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伝統的米輸出国の農業生産性を規定する諸要因と緑の革命 : タイ国における米生産の生産関数による分析を中心として [Factors Determining Agricultural Productivities in Rice Exporting Countries and the Green Revolution: With Special Reference to Analysis of Rice Production in Thailand with Production Function]

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(1)

東南 アジア研究 10巻4号 1973年3月

伝統的米輸出国の農業生産性 を規定す る

諸 要 因 と 緑 の 革 命

-

タイ国におけ る米生産 の生産 関数 に よる分析 を中心 と

して-辻

博 *

FactorsDetermining AgriculturalProductivitiesin Rice ExpoJ・ting Countriesand the Green Revolution

with SpecialReference to AnalystsOfRice Production in Thailand with Production Function

by HiroshiTsuJII

First,factors determlnlng the productivity ofrice in Thailand are analyzed estimating the aggregate production functionofrice. Thailand is selected as a representativeofthecountrieswhichtraditionallyexportedricemostofwhichwas producedinbigdeltas. Second,theeconomicandpolicyImplicationsoftheresults ofthe aboveproduction function analystsarediscussed. In pursuingthesecond objective,aspecialattentionispaidtothegreenrevolutioninricewhichhastaken placeinsomeofthetraditionallyriceimportingAsiancountries.

From the production functionanalysts,itisfoundthattheirrigation projects have been the most important factor contributing to the fastgrowth of the productivityandofthetotalpaddyproductionforthesixties,thatthisfastgrowth isfacilitated by the growlng inputsofthe tractorsand fertilizers,and thatthe three naturalenvironmentalvariablesexplain to someextentthechanges inthe totalpaddyproduction.

Sincetheirrigationprojectsarenotappropriatepolicytocopewiththeshort-run shortageorsurplus problemsofrice,itissuggestedthatthericepremium policy maybeaproperpolicyfortheseshort-runproblem referrlngtOtheanotherstudy by theauthorandconsideringthepresentconditionoftheadministrativeorganof Thailand.

Because the fastgrowth ofpaddy production and productivity forThailand tookplacewithoutusingthe high-yielding ricevarieties,itisalsosuggestedthat thefastgrowth maybecalledthegreen revolutionof"Thaipattern"inriceand thatthesamechange probablycantakeplaceinBurmaorVietnam Whohasbeen traditionally rice exporting countriesand where considerableamountsofriceare producedintheirbigdeltas.

(2)

束南 アジア研 究 10巻4号 Ⅰ 問 題 と 課 題 最近 の東 南 アジアの農業発展 は, 第

1

に伝統 的粗放農業 か ら集約的農業- の変化傾 向,第

2

に作物 の diversificationとに よって特徴づけ られ る。 第 1の点につ いては,19世紀 中期 ごろ か ら20世紀 中期 ごろ までほ,例 えば タイや ビル マの米生産 の発展過程 では,作付可能 な土地 が 非常 に豊富 に存在 し, 内外 の需要 の増大 と政府 の促進的政 策 とが小農 の経済的 イ ソセ ソテ ィブ に対す る強 い反応 と結 びつ いて,伝 統 的農業 とい う言葉で表わ され る労働 と土地 と水牛 と簡単 な伝統 的農具 のみを使 った伝統 的技術 を,空間的に拡大応 用す ることで米 の供給 を増 加 させ て きた。 しか し, タイにおいては, 1950年頃 までにかつ て豊富にあ った作付け可能 な土地 は少 な くな り,上述 の よ うな土地単位面積当 りの米 の生産性 の上昇 を伴わ ない米生産 の増大 の方法 では, 国内国外 の増大す る需要 を十分 に満 たせ ない恐れが 出て きた。1) ここで,土地 のみ な ら ず労働や資本 の効率的利用,す なわ ち生産性 の増大が,米生産におい て必然的に必要 にな る。 この米生産 におけ る生 産性上昇 の必要性 は, また他 の東南 アジア諸 国,例 えば イ ン ドネシアや フ ィリピンの経 済計画 の中の農業 開発 の重 点 と もな ってい る。 東南 アジアにおけ る米生産 の生産性上昇 の必要性は,60年代 中期 以降急速 に進 展 した米 にお け る緑 の革 命 (green revolution)の基礎 条件 とな り, また逆 に緑 の革 命がそ の傾 向を促進 し た。周知 の ごと く,緑 の革 命は メキ シ コでの, ロ ックフ ェラー財 団 とメキ シ コ政府 の協 力に よ る

CI

MMYT

(国際 と うもろ こし ・小麦改 良 セ ンター)に よって開発 され た,小麦 の高収量 品 種 (high -yielding varieties, 以後

HYV

と略称) の全世界的な普及 に よ り, 戦 後間 もな く は じまった。そ の成功 を基 に, 1962年-フ ィリピンに InternationalRice Research Institute (IRRI)が, ロ ックフ ェラー ・フ ォ- ド両財団 とフ ィリピン政府 の協力で設立 され た。 そ して IRRIが開発 した米 の

HYV

(IR 品種) とそれ を基 に して または独立に各国で作 られた

HYV

が東南 アジア各 国や イ ン ド亜大陸 等に急速 に普及 され るとともに,米 におけ る縁 の革命が60年 代後半 に急速 に進展 した。2) 緑 の革命 の定義は まだ確定 され ていない よ うだが,筆者は以下 の よ うに定義す る。す なわ ち,"伝統 的 ・低生産性農業技術 か らの

,I

i

YV

や肥料,農薬,農業機

1)タイの米生産および,生産性の発展過程については JamesC.Ingram,EconomicChangeinThailand 1850-1970,StanfordUniversityPress,1970,pp.36-74.または辻井 博 「低開発国の農業生産性を 規定する諸要因と農業開発- タイの米の生産関数を中心 として- 」『農林業luj題研究』 7巻3号, pp.27⊥32を参照。 ビルマに関する同様の問題は,例えば Jonathan

V.

Levin,TheExportEconomies, TheirPdiiernofDevelopmentin HistoricalPerspective,HarvardUniversityPress,1960,pp.205 -217参照。

2)緑の革命に関 しては多 くの文献があるが, 概要を把握するためには次のものが適当であろう。 Lester R.Brown,SeedsofChange,TheGreenRevolutionand Developmentinike1970'S,NewYork: PraegerPublishers,1970;DanaG.Dalrymple,ImportsandPlantingsofHigh-YieldingVarieties ofWheatandRiceinikeLessDevelopedNations,Washington,D.C.:ForeignEconomicDevel・ opmentService,U.S.D.A.,Feb.,1972.

(3)

辻井 :伝統的米輸 出国の農業生産性を規定す る諸要因 と緑の革命 梶,酒瓶設備 な どの近代的投 入物の利用に よる集約的 ・高生産性農業へ の急速 な変化 と,それ に よる総生産畳 の急速な増大"であ る。 米 におけ る縁 の革 命の東 南アジア各国におけ る進展は国に よ りその内容に大 きな違 いがあ る。 イ ン ドネシアや フ ィリピンでは米 のHYVの作付けを中心 として,その他近代的投 入物 を用い て生産性 と総生産最の上昇を計 ることに重 点を置 いてい るのに対 して,大 デル タを米生産の中 心 と し,伝統 的米輸 出国であ るタイ, ビルマな どではHYVは まだほ とん ど使われ ていない。 タイでは,主要 な米生産地帯 であ るメナ ム ・チ ャオ プラヤ ・デル タが,雨季 には水 の総供給は 過剰気味で広い部分にわた って採水にな るため,短幹を特徴 と し,多量 の肥料 と農薬 の使用 と 水 の適切な調節 とい う条件が少な くとも満た されない限 り高収量 を得 られ ないHYVは,限 ら れた地域を除 いてほ とん ど生 育不可能 と言われ てい る。3) しか し,後述す るよ うに60年代には タイで も土地単位当 りの もみ の生産性 と総生産量は急速に増加 してい るのであ る。 タイの よ う に デル タに米作 の中心を持 ってい る東南 アジアの伝統的米輸 出国の米生産は戦後 どの よ うに発 展 して きたのか, また将来 どの よ うな方 向-進むべ きであろ うか。 米 は アジアにおいて最 も重要 な作物であ る。それ は世界人 口の約%, アジアの人 口の6- 7 割 の主食であ り,1970年 には世界 の総生産量 の約91%が ア ジアで生産 され てい る04)さ らに,東 南 アジア各国の農業 の中の米 の重要性は非常に大 き く, タイでは1960年には農業か らの GDP の44.9%が米 の生 産に よってい る。5) そ の他 の東南 アジア各国 も,農林水産業か らの GDPに 占め る米 の比率 は,10%以下 のマ レーシアを除けば,1960年代初期において,25%か ら50%の 間にあ ると推定 され てい る06) 農産物 のみを とれば この比率は さらに高 くな る。 以上の ことか ら,米 の生産性 を分析す ることに よって,東南 アジア各国の農業 の生産性を規定す る主要 な要 因が 明 らかにな ると考 え られ る。 上述 した よ うに,東南 アジアにおけ る伝統 的米輸 出国は,大 デル タをその米生産の中心 とし て発達 して きた。そ してデル タでは,一般に短幹 の米のHYVは生育 Lがたい。本稿では タイ を取 り上げ るが,それは この よ うな共通 の特徴を もち,共 に低 開発国 グル ープに属す る東南 ア ジアの伝統的米輸 出国の代表 としてであ る。いいか えれば, タイの米生産の研究結果は, ビル マや ベ トナムで の 米生産 の発展を研究 し, その政策 を 考 え るために役に立つ とい う ことであ る。

