創造支援システムにおける貢献価値モデルの提案と評価
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(2) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 2.2 議論における貢献度の問題意識 そもそも議論は,何らかの課題解決やそれらの積み重ね. Vol.2018-GN-104 No.3 2018/3/19. 者各自の行動の変革が行われるようになる. 2.4 関連研究. としてのプロジェクトの成功を目指す活動である.参加者. 発言内容の評価または,議論における貢献度に関する実. は自分自身のスキルや知識を活かして他の参加者と共にア. 践的な事例を調査した研究[7]がある.ここでは,Quirky 社. イデアや意見を出し合っていく.課題に対して網羅的に検. の事例を取り上げている.Quirky は,オープンな環境でユ. 討し,多様な意見を取り入れることが求められる.. ーザからプロダクトを提案してもらい,ユーザとコミュニ. 確かにこれまでも議論の評価として,他者への評価や登. ティを形成し共創して市場投入していくというものである.. 録した発言内容に対する評価を行っているシステムは存在. 最大の特徴は,インフルエンスという仕組みである.イン. する.例えば,個人毎の発言回数や発言に対する得点を予. フルエンスは,開発している製品に対する個人の貢献度で. め決めておいてその合計点により,個人の評価や発言内容. ある.個人に対しては,製品の販売利益を原資に,インフ. の評価を行うものがある.また,多くの意見が集められた. ルエンスに応じた金銭が分配される. アイデアを出した人,. ことで議論が活性化していると評価するものもある.しか. 投票した人,デザイン,ネーミングした人などそれぞれの. しながら,それら評価は以下の 3 つの課題があると考える.. 貢献度が評価される.これは,金銭的なインセンティブを. まず第 1 には,評価が表面的な点である.単にアイデア. 与えることで,外発的モチベーションを向上させるもので. の件数や,解決策を出した人を評価してしまうため,自分. ある.新製品を投入する仕組みとしては機能し成功してい. 自身のアイデアや意見が,どれだけ議論に役にたったのか. るが,内発的モチベーションの向上は弱い.. が判らない.発言が少なくても,解決策に結びつく重要な. 次に,Web 上のタウンミーティングのような大規模議論. アイデアを提案している場合もある.第 2 には,自分自身. において,参加者の議論インセンティブ機能を利用して議. が課題解決の過程に対してどれくらい貢献していたかが判. 論の活性化や議論の質の向上を目指した例[8]がある.議論. らない点である.なぜならば,発言に対する評価は,発言. をツリー構造で表現し,参加者の増大に伴う閲覧コストの. した時点での評価である場合が多く,その時点では良いと. 増大を防いでいる.また,議論の発言内容に応じて参加者. 他者に認められたとしても,時間が経過し議論が進むと実. の活動のインセンティブとなる活動ポイント,有益な発言. はもっと効果的なアイデアが提案され,そちらが採用され. を促すインセンティブとなるフィードバックポイントを設. て最初に良いと思われたものが不採用になる場合もあるか. 定している.活動ポイントとしては,投稿,返信,賛同機. らである.第 3 には,他者の支援や議論の推進を評価する. 能を設定している.フィードバックポイントとして,自身. 手段が無い点である.課題解決にあたっては,他者へ自身. のコメントに対する返信で得られるリプライドポイントと. の知りうる有益な情報を与えることや,議論そのものの推. 自身へのコメントに対する賛同に対して一定の割合ずつ伝. 進することも重要である.これら課題は,表面的な評価が. 搬していくことを考慮したアグリーポイントで構成される.. なされているため自分自身が,議論の過程や結論において. これに議論参加者のインセンティブを与えることで議論の. どの位役に立ったのかが判らないことによるものである.. 活性化を図っている.これは参加者から多くの意見を集め. それら課題を解決するためには,課題解決に向けたプロ. る上において有効な機能ではあるが,個人がどれだけ議論. セスを可視化することである.まず第 1 には,コンテンツ. 全体へ貢献しているかどうかは判らない.. を正しく評価することである.第 2 には,自分自身が課題. さらに,Web チャットを利用した議論活性化の仕組みを. の解決やプロジェクトの成功の過程においてどのように役. 利用した協調学習への効用例[9]がある.議論の進行をモニ. に立っているかが判ることである.第 3 には,他者の活動. タリングし,学習者の役割を「好意的発言影響度」として. やプロジェクトの推進に対して支援できているかが判るこ. 定量化して表示する.これにより議論の活性化へのきっか. とである.これら自分自身の貢献度を知ることでさらに自. けとし,有用な発言を引き出している.発言に対しては,. らが考え行動することが期待できる.. 発言意図を予め分類定義し,好意的発言影響度を算出する. 2.3 目的. ルールを決めている.これにより,議論における役割であ. 本研究の目的は,議論における各自の貢献度を可視化す. る人物像を抽出することができる.また,議論の収束や停. ることである.それには,貢献度をどのように評価してい. 滞,意見の誘発を決められたルールで判断する.この仕組. くかの評価モデルを構築していく必要がある.貢献度を可. みは,人物像把握を可能としているが,扱う人物像の種類. 視化できると,課題解決やプロジェクト成功に向けて以下. は限られている.また積極的な発言へ繋がることは考えら. の 3 点が期待できる.第 1 には,参加者の議論が活性化し. れるが,それぞれの発言がどの程度議論全体へ貢献してい. 良いアイデア,意見,情報が提供されるようになる.第 2. るかは判らない.. には,参加者が課題解決,プロジェクトへのどれくらい役 に立っているかを知ることでモチベーション向上が期待で きる.第 3 には,可視化により状態を知ることにより参加. ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. 2.
