北 陸 大 学 紀 要 第
18
号 (1994
) pp.
197〜216
1
日
本
に
お け
る
心
身 障 害 者 体 育
の
史 的 研 究
一
告示 学 習 指
導
要領 時代 (
1971
〜
1985
)
の病
弱
(喘息)
児
体育
にっ い て一
北 野 与
*AHistorical
Study
ofPhysical
Education
for
the
Handicapped
in
Japan
On
Physical
Education
ofthe
Schools
andthe
Classes
for
Cons
七itutionally
Weak
Children
wi 七h
Asthma
from
1971
to
1985
Yoichi
Kitano
*Received
October
21
,1994
1
は じ めに病 弱 児に関 する体 育の
史
的 研 究 として,
すで に数
編の 論 稿 を 報 告 し た。
「日本
に お け る心身
障 害 者 体 育の史 的 研究
」の主 題の も と,
副題 を 「小 学 校 令 時 代の 開 放 学 校 及び特 別 学 級におけ る病弱
児体
育につ い て」(
『北 陸 大 学 紀 要 』,
第15
号, 1991
),
「小 学 校 令 時 代の 休 暇 集 落 に お け る虚 弱 児 体 育につ い て」 (『北 陸 体 育 学 会紀要
』, 第28
号,1992
)
, 「国 民 学校
令 時 代の養 護 学 級 に お け る虚 弱 児 体 育にっ いて」(
『北 陸 体 育 学 会 紀要
」, 第29
号,1993
),
「戦後
に お け る学 習 指 導 要 領 制 定 以 前の 病・
虚 弱 児 体 育につ い て」 (「北 陸 大 学 紀 要 』, 第17
号,1993
) 及び 「通 達 学習指導
要 領 時 代における病 。 虚 弱 児 体 育につ い て」(
『北 陸 体 育 学 会 紀 要 』, 第30 号
,1994
) と 題して報
告し た。 本 稿は,
そ れ らの 報 告に続 く報告
であ り,
告示
学 習 指導要領時
代(
1971
〜
19
85
)にお け る最 初の報
告であ る。 従っ て,本
稿で は,
こ の時 代の 多 方 面で多 様な変 容を見せ た教育
全 般 を先 ず 検 討 した上で,
病 弱 児 体 育の検 討に入るこ とに し たい。な お, 本 稿
要 旨
の一
部を 日本特殊教育学会第
31
回 大 会 (1993
)D で 報 告 し た こ と をこ こ に付 記 してお きたい 。ll
研 究
目的
・方 法
養 護 学 校 (
病
弱教育)
に係る学 習 指 導 要領
は, 昭 和46
(1971
) 年に初めて告 示さ れ る。 本 稿 は, それ 以 後の告 示 学 習 指導
要 領 時 代の病 弱 教育
に視
点 を 置 き,
教育
全 般の変
遷 を概観
し,喘
息を有
する児
童・
生徒
の体育 的実態
と その特質
の一
端
にっ い て,
関係
の研 究 報 告を初
め,実
践 *法 学 部 Faculty of Law2 北 野 与
一
報
告や学 校史
等の諸 文 献 を 主 要な史
料と して検 討 する もの で ある。 皿結
果
と考察
11
.
教 育 的 背 景病 弱 教
育
は,
通 達 学 習 指 導 要 領時
代で 基 礎づ くり が行な わ れ た か に見え た が, 告 示 学 習 指 導 要 領 時代
に入 っ て か ら も, 以 下の よ うな新
た な 事 象 も生 起 し,
改め て その対
応が求
め ら れたの で ある。 以下, こ う し た問 題に係
わ る主 要な事 項につ い て検討
する。(
1
)病
弱養
護学校
及び特 殊 学 級の増設
病 弱 養 護 学 校 は,
昭和
46
(
1971
)年
に30
校 (
分校
を含
ま な い。) を越え,
その後 「表
1
」の よ うに推
移 し,
同59
(1984
) 年4
月
に全都
道府県
で の設 置が完 了 する。 同60
(1985
) 年4
月1
日現在
では,病
弱 養 護 学 校80
校 (そ の う ち病院併
設校
β9
校
),分校 15校,
分室
。 分 教 室12
室に達 し,
高等部
設 置校
は28
校
と 多 くなっ た。 2)一
方
,特
殊学級
は, 「表2
」 も示 す よ う表
1
・
病 弱養
護学校数
及び 児童・
生徒数
の推移
区分 年 度 児 童・
生 徒 数 種 類 学校 数 幼 小 中 高 病 弱37
48
一
1
,355832
4
46
肢 体 不 自 由 と 病 弱5
一
420257105
病 弱 42441
,
578973
67
47
肢 体 不 自 由 と 病 弱4
『
134206
一
病 弱50
22
,065 ’ 1
,114
83
48
肢 体 不 自 由 と 病 弱3
一
66
45
一
病 弱60
12
.
