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経皮的冠動脈形成術後の再狭窄検出における負荷心筋シンチグラムの意義

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原 著 〔東女医大誌 第57巻 第11号頁1384∼1392昭和62年11月〕

経皮的冠動脈形成術後の再狭窄検出における

負荷心筋シンチグラムの意義

東京女子医科大学 循環器内科学教室(主任:広沢弘七郎教授) 国立循環器病センター 内科心臓部門 スミ ヨシ 住 吉

徹 哉

テツ ヤ (受付 昭和62年7月20日)

Detection of Restenosis after Successful Percutaneous Transl㎜inal Coronary Angioplasty by Exercise Thallium Scintigraphy

Tetsuya SUMIYOSHI

Department of Cardiology(Director:Prof. Koshichiro HIROSAWA)

Tokyo Women’s Medical College

Cardiac Division, Department of Internal Medicine, National Cardiovascular Center

The usefulness of serial exercise thalllum scintigraphy(ETS)in the detection of restenosis after successful percutaneous transluminal coronary angioplasty(PTCA)was evaluated. The study was undertaken on 73 patients(45 without significant residual coronary stenosis;28 with partial anatomic correction)who received coronary angiography(CAG)after over 6 month period following successful PTCA or after a recurrence of angina pectoris. ETS was performed

serially before, soon after, at 3 months, and at 6 months after PTCA in order to determine the

presence of chest pain(CP)and signi丘cant ST−segment depression(ST)during exercise, and of reversible defect(RD)in thallium images. Redistribution of 10%or above on delayed images were considered as positive reversible defects. Restenosis was defined as an increase of the diameter

stenosis of the dilated lesion above the 75%level.

Rate of restenosis was 29%for patients followed for over 6 months with recurrences of angina early at 2.4±1.9 months(mean±SD). As to the positive ETS cases,77%were detected

within the且rst 3 months, and 92%whithin the 6 months. In the detection of restenosis,丘gures for

RD sensitivity and speci丘city were 96%and 88%respectively, which were superior to those figures for CP(59%,85%)and ST(74%,82%).

ETS was particularly useful in the identification of the restenotic vessel as well as in the

detection of restenosis in patients with multi−vessel disease or partial anatomic correction, and thus has proven to be of extreme value in follow−up after PTCA.

緒 言

近年,経皮的冠動脈形成術(percutaneous trans− luminal coronary angioplasty,以下PTCAと略 す)は,器具の改良や技術の進歩に伴い適応とな る対象が大幅に拡大され,また初期成功率も向上 してきており,虚血性心疾患の新しい治療法とし てその有用性は一段と高まっている1)2.〉.一方,本 法成功後の追跡症例が増加するにつれ,再狭窄を きたす例が予想以上に高頻度であることが判明し つつあり,成功例の約3分の1に認められるとも 言われている3).このことは本法の適応や長期的 な治療効果を論ずる上で最も重要な問題の一つで

(2)

あり,再狭窄の発現に関与する因子の解明,再狭 窄の予防法と並んでその早期診断が臨床上最大の 関心;事となっている1). 一方,運動負荷タリウム心筋シンチグラムは, 運動時の欠損像および当該部位への再分布から, 心筋虚血部位を精度高く検出できる非侵襲的検査 法であり4),虚血性心疾患における補助的診断法 としてその有用性は既に確立されている. 本研究では,PTCA成功例に対して経時的に負 荷心筋シンチグラムを施行し,再狭窄の非観血的 な検出法としての有用性を検討するとともに,再 狭窄の出現時期の調査から,最も効率の良い検査 時期を決定することを目的とした. 対 象 1982年3月から1986年9月までに,国立循環器 病センターにおいてPTCAに成功し,症状の改善

を確認できた狭心症176例(PTCA全施行数213

例,成功率82.6%)のうち,6ヵ月以上の観察期 間を経過したかあるいは狭心症状再発のため冠動 脈造影を再検し,再狭窄の有無が判定可能であっ た73例を対象とした.男58例,女15例で,平均年 齢は58.4±10.1歳(35∼75歳).実測で75%以上の 狭窄を有意としたとき,1枝病変40例,2枝病変

