在宅高齢者に対する食事療養支援を目的とした多職種共通教育プログラムの開発
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(2) 【はじめに】 厚生労働省の人口動態統計 1)によると、2016 年の日本人の死因全体で肺炎は、 悪性新生物、心疾患についで 3 位に位置している。肺炎による死亡の 90%以上は 高齢者であること、その肺炎の 80%が誤嚥性肺炎であること 2)から治療とともに、 誤嚥性肺炎の予防が重要となる。臨床現場においては、病院内の栄養サポート チーム(NST)、摂食嚥下チームなどの多職種連携チームが介入することにより誤 嚥性肺炎予防対策がとられており、効果が示されている 3)。一方、在宅高齢者に おいても、さまざまな疾患・障害を原因とする摂食嚥下障害者が多く存在して いる 4)が、生活支援は行われているものの、摂食嚥下に関する知識が乏しく、専 門職の介入が急務であることから、地域連携の活性化が望まれている 5)。 在宅高齢者の食支援に関わる多職種への教育プログラムを開発し、啓発活動 を展開することにより、食支援に関わる多くの専門職種が基礎知識を修得でき、 ひいては誤嚥性肺炎および窒息事故防止とともに在宅高齢者への持続的な食支 援に寄与できると考える。 【目的】 在宅高齢者の食べる楽しみを支援するためには、医療、福祉施設および在宅 に勤務する専門職の連携を強化するとともに、在宅高齢者に対する栄養管理と 摂食嚥下機能の維持については、医療および介護関連職種が共通認識の基に関 わることが重要と考える。在宅高齢者の食支援に関わる多職種が共通言語で連 携することにより、在宅高齢者に対する適切な支援が可能となる。以上より、 在宅高齢者の食支援をするために、多職種共通教育プログラムを検討すること を目的とする。 【方法】 在宅高齢者への食支援ツール作成に必要な情報を得ることを目的に、経口摂取 している要介護高齢者の食支援に関わっている担当者の現状と認識を調査した。 方法は、2016 年 9 月~2016 年 10 月までの期間、新潟市内のすべての介護老人 保健施設および在宅訪問看護ステーション計 86 施設へ調査票を郵送し、施設長 より文書による同意を得た上で、食支援に最も関わっている職種より回答を得 た。調査は、①栄養状態の確認と栄養評価に関わる知識②口腔内評価と口腔ケ アに関わる知識③摂食時の姿勢確認と適切な姿勢の知識④摂食時の食形態確認 と機能に応じた食形態の知識⑤ADL の確認と評価に関わる知識の 5 項目とした。 各項目の確認について、 「定期的に確認している」 「不定期に確認している」 「確 認していない」「わからない」の 4 段階とした。各項目の知識については、「大 いにある」「少しある」「どちらともいえない」「あまりない」「まったくない」.
(3) の 5 段階を主観的に自己評価してもらい、点数化(大いにある:5 点―まったく ない:1 点)した。さらに、2016 年 9 月、新潟高齢者の栄養と摂食を支える会 研究会パネルディスカッション「高齢者の栄養管理と摂食嚥下に関わる職種間 連携と課題」に参加した専門職に対して、情報提供に関する用語の理解と情報 提供に関する内容の記載について、アンケートを実施した。 【倫理的配慮】 本研究は新潟医療福祉大学倫理審査委員会の承認(承認番号 17731-160902) を得て実施した。 【結果】 経口摂取している要介護高齢者の食支援に関わっている担当者の現状と認識 調査回答施設は、36 施設(回収率:41.9%)であった。回答した職種は、看護師 23 名、言語聴覚士 9 名、管理栄養士3名、介護福祉士 1 名であった。知識は、 栄養評価が口腔ケア、適切な姿勢および食事形態と比較して低い結果となった が、平均はいずれも 3.5 点を超えていた(図 1)。また、評価項目の確認におい て、「確認していない」は、10%を下回っていた(図 2~図 6)。一方、新潟高齢 者の栄養と摂食を支える会研究会に参加した専門職に対して、情報提供に関す る用語の理解と情報提供に関する内容の記載について、アンケートを実施した。 食支援に関わっている専門職 129 名(病院:56、介護施設:57、在宅:16)よ り回答を得た(図 7、図 8)。