4271
,
42142
49
肢 体 不 自 由 と 病 弱一
一
一
一
一
病 弱68
22
,4081
β91241
50
肢 体 不 自由 と 病 弱一
一
一
一
病 弱71
22
,
4431
,
487300
51
精 神 薄 弱 と 病 弱一
416219 7 肢 体 不 自 由 と 病 弱
1
一
1,
145
81
病 弱
77
22
,
7671
,630346
52
精 神 薄 弱 と 病 弱『
一
一
一
一
肢 体 不 自 由 と 病 弱2
97
71
22
病 弱81
22
β091
,734373
53
精 神 薄 弱 と 病 弱一
一
699327
74
肢 体 不 自 由 と 病 弱1
一
117
85
38
病 弱 23,
2751
,
859400
精 神 薄 弱 と 病 弱一
224796
43
54
肢 体 不 自 由 と 病 弱96
一
1,
823
79
86
精 神 薄弱 と肢 体不 自 由 そ の 他 ( 省 略 ) 病 弱 32,
9861,
788424 精 神 薄 弱 と 病 弱『
2,
7821,
666289 55 肢 体 不 自由 と 病 弱95
317198
88 精 神 薄 弱 と 肢 体 不 自由 そ の 他 ( 省 略 ) 病 弱33
,
0721
,
814437
精 神 薄 弱 と 病 弱一
2,9671 β42342
56
肢 体 不 自 由 と 病 弱92
1379210
25
精 神 薄 弱 と肢体 不 自 由 そ の 他 ( 省 略 ) 病 弱32
β481
,
922486
精 神 薄 弱 と 病 弱』
3
,0431
,994489
57
肢 体 不 自 由 と 病 弱95
4535300
56
精 神 薄 弱と肢 体 不 自 由 そ の 他 ( 省 略 ) 病 弱33
,
0791
,
920480
精 神 薄 弱と病 弱・
虚 弱一
3
,0261
,978506
58
肢 体不 自由と病弱・
虚弱95
2401277
56
精神 薄 弱と肢 体 不 自由 そ の 他 ( 省 略 ) 注1,
こ の表は、
各 年 度 文 部 省 年 報に よ る。
2,
学 校 数は、
分 校 数の含ん で い る。
3
,
「種 類 」の書 き方は、
出 典に準 拠 した。に, 昭 和
46
年 度小
学 校288
学 級,
中 学校95
学 級であっ た が,
同53
年 度 小 学校
601
学級 ,
中 学 校116
学 級の ピー
ク と な り,
その後漸
減し た。 なお,
結 核 学 級は,
小 学校
が昭和
48
年
度で, 中 学 校が同50
年 度で消滅
し, 同49年度新
たに 筋ジス トロ フ ィー
症 学 級が設 置され,
新 しい 動 向と して注 目さ れ た。 日本に お け る心身障 害者 子育の 史 的 研 究 表2
特
殊 学 級数
及び 児童・
生徒数
の推
移3
病 類の 多 様 化と障 害 の重 度 化病
類
の多様化
傾 向の兆 しは昭 和
30
年
代 半ば か ら顕 現 し始め,
その障 害の 重
度化
傾向
は同40
年 代 半 ばか ら顕 現 化 し た。「表
3
」3) も示す よ うに,
結核
は昭和
40
年
代 半ば 以降か ら急減
し,新
たに気 管支 喘
息,腎
炎,
ネフ ロー
ゼ,
虚 弱・
肥 満,
筋ジス トロ フ ィー
症 等が同50
年 代にかけて増 加 傾 向 を 示 し た。 こ の病 類の多 様 化 と障 害の重 度 化の 背 景に は,
以 下のような教 育 的 事 情が深 く係 わっ て い た。 医 療 費 補 助 制 度の整 備 ・拡 充児 童 福 祉 法の第
20
条に基づ く身 体 障 害 児に対
する育
成 医 療の 給 付 は昭 和29
年 度 よ り,
同法第
21
条
の9
に基づ く骨
関節結核者
に対
する療育
の給付
は同34
年度
よりそ れ ぞ れ実施
さ れ,
1
司36
年 度より骨 関 節 結 核 以 外の結 核 罹 患 者に対 して も上 記 療 育の給 付が適 用 さ れた。 4) 昭 和
46
(1971
) 年6
月か らは小 児が んに,
翌47
年 度か らは慢 性 腎 疾 患や喘 息に対しても医 療 費の 公 費
補助
が拡
大さ れ,同59
年度
には悪性新
生物
,慢性腎疾
患,喘
息,慢性
心疾
患,内分
泌疾患,
膠 原病,糖尿病,先
天性
代謝
異常,血友病等血
液疾患
が補助対象
と された。 5) さらに同48
年 度 か らはス モ ン,
べ一
チ ェ ッ ト病,
重 症 筋 無 力 症,
全 身 性 エ リテマ ト
ー
デ ス,多
発性
硬化
症等
を 含む26
疾
患が,特定疾
患 治療
研究事業
と して公費補助
の対 象と な っ た。 6)教育
的 措 置 規準
の改訂
病 弱 者 及び身 体 虚 弱 者に対 する教 育 的 措 置は,
従 来,
昭 和37
(1962
) 年10
月の 「学 校 区 分 年 度 小 学 校 中 学 校 種 類 学 級 数 児 童 数 学 級 数 生 徒 数 身 体 虚 弱・
病 弱2882
,
626
95696
46
結 核2
15
5
16
身 体 虚 弱・
病 弱3603
,
527
98664
47
結 核2
7
8
29
身 体 虚 弱・
病 弱4173
,
940
97671
48 結 核一
一
3
11
病 弱・
身 体 虚 弱4974
,
149101612
49
結 核一
一
1
4
進 行 性 筋ジス トロ フ ィー
症4
28
3
14
病 弱・
身 体 虚 弱5594
,734119661
50
結 核一
一
一
進行性 筋ジス トロ フ ィ
ー
症一
一
}
一
51 病 弱・
身 体 虚 弱 5854,
695122620 52 病 弱・
身 体 虚 弱5954
β7211360753
病 弱・
身 体 虚 弱6014
,
730116501
54
病 弱・
身 体 虚 弱5714
,
255
95366
55
病 弱・
身 体 虚 弱5554
,
103
93397
56 病 弱・
身 体 虚 弱 5503 β81102393 57 病 弱・
身 体 虚 弱 5423 ,597102388
58 病 弱・
身 体 虚 弱5383
,
447107413
注 1.
こ の表は、
各 年 度 文 部 省 年 報に よる。 2.
昭和38
年 度の 「その他」に は、 「結核」が含ま れて い る。3 .
「種 類 」の書き方は、 出 典に準 拠し た。北 野 与
一
4
在 学 者の 病 種 別変
遷 表3
昭 和42.
7、
1 44.
7.
1 47.