3)HayaoFukui,''EnvironmentalDeterminantsAffectingthePotentialDissemi nationofHigh-Yielding VarietiesofRice-A Case StudyoftheChaoPhrayaRiverBasin-,=TonanAjiaKenkyu(The SouiheasiAsianStudies),Vol.9,No.3,Dec"1971,pp.348-374.

4)これ らの数値はFAOのProductionYearbookと国連のDemographicYearbookから計算。

5)NationalAccountsDivision,NationalEconomic DevelopmentBoard(NEDB),NationalAccounts ofThailand,Bangkok:NEDB,1970,pp.34-35.

6)氏.FonolleraandE.E.Venegas,"The EconomicImportanceofRicein SoutheastAsia,"IRRト AE-64StaffMemo,Decリ15,1964.

(4)

東南 アジア研究 10巻4号 上記 の問題意識 の下 で,本稿では以下 の課 題を設定す る。 1) タイ国の米 の生産性 の発展を規定 した諸要 因を,1950年か ら68年 までの年次別 タイム ・ シ リ-ズ ・デー タを利用 して,重 回帰分析 の方法に よ り米 の生産関数 を推定 して分析す る0 2) 1)の分析に基づ き,伝統 的低開発米輸 出国の典型 であ るタイ国の米生産 の発展 と,緑 の革命 との関係を考察する 。 3)以上 の分析結果 に基づ き,戦後激 しい変動を示 した国際米貿易価格水準に対 し, 同 じく 大 きな変動を示 した米 の輸 出を重要 な外貨 ソース とし, また60年代には米 の総生産が急速に増 大 した タイ国の,米に関す る農業政策 に若干 の提言を行な う。

T

タイ国における米生産 の概要 1) タイ国の米生産 の特徴 タイ国の米生産については,す でに色 々の文献が存在す るので, ここでは簡単に,本稿 の課 題 との関係で重要であ ると考え られ る特徴を述べ るに と どめ る。7) タイは人 口約3700万人を有 し, イ ン ドシナ半 島の中央部 と西南部を 占め,1969年では世界第 6位 の米生産国であ る (1341万 トン, もみ)。 しか しその輸 出量は アジアでは1位,世界で も アメ リカに次いで2位 であ り,そ の国内生産量に対す る割合は1965年 には約27%,輸 出量 の落 ちた1969年で も約12% (102万 トン, 白米) とな ってい る。 タイの米生産お よび輸 出は, 日本 の19世紀 中期 の開国条約 とほぼ同質, 同時期 のボ- リング条約を契機 として,1930年代にかけ て内外 の米需要 の増大, 国家の米生産促進的な税制 と公共投 資,蒸気船 の使用 とスエズ運河の 開通に よる輸送 の効率化 な どに助け られ,生産お よび輸 出は急速 に増大 した。8) タイ国は中央,北,東北,南 と4地域に大 き くわけ られ,全地域で米を生産 してい るが, 中 央部が輸 出用 の米 の大 きな部分を生産 してい ると言われ てい る。 中央部 の生産の タイの全米生 産に占め る割合は1950-68年 の平均で約53%であ り,米生産におけ る中央部の重要性は明 らか であ る。 タイ米は 日本米 の よ うな JaPonica種ではな く長粒 の Zndica種が主でああ る。 東北 お よび北部では主食用 に もち米が広 く生産 され てい る。 大規模礎概投 資,米作 (主 として耕起)の機械化,肥料,農薬 な どの新生産要素 の投入の漸 増 な どは,主 として メナム ・チ ャオ プラヤ ・デル タを有す る中央部で進展 して きてい る。 中央 部 の大規模濯概計画は,19世紀末か ら 国の援助 の下に進 んで きた。 洪水調節 と 港概 のための

theGreaterChaoPhrayaProjectは1957年以来次第に完成に近づいてい る。1960年代には農

7)代表的な文献は,例えば,MinistryofAgriculture,RoyalThaiGovernment,AgricultureinThailand,

Bangkok,Sept.,1961,pp.2-21,120-173,and227-231;長谷川幸彦著 『タイの米穀事情』, アジア経 済研究シリーズ32, 東京 :アジア経済研究所,1962;

J

.

R

.

Behrman,Supply Responsein Unde r-develo♪ed Agriculture,A CaseStudy of Four Major AnnualCropsin Thailand,1937-1963,

Amsterdam:North-HollandPublishingCompany,1968,pp.92-115. 8)Ingram,EconomicChangeinThailand1850-1970,pp.36-92. 506

(5)

辻井:伝統的米輸出国の農業生産性を規定する諸要因と緑の革命 用 トラクター (

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)

が急速 に普及 し,筆者 の推定 では

1

9

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年 の

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5

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0

台か ら

6

9

年に

2

7

,

5

0

0

台近 くに達 してい る。9) 現在ではその農作業用総使用時間の約

5

0

%

が主 として賃耕 とい う形 で米生産に使われ てい る。10) これ に よって,水牛では 雨が こなければ耕作で きず作付不能 の水 田が発生す る問題を解 決 し,作付面積 の増大に貢献 してい る。 新生産要素 の投 入の増大は, そ の国内生産が ないか, あ って も僅少 であ るか ら, そ の最近 の 輸入量の急増 に よ り推測で き る。 新 品種に関 しては,特 に

1

9

6

9

年か ら

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品種が導入 された。それは

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f品種であ り,

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は うるち米,

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2)は もち米であ る

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7

1

作物年には

1

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万 - クタ-ルほ どに,

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RD3

等が作付け され た とい う報 告があ る。11)しか し

HYV

の普及は, タイ国において

I節 で述べ た よ うな理 由 もあ り,や っ と緒についた程 度であ る。 タイの中央部では,雨だけでは米作に必要 な水が十分でな く,人工的な水 の供給が必要であ る。 そのため確慨設備が音か ら建設 され て きたが, 同地域 の平坦 さと,排 水設備 の不完全 さな どのため,主 として洪水調節 のための水 の分散をその機能 としてい る。 したが って,水 田の水 位 の適切 な調節 は不可能で,採水地帯が多 く浮 き稲 や,それ に近い性質を持 った,節 間伸長が 水位 に よ り変化 しうる長幹 の品種 しか植 え られ ない場所が多い。1惣) 作付けには直播 と移植 の両 方が行なわれ てい る。 タイ米は平均規模 4- クタールほ どの小農に よって多 くの部分が生産 され てい る。 小作制度 は フ ィリピンやかつての ビル マな どの東南 アジア諸 国ほ どの規模 と密度では存在 しないが,近 年 中央部での進展が激 しい との報告 もあ る。 次に タイ国におけ る米 の消費 と輸 出について

2-3

の点を指摘 してお こ う。 米は タイ人 の主 食であ り,

1

人当 り平均年間約

1

7

0

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とい う多量 の白米を消費 してい る

1

3

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米輸 出に よる外貨収入は

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9

7

0

年 に

1

.