26例,3枝病変7例であった.1症例あたりの

PTCA成功部位数の内訳は1ヵ所55例,2ヵ所15

例,3ヵ所2例,4ヵ所1例で,主標的冠動脈枝

は,前下行枝が52例,廻旋枝が11例,右冠動脈が 10例であった.またこのうち有意狭窄をもつ冠動 脈枝を残さなかった完全血行再建例が45例,多枝 病変のうち不成功(5例)または不適応(23例) などの理由で一部の冠動脈枝に狭窄または閉塞が 残存した部分血行再建例が28例であった. 方 法 Thallium−201負荷心筋シソチグラムを,以下に

述べる方法で原則としてPTCA直前, PTCA後

1ヵ月以内,3ヵ月後,6ヵ月後の計4回の定期 検査のほか,狭心症状の再発により再狭窄が疑わ れたときに適宜施行した.各々運動負荷時の胸痛 出現(CP),負荷心電図のST変化(ST),および 心筋シンチグラム上の当該領域の再分布(RD)の 有無を判定,冠動脈造影所見より判定された再狭 窄を基準としたときのこれら各指標の感度,特異 度を求めて比較した.また再狭窄の出現した時期 を推定するため,PTCA成功後に消失または軽減 していた狭心症状が再び出現またば増悪した時期 を病歴聴取により調査した. 1.運動負荷心筋シンチグラム 1)運動負荷法 電気制動型自転車エルゴメータ(Siemens 308 B)を用いて,座位で多段階漸増負荷法を行った. 負荷量は患者の運動能力に応じ25∼50wattより 開始し,3分毎に25wattずつ増量した.運動中は テレメータによる心電図モニターを行い,1分毎 に血圧測定および標準12誘導心電図の記録を行っ た.①負荷とともに増強する胸痛,②疲労または 息切れなどの自覚症状,③以下に示す基準による 有意のST変化,④重篤な不整脈,⑤目標心拍数 (予測最大心拍数の85%)のいずれかの運動終点に 達した後,Thallium−2012∼4mCiを留置翼状針 より静注し,患者の状態に注意しながらさらに1 分間の運動を継続させた. 2)撮像方法 運動終了後ただちに運動時心筋イメージの撮像 を行った.撮影には高分解コリメータを装着した シンチカメラ(Ohio Nuclear.Σ410S)とオンライ ンで接続したRIデータ処理装置(DEC, PDP11/ 60,128KW)を用い,50×104のpreset countに て,正面,左前斜位45.,70.の3方向で撮像した. 再分布像の撮像は,4時間後に同3方向にて運動 時イメージと同じ撮:影時間(preset time)で行っ た. 3)心筋イメージの定量解析 得られた心筋イメージは64×64マトリックスの コンピュータ画像を用い,複数の医師による視覚 的判定のほか,ROI法による定量的な解析を行っ た.すなわち欠損部(虚血部,B)および健常部(A) に3×3マトリックスの関心領域(ROI)を設定 し,上部縦隔に設定したbackground(bcg)のカ ウントを各々減じた後の健常部に対する欠損部の カウントの百分比を求め,これを欠損部タリウム 活性(%D)として当該部の欠損度の指標とした. また再分布の程度の定量的指標として再分布時イ 一1385一

(3)

bcg B

■A

B−bcg%D= ×109 (Ex.D6)A−bcg %RD=%D(D4)一%D(E=x) 図ゴ負荷心筋シンチグラムの定量解析法による再分 布度(%RD)の算出のしかた 五一ジ(D1)と運動時イメージ(Ex)の%Dの差 を算出し,これを再分布度(%RD)とした(図1). 視覚的に明らかな一過性欠損像が認められ,運動 時の欠損が最も明らかなイメージにおいて%RD が10%以上のときにRD陽性とした. 2.運動負荷心電図の陽性基準 運動負荷心電図におけるST低下の判定は,負 荷心筋シンチグラム施行時の運動負荷直後の心電 図をもって行った.標準12誘導中最大の変化がみ られた誘導で計測し,安静時心電図と比較して, 水平(horizontal)または下降(sagging)型のST

低下ではJ点で一1mm以上の,上行(slow−

rising)型のST低下でぱJ点後80msecで一1.5

mm以上のST低下をもってST変化陽性とし

た. 3.運動負荷時の胸痛 運動負荷中に出現した胸痛(胸部絞掩感等を含 む)を記録し,負荷とともに漸増する胸痛があっ たときにCP陽性とした.胸痛の強さは,患者の申 告によりこれまでに自覚した最強の胸痛を10/10 として10段階表示で記載した. 4.冠動脈造影

