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盛土の情報化施工における高度解析技術の適用

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盛土の情報化施工における高度解析技術の適用

杉 江 茂 彦 鈴 木 和 明

Information Integrated Construction of Embankments

and Application of FEM Numerical Analysis

Shigehiko Sugie Kazuaki Suzuki

Abstract

This paper describes the current situation of information integrated construction for embankments in

terms of the management of ground behavior and stability. An analysis method to predict the ground behavior

is taken up, as this is important for embankment construction. Soil/water coupling FEM analysis which has

been often used in highway construction was used to simulate embankment construction on humic ground and

other case studies with the vacuum consolidation method. The results showed that the analysis method

reproduces ground behavior well and clarifies the effective usage of the vacuum consolidation method.

Through the use of the soil/water coupling FEM analysis program “GRASP3D”, which was developed

in-house, safer and rational construction can be pursued.

概 要 本報文では盛土の情報化施工へのICTの活用について地盤の沈下・安定管理の分野の現況を述べている。また 沈下・安定管理で重要な地盤挙動の予測評価技術をとりあげ,高速道路の建設で頻用されている土/水連成FEM 解析を用いて実施した盛土事例のシミュレーション,ならびに真空圧密工法に関するケーススタディーについ て述べている。本解析検証では,盛土下の腐植土から成る軟弱地盤の変形・応力挙動を正しく再現することが できた。また真空圧密工法を有効に利用するための留意点を把握することができた。今後の盛土工事の設計や 情報化施工に土/水連成FEM解析(自社開発プログラム「GRASP3D」)を適用することにより,さらに合理的で 安全性の高い施工を追求できる。

1. はじめに

盛土や掘削工事で行われる情報化施工は,工事サイト で得られる計測・測量の情報を工事の安全・合理化に積 極的に活かそうとするものである。Fig.1は盛土の情報化 施工の概要を示したものである。進展したICTの活用に より盛土の情報化施工の意味合いは推移している。 ICTの進展以前(概ね2000年以前)の盛土の情報化施 工は盛土を支持する地盤の沈下管理と破壊を回避するた めの安定管理を目的とした,現場観測工法(Observation al Method)の分野に限られていた。現場観測工法は,施 工中の地盤の情報を設計・施工にフィードバックさせて, 後続の工程がより有利に遂行できるように,施工の仕方 を柔軟に修正していこうとするものである。この方法は 近代土質力学の父Terzaghiによって提唱された。 近年では進展したICTの活用により,盛土の情報化施 工の領域は拡大している。地盤の沈下・安定管理だけで はなく,盛土の敷均し・転圧管理を加えた,工事全体の 品質・出来形・工程の管理を合理的に行うことをねらい としている。またICTの利点を活かした施工情報の集 積・共有化も可能となり,今後の維持補修の効率化,LC Cの低減にも効果をあげていくことが期待される。 本報文では盛土の情報化施工へのICTの活用について, 地盤の沈下・安定管理の分野について現況を述べる。続 いて,地盤の沈下・安定管理で重要性の高い地盤挙動の 予測評価技術について述べる。ここで高速道路の施工で は腐植土地盤を対象に真空圧密工法1)(鉛直ドレーンに Fig. 1 ICTの進展で変化をみせた盛土の情報化施工 Construction Management of Embankment

Progressed by Using the Advanced ICT

沈下・安定管理 ・設計・盛土 ・動態観測 設計・盛土 動態観測 現場観測工法 施工反映 ICT進展・活用 チェック ボーリング 現場観測工法 ICT以前 沈下・安定管理 施工情報の共有 維持管理・LCC低減 クラウドサーバー (記録・保管) 設計・施工情報 (地盤 ・盛土) 地盤挙動予測評価 工程管理 施工履歴 建設機械・追尾・制御 (衛星測距・高度計測) 敷均し・締固め管理 品 質 安全向上 省力化 出来形 FEM解析

(2)

負圧を載荷して地中の水分を強制的に排水する工法)を 併用する盛土施工例えば2),3),4)が一般的になってきている。 施工条件が複雑となり,地盤挙動の予測に土/水連成FEM 解析例えば5)が頻用されている。同解析法の設計・情報 化施工への適用性について,盛土の施工事例のシミュレ ーションや真空圧密工法の併用を想定したケーススタデ ィーの結果をもとに述べる。