3

億 ドルほ どで, 同年末 の

約8

億 ドルの外貨準備 と比べ るとき,その重要性は明 らかであ る。 それは

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1

9

6

9

年には全農産物輸 出の

3

3

%

,全輸 出額 の

2

0

%

を 占める 。 また政府は

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と呼ばれ る米輸 出税 を徴収 し

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9

5

7

年 には全政府収入の

1

8

%

に ものぼ る税収 を上げた。 しか し最近はその重要性 も減少 し

,1

9

7

1年

4

月には若干の例外

9)タイ国の統計や,RoyalThaiGovernment,IndustrialFinanceCorporationofThailand,andUSOM toThailand,ThailandFarm MechanizationandFarm MachineryMarket,Bangkok:A Coordina・ tedIndustryStudyProject,1969の資料を使い, トラクタ-の輸入台数,耐用年限,使用状況を考慮

して推定。

10)RoyalThaiGovernment,IndustrialFinanceCorporation,& USOM toThailand,ThailandFarm Mechanization,pp.80-114.

1D Dalrymple,High-Yielding VarietiesofWheatandRice,p.4,fn.12.

12)この中央部の水供給の特徴は,京都大学東南アジア研究セソターの海田,高谷氏などその間題に関する 専門家の見解等に基づ くものである。

13)NationalStatisticalOffice(NSO),RoyalThaiGovernment,AdvanceReport,HouseholdExpenditure Survey,B.E.2506,WholeKingdom,Bangkok:NSO,Undated,p.29and57.

(6)

束南 アジア研 究 10巻4号 を残 し廃止 され た。14)また タイ国で の米生産は

,1

9

6

9

年 に

GDP

9.

9

%

を 占め ると推定 され て い る。15)

2)

戦 後 におけ るタイ国の米生産 の発展 の- 特徴 Ⅱの1)で記述 され た諸特徴 を持 ってい るタイの米生産が,戦 後 どの よ うなパ タ- ソで発展 して きたか を,若干 の統 計を使 って示 してみ よ う。 期 間は戦争直後 の混乱期 を除 き

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9

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年か ら

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年 までを取 る。

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作物年か ら

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7

1作物年 までの タイ国におけ る もみ の総生産量

0

,米 の総 作付両

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,お よび

1

- クタール当 りの もみ の収量,

0/A

の年次別推移を示 してい る。 四 .\

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1,,(川 ))川)OlI(a川S 1".-'H,11 195㌔6 1969(61 196尭6 1979(71 Crop Year

Fig.1 PaddyProduction,AreaPlantedtoRice,andAverageYieldinThailand Source:RiceDepartment,MinistryofAgriculture;Departmentof

AgriculturalExtensionasfrom 1969/1970.

Note:Theasterisk,*,indicatespreliminaryestimatesbythegovernment.

0や

A

に対す るデー タは,後述す るよ うにそ の信頼性 に問題が あ るが,長期 にわ た る傾 向を 検討す るためには十分使 用に耐 え る と考 え らjlる。

0/A

は, タイ国全 体 に対す る米 の平均土

地生産性 の指標 と考 え られ る。 同図は, 明 らか に次 の よ うな注 目に値す る特徴 を示 してい る。

す なわ ち

,5

0

年代 にお いては, もみ の総生産量 と米 の作付面積 とは共 にほぼ同水準 に停滞す る

14)タイ国の貿易や ricepremiumなどに関するデータは,BankofThailand,=MonthlyBulletinHの色 色な月号か ら得たものである。

15)NationalAccountsDivision,NEDB,NationalAccounts

o

fThailand,pp.34-35, 508

(7)

辻井 :伝統的米輸出国の農業生産性を規定す る諸要因と緑の革命 傾 向を持ち,ゆえに平均土地生産性 も同 じ傾 向を持 ったのに対 し,60年代にそれ らの変数はそ の停滞か ら脱 し上昇傾 向に転 じた。 この変化は,特に もみの総生産量 の70年代におけ る急速な 上昇に よって原著に示 され てい る。 この急速な上昇には,作付両横 と平均土地生産性 との両方 が貢献 してい るが,後者 のほ うが前者 よ りも70年代におけ る上昇傾 向が一段 と大 きい ことか ら, 平均土地生産性の上昇 の貢献が特に強か った と考え られ る。 上記の よ うに,戦後のタイ国におけ る米生産の発展は,停滞的であ った50年代か ら60年代に 入 ると,主 として平均土地生産性の上昇に よ り総生産量が急速な上昇傾 向を示す とい う大 きな 変化を示 してい る。 ではなぜ60年代にな って平均土地生産性の上昇が起 こったのであろ うか。 若干の統計資料に よれば この理 由は,第1に近代的生産要素の投入の急増であ ることが明 らか にな る。 この事実は本稿末の表1の統計 データに示 され てい る。 データの内容については後に 詳 しく述べ るが,米生産に対す る肥料 の投入量の増加はそれ 自身のデータは存在 しないが,肥 料 お よび農薬 の国内生産額お よび輸入金額 Fl, または窒素肥料の推定 消費料F2,の1960年前 後か らの急増に よ り十分に推測 され得 る。 また米生産に対す る資本サ ー ビスの投入の増加は, それ 自身のデータは存在 しないが, タイ国の トラクタ-の輸入金額

K

l, トラクタ-と農業機 械 の輸入金額K2, または農業 トラクターの推定台数K3の60年代におけ る急増に よ り,かな り の確か さで推測 され得 る。 第2に, この よ うな近代的生産要素 の投入の増加に加えて,1957年 に完成 したチ ャイナ- ト分水 ダムに よ り,1958年以降の中央部におけ る水 の コン トロールの進 歩は,1963年以降の プ ミボ ン ・ダム等の大 ダムの水制御の効果 と共に,米生産お よび土地生産 性 の上昇に大 きな影響を与 えた と考え られ る。 ここで さらに注 目すべ きことは, この タイ国での 米の土地生産性の上昇 と 総生産量 の急増 が,いわゆ る

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を伴わないで生起 してい るとい うこと,いいかえれば, いわゆ る米 の

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は1966年に IRRIに よ り発表 ・普及 された IR8(

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)

を最初 として,1967年の IR5,それ以後の IR20,IR22,IR24,あ るいは アジア各国で IR 種を基 としてまたは独 自に 開発 された

HYV

であ り,それ らが60年代後半に アジアに広 く普及 されたのに対 し, タイ国で の米生産におけ る上記の停滞か ら上昇への変化は,1960年頃か ら始 まってい るとい うことであ る。 本稿では, この変化において上記の ごと く

HYV

を伴わず,近代的生産要素の増投お よび水 制御の水準の上昇が,米の総生産お よび平均土地生産性 の上昇 に及ぼ した影響を,生産関数の 推定を通 じて計量的に解明す ることを第1の課題 としてい る。 Ⅲ タイの米の生産関数の推定 1)経済理論 モデル ‡節でのタイ国の米生産に関す る記述に基づ きタイの米生産関数の経済 モデルを以下 の ごと

(8)

東南 アジア研究 10巻4号 く定義す る。 ここで 0は

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i

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1年 におけ るもみ生産量 A は

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i

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年 の作付面積, Rは i年末 の擢概 面積,

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年 の非濯概地域 におけ る作付画掛 こ対す る収穫面積 の割合, H

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年 の港概地域 におけ る同比率,

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はt年 の労働投 入量, Fは t年 の肥料投 入量, K は i年 の固定資本サ ー ビス投 入量,

W

はt年 の水 の河川ない し人工に よる供給 ・制御に関す る指標, Cは気候要因であ る。 (1)式 の よ うに生産関数を定義す ることは,戦 後 タイ国において1本の米 の生産関数 の存在を 仮定す ることであ る。 右辺 のは じめの2変数は土地投 入に係わ るもので あ り,それ とエとで伝 統 的生産要素を構成 してい る。

F

,

K

,お よび

W

の中の水制御に係わ る部分は近代的生産要素 ない し生産に影響を与 え る要 因であ り,標本期 間であ る1950年か ら1968年 までで,初期 の間は 0にほ とん ど影響を与 えず,後半にな って実際に影響を与 え始め ると考 え られ る。 近代的生産 要素に関す るデータは農薬 の使用な ど他に も考 え られ るが,推定 の過程 で多重共線 の問題な ど が生 じたので(1)式では タイ国の戦後 の米生産 の発展の過程 で と くに重要 と考 え られ る肥料の使 用 と固定 資本サ ー ビスの投入を採用 した。 右辺 の最初 の変数 の中の