冠動脈造影の再検はJudkins法または一部

Sones法で行い,右冠動脈は2∼3方向,左冠動脈 は4∼6方向の多方向から撮影した.造影⊥の再 狭窄の判定は,実測で50%未満に開大した病変部 において狭窄が最も高度にみえる方向で再び75% 以上に進行している場合に再狭窄ありとした. PTCA施行から再造影までの期間は,平均7.7± 5.4カ,月(再狭窄例5.0±3.5カ,月,非再狭窄例 10.4±5.7ヵ月)であった. 結 果 1.再狭窄の出現率 前述の造影上の基準により再狭窄と判定された ものは37例(39病変部位)で,PTCA成功後6カ 月以上の観察期間を経過した症例における再狭窄 率は29.1%であった.再狭窄例の造影上の狭窄度 は,75%∼84%が14病変,85%∼98%が15病変, 99%が7病変,100%が3病変であった.再狭窄を きたした冠動脈枝は,前下行枝が25例,廻旋枝が 8例,右冠動脈が2例,前下行枝+右冠動脈,廻 旋枝+右冠動脈の2枝に認められたものが各1例 であった.病変枝数別,冠動脈枝別,施行部位の 梗塞の有無で,再狭窄の出現率に有意差は認めら れなかった. 2.狭心症の再発時期 再狭窄例の病歴における狭心症の再発時期は, PTCA施行後1カ,月未満が10例,1∼2ヵ月が15 f列, 2∼3ヵ月カミ5f列, 3∼4カ.月が41列, 5カ 月および12ヵ月が各1例で,平均2.4±1.9ヵ月で あり,3ヵ月以内の再発が全体の83%,6ヵ月以 内が97%を占めた(図2). 病歴上で狭心症様の症状の再発が認められた が,負荷心筋シンチグラムでRDは陰性であり, 造影の結果再狭窄が否定されたものが3例あっ た.このうち1例はST変化も陽性であった. 3.負荷心筋シンチグラムにおける再狭窄の検 出率 再狭窄例において,再発した狭心症が不安定狭 心症であるなどの理由により運動負荷が不可能で 例 15 15 10 5 10 n=36 mean±SD=2.4士t9 5 4 1 1

1 2 3 4 5 12カ月 図2 再狭窄例における狭心症状の再発時期

(4)

あった例を除き,26例に負荷心筋シンチグラム上

のRD陽性が確認された.最初にRD陽性となっ

た時期は1ヵ月目までの検査が8例,3ヵ月目が 12例であり,以後6ヵ月目4例,12ヵ月目2例で, 3カ月目の検査で確認された症例が最も多かっ た.造影上再狭窄が認められたにもかかわらず RDが陽性とならなかった,すなわち偽陰性は1 例あり,前下行枝領域に陳獣性梗塞を有する廻旋 枝の再狭窄例であった.また造影で再狭窄が確認 されなかったにもかかわらずRDが陽性であっ た,すなわち偽陽性は4例に認められた.いずれ も前下行枝領域で,うち2例は梗塞部に残存する RD CP ST 96 88 59 85 74 82 0 50 100% 彫・ens・t…ty國・p㏄・・…ty 図3 再狭窄の検出に対する各指標の感度と特異度 RD:心筋イメージ上の再分布, CP:運動負荷時の胸 痛出現,ST:負荷心電図のST変化 RD CP

ST

完全血行再建例(n=45) 84 59 94 71 「 .← 84 0 図4 100 画面症に対して施行されたものであり,また1例 は負荷時の胸痛も陽性であった.狭心症状が再発 する前に既にRDが陽性となっていた早期陽性例 は4例あったが,これらを含めて全症例の再狭窄

