58 シンポジウム (東女医大誌第55巻 第2
号
)
頁 158-161 昭和60年2月 癌治療の進歩(
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)
癌治療における放射線療法の現況と問題点
東京女子医科大学放射線医学教室 イケ ダ 教 授 池田
道 雄
(受付昭和59年11月2日〉The Present Status and Issues of Radiation Therapy for the Many Types of Cancer
Michio IKEDA
,
M.D.Department of Radiology, Tokyo Wom巴n'sMedical College
1. 1 discussed the role and method of radiation therapy
,
one of the treatment for the many types of cancer.2. Together with showing the number of irradiation portals and the treatment results
,
1 explained the radiation therapy outline of the c1inical oncology division of TWMC's Dept. of radiology. 3. 1 explained the progress and issues of recent radiation therapy. はじめに 癌は我が国の死因の第一位を占めるようになっ た.本稿では癌・放射線治療の役割と問題点と本 学における概況についてのベる. 1.放射線療法の役割と方法 まず,はじめに癌の治療における放射線療法の 役割を考えてみると 1)放射線単独で、癌を根治的に治療する. 2)放射線療法が主体で,これを手術や化学療法 で援ける. 3)手術療法を主体とし,これを術前,術中ある いは術後に照射して援ける. 4)化学療法を主体として,これを照射して援け る. 5)進行症例に対症的に照射する. などの場合があり, このように放射線治療は放 射線抵抗性の腫療を除く殆んどすべての癌と取組 む立場である.メスを主体としたSurgical on -cologyが全身の各臓器毎に縦割りに細分,専門化 されているのと異なり,いやでも臨床腫虜学全体 を見渡す場所に立たされている.つまり放射線治 -158 療は臨床腫易学 Cclinicaloncology)を基盤とし て癌の集学的治療の中で放射線を如何に生かして ゆくかとし、う立場であるといえる. ところで,放射線療法には外部照射法と密封小 線源療法とがある.前者は γ線,X
線,電子線な どを60CO照射装置や直線加速器(リニヤアクセレ レータ〉を用いて身体の外から照射する方法であ り,後者は226Ra,137CS, 1921r, 198Auなどの密封小 線源をじかに癌組織に刺入したり,体腔内に挿入 して照射する方法である.外部照射は高エネノレ ギー放射線の使用により急速に進歩したといわ れ,密封小線源治療はafterloading法(後充填法 の開発により適応が拡げられつつある.図lは我 が固における高エネルギー放射線治療装置の普及 状態を示しており,現在60CO照射装置は全国で 500台を越え,直線加速器も約200台に及んでいて 癌に対する放射線療法の必要性の増大を反映して いる.なお, リモートアフターローダーとは遠隔 操作式の密封小線源治療装置であり,近年急速に 普及してきている.600 A .... , b - a,A / K,〆'‘ー
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500 ・業者納入実績 / /「放射線利用統計1より o~ ..放射線利用統計 / , ( 川 未 満 を 除j
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テレコバルト(合計) / . . 宇 中-
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ーメモートアフターローダ 年代(昭和) 図l わ が 国 に お け る 高 エ ネ ル ギ ー 放 射 線 治 療 装 置 の 設 置 台 数 の 推 移 ( 尾 内)1)1
1
.