(

A-R)

は, 非濯概地域での米 の作付面積 の指標 として導入 され た。右辺 の最初 の2独立変数を使用 したのは, タイにおけ る濯慨計画の進展 の米生産に及ぼす 影 響を明示 したか ったか らであ る。 ただ催概面積がすべ て作付可能地域 ではない ことは広 く知 られ てい るが,両変数は少な くとも計画 の進展 の重 要な指標にな ると考 え られ る。 漕敵地 の土 地限界生産力のほ うが非濯概地 のそれ よ り大 きい と考 え られ,ゆ えに後者 の変数 の係数 のほ う が前者 のそれ よ り大 きい と仮定で きる。 また二つ の係数を比較すれば,確概に よる土地生産力 の上昇 の程 度を知 ることがで きる。 両変数に

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お よび

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,が乗 じられ てい るのは, タイ国では作付面積 と収穫面積 との差が,早魅,洪水,病虫害 な どに よ り大 きいので,それを 調整す るためであ る

肝 とCは, 低 開発国の農業がその低技術水準のために, 自然条件 と く に水供給条件に大 き く影響 され る事実を計量す るため導入 された。(1)式 の初めの五つ の独立変 数 の偏微係数は,限界生産性であ るか ら,正であ るべ きであ る

肝 の係数 の符号については デ ータの検討 の所 で詳述す る

。C

には後述す るよ うに,中央部におけ る雨量 の指数を取 るが, メ イ国の米生産の中心をな してい る中央部は Ⅰ節 で述べた よ うにそ こ- の水の総供給量が過剰で 510

(9)

辻井 :伝統的米輸出国の農業生産性を規定す る諸要因 と緑の革命 あ り,ゆえに

C

の係数は負の符号を取 ると考 え られ る。 2)統計的 モデル 本論文 では

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の関数型 を仮定す る。 統計的 モデル としては

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onmode

l

を用い る。 す なわ ち,

0-b

o

l(A-R)

-

-

莞 」

b

llR

葦 サ LMBlF

机 K]b5〔WM 6

l

C

〕b7

l

C

〕b8

l

V]

(

3

)

と関数型を きめ,

u

お よび

l

ogv

に下記 の仮定を与 え る

。u,l

ogv

を (T

x

l)の

ve

c

t

o

r

と し,X で (Tx8) の独立変数 のマ トt)ックスを表わす とす ると, E(u)-0 E(u21)-02,i-1,---,T,・---.・・-・・---(5) E(utuc′)-0,t,

i

-I,・・・.・・,T,iキil,・・-・・--・・(6) E(X'u)-0 (X′X)1が存在す る。

(

4

)

式は撹乱項が 0を

me

an

とす る分布を持つ こと

,(

5

)

(

6

)

式はそれぞれ

homos

ke

da

s

t

i

c

i

t

y

non-

aut

o

c

o

r

r

e

l

at

e

dne

s

s

の仮定,(7)式は

X

が uと独立であ ることの仮定 であ る。ここでは

X

は標本問で固定 された もの と仮定す る。

(

8

)

は独立変数 の各時系列が完全 な

mul

t

i

c

ol

i

ne

a

r

i

t

y

の状態でない ことの条件 であ る

。l

o

g

vについて も uと全 く同 じ仮定を与 え る. す ると(2),(3) 式 の係数 の最小二乗法推定値は

BLUE

の条件を満 たす。 本論文 では, この係数推定法を用い る。16) 3)データの検討 生産関数推定 のための データは, 大部分 タイ国政府発表 の ものを 使用 した。 若干 の国連 の FAOのデ-タや, タイ国内の政府以外 の機関の公表す るデータを, 政府 のデータが ないか, あ って も信頼性が低 い場合 または統計的結果が好 ま しくない場 合に使用 した。 ここではそれ ら デ-タの信頼性 を検討す ると共 に, データの修正が必要で可能 な場合,そ の方法を記述す る。 最終的に推計に使われた デ-タは,本稿末 の

Ta

bl

e

にその ソ-ス と共に提示 され てい る。 もみ の生産量 の長期 シ リーズ としては,

Mi

ni

s

t

yofAgr

i

c

ul

t

ur

e

の推計 とFAO の ものが あ るが,

FA

O の ものは タイ政府か らの報告に基づ いた

2

次的 な ものであ るので 採用 しない。 前者は

Phuyai

ban

(村長)を先端 として,彼 らの各村におけ る生産量 の推計値が行政機構を通 じ て上級機関-報 告 され,

Mi

ni

s

t

r

yofAgr

i

c

ul

t

ur

e

で集計 され た ものであ る。 先端 での推計 に 大 きな問題が あ るの と,報告や集計 の過程 で も問題が あ るので, この 0の推計値 の絶対水準 の 16)

C

l

a

s

s

i

c

a

ll

ne

i

a

rr

e

g

r

e

s

s

i

o

nmo

d

e

l

および

BLUE

の条件については A.

S

.Go

l

d

b

e

r

g

e

r

,Econometric

(10)

東南 アジア研究 10巻4号

信頼性はあ ま り高 くない。 しか し標本期間には, この統計収集方法はほ とん ど変わ らなか った と言われてい るので, そ の年 々の変化は 信頼性が高い と考 え られ る。17) Pendletonに よれば Ministry ofAgricultureは輸 出市場 でのバへ-ゲニ ソグのため0を過小公表す る傾 向にあ る。18'

実際

1

9

6

6

/

6

7

年 よ り NationalStatisticalOffice(NSO)が samplingmethodと cropcutting surveyに基づ く0の推計を始めたが,それは上 の推計値を

6

6

/

6

7

か ら

6

8

/

6

9

3

生産年にわた って

1

4

か ら

1

7%

ほ ど上回 ってい る。19)NSOの0の推定値 のほ うが,その計測方法の客観性か ら 見て,そ の絶対値 の信頼性が Ministry ofAgricultureのそれ よ り高 い と考 え られ る。 しか し NSO の新推計は

6

6

/

6

7

生産年か らしか存在 しない。 以上 の分析を基 に最終的な 0のデーメ には

,1

9

5

0/

51

生産年か ら

1

9

6

5

/

6

6

生産年 までほ, Ministry ofAgricultureのデータを

1

9

6

6

/

6

7-1

9

6

8

/

6

9

の期間におけ る NSO のデータの Ministryのそれに対す る平均倍率

1

.

1

5

2

6

でふ くらませて使 用 し

,1

9

6

6

/

6

7

か ら

1

9

6

8

/

6

9

までは NSO のデ-タをそのまま使用 した。

濯概面積 R は RoyalIrrigation Department(RID)が発表 した デ-タを その まま使用 し た

。R

には Ⅲの1)で述べた よ うな問題があ るが,それを修正す るための適切な資料が存在 し ない。なお

,1

9

51

,5

2

,

5

3

,5

5

,5

7

, お よび

5

8

年に対 しては RID のデータが公表 され ていな か った り,筆者 の手に入 らないので,直線補間に よ りタイ ム ・シ リ-ズを完成 させ た。

R

の値

は Statelrrigationと Peoples'Irrigation, お よび Tank lrrigationの各面贋 の和であ る。

作付面積 A と収穫面積Hに関す る長期 タイム ・シ リーズ ・データは Ministry ofAgricul -tureの もの しか存在 しない。 それ らは上述 した,

0

に対す る方法 と同 じや り方で収集 された

ものであ り,信頼性はあ ま り高 くない。 しか し,先述 の NSO の新推計か ら得 られ る作付面積 は,Ministry ofAgricultureのそれ と上述 の3生産年に関 してあ ま り大 きな差異を示 さず, その他に後者 のデ-タを改 良す るための情報は存在 しない ので,Ministry ofAgricultureの 公表 した

A

H

をその まま使用す る。 米作付両横 の被害率は(1)式が示す よ うに,非擢概地域 と濯概地域 とで別 々に Hn/AnとH,/Ar とに分けて取 り扱 うのが望 ま しいが, データが存在 しないので,H/A を共通に利用 した。 これ に よ り両地域 で被害 率が 同 じとの仮定を置 いてい ることにな る。 米生産へ の労働投 入 Lに対 しては統計 デ-タが存在 しないので,近似 的 データとして Pradit と W agnerに よる農業- の投 入可能人 口の推計値を使用 した。20) 17)0に関する Ministry ofAgriculturelのデータの収集方法については Behrman,Supply Response, pp.200-210を参照O

18)R.L Pendleton,etal.,Thailand:AspectsofLandscape andI,ife,AmericanGeographicalHa nd-book,New York:Duell,Sloan,andPearce,1962,p.135.