意見としては、 「他病院から情報はあるが、評価を すると、情報と違うことがある」「施設によって食事の形態と呼び名が異なり、 とまどった」などが挙げられ、情報共有に関しては、 「施設間等における情報提 供の際の用語が理解できない」「内容が難しい」などの回答があり、約 30%の専 門職が情報提供に関する用語等を理解していない状況で業務を行っていること が推察された。また、異なる職種間の情報共有を目的とした、平易な言葉を用 いた簡便なテキストを望む専門職が多数存在することが確認できた。 【結論】 在宅高齢者への食支援に関わる専門職間において、情報に関する共通認識構 築の課題が明らかになった。多職種共通教育では、医療、福祉および在宅に関 わる多くの専門職が情報共有可能である簡便な共通テキストを用いることが必 要であり、内容の記述は、難解な用語を用いることなく、平易な言葉で記載さ れた情報共有ツールが望まれる。このようなテキストが、在宅高齢者の食支援 に関わる職種への教育の媒体として適切であると考える。そこで、新潟高齢者 の栄養と摂食を支える会メンバーの協力を得て、在宅高齢者の食支援に関わる 多くの専門職種が共通言語で支援することが可能となる食支援連携テキストを.
(4) 作成した。今後は、本テキストを用いて、在宅高齢者の食支援に関わる専門職 および家族に対して教育・啓発活動を行いたいと考えている。 本研究は、公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団の助成により実施した。 【参考文献】 1)厚生労働省 平成 26 年人口動態統計 http://www.mhlw.go.jp/toukei/index.html 2)Teramoto S、 Fukuchi Y、 Sasaki H、et al: High incidence of aspiration pneumonia in community- and hospital-acquired pneumonia in hospitalized patients: a multicenter、 prospective study in Japan. J Am Geriatr Soc 56(3):577-579、 2008. 3) 黒川英雄、 木村ひとみ、 諌山美鈴ほか:NST における摂食・嚥下障害チームの専門的 口腔ケア介入の効果、 日衛学誌 JJSDH、 Vol.6(2)、 2012. 4)松田 明子: 在宅における要介護者の摂食・嚥下障害の有無と身体機能、 主介護者の介 護負担感および介護時間との関連. 日本看護科学会誌 23、 37-47、 2003. 5) 梶井友佳、 別府茂、 秋元幸平ほか:食の支援ステーションにおける実態調査、 日摂食 嚥下リハ会誌、 17(2)、 153-163、 2013..
(5) *. *. 5. *. 点数. 4 3 2 1 評価 ADL. 食事形態. 適切な姿勢. 口腔ケア. 栄養評価. 0. 平均±標準偏差 *:P<0.05 Williams 法による多重比較にて栄養評価との有意差あり. 図 1 主観的知識の比較について. 栄養状態の確認. 0%. 20%. 40%. 60%. 80%. 定期的に確認している. 不定期的に確認している. 確認していない. わからない. 100%. 無回答. 図2. 栄養状態の確認について. 口腔内状態の確認. 0%. 図3. 20%. 40%. 60%. 80%. 定期的に確認している. 不定期的に確認している. 確認していない. わからない. 口腔内状態の確認について. 100%.
(6) 食べる姿勢の確認. 0%. 図4. 20%. 40%. 60%. 80%. いつも確認している. 時々確認している. 確認していない. わからない. 100%. 食べる姿勢の確認について. 食事形態の確認. 0%. 図5. 20%. 40%. 60%. 80%. いつも確認している. 時々確認している. 確認していない. わからない. 100%. 食事形態の確認について. 日常生活動作(ADL)の確認. 0%. 図6. 20%. 40%. 60%. 80%. いつも確認している. 時々確認している. 確認していない. わからない. 日常生活動作(ADL)の確認について. 100%.