本学放射線科における放射線治療の概況 昭和41年後期に最初の6
0
C
O
照射装置による放 射線治療が始まって以来,昨年末までに放射線科 臨床腫虜部門に登録された新患の数は9.407人で ある.外部照射法により照射した数を照射門数で、 表わすと昭和5
8
年末までに総計273,444門となり, 本学の6
0
C
O
照射装置とリニアックは併せて27万 回以上の照射をしたことになる.一方,密封小線 源による治療は子宮頚癌で最も多く行なわれ(腔 内照射2,102回入また組織内照射は舌癌の治療に 最も多く行なわれている. 次に最近3年間の外部照射を照射部位別にみる と,肺縦隔,頭頚部,骨盤,脳などへの照射が多 くみられ(表1),脳と骨,四肢は,ほぽ一定であ るが,他部位では年により照射門数の変動がみら れる.頭頚部への照射とは頭頚部腫壌の治療だけ でなく,食道癌の術後照射や,頚部鎖骨上寓への 転移癌の治療も含み,また肺,縦隔への照射は原 59 表1 部位別照射門数 ( )内は%お詮ぐ
1981 1982 1983 脳 1910(10.5) 1562( 9.6) 1723( 9.4) 頭頚部 2578(14.2) 3379(20.8) 4450(24.2) 肺・縦隔 5594(30.9) 4555(27.9) 4318(23.5) 乳・胸部 2076Cll.5) 1l25( 6.9) 1434( 7.8) 消化器・腹部 2428(13.4) 1747(10.7) 1349( 7.3) 泌尿器 246(1.4) 279(1.7) 235(1.2) 婦人・骨盤 1648( 9.1) 1934Cll.9) 2199(12.0) 骨・四肢 876( 4.8) 892( 5.5) 932( 5.0) その他 740( 4.0) 810( 5.0) 1738(10.6) 計 18096(100) 16283(100) 18382(100) 発性肺癌,悪性リンパ腫,縦隔腫虜,転移性肺癌, 上大静脈症候群などのほか食道癌術前,術後の照 射なども含んでいる.昨年一年間の照射門数を診 療科別にみると〔表2
),放射線科入院治療の患者 は全体の1/3足らずであとの2/3は 消 化 器 病 セ ン ター,脳神経センター,外科,耳鼻科,内科(1) その他の各科に入院しながら照射していることが 判る.また放射線科の外来照射の内訳を見ると本 院が7割,第 2病院が 3割を占め,第 2病変の外 科,脳外科,内科,婦人科,耳鼻科,小児科など からの依頼で可成りの照射が行なわれており,こ のように放射線治療の対象が広く各科にまたがっ ていることが示されている. 表 2 各科別照射門数 0983年〕よ寸竺
X線+y線 電子線 計 (% ) 放射線科入院 5695 103 5798(31.5) 〔 グ 外 来 〉 3853 217 4070(22.1) 消化器病センター 2453 93 2546(13.8) 脳神経センター 1352。
1352( 7.4) 外 科 1288 26 1314( 7.1) 耳鼻科 1123 17 1140( 6.2) 内 科0) 1094 32 1126( 6.1) 腎センター 292。
292(1.6) ロ腔外科 203。
203(1.1) 婦人科 197。
197(1.0) 皮膚科 58 88 146( 0.8) 整形外科 126。
126( 0.7) 小児科 72。
72( 0.4) 言十 17806 576 18382(100)-159-60 表3 Treatment resu1ts of malignant diseases Dept. of Radiology T
.