6.
1 5D.
7.
1 54,
5.
1 入 数 % 順 人 数 % 順 人 数 % 順 人数 % 順 人数 % 順 結 核 1,
5706L7 1,
18136.
5 72110.
9
3203,
4 790.
6 筋 ジ ス 32210.
1 45414.
0 83212.
5 1,
04211.
2 5707.
5 腎・
ネ フ 1354.
2 37911.
7 β9213、
4 1β2919.
6 2,
16716,
8 気 管 支 喘 息 1103,
5 45314,
0 1,
25418.
9 2392,
5 2,
44018.
9 心 疾 患 55L7 572.
1 2103.
1 2763.
0 3202,
5 骨 疾 患 等 1394.
3 4327.
2 5386.
9 1601.
2 情 緒 疾 患 等 621.
9 1362,
0 2392,
5 1,
2539.
7 虚 弱・
肥 満 240.
7 1,
20018.
0 1,
75018.
8 工,
53915.
0 重 症 心 身 障 害 玉29510 .
0 リュー
マチ・
膠 原 病 2081.
6 血 友 病 等 2071.
6 内 分 泌・
代 謝 1591.
2 腫 瘍 目・
耳・
咽 喉 15812 消 化 器 疾 患 等 750.
5 皮 膚 疾 患 等 680.
5 自 血 病 660.
5 先 天 奇 形 540.
4 損 傷 そ の 他 59918.
8 478 14.
8 53214.
O 1,
16412.
5 1,
30210.
1 言i.
3,
191 3,
237 6,
659 9,
313 12921 昭和56.
5.
1 58.
5.
1 60.
5.
162.
5.
1 平 成 元.
5.
1 人 数 % 順 人 数 % 順 人 数 % 順 人 数 % 順 人数 % 順 結 核 1301.
1 520,
5 470,
5 720,
9 120.
2 筋 ジ ス 1,
0118.
6 1,
0348.
7 9449.
6
88310.
9 79010.
8 腎・
ネ フ 2,
196 工8,
6 1,
82615.
2 1,
29913.
3 1,
07813.
3 80611,
0 気 管 支 喘 息 2,
45820.
8 2β4222.
1 225323,
1 1,
32122.
4 1,
60521.
9 心 疾 患 2572,
5 3142.
6 2822.
9 2262.
8 23632 骨 疾 患 等 1050.
9 4413,
7 3833.
9 3354.
1 2853.
9 情 緒 疾 患 等 8497.
2 1,
20710.
1 1,
13311、
5 1,
10313.
6 1,
工2415.
4 虚 弱・
肥 満 1、
66014.
1 1,
38311.
5 8578.
7 4825,
9 5016,
8 重症 心 身 障 害 1,
29210.
9 1,
21410.
1 1,
03410.
6 87910.
8 6398.
7 リュー
マチ・
膠 原 病 185L6 212O.
2 2092.
1 1612.
0 1512,
2 血 友 病 等 1731.
5 212Q.
2 1651.
7 2082.
6 2052.
8 内 分 泌・
代 謝 1481.
3 255O.
2 2202.
2 1371.
7 135L8 腫 瘍 911 ユ 911.
2 目。
耳。
咽 喉 1851.
6 1140.
1 840,
9 710.
9 69o.
9 消 化 器 疾 患 等 550.
5 820.
1 1081.
1 690.
8 871.
2 皮 膚 疾 患 等 710.
6 630,
1 52D、
5 550.
7 721,
0 白 血 病 630.
5 800,
1 76 α8 先 天 奇 形 290.
2 損 傷 76o.
9 79L1 そ の 他 8997,
6 8256,
9 6456.
6 3724.
6 4175.
7 計 ll,
806 11,
966 9,
796 8,
119 7,
314 注 1.
「順 」は、
そ の年 度の在 籍 人 数 を 表 わ す。
2.
昭和62年度か ら は、
「血友病等」に は、
血友 病、
白血病、
紫斑 病等を含めている。 3,
「脳 性 まひ」を、
「重 症 心 身 障 害 」に含めて あ る。 4.
「情 緒 疾 患 等 」に不 登 校 を 含めて いる。
5,
昭 和60年 度 まで は、 「内分泌・
代謝 」に 「腫 瘍 」 を 含 めていた が、
昭 和62年 度 か らは、
「腫 瘍 」 を 別 項 目 と した。
6.
「昭和42,
7.
