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インドシナ3国の衣類産業 : ラオスを中心に (堂本健二教授追悼号)

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インドシナ3国の衣類産業 23

インドシナ3国の衣類産業

―ラオスを中心に―

1.はじめに 衣類産業は,高度な熟練や技術を必要とせず,労働集約性が高く未熟練労働 への雇用創出効果が高いので,経済発展を模索している途上国にとって極めて 重要な産業である。日本が経済発展への足掛かりを得たのもこの産業であるし, 経済構造の高度化に必要な資本財を輸入するために不可欠な外貨を稼いだのも この産業である。さらに,衣類産業で雇用される労働者は貧しい農村出身者が 多く,特に女性が多数を占めるため,この産業は貧困軽減やジェンダー問題の 観点からも重要である。後述のように,衣類産業はインドシナ3国(ベトナム, ラオス,カンボジア)では製造業を牽引し,輸出所得のうち大きな割合を稼い できた極めて重要な産業である。 本稿の目的は,ASEAN 域内分業という観点からインドシナ3国の衣類産業 について分析すること,およびインタビュー調査の結果に基づいてラオスの衣 類産業の発展可能性について考察することである1)。以下,2節では,衣類の 生産と貿易について世界的視野から概観して全体像を把握し,3節では,イン ドシナ3国における繊維・衣類の貿易フローを ASEAN 域内分業という観点か ら分析し,4節では,貿易パターンが国によって異なる原因を衣類産業の担い 手という視点から考察する。5節では,ラオスの衣類産業に注目して,その発 展可能性について論じる。最後の6節では,全体の議論を整理し,今後さらに 研究すべき点を明示する。 1)堂本[2000]では,AFTA(ASEAN 自由貿易協定)参加の利益を ASEAN 加盟諸国に波 及させるためだけでなく,日本の経済協力を考えるためにも ASEAN 域内分業について考 察することが重要であると強調されている。

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24 堂本健二教授追悼号(第372号) 平成20(2008)年4月 2.世界の衣類生産と貿易フロー 過去10年間で衣類産業の生産地図は大きく変わっている2)。衣類産業による 付加価値額(1995年の固定価格)の世界における構成比の変化を見ると,1995 年から2005年にかけて先進国の構成比は73.1%から52.8%へと低下しているの に対して,途上国の構成比は26.9%から47.2%へと上昇している。先進国の中 では日本の構成比低下が著しく(21.1%から10.6%へと半減),これはアメリ カ(19.0%→13.2%),EU15ヶ国(25.2%→19.9%)の構成比低下よりも大き い。 途上国においては NICs が微増(8.7%→9.2%)にとどまっているのに対し て,第2世代の NICs(8.6%→14.1%)と中国を含む他の途上国(9.6%→23.9%) では急増している3)。特に中国とタイの構成比上昇は著しく,それぞれ5.2% →16.8%,3.8%→7.6%と2∼3倍に急増している。この2国だけで世界全体 の衣類産業の付加価値の24.4%も生産するようになり,しかも,この急激な生 産のシフトはわずか10年間で生じている。このように,衣類産業の生産地図は 過去10年間に様変わりしているのである。 次に,貿易面から衣類産業を捉えてみよう。資料は,国際連合統計局の UN

COMTRADE Database(http://comtrade.un.org/)であり,経常価格の輸出入金額

と純輸出金額を示す。表1から2005年の貿易についてみると,輸出は中国742 億ドル,香港273億ドル,インド92億ドルなどが多く,輸入は EU15ヶ国1,109 億ドル,アメリカ801億ドル,日本225億ドルなどが多い。

これらの値には再輸出や域内輸出入が含まれているので,輸出金額から輸入

2)以下,資料は,UNIDO, International Yearbook of Industrial Statistics2007による。なお,EU 15ヶ国は,ベルギー,デンマーク,フランス,ドイツ,ギリシア,アイルランド,イタリ ア,ルクセンブルク,オランダ,ポルトガル,スペイン,イギリス,オーストリア,フィ ンランド,スウェーデンである。 3)ここで「NICs」には,台湾,韓国,香港,シンガポールに加えて,アルゼンチン,ブラ ジル,メキシコ,インドが含まれている。また「第2世代の NICs」には,インドネシア, マレーシア,タイ,フィリピンに加えて,コロンビア,モロッコ,チュニジア,トルコが 含まれている。

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インドシナ3国の衣類産業 25 金額を差し引いた純輸出金額を計算すると,最大の純輸出国は中国725億ドル であり,これにインド91億ドル,香港89億ドル,バングラデシュ81億ドル,イ ンドネシア50億ドルなどが続いている。また,最大の純輸入国はアメリカ751 億ドルであり,これに EU15ヶ国413億ドル,日本220億ドルが続いている。つ まり,中国(香港を含む),インド,バングラデシュ,インドネシアなどの人 口大国が生産した衣類を,アメリカ,EU15ヶ国,日本などの富裕な工業国が 輸入しているのである。 われわれの注目するベトナム,カンボジア,ラオスは純輸出国ではあるが, その金額は決して多くない。2005年においてベトナム43億ドル,カンボジア26 億ドル,ラオス1.64億ドルであり,3ヶ国を合計しても71億ドルと香港の89億 ドルよりも少ない。しかし,1995年と比べると,純輸出額はラオスでは2.0倍 に増えたにすぎないが,ベトナムでは5.3倍に増え,カンボジアでは何と47.0 輸出金額 1995年 2000年 2005年 輸入金額 1995年 2000年 2005年 純輸出 1995年 2000年 2005年 中国 24,049 36,071 74,163 EU15ヶ国 61,655 70,818110,852 中国 23,080 34,879 72,534 香港 21,297 24,214 27,292 アメリカ 41,367 67,115 80,071 インド 4,105 6,152 9,140 インド 4,110 6,178 9,212 日本 18,758 19,709 22,541 香港 8,644 8,207 8,856 バングラデシュ 1,969 4,162 8,155 カナダ 2,688 3,690 5,976 バングラデシュ 1,867 3,988 8,087 インドネシア 3,376 4,734 5,106 オーストラリア 1,262 1,858 3,120 インドネシア 3,349 4,695 5,035 ベトナム 854 1,821 4,681 韓国 1,073 1,307 2,913 ベトナム 813 1,371 4,349 タイ 5,008 3,759 4,085 香港 12,654 16,008 18,437 タイ 4,925 3,628 3,872 パキスタン 1,611 2,144 3,604 シンガポール 1,644 1,881 2,132 パキスタン 1,609 2,140 3,577 スリランカ 1,474 2,287 2,874 中国 969 1,192 1,629 スリランカ 1,431 2,213 2,766 カンボジア 61 970 2,665 ベトナム 41 450 332 カンボジア 55 941 2,585 マレーシア 2,266 2,257 2,478 マレーシア 154 148 283 マレーシア 2,112 2,108 2,196 フィリピン 1,065 2,536 2,287 タイ 84 131 214 フィリピン 999 2,461 2,189 シンガポール 1,464 1,825 1,696 スリランカ 43 74 107 ラオス 82 120 164 ラオス 86 125 175 フィリピン 66 75 98 アメリカ −34,716 −58,486 −75,073 EU15ヶ国 45,090 46,434 69,521 カンボジア 6 29 80 EU15ヶ国 −16,565 −24,384 −41,331 アメリカ 6,651 8,629 4,998 インド 6 26 72 日本 −18,228 −19,175 −22,045 韓国 4,957 5,027 2,581 インドネシア 28 39 71 カナダ −1,672 −1,613 −4,114 カナダ 1,016 2,077 1,861 バングラデシュ 102 174 68 オーストラリア −1,038 −1,662 −2,913 日本 530 534 495 パキスタン 2 5 27 シンガポール −179 −56 −435 オーストラリア 224 196 206 ラオス 4 5 11 韓国 3,884 3,720 −332 小計 127,160155,980228,136 小計 142,605184,733249,031 表1.主要国とアジア諸国の衣類輸出入・純輸出金額の推移(単位100万ドル)