2. 地盤の沈下・安定管理へのICTの活用状況

軟弱な地盤に不用意に立ち入ると,足を泥の中にとら れてしまうことがある。盛土施工の場合も同様である。 地盤が安定性を損なうと,地盤は側方に逃げて盛土は地 中に没してしまう。「すべり破壊」と呼ばれる現象であ る。すべり破壊は工期の遅延と経済的な損失を生むため 回避しなければならない。また盛土はそれ自体が道路, 鉄道等の供用物となるため,地盤の沈下を見こした上で 計画の盛土形状(出来形)を構築しなければならない。 そのため設計・計画における地盤挙動の予測の重要性は 高い。しかしながら軟弱地盤は沈下が大きく不安定にな り易いために予測が難しい。これを補うために,盛土の 沈下・安定管理では施工中の動態挙動の実測データを予 測の修正に反映させる現場観測工法が採られている。 Fig.2は盛土の沈下・安定管理の概要を示したものであ る。地盤の沈下と水平変位,ならびに間隙水圧の計測デ ータを既提案の種々の管理図例えば6),7),8)にプロットして管 理規準値と比べることにより安定性の判断が行われてい る。真空圧密工法が適用される場合には,間隙水圧の発 生・消散の挙動に着目した安定管理が推奨1)されている。 これについては4章で触れる。 ICTの進展により,地盤変位の計測にGNSS(GPSを含 む衛星測儀)とTS(光波測量)が普及してきており,精 度の向上と業務の省力化に成果をあげている。また地盤 の沈下・安定に関する実測データや判定情報は,先に述 べた盛土の品質・出来形・施工履歴の情報とともに大容 量のクラウドサーバーへの集積が可能になってきている。 こうしたICT活用による盛土施工の合理化・自動化は, 交通インフラ,人工島,フィルダム等の大規模プロジェ クトの土工事を中心に,国土交通省の推進戦略9)のもと で普及の促進が図られている。 次章ではFig.2と同様に各種の計測を継続しながら現 場観測工法を行った事例をとりあげる。計測結果と盛土 の施工履歴をもとに土/水連成解析の地盤挙動の再現性 能,同解析法の情報化施工への適用性について述べる。

3. 軟弱地盤上盛土の解析シミュレーション

軟弱な腐植土地盤での盛土の施工は,地盤の不安定化 や沈下の継続など問題が生じやすく,難工事の類と言え る。そのため施工中の地盤挙動を計測して次の施工に反 映させる現場観測工法の重要性は高い。数値解析(有限 要素法)による地盤全体の挙動の予測評価も計測に加え て必要であり,特に道路土工の分野では土/水連成FEM解 析がよく使用されている。 3.1 土/水連成FEM解析の理論概要 同解析法の理論の概要と支配方程式をFig.3に示す。こ の解析法はBiotの多次元圧密理論10)に基づくものであり, Fig. 2 地盤の安定・沈下評価へのICTの活用状況 Application of the ICT to Evaluation of Ground Behavior

設計図書 (3次元電子データ化) GNSS衛星 設計・施工計画の再検討 現場事務所 (施工管理担当者) GNSSアンテナ 沈下・水平変位計測 間隙水圧計 層別沈下計 沈下板 腐植土層 粘土層 砂 層 基盤層 砂 層 挿入式傾斜計 地中水平変位計測 CL (鉛直ドレーン・真空圧密工法域) 施工へのフィードバック 沈下・変位・間隙水圧データ 地盤の沈下・安定管理 盛土計画形状確保 ・盛土厚さ調整 ・余盛り 〃 盛土の安定的施工 ・盛土速度 ・押え盛土 管理図による安定評価 ・沈下と水平変位のバランス ・水平変位の日発生量 ・間隙水圧の発生量 電子データ共有化 インターネット閲覧 情報ネットワーク 地盤挙動の予測評価 ・土/水連成FEM解析 モデル修正 精度向上 沈下 水平変位 Fig. 3 土/水連成FEM解析の概要と支配方程式 Schema and Governing Equations of Soil/Water Coupling FEM Analysis Method

土 / 水連成FEM解析 地下水の浸透流解析 (水圧・流量) 連立計算(非定常) 別途計算 地盤の応力・変形解析 従来のFEM 0 ,j= ij

σ

ij R kl ijkl ij D

ε

σ

σ

′ =  − 

(

ij ji

)

ij u, u, 2 1    = +

ε

i i v

=

v

,

ε

j ij i

k

h

v

=

,       = + w w p h γ Ω つりあい条件 応力 ~ ひずみ ひずみ ~ 変位 連続条件 Darcy 則 : 位置水頭 地下水の 浸透流 ij w ij j ij

σ

p

δ

σ

,

=

+

有効応力の原理 (1) (2) (3) (4) (5) (6)

(3)