(3) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 3. 創造支援における貢献度評価 3.1 課題解決のために必要とされる機能 本研究の目的で示したように,課題解決のために必要な 機能は,議論における各自の貢献度を可視化することであ る.それには,貢献度をどのように評価していくかの評価 モデルを構築する必要がある.そのためには,以下に示す 3 つの評価の観点で検討する必要がある.それらは,登録 するアイデアや情報,意見などの「コンテンツそのものの. Vol.2018-GN-104 No.3 2018/3/19. 況による評価の 2 つの視点があり,それぞれがマトリクス の関係になっている. これらとは別に,共通事項としてプロジェクト全体や課 題毎の管理が必要である.誰かが議論の推進に貢献し、成 果を出したことを認識するのであれば,コンテンツの評価 だけではなく,人物の評価も必要である.そうすることで, プロジェクトの進捗とともに人物像をリアルタイムに示し ていくことが可能となる. 表1. 評価」, 「登録コンテンツの時間経過による評価」,さらに「プ Table 1. ロジェクトや議論を推進する観点での評価」の 3 つである.. 貢献価値評価分類. Contribution value evaluation classification.. 今回これら 3 つの評価観点を纏めた貢献価値評価モデルを. 評価主体. 新たに提案する.(表 1 参照)詳細は 3.2.2 章で説明する.. 人による評価. まず第 1 には,登録するアイデアや情報,意見などのコ. ノード 登録時. ンテンツそのものの評価機能である.プロジェクトは 1 つ ひとつの課題に分解でき,それらを解決していくことであ る.そうした場合,課題解決に関連したアイデアや意見,. 時間. (A)自己評価. (B)他者評価. (E)状況評価. 自分への評価 他者への評価 時間要素や接続状況による評価. (C)連鎖評価 (F)貢献評価 時間 経過後 上位ノードへの接続による再帰 プロジェクトや人への成果として 的評価 認められる. 情報を評価する必要がある.つまり,良いコンテンツは解 決への要素を持っているため,それらをきっかけに議論が. 状況による評価. (D)経路評価 解決時. 解決策から課題に遡って関連したノードへの評価. 発展していくからである.そこで登録コンテンツの良さを 自分や他者から主観的に評価してもらう機能が必要である. 主観的ではあるが,お互いが評価内容を見ているため牽制 機能が働き,特異な評価には至らない.第 2 には,登録コ ンテンツを時間経過により評価する機能である.例えば, 良いコンテンツが登録されれば,それに対してアイデアや. 3.2 具体的な実現方法 機能を実現するにあたり,議論の可視化と貢献価値評価 の詳細機能を以下に示す. 3.2.1 議論の可視化 議論の可視化として,時間経過後でも判りやすくする構. 意見が繋がっていく.つまり,元々のコンテンツの価値が. 造化の手法がある.IBIS(Issue Based Information System)は,. 時間経過と共に高まることになる.より重要なコンテンツ. Werner Kunz と Horst W. J. Rittel [10] によって開発され,複. と認識されればそれを元として課題解決への可能性が高く なる.また,最終的な課題解決に至ったのであれば,その 課題解決に関連したコンテンツに対しては,改めて評価す る機能が必要である.第 3 には,プロジェクトや議論を推 進する観点で評価する機能である.議論においては,多く の意見を出してもらうために発言を促したり,議論を発 散・収束させたりしている.また,困っている人を支援す ることも結果的に課題解決への糸口になる.このために, コンテンツの登録状況や接続状況を管理しておく必要があ る.例えば議論が停滞している場合に議論を促すきっかけ. 雑な開発工程における議論の可視化を行った.そして議論 の流れを理解しやすくする gIBIS [11]が開発された.この システムでは,ノードとリンクを用いてグラフで表現して いる.これにより,議論の構造を容易に理解することがで きるため,途中からの議論参加も容易となる. 可視化方法としては,図 1 に示したように,アイデア, 意見,情報を「ノード」に記録することとする.課題また は先に登録された「ノード」と関連づけを行うために「リ ンク」で接続する.これらノードとリンクの分類と役割に ついては,3.2,2 章で詳細に説明する.. になればそのコンテンツを評価する.