(資料)国連,UN COMTRADE Database より計算。(http://comtrade.un.org/) (注1)1995年と2000年のスリランカは当年のデータがないため,前年の値で代理。 (注2)1995年の EU15ヶ国の値にはベルギーとルクセンブルクが含まれていない。 (注3)EU15ヶ国はベルギー,デンマーク,フランス,ドイツ,ギリシア,アイルランド,

イタリア,ルクセンブルク,オランダ,ポルトガル,スペイン,イギリス,および 1995年に加盟したオーストリア,フィンランド,スウェーデン。

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26 堂本健二教授追悼号(第372号) 平成20(2008)年4月 倍にも急増している。 同じ資料を用いて,1990年以降の衣類貿易の推移について見ておこう。図1 と図2には衣類輸出金額が示されている。近年まで EU15ヶ国が最大の輸出国 (かつ最大の輸入国)だったが,MFA4)が廃止された2005年には中国が最大の 輸出国となっている。これらに続いて香港が第3位を占めているが,香港は中 国製品を再輸出しているため実際には中国の一部とみなすべきであろう。これ にインド,バングラデシュ,インドネシアなどが続いているが,中国に比べる と,その輸出金額は大きく見劣りする。 しかし,そのインドネシアでさえ,図2を見れば他のアジア諸国に比べると 上位にあり,その輸出は増加傾向にあることが分かる。近年は大きく低下して いるが,韓国はかつてインド,バングラデシュ,インドネシアを凌ぐ輸出国で あった。タイの輸出は1995年にピークを迎えた後,低迷してはいるが,近年は 増加傾向にある。なお,近年輸出を急増させている国はベトナム,パキスタン, カンボジアである。 図3により衣類輸入の推移を見ると,EU15ヶ国とアメリカが圧倒的に多く の衣類を輸入しており,その金額はほぼ一貫して増加傾向にあることが分かる。 これらに続く輸入大国は日本と香港であるが,前述の様に香港は中国から輸入 した製品を再輸出しているので,実際には日本が世界第3位の輸入国である。 日本は MFA により繊維製品の輸出を制限された経験もあって,これに加盟し なかった唯一の主要先進国であり,そのため輸入金額はかなり早い時期から増 加している。日本に続く輸入大国は,カナダ,オーストラリア,韓国,シンガ ポールであるが,これらの国は人口が少ないので輸入金額も余り多くない。 輸出金額から輸入金額を差し引いた純輸出金額の推移を図4により見ると, 次の点が分かる。第1に,衣類の純輸出は圧倒的に中国が多く,しかも2002年 4)Multi−Fiber Arrangement(多国間繊維取決め)は,1974年に発効した繊維製品の管理貿易 制度であり,2004年末に廃止されるまで,各年に輸入可能な製品数量の上限 (クォーター) が輸入国(欧米諸国)から各輸出国(発展途上諸国)に割り当てられた。例えば中国やタ イは,クォーターを超えた輸出ができないため,繊維製品の生産をカンボジアやラオスな ど MFA が適用されない後発途上国に移管している。

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図1.衣類輸出の推移(単位100万ドル)

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28 堂本健二教授追悼号(第372号) 平成20(2008)年4月 以降は急激に増加している。第2に,世界最大の純輸入国はアメリカであり, 1996年以降および2002年以降は急激に純輸入金額を増やしている。第3に,EU 15ヶ国は域内輸入も多いため,純輸入金額はアメリカの半分程度しかない。第 4に,日本は世界第3位の純輸入国である。 以上を要約すれば,わずか10年間で衣類産業の生産地図は様変わりしており, 生産の中心は先進諸国から発展途上諸国へと移っている。特に中国,インド, バングラデシュ,インドネシアなどの人口大国が衣類を生産して輸出し,それ をアメリカ,EU15ヶ国,日本などの先進国が輸入しているのが現状である。 ベトナム,カンボジア,ラオスの輸出金額は決して多くないが,過去10年間 の輸出増加は,ラオスを除いて著しく,ベトナムでは5.3倍に,カンボジアで は47.0倍にも増えている。総輸出に占める衣類の比率を見ると,1995年から 2005年 に か け て ベ ト ナ ム で は16.3%か ら14.4%に,ラ オ ス で は36.4%か ら 29.4%に低下しているが,カンボジアでは19.6%から88.2%に上昇して輸出の 9割近くを稼ぐ産業となっている。 なお,ベトナムの衣類輸出比率が低下しているのは石油や機械の輸出が急増 (同期間にそれぞれ7.3倍,36.9倍)したためであり,衣類の輸出額は平均年 率19%程度で増加している。また,ラオスの衣類輸出比率が低下しているのは 銅の輸出が急増(同期間に7.8倍)したためであり,衣類の輸出額は平均年率 7%で増加している。 以上のように,これらインドシナ3国にとって,衣類産業は輸出所得を稼ぎ, 製造業を牽引してきた極めて重要な産業であり,しかも急増したとはいえ3国 の輸出総額は世界全体の3.3%でしかないことから,需要面で産業拡大の余地 はなお十分にあると考えられる。次節では,これら3国に焦点を当てて,衣類 がどのような地域に輸出され,衣類生産に必要な原材料がどの地域から調達さ れているかを明らかにし,ASEAN 域内分業について検討しよう。 3.インドシナ3国における繊維・衣類の貿易フロー 衣類を生産するには,まず綿花・羊毛・化繊などの繊維原料を調達して糸に

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図3.衣類輸入の推移(単位100万ドル)

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30 堂本健二教授追悼号(第372号) 平成20(2008)年4月 加工し,それを織るか編んで布にした上で,裁断・縫製・仕上げなどの加工を する必要がある。繊維原料を国内生産できない国はそれを輸入する必要がある し,紡織・編物産業が発達していない国では糸・布類を輸入する必要がある。 ベトナム,ラオス,カンボジアは,糸・布類と繊維原料を輸入して衣類を生産 し,それを主に欧米諸国に輸出している。 表2は,インドシナ3国の2005年における衣類,糸・布類,繊維原料の貿易 についてまとめたものである。ただし,輸出入金額のわずかな貿易相手国は掲 載せず,また繊維原料の輸出は少ないので除外してある。例えば衣類は輸出さ れているだけでなく輸入されているので,輸出金額から輸入金額を差し引いた 「純輸出」金額も示している。なお,右端の「繊維・衣類の純輸出」は,衣類, 糸・布類,繊維原料の純輸出を合計した値であり,繊維・衣類の輸出に必要な 原材料(衣類輸入の中にはボタン,ファスナーなどの付属品も含まれている) を差し引いた純輸出金額を示している。 まず,衣類輸出の最も多いベトナムから見ると,主にアメリカ,EU15ヶ国, 日本(合計86.1%)に輸出し,衣類の生産に必要な糸・布類は中国,香港,韓 国,日本(合計64.1%)などから,繊維原料はアメリカ,シンガポール,中国, 韓国(合計35.0%)などから輸入していることが分かる。また,表下の枠外に 示しているように,衣類の輸出総額に対する衣類の輸入比率は7.1%と少ない が,その大半は韓国,日本,中国,香港(合計73.2%)から輸入している付属 品である。同様に,糸・布類の輸入比率は73.4%,繊維原料の輸入比率は9.0% あるので,糸・布類の輸出比率15.5%,繊維原料の輸出比率0.7%を加えても, 「繊維・衣類の純輸出」は衣類の輸出総額の26.7%しかないことになる。 ここで注目すべきは,繊維・衣類貿易に関するベトナムの ASEAN 諸国との 関係が希薄な点である。他の ASEAN 諸国との糸・布類の輸入比率は6.5%, 同輸出比率は16.9%,繊維原料の輸入比率は13.4%,衣類の輸入比率は4.3% でしかない。衣類の大半を先進国に輸出することは当然だとしても,その生産 に必要な原材料の過半は中国,香港,韓国,日本から輸入しており,ASEAN 諸国からの輸入はごくわずかしかないのである。