従来別々に解かれていた地盤の変形・応力解析と地下水 の浸透流解析を同時に連立させて行うところに特徴があ る。 Biotの圧密理論の支配方程式をFig.3に示す。従来の地 盤の変形・応力解析では,釣り合い式(1),応力~ひず み関係式(2),およびひずみ~変位関係式(3)の三つ の式を用いている。一方,浸透流解析では連続条件式(5), ならびに水の流れやすさを表すDARCY則の式(6)の 二つの式を用いている。残る式(4)は「有効応力の原理」 として知られるものであり,地盤の変形・応力と地下水 流れの両者の作用を関連付ける(連成させる)式である。 土/水連成解析では,式(1)~式(6)を連立させて,初 期条件・境界条件を与えて非定常で解くことにより,地 盤の変形・応力,地下水の全水頭・流速の時間的変化を 算定することができる。 同解析法による地盤挙動の再現性と情報化施工への応 用性を検証するために,腐植土地盤での盛土事例11)のシ ミュレーション解析をGRASP3D12)で行った。施工条件の モデル化と検証結果について以下に述べる。 3.2 盛土の施工事例と解析モデル 当該工事は農業用貯水池の堤体(延長92m)を改築す るために実施されたものである。堤体盛土の横断面の形 状と軟弱地盤の構成,ならびに地盤の動態観測の計器の 設置状況をFig.4に示す。解析シミュレーションに用いた 3次元の有限要素モデルをFig.5に示す。 3.2.1 地盤のモデル化 当該地盤は地表より4~5mの厚さで腐植土が堆積して いる。その下には6~8m厚さの沖積粘土が分布し,支持 層の砂層・洪積層に続いている。腐植土層は含水比ω =600~800%,単位体積重量γt=10.1~10.8kN/m3,粘着力 C=5kN/m2,と高含水で軟弱である。沖積粘土層はω=100 ~140%,γt=13~14kN/m3,C=5kN/m2,と高含水で強 度が小さく,腐植土層とともに軟弱地盤を形成している。 圧密試験において両層は高い圧縮性と低い透水性を示し, 地盤の安定確保や長期沈下の対策が必要とされた。 解析では,腐植土・粘土の圧密・せん断特性の模擬に 修正関口・太田モデル13),14)を用いた。圧密試験などから 設けた同モデルの地盤定数値をTable 1に示す。砂層と盛 土,ならびにサンドマットの部材については線形弾性体 で模擬した。用いた定数値をTable 1に併せて示す。 3.2.2 盛土施工のモデル化 厚さ7.0mの高盛土を三期,3年で施工した。地表に土 木安定シートを敷設した後,サンドマット(厚さ0.8m) と鉛直ドレーン(長さ11m,1m正方形状の平面配置)を設 け,腐植土層と粘土層の圧密促進を図った。盛土期間が3 期3年とされたのは,公共工事の多年度計画によるもので もあるが,盛土幅30mに対して盛土厚が7mと厚く,近接 する水田への盛土施工の影響を極力低減させるためにも この程度の期間が必要であった。盛土の施工速度の判断 にあたっては,地表沈下板・層別沈下計・挿入式傾斜計 および間隙水圧計等の実測情報をフィードバックさせた 現場観測工法による情報化施工にもとづいた。その結果, Fig. 4 堤体盛土の断面形状と軟弱地盤の構成 Cross Section of the Embankment and Ground Profile