例えば,他者への支 援に対して成果があったのか,議論の停滞を打破するコン テンツに対して本当に議論の活性化が図れたのか,などを 確認する必要がある.よって,これらについても時間経過 の観点での評価が必要となる. 3 つの必要要素より具体的な評価方法を纏めると表 1 と なる.まず、2 つの評価軸に分けることができる.時間の 評価軸と評価主体による評価軸の 2 軸である.時間の評価. 図 1. ノードとリンクの接続. Figure 1 Connection of a node and a link.. 軸からは,議論の進度に応じて評価していくため,ノード 登録時,時間経過時と解決時の 3 つの視点を設定した.一 方、評価主体の評価軸では,人による評価とノード登録状. 3.2.2 貢献価値の評価 貢献価値の評価は,3 つの課題解決のために,表 1 の評 価モデルを利用する.以下に(A)から(F)の 6 つの評価. ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. 3.
(4) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2018-GN-104 No.3 2018/3/19. 内容とアルゴリズムについて詳細に説明する.. Nj. (1) ノードそのものの評価 ノードそのものの評価は,人による評価である.自分自. ノード総合評価点 S(j ). Nbj. Vd j. ノード分類. 下位評価. αj 上位評価. 身が評価を行う「自己評価」と他者が評価を行う「他者評 価」の 2 つがある. ①. β(k、j)伝搬係数. 自己評価・・・(A). Nk. ノード登録時において,自分自身でノードの評価を行 うものである.但し,個々による判断で評価にばらつ. ノード総合評価点 S(k ). 下位ノードからの評価点 S(k )*α(k)*β(k、j). Nbk. Vd k. ノード分類. 下位評価. αk 上位評価. きが発生することが想定できるため,本論文では登録 図2. するノード分類種別により予め得点を付与している. それらノード分類については,表 2 に示す.まずノー. Figure 2. 上位ノードに対する評価係数 α(k ). ノードとリンクを用いた評価方法 Evaluation method using a node and a link.. ドを「課題」 「解決策」の他に, 「知性」 「感情」 「行動」. ②. の 3 要素に分類している.各ノードの分類に対し得点. 既に登録されている上位のノードに対して他者から. を付与している.例えば,小分類が提案の分類の場合. 評価を与える仕組みを説明する.具体的な計算は以下の. は 4 点となる.. アルゴリズムで行われる.ノードの総合評価点は,単に. 他者評価・・・(B). 上位ノードのみの評価であれば 1 段だけであるが,ノー. 登録済みの上位ノードに対して評価を与えるもので. ドが多段に接続されていった場合再帰的に計算される.. ある.例えば,アイデアや意見についての賛成,反対. 図 2 の例では,ノード N(j)におけるノードの総合評価. の意思表示,素晴らしいアイデアに対する点数を付与. 点 S(j)は下記となる.. する直接評価,上位のノードに影響を受けたことを示. S(j) = Nb(j) +. すことなどをノードとノードを接続するリンク情報. ∑ s(k ) *α(k) * β(k,j) k. で表現する.リンクは表 2 に示すように上位ノードへ. ノード N(j)とノード N(k)の関係において. の影響度合として伝搬係数が付与されている.単なる. S(j). 上位への接続なのか,上位ノードの影響を受けて自分. Nb(j):ノード N(j)におけるノード分類点. の意見やアイデアを登録したのか,上位ノードへ直接. α(k) :上位ノード N(j)に対する評価係数. : ノード N(j)におけるノード総合評価点. N(k)のノード分類により付与されるかマニュア. 評価するのかで伝搬係数を変えている.例えば,影響 分類の場合は,上位ノードの影響を受けて自分の意見. ル設定される評価係数. やアイデアを創出したと考え,自分の点数の 50%を上. N(k)が賛成の場合,評価係数α(k)は. +1. 位に付与するようにした.この仕組みにより自己評価. N(k)が反対の場合,評価係数α(k)は. -1. に加え,他者からの評価を総合た得点を「ノード総合. N(k)が評価の場合,評価係数α(k)は. -4~+4. 評価点」とする.