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インドシナ3国の衣類産業 31

ベトナム 衣類(SITC84) 糸・布類(SITC65) 繊維原料(SITC26) 繊維・衣類 の純輸出 輸出 輸入 純輸出 輸出 輸入 純輸出 輸入 純輸出 EU15 811,152 17.3% 14,738 4.4% 796,413 102,581 14.1% 97,504 2.8% 5,077 16,543 3.9% −15,406 786,085 ASEAN10 37,994 0.8% 14,308 4.3% 23,685 122,591 16.9% 224,628 6.5% −102,037 56,312 13.4% −54,850 −133,201 カンボジア 881 0.0% 868 0.3% 13 21,677 3.0% 2,821 0.1% 18,855 24 18,892 インドネシア 426 0.0% 1,128 0.3% −702 8,096 1.1% 55,877 1.6% −47,781 7,554 1.8% −7,177 −55,660 ラオス 2,728 0.1% 18 0.0% 2,710 13,672 1.9% 74 0.0% 13,598 1,154 0.3% −647 15,661 マレーシア 26,433 0.6% 3,920 1.2% 22,513 21,652 3.0% 57,068 1.7% −35,416 4,936 1.2% −4,936 −17,839 フィリピン 1,276 0.0% 954 0.3% 322 19,125 2.6% 2,306 0.1% 16,820 4,682 1.1% −4,680 12,462 シンガポール 4,818 0.1% 3,590 1.1% 1,228 10,897 1.5% 29,121 0.8% −18,223 37,987 9.1% −37,978 −54,974 タイ 1,408 0.0% 3,830 1.2% −2,422 27,471 3.8% 77,361 2.3% −49,889 544 −51,767 中国 8,370 0.2% 37,224 11.2% −28,854 24,218 3.3% 804,465 23.4% −780,248 30,081 7.2% −12,792 −821,893 香港 13,379 0.3% 55,483 16.7% −42,104 21,850 3.0% 331,234 9.6% −309,385 507 0.1% 205 −351,283 インド 617 0.0% 134 0.0% 484 2,645 0.4% 12,083 0.4% −9,438 11,061 2.6% −10,304 −19,258 バングラデシュ 153 0.0% 80 0.0% 73 11,497 1.6% 5,689 0.2% 5,808 1,681 0.4% −1,679 4,202 アメリカ 2,629,918 56.2% 2,424 0.7% 2,627,494 60,295 8.3% 24,169 0.7% 36,125 51,058 12.2% −51,052 2,612,567 日本 596,084 12.7% 74,088 22.3% 521,996 107,012 14.8% 312,112 9.1% −205,100 2,774 0.7% −1,478 315,417 韓国 44,733 1.0% 76,236 23.0% −31,503 91,851 12.7% 754,030 22.0% −662,178 27,105 6.5% −25,473 −719,154 オーストラリア 24,186 0.5% 413 0.1% 23,773 9,894 1.4% 3,719 0.1% 6,175 2,646 0.6% −2,627 27,321 カナダ 83,580 1.8% 82 0.0% 83,498 5,514 0.8% 2,318 0.1% 3,196 16 0.0% 24 86,718 ロシア 48,253 1.0% 97 0.0% 48,156 1,929 0.3% 102 0.0% 1,827 49,983 世界合計 4,680,634100.0% 331,884100.0% 4,348,750 725,442100.0% 3,434,780100.0% −2,709,337 419,692100.0% −390,433 1,248,979 100.0% 7.1% 92.9% 15.5% 73.4% 57.9% 9.0% 8.3% 26.7% カンボジア 衣類(SITC84) 糸・布類(SITC65) 繊維原料(SITC26) 繊維・衣類の純輸出

輸出 輸入 純輸出 輸出 輸入 純輸出 輸入 純輸出 EU15 660,099 24.4% 347 0.4% 659,752 2,220 5.5% 5,290 0.6% −3,070 337 0.9% −337 656,345 ASEAN10 47,262 1.7% 5,543 6.9% 41,720 5,991 14.8% 162,249 17.5% −156,258 879 2.4% 8,003 −106,536 インドネシア 210 0.0% 98 0.1% 112 80 0.2% 14,632 1.6% −14,553 116 0.3% −111 −14,552 マレーシア 459 0.0% 1,156 1.4% −698 342 0.8% 47,806 5.1% −47,464 27 0.1% 315 −47,847 フィリピン 77 0.0% 2 0.0% 75 1,241 3.1% 4,275 0.5% −3,033 20 0.1% −19 −2,977 シンガポール 45,228 1.7% 1,110 1.4% 44,119 1,323 3.3% 18,278 2.0% −16,955 662 1.8% −144 27,020 タイ 420 0.0% 2,296 2.8% −1,876 184 0.5% 55,582 6.0% −55,398 30 0.1% 7,986 −49,288 ベトナム 868 0.0% 881 1.1% −13 2,821 7.0% 21,677 2.3% −18,855 24 0.1% −24 −18,892 中国 2,080 0.1% 22,950 28.4% −20,869 7,893 19.5% 344,430 37.1% −336,537 3 0.0% 229 −357,176 香港 1,571 0.1% 48,029 59.4% −46,458 3,425 8.4% 329,510 35.5% −326,085 717 2.0% −691 −373,234 インド 42 0.0% 127 0.2% −86 49 0.1% 3,982 0.4% −3,933 1,945 5.4% −1,945 −5,964 パキスタン 2 0.0% 226 0.3% −224 88 0.2% 10,233 1.1% −10,145 118 0.3% −84 −10,453 アメリカ 1,818,326 67.3% 448 0.6% 1,817,878 14,644 36.1% 912 0.1% 13,732 3,749 10.4% −3,749 1,827,861 日本 8,396 0.3% 6 0.0% 8,390 28 0.1% 2,166 0.2% −2,138 2,189 6.1% −2,186 4,066 韓国 2,123 0.1% 3,009 3.7% −886 172 0.4% 69,126 7.4% −68,953 25,496 70.5% −25,493 −95,333 オーストラリア 4,453 0.2% 26 0.0% 4,427 832 2.1% 821 0.1% 11 4,438 カナダ 106,316 3.9% 36 0.0% 106,280 752 1.9% 89 0.0% 662 669 1.9% −669 106,274 メキシコ 6,235 0.2% 0.0% 6,235 4,223 10.4% 4,223 10,458 世界合計 2,703,148100.0% 80,799100.0% 2,622,349 40,543100.0% 929,053100.0% −888,510 36,139100.0% −26,957 1,706,882 100.0% 3.0% 97.0% 1.5% 34.4% 32.9% 1.3% 1.0% 63.1% ラオス 衣類(SITC84) 糸・布類(SITC65) 繊維原料(SITC26) 繊維・衣類 の純輸出 輸出 輸入 純輸出 輸出 輸入 純輸出 輸入 純輸出 EU15 159,698 91.3% 137 1.3% 159,561 28 5.0% 721 0.8% −693 19 1.2% −19 158,848 ASEAN10 1,251 0.7% 8,195 75.1% −6,943 306 54.7% 82,947 88.7% −82,641 638 40.3% 966 −88,618 マレーシア 7 0.0% 32 0.3% −25 1,335 1.4% −1,335 −1,360 タイ 1,047 0.6% 5,376 49.3% −4,329 232 41.5% 67,531 72.2% −67,299 121 7.7% 329 −71,299 ベトナム 18 0.0% 2,728 25.0% −2,710 74 13.2% 13,672 14.6% −13,598 507 32.0% 647 −15,661 中国 202 0.1% 2,080 19.1% −1,878 45 8.1% 4,570 4.9% −4,525 1 0.1% −1 −6,404 香港 376 3.4% −376 29 5.2% 3,995 4.3% −3,965 −4,341 アメリカ 2,983 1.7% 2,983 26 4.7% 61 0.1% −34 106 6.7% −106 2,843 日本 1,337 0.8% 17 0.2% 1,319 81 14.4% 65 0.1% 16 818 51.7% −818 516 カナダ 5,708 3.3% 5,708 5 0.9% 5 5,713 オーストラリア 272 0.2% 16 0.1% 256 8 1.5% 226 0.2% −218 38 世界合計 174,999100.0% 10,910100.0% 164,088 560 100.0% 93,503100.0% −92,944 1,584100.0% 21 71,166 100.0% 6.2% 93.8% 0.3% 53.4% 53.1% 0.9% 0.0% 40.7% 表2.インドシナ3国における繊維・衣類の貿易フロー(2005年)単位1000ドル