(7) A.病院. B.介護施設. C.在宅関連. 0%. 20%. 40%. 60%. 80%. よく理解できる. ほとんど理解できる. ときに理解できないことがある. 理解できないことがしばしばある. 100%. 無回答. 図7. 情報提供に関する内容や使用されている用語の理解について. A.病院. B.介護施設. C.在宅関連. 0% 20% 40% 必要で十分な内容である. 60%. 不要な情報が多い 必要な情報が不足している 不要な情報があり、必要な情報が不足している 無回答. 図8. 情報提供に関する内容の記載について. 80%. 100%.
(8) ້࿌Ἓᾲଟကି Ỉወኈᴒንୟ୫ ‸ဃ᷹ᦙଢഓᴋᚭᮝଟଅଚ‸ૌૌૌ.
(9) ᒝ ૌܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬଣ ଌ ଵ ଟૌ ૌܬܬܬܬܬܬܬܬܬΎῨỈወኈଜἛᾲଢᲱ౨ᙚᄭૌ ૌܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬῬῨᏋỗᯂಅૌ ૌܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬ῭Ῠຫ௨ᯥዡỈଢẽଜૼዹૌ ૌܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬ΅ῨଜୁଳᯥዡỈ็ଢ౸ᛡૌ ૌܬܬܬܬܬܬܬܬ`ῨଜୁଳᯥዡỈ็ଜᏋỗ᭨Ỉ็ૌ ૌܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬῨỈఖଢ྇ଜỈഖૌ ૌܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬῨ$'/ᯂಅૌ ૌܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬῲῨෳ᧚ᑼᧆଢᯂಅଜෳ᧚ୣૌ ૌܬܬܬܬܬܬܬܬܬܬῳῨ᫉ଢ᠖ẽ્᫉ଜỈఖଢḄᴒૌ ૌܬܬܬܬܬܬܬኗỈຫ௨ᯂಅຫ௨᮪ᤜଟଘଚૌ.
(10) は じ め に 高齢者の方々は、栄養状態や嚥下に問題をかかえている方が多い訳ですが、 どこに相談したらよいのかも分からず、孤立している人も多いのではないでし ょうか。また、医療や福祉に携わっている専門職も、地域の中で連携するニー ズを感じつつも、どのように連携していったらよいのか、糸口が見いだせず困 っているのが現状だと思います。2016年度勇美記念財団助成研究「在宅高齢者 に対する食事療養支援を目的とした多職種共通教育プログラムの開発」におけ る調査において、医療や福祉に携わっている専門職は、病院、施設および在宅 において対象者の食支援に関わる評価を実施していることが確認できました。 一方で、約30%の専門職が情報共有の用語が理解できずに困惑している現状が わかりました。そこで、「新潟高齢者の栄養と摂食を支える会」の協力を得て、 多職種が連携して高齢者の栄養と摂食嚥下を支えていくために有用なツールを 作成しました。 「新潟高齢者の栄養と摂食を支える会」は2014年に地域の医療関係者・福祉関 係者、新潟医療福祉大学の有志が集まって設立された会です。以来、一般市民 向けの講演会・相談会や専門職のための勉強会などを開催してきました。この 活動を通じ、経験の浅い医療・福祉職が理解できるようにと考えて、栄養と摂 食嚥下に関するテキストの内容は、医療や福祉に携わる初心者を想定して書か れています。ここに書かれていることは、わずかではありますが、ゆくゆくは、 ホームページ上で、充実させていければいいなと思っています。また、今後、 地域内連携・施設間連携・職種間連携がますます重要になってきますが、本テ キストが、在宅高齢者の食支援に関わる職種間ネットワーク構築の一助となれ ば幸甚です。 この冊子は、公益財団法人在宅医療助成 した。. - 1 -. 勇美記念財団の助成により作成しま.