評価方法については図 2 に示す.. N(k)が感謝,褒めるの場合評価係数α(k)は N(k)が上記以外の場合,評価係数α(k)は. 表 2 Table 2 <ノード> 項 大分類 1 課題 2 解決策 項. 大分類. 1. 知性. 2. 感情. 3. 行動. <リンク> 項 大分類 1 評価 2 影響 3 結果 4 置換 5 接続. +1~+4 +1. Vd(j):下位ノード N(k)からの評価点. ノードとリンクの分類. Classification of the node and the link.. = ノード N(j)に接続する全ての下位ノードから N(j)に対する評価点の総和. 内容 課題設定(ANDかOR課題を識別) 課題に対する解決策 中分類 知識 アイデア 判断 ニーズ 願望 意志 ネットワーク 計画 中分類 -. 小分類 情報,分析,質問,回答,意見 ひらめき,気づき,提案,工夫 評価,賛成,反対,保留,採用 顧客ニーズ,外部環境 想い,ありたい姿,ビジョン 励まし,感謝 紹介,訪問 立案,プロトタイプ,マイルストーン. 小分類 上位ノードへの評価を与えたノードへの接続 影響、統合、分離 支援による結果,成果 置換、一般化、特異化 接続、説明. 得点 4 4 得点 2 4 1 1 2 1 1 1 伝搬係数 0.8 0.5 0.5 0.8 0.2. Vd(j). =Σノード評価点*評価係数*伝搬係数 =. ∑ s (k ). *α(k)*β(k,j). k. β(k,j):ノード N(k)からノード N(j)に対する伝搬係数 β(k,j)はリンク種別 L(k,j)にて決定される値 L(k,j) :リンク種別 L(k,j) が評価の場合:伝搬係数β(k,j)は 0.9 L(k,j) が影響・置換の場合:伝搬係数β(k,j)は 0.5 L(k,j) が接続の場合:伝搬係数β(k,j)は 0.1 (2) 登録ノードの時間経過による評価 登録ノードの時間経過による評価は,時間軸による観 点で,「連鎖評価」と「経路評価」によって行う.. ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. 4.
(5) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report ①. Vol.2018-GN-104 No.3 2018/3/19. 状況から議論が停滞していることや活性化しているこ. 連鎖評価・・・(D) ノード登録時点での評価だけでは価値が決定されるこ. とが判断できる.これらは登録した時点では成果を確. とにはならない.他者による評価が自己評価へ影響を. 認することができないものの,きっかけを作ったノー. 与え,ノード総合評価点となるが,これに時間経過の. ドとして記録しておく必要がある.これらの識別につ. 要素を加える必要がある.例えば,あるアイデアのノ. いては,表 3 に示す.. ードに対して多様な意見が出されていくと,樹形図の 表 3. 枝が拡大していく.他者がアイデアを見てさらに新た なアイデアを元のアイデアに追加していくように,最. Table 3. 状況評価と貢献評価の識別. Distinction of situation evaluation and contribution evaluation.. 初のアイデアを元に多くの意見が出され議論が深まっ ていくことになる.その場合に上位ノードへの伝搬す る機能を用いて点数を再帰的に計算していく機能を設 ける.アルゴリズムは,図 2 に示した通りである.こ れから,当初ノード登録時の評価と,時間経過した時. 項. 分類. 議論が深まり,最初にアイデアを出したノードの評価. 分離. 2. 統合. 統合リンクによる 複数ノードへの接続登録. 3. 沈黙を破る. ノード登録後にプロジェクトノード プロジェクトノード登録平均値を 登録平均値を上回る 下回った時点でのノード登録 (議論が活性化). 4. 支援・紹介. 他者への支援をノード 分類識別. 成果がリンクでフィードバック. 5. 褒める・感謝. 他者への支援をノード 分類識別. ノード登録後にプロジェクトノード 登録平均値を上回る (議論が活性化). は高まっていく.逆に議論が深まらなかったものにつ いては登録時点のノード評価のままで高まることは無 い. ②. 経路評価・・・(F). 貢献評価識別 分離後にプロジェクトノード登録 平均値を上回る (議論が活性化). 1. の評価の値はノードが登録していく毎にリアルタイム に変化していくことが判る.良いアイデアについては. 状況評価識別 分離リンクによる 複数ノードの登録. ②. 