(資料)国連,UN COMTRADE Database より計算。

(注1)「繊維・衣類の純輸出」とは,衣類,糸・布類,繊維原料の純輸出を合計した値。 (注2)各表の枠外に示した値は,各国の衣類輸出金額を100としたときの比率。

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32 堂本健二教授追悼号(第372号) 平成20(2008)年4月 次にカンボジアについて見ると,衣類輸出の欧米偏重と原材料輸入の中国・ 香港偏重が著しいことが分かる。アメリカには67.3%,EU15ヶ国に24.4%も 輸出しており,両者で91.7%を占めている。糸・布類は,主に中国と香港から 輸入しており,両者を合わせると72.6%にもなる。衣類の輸入も中国と香港か らが圧倒的に多く,両者で87.7%を占めている。繊維原料の輸入はごくわずか で,その衣類の輸出総額に対する比率は1.3%しかない。 また,糸・布類輸入の衣類輸出に対する比率は34.4%であり,ベトナムの 73.4%に比べると半分以下である。そのため,「繊維・衣類の純輸出」は衣類 の輸出総額の63.1%もあり,ベトナムの26.7%に比べると非常に高くなってい る。これには人口規模の違いが大きく作用していると思われる。2005年の人口 は,ベトナムの8,300万人に対して,カンボジアでは1,400万人と6分の1程度 しかない。そのためベトナムでは衣類の国内消費が大きいのに対して,カンボ ジアでは衣類のほとんどを輸出していると考えられる。 さて,繊維・衣類貿易をめぐるカンボジアの ASEAN 諸国との貿易関係も, ベトナムと同様に希薄である。ASEAN 諸国を合計しても,糸・布類の輸入比 率は17.5%,同輸出比率は14.8%,繊維原料の輸入比率は2.4%,衣類の輸入 比率は6.9%しかない。糸・布類の72.6%は中国と香港から輸入し,製品 の 91.7%は欧米に輸出しており,ASEAN 諸国との相互依存関係は低位にとど まっている。衣類輸出が輸出総額の88.2%を占めていることと重ね合わせて考 えれば,いかにカンボジアの産業・貿易構造が偏っているかが分かる。 最後に,ラオスについて見ることにしよう。衣類の輸出金額は1.75億ドルで しかなく,カンボジアの27.03億ドル,ベトナムの46.81億ドルに比べると,そ れぞれ6.5%,3.7%でしかない。ラオスの人口が約580万人(カンボジア の 41.4%,ベトナムの7.0%)であることを考慮しても,衣類の輸出金額は少な く,今後発展する余地は十分に残されていると考えられる。 さて,ラオスの貿易構造はカンボジアよりも一部の地域に偏っているが, ASEAN諸国との貿易関係は緊密である。衣類の91.3%は EU15ヶ国に輸出し ており,糸・布類の86.8%はタイとベトナムから輸入している。衣類の輸入も

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インドシナ3国の衣類産業 33 タイとベトナムだけで74.3%を占め,中国・香港は22.5%にすぎない。ラオス だけは ASEAN 諸国との貿易関係が緊密であり,衣類の75.1%,糸・布類の 88.7%を ASEAN 諸国(とはいっても,タイとベトナムがほとんど)から輸入 しているのである。 また,ラオスの糸・布類輸入の衣類輸出に対する比率は53.4%であり,これ はベトナムの73.4%よりは低いが,カンボジアの34.4%よりは高い。そのため, 「繊維・衣類の純輸出」は衣類の輸出総額の40.7%となり,カンボジアの63.1% とベトナムの26.7%の中間になっている。つまり,国内消費分も含めて考えて, 衣類産業が獲得した外貨のうち国内にとどまる割合は,カンボジアが最も高く, ベトナムが最も低く,ラオスはその中間(4割程度)である。 ただし,国連のデータには台湾が含まれていない点に注意する必要がある。 後述のように,2005年にカンボジアで操業していた250社のうち54社が台湾企 業であり,これに加えて11社が台湾資本との合弁企業である。しかも,台湾企 業の中には従業員9,000人を擁する最大級の企業があり,それゆえ台湾から輸 入している原材料も多いと思われるが,そのデータは表2には含まれていない。 ラオスと同様に,カンボジアでは大半の縫製企業が CMT と呼ばれる委託加工 を行なっているが,それにもかかわらず「繊維・衣類の純輸出」の比率が高い のは,少なくとも一部は台湾のデータが含まれていないためであると考えられ る。 4.インドシナ3国における衣類産業の担い手 以上のように異なった貿易パターンの背後には,衣類産業の担い手の違いが あると考えられる。外資企業は本国企業とのつながりが強く,生産に必要な糸・ 布類を本国企業から購入する傾向が強い。この傾向は,ラオスやカンボジアの ように国内に紡織産業を有しない場合に一層強くなる5)。以下,縫製企業の所 5)カンボジアで紡織部門を有する企業はアメリカ系の1社のみであるし,ラオスで紡織部 門を有しているのは国有企業1社(後述の R 社)のみであり,しかもその規模は小さく, 他社に糸・布類を供給する能力はない。これに対して,ベトナムでは紡織部門を有する企 業は,国有企業を中心に多数存在しており,他社に糸・布類を供給する能力も大きい。

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34 堂本健二教授追悼号(第372号) 平成20(2008)年4月 有形態に注目することによって,この点を明らかにしていくことにしたい。 ベトナムの衣類産業はホーチミン市に集中している。2005年,全国の生産高 の47.4%,労働者の48.3%がホーチミン市に集中している6)。そこで,2005年 のホーチミン市における生産高を所有形態別に見ると,国有企業が19.5%,外 資企業が33.8%,民間企業が46.7%を占めている。しかし,企業数を見ると7,762 社のうち,国有企業は7社,外資企業は129社しかなく,民間企業は7,626社と 圧倒的多数を占めている。労働者の比率を見ると,国有企業が10.9%,外資企 業が31.9%,民間企業が57.5%である。 ここで確認したい点は,ベトナムの衣類産業において民間企業が大きな部分 を占め,国有企業も比較的大きな割合を占めているが,外資企業の割合はそれ ほど大きくないことである。これはカンボジアとは大きく異なっている。カン ボジアでは国有企業はなく,縫製企業のほとんどが外資企業であり,中国系の 企業が圧倒的多数を占めている。