(11) 1.食支援と高齢者の身体的特徴 一般に、加齢による身体機能や生理機能の低下は、食事摂取や栄養状態にも 様々な影響を及ぼすことがあります。高齢者の身体的特徴を知ることは、食支 援を行う上で重要な項目となります。 食事や栄養状態に影響する高齢者の体の変化 感. 覚. . 唾液の分泌の減少や味蕾細胞の減少により味覚が低下する。特 に塩味と甘味の感度が低下し、何を食べても味がしないなど、 食事が薄味に感じることがある. . 視覚・聴覚・嗅覚・触覚・温覚など様々な感覚が鈍くなり、料 理の色合いや香りを感じにくく食欲低以下につながることが ある 喉の渇きを感じにくく、脱水症状を起こしやすくなる. 身体機能. . 消化機能. . 口. 腔. . 嚥下機能. 手先の器用さが低下し、関節が固くなり可動域が低下するなど して食事動作に影響することがある 筋肉量が低下し、活動性が低くなる 唾液や胃液、胆汁や膵液など消化に関わる分泌物が減少し、消 化に時間がかかるようになる 胃から小腸への排出速度が低下し、食物が胃に残りやすくな り、一度に多くの食べ物を受け付けなくなる 腸の内容物の移動速度が遅くなり水分吸収が過剰になり、また 直腸に溜まった便を排出する筋力が低下し、便秘になりやすい 唾液の分泌が減少し、自浄作用の低下や義歯の不適合、味覚の 低下などに影響する 自浄作用が低下することで口腔内細菌が増殖し、口腔内トラブ ルや誤嚥性肺炎の要因になりやすい 歯の喪失や咀嚼に関連した筋力の低下により、食べ物を飲み込 みやすい状態まで噛むことが困難になり、食べられるものが限 定されやすい. . 咀嚼能力の低下により食べ物を飲み込みやすい状態まで噛む. . ことが困難になり、飲み込みにくくなる のどの感覚の低下や飲み込みに関連した筋力の低下により、む せやすくなる. - 2 -.
(12) 高齢者は体の機能低下だけでなく、これまで生活してきた背景、現在の生活環境、 精神的要因、既往歴など複数の要因が重なり、飽食と言われる現代においても、 低栄養に陥ることが少なくなく、その人にあった食支援が必要です。. 高齢者の体の変化に応じた対策 ¾ 酸味、香辛料、出汁を存分に活かし、食塩に頼ら 薬剤、栄養補助食品のペー ジを参照して下さい ずとも物足りなさを補う ¾ 食材に色や温度、盛り付けに配慮し、見た目にも 気を配る ¾ 亜鉛不足が味覚の低下につながる事もあるため、 栄養補助食品などで亜鉛を補う ¾ 薬の副作用で味覚障害を起こすことがあるため、 医師や薬剤師へ相談する ¾ 食べやすい姿勢の調整や、食べやすい食具の選択 食事の姿勢や食具のペー ジを参照して下さい. ¾ 1 回の摂取量が少ない場合、食べる優先順位に配 栄養評価、栄養補助食品の 慮する(まずは肉や魚などの主菜の完食を目指 ページを参照して下さい し、その次に主食、それでも余裕があれば野菜な どの副菜を摂取する) ¾ 1 回の摂取量が少ない場合は、食間に間食を取り 入れてエネルギー補給をする ¾ 少量で高エネルギーの栄養補助食品を利用する ¾ 適宜、栄養評価を行う ¾ 口腔ケアを徹底する(食事をする準備として食前 口腔機能、口腔ケア、摂食 嚥下評価、嚥下調整食の考 のケアも効果的) え方のページを参照して ¾ 唾液腺マッサージで唾液の分泌を促す ¾ 歯科受診を行い、必要に応じて治療や義歯調整を 下さい 行う ¾ 口腔機能に適した形態の食事を提供する. ¾ 現在の摂食嚥下機能を評価する. 摂食嚥下評価、嚥下調整食. ¾ 摂食嚥下機能に適した食事を提供する ¾ 嚥下訓練を行う. の考え方、とろみ調整食品 の使用、栄養補助食品のペ ージを参照して下さい. - 3 -.