Table 1 解析に用いた地盤定数値 Properties of Soil Materials

(池側) (田側) W.L. 0 0.5 1 1.5(qc:Mpa) -5 -10 -15 (m) 傾斜計 K1 沈下板 第1期施工 2.3 m 第2期施工 2.5 m 粘土層 粘土層(洪積) 旧堤体 .. .. . .. .. .. .... .... .. .. ... .. .. ... .. .. .. .... . ... .. .. ... .. .. ... .. .. .. ... ... .. .. ... .. .. ... .. .. .. ... ... .. .. ... .... ... .. .. .. ... ... .. .. ... .... ... .. .... .... 間隙水圧計 P-2 .. .. . .. .. .. ... ... .. .. .... ... .. . .. .. .. .... .... .. .. .... ... .. .. .. ... .. .. ... ... ... ... .. .. ... .... .... .. .. ... ... .. .. ... .. .. .. .... .... .. .. ... .. .. .. . .. .. .. .... .... .. .. ... .. .. .. . .. .. .. ... ... .. .. ... .. .. .. . .. .. .. .... .... .. .. ... .. .. .. . .. .. .. .... .... .. .. ... .. .. .. . .. .. .. ... ... .. .. .... ... .. .. .. ... .... .... .. .. ... .. 層別沈下計 S-2 .. ... .. .. .. .... .... .. .. ... .. .. .. . .. .. .砂. ... ... .. .. ..層. .. v v v v v v v v v v v v v v v v v v v v v v v v v v v P-1 S-1 腐植土層 9m 21m 第3期施工 2.2 m 鉛直ドレーン設置域 (長さ11m , @1m正方形配置) 27m コーン貫入抵抗 圧縮指数 透水係数 Cc k (cm/sec) Ko Ki 変形係数 透水係数 ポアソン比 湿潤密度 E (kN/m2) k (cm/sec) ν' γt (kN/m3 ) 砂 層 5000 4.0×10-3 0.35 17.0 盛 土 5000 4.0×10-3 0.30 17.0 せん断抵抗角:35度 過圧密比:2.4~4.1 塑性指数:68% 静止土圧係数 2.15~5.34 せん断抵抗角:45度 過圧密比:14.8~47.6 強熱減量:66% 粘 土 1.4 4.4×10-7 0.73 0.95~1.35 備考 腐植土 7.4 1.8×10-6 0.29 Fig. 5 有限要素メッシュと変形・水理の境界条件 Finite Element Mesh and Boundary Conditions of Geometry and Hydraulics

腐植土層 粘土層 砂 層 -14.5 -12.5 -4.5 GL±0 サンドマット +0.8 +2.3 +4.8 +7.0m 第2期施工 第1期施工 : 鉛直ドレーン設置域 (長さ11m @1m 正方形配置) 全水頭 H=0m 全水頭H=0m 全水頭 H=0m 鉛直ドレーン (全水頭:拘束なし) 18m (m) 122m 全体のFEメッシュ 盛土・地盤改良部の拡大図 鉛直ドレーン部の拡大平面図 第3期施工 鉛直ドレーン @1.0m 鉛直ドレーン 幅26.5mm 0.5m

(4)

各期の盛土は3~4.8cm厚/日(平均3.7cm厚/日)の緩速施 工で2ヶ月程を要し,その後に約10ヶ月の放置期間を置い た。解析シミュレーションでは盛土の実施工程(Fig.6参 照)を詳細にモデル化することとした。 3.3 地盤の変位挙動と応力状態 圧密試験による圧縮指数Ccや透水係数k(Table 1)の 試験値を用いた解析では,各層の沈下や間隙水圧に実測 挙動との差異が生じた。第1期においてCcとkの値を試行 的に変化させて解析を行うことにより,実測結果との フィッティングを試みた。その結果,腐植土層ではCc× 0.9,k×0.2,粘土層ではCc×0.6,k×0.5の補正を加える ことにより実測結果との整合を得ることができた。 3.3.1 地盤の地表沈下と地中側方変位 各層の上端での沈下時間曲線をFig.6に示す。各期の盛 土厚さは2.2m~2.5mと概ね同程度であるが,第3期では沈 下の増分が第1,2期に比べて小さい。圧密による地盤改良 効果に加えて,盛土の施工位置の高まりによる盛土土量 (伝達荷重)の低減も要因と考えられる。解析では先に 述べた第1期での圧密定数値Cc,kの補正により,第2期以 後の実測の沈下挙動も再現(実線)できた。 各期の盛土で生じた盛土法尻位置の地中の側方変位を Fig.7に示す。実測では,第1期に腐植土層で大きな変位 が生じているが粘土層では変位が小さい。第2,3期では粘 土層においても腐植土層と同程度の変位が生じている。 第3期では,第1,2期に比べて変位が小さい。地盤改良効 果と盛土の施工位置の高まりによる盛土土量(伝達荷重) の低減が要因と考えられる。 3.3.2 地盤の応力状態 各層の間隙水圧の挙動をFig.8に示す。実測では盛土期 の水圧上昇と放置期の消散が生じている。第1期の実測結 果で地盤定数値を補正した解析の結果では,後続の第2 期,3期の挙動が精度良く再現されている。 第3期の施工前の土質調査で圧密の状況を調べた。圧密 試験で得られた降伏応力PcをFig.9に示す。初期(第一期 施工前)のPcも併せて示す。第1期,2期の盛土荷重によ る圧密でPcが大きく増加している。解析によるPcも圧密 試験値と近い値で得られている。同解析法が有効応力・ 強 Fig. 8 間隙水圧~時間関係(盛土中央)

Pore Water Pressure at the Mean Level of the Peaty and Clayey (At the Center of the Embankment)