筆者は2006年3月にカンボジアを訪問し,GMAC(Garment Manufacturers

As-sociation in Cambodia),商業省,縫製企業等でインタビュー調査を行なった。 その際,GMAC から入手した GMAC 加盟企業リストによれば,総数355社の うち,撤退した企業が86社,一時休業中が11社あり,営業中の258社のうち, 駐在員事務所や貿易商社など生産に関与していないものが8社あるので,実際 に操業していたのは250社であった。 100%所有企業(219社)の国籍は,台湾54社,香港51社,中国25社,韓国23 社,カンボジア17社,マレーシア16社,アメリカ7社,シンガポール6社,英 国,マカオ,ベトナムが各4社,カナダ,ドイツ,インドネシアが各2社,フィ リピンとバングラデシュが各1社であった。ただし,登録企業名に中国名が併 記されている企業が31社ほどあったので,中国系でないと考えられる企業は53 社に限られる。つまり,219社のうち中国系と思われるものは166社(75.8%) を占めているのである。

6)以下,資料は Statistical Office of Ho Chi Min City, Statistical Yearbook of Ho Chi Min City2006 および General Statistical Office, Statistical Yearbook2006.

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インドシナ3国の衣類産業 35 これに加えて合弁企業31社があるが,中国名のない企業はカンボジアと台湾 との合弁1社のみであり,すべてが中国系と考えられる。100%所有企業219社 と合わせると,操業中の250社のうち実に197社(78.8%)が中国系の企業であ り,残り53社(21.2%)のみが非中国系企業と考えられる。また,カンボジア 資本は100%所有が17社,合弁が16社あるものの,中国名のない民族系企業は 前者で4社,後者で1社,合計5社に限られ,何らかの形で中国系資本が関与 していると考えられる。カンボジアは中国・香港から糸・布類を72.6%,衣類 を87.7%も輸入しているが,その背後には圧倒的な中国系資本の存在があるの である。 ラオスについてみると,2005年には衣類の輸出企業は58社あったが,そのう ち28社は外資企業,11社は合弁企業,19社はラオス資本である。これに52社の 下請企業が衣類生産に携わっているが,これらはすべてラオス資本である。外 資企業と合弁企業には中国・台湾・香港などの中国系企業もあるが,ラオスで 特徴的なのはタイ資本の企業が多いことである。100%タイ資本企業が10社, ラオスまたは他国との合弁企業が12社もある。これは地理的近接性もあるが, 文化的にもラオスとタイは近く,言語はほぼ100%通じるという利点があるた めである。ラオスはタイから糸・布類を72.2%,衣類を49.3%も輸入している が,その背後にはこのような事情があるのである。 ラオスとベトナムには下請企業が多数存在しているが,カンボジアでは皆無 といって良いほど少ない。表3を見れば,従業員49人以下の企業はラオスでは 34社(30.9%)あるにもかかわらず,カンボジアでは2社(0.8%)しかない ことが分かる。ベトナムでは同様のデータがないが,ホーチミン市における縫 製企業7,762社のうち,平均労働者6.8人の個人企業が6,840社(88.1%)もあ り,これから極めて多数の下請企業が存在することが推測できる。 カンボジアでは従業員が300人未満の中小企業は24社(9.6%)しかなく,300 人以上の大企業が226社(90.4%)と圧倒的多数である。とりわけ1,000人以上 の大企業が72社(28.8%)もあり,5,000人以上の巨大企業が6社(2.4%)も あるが,これは縫製企業としては極めて特異と言えよう。これには3つの理由

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36 堂本健二教授追悼号(第372号) 平成20(2008)年4月 があると考えられる。1つは,欧米のバイヤーが同一品目を大量に注文したの で,それに対応するため生産規模を拡大する必要があったことである。 いま1つの理由は,発注先の企業が生産を下請企業に回すと品質管理と労働 法遵守が困難になるので,バイヤーが下請を嫌ったことである。大量の注文に 合わせて生産規模を拡大すると,注文が減少した場合のリスクが高くなるので, 受注した企業はいくらかの注文を下請企業に回してリスクを下げようとするの が通常である。しかし,下請企業の製品がバイヤーの要求する品質を満たせる とは限らないし,小規模な下請企業が労働法を遵守するとは限らない。両者を 満たすためには下請を認めず,自社で生産することを条件にして発注する方が 確実である。筆者が行なったカンボジアにおけるインタビュー調査でも,この ような要求が実際にバイヤーからあったことが確認されている。 さらに,多くの企業は投資国にある本社の「分工場」であることに注目する ことが必要である。例えば,中国系の巨大企業は MFA のクォーターを回避す るためにカンボジアへ進出したのであるが,その際,自国での生産方式をその まま持ち込むことが多い。自社で経験を積んだ方式を持ち込む方が容易である からコストも低いし,リスクも少ない。中国では従業員が1万人以上の巨大な 企業もざらにあり,その「分工場」であれば規模が大きいのも当然である。 以上のように,カンボジアでは零細な下請企業が皆無と言えるほど少ないの 従業員数 ラオス カンボジア 1∼49人 34 30.9% 2 0.8% 50∼99人 22 20.0% 2 0.8% 100∼299人 26 23.6% 20 8.0% 300∼499人 12 10.9% 56 22.4% 500∼999人 13 11.8% 98 39.2% 1000∼1999人 3 2.7% 45 18.0% 2000∼4999人 0 21 8.4% 5000∼9999人 0 6 2.4% 合計 110 100.0% 250 100.0% 表3.縫製企業の規模別分布(2005年)

(資料)カンボジア:GMAC, List of Members,2006. ラオス:ALGI, List of Members,2006.

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インドシナ3国の衣類産業 37 に対して,ラオスとベトナムでは多数の下請企業が存在しており,衣類産業を 底辺から支えている。その大半は民族系の民間企業であり,規模は大きくない。 下請企業以外の縫製企業に注目すれば,カンボジアではその大半が外資企業で あり,しかも中国系が圧倒的多数を占めているため,原材料輸入は中国・香港 に集中している。ラオスでは民族資本も多数あるが,外資・合弁企業も大きな 割合を占め,とりわけタイ資本が多いため,原材料輸入はタイに集中しており, ASEAN諸国との貿易関係は緊密である。これに対して,ベトナムでは外資企 業の割合は比較的小さく,紡織部門を有する国有企業が多数存在しているため, 糸・布類の対 ASEAN 輸出は結構あるが,糸・布類の輸入は中国・香港,韓国, 日本などからが多く,ASEAN 諸国からは少ないのである。 5.ラオスの衣類産業 筆者は,ラオスの衣類産業について2005年3月に基礎調査,2006年2月に本 調査を実施し,その結果をまとめて報告している7)。その後,2006年12月と2007 年12月に継続して調査を実施した。特に2007年12月の調査では,全数調査を目 標にして,できるだけ多くの企業について包括的に調査し,輸出企業20社,下 請企業37社について有効な調査結果を得た8)。本節では,この調査に基づいて ラオスにおける衣類産業の発展可能性について考察する。 この調査結果について述べる前に,ラオスの衣類産業について近年の動きを 簡単に見ておこう。表4は,ラオス衣類産業組合の資料をまとめたものである。 ほとんどすべての縫製企業はこの組合に加盟しているので,この資料によって 衣類産業の概要を捉えることができる。実際,国連のデータから計算した2005 年の輸出総額は1.75億ドル(表1参照)であるが,この表では1.43億ドルであ り,前者の81.6%を占めている。 7)松永宣明[2007]を参照。 8)ラオス衣類産業組合(ALGI)の最新リスト(2007年版)によれば,輸出企業は60社, 下請企業は59社ある。なお,表5に掲載した企業以外に,廃業・休業を確認できた下請企 業が4社あり,また確認はできなかったが,電話連絡に対して応答がなく,おそらく廃業・ 休業していると思われる下請企業が3社あった。この調査にはラオス国立大学経済経営学 部講師(特に Piya Wongpit 氏)の協力を得た。