19)この NSO の推計は同機閑による RiceProductionSurveyに基づいてお り,詳細は次の文献に述べら れている :NiyonPurakam,"RiceProductionSurveyinThailand,"aTechnicalPaper,Bangkok: NSO,OfficeofthePrimeMinister,April,1969;NSO,PilotCrop EstimationSurvey,Thailand, 1964,Bangkok:NSO,OfficeofthePrimeMinister,June,1964.

20)この人口推計に関しての詳細は PraditCharsombutiand M.M.Wagner,Estimatesof ikeThai Populaiion,1946-1976,and Some AgriculturalImplications,Bangkok:KasetsartUniversity, March,1969を参照。

(11)

辻井 :伝統的米輸出国の農業生産性を規定する諸要因と緑の革命 近代 的生産要素 であ る肥料 と固定 資本サ ー ビスの投 入 に関 しては,事前 にその信頼 性が評価 しがたい種 々の時系列 デ ータが存在す るので, そ の中で適当 と考 え られ る ものを

2- 3

採用 し, 生 産関数 の推定 の過程 で最終的に選定 す ることと した。Fには肥料 お よび農薬 の百万 ドル単位 で表示 した, 輸入金額 と国内生 産額 を加 えた もの

F

lと,FAO に よる 1,000トンの単位 で表わ した窒素肥料 の使用量推定 値 Faを採 用 した。 米 のみ に使われ た肥料 のデ ータは 存在 しないの で, これ らの データは近似値 であ る。 Kには, 当然米生産 に投 入 され た固定 資本サ - ビスを当 て るべ きだが, そ の データは存在 し な いので,近似値 と して百万 ドルの単位 で表示 した トラ クターの輸入金額

K

l, トラクタ- と農 業機械 のそれ

K

,A,または トラクター輸 入台数 ・耐 用年限 ・使用状況を考慮 した筆者 の農業 用 ト ラ クタ-台数推定値K3を採用 した.21)Fと

K

を貨 幣価値 で表わす場合,実 質化す ることが必要 だが,適切な長期 のデ フ L,一夕-が入手 で きない。そ こで ドル表示 に よ り近似 的に実 質化す る ことを試み た。 なぜ ドル表 示 に よ り実 質化 され るか とい うと,戦 後 ドルの価値は比較的安定 し てお り, それ ゆ えバ ー トと ドルの交換比率は タイ国の卸売物価 とか な りの正 の相関を もって変 動す ると考 え られ るか らで あ る。 上記 の ごと く,L,F,Kの生産要素 に対 してほ, 近似 的 デ ータを採用 したので, 推計結果 にバ イ アスが生 じると考 え られ るが, タイ国にお いてほ上述 した よ うに米生産 の総農業生産に 占め る重 要性が圧 倒的に大 き く, また トラクターの米生産- の使用 も上述 の ごと く非常 に大 き い ことな どか ら, このバイ アスはあ ま り大 き くない と考 え られ る。 肝 には, タイ国で最 も重 要 な米生産地帯 であ る中央 部での最重要河川チ ャオ プラヤ河に よる 水供給 お よび制御 の指標を取 った。 タイ政府 の水利事業 の進展 に伴 ってそれは三 つに分け られ る。 Wlは 中央 部南部 のデル タ地 域 のほぼ中央 に あ るアユ タヤでの, 同河 川の年間最高水位 で あ り,海 面か らの メー トル数 で計 られ てい る。 この値 は

1

9

5

0

年 か らチ ャイ ナ- トに分水 ダムが で きる

1

9

5

7

年 までの期間採 用 され, それは 中央 部 においてあ ま り水制御 ので きない期 間 の指標 であ る。 この期 問においては アユ タヤでの最高水位 は,平坦 な 中央部 におけ る水供給 のバ ロメ ー ターであ る。 それは

1

8

31

年か ら計 られ てお り, そ の年 か ら

1

9

5

9

年 まで の最高水位 とタイ国に おけ る米生産 の関係か ら,

W

lが

3.

5

0m

か ら

4.

1

0

m

の間にあれば豊作が期待 で きる とされ て い る.包含

)1

9

5

0

年 か ら

1

9

5

7

年 までの間 では,稿末

Ta

bl

e

に示 され てい るよ うに Wlはほぼ この 範 囲に あ る。 ゆ えにそ の係数は正 の符号 を取 ると考 え られ る。 第

2

の期 間は

1

9

5

8

年か ら

1

9

6

2

年 まで, チ ャオ プ ラヤ河 デル タの尖端 部チ ャイナ- トに分水 ダ

21) トラクターの台数の推定に関 しては注 9)を参照.Fl,Kl,K2に関 してはDepartmentofCustoms, AnnualStatementofForeignTradeof Thailandの各年号,BankofThailand,"MonthlyBulletin," の各月号,およびMinistry ofAgriculture,AgriculturalSiatisiicsofThailand,の各年号のデ-メ により計算。F2ほ FAO のProductionYearbookの各年号に発表されているデ-タを採用。

(12)

東南 アジア研究 10巻4早 ムが 出来, デル タでの水制御が少 し可能にな った年か ら, 同河 の上流に プ ミボ ン ・ダムが建設 され,それ に よる水制御が さらに可能にな る年 までの期間であ る。 指標 には,分水 ダムの少 し 上流におけ る年間最高流量 の,その長期的平均値か らの粟離率を取 りW2で示 した. これは中 央 部- のチ ャオプラヤ河に よる水の供給 の指標であ る。 この係数 の符号 は正であ ると考 え られ る。 第

3

の期 間は

1

96

3

年か ら

1

9

7

0

年 までで, チ ャオプラヤ河上流 の巨大 な プ ミボ ン ・ダムに よ る同河の流量 の制御 の, 米生産- の影響を とらえ るため この期間に

1

の値を取 る

0-1

ダ ミー

W

3を使用 した。23)その係数 の符号は正であ ると考 え られ る。 Cには,米生産に重要 な影響を与 え ると推測 され る雨量を用い る。 中央部に配置 され てい る

7

観測地 点の年間雨量 の単純平均値 を

mm

で表わ し,その指標 とす る。2

4

)

4

)推定結果 推定 され た係数 の符号 の検討

,t

検定,重相関係数お よび

Dur

bi

n-

Wat

s

on

統計量 の検討 な どに よ り,理論的 ・統計 的に妥当で,かつ多重共線や撹乱項 の 自己相関 な どの問題 の少ない推 定式を得 るため,推定 を繰 り返す ことに よ り改善,選定 し,推定結果 の うち特に良好 な推定式 を4本以下に提示す る。

0-8

(

7・

.

08

43

)

4+1・

(

1

0.

61

53

5

2

)a

A-R)

.溝 3

3

,

7

aR%

'冒

三・

.

TF

l

+2

74.

8

8

α

Ⅳ 1

+681

.

3

7

α

l

y

3

-1.

71

8

5

α

C

(

3.

1

9)

(

3.

09)

(

-2.

9

9)

R2

-.

9

9

03

,

R'

2

-.

9

8

5

5

,

D-W s

t

at

i

s

t

i

c-2.

41

6

6,s

ampl

es

i

z

e-1

9

,

(

1

9

5

0

-1

96

8)

0-1・

(

9.

9

72

073

)

a(

A-R)

.1

(

5

1

4

5

6

8

3

aR-告-

(

1

9

,

6

冒6

5

b

F

2

+3

0.

8

05

e

Kl

+521.

64

c

W

3

-.

93

4

2

2

C

(

1.

02)

(

1.

4

1

)

(

-2.

2

6)

R2

-.

98

5

0

,

-

R2

-.

9

74

3

,

D-W s

t

at

i

s

t

i

c-2.

24

1

6,s

a

mpl

es

i

z

e-1

4

,(

1

9

5

5

-1

96

8)

l

og0

--

(

-.

31

2

95

5) (

9.・

1

93

0.

03

62)

3

al

og。

A-R'-

-

(

2

4

2

7

3

7

,

8

b

l

ogR

+.