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 1100 間隙水圧 (t f/m 2) 経過時間 (日) 腐植土層内 GL-3.5m (P-1) (k N /m 2) 0 20 40 60 80 100 120 実測値 FEM : 地盤定数値(Cc,k) (圧密試験値) FEM : 地盤定数値(Cc,k) (第1期の実測結果で補正) 粘土層内 GL-7.8m (P-2) 第1期施工 第2期施工 第3期施工 サンドマット・盛土77日、放置305日 盛土52日、放置300日 盛土59日、放置300日 盛土厚さ ( m) 1 3 5 7 Fig. 9 地盤の鉛直有効応力(盛土中央) Vertical Effective Stress

(At the Center of the Embankment)

-14 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 0 50 100 150 200 深度 (m) 鉛直有効応力 (kN/m2) 初 期 圧密試験 (降伏応力:pc) 第3期施工前 初期 有効土被り圧 第3期施工前 鉛直有効応力 (F E M) Fig. 7 盛土法尻の地中側方変位 (各期の盛土期間中の発生量) Lateral Movement at the Bank’s Tiptoe (Incremental value During Construction Period)

F E M -14 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 深度 (m) 側方変位 (m) 実測値 第一期施工 〃 第二期施工 〃 第三期施工 計算値 第一期施工 〃 第二期施工 〃 第三期施工 1 2 3 1 2 3 -4.0 -3.5 -3.0 -2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 1100 沈下量 (m) 経過時間 (日) 第1期施工 第2期施工 第3期施工 サンドマット・盛土77日、放置305日 盛土52日、放置300日 盛土59日、放置300日 盛土厚さ ( m) 1 3 5 7 実測値 FEM : 地盤定数値(Cc,k) (圧密試験値) 地表(沈下板) 粘土層上端 GL-4.5m (S-1) 砂層上端 GL-12.5m (S-2) FEM : 地盤定数値(Cc,k) (第1期の実測結果で補正) Fig. 6 沈下~時間関係(盛土中央) Settlement at the Upper Side of Each Ground Layer

(5)

強度の増加量の算定に活用できるものと考える。 以上より,修正関口・太田モデルを用いた土/水連成解 析では,施工の初段階に実測挙動にもとづく地盤定数値 の補正を行うことにより,後続の施工段階の予測精度が 大きく向上することを確認できた。同解析法は今後の類 似工事の情報化施工において,施工の途中段階での設 計・施工計画の見直しに有効と考える。

4. 真空圧密工法の安定管理と併用効果

腐植土が堆積する軟弱地盤での高盛土は,安定性を損 ないやすく,従来より鉛直ドレーンで圧密を促しながら 数段階に分けて時間をかけて施工されてきた。前章の盛 土事例はその典型と言える。近年では,腐植土上での高 盛土においても工期の短縮が求められ,道路事業の分野 では真空圧密工法の併用が一般的になってきている。真 空圧密工法を盛土の施工に正しく用いるためには,真空 圧密の条件での地盤の応力変形の特性を知っておく必要 がある。また地盤の適切な安定管理の方法が必要となる。 そこで土/水連成解析により,盛土の施工速度と真空圧載 荷の期間を種々かえてケーススタディーを行い地盤の挙 動を検証した。 4.1 真空圧密併用盛土の施工の解析モデル化 4.1.1 地盤のモデル化 前章では腐植土層と粘性土層から成る高含水の軟弱地 盤を対象に,堤体盛土で生じた地盤の挙動を修正関口・ 太田モデルで再現できることを述べた。ここで沈下・間 隙水圧の実測値とのフィッティングに,地盤定数値の修 正を要した。本章の検証では修正後の定数値を用いるこ ととし,地盤と盛土の有限要素モデルをFig.10に示す。 4.1.2 真空圧密工法併用の盛土施工のモデル化 前章の盛土事例は盛土(厚さ7.0m)を3段階に分けて3 年がかりで施工されたものであった。情報化施工の結果, 各期の盛土に約2ヶ月を要し,盛土速度は3~4.8cm/日(平 均3.7cm/日)と緩速となった。また各期の盛土には地盤 の安定化を図るために押え盛土が設けられた。 ここでは,通常の真空圧密工法の併用による盛土施工 で計画されることが多い短期・高速の盛土施工(厚さ 7.0m)を想定し,盛土速度に10cm/日, 20cm/日, 40cm/日 の3ケースを設定した。盛土形状は押え盛土を廃した,客 土の低減を図る形状(Fig.10参照)とした。真空圧密工 法の真空圧の載荷方式には,気密シート式とキャップ式 の二つの方式がある。本研究では前者を模擬することと し,一般的な負圧の載荷値である(-70kN/m2)をサンド マット該当部の節点に全水頭値(-7m)で与えた。 4.2 真空圧密併用盛土の安定管理 松尾・川村のS-δ/S図9)(S:盛土中央の原地盤地表沈 下,δ:法先の地表側方変位)にケーススタディー(真 空圧密併用盛土)の結果,ならびに前章の段階盛土(真 空圧密なし)の実測値をプロットしてFig.11に示す。 S-δ/S図は盛土時の地盤の安定管理に提案されたもの であり,すべり破壊への接近度を示す基準線を有してい る。実測の軌跡(白丸)は沈下が1.5mを越えた辺りから 上方に推移し,破壊基準線(Q/Qf=1.0)に漸近している。 施工時においては,この期間に側方変位の発生は小さく, 沈下の大部分は圧密によるものと認められた。チェック Fig. 11 松尾・川村の安定管理図での地盤挙動の軌跡 Ground Movement on the Diagram for Construction