(13) 脱水予防の必要性 人の身体は約60%が水分でできており、その水分は主に筋肉に蓄えられて います。高齢になると筋肉量が減少し、それに比例して身体の水分量も50% 程度へ減少します。食事摂取量が減少すると食事から摂取できる水分量も減少 し、また、感覚機能の衰えからのどの渇きを感じにくくなる、トイレを心配す るなどにより、水分摂取量が減少することもあります。これらの原因により、 高齢者は脱水症に陥りやすくなります。 脱水症状としては、①舌、口腔内が乾燥している、②皮膚の乾燥、皮膚の弾 力性・緊張の低下、③血圧低下、頻脈、④易疲労感、脱力、食欲低下、意欲低 下⑤意識障害、意識の鈍化(何となく元気がない、ぐったりして反応が鈍いな ど)などがあります。 高齢者は一度に多くの水分を摂取することが難しい場合もあるため、少量ず つこまめに水分をとる必要があります。また、水分としてとれない場合でもゼ リーやアイス、果物など、別のもので補えるようにする配慮が必要です。. 一日の必要水分量 25~40ml×体重. - 4 -.
(14) ・安全な食事提供のために注意すべきこと 一般的に病院や施設では食事の提供時間が決まっており、その人それぞれに 合わせた時間で食事を提供することが困難な場面が多くみられます。時間内に より多くの食事を食べさせないといけないと、無理に食事摂取をさせてしまい、 結果的に誤嚥や窒息を招いてしまうこともあります。 「ウトウトしている」「ぼーっとしている」「動きが緩慢」など、覚醒が悪い 状態というのは食事を食べる準備が不十分であることも多く、誤嚥や窒息を起 こしやすい状態にあると言えます。このような場合には、水分やゼリーなど、 のど通りのいいものを少量摂取して嚥下に影響がないかどうか確認し、少しず つ注意しながら摂取していく必要があり、場合によっては無理せず中止した方 が安全なことがあります。ただし、中止したままではエネルギー不足になりま すから、覚醒がよくなった時点で少量高エネルギー栄養補助食品、アイス、ゼ リーなど、手軽に摂取できるものを食べてもらうなど配慮が必要です。. - 5 -.
(15) 2.栄. 養. 評. 価. 食 事 の 量 が 減 った り 、病 気 に な ると 身 体 が 消 耗 し た り、低 栄 養 を 生 じ る 可 能 性 が あ りま す 。低 栄養 に な る と 体 力 や 筋 力 が 落 ちて 感 染 症 に か か り や す く な り ます 。そ の た め 、低栄 養 状 態 を 見 逃 さ な いよ う に 、栄 養 評 価 方 法 を 知 っ てお く 必 要 が あ り ま す。 1. 必 要 栄 養 量 の 算 出 に つ い て ■ 必 要 エ ネ ル ギー 量 ( kcal) 現 体 重 ( ㎏ )×身 体 活 動 レ ベル 20~30( kcal)で 算 出 で き ま す 。 (表1参照) ■ 必 要 た ん ぱ く質 量 ( g) 現 体 重 ( ㎏ )×1.0~ 1.2( g)( 表 1 参 照 ) 表 1. 選 択 の 目 安 活 動 寝たきり 座 位 が 中 心 の 生活 日常生活自立. エネルギー量 20 25 30. たんぱく質量 1.0 1.1 1.2. 2. 身 長 、 体 重 に よ る 評 価 ■ BMI ( Body Mass Index: 体 格 指 数)( 表 2 ) 体 重 (㎏ )÷身 長 (m) 2 で 算 出 で き ま す。 ( 例 : 身長 160 ㎝ 、 体 重 50 ㎏ の 場 合 50÷(1.6×1.6)= 19.5) 低 体 重 、 標 準 体重 、 過 体 重 を 評 価 する こ と が で き ま す 。 ※ 理 想 体 重 は 身長 (m) 2 ×22 で 算出 で き ま す 。 表 2. BMI BMI< 18.5. 低体重. 18.5≦ BMI< 25. 標準体重. 25≦ BMI. 過体重. * 50~ 69 歳 の 目 標 と す る BMI は 、 20.0~ 24.9 * 70 歳 以 上 の 目 標 と す る BMI は 、 21.5~ 24.9. ■ 体 重 減 少 率 (表 3) 過 去 の 体 重 減 少量 と そ の 期 間 に よ り、 栄 養 の 不 足 を 診 断で き ま す 。 表3. 体 重減 少 率. 軽度栄養不良障害. 中等度栄養障害. 高度栄養障害. <5% / 月. 1 ~2% / 週. > 2% / 週. < 7.5% /3 ヵ 月. ≧5% / 月. - 6 -.