統合後の経路で解決策に至る. 貢献評価・・・(E). 経路評価は,課題に対して解決策が確定した時点で再. 貢献評価は,表 3 に示すように状況評価において,ノ. 度,解決策から課題に遡った経路上のノードを抽出し. ード登録時点では成果を確認できなかったものに対し,. 評価するものである.実際には,経路上ノード以外の. 時間経過後の成果を確認するものである.例えば,議. ノードに対する総合評価点を 50%とする.これにより,. 論の停滞に対して,誰かのノード登録を契機として議. 課題解決に貢献したノードとそうでないノードの差別. 論が活性化できた場合,最初のノード登録時点ではど. 化を行う.経路評価は課題解決されて初めて評価でき. うなるかは不明である.時間経過して初めて先ほどの. るものであり,ノード登録時や,時間経過後では評価. ノードの効果を確認できる.同様に,誰かの支援をし. できない.各ノードはどの課題に対して登録している. ても本当に効果があったのかどうかは,時間経過して. かを識別する必要がある.また課題によっては,複数. みないと判らない.これは,単にノード得点が高いも. の課題が両方解決して初めて解決とみなすものや,ど. のだけが価値があるとは限らず,議論への支援,他者. ちらかの課題一方の解決でも解決とみなすものがある. への支援に対しても評価を行おうというものである.. ため,それらを識別管理できるようにする.経路評価. これら評価をある比率でノード総合評価点へ換算して. は,課題解決に向けてのプロセスを評価することが可. いくことも可能であるが,プロジェクトへの質的な観. 能となる.例えば考える観点を変えた意見や,当初は. 点での貢献として貢献評価する.これにより,沈黙を. 誰も評価していなかった意見が重要であったことを再. 破る人,支援・紹介を行う人,纏めることが得意な人,. 認識できる. このように,連鎖評価,貢献評価,経路. 議論を発散させるのが得意な人など人物の特徴を認識. 評価は,議論の推移をノードとリンクの構造化した形. することが可能となる.. で管理し,時間経過の要素を加味したことによって可 能となった評価である. (3) プロジェクトや議論を推進する観点での評価 プロジェクトや議論を推進する観点での評価は,「状況. 次に,状況評価,貢献評価で使用する活性度の評価 について説明する.活性度は,各課題の活性度とプロ ジェクト全体の活性度,各個人毎の活性度に分けて管 理する.各課題に対する活性度は,プロジェクト全体. 評価」と「貢献評価」を用いる. のノード登録間隔の平均値と課題 X のノード登録間隔. ①. を比較して判断するものとする.例えば,プロジェク. 状況評価・・・(C) 状況評価は,ノードの繋がり状況から判断する評価で. ト P における課題 X の活性度 A(k)は,ノード S(k)のノ. ある.例えば,複数のノードを束ね議論を収束する意. ード分類得点を C(k),ノード登録間隔. 図を持ったノードや,逆に議論を発散させる意図を持. Ti(k) = [St(k)-St(k-1)]とすると,. ったノードの評価を行うためには,ノード種別を認識. A(k) = C(k) / Ti(k) となる. する必要がある.またこれまでのノードの登録時間の. ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. 一方,プロジェクト P における平均活性度 PA(k)は,. 5.
(6) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2018-GN-104 No.3 2018/3/19. 表 4. プロジェクト P のノード S(k)までのノード分類得点 k. の総和を ∑. ( ), ノード S(k)までの時間 T(k)とし k. た場合,PA(k)= ∑. ( ) / T(k) となる.. 課題 X の活性度 A(k)とプロジェクト P の活性度 PA(k). 項 1. 内容 詳細 ノード・リンク分類は表2に基づく 100ノードを作成 ノードとリンク 但し、議論の流れは考えるが、 課題は2つ設定 (片方はオアで解決する課題) 議論の中身は無しとする 項目. 2. 参加者. 3. ノード登録時間. を比較し,予め設定した閾値を上回ることで活性化と 判断する. 課題X N7. N1. N4. 4. N2. N11. N8. N16. 