1」は、
指定療 育機関入院者を示す。 教 育 法 およ び同 法 施 行 令の一
部 改正 に伴 う教 育上特 別な取 扱い を要 する児 童 ・ 生 徒の教育
的措置
につ い て」 (文初特第
380
号 )に よっ て実 施さ れて き た が,
同54
年 度 以 降 同53
(1978
) 年10
月 改 訂の 「教 育 上 特 別な取 扱いを要 す る児 童・
生 徒の教 育 措 置に つ い て」日本にお け る心 身 障 害 者 子 育の史 的 研 究 5
(文 初
特第
309
号 )に基づ い て実施
さ れ た。こ の改 訂 規 準は
,
新た に情 緒 障 害 者にっ い て も 基準を設け, 「二 っ 以上 の 障 害を併
せ持
っ者
にっ い て 」 と と もに, 病 類の 多 様 化に対 応 する ための意 図を もっ た内 容を もっ てい た。 な お
,
こ の改
訂は,
「養 護 学 校に お け る就 学 義 務に関 する規 定が
,昭
和五 四年四月
一
日 か ら施 行されるこ とに伴 う (中 略 ) 所 要の整 備 」7) の一
環で あ り,
同53
(1978
)
年
8
月
の 「軽度
心身障害
児に対 する学 校 教育
の在 り方」8)の特 殊 教 育に関 す る研 究 調 査 会 報 告を背 景に し たもの で あっ た。 ◎就
学
の義 務 化政 令 第
339
号 (昭 和48
<1973
> 年11
月20
日付 )を もっ て 「学校教 育
法 中 養 護 学 校 における就
学
義 務及 び養護学校
の 設 置 義 務に関 する部 分の施 行 期日を定め る政 令」が公 布される。 こ の政
令
は,学校教育
法第
93
条
第 /項
に おい て政 令で定め るこ と と さ れて い る養 護 学 校に係 る保 護 者の 就 学 義 務 及び都 道 府 県の 養 護 学 校 設 置 義 務に関 する同 法の規 定 する
施行期
日を 定め た もの で あ る。 就学義務
に関 して, 「学 校 教 育 法 第二 二 条 第一
項 及 び 第三九 条 第一
項に規 定 する保 護 者の就 学 義 務の うち養 護 学 校に関 する部 分 は,
昭 和五四年
四月
一
日 か ら施行
さ れ るこ と。 」 と規 定さ れ た。文 部 省は, 養 護 学 校の義 務 制の円滑な実 施を図る た め, 各 都道
府
県 及び各 市 町 村 教 育委員
会に対し就学指導委員
会の設 置 を 指導
し た り,
ま た,
「学 校 教 育 法 施 行 令 及 び 学 校保 健 法 施 行 令の
一
部を改正する政 令 」 (政 令 第310
号 ) 及び 「学校教
育 法 施 行 規 則 及び学校保健
法 施 行 規則
の一
部
を改正する省 令 」 (文 部 省 令 第30
号 )をそれ ぞ れ昭 和53
(1978
)年
8
月
に公布 ・施行
し たの で あ る。
9)各 都 道府県
は,
文 部 省の 働 きに呼 応 して 委 員 会 等 の 設 置は勿 論,
対 象 児の実 態 調 査,
あ るい は施 設・
設 備 等の教 育 的 環 境の整 備に着 手 した。 な お, 注
目
すべ き は, 東 京 都が国に先 駆け て昭 和49
年 度 から 「希 望 するもの の全 員 就 学 」に踏み切 っ たこ とで あっ た。 東 京 都で は, こ の制 度の発 足が契 機と なり 「学 校 教育対象
児の激増
,障害
の 重度化 ・多様化
」が顕
現し た。 1°)病 弱 養 護 学 校の在 学 者 数の 推 移を見る と
,
昭 和53
年 度が5
,
892
名
で あ っ た が, 翌54
年
度に は
8
,313
名に急 増 して い る。 1「)こ う し た就 学 率の向 上は,
先の東 京 都の事 例 も示 す ように
,
つ ま り,
「就学猶予 ・免
除者
の 激 減は, 逆に重 度。
重 複 障 害 児の 就 学が激 増 したこ と を
意味
するもの」12) で あ っ た。 訪 問 指 導の進 展病
弱 児童 ・生
徒に対
する訪
問指導
の 最初
は,
「那 覇連合
区教育委員
会が,
昭和
32
年
11
月,
ネフ ロー
ゼ,
結 核 等の ユ7
名の児 童 生 徒 を 対 象に家 庭 派 遣 教 師 (1
名 )による訪 問 指導を
実施
し た」13)こと と さ れて い る。 その 後, 昭 和43
(
1968
) 年
5
月
現福
岡 県 北 九 州市
立 門 司 養 護 学 校で本 務 教 員に よ っ て病 気 療 養 中の児 童 に対 す る訪 問 指 導が実 施 され,
14)訪 問
指導実施校
は, 同44年度
3
校
,同45年度
12
校
, 同46年度29校
, 同47
年度
80
校
と漸 次
普 及し
,
同51年
度に全国的
と なる。 ’5〕 IG)な お,
こ の訪
問指導
は, 愛知
県の事例
も示す よ うに,
L7)家 庭 訪 問 指 導か ら始 まり,
施 設 訪 問 指 導,
病 院 訪 問 指 導へ と漸 次 拡 大されて い っ た。 こ の訪 問 教 育に係る法 的 根 拠 は,
当 初,
岩 手 県の事 例の よ うに,
ユ8冫学 校 教 育 法 第75
条第
2
項
に求
め ら れて い た が, 昭和
53
(
1978
) 年に文 部省
によっ て学
校教育法第
71
条
に よ6
北 野 与 ろ うるもの と明 示さ れ たの で ある。 19〕 同
54
(1979
) 年7
月 告 示の 「盲 学 校,
聾 学 校 及 び 養護
学校小学部 ・中学部 ・高等部学
習 指 導 要領
」で も, 「教
員を派 遣 して教 育