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38 堂本健二教授追悼号(第372号) 平成20(2008)年4月 ラオスは人口580万人程度の小国であるから生産した衣類のほとんどは輸出 しており,国内市場向けの生産は無視できる規模しかない。輸出金額を見ると, 1996年以降,2001年と2002年を除いて増加しており,MFA が廃止された2005 年以降も順調に増加している。輸出先は EU が9割前後を占めており,米国へ の輸出は最近増えてはいるが,それでも全体の4.3%でしかない。なお,2007 年における「その他」への輸出4.1%のうち,日本への輸出は1.7%である。 「輸出企業」とは外資・合弁・ラオス資本を問わず,衣類を輸出している企 業であり,「下請企業」とは輸出企業から得た注文に従って生産・納品してい る企業である。輸出企業の数は50∼60社で推移しているが,2001年に52社まで 減少した後は一貫して増えている。下請企業の方は1998年の10社から始まって, 以後は急増しているが,過去2年間の増加はわずかでしかない。しかも,後述 のように,特に下請企業の中では競争が激しくなっており,廃業・休業を余儀 なくされる企業も増えている。 労働者の数は2006年を除いて一貫して増えており,2007年には27,000人と なっている。輸出数量は2002年を除いてほぼ一貫して増えているが,この値で 輸出金額を割って1着あたり輸出金額を計算すれば分かるように,2006年から 2007年にかけて1着あたり輸出金額は15%も低下している。これについては, 後で詳しく論じることにしたい。 次に,表5によりラオスの縫製企業について詳しく見ることにしよう。この 年 輸出企業 下請企業 労働者 数量 輸出金額(1000ドル) 輸出市場シェア (社) (社) (人)(1000着) 合計 EU 米国 カナダ その他 EU 米国 カナダ その他 1996 − − − − 62,000 50,254 4,478 − 7,268 81.1% 7.2% − 11.7% 1997 − − − − 73,056 60,812 6,670 − 5,574 83.2% 9.1% − 7.6% 1998 58 10 17,200 27,064 76,146 59,238 9,562 − 7,346 77.8% 12.6% − 9.6% 1999 55 18 18,000 25,934 100,026 87,111 6,488 − 6,427 87.1% 6.5% − 6.4% 2000 53 26 19,000 25,560 108,442 97,590 5,377 1,241 4,234 90.0% 5.0% 1.3% 3.9% 2001 52 26 20,000 26,955 103,486 94,759 2,566 1,437 4,724 91.6% 2.5% 1.5% 4.6% 2002 53 27 21,462 23,114 103,380 96,239 1,973 1,448 3,720 93.1% 1.9% 1.5% 3.6% 2003 55 31 23,846 28,129 115,134 104,439 3,249 3,392 4,054 90.7% 2.8% 3.2% 3.5% 2004 57 43 26,000 31,909 131,720 120,627 1,953 4,535 4,605 91.6% 1.5% 3.8% 3.5% 2005 58 55 27,500 33,470 144,868 131,907 1,971 3,234 7,756 91.1% 1.4% 2.5% 5.4% 2006 59 57 25,700 35,581 151,182 142,128 4,038 3,780 1,236 94.0% 2.7% 2.7% 0.8% 2007 60 59 27,000 42,118 152,759 134,932 6,568 5,052 6,206 88.3% 4.3% 3.7% 4.1% 表4.ラオスにおける縫製企業数・輸出金額・労働者数の推移

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インドシナ3国の衣類産業 39 表では輸出企業と下請企業に分けた上で,労働者数の多い順に企業が並べられ ている。A~T の20社は輸出企業であり,このうち11社が外資企業または合弁 企業である。1∼37の37社は下請企業であり,そのほとんどはラオス資本100% であるが,タイ資本70%の合弁企業も1社ある。なお,国名のみ記されている 企業は100%当該国の企業(例えば「タイ」は「タイ資本100%」)である。 まず,輸出企業にタイ系企業が多い点が目を引く。調査した企業20社のうち, 8社がタイ資本100%またはタイ資本との合弁企業である9)。H 社のように昨 年設立された日本資本とタイ資本が50%ずつの企業もある。文化的にもラオス とタイは近く意思疎通に障害が少ないので,タイ企業も進出しやすく,また既 にタイに進出した外資企業がタイの人件費高騰を避けて移転する際にもラオス は好都合なのである。 D社と Q 社は,タイに進出していた外資企業がラオスに投資したものであ る。D 社は台湾企業であるが,台湾に2工場,中国に2工場,ニカラグアに2 工場,ラオスにも別に2社の企業(1992年と94年に設立され,D 社と合わせて 2,800人を雇用している)がある多国籍企業である。タイには大規模な繊維工 場があり,これらの企業に布を供給している。 Q社は日本企業ではあるが,これは1988年からタイで操業していた日本企業 が一部の生産をラオスに移したものである。また,この表には載せていないが, 2005年に設立された日本資本100%の企業もある。これは1989年からタイで生 産していた企業がラオスに進出したものであり,原料はタイから全量輸入し, タイ人スタッフを通して技術移転と労務管理等を行なっている。 カンボジアでは大半の縫製企業が外資系であるが,ラオスでは多数の企業が ラオス資本である。下請企業のほとんどはラオス資本であり,輸出企業の3分 の1程度がラオス資本である。なお,S 社はフランスに亡命していたラオス人 が帰国して設立した企業であり,実質的にはラオス資本である。R 社は1984年 に設立された国営企業であり,綿花の加工から縫製品の生産・販売まで行なっ ている唯一の企業である。 9)輸出企業全体では60社のうち,10社が100%タイ資本,12社がタイとの合弁企業である。

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40 堂本健二教授追悼号(第372号) 平成20(2008)年4月 No. 所有形態 創業 生産方式 ミシン台数 労働者数 賃金平均(前年比)費用 売上・収入(前年比) 将来展望 短期計画 長期計画(希望) A タイ80% 1990 FOB 900 1600 53 ↓ ↑35% 微増 工場拡張 B タイ49% 1995 CMT/FOB 853 870 − ↑8% ↑5% 微増 寮の改善・拡張 工場拡張 C タイ 1992 CMT/FOB 500 840 ↑30% ↓ D 台湾 2005 FOB 700 800 53 ↑10% ↑ 微増