評価方法. N6 N5. N12. N13 N9. N10. N14 N15. プロジェクト参加者5名 人物像に応じた行動とする. A:サブリーダー的存在 B:リーダー的存在で議論を主導 C:議論の支援、他者への支援を行う D:発言は少ないが良いアイデアを出す E: 賛成、反対などの評価のみ. 議論の流れを考慮した時間と 実際のノード登録時間ではなく作成した する もので登録時間は表示していない 1)自己評価 2)他者評価 3)状況評価 4)連鎖評価 5)貢献評価 6)経路評価. ・ノード分類点数を使用 ・マニュアルで評価点を付与 ・予め議論停滞状況を設定 ・再帰的なアルゴリズムで計算 ・予め停滞から活性化状況を設定 ・解決時に経路以外得点を50%へ設定. メンバー5 名の具体的なノード登録状況については,表 5 に示す.. N18. 表 5. N17. The activity value of the node.. (4) 貢献価値の算出 貢献価値は,ノードから導きだされるノード総合評価点 と人物の評価から導きだされる人物評価で行う.ノード総. ノードの登録状況. Table 5 The registration situation of the node.. 図 3 ノードの活性度 Figure3. 評価データ概要. Table 4 The evaluation data outline.. メンバー 分類 課題 知識 知性 アイデア 判断 感情 ほめる・感謝 行動 支援 解決策 合計. A. B 1 6 4 9 1 0 1 22. C 2 8 4 8 0 0 1 23. D 0 5 3 13 1 1 0 23. E 0 5 2 8 0 0 0 15. 合計 0 1 0 16 0 0 0 17. 3 25 13 54 2 1 2 100. 合評価点は,自己評価や他者評価を元にして時間経過の要 素を加えて算出される.人物評価は,特定された人の状況. 4.3 評価結果. 評価と貢献評価により課題解決に対する支援やプロジェク. 4.3.1 定性的評価. ト推進への支援を抽出することで見出す人物の特徴である.. まず,貢献価値評価として提案した 6 つの評価に対して,. これらはプロジェクトの進捗とともにリアルタイムで変化. 従来のシステムと比較評価を行った.内容は表 6 に示す.. している.ノード単位,人物単位,課題単位,プロジェク. Quirky のシステムは,最終製品に到達したものに対して. ト単位として整理分類することで,プロジェクトにおける. インフルエンスとして評価を行っているため,経路評価は. 各個人の貢献価値を可視化することが可能となる.. 行われている.また,デザインへの賛成,反対など他者へ. 4. 評価 4.1 評価の目的 本評価の目的は以下の 2 つである. ・3 章にて設定した貢献価値モデルによった評価でそれぞ れの貢献価値を示すことができるか. の評価は行われているが,連鎖評価は無い. 大規模意見集約システムにおいては,参加者の活動のイ ンセンティブとなる活動ポイントや有益な発言を促すフィ ードバックポイントを設定している.このことから貢献価 値評価に該当する機能を持ち合わせている.また,議論を 構造化として可視化しており,親のコメントへの賛同やリ. ・人物像を示すことができるか. プライなどの機能も持つ.これらは他者評価,連鎖評価に. 4.2 評価方法. 該当する.. 評価に使用した仮想データの各種条件については,表 4. 議論支援システムにおいては,提案を多くする発言者や. に示す.ノードとリンクは,内容はないものの議論の流れ. 有効なキーワードを最初に出す発言者などで人物評価を行. を考慮して表 5 のように作成した.また参加者についても. っている.また,発言の意図を示すことで自己評価を行う. それぞれの役割を持たせ議論を構築している.ノード登録. ことと同等な機能を有している.さらに,議論の収束や,. 時間については,仮想の時間だが議論の停滞や活性を考慮. 意見の誘発など役割を評価できる.. した時間間隔でノード登録を行っている.ただし登録時間 は表 5 には表示していない. 本評価は,予め作成した仮想データを利用しているが,. 以上より,これらシステムにおいて,インセンティブを 与えたり,人物像を見出したり,それぞれ議論の活性化や コンテンツを評価していくことが行われている.しかし,. 実際の議論のデータを投入した場合でも,本アルゴリズム. 課題解決やプロジェクト成功に向け貢献度を可視化し,モ. で動作することになるため,機能確認には十分である.. チベーション向上するには至っていない.. ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. 6.