1

05

94

a

l

ogF2

+.

02

1

6

96

T

l

ogWl

+.

0543

3

3

C-・

--

-(

5.

94)

(.

6

2)

(

.

4

1)

・(ll)

R2

-.

97

6

2

,

R2

-.

96

7

0

,

D-W s

t

at

i

s

t

i

c

-1.

9

7

7

0,s

a

mpl

es

i

z

e-1

9,(

1

9

5

0

-1

9

6

8)

23)水供給 ・制御に関する期間区分は,京大東南ア研のタイ国の

Hyd

r

o

l

o

g

y

の専門家海田氏の提言に基づ いている。

24) 7地点は

Na

kh

o

nS

a

wa

n,Lo

pBur

i

,Ba

n

g

ko

k,Na

kh

o

nPa

t

h

o

m,Ph

e

t

c

h

a

b

ur

i

,Ar

a

n

yaPr

a

t

h

e

t

,

a

n

d

Ch

a

c

h

o

e

n

gs

a

o

.

(13)

辻井 :伝統的米輸出国の農業生産性を規定す る諸要因と緑の革命

l

o

g0

-

-・

(-.

41

3

1

1

2

)

3+・

(

9

9.

06

7

99

9)

alog(A-R)

一十

elogR号

+.

075432blogFa+.035225alogK

l

+.

1

03

8

0l

ogC---

-

--(

2.

24)

(

1.

1

4)

(

.

9

0)

(

1

2

)

R2-,9843,R2-.9745,D-W

s

t

at

i

s

t

i

c-2.

2

6

0

5,s

a

mpl

es

i

z

e-1

4

,(

1

9

5

5

-1

96

8)

各推定値の下の括弧内の数字は各係数の i統計量である. 各係数の右上の ローマ字は iテス ト に よ り,その係数が 0であ るとい う帰無仮設を帰却す るときの有意水準の指標であ り,

a

,b, C,d,e

,f

の順に

1

,5,1

0,1

5,2

0,3

0

% とな ってい る。 R2は決定係数, R融 はその 自由度

修正済み値,D-W

s

t

at

i

s

t

i

c

は撹乱項 の 自己相関をテス トす る

Dur

bi

n-

Wat

s

ons

t

at

i

s

t

i

c

であ る

。l

i

ne

a

r

l

o

gl

i

ne

ar

の方程式を

2

本ずつ示 した。 上述の生産関数の推定の選定 ・改善 の過程があ るため,上に提示 された4式は,(1)式の経済 モデルの全説 明変数を含んでほいない。土地投入については,

4

式 とも上で定義 した

2

種類の 変数を含んでい る。 しか し労働投入Lに関 しては,すべ ての試みでその推定 された係数が統計 的に有意にな らないので,それを説 明変数 として生産関数に導入で きなか った。 こうい う結果 にな ったのは,Lのデータが上述 した よ うに, ス トック量 の農業- の投入可能人 口であ るとい うことに原因の一部があ ると考え られ る。 肥料の投入については,

F

lと

F

Bの両方が上の

4

式の中に含 まれ ている。 固定資本サ -ビス の投入については,Klについてのみ有意な係数が得 られた。水の供給 ・制御の指標 W1,WB,

W

3に関 しては,

W

aの係数の推定値がすべ ての推定結果で有意にな らないので,

W

芝は

4

本の 式 の中には含 まれていない。 雨量 Cは 4式すべ てに含 まれている。 この

4

式の中か ら, タイ国の米生産関数 として,

1

式を選定 しなければ な らない。

4

式 とも Raと東男の値が高 く,式 の説明力は好 ましい水準にあ る。 その内(9)式が最大のRaお よび 妻2倍 を持 ってい る。 各式 の各係数に対す る iテス トに よれば,(9)式 の係数がすべ て高い有意性を示 しているのに 対 し,(lC?式はその係数推定値の安定性が低 く, コブ ・ダグラス型の(ll), (12)式では さらに安定性 が悪 くなる。 本稿では時系列 データを使 ってい るので, この推定値の不安定性 (低いt値)は 多重共株問題 の発生を示 してい ると考え られ る。 上述の統計的 モデルの(8)の仮定 との関連では それは,(X′X)1は存在す るが,独立変数問に高 い相関があ り,その要素 の値が大 き くな り, ゆえに係数推定値の分・散 ・共分散行列 ∑ 的-62(X′X)1の要素が大 きな値を取 るので, 推定 された係数が不安定になるとい うことであ る.25) 上の

4

式の

Dur

bi

n-

Wat

s

on

値に よ り,上述 の統計的 モデルの(6)の仮定をテス トで きる。 す なわち撹乱項 の 自己相関のテス トであ る。 このテス トに よると,(9),(10),お よび(12)式に対 し

2

5

)

多重共線については

Go

l

d

b

e

r

g

e

r

,EconomeriicTheory.pp.

1

9

2

-

1

9

4

を参照0

(14)

東南 アジア研究 10巻4号 て

f

i

r

s

to

r

de

ra

ut

o

c

o

r

r

e

l

a

t

i

o

nc

o

e

f

f

i

c

i

e

nt

,p-0

の帰無仮設が

,p>0

に対 して

1%

の有意水 準で

a

c

c

e

pt

されたが

,

β

<

0に対 してほ, テス ト結果は不安定になる。 (1)式に対 しては

,2.

5

%の有意水準で p

<

0と

p

>0

の両方に対 して

,p

-

0が

a

c

c

e

pt

された。丑6) Ⅲの1)で仮定 した よ うに 2番 目の独立変数 の係数は最初の変数のそれ よ り大 きい ことが望 ましい。 この仮定は(lCb式を除いて満た されてい る。 また C の係数は負の符号を持つ と仮定 し たが, これは(9),(lC?式で満た されてい る。 以上の諸 点の検討に よ り, タイ国の米生産関数 としては(9)式を採用す ることに決定す る。(9) 式には固定 資本サ -ビス,特に トラクターな どの投入が説 明変数 として含 まれていないが

,

Ⅱの

1

)お よび

2)

で述べた ように, トラクタ-の投入の

6

0

年代におけ る急増は主 として米の作付 両横の増加を もた らしてい ると考え られ,その増加はかな りの部分最初 の説明変数 (A-R

)

またはA にすでに含 まれてい ると考 え られ るか ら,その間題はかな りその重大性が減少す る。

推定結果の経済的意味 タイ国の米生産関数を(9)式に決定 したが, この式に よ り, タイ国の米 の生産性を規定 した諸 要因を検討す ることがで きる。 第1と第 2の独立変数 の係数は土地 の限界生産力を表わ してい る。 二つの係数推定値を比べ れば, 後者 の濯概地域 の限界生産力が 前者 の非濯概地域の それの倍近 い値を取 る ことが分か り, Ⅲの1)で述べた これ らの係数 の大 きさに関す る仮定を満たす。 これ ら係数推定値 の意味 は,港翫地 お よび非濯概地におけ る収穫面積

R

・H/

A;(

A-R)・H/

A

がそれぞれ

1

,

0

0

0

h

a

追加的に増加すれば, もみの生産量はそれぞれ約

3

,

01

4

トンと

1

,

6

1

5

トン増加す るとい うことで あ る。 個 々の説 明変数 の もみ生産- の貢献度 または重要性を示すベータ係数を計算 してみ ると, 擢慨地 と非濯概地に関 してはそれぞれ

0.

6

6

2

3

0.

4

4

2

8

とな り,前者の貢献度のほ うがかな り 大 きい ことが分か る。27) また濯慨地 のベータ係数は

F

l,

W

l,

W

3お よびCの同係数 (それぞ れ

0

.

3

0

5

2

,0

.

3

0

4

2

,0

.

1

7

6

2

,0.