を行 う場 合 に つ い て」,
教 育 課 程 編 成の特 例が示さ れ る ♂°)重 症心
身障害
児施
設 等の 増 設わ が国にお ける最
初
の重 症 児 施 設は昭 和36
(1961)年
設 立の民 間法人 島
田療 育 園(
東
京 都 )で あり, 同 園の 発 足は 「重 症 児 問 題 を 進 展させ る有 力な引 き 金 」 と な る
。
21) 昭和
38
(1963
) 年 厚生省より 「重症心身障
害児施
設入所対象
選定
基 準 」が 通達
さ れ,
重 症 心身 障 害 児の行 政 的 定 義と施 設の機 能 的 性 格が明 示される。 そ の後
,
同41
年 度か ら国
立療
養 所に重 症 児
病棟
が設 置さ れ る。 同年
5
月
,厚
生省
は,新
た な通 達で 「身 体 的, 精 神 的障 害が重 複 し
,
かっ , それぞれの 障 害が重 度で ある児 童 およ び満 十 八 歳 以 上の者 (
以下
「重 症心
身障害
児く者〉
』と い う。)
」と定義
す る。 za ) さ らに ま た, 同42
(1967
) 年8
月には児 童
福祉法
の一部改
正 が行わ れ, 重 症心身障害
児 施 設に法 的根拠
が与え ら れ る。昭 和
46
(1971
) 年,
国 立 東 長 野 療 養所
内の 重 心 児 病棟
に長
野 県 立若槻養護学校
か ら教
師
1
名
が派遣
さ れ, 重心児の教 育が開 始さ れ,
同48
(1973
) 年に は重心児 学 級 「の ぞみ部 」が設 置される。 23>福 島 県 立
須賀
川養
護 学 校は,
昭 和49
(1974
) 年か ら重 心 児の教育
を開
始
し,
「同55
年 度に は病 棟 と別に独 立 し た指 導 校 舎を竣工 さ せ」24) ,注
目さ れ た。 同55
(1980
)年 3
月 現 在,
「国 立 療 養 所80
ヵ所と公 立,
法 人 立の重 症 児 施 設48
ヵ所の計128
施
設が設 置さ れ塑
て い た。 なお,
筋 ジス トロ フ ィー
症 児の動 向にっ い て触 れておこ う。 昭 和35
(1960
) 年,
宮 城県
国
立西多賀
療 養 所に3 名
の筋
ジ ス トロ フ ィー
症 児が 入所
する。 26)厚
生省
は , 昭和
39
(
1964
)年 5
月に 「進行性筋萎縮症対
策要綱
」を作成
し, 国立西 多賀療
養 所 及び千 葉 県国 立 療 養 所 下 志 津 病 院に各
20
床の専 門 病 床 を設 け,
発 病の 原 因 及 び 治 療 法の 研 究に着手
する。 以
後
,各
地の国
立療養所
に も専門病床
が設
け ら れ,同
41
(
1966
) 年頃
か ら療 養 所 内で の教 育が始め られる。 同59
(1984
) 年10
月 現 在で の筋ジス トロ フ ィー
症 児の教 育関係校
は24
校
であり,在籍
児 童・
生徒数
は961
名
であ っ た。za) (3
) 告 示 学 習 指 導 要 領の改 訂 要 点一
義 務 教 育を中 心に文部事務次官
通 達の 「養護学校小学部 (
中学部)学習指導要領病
弱教育編
」は,教育
目標
の 明確化,就学
児童 ・生徒
の病類
の多 様化
及び障害
の重度
化の顕 現等
に対応
する た めに 改 訂の 必 要 性 が 生 じ,
同46
(1971
) 年3
月,
「養 護 学 校 (病 弱 教 育 ) 小 学 部。
中 学 部 学 習指導要領
」(
以下,
1
次改訂要領
とい う。)
が 公示さ れ た。 ま た, 同47
(
1972
)年
10
月には新たに 「養 護 学 校 (病 弱 教 育 ) 高 等 部 学 習 指 導 要 領 」が公 示さ
れ
,
小 学 部は同46
年 度,
中学部
は同
47
年度
,高等部
は同
48
年度
か ら順次実施
に移
さ れ たの で あ る。k
記 学 習 指 導 要 領 も,
再び改 訂さ れ る。 そ の改 訂は,
「先に行われた小・
中・
高 等 学 校の
教育課程
の 基準
の改善
に準
じて行
」な わ れ た もの で あ り, 「重複障 害者
に係
る教育
課 程 の 編 成にっ い て,一
層の 弾 力 化を図 」る こと や , 「養 護 学 校 教 育の 義 務 制 実 施 及 び 特 殊 教育
をめ ぐる社会情勢
の変化
との対
応を図 」 る た めで あっ た。s’)昭和
54
(
1979)年 7
月, 「盲 ろう ろ う学校
,聾学校
及び養護学校小学部
・中学部学習指導要領
」 及び 「盲学校
,聾学校
及び養 護 学 校 高 等 部 学 習 指 導 要 領 」 (以 下, 2
次 改 訂 要 領とい う。)が公 示され,
小 学 部は同55
年 度,
中学部
は同56
年度
,高等部
は同57
年度
か ら実施
さ れ た。 な お, この2
次改
訂要領
も,
文 部日本にお け る 心 身障害者子育の史 的 研 究
7
省 告 示 第ユ58
号を もっ て平 成 元 (1989
) 年10
月24
日付で改 訂が公 示さ れ, 平 成4
年 度か ら 学 年 進行
で実 施 さ れ る。 こ こで は, 1 次
及 び2
次 改 訂 要 領にっ い て検 討 する。1
次 改 訂 要 領の 改 訂 要 点ア
.一般
的改訂要
点「養
護学校 (
病弱教育)学習指
導 要 領 解 説』 に よれ ば,一
般 的な改 訂の要点
は,
教 育 目 標の 明 確 化
,
教 育 課 程 編 成の弾 力 化,
◎ 授 業 時数
の 基 準 化と単 位 時 間の標 準
化
,各教科
目標 ・内容
の 基 準 化,
養 護・
訓 練 領 域の新 設で あっ た。 3°) イ.
