制服とジェンダー ー学校制服を事例としてー 教科・領域教育専攻 社会系コース 陶久 円花 本論文は、性の多様化が社会的に認知されつ つある現代社会において、教育現場では未だ男 女で分けられた学校制服が主Ijliであることの問 題についての研究である。これまでの学校制服 の歴史を振り返るとともに、トランスジェンダ ーへのヒアリング調査で得た内容べ現代社会の 性の多様化に対する意識・配慮を交えながら、 学校制服の今後のあり方について考察してい く。 第1章 はじめに 現在、社会全体に占めるIズlBT の割合は数 パーセントにも及ぶと言われており、若者を中 心にジェンダー・フリーという考え方も浸透し てきている。このような性の多様化に対する社 会の理解は多く得られるようになり、多くの企 業においても様々な配慮がなされている。 一方で、学校現場に目を向けると、性別によ って区別されている場面は数多くある。例え ば、名簿や体育の授業などである。そのなかで も学校制服は生徒が多くの時間関わるものであ り、性的少数者にとって苦痛が大きく、早急に 改善すべき問題を抱えている。 第2 章 学衝“I」服について 学校市慨には、家廷の経済格差を目立ちにく くすることや、集団意識の強化等のメリットが ある一方で、高価であることから家計の大きな 負担になることや、個性・自己表現の」Il]圧、制 服の着崩しによる生徒指導の困難化等のデメリ 指導教員 山本 準 ットもある。しかし、これを踏まえた上でもほ とんどの学校が制服を取り入れているという現 実があるのはデメリットを超えるメリットがあ り、必要とされているからである。 学校制服は歴史的に見ると、和装から洋装 へ変化し、その時代に合った形で進化してき た。現在は、ブレザーや詰襟学生服、セーラー 服などの男女で分けられたスタイルが主流であ る。そのような中で、ごくわずかではあるが、 制服の選択制や陛差を感じさせない制服を導入 している学校が存在するようになった。導入理 由として、性的マイノリティに文すする配慮のほ かに、防寒対策や自転車通学者への配慮等があ る。このような制服は導入している学校による と、学校側の予想を上回るほどの生徒の好評ぶ りをみせた。 第3 章 LGBT と学校制服の問題 LGBT は社会的にも広く認知され、理解し たいという人も多1,、様々な企業においても同 性パートナーに対して通常の配偶者と同様の処 遇を実施したり、LGBT に配慮した商品を開 発したりするなど、LGBT に対して配慮を行 っている。 このように社会的に配慮が進む中で、トラン スジェンダーに対して行ったヒアリング調査に よると、調査対象者13 人全員が学校生活のな かで、学校制服について嫌悪感や違和感を覚 え、深刻な悩みを抱えていたと答えた。スカー - 215 -
トの中にズボンを着用したり、体操服で過ごし たりして気を紛らわせていたという回答者が多 かったが、生徒指導の対象になってしまい、苦 痛だったという。 自認する性の制服が着用でき る環境になったとしても、教師がそれを異例や 特別扱いするような認識を持ってほしくないと いう意見がヒアリング調査で得られ、教師の性 的少数者やジェンダー・フリーに対する正しい 理解や対応が重要なのである。 一方で、これに対しての法律や文部科学省の 対応は十分ではなし、 法律によって戸籍上の性 別変更が可能となったが、これは医師による性 同一性障害の診断を受けていることが前提であ ったり、女融因の有無やタ権見などの細かい条件を 満たしたりしなければならない。文部科学省も 性同一性障害の生徒に対して配慮を求める通達 を出しているが、性同一性障害と認められる、 あるいはカミングアウトが前提であり、これら ができない生徒は配慮ク政」象外となってしまっ ており、性に悩む生徒全員に配慮できていると は言い難し、 第4 章 若者のジェンダーに対する意識 「ジェンダー・フリー」とは、性別にとらわ れることなく自由に行動・生活できることであ る。近年、若者を中心にジェンダー・フリーは 広がっており、ジェンダー・フリーの芸能人の SNS のフオロワーやYouTube の再生回数も多 く、実際に受け入れられていると言える。 ジェンダー・フリーが広がりつつある中で、 それを裏付けるように男性化粧品の市場が拡大 している。そのほか、男性において自分で行う メイクより一歩進んだまつ毛ェクステや脱毛な どのこれまで女性が行うものとされてきた美容 方法も浸透しつつある。実際に一部のまつげェ クステサロンでは、男性がお得になるメンズデ ーが設けられていたり、男性専門の美容サロン が登場したりしている。このことから、男性の 美容サロンの利用者は多く、美容意識が高い男 性が増えてきていることが分かる。 このようにLGBT やジェンダー・フリーの 登場により、性に対する固定概念が薄れつつあ る現代ネ桧において、教育現場も時代とともに 変化していくべきである。そして、文部科学省 のLGBT への配慮に関する通達やカミングア ウト前提の学校現場の対応とカミングアウトで きないLGBT とのすれ違いは今後の学校制服 において最大の問題であり早急に解決すべきも のである。 第5 章 おわりに 現代ネ桧がLGBT やジェンダー・フリーに 様々な面で対応してきている一方で、教育現場 では、LGBT の人全員ができるものではない カミングアウトを前提とした対応がほとんどで あり、この対応は十分であるとは言い難い。そ して同時に、性同一陛障害には当たらないジェ ンダー・フリーにも対」;亡;できていないと言え る。 学校制服は、多くの役割を担っており、重要 な教育手段でもあることから必要とされている 存在で、生徒にとっても多くの時間関わるもの である。それが生徒の悩みの原因となってしま わないように、性の多様化に対応した選択制の 制服を少しでも多くの学校が採用することが急 務なのである。 今後、学校共教員が性の多様化に対する正し い知識を得ることで、理解・配慮し、性的少数 者の生徒を含めた生徒全員が過ごしやすい環境 の学校を目指さなければならない。性の固定概 念が薄れつつある現代社会に学校制服が取り残 されないよう、学校制服の未来に期待したし、 - 216 -