E ラオス 2001 CMT 486 750 70 ↓10% ↓30% WRAPと SA8000の取得 ISO9001の取得

F ラオス 2002 CMT/FOB 200 600 54 ↑20% ↓60% 微増 生き残り G ラオス 1989 CMT 273 389 46 ↑20% ↓50% ↓ H タイ5日本50%0% 2007 FOB 219 377 73 − − 微増 I タイ80% 1991 FOB 180 350 60 ↑ → 微減 労働者の訓練 J ラオス 1999 FOB 270 330 64 → → → K タイ80% 2003 FOB 200 320 66 ↑ → 微増 L ラオス 1992 CMT/FOB 250 300 88 ↑10% ↓ 微増 WRAPの取得 受注増 M ラオス 1993 CMT 780 271 84 → ↑33% 微増 労働者の増加 WRAPの取得 N ラオス 2003 CMT 211 270 67 ↓ ↑ 微増 新工場設立 O タイ50% 1992 CMT 230 230 69 ↑ ↑20% 微増 労働者の訓練 P ラオス 1983 CMT 100 150 67 ↑30% ↓50% 微減 生産増加 Q 日本 1998 FOB 110 110 43 ↑ → 微増 労働者の訓練 R ラオス 1984 国営 24 101 79 ↑5% → 微増 労働者の訓練 パートナーが必要 S フランス 2002 CMT/FOB 210 80 47 ↓80% 微増 パートナーが必要 T タイ 1995 FOB 70 45 58 ↑5% ↑40% 微減 品質の向上 1 ラオス 2002 下請 32 110 59 → ↑10% 微増 生産増加 機械の増加 2 ラオス 2007 下請 100 100 38 − − 微増 下請からの脱却 工場拡張 3 ラオス 1995 下請 100 83 55 ↑ 微増 生き残り 4 ラオス 1997 下請 75 80 56 → → 微増 労働者の訓練 工場拡張 5 ラオス 1995 下請 60 80 53 → 微増 事業の継続 事業の継続 6 ラオス 1994 下請 75 75 67 ↑20% ↑10% 微減 労働者の訓練 機械の増加 7 タイ70% 1994 下請 70 65 65 ↑10% ↓20% 微減 生産物の転換 8 ラオス 1999 下請 60 55 69 → ↓30% 微増 新市場開拓 9 ラオス 2000 下請 40 53 69 ↑15% → 激減 生き残り 廃業 10 ラオス 1995 下請 45 50 51 → → 微増 ポロシャツの生産 11 ラオス 2002 下請 150 50 80 ↑30% ↑30% 激減 労働者の増加 輸出企業への転換 12 ラオス 2006 下請 30 45 44 → → 微増 生産能力増大 13 ラオス 2005 下請 50 40 50 → → 微減 労働者の増加 受注増 14 ラオス 2000 下請と国内向け 25 40 72 → ↑50% 微増 労働者と機械の増加 新工場の設立 15 ラオス 2003 下請と輸出 40 40 40 ↑2% → 微増 国内市場への販売 FOBに専念 16 ラオス 2006 下請 45 40 20 → ↓50% 微増 生産増加 17 ラオス 1985 下請と国内向け 50 35 43 → ↑20% 微減 労働者の訓練と質の向上 生き残り 18 ラオス 2002 下請 40 35 53 ↑ ↓30% 微増 他の下請企業との情報交換 19 ラオス 1999 下請 50 30 57 ↑ ↓35% 微増 20 ラオス 2000 下請 40 28 60 ↑10% ↓40% → 労働者と機械の増加 21 ラオス 2005 下請 20 25 128 ↑30% ↑ 微減 政府の支援に期待 22 ラオス 2005 下請 30 25 72 ↑ ↓50% 微減 注文増 23 ラオス 2004 下請 20 24 33 → ↓50% 微増 労働者の増加 工場拡張 24 ラオス 2007 下請 18 22 105 − − ↑ 生産増加 25 ラオス 1996 国内向け 23 18 42 ↓30% ↓30% 微増 工場の改善 26 ラオス 2005 下請 10 15 53 → ↓50% 微増 国内市場への販売 27 ラオス 2002 下請 24 14 43 ↑10% ↓80% 激減 生き残り 28 ラオス 2007 下請 12 13 38 − − 微減 受注増 29 ラオス 2006 下請 30 12 60 ↑20% ↓ 微増 受注増,品質の向上,経営改善 30 ラオス 2006 下請 19 12 53 → 微増 生産能力増大 31 ラオス 2004 下請 15 11 45 → ↓2% ↑ 32 ラオス 2001 下請 25 10 70 ↑ → 微減 33 ラオス 2005 下請 12 10 65 ↑10% ↓30% 微増 生産能力増加 34 ラオス 2006 下請 14 10 45 ↑5% ↓50% 微減 生き残り 35 ラオス 2008 下請 10 10 50 − − 生き残り 36 ラオス 2002 下請 15 8 63 ↑20% ↓30% 微増 労働者の増加 事業の継続 37 ラオス 2004 下請 10 8 44 ↑ 微減 表5.ラオス縫製企業調査の結果(2007年12月∼2008年2月に実施) (注1)所有形態の欄で国名のみ記されている企業は,100%当該国の資本による企業である。 (注2)費用,売上・収入,将来展望において「↑」は増加,「↓」は減少,「→」は変化なしを示す。

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インドシナ3国の衣類産業 41 創業年を見ると,一般に輸出企業の方が古く,1983年設立の P 社が最も古 い。これに対して,下請企業は比較的新しいものが多く,2005年以降に設立さ れたものが37社のうち14社もある。下請企業は規模も小さく,設立が容易なた め,十分な受注の見通しがあれば,新規に設立されやすい。カンボジアで見ら れたようにバイヤーが下請を嫌うという事情がラオスではないために,多くの 輸出企業は注文増に対して下請への委託という形で対応してきた。その結果, 近年多数の下請企業が設立されたものと思われる。 生産方式については,輸出企業では FOB と CMT があり,下請企業では輸 出企業からの下請に加えて国内向けの生産をしている企業と,下請をしながら も輸出や国内向けの生産をしている企業がある。ここで FOB とは,貿易取引 における Free On Board(本船渡し)とは異なり,縫製企業が生産に必要な生 地や付属品等を調達して生産し,製品を顧客に売る生産方式である。これに対 して CMT とは,顧客の指定したデザインに従って,顧客が提供する生地や付 属品などを用いて加工した後,完成品を全量納品する委託生産である。縫製企 業が行なうのは Cut(裁断),Make(縫製),Trim(仕上げ)だけであるから, 縫製企業が提供するのは加工に必要な労働者・ミシン類・工場設備等に限られ る10)。 外資・合弁企業で FOB 方式を取っていないのは O 社だけで,残りの10社は すべて少なくとも一部は FOB 方式を取っている。CMT 方式を取っている O 社はタイ資本50%の合弁企業ではあるが,タイの投資家は最初出資をしただけ で経営には関与しておらず,実質的にはラオス資本である。逆に,ラオス企業 で CMT 方式を取っていないのは F,J,L 社の3社だけであり,しかも F 社が 10)「この生産方式は,デザイン開発,原材料・資金調達,マーケティング等に必要な能力 を要せず,運転資金は労働者の賃金等に限られ,取引のリスクも負わなくて良いという利 点を持つ一方,極めて低い加工賃しか稼げず,顧客からの注文を待つだけで,商品開発も 市場開拓もしないので,自立性も発展性もないという問題を有する。ラオスのように,資 金力,デザイン力,マーケティング能力のない企業が大半で,賃金が安いという条件には 適合した方式ではあるが,顧客の注文を待つしかないというのでは,価格交渉においても 圧倒的に不利であり,資本蓄積を可能とするほどの利潤を得ることは極めて困難であるた め,大きな問題を有している。」(松永[2006]pp.324―5)