体 育 的 改 訂 要 点体育
的な改訂
の要点
と して,少
な く とも次
の 三点が挙 げ られる であろ う。第
一
点は, 旧 学 習 指 導 要 領の 「養 護 ・ 体 育 」 及び 「養 護・保
健 体 育 」 を 「体 育 」及 び 「保 健 体 育」 に改め, 「
養護
」を新設
の 「養護
・訓練
」の中に 位 置づ けた こ とで あ る
。小学部
及 び中学部
の各
教科
は,学校教育法施行規則
の第
73
条
の7
及び8
に 示されて おり, 1
次 改 訂 要 領の第1
章 「第2
教 育 課 程一
般 」の2
と3
31)に も 明 示 さ れ た。
第二点は,
体 育の重 要 性と学 校の教 育 活 動全体を通 じて体 育が行な わ れるべ きこと を明ら か に し,
特
に,体
力の向 上にっ いての指導
が強 調 されたこと で あ る。 こ の こと は, 総 則の 「第5
体 育 」 St) の中で規 定さ れ る。 こ の規 定は, 「学 校 教 育が単に知
育
に偏るこ と な く, 心身
と もに調 和の とれた人間
の育成
を 目指 す もの であるこ と を 強 調 する必 要が あ るこ と か ら」as ), 「第3
道 徳 教 育 」と な ら んで 設 けら れ た もの で ある。 また,
体 力の向 上にっ い て は,
「病 弱 ・ 身 体 虚 弱の児 童,
生 徒 の実 態か らみ て
,特
に重視
す る必要
」U)が叫
ばれ ,体育
及び保健体育
の時間
だ けで は な く,特
別 活 動 及び養 護・
訓 練 を 初め とする教 育 活 動 全 体を通 じて指 導 する よう強 調し,
注目
さ れ た。第
三点
は,小学部及
び中学部
ともに 「病弱教育
の特性
を踏
ま えて,特
に配 慮 すべ き事 項 」 を示 したこ とで ある 。 そ の配 慮 事 項 と は, 学 習が遅れて い る児 童・
生 徒,
授 業 時 数に制 約 を受けて い る児 童・
生 徒,
身 体 活 動に制 限 を 受けて い る児 童
・
生徒
及び運 動が困 難な児 童・
生徒
に関 する指 導 計 画の作 成 等を含む指 導上 の留 意
事
項,
養 護 ・ 訓 練と関 連を もっ た指 導,
「保 健」 の適切
な授 業 時 数の 設 定,
指導効
果 を高
あ る指導
法の 工夫
及 び事故 防
止の ための配慮
な どであっ た。as)2
次 改 訂 要 領の改 訂 要 点「特 殊 教 育 諸 学 校」 に係る学
習
指 導 要 領は,
従 来,盲 学校 ,
聾 学 校 及び養 護学校
(精 神 薄 弱,
肢 体 不 自 由,
病 弱の別 )の学 校 種 別 ご とに それ ぞ れ作 成 さ れて き た が,
今回の
2
次 改 訂 要 領は,
「特 殊教育
諸 学 校」共 通の学習指導要
領 となる。 こ の こ と は, 学 習 指 導 指 導 要 領 制 定上の大き な変 革と考え ら れ, 注 目し なけれ ば な ら ない。 以 下,
文 部 省 作 成の 「昭 和五十四年 度
盲
学 校,
聾 学 校及 び養護学校
学 習 指導
要 領 (小学 部)
趣 旨徹
底
地 区 別 講 習 会 説 明 資 料 」SS )(
以下, 講 習 会 説 明 資 料 とい う。)を中心 に, 改 訂 の要 点を検 討 する。 ア.一
般 的 改 訂 要 点 この 改 訂 要 領は,
人 間 性 豊か な児童・
生徒の育 成を重 視し,
教 育 内 容を基 礎 的 ・基 本 的な事 項に精 選して
,
ゆ と りある学 校 生 活が送れ る よ う意図
した もの であっ た。8
北 野 与 その主要な改 訂 要 点を略 記 すると,
次のと お りであっ た。 教 育 目標の整 理,
道 徳 教
育
及 び体育
の 重視
, ◎授業時数
の削
減等
, 選 択教科
の拡
大(
中
学部
),
精 神 薄 弱 養 護 学 校の各 教 科 との代 替, 養 護・
訓 練を主と し た指 導の可 能 化,
訪 問 教
育
の教育課程
の編 成,
合
科 的 指導
の可能化
,交
流教育
の促
進, ◎ 児 童 福 祉 施 設 等との 連 携の 強 化, 各 教 科 目標・
内 容 等へ の配 慮。 イ.
体 育 的 改 訂 要 点体 育 的な改 訂の
要
点と して,次
の諸点
が挙
げ ら れ る。 体 育 指 導の一
層の充 実 :従 来の内 容に加えて,
「日常 生 活にお ける適 切な体 育的 活 動の実 践が促さ れ る よ う 配慮 し な け ればな らな い」 と規 定さ れ る。
体
力の向
上や
健康 ・
安全の 保 持 増 進を図る た め, 学 校 体 育を通 して, 学 校 生 活は勿 論, 家庭 や 地 域 社 会にお ける 日
常
生活
で体 育 実 践の習 慣 を 身にっ け させ る よ う配 慮 すべきこ と が
強
調さ れ た。 授 業 時 数に制 約のある者 ・ 身 体 活 動に制 限のある者へ の配 慮 :授 業 時 数に制 約を 受けてい る児 童
・
生 徒の 指導
計 画の作成
に 当た っ て は, 個々 の 児 童・
生徒
の「病 状や運 動
能
力の 程度
等を考 慮 し な が ら必 要な内 容を選 定 し,
各 運 動 領 域の 指導 を通 じて基 礎 的 能 力 を 順