(7) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 表 6. Vol.2018-GN-104 No.3 2018/3/19. ②. 既存システムとの比較. Table 6 The evaluation data outline.. ードは,19 件のみである.19 件のノードについては,解決. 評価項目 項. 題名. システム. 1. Quirky. 自己評価 他者評価 状況評価 連鎖評価 貢献評価 経路評価 ○. ○. 無. 無. 無. ○. 大規模意見集約シス COLLAGREE テムCOLLAGREEEに 大規模意見集約 おける議論インセン 支援システム ティブ機構の施策. ○. ○. 無. ○. 一部有. 無. 好意的発言影響度を WEBチャットによる 3 取り入れた議論支援 議論支援システム システムの開発. ○. 一部有. 無. 一部有. 無. 無. ○. ○. ○. ○. ○. ○. 2. 4. コミュニティ. へ関与したノード数に相関し,参加メンバーA~E の経路評 価後得点比率が変化していることが表 7 からわかる.賛 成・反対のみで参加した E の得点比率は 3.1 ポイント低く なり,A は 3.4 ポイント高くなっている.D は発言回数が 少ないが,得点比率は C よりも高くなっている.. 構造化創造支援 システム. 本提案システム. 経路評価(D) 登録ノード数は 100 件であったが,解決策に関連するノ. 4.3.2 定量的評価. さらに,解決策に関連したノードにおいて,収束・発散 を行ったノード,支援を行ったノードがあるので,それぞ. 定量評価は,3 つの課題に対して表 2 に示す 6 つの評価. れの人物像としても貢献価値を確認することができる. 表7. 項目により確認した.. Table 7. (1) ノードそのものの評価 ノードそのものの評価については,自己評価と他者評価 を用いて評価を行った. ①. 自己評価(A) 自己評価については,予め設定したノードの分類点がノ. 経路評価における影響. Influence of process evaluation.. メンバー 総合評価点 得点比率(%) 経路評価ノード数 経路評価後ノード数 経路評価後得点 経路評価後得点比率(%). A 87.8 27.4 22 7 66.0 30.8. B 103.5 32.3 24 6 67.3 31.4. C 55.5 17.3 22 2 33.1 15.5. D 55.6 17.4 15 4 42.2 19.7. . E 18.0 5.6 17 0 5.4 2.5. 合計 320.3 100.0 100 19 213.9 100.0. ードの評価点として反映していることを確認した. ②. (3) プロジェクトや議論を推進する観点での評価. 他者評価(B) 既に登録されている上位ノードに対する評価を行うにあ. プロジェクトや議論を推進する観点での評価は,状況評価. たり,単なる賛成と評価点を付与する場合,上位のノード. と貢献評価を用いて確認した.. に影響されて意見やアイデアを登録した場合,単なる接続. ①. の場合それぞれにおいて,設定された伝搬係数で評価点が. 状況評価(E)と貢献評価(F) 状況評価の事例として,沈黙を破るノードを選択して説. 上位へ加算されていることを確認した.. 明を行う.まず,議論が停滞していることを判別する必要. (2) 登録ノードの時間経過による評価. がある.判別方法については,各課題に対する活性度を計. 登録ノードの時間経過による評価は,連鎖評価と経路評. 図 5 に示すように,ノード No.36 は,アイデアノードで. 価を用いて確認した. ①. 算し判断する. あるが,このノード登録以前において課題 A に関するノー. 連鎖評価(C) アイデアノードであるノード No.6 の総合評価点の推移. ド登録が停滞していたことが登録時間から判る.まずノー. を図 4 のグラフに示す.グラフから判るように,ノードを. ド No.36 は活性化を行う可能性があるノードとして状況評. 登録した時点の得点が,その後の他者からの評価や議論の. 価される.ノード No.36 の登録後多くのノードが登録され. 発展から評価が高まっている様子が判る.登録した初期段. るようになり,プロジェクト全体のノード登録間隔の平均. 階から良いアイデアであるとの評価を受けて得点が上昇し. 値よりも短い間隔で課題 A に対するノードが複数登録され. ている.その後時間経過し,その後の議論の進展から本ア. ていることが判る.これは,ノード No.36 のアイデアがき. イデアの流れで議論が進み,最後の解決策まで再帰的な評. っかけとなり議論の活性化が図れたと判断できる.. 価が加わり,総合得点が高まっていることが判る. 20. 点数/登録間隔 0.45. 18. 0.4. 総合評価点. 16. 0.35. 14. 0.3. 活性化. 12 0.25. 10. Node6. 8. A元点/間隔. 0.2. 得点/間隔 0.15. 6. 0.1. 4. 0.05. 2 0. ノード36. 0. 0. 100. 200. 300. 400. 500. 600. 700. 800. 900. 1000. 0. 100. 200. 図 4 ノード No.6 の総合評価点の推移 Figure4. Change in the overall score of node No.6.. ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. 300. 400. 500. 600. 700. 800. 900. 1000. 時間. 時間. 図 5 議論の活性化 Figure5. Activation of argument.. 7.