1

1

9

2

)

よ りかな り大 きい値を取 る。 以上 の検討の結果,戦後の タイ国におけ る濯概地 の増加は, もみの総生産お よび生産性の増加に最大の貢献を果た した と 結論す ることがで きる。 タイ国の濯瀧地の増加が米生産ない し生産性に及ぼす影響について,過去に二つの論文で検 討 されてい るので,その結果 と上記 の結論 とを比較 してみ よう。 田中拓男氏の

1

9

6

7

年の 『アジ ア経済』所収 の論文では

,l

a

nd-

a

ugme

nt

i

n

g

の係数が

1

よ り小 さく,非擢淑地が生産要素 とし て入 っていないな ど方法論上の問題は多少あ るが, クロス ・セ クシ ョン ・データよ り推定 され た生産関数に より, タイ国においては濃蘭 の米生産-の影 響がかな り大 きく,耕地面積対濃蘭 26)このテス トについては,Zbid.,pp.243-244を参照0 27)べ-タ係数については,Zbid.,pp.197-198を参照. 516

(15)

辻井 :伝統的米輸出国の農業生産性を規定す る諸要因 と緑の革命 地面積比率が低い時期ほ どそれは大 きい と結論 してい る。28)ゆえに, 田中氏の論文の結論は, 筆者の結論 とほぼ一致す る。 しか し,石川滋氏は

1

9

7

0

年 出版 の著書の中で

,1

9

5

9

-6

1

年 と

1

9

6

5

-6

7

年 の両期間の タイ米 の 生産量,作付面積,収穫両横

,

濯概面積の平均値 を計算 し,恒等式の展開の方法を用いてタイ 国の濯概 が米生産に及ぼ した影響を検討 し,結論 として

6

0

年代 の米生産の増加は主 として (約

6

7

%)

ha

当 り生産高 (平均土地生産性) の上昇に よって説 明で き, 作付面積 の増加は総生 産 の増大の約

3

3

%

を説 明す るにす ぎない と述べ, さらに この平均土地生産性の増加は大部分非 擢概地域で達成 された としてい る。29)すなわち土地生産性の上昇 の要因分析で, 同氏は濯概率 の増加 と擢概地での

ha

当 り収量の増加 とが,平均収量の増加をそれ ぞれ

1

6

.

1

1

0

.

8

%

説 明す るのみであ るのに対 し,非濯概地での収量増は

7

3

.

1

%

説明す るとしている。30)以上で述べた ご と く,石川氏は

6

0

年代のタイでの総米生産の増大は主 として非

概地での平均土地生産性の上 昇 に よってお り,催概地お よびそ こでの平均土地生産性の増大は小 さな貢献 しか していない と している。 この結論は本稿の上記の結論 とは正反対 の位置を占め る。 しか し, この石川氏の結 論を導いた方法に大 きな問題があ る。 石川氏は上述 の よ うに,2時点のみ の米生産 と濯慨に関 す るデ-タを用い,因果関係を示す式 ではな くて,恒等関係を示す式の展開に よ り結論を導い てい る。 しか し, この よ うな方法に よっては,輝概地率の増大や濯概地お よび非濯概地 での土 地生産性 の上昇 の総米生産お よび土地生産性に及ぼす真の影響は計測で きない。 (9)式 の

F

lの係数は, タイ国での肥料お よび農薬 の限界生産性を示 してい る。 推定 された係 数値は肥料お よび農薬の輸入お よび国内生産

(

F

l) が追加的に

1

0

0

万 ドル増加すれば, もみが

6

4

,

0

0

0

トン近 く増産 され ることを示 している。 Flのべ-タ係数は上述 した ように

,0

.

3

0

5

2

であ り,非擢瀧地 のそれ よりかな り小 さいので, タイ国では,戦後の米生産の発展に とって,肥料 お よび農薬は非滞漸地におけ る米の作付けの進展 よ りも少 し低い貢献 しか果た さなか った と言 え る。 この結果 は, タイ国におけ る米生産の中心であ る中央部で,雨季に採水にな る場所が大 きな部分を占め,肥料や農薬 の使用で きる状況にな く,実際に節問伸長性 のある(浮 き稲的な) 長幹 の米が無肥料 ・無農薬で広 く栽培 されて きた事実 と一致す る。 ただ

F

lが正 の限界生産性 と

0.

3

強のべ-タ係数を持つのは,Flのデ-タ上に問題はあ るが,採水地帯以外で

6

0

年代にな って米作に肥料や農薬が使われだ した結果であ ると説 明す ることがで きる。 Wl,W3,

C

は, 米作-の 自然環境要因 (Wlと

C)

お よび 水制御要因 (W3)であ るが,そ れ らの係数の符号は仮定 と一致 し,統計的有意性は非常に高い。ゆえに タイ国の米生産-の 自 然環境 お よび水制御要因の影響は, これ らの変数に よってかな り的確に説 明 されていると見 る 28)田中拓男 「アジア農業の生産構造と異質的生産関数」『アジア経済』 8巻11号,pp.49-63.

29)Shigerulshikawa,AgriculturalDevelopmentStrategiesinAsia,Tokyo:AsianDevelopmentBank, 1970,pp.7275.

(16)

束南 アジア研 究 10巻4号 ことがで きる。 ただ, これ らの変数は中央部にのみ係わ った ものであ るか ら, 中央 部が タイ国 での米生産 の最重要地域 であ るけれ ども,次に述べ るそれ らの係数 の経済的意味はあ る程度割 引いて評価 しなければ な らない。 Ⅳ1は1950年か ら1957年 までの アユタヤでの最高水位であ る が,その推定 された係数 は,Ⅳ1が10cm上昇すれば, もみ生産は約2.7万 トン増 加す ることを 示 してい る。 ただ mの 3) のデータの検討 の項 で述べた よ うに,Ⅳ1ほ上記期間中歴史的経験 的に知 られ てい る豊作 レベルにあ る。 また1958年以降は中央部におけ る水制御 の水準が上昇 し てい る。 この 2点か ら, (9)式に よ り代表 され るタイ国の米 の生産関数 は, 普通作 ない し豊作 は説 明で きて も,たぶ ん凶作は的確には説 明で きないだろ うと考 え られ る。 それ を説 明す るた めには 自然環境要 困の生産関数- の導入の仕方に, ダ ミ-変数的な考慮が必要 とな る。 ところ で, W lのベ ータ係数 は上述 の ごと く,0.3042と

F

lのそれ とほぼ 同水準でかな り大 き く,経 験的に言われ ていた ことを実証 してい る。 プ ミボ ン ・ダムに よる水制御の影 響を捉 えるための ダ ミー変数

W

3ほ, ダムが稼動 しは じめ た1963年か ら1の値を取 る。 この変数は,擢瀧 面積 の拡大に よる水制御水準の上昇 に対 し,大 ダムに よる追加的な水制御の向上を代表す るための推定 され た係数は,その影響が もみで年間 約68万 トンであ ることを示 してい る。 またCの推定 された係数は, 中央 部での平均雨量指標が 10mm上昇すれば, もみの総生産量 は約1.7トン減少す ることを示 してい る。 しか し,

W

3や

C

のべ -タ係数は,それ ぞれ0.1762お よび

-0.

1192で上述 したその他の説 明変数のべ -タ係数 よ りかな り小 さ く, ゆえにそれ らの もみ の総生産に対す る貢献度はあ ま り大 き くない と考 え られ る。

結 論 Ⅳで述べ た ごと く,戦後 の タイ国におけ る米生産 の発展に最大 の貢献 をな したのは擢慨地域 の拡大であ った。 プ ミボ ン ・ダムに よる水制御能力の向上は,総米生 産の増大に さ らに貢献 し た。擢慨地域 の拡大は(9)式に示 され てい るごと く,そ こにおけ る収穫 面積 の限界生産性が非濯 概地域 のそれに比べ 2倍 ほ どであ ることか ら,主 として平均土地生産性 の上昇を通 じて米 の総 生産の増大を もた らした と考 え られ る。 この平均土地生産性 の上昇には,(9)式 のFlの限界生産 性やかな りの値 を持つベ ータ係数に よ り, Ⅰの2)で述べ た よ うに肥料や農薬 の1960年頃か ら の投入の急増がかな り貢献 した と考 え られ る。 さ らに タイ国の もみ総生産量 の増大には,非擢 概地におけ る収穫面積 の拡大が第2に重要であ ることは,そのベータ係数 よ り明 らかであ る。 この拡大は Ⅱの1)お よび2)で述べた よ うに,主 として60年代におけ る トラクターの耕作-の使用の急増 よ りもた らされた と考 え られ る。 自然環境条件に関 しては,1957年頃 までの水制 御 の水準が まだ低か った段階では, アユタヤの年間最高水位で示 され る自然河川に よる水供給 条件が, もみ の総生産にかな り大 きな影響を与 えたが,1958年以降は水制御の水準が上昇 し, 518