(16) 3. 身 長 、 体 重 の 測 定 が 難 し い 場 合 の 評 価 ■ 上 腕 周 囲 長 (Arm Circumference: AC)( 図 1) 利き腕ではない腕の中点(肩と肘の真ん中)の太さを、巻き尺を 用いて測定します。 ■ 上 腕 三 頭 筋 皮 下 脂 肪 厚(Triceps Skinfold Thickness:TSF) ( 図 2) 利き腕ではない腕の中点の1㎝上の皮膚を、キャリパーという器具 を用いて測定します。 ■ 上 腕 筋 囲 (Arm Muscle Cirumference: AMC) AC(㎝ )- 3.14×TSF(㎜ )に よ り 、 上 腕 筋 肉 の 周 囲 径 を 算 出 で き ま す 。 ■ 下 腿 周 囲 長 (Carf Circumference: CC)( 図 3) ふくらはぎの一番太い位置を、巻き尺を用いて測定します。 * AC、 TSF、 AMC、 CC は 日 本 人 の 新 身 体 計 測 基 準 値 ( JARD2001) と比較することで、栄養状態を判断することができます。. 図1. 上腕周囲長. 図2. 上腕三頭筋皮下脂肪厚. 図3. 下腿周囲長. 4. 問 診 に よ る 栄 養 評 価 簡 易 栄 養 状 態 評 価 表( MNA®- SF)を 用 い る こ と で 、問 診 に よ る 栄 養状態の評価ができます。 http://www.mna-elderly.com/forms/mini/mna_mini_japanese.pdf 5. 参 考 文 献 日本静脈経腸栄養学会:静脈経腸栄養ハンドブック. - 7 -.
(17) 3.嚥下調整食の分類と考え方 嚥 下 調 整 食 に は 様 々 な 種 類( 食 形 態 ) や 名 称 ( 例 : ソ フ ト 食 、 ム ー ス 食 な ど )が あ り ま す 。そ れ ら の 食 事 に つ い て 、嚥 下 機 能 に 応 じ た 食 形 態 の考え方を理解することで、摂食嚥下機能に問題を抱えた方に対して、 より安全な食事を提供することができます。 1.【 嚥 下 調 整 食 の 分 類 】 嚥 下 調 整 食 の 分 類 に つ い て は 、日 本 摂 食 嚥 下 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 学 会 より、 「 日 本 摂 食 嚥 下 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 学 会 嚥 下 調 整 食 分 類 2013」 (= 以 下;学 会 分 類 2013)が 示 さ れ て い ま す 。学 会 分 類 2013 に よ っ て 、病 院・施 設 間 に お け る 食 形 態・名 称 の 違 い を 視 覚 的 に も 理 解 し や す く な り ま す【 図 1】。現 在 、多 く の 病 院 や 施 設 等 で の 食 形 態 分 類 に 活 用 さ れ 、県 内 で も 各 地 域 で 活 用 さ れ て い ま す 。本 稿 で は 、そ の 中 で 、長 岡 地 域 に お け る 「 中 越 NST 摂 食 嚥 下 部 門 」 の 資 料 を 参 照 し な が ら 、 摂 食 嚥 下 機 能 と嚥下調整食との関連について、紹介します。. 【 図 1】「 学 会 分 類 2013」 に よ る 共 通 認 識. 2.【 摂 食 嚥 下 機 能 と 嚥 下 調 整 食 】 嚥 下 調 整 食 を 実 際 に 分 類 す る と【 図 2】、嚥 下 機 能 障 害「 重 度 」に お け る 食 形 態 は 、「 ゼ リ ー ・ ム ー ス 状 」 ま た は 「 と ろ み の つ い た 水 分 」 で あ. - 8 -.