Control by Matsuo and Kawamura After 1977 Fig. 10 真空圧密併用盛土の有限要素モデル

Finite Element Model for Vacuum Consolidation Method 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 沈下量 S (m) δ/S : 法尻の側方変位/盛土中央の沈下 第2期盛土 第3期盛土 サンドマット ・ 第1期盛土 Q/Qf = 1.0 Q/Qf = 0.9 Q/Qf = 0.8 (破壊基準線) ケーススタディー 解析(FEM) ・真空圧密を併用 して短期で盛土 盛土速度 H=10cm/日 20 〃 40 〃 施工事例 ・真空圧密なし ・鉛直ドレーンを設けて 三期(3年)の段階施工 ・情報化施工で緩速盛土 ・盛土速度 真空圧の 事前載荷期間 ・ H= 3~5cm/・ 日 FEM 実測値 全水頭 H=0m 全体のFEメッシュ 122m -14.5 -12.5 -4.5 GL±0 +0.8 +2.3 +4.8 +7.0m (m) 腐植土層 粘 土 層 砂 層 全水頭 H=0m : 鉛直ドレーン設置域 (長さ11m @1m 正方形配置) 鉛直ドレーン (全水頭:拘束なし) 18m 盛土・地盤改良部の拡大図 第1期 第2期 第3期 実施施工の段階盛土の形状 (鉛直ドレーン設置、真空圧密なし) サンドマット 真空圧密併用盛土を想定した 盛土形状 真空圧載荷時: -70kN/m2 全水頭 H=-7m 真空圧載荷時: -70kN/m2 全水頭 H=-7m

(6)

ボーリングにおいても,圧密による有効応力の増加 (Fig.9参照)と地盤強度の増加が確認された。同管理図 が示した破壊基準線への漸近は実情と明らかに異なるも のであった。ケーススタディー(真空圧密併用盛土)の 結果においても同様の傾向が得られた。圧密沈下が大き く生じる場合には,S-δ/S図9)をはじめとした,地盤の沈 下・変位に着目した提案図10),11)だけでは地盤の安定管理 は難しいものと考えられる。 そこで真空圧密併用盛土では,過剰間隙水圧の挙動に も着目した安定管理がおこなわれている。Fig.12は過剰 間隙水圧の経時変化を示したものである。真空圧密併用 盛土に推奨されている管理値(工事区周辺への配慮の必 要性の有無による①,②の2パターン)1)を加えている。 ケーススタディーでは,盛土速度を40cm/日と高速で施工 した場合においても,地盤のせん断破壊域はFig.13に示 すように盛土の法尻付近に限定され,全体的なすべり破 壊には至る状況は生じていない。すべり安定解析におい ても最小安全率Fs=1.29が得られた。Fig.12では盛土完了 時点で過剰間隙水圧がピークを示しており,①,②の管理 値に対して余裕がある。真空圧密併用盛土では,客土の ストックヤードの条件整備が必要であるが,盛土速度を 高めた施工が可能になると考える。 4.3 真空圧密併用盛土の施工条件と沈下挙動 盛土中央の原地盤地表での沈下時間曲線をFig.14に示 す。ここでは盛土速度の効果を比較している。真空圧密 併用での短期の盛土を想定したケーススタディー(真空 圧を継続載荷)の結果では,施工事例(真空圧載荷なし の鉛直ドレーン圧密だけで数年に分けて段階施工)の場 合に比べて,沈下の収束時間が半分程度に短縮されてい る。また盛土速度を10cm/日から40cm/日に速めても沈下 の収束時間に大きな差は生じていない。 Fig.15では盛土速度が10cm/日の場合について真空圧 載荷の停止時期を変えて沈下時間曲線を比べている。真 空圧の停止時期を盛土完了後30日としたケースでは,停 止後にわずかな沈下の増加を伴いながら,停止時期をこ れより遅らせたケースに比べて小さな沈下量で収束して いる。また真空圧の停止時期を遅くしたケースでは停止 後にリバウンドが生じている。真空圧密を併用した盛土 施工の事例2),3)においても観察される挙動である。真 空圧を継続して載荷したケースでは沈下が進行し,盛土 事例の真空圧密無しの場合と同程度の沈下量となってい る。 ここでのケーススタディー以外の条件,例えば真空圧 のレベルや鉛直ドレーンの設置深度によっても沈下量の 収束値は少なからず変わる。このように真空圧密工法併 用による盛土の地盤挙動は施工条件に応じて多様である。 設計や施工計画の立案では,これらの地盤挙動を一定レ Fig. 14 盛土速度と沈下~時間曲線 Comparison of Settlement by the Difference of