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.M.C.(1969-1978) Material sucruvm. rulaattei(ve%) (registrated) lY 3Y 5Y Glioma, 1&
II 30 (39) 82.8 68.4 56.9 Glioma, III&
IV 45 (59) 79.5 32.7 20.8 Pinealoma 18 (23) 87.9 87.9 66.4 Medulloblastoma 15 (19) 80.0 59.9 44.7 Tongue Ca.* 76 (106) 78.8 61.4 54.3 N asal&
paranasal Ca. 56 (82) 76.8 37.5 35.6 Epipharyngeal Ca事 36(42) 84.0 59.0 42.0 Oropharyngeal Ca. 22 (33) 68.2 54.5 41.8 Laryngeal Caホ 111 (205) 98 85 77 Hypopharyngeal Ca 42 (58) 52.3 33.0 27.5 Malig. lymphoma 98(126) Hodgkin D 15 73.7 53.3 46.7 N on hodgkin D. 83 49.7 29.0 26.1 Breast(post ope. irr.) 273 (397) 94.1 78.6 70.3 Lung Ca 146 Small cell 19 (20) 47.4 13.5 13.5 Non.small cell 127 (242) 49.0 18.9 13.8 Esophagial Ca. 223(1228) 45.3 11.6 7.0 Bile duct Ca. 32(74) 37.5 6.2 3.1 Cervical Ca 258 (577) 81.3 61.9 56.3 UT. body(pre, post ope) 60 (77) 84.7 74.2 70.3 Bladder Ca 46 (58) 71.159.6 31.6 表3
は本学放射線科における1
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年までの主な 悪性腫蕩の治療成績を示している. 治療成績は,生存率だけでなく社会復帰度など も重要であり,生存率も各疾患毎に種々の因子別 に表わすべきであるが, ここでは5年までの累積 生存率を示した.乳癌と子宮体癌は小数の放射線 単独治療例も含まれているが,手術療法主体の成 績である.密封小線源治療の代表である子宮頚癌 はtotalでは56.3%
であるが, stage別に5
年生存 率をみると,1
期93.8%
,1
1
期74.1%
,1
1
1
期54.9%
,I
V
A
期34.4%
,I
V
B
期0%
の成績が放射線単独 の治療で得られている.I
I
I.放射線療法の最近の進歩と問題点 放射線治療全体について眺めてみると最近の進 歩と問題点は 1)高エネノレギー放射線が使えるようになって 空間的線量分布が大いに改善されてきたが,今迄 のものでは限界があり,最も良いのは陽子線であ ろう, ということで我が国でも陽子線治療の臨床 トライアルが筑波大学粒子線医科学センターにお いてまさに始められたところである.2
)
最適の時間的線量配分(つまり投与線量の処 方〉がし、ろいろと研究されており,不均等分割, 超多分割からl回照射まで様々である. 1回だけ の照射は術中照射に用いられ,術中照射は適応を 拡げつつある.本学に於ても騨癌,直腸癌につい てはプロトコールを作り,消化器病センター外科 と放射線科との共同研究が行なわれている. 3)癌 の 放 射 線 が 効 か な く な る の はhypoxic cell,つまり低酸素細胞の存在のためとされ対策 が検討されている.かつて盛に行われた高圧酸素 下の照射は成功しなかったので,現在は専ら低酸 素細胞増感剤が研究されている.もう一つの方法 としては,高LET放射線といわれる速中性子線 (neutron)や負のπ中間子 (pimeson)による治 療が検討されている.速中性子線治療については 我が国でも放射線医学総合研究所において既に1
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例を越える臨床検討からその有効性は確認 されている.しかし空間的な線量分布と生物学的 な効果と両方ともに優れているのは重粒子線で あ っ て , 今 後 は こ の 重 粒 子 線 (Neon, Argon, Siliconなど〉が,研究される方向にある.ところ でこれらのビームを発生させるためにに巨大な発 生装置が必要であり莫大な費用がかかるという大 きな障壁がある. 4)放射線との併用療法 最も実施の容易なのは,今迄に使い慣れている 放射線と薬剤との併用であろう.最も有効で有用 な併用療法が検討されるべきであり,我々も種々 のプロトコールを組んで、検討を行なっている.併 用療法としてのもう 1つの組合わせは,放射線療 法と温熱療法である. 今秋にはハイパーサーミアの学会も発足するの でこの併用療法の研究も促進されるであろう. おわりに 以上述べてきた中から癌に対する放射線治療の 新らたな発展が期待される. 時間の都合で、触れ得なかったが,C
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.
その他の 画像診断の進歩と computerの導入は,治療計画-160-や放射線治療の施行にめざましい進歩をもたらし た.MRIも稼働し,診断の精度はfollowupの面 も含めて益々向上してゆくであろう. 癌の放射線治療は臨床腫蕩学の立場にたって, より効果的でより精度の高い治療を目ざすべきで -161ー 61 あると考える. 文 献 1)尾内能夫.放射線治療機器の進歩一.メディカノレ ビュー 7(13) 67-76 (1983)