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42 堂本健二教授追悼号(第372号) 平成20(2008)年4月 FOB方式で大量に生産した(全体の30%)のは2006年だけで,その前後はご く一部を FOB 方式で生産したにすぎない。したがって,外資・合弁企業は FOB 方式,ラオス企業は CMT 方式と大雑把に分けることができる。 今回の調査で特に重視したのは,MFA 廃止後に見られる売上・収入の変化 である。表4で確認したように,2005年以降も輸出金額は増加しており,MFA 廃止後の衣類産業崩壊という最悪の事態は生じていない。しかし,表5からも 分かるように,前年比で費用は増加しているが,売上・収入は減少または変化 なしという企業が多い11)。特に2007年はドル安のため,ドル建ての売上・収 入は変わらないのに対して,現地通貨建ての賃金は高騰しており,利潤が減少 ないし赤字になった企業も多い。さらに,最近になって人手不足が生じており, 平均賃金も上昇傾向にある12)。 売上・収入が前年比で減少している輸出企業は6社あるが,6社のすべてが ラオス資本である点に注目したい。F 社と G 社はそれぞれ600人,389人の労働 者を擁する大手企業であるが,費用が20%も増加しているにもかかわらず,売 上・収入はそれぞれ60%,50%も減少しており,特に F 社では「生き残り」 が短期計画として挙げられている。P 社は費用が30%も増加しているにもかか わらず,収入は50%も減少しており,かなり深刻な状況にある。前述のように, S社は実質的にはラオス資本であるが,売上・収入が80%も減少しているのは, 経営者が交通事故に遭ったため経営ができなかったという特殊事情によるもの である。 外資・合弁企業10社のうち売上・収入が増加しているのは5社であり,残り 5社は変化なしか無回答である。A 社,O 社,T 社のように前年比20∼40%も 売上・収入を伸ばしている企業はあるが,減少に直面している外資・合弁企業 はない点に注目したい。これはラオス企業とは大きな違いであり,ラオス企業 11)基本的に FOB 方式の場合は「売上」になるが,CMT 方式の場合は委託加工「収入」と なる。以下,FOB 方式の場合は売上,CMT 方式の場合は収入,両者がある場合は売上・ 収入と示す。なお,調査では金額も尋ねたが,両者が混じっている場合もあり,データが 不正確な場合もあったので,ここでは前年比の増減だけに注目している。 12)表5の「平均賃金」からは賃金の上昇傾向は読み取れないが,インタビュー調査では賃 金上昇と採用の困難化がたびたび指摘された。

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インドシナ3国の衣類産業 43 で売上・収入が増えているのは M 社と N 社だけである13)。 下請企業を見ると,収入の減少傾向は一層顕著である。37社のうち16社が収 入の減少を報告しており,そのうち50%以上も減少した企業は6社もある。変 化なしの企業は7社あるが,収入が増加した企業は6社に限られる。収入の増 加した下請企業(企業1,6,11,14,17,21)には概して積極的姿勢が見ら れ,「短期計画」や「長期計画」として,「生産・機械・労働者の増加」,「新工 場の設立」,「輸出企業への転換」,「労働者の訓練」などを挙げている。しかし, 20∼30%の費用増加に直面している企業が半数もあり,手放しでは喜べない状 況にある14)。なお,企業2,24,28,35は2007年以降に設立された新規参入 企業である。 経営者の「将来展望」として,5∼10年後のラオス縫製産業全体について予 想を尋ねた所,次のような回答を得た。「増加」2社,「微増」33社,「変化な し」2社,「微減」16社,「減少」2社であり,「微増」と答えた企業が最も多 く,「微減」と答えた企業の2倍ある。この傾向は輸出企業に著しく,20社の うち13社が「微増」と答え,「微減」と答えた企業は3社のみである。下請企 業では37社のうち20社が「微増」と答え,13社が「微減」と答えており,輸出 企業に比べて将来展望は若干悲観的である。ただし,「増加」と答えた下請企 業も2社あり,逆に「減少」と答えた輸出企業も2社ある。 経営者に「短期計画」と「長期計画」を尋ねた所,以下のような回答が得ら れた。輸出企業では,「工場拡張」,「新工場の設立」,「生産増加」,「寮の改善・ 拡張」,「労働者の増加・訓練」,「品質の向上」,「WRAP,SA8000,ISO9001の 取得」など前向きな回答が多く,「生き残り」,「パートナーが必要」といった 消極的な回答はごく僅かであった。 13)M 社の収入は前年比で33%増えているが,この企業も大きな問題を抱えている。設立当 初は1,300人の労働者を雇用していた大手であり,2005年まではバンコクに支店を持ち FOB 生産をしていたが,資金不足のため2006年から CMT に転換している。271人の労働者に対 して780台のミシンがあるのは近年の事業不振の証左であり,「短期計画」として労働者の 増加が挙げられているのはそのためである。 14)企業14は50%も収入を増やしているが,この企業は下請生産だけでなく,国内市場向け にズボンと学生服を生産しており,費用増加にも直面していない。

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44 堂本健二教授追悼号(第372号) 平成20(2008)年4月 これに対して,下請企業では,「生き残り」,「廃業」,「事業の継続」,「政府 の支援に期待」といった消極的な回答が多くなる。しかし,「下請からの脱却」, 「国内市場への販売」,「新市場開拓」,「他の下請企業との情報交換」,「生産増 加」,「機械の増加」,「工場拡張」,「新工場の設立」,「労働者の増加」,「受注増」, 「労働者の訓練」,「生産物の転換」,「品質の向上」,「経営改善」など前向きな 回答を挙げた下請企業は,それ以上に多い。ここに下請企業の活力が感じられ る。 以上のように,MFA 廃止後もラオスの衣類産業は全体では順調に生産を拡 大しているが,生産費用の増加と売上・収入の減少に直面している企業も多く, 企業間競争が激しくなって二極分化の傾向が強くなっている。特に最近では, 収入の減少に苦しむ下請企業が増えており,廃業・休業に追い込まれる企業も 散見される。輸出企業では,ラオス資本には売上・収入が減少しているものが 多いのに対して,外資・合弁企業には売上・収入が増加しているものが多い。 経営者に「短期計画」と「長期計画」を尋ねた結果,輸出企業では前向きな 回答が多く,下請企業では消極的な回答が多いものの,過去3年間に新規参入 した下請企業も結構あり,そういった企業には前向きな回答を挙げたものが多 い。MFA 下の保護貿易的環境がなくなって淘汰される企業が増える一方で, 競争的環境でも発展していける企業が着実に増えていることが推測される。 6.おわりに 過去10年間におけるインドシナ3国の衣類輸出の増加は著しく,最も増加率 の低いラオスでさえ2.0倍に増えている。しかも,その輸出先は EU15ヶ国と アメリカに集中しており,ASEAN 諸国への輸出は2%にも満たない。糸・布 類に関する ASEAN 諸国との貿易関係はラオスを除けば希薄であり,カンボジ アは主に中国・香港から,ベトナムは中国・香港,韓国,日本などから輸入し ている。つまり,繊維・衣類の ASEAN 域内分業が活発なのはラオスだけであ り,ベトナムとカンボジアでは域内分業が少ない。 このように異なった国際分業の背後には,衣類産業の担い手の違いがあると

参照

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直接線評価 :幅約 8.0m,奥行約 16.0m,高さ約 3.2m スカイシャイン線評価 :幅約 112.5m,奥行約 27.6m,高さ約 3.2m (5)

添付資料-4-2 燃料取り出し用カバーの構造強度及び耐震性に関する説明書 ※3 添付資料-4-3

    その後,同計画書並びに原子力安全・保安院からの指示文書「原子力発電 所再循環配管に係る点検・検査結果の調査について」 (平成 14・09・20

1号機 2号機 3号機 4号機 6号機

3号機使用済燃料プールにおいて,平成27年8月2日にFHM本体撤去が

2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月