Construction Speed of Embankment

Fig. 15 真空圧載荷の停止時期と沈下~時間曲線 Comparison of Settlement by the Difference of

Timing to Remove Vacuum Pressure -4.0 -3.5 -3.0 -2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.00 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 1100 沈下量 (m) 経過時間 (日) 施工事例 ・真空圧密なし ・鉛直ドレーンを設けて 三期(3年)の段階施工 ・情報化施工で緩速施工 ・盛土速度 H= 3~5cm/日 実測値 FEM H= 10cm/日 20 〃 盛土速度 ・ ・ ・ H= 40 cm/日 ケーススタディー(FEM) ・真空圧密を併用して短期で施工 ・盛土速度 H= 10, 20, 40 cm/日 -4.0 -3.5 -3.0 -2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.00 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 1100 沈下量 (m) 経過時間 (日) 施工事例 ・真空圧密なし ・鉛直ドレーンを設けて 三期(3年)の段階施工 ・情報化施工で緩速施工 ・盛土速度 H= 3~5cm/日 実測値 FEM ・ ケーススタディー(FEM) ・真空圧密を併用して短期で施工 ・盛土速度 H= 10cm/日 真空圧の載荷停止 盛土完了の30日後 真空圧・停止 盛土完了90日後 真空圧・停止 盛土完了300日後 真空圧・停止なし(載荷継続) 盛土施工 (70日間) 真空事前載荷 (20日間) ・ Fig. 13 盛土下の地盤の破壊域の分布 Failure Area of the Ground Under the

Embankment Fs = 1.29 破 壊 域 弾 性 ・ 塑 性 域 法尻付近 の破壊域 砂 層 粘 土 層 腐植土層 盛土速度 : 40cm/day 限 界 状 態 ) ( Fig. 12 過剰間隙水圧を用いた真空圧密併用盛土の安定管理 Construction Control for Embankment with Vacuum Consolidation

Method by Using Excess Pore Water Pressure -80.0 -60.0 -40.0 -20.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 1100 過剰間隙水圧 (kN/ m 2) 経過時間 (日) ①セーフティー ポイント:載荷した真空圧の絶対値 管理値 施工事例 ・真空圧密なし ・鉛直ドレーンを設けて 三期(3年)の段階施工 ・情報化施工で緩速施工 ・盛土速度 H= 3~5cm/日 実測値 FEM ケーススタディー(FEM) ・真空圧密を併用して短期で施工 ・盛土速度 H= 10, 20, 40 cm/日 H= 10cm/日 20 〃 盛土速度 ・ H= 40 cm/日 ・ ・ ②盛土荷重の50%のライン(周辺への変位の配慮が必要な場合 盛土施工期間 H= 10cm/日・ 〃 20 〃 〃 40 〃 (70日間) (35 〃 ) (18 〃 )

(7)

ベルの精度で予測する必要がある。これには,既往設計 の一次元圧密計算の応用やスライス法によるすべり安定 計算では対応することができない。土/水連成解析による 複数のケーススタディーから,工期・工費ならびに残留 沈下の制約条件を満たす最適な仕様を選択していくプロ セスが不可欠であり,同解析法は不可欠な設計ツールと 言える。