検出に対するRDの感度は96.3%,特異度は

87.9%であった.同様に,運動負荷時CPは偽陰性 が11羽あり,その感度は59.3%,特異度は84.8% であった.また心電図ST変化の感度は73.9%,特 異度は81.8%であった(図3).次に,完全血行再 建ができた45例に限って各指標の感度と特異度を みてみると,RDが各100%と84.2%, CPが58.8% と94.4%,STが71.4%と84.2%であった.また部 分血行再建の28例における同様の感度と特異度 は,RDが90.0%と92。9%, CPが60.0%と71.4%, STが77.8%と78。6%であった(図4). 4.多枝病変例における再狭窄枝の判定 多枝病変例において,RDの部位を考慮するこ とにより他の主要分枝の狭窄との鑑別が再造影前 に既に可能であったものが9例あった.また,複 数枝のPTCAに成功し,このうち1枝のみに再狭 窄をきたした5例において,再狭窄枝の同定が可 能であった.以下にその代表例を呈示する. 症例1:62歳男性.陳旧性塁壁梗塞を有する3 枝病変の狭心症例である.前下行枝と廻旋枝の PTCAに成功し,心筋壊死部である下壁を除いて 負荷時タリウム欠損像は消失した.約2ヵ月後, 狭心症再発時の負荷心筋シンチグラムで前壁中隔 部分血行再建例(n=28) 90 ・:・:・ 93 60 71 78 79 50 100% 0 50 100% %・・ns・t…t・ 圏・・㎝・・・…y 完全血行再建例,部分血行再建例別にみた各指標の感度と特異度 一1387一

(5)

領域にのみ再分布を認め,前下行枝の再狭窄が予 測された.冠動脈造影で前下行枝一枝の再狭窄が 確認され,再PTCAに成功後,同部の負荷時欠損 像は再び認められなくなった(写真1,2). 症例2:51歳男性.前下行枝と灌流域の広い廻 旋枝の2枝病変を有する狭心症例である.PTCA 前の負荷心筋シンチグラムでは正面像で下壁領域 4π9’”8川’伽θT・S・62M

a髄●r18t p’「CA r●●t●no618 8響t●r 2nd PTCA 85−6−20 8−28 10−17 Exercise image 撫》㌻ 蔑 怨

竃 プ

、 .藻瑚 に,また左前斜位45.像で前壁中隔に各々負荷時欠 損と再分布を認めたが,PTCA成功後は共に消失 した.狭心症再発時の検査では中隔領域にのみ負 荷時欠損があり,症例1と同様に再狭窄枝が前下 T,S.62M 、鎌鞭

鴇:d ・、 霧

・ 鐸 LAO45● LAD O96 ・■噸)90% LCX O% RCA 100% 写真1 左前斜位450像. 上段:運動時イメージ,下段: LAD:前下行枝, LCX: 一レ0% 症例1の負荷心筋シンチグラム 再分布時イメージ. 廻旋枝,RCA:右冠動脈 A:cont「oI B:after lst PTCA C:「estenosisof LAD D:after 2nd PTCA 写真2 症例1の冠動脈造影

ANT

LAO4げ

Exercise image

細9加8N.M.51M

bdbog F鴨《 8伽r F「CA 86−6−9 7−14 .留鮮電弧』気 層讐・.

L剣D90% ■剛) 50覧 嘲噸レ 75% LCX 75覧 ■■噸) 25鵯 写真3 症例2の負荷心筋シソチグラム 上段:正面像,下段:左前斜位45.像.負荷時イメージのみを示す.

(6)

N.M.51M bofore PTCA 行枝であると判定できた(写真3,4). 考 察 a醗er PTCA 写真4 症例2の冠動脈造影 PTCAは,1977年にGrUntzigが初めて狭心症 例に応用し成功して以来5》6》,冠動脈の狭窄性病変 に対する画期的な治療法として冠動脈バイパス術 と並んでわが国でも急速に普及してきた.器具の 改良と技術的な進歩に伴い成功率は著しく向上し てきており,同時に適応となる対象も初期の基準 に比べて大幅に拡大されてきた.特に開心術のリ スクが高い高齢者や合併疾患を有する症例では, 侵襲のより少ない本法が冠動脈バイパス術に優先 されて選択されるなど,虚血性心疾患の一治療手 段としてますます重要な位置を占めるようにな り,短期的な効果と有用性はほぼ確立されたと 言ってよい9. しかし一方,成功後の追跡症例が増え長期予後 の検討が進むにつれ,死亡や心筋梗塞症の発症は 比較的少ないが7}剃,再狭窄の出現が予想以上に 高頻度であることが判明してきた.米国立心肺血 液研究所(NHLBI)の集計によれぽ平均188日の 観察期間に冠動脈造影を再検した577例における 再狭窄率は33.6%であり3),またLeimgruberらは