(17)

辻井 :伝統的米輸出国の農業生産性を規定する諸要因と緑の革命 自然環境条件はあ ま り大 きな影響を持 たな くな った と言え る。 以上 の生産関数を使 った分析結果か ら, タイ国においてほ

,6

0

年代におけ る漕概面積 の拡大 と肥料 ・農薬 な どの近代的生産要素 の増投に よる平均土地生産性 の上昇を主な要 因 と し, トラ クターの耕作- の使用の急増に よる作付面積 の増加を補助的な要因 として,米 の総生産 の着実 な増大が生起 した と結論す ることがで きる。 この総生産 の増大 は非常に急速であ って,50年代 には もみで

7

0

0

万 トン台に停滞 していた のに対 し

,6

0

年代末には

1

,

3

0

0

万 トン台を越 えてい る。 かつ, この増大は フ ィリピンや イ ン ドネシアな どの場 合 と異 な り,

HYV

を全 く伴わないで起 こってい る。 また,

HYV

の使用を米 の増産政策 の重点に してい るこれ ら

2

国やイ ン ド, パキ ス タ ン, マ レーシアな ど伝統 的米輸入 国では

,6

0

年代後半に米生産 の急増が起 こってい るのに 対 し, タイ国の場合は

6

0

年代を通 じ,着実に増大 してい る。31)前者 の

6

0

年代後半 の米生産 の急 増 は,

1

9

6

6

年に発表 され た

I

RRI

の最初の

HYV

であ る

I

R8

と, それ以降発表普及 された多 くの

HYV

が大 きな原因 とな ってい ると考 え られ る。 この

6

0

年代後半 の,

HYV

の普及 を重要 な要素 とす る伝統的米輸入国の米生産 の急増が一般に米におけ る緑 の革命 と呼ばれ てい る。 し か し筆者は,上述 した よ うに, タイ国において

6

0

年代を通 じての米 の平均土地生産性 と総生産 量 の着実でかつか な り急速 な上昇が存在 した ことに注 目したい。 これは伝統的米輸入国の緑 の 革命 と全 く異質 の ものであ り,筆者は これ を,

HYV

を伴わない (または "タイ式")緑 の革命 と呼べ るのではないか と考 え る。 タイ国は伝統的米輸 出国であ り,その生産の重要 な部分を チ ャオ プラヤ河のデル タに依存 し てい る。 このデル タ的条件が,上述 した よ うに短幹 の

HYV

の作付けを不可能に してい るので あ る。 しか し,

HYV

を導入 しな くて も,米 の総生産量や土地生産性 の急速 な上昇が起 こ り得 る ことは,上述 の "タイ式"緑 の革命が示 してい る。 東南 アジアには, タイ国の よ うに大 デル タに米生産の重要な部分を依存 し,伝 統的米輸 出国であ った ビルマやベ トナムが存在す る。 両 国の米輸 出はそれぞれ戦争 と体制上 の問題のため激減 してお り, また両国の米生産 の統計 も, タイ国の よ うに

6

0

年代に急上昇 を示 していないが, それ らの問題が解決 された後に,農業特に 米生産 の発展 を考 える時, タイ国の

6

0

年代 の経験に学ぶ ところが多 いのではないか と考 え られ る。 最後に, 以上 の分析に基 づいて, タイ国の米に 関す る農業政策に若干の検討を 加 えてみ よ う。 米 の国際市場 は,他の国際的に取引 きされ る農産物 のそれ と同様に,非常に不安定 であ る。

31)各国の米政策に関しては,各国の経済計画,例えばインドネシアの場合 Republic ofIndonesia,The FirsIFive-Year DevelopmentPlan (1969/70J973/74),Vol,2A, Jakarta:Departmentof lnformation,RepublicofIndonesia,pp.17-21.,またはFAO,NationalRicePolicI'es,1970,FAO Commodity PolicyStudies21,Rome:FÅo oftheUnitedNations,1970を参照。各国のもみ総生産 の推移についてはFAO,Production Yearbook,の各年版およびFAO,ReportoftheSixieenihSession oftheZntergovernmentalGrouponRicetolheCommiiieeonCommodityProblems,Rome:FÅo, June,1972,p.26-iを参照。

(18)

東南 アジア研 究 10巻4号 特にその貿 易価格の変動がその不安定性を如実 に示 してい る。

FA

O が公表 してい る米 の国際 市場価格指数を例に とれば,

1

9

5

7

-5

9

年を基準年次 とした指数で,

1

9

6

5

年に

1

0

5

であ った もの が

1

9

6

7

年お よび

1

9

6

8

年にはそれぞれ

1

4

1

1

4

7

とな り,その後す ぐに急落 して

1

9

7

1年

3

月には

8

8

とい う値 を取 った。32)また,統計 データは入手 で きないが

,1

9

7

2

年 の後半にな って,世界的な 悪天候 で農業生産が減少 し, ソ連が小麦の凶作 のため

1

,

8

0

0

万 トンとい う大量 の小麦を アメ リ カその他か ら買い付けた ことな どか ら小麦価格が急騰 し,その影響で米 の国際価格 も急騰 して い ると言われ てい る。 この よ うな不安定 な国際米市場に対 して, タイ国は

6

0

年代に上述 した よ うに米 の総生産量を着実に増大 させ,年間

1

0

0

万 トン以上 の米輸 出を行 な って きた。 しか しこ の よ うな着実 な生産の増加は,非常に不安定 な米 の国際市場 のために米の国内需給上色 々の問 題をひ き起 こした と考 え られ る。 例 えば

,6

0

年代 の終 りか ら

1

9

7

0

年にかけては,上述 の よ うに 米 の貿易価格は

6

7

-6

8

年 の ピークか ら暴落 して低迷を続けたに もかかわ らず,米輸 出は低水準 であ り米生産は

6

0

年代 の着実 な上昇 のため高水準にあ ったため, タイ国は供給過剰 の問題に直 面 し,米輸 出か らの外貨収入 も激減 した。 タイ国政府は低 い米 の国際価格に対応 し,米輸 出を 少 しで も増大 させ るため,

1

9

7

1年

4

月に

1

0

0

%

5%

の良質米を除 きライス ・プ レ ミアムを廃 止 し, また米輸 出促進 のための使節を国外派遣 した りした。33) しか し,上述 した よ うに

1

9

7

2

年 後半にな って米 の国際価格が急騰 したので, プ レ ミアムを再 び課す ことが考慮 され てい ると言 われ てい る。 これは多分, 国際価格 の急騰に よ り輸 出が急増 して, 国内の米 の供給 が不足す る ことを恐れ たためであろ う。 これ らの問題の発生 の原因は, タイ国の

6

0

年代の米生産 の上昇が 主 として擢概面積 の拡大 とい う長期的かつ効果 に ラグを伴 う生産政策 に よって もた らされたの に対 して,米 の国際市場 の不安定 はかな り短期的な現象であ ることであ る。 タイ国 と しては, この間題に対処す るため,第1に長期的な政策 としては同国の擢概計画 の 進展 の速度を国際市場 条件に合わせ て調節, 国内の農業生産 の多角化 を進め る。 第2に米に関 す る国際商 品協定 の成立 のため外交努力をす るな どの対策 を構 じることが望 ま しい。実際,港 概計画に関 しては,米 の供給過剰状態が厳 しい水準にあ った と考え られ る

1

9

7

1年に完成 された 第

3

次経済社会発展計 画

(

1

9

7

2

-1

9

7

6

)

で,

ThedevelopmentofagrlCultureandirrigationduringthe ThirdPlan periodwillbebaseduponthefollowingmainstrategies.

7.Accelerationofexistingirrigationdevelopmentprojects.Emphasis willbegiventotheconstructionandmaintenanceofthewaterdistribution 32)FAO の米の国際市場価格については,FAO,FAORiceReport,1967,Rome:FÅo,1967,p.14お

よび FAO,"RiceTradeIntelligence,"Rome:FAO,Vol.16,No.4,August,1972,p.1を参照。 33)ライス ・プレミアムの廃止については,BankofThailand,"MonthlyBulletin."Vol.ll,No.5,May,

1971,p.12を参照。 520

Tabl e TheSt at i s t i c a lDa t a A C r Op ye a r t / t十1 1 , 0 0 0ha 1 , 00 0ha 521 1

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