次高
め て い くよ う配 慮 する もの」 と した。
身体活動
に制
限を受
けて い る児童 ・生徒
の指導計
画の作成
に当
た っ ては,
「各 領 域か ら学 習 可 能な事 項 を 選 定 」 し,
そ の指 導に当 たっ て は,
「運 動の種 類や方式
, 用具等
を 工夫し,(
中
略)病弱
の状
態等
に よ り 運動
が著
し く困難
な場合
は, 必 要に応 じて演 示や視 聴 覚 教 材の 活 用を図 り,
運 動の実 践に替え る こ と」がで きる もの と した。
集団指導
及び安
全指導
へ の配慮
:集団
の構成
につ い て十分考慮
して指
導 することや
,
特に事 故 防 止にっ いて の十 分な配 慮の必 要な こ と が, 1
次 改 訂 要 領 と同
じ く重 視さ れ た。 「保 健 」 指 導にっ い て の配 慮 ;1
次 改 訂 要 領で は,
「保 健 」 及 び 「保 健 分 野」 に充て る授 業 時 数の割 合にっ い て の 配 慮が強
調
さ れ, ま た,養
護・
訓 練 に お け る 「養 護 」 と密 接な関 連を図る よう指 摘さ れて いた が, 2
次 改 訂 要 領で は,
「理 科及 び養 護 ・ 訓
練等
で取
り上 げる内容
との 関 連 」を重視
すべ きこ と が強
調さ れ た。 (4
) 教育
研究体制
の 整備
昭 和35
(1960
) 年7
月,
全 国 病 弱 虚 弱 教 育 研 究 連 盟が結 成さ れ,
ま た,
同38
(1963
) 年11
月に は,
日本 特 殊 教 育 学 会が設 立さ れ る。前
者は現 場 教育
に携
わ る人た ちの研究団体
で あ り, 後 者は研 究 者 中心 の研 究 団 体であ る。 いずれ も独 自の研 究 大 会を毎 年 度 開 催 するとともに
,
それぞ れが研 究 報 告 書 を 発 刊 する。 昭 和42
(1967
) 年8
月
に は,平成
元(
1989
)
年度
の 第23
回 大 会まで継 続 し た 全国 筋 ジ ス トロ フ ィー
症 児 教 育 研 究 会が結 成される。 37)一
方,
文 部 省は,
昭 和39
年 度 か ら特 殊 教 育 教 育 課 程 研 究 集 会 を毎年度開
催,同
41
年度
から
病
弱養
護学校対象
に特
殊 教 育教育
課 程 研 究 指 定 校の 委 嘱を開 始 する評以 上 の ように
,
現 場 教 育に携わ る人た ち を中心 とする研 究 活 動の開 始は,昭和40 (
1965)
年 前 後の こ とで あり
,
その 体制
の 整 備・
充実
は,同
40
年
代 半 ばか ら同
50
年代初
めにか けて 促 進さ れ たの で あ る。日本に お け る 心 身 障 害者子育の史 的 研 究
9
全
国病
弱 虚 弱 教育
研究連
盟 が病
種 ご との 研究委
員会
(ぜ ん息教育
,腎 ・
ネ フ教 育,筋
ジ ス教 育,
虚 弱 肥 満 教 育,
重 心 教 育,
病 弱 教 育 史 )39)を設 置 した の は昭 和53
(1978
) 年9
月 の こ とで あ り, 4°) 日本特殊教育
学会
が大会
の部
門 別シ ンポ ジ ウム の中
で 「病
虚 弱 部会
」 を 設けた の は同44 (
1969
) 年の第7
回 大 会か らで あ り, 4’) 研究
発表部
門で は 第9
回 大会
か ら であ る。第
9
回大会
には初
め て肢 体 不 自 由 部 門と合 同の 「肢 体 不 自由 病 虚 弱 部 門」 と して 登場し,
42) 翌 年の第10
回 大 会で は病 虚 弱 部 門と して独
立 し たの で あ る。 ma)なお
,
昭 和46
(1971
)年
10
月
,国
立 特 殊 教 育 総 合 研 究 所が設 置される。 同 研 究 所は,
「特 殊教育
に関 する総 合 的・
実 際 的 研 究,
教 員の研修,
内外
の研究情
報の処
理,
教 育相
談, 実 験 教 育 」“)を行な うために設け ら れ た ものであり,
わ が国の障 害 児 教 育の発 展 に多 大 な る貢献
を し た。2 .喘息
児体育
の実態
と特質
1
)病 弱 児 体 育の基
本
的ね らい養 護 学 校に係 る
告
示 学 習 指導
要 領には,
小 学 部,
中 学 部 及 び高 等 部におい てそ れぞ れの 学 部が,
小 学 校,
中 学 校 及び高 等 学 校そ れ ぞ れの 「教 育 目標
の 達 成に努め」,
「心身の 障 害に基づ く種々 の困 難 を 克 服 する た め に必
要
な 知 識,
技 能, 態 度 及 び 習 慣 を 養 う」よう示 されて い る♂5)つ ま り,
病
弱教育
では, 「病
弱・身体虚
弱に基
づ く種
々の困難
を克
服 する た め に必 要な知 識 技 能,
態 度 及 び 習 慣 を 養うこと」 が,
併せ て重 要な 目標 とな る。 「病 弱 児 の最大
の願
い は,健康体
に戻
るこ と」 as>であ り, ま た, 「病弱 ・
虚弱養護学校
の使
命は一
日 も早 く,
心身 共に健 康 回 復 さ せ,
原 級 復 帰させる のが最 大 無二 の もの で ある」4の こ と か ら,
ア
.健
康 状 態の 回復 ・
改 善に必 要な知識 。技
能の習得,
イ.