PTCA初回成功の一枝病変998例の再狭窄率は

30.2%であったと報告している10}.その他報告に より20∼35%と開きはあるが,成功例の大体3分 の1に再狭窄が生じると考えられている. 本研究の対象における再狭窄率は,6ヵ月以上 の観察期間を経過した全例を母集団にとると29% であり,諸家の報告とほぼ一致していた.また再 restonosis of■一AD 狭窄の出現時期は5ヵ月以内に頻度が高いとする NHLBIの報告があるが3),病歴より狭心症の再発 時期を調査した今回の検討でもほとんどが6ヵ月 以内の再発であり,平均2.4±1.9ヵ月の早期で あった.また一部の症例では,症状の再発前の検

査で既にRDが陽性化しているものもあり,

Wijnsらが指摘するように11)部分的な再狭窄はさ らに早期に始まっている可能性が示唆された.再 狭窄の機序に関しては,バルンによって内膜が損 傷を受けることにより動脈硬化が促進され6ヵ月 以内の再狭窄に結びつくとするBlockの説12}や, 平滑筋細胞の異常増殖が再狭窄の原因であろうと するAustinらの病理組織学的な検討13》があり,臨 床例での再狭窄時期の詳細な観察はこれらの裏付 けをする意味からも重要である. 再狭窄例に対するPTCAの再施行は初回例よ りも成功率が高く,再狭窄を早期に確実に診断す ることは治療上重要である.再狭窄を臨床的に確 認するためには,最終的には冠動脈造影による直 接的な証明が必要となる.しかし同法は入院を要 する侵襲的な検査法であり,近年,造影剤や器具 の改良などにより安全性が向上したとはいえ反復 して施行するにはなお臨床的な制約が多い.一方 負荷心筋シンチグラムはPohostらがT1−201の 虚血心筋部位への再分布現象を見い出して以 来4),虚血の検出に対する感度,特異度の高い検査 法として臨床的に評価され繁用されている.そこ で本研究では,再狭窄を早期に診断し冠動脈造影 の再検時期を決めるための非侵襲的検査法14)とし 一1389一

(7)

て負荷心筋シンチグラムをとりあげ,PTCA成功 例に対して経時的に施行してその有用性と問題点 を検討した.この他に日常臨床で心筋虚血の診断 に繁用される運動負荷心電図のST変化,運動負 荷時の胸痛などの指標をとりあげ,冠動脈造影に より75%以上の狭窄の進行を判定基準としたとぎ の再狭窄の検出率を比較した. 全体でみると,感度,特異毒蛇にRDが最も優 れていた.一般に負荷心電図の虚血検出に対する 感度,特異度は各々42∼88%,62∼88%とさ れ15)∼17)充分ではない.一方,負荷心筋シンチグラ ムによる虚血検出の感度,特異度は各70∼90%, 80か95%前後とされている15)∼17).著者の施設にお ける器質的冠狭窄(75%以上)の検出に対する負 荷心筋シンチグラムの感度,特異度も各々77%, 85%であった18).今回のPTCA例における検討で はこれよりもさらに良好な値を示したが,これは

PTCA前およびPTCAにより狭窄が解除された

直後の負荷心筋シンチグラムの心筋イメージが既 に得られており,これらを参照にして視覚的判定 はもとより,虚血部位のROIの設定が可能である ことが有利な条件としてはたらいたためと考えら れる.このことは通常虚血部位の診断がより困難 とされる多枝病変例,特に一部の冠動脈枝に有意 狭窄を残した部分血行再建例において,新たな虚 血部位の出現すなわち再狭窄を検出するうえで, 他の指標に比べ特異度が特に高かったことにも関 わっていると推測された. CPの感度が約60%と予想より低値であった. 運動負荷量が,病歴上で狭心症状を惹起していた 労作量を充分越えたにもかかわらず胸痛が認めら れない例が少なくなかった.狭心痛発現の閾値が 一定でないことより器質的狭窄に加えて冠スパズ ムの関与も考慮されたが,99%以上の高度狭窄例 が3分の1を占め,胸痛が出現した群と比較して も再狭窄の程度に有意差はなく,冠スパズムの関 与のみでは説明困難であった.狭心痛の発現機序 に関する知見の不足を再認識させるとともに,日 常臨床上再狭窄を診断するうえで注意を要する現 象と考えられた. 次に,ST変化の特異度は82%であり他の指標 と比べて低かった.PTCAにより狭窄の開大に成 功後,症状の改善と心筋イメージ上虚血所見が消 失し再狭窄が否定されたにもかかわらず,依然 ST変化が明らかな:陽性を示す例が稀ならず認め られた. 症例3はその1例である.前下行枝一枝病変の

狭心症例で,PTCA成功後も運動負荷時にPTCA

施行前とほぼ同程度のST低下を示した.しかし 負荷心筋シンチグラムのRDは陰性で,7ヵ月後 の造影で再狭窄や新たな狭窄の進行は否定された (図5,写真5,6). 非有意狭窄の残存,小分枝の閉塞部分的な再 狭窄(50%未満)などにより一部の症例は説明可 能かも知れないが,必ずしも該当しない例もあり,

PTCA後のST変化の偽陽性については今後さ

らに詳細な検討を要する.