5. おわりに

盛土の情報化施工について,近年のICTの活用による 推移と現況を述べた。施工情報の共有化が容易に図られ ることもICTの利点であり,施工の合理化に加えて維持 補修の効率化,LCCの低減の分野にもICTの活用の成 果・知見が蓄積されていくことが期待される。 ICTによる盛土の情報化施工の進展の中で,地盤挙動 の予測評価技術の向上も必要となる。本研究では特に道 路インフラの分野で頻用されてきた土/水連成解析をと りあげた。同解析法の地盤挙動の再現性を検証するため に,腐植土地盤の盛土事例のシミュレーションを行った。 また,真空圧密工法を併用した盛土施工への同解析法の 適用性を検証した。以下に,同解析(GRASP3D)で得ら れた結果を要約する。 1) シミュレーション解析では,施工の初段階に実測挙 動によるモデル修正を行うことにより,次段階以後 の地盤挙動(変形,間隙水圧ならびに有効応力)の 予測精度が向上し,情報化施工時の沈下・安定管理 への同解析の適用性が確認された。 2) 真空圧密工法を併用した盛土施工のケーススタディ ーでは,間隙水圧の挙動に着目した安定管理(真空 圧密技術協会推奨の方法)の妥当性が確認された。 3) 同スタディーでは,盛土を高速施工(40cm/日)して も地盤の安定性が確保されること,また盛土速度を 現実的な範囲で変化させても沈下,過剰水圧の収束 に要する時間に有意な差が生じないことが確認され た。 4) 同スタディーでは,真空圧載荷の停止時期のちがい により地盤の沈下の収束値が大きく異なり,載荷停 止時期の適切な評価が重要であることが確認された。 以上より,盛土施工で生じる地盤挙動の予測,真空 圧密工法併用時の地盤沈下の特性把握と安全性の照 査に,土/水連成解析が有効であると考える。今後の 情報化施工に本解析法を利活用し,真空圧密工法併 用による盛土施工の合理化,高速化に役立てていき たい。 参考文献 1) 真空圧密技術協会:高真空N&H工法技術資料, 2013 2) 加藤真司,杉江茂彦,佐々木 徹,太田秀樹:泥炭 が厚く堆積する地盤での真空圧密併用盛土の荷重 伝 播 , 第 48回地盤工学研究発表会,pp.981-982, 2013.7 3) 加藤真司,杉江茂彦,佐々木 徹,太田秀樹:真空 圧密併用盛土での泥炭地盤の沈下挙動,第68回土木 学 会 年 次 学 術 講 演 会 講 演 概 要 集 , Ⅲ 部 門 , pp.471-472,2013.9 4) 川井田 実,信田潤一,平田昌史,山田耕一:深い 腐植土地盤における高速道路建設-舞鶴若狭自動 車道(小浜~敦賀)の軟弱地盤対策-,第54回地盤 工学シンポジウム論文集,地盤工学会,pp.563-570, 2009

5) Iizuka, A. and Ohta, H.: A determination procedure of input parameters in elasto-viscoplastic finite element analysis, Soils and Foundations, Vol.27, No.3, pp.71-87, 1987.9

6) 松尾 稔,川村国夫:盛土の情報化施工とその評価, 土木学会論文集,No.241, pp.81-91, 1975 7) 富永真生,橋本正治:側方変位の現場計測による盛 土の施工管理について,土と基礎,Vol.22, No.11, pp.43-51, 1974.11 8) 栗原則夫,一本英三郎:道路盛土工における実施例, 昭和52年度土木学会関西支部講習会テキスト, pp.71-81, 1977 9) 情報化施工推進戦略,国土交通省,総合政策局,公 共 事 業 企 画 調 整 課 内 , 情 報 課 施 工 推 進 会 議 , URL//www.mlit.go.jp/common/000993270.pdf, 2013 10) Biot, M., A.: General theory of three dimensional

consolidation, J. Applied Physics, Vol.2, pp.155-164, 1941

11) 西林清茂,上野孝之,杉江茂彦:軟弱地盤上の堤体

盛土にともなう情報化施工とその評価,大林組技術

研究所報,No.29,pp.93-97, 1984.8

12) Ohta, H., Iizuka, A.,Omote, Y. and Sugie, S.: 3-D analysis of soil/water coupling problems using elastoviscoplastic constitutive relationships, Proc.7th ICCMAG, pp.1191-1196, Vol.2, 1991.5

13) Sekiguchi, H. and Ohta, H.: Induced anisotropy and time dipendency in clay, 9thICSMFE, Proc., Specialty session 9, pp.229-239, 1977.7

14) 大野進太郎,飯塚 敦,太田秀樹:非線形コントラ クタンシー表現式を用いた土の弾塑性構成モデル, 応用力学論文集,Vol.9,pp.407-414,2006

Table  1 解析に用いた地盤定数値
Fig.  10  真空圧密併用盛土の有限要素モデル
Fig.  15  真空圧載荷の停止時期と沈下~時間曲線

参照

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