障 害 を 克服
する意欲
の 向 上,
ウ
,健康管
理の態度
・ 習慣
の育成
が,
病 弱 教育
の一
般
的 目標
と なっ て い た。 za) 当 然な が ら,
体 育 教 育 もま た,
それぞ れの学 部が小 学 校,
中 学 校ま た は高 等 学 校における そ れ ぞ れの
体
育教育
の目標と,
さ らに上記病
弱 教 育の一
般的
目 標と を踏
ま えて実践
さ れ た。 若 干の事 例を挙 げて み よ う。「
体
育は健康
の 回 復や改善
を図
る ため に重要
な教科
であ り,総括的
に は健 康
で安
全な 生 活を営む た めに必 要な習 慣 態 度を養 う。 心 身の調 和 的 発 達を図る。 運 動 を 適 切に行な わせ る こ と に よ っ て
体
力の向
上 を図
る。」(
加藤安雄
,昭和
50
年度)
49 }「
本校
で は あ く まで も健康
回復
,体力
の向
上・増
進に そ の指導
の主眼を置い て い る」 (東 京 都 立 片 浜 養 護 学 校,
昭 和50
年 度 )5°)「
体育科
の指導
は小 ・中学校指導要領
に準
じて行
うことに してい る。 基礎的事
項の理解 ・
基 本 的 技 能の習 得は もち ろん の こと,
直 接 健 康の回 復・
改 善にっ なが るもの で あるだけに 重視
する と共に, 子 供た ち自
ら積極的
に運動 (
ス ポー
ッ)に取
り組 もうと す る意 欲を喚
起 し,
それ を習 慣 化で きる よ う配 慮して い る6
」 (香 川 県 立 普 通 寺 養 護 学 校,
昭 和62
年 度 )51)以上の事
例
も示 すよ うに,体育
の 基本的
ね らい は, 体 育の一
般 的 目標を踏
ま え,健
康の回
復 ・
改 善,体
力の向
上 及び 運動
の 習慣
化の育
成にあ っ た。 宮田功 郎 は,
「病 弱 児の 体 育 指 導の基本は,
あ ら ゆる制 限や制 約の中で 子 どもの 実 態 を 見 極め な が ら,
実 技 指 導 をい かに効 果 的に
取
り入れて健康
回復
へ つ な げて い く かにあ る と考
え るべ きで あ る。 つ まり,
体 育 指 導は学 年の指 導 日標や内 容を踏ま え なが ら,
技 術の習 得と ともに健 康へ 向 かっ て の直10
北 野 与接 的な働 きか けの
一
助で あ り,
成 長を促 すバ ネで あ る と考え たい 。」tz) と報
告して お り,
こう し た
考
え方
が現 場に お け る一
般
的 考え方であっ た。以 下, 病 類 別に検 討を進め る が, 本 稿で は前 述のよ うに,
喘
息児童・
生 徒の 体 育にっ いて
検討
する。2
) 喘 息 児 体 育の 実 態と特 質昭和30年
代 半ば頃,
喘 息 児 童 ・ 生 徒を就 学さ せ た学 校 (大 阪市
立助 松養
護 学 校 )ss)も現わ れ た が
,
こ の教 育が全国
的に行な われる よ うに な っ たの は,
同40
年 代に入っ てか らで ある。 昭 和
45
(1970
) 年 頃,
下 田 巧は,
「最 近,病
弱 教 育の中
で, と く に目立
っ て い るのは,
進
行性
ジス トロ フ ィー
児 と , ぜんそ く児に対 する教 育につ い て である。」 SU)と 指 摘 し,
両 者に
係
る教育的
研究
が今後推
進さ れ るであ ろ う, と報告
して い る。 この頃
か ら医学
と教育
との協 同の実 践 研 究 が 開
始
され,
同50
年 代に入 っ て全 国 的 規 模で 本 格 化 して いっ たの である。こうし た
事情
は,第
1
回気管支
ぜ ん息教育担当者講習会
が同50
(
1975
)年
に開催
さ れ,同
52
(1977
) 年には全 国 病 弱 虚 弱 教 育 研 究 連 盟に喘 息 教 育 研 究 委 員 会が組織
さ れた こ ♂ ) 等 か ら も う か が え る。(
1
)指導
上の主要
な ね らい 小 児 気 管 支 喘 息 (以 下,
喘 息 とい う。
) 児 童・
生 徒に対 する指 導は,
「精 神 的 発 達を うな が し な が ら
,
同時
に身 体 面の強化
を行
な う とい う よ う な,
総 合 的 な 指導
が必要
」 と さ れ,
「e
精 神 的な安 定 を 得させ る」,
「口 社 会 性を育て る」, 「日 健 康 回 復へ の 意 欲を も たせ る」, 「四
積極
的に鍛
え る」等
が指導
上 重 視さ れ た。 SS)体 育 指 導のね らい も ま た,
こ うし た指 導 上の 重 点 事 項を踏ま え たもの で あ っ た。 以 下の 若 干の
指導事例
か らも, その こと が
推
知で きる。「運
動
の 日常化,
生活化
を図
る。」,
「い ろい ろな動きをと お して,
運 動 することの楽
し さ が わ か り,
結 果 的に基 礎 体 力,
運 動 技 能が高ま ること を 目的と し た」 (東 京 都 立 久 留米養
護学校
, 昭 和56
<
1981
>年
) 5D 「一
部の領 域の 内 容の指 導に偏 ること な く, 基 礎 的・
基本 的 事 項の習 得 に主 眼を置いて
(
中
略)
健 康 状 態の 回復改
善 を 図る 」(埼 玉 県 立寄居養
護 学 校,
昭 和59
<
1984
> 年 )nv) 「・体 力 , 肺 機 能の回 復・
改 善を図る。 ・健 康 回 復のた めの運 動の生 活 化を図る (中略)
・集団
生 活の中
で自
己を最
大限
に発 揮で きる 。」(
千
葉 県 立四街
道 養 護 学 校,
昭 和61
<1986
> 年 )m )「ア
自 己の身 体 と
能
力に関
心を もた せ なが ら運 動の楽 しさを体
得させ,
積 極 的に運動
技能
や体
力 を 高め よ う とする態度
を 養う。 イ協 力の 仕 方 を 身にっ けさせると と もに
,
公正 な態 度で運 動 する こ と がで き る よ うに さ せ る。 ウ
安
全に留
意 し たり,
運 動 前 後 又 は運 動 中の体 調に留 意 し た り し な が ら,
最 善 を 尽 く して運 動 する態 度 を 養 う。」(某 養 護 学 校 小 学 部5
,6
年, 昭 和62
<1987
> 年 ) fi°)(
2
) 指導
方 法・
内 容喘 息 児 体 育の
特
質は, 主と してその指
導法
に見 ら れ た が, その 主要
な指
導 法を内 容と と もに検 討 して い く。ア
,
生活規制度
別の 指導
身 体 活 動の指 導は
,
病 院 (医 師 ) 側と学 校 側との協 力の も とで作成
さ れ た生 活 規 制 度日本にお ける心身 障 害 者 子 育の史 的 研 究