複数:枝のPTCAに成功した例でぱRDの認め

られる部位を考慮することにより,再狭窄の有無 のみでなく再狭窄をきたした冠動脈枝の鑑別も可 Sτdeρ’eSSめπd〃””g exe’C’se ‘b’cyc’e e’gomefeθ

1焉護誕曇

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託iヨ=毎一7r_L一一一一一・’ .. _難翼ユ.__一一

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≡巨葉≒岩 A A, B Bl AA,= boforo PTCA BB’=7mon電h8 aftor PTCA

図5 M.T.69M ・.・≡、、・・.ズ三≒珂『丁…’‘一一.「.一一∵.

愚論至難

垂墨痙

叢選

轟轟

婁誌

馨細論

症例3の運動負荷心電図 PTCA前(A’)とほぼ同程度の負荷時ST低下が PTCA成功後(B’)にも認められた.

(8)

4π9颪”aMエ69M

bofor●P’「CA af量●r P’「CA 7mooth8 a髄or PTCA

E翼orc18e Imag● Dolayod lmagO L4045● 甑. LAD 75% 一 25% 一 25% 写真5 症例3の負荷心筋シソチグラム 左前斜位450像. 上段:運動時イメージ,下段:再分布時イメージ. M.T.69M

A=before PTCA B:after PTCA C:7months after PTCA 写真6 症例3の冠動脈造影 能である.Rigoらは冠動脈疾患133例における心 筋イメージ上の虚血部位と狭窄冠血管を対比し, 各血管別の検出率を明らかにしたが19),前述のよ うに初回PTCA成功前後の心筋イメージの変化 を参照することにより,再狭窄枝の同定はさらに 容易にかつ確実に行うことができた.再造影前に 非観血的に再狭窄の同定およびその枝数を診断で きれぽ,治療方針の決定や再度PTCAを施行する 際の準備の上で非常に意義深いことである.これ はST変化やCPでは不可能であり,負荷心筋シ ンチグラムがもつ大きな特長の一つであった. 今回の検討では,再狭窄例においては3ヵ月目 の検査でRDが陽性となる例が最も多かった.し たがって再狭窄例を効率良く検出するためには,

PTCA成功後3ヵ月目にスクリーニングとして

負荷心筋シンチグラムを施行し,明らかな陽性例 はPTCA準備下に冠動脈造影の再検を行い,また 疑陽性例については6ヵ月後に再度負荷シンチグ ラムを施行するのが最も良い方法であると考えら れた, 結 論 PTCA後の再狭窄の検出に対して負荷心筋シ ンチグラムは,感度,特異度共に優れており,部 一1391一

(9)

位診断も含めて,再狭窄の出現を確かに診断する ための非観血的検査法として極めて有用である. また,臨床症状からみた再狭窄の出現時期は,3 ヵ月以内の早期がほとんどを占めており,スク リーニングとしての検査を施行する時期は術後3 ヵ月目が最も効率が良い. 本稿を終わるにあたり,御指導と御校閲を賜りまし た広沢弘七郎教授に深甚なる謝意を表します.また直 接御指導を頂いた国立循環器病センター平盛勝彦部 長,斉藤宗靖医長,土師一夫医長の諸先生に心から感 謝いたします. 本論文の要旨は,第51回日本循環器学会総会におい て発表した. 厚生省循環器病研究委託費(61公 3)による研究 成果. 文 献 1)住吉徹哉,平盛勝彦:PTCAの将来の展望.呼吸 と循環 34:951−957,1986 2)住吉徹哉,土師一夫,平盛勝彦:経皮的冠動脈形 成術(PTCA).臨床麻酔 11:505−512,1987 3)Holmes DR, Vlietstra RE, Smith HC et al: Restenosis after percutaneous transluminal coronary angioplasty(PTCA). Am J Cardio1

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参照

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