(18) り 、「 べ た つ き 、 口 当 た り と し て 粒 や カ ス が 全 く な い 」 も の で 、 ス プ ー ン で す く っ た 状 態 で「 咀 嚼 を 要 さ ず 飲 み 込 み が で き る 」も の で す 。学 会 分 類 2013 で は 「 コード 0j~ 1j、 0t(j= ゼ リ ー 、t= と ろ み )」 と し て 分 類 さ れ ま す 。こ の 段 階 で の 食 事 は 、嚥 下 訓 練 や お 楽 し み 程 度 で 、経 口 摂 取 の み で 栄 養 補 給 す る こ と は 困 難 で あ り 、経 管 栄 養 法 な ど の 栄 養 療 法 を 併 用 し て い る 場 合 が 多 い で す 。次 に 、 「 中 等 度 」障 害 の 場 合 、学 会 分 類 2013 で は「 コード 2-1~ 3」に 該 当 し ま す 。こ の 段 階 で は 、経 口 摂 取 の み で 栄 養 補給可能な方が多くなります。 「 コード 2-1~ 2-2」に つ い て は 、 「 ミ キ サ ー・ ペ ー ス ト 状 」 で あ り 、「 と ろ み を つ け た り 、 ゼ リ ー ・ ム ー ス 状 に ま と ま り や す く 」 し て あ り ま す 。 こ の 段 階 も 、「 咀 嚼 を 要 さ ず に 飲 み 込 む こ と が で き る 」形 態 で す 。 「 コード 2-1 と 2-2」の 差 は「 粒 や カ ス の 有 無 」で す 。 「 コード 3」 は 、「 ミ キ サ ー ・ ペ ー ス ト 状 」 の も の を 「 コード 2-1~ 2-2」 と 異 な り 、「 咀 嚼 を 要 す る 」程 度 に 固 め た 状 態 で す 。「 軽 度 」 障 害 で は 、 調 理 法 に よ り 、「 軟 ら か く 咀 嚼 し や す い 」、「 離 水 ( 食 品 か ら 水 分 が 出 る ) し に く い 」 工 夫 が さ れ た も の が 該 当 し 、「 コード 4」 と し て 分 類 さ れ ま す 。 ま た 、嚥 下 調 整 食 に お け る 、液 体 へ の と ろ み 調 整 は 非 常 に 重 要 で す 。詳 細は「とろみ調整」の章を参照して下さい。. 【 図 2】 摂 食 嚥 下 機 能 に 応 じ た 食 形 態 (「 中 越 NST 摂 食 嚥 下 部 門 」 資 料 参 照 ) 【嚥下調整食に関連する参考資料】 「 日 本 摂 食 嚥 下 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 学 会 」 HP https://www.jsdr.or.jp/ 「 中 越 NST」 HP http://www.yoshida-h.or.jp/c_nst/. - 9 -.
(19) 4.とろみ調整食品の使用 とろみ調整食品は、飲料に入れて溶かすことで「とろみ」をつけることができる ものです。とろみをつけることで飲み込む時のスピードが遅くなるため、嚥下困難 な方でも「むせ」を防ぐことができます。 1. 学会基準 2013(とろみ)早見表について 嚥下調整食の分類の頁でも述べられておりますが、飲み物についても日本摂食嚥 下リハビリテーション学会において「学会分類 2013(とろみ) 」として基準が定め られています。 表 1 学会分類 2013(とろみ)早見表. 非常に細かく記載されていますが、とろみの段階は 3 段階に分かれており、その根 拠としているものが、回転粘度計と LST という機器を使った値の範囲です。下図で は、色付きの液体に、段階 1~段階 3 のとろみをつけたものを写真で示します。. 段階 1 薄いとろみ. 段階 2 中間のとろみ. 図 1 段階別とろみ溶液. - 10 -. 段階 3 濃いとろみ.