(8) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2018-GN-104 No.3 2018/3/19. もう一つの評価として,他者への支援に対する評価を図. その結果,ノード貢献評価については期待通りの結果が得. 6 に示す.ノード No.53 は C が A に対する支援を行ったノ. られた.また,議論の発散・収束,沈黙を破る人,支援す. ードである.ノード No.53 は支援ノードとして状況評価す. る人等,人物像の評価も可能であることが判った.. る.ノード No.53 登録後,A からノード No.59 で結果が報. 本評価は,人間のモチベーションに踏み込んだ確認であ. 告されている.これから,C が登録したノード No.53 の支. る.今後新たなものを次々と生み出していくためには,多. 援により,A へ貢献していると判断し貢献評価を行う.. くの人の知恵を結集させ,行動により実現させなければな らない.人が考え行動を変革していくためには,まず自ら の役割,状況を知る必要がある.そのために本貢献価値は,. 10. 総合評価点. 9. 行動変革に対して有効であると考える.. 8. 結果. 今後,本システムの実装を行い,実際にシステムを利用. 7. し同様な効果が得られることを確認する.また,創造支援. 6 5. Node53. 4 3. として個人の閃きへの支援,情報の橋渡しとしての支援も 行っていき,統合した創造支援システムとして実現してい きたい.. 2. 支援. 1 0 0. 200. 400. 600. 800. 1000. 時間. 図 6 他者への支援と成果 Figure6. Support to others and accomplishment.. 5. 考察 本論文で示した議論における貢献価値の評価方法は,こ れまで検討してきた創造支援システムへ適用することが可 能と考える.創造支援システムの機能として,モチベーシ ョンの向上と情報の橋渡しがあるが,プロジェクトへの貢 献度を可視化できることから,モチベーションの向上に利 用可能である.また,貢献評価を利用することで適任者の 紹介や推薦を行うことができるため,情報の橋渡しが行え る.また,プロジェクト全体のノードを管理していること から,個人毎,ノード毎,課題毎,プロジェクト毎などそ れぞれの観点で分析が実施できる.参加メンバーの特徴に ついても,貢献価値評価を組み合わせることにより見出す ことが可能と考える.. 6. おわりに 本稿では,まず議論における評価に対する問題点の指摘 を行った.それらは,評価が表面的である点,自分自身が 解決の過程に対してどれくらい貢献していたかが判らない 点,他者の支援や議論の推進を評価する手段が無い点であ る.これに対し,問題を解決するための評価手法について 検討を行い,評価の主体や時間的観点を取り入れて貢献価. 参考文献 [1] Institute of Design at Stanford(著), 柏野 尊徳, 中村 珠希(訳): デザイン思考 5 つのステップ, An Introduction to Design Thinking PROCESS GUIDE (2012). [2] 加藤 美治,橋山 智訓,田野 俊一: 個人とグループの創造性 を支援する統合システム「イノベーションコンパス」の提案,ワ ークショップ 2014 (GN Workshop 2014)論文集,pp.1-8, (2014). [3] Yoshiharu Kato, Tomonori Hashiyama, Shun’ichi Tano.: Innovation Compass: Integrated System to Support Creativity in Both Individuals and Groups.In: S. Yamamoto (Ed.), HIMI 2015, Part II, LNCS 9173, pp. 476–487, Springer International Publishing Switzerland, (2015). [4] 加藤 美治,橋山 智訓,田野 俊一: 個人とグループの創造性 を支援する「イノベーションコンパス」システムの機能提案と事 例による検証,Vol.2015-GN-96 No.12,pp.1-8, (2015). [5] 加藤 美治,橋山 智訓,田野 俊一: 個人とグループの創造性 を支援する「イノベーションコンパス」システムの機能提案とシ ナリオ検証,DICOMO2016 シンポジウム,pp.677-686, (2016). [6] 守島基博: 知的創造と人材マネジメント, 組織科学, Vol.36, No.1, pp.41-50 (2002). [7] 青木 慶: 企業と消費者の価値共創に関する研究 神戸大学大 学院経営学研究科博士論文, (2015). [8] 伊美 裕麻,佐藤 元紀,伊藤 孝行,伊藤 孝紀,秀島 栄三 : 大規模意見集約システム COLLAGREE における議論インセンテ ィブ機構の試作,Vol.2014-ICS-177 No.6, pp.1-8,(2014). [9] 小谷 哲郎,関 一也,松居 辰則,岡本 敏雄: 好意的発言影 響度を取り入れた議論支援システムの開発,人工知能学会論文誌 19 巻 2 号 SP-A, pp.95-104,(2004). [10] W. Kunz, et al.: Issues as Elements of Information Systems, Working Paper No. 131, University of California Berkeley, (1970). [11] Conklin, J. and Begeman, M.L.: gIBIS: A Hypertext Tool for Exploratory Policy Discussion, Tool for Exploratory Policy Discussion,” CSCW '88 Proceedings, ACM, pp.140-152, (1988).. 値としての評価モデルを提案した.これは議論やプロジェ クトを評価する 1 つの指針となると考える.さらに,評価 モデルに対して,仮想データを利用しシミュレーションに より評価モデルの評価を行った.その結果,本システムの 定性的な評価として他のシステムで網羅されていない評価, 幅広い評価が実施されていることを確認できた.また,定 量的な評価として,6 つの評価について機能確認を行った.. ⓒ 2018 Information Processing Society of Japan. 8.
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