度150~200m において乱流強度 0.2~0.3 程度が観測された(表 5、図 8)。指針では、粗度区分 VI ~V において、同高度帯では 0.15~0.2 程度の値が示されており、指針に比べてやや大きめの値を示した。またビル近傍 では、局所的に0.7 近い乱流強度も観測されている(図 7)。 (3) 乱れスケール 今回の観測では、高層ビル間の高度約150m の乱れスケール(風速時刻歴の自己相関関数の積分値)として、60~80m の値が得られた(表 5)。指針では、地表面粗度区分によらず、一律に高度の関数として乱れスケールを与えており、高度 150mでは約230mとなる。観測値は、これに比べてかなり小さく、指針の解説に示される観測例と比較しても小さい。一方、 著者らが実施したアークヒルズ周辺の風洞試験1)では、高度150m 相当において流入風の乱れスケールが 150m 前後であ ったものが、アークヒルズ周辺では50~90m 程度まで小さくなり、観測結果と近い結果が得られている。風洞試験では、熱 的要素は考慮せず中立の状態を模擬しているので、高層ビル群の形状の影響により、乱れスケールが小さくなっていると 考えられる。 6. おわりに JAXA によるドップラーライダ、ヘリコプタを用いた都市境界層の風観測について報告した。ドップラーライダは、降水時 に観測できない弱点はあるものの、騒音の問題もなく、都市境界層の風観測に適していることが示された。またヘリコプタ による観測は、観測回数が限定されるものの、平均風に加えて乱流強度や大気安定度を評価可能なデータが取得可能で あり、有力な風観測手段であることが示された。得られた風観測結果は、既存の指針に比べて、大きな風の高度勾配(べき 指数)や空間スケールの小さな乱れが都市境界層にあることを示している。風速の大きな高度勾配は、離着陸するヘリコプ タにとっては、風速の急激な時間変化として操縦を難しくする方向に働くため注意が必要である。また乱れの空間スケール は乱気流の周波数特性としてヘリコプタの飛行に大きく影響するパラメータである。今後は、今回の風観測結果に加えて 風洞試験、数値解析等の結果も参考に、飛行シミュレーション用の風モデルを構築する予定である。 謝辞 アークヒルズヘリポートにおける風観測は、同ヘリポートを管理する森ビルシティエアサービス社の多大なる協力を得て 実施された。また、観測データの解析に際しては、都市乱流境界層研究会のメンバ各位の助言を得た。この場を借りて厚く 御礼申し上げます。 参考文献 1) 又吉、奥野、毛利、田村、中村、高層ビル屋上ヘリポート周辺の風計測、第 48 回飛行機シンポジウム講演集、2010.10. 2) Kataoka, H. and Tamura, T.: Hybrid RANS/LES Simulation of Wind Flow over An Urban Area, 12th Americas Conference

on Wind Engineering, 2013.6. 3) 奥野、又吉、照井、若色、穂積、井之口、舩引、実験用ヘリコプタ MuPAL-εの開発、航空宇宙技術研究所 TM-764、 2002.6. 4) 又吉、奥野、井之口、実験用ヘリコプタ搭載エアデータセンサの位置誤差計測飛行試験、航空宇宙技術研究所 TM-779、2003.8. 5) 日本建築学会、建築物荷重指針・同解説、丸善、2004. ─ 42 ─

図 1  アークヒルズヘリポート

参照

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