(20) それぞれのとろみのイメージを一言で述べると次のようになります。 段階 1:薄いとろみ・・・飲み物が一本の糸のように流れる 段階 2:中間のとろみ・・・飲み物が途切れ途切れに流れる 段階 3:濃いとろみ・・・飲み物を流しても形が保たれる とろみ早見表を用いる際に注意しなければならないことは、とろみをつけたとき の濃度(薄い~濃い)は、必ずしも症状の難易度(軽度~重度)を示すものではな いということです。例えば、とろみ早見表の「段階 3 濃いとろみ」は、まとまり がよく喉を通過する速度が遅いというメリットがありますが、粘りが強く口の中や 喉の奥に残ってしまうというデメリットも起きやすくなります。そのため、早見表 の情報だけを頼りにするのではなく、試飲して確認することも重要です。 2. とろみ調整食品を使用するときのポイント とろみ調整食品は、粉が飲み物に溶ける(水和するといいます)ことでとろみが 付きます。そのため溶かし方が重要です。ここでは、意識してほしい 3 つのポイン トを述べます。①粉を加える前に飲み物を混ぜ始める。②あらかじめ量を決めてお き、とろみ調整食品のつぎ足しはできる限り避ける。③60 秒程度同じ速度でしっ かりと混ぜる。これらを意識することで、均一に混ざり合い、「ダマ」とよばれる溶 け残しを防ぐことができます。 さらに、とろみをつけた飲み物はしばらく置いてから提供するようにしてくださ い。きちんと溶けるまでにかかる時間は、とろみ調整食品の使用量や飲み物の温度 によっても異なるため、 「とろみが安定するまでには時間がかかる」という認識を 持つことが重要です。かき混ぜた直後はトロミがついていないように見えても、時 間経過でとろみは強まります。特に、牛乳や甘いジュースに付ける際には最低でも 30 分は置くようにしてください。これにより、「提供時のとろみが濃すぎる」とい う危険を減らすことができます。 ※最後に・・・飲み物にとろみを付けることによって飲み込みやすくなるのは、早 期流入型誤嚥(水を飲む際、ゴックンの前に喉を通過し、むせること)のある方に ほぼ限定されます。嚥下困難な方へ闇雲に使用することは避け、必ず専門の医師、 歯科医師、言語聴覚士、管理栄養士等に相談の上、適切にご使用ください。. 【参考文献】 1) 藤谷順子ほか. 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2013. 日摂食嚥下リハ会誌 17(3):255-267. 2013.. - 11 -.
(21) 5.とろみ調整食品と栄養補助食品 市 販 の 形 態 調 整 食 品 を 活 用 す れ ば 、料 理 を か み や す く 飲 み 込 み や す い 形 態 に 仕 上 げ る こ と が で き ま す 。ま た 、手 軽 に 美 味 し く 栄 養 を 補 給 で き る栄養補助食品も上手に取り入れましょう。 ①とろみ調整食品とは 液 体 や 食 物 に と ろ み を つ け る た め の 添 加 物 。従 来 か ら あ る 片 栗 粉 な ど は 、水 に 溶 か し て 材 料 と 一 緒 に 加 熱 す る の で 時 間 を 要 し ま す が 、と ろ み 調 整 食 品 は 混 ぜ る だ け で と ろ み を つ け ら れ ま す 。今 で は 調 剤 薬 局 や ド ラ ッ グ ス ト ア 、介 護 用 品 店 、あ る い は 通 信 販 売 を 利 用 し て 手 軽 に 入 手 す る こ と が で き ま す 。 食 べ る ・ 飲 み 込 む 力 に よ り 、と ろ み の 程 度 ( 粘 度 ) は 異 な り ま す 。と ろ み 調 整 食 品 の 使 用 量 を 調 整 し て 、適 切 な と ろ み を つ け ま し ょ う 。( と ろ み の 調 整 方 法 10~ 11 ペ ー ジ 参 照 ) ②栄養補助食品とは 嚥 下 障 害 用 に 嚥 下 食 と し て の 特 性( ゼ リ ー 状 、ム ー ス 状 、と ろ み タ イ プ な ど )を 備 え た も の や 、エ ネ ル ギ ー 量 や た ん ぱ く 質 、微 量 元 素 な ど を 補うための食品があります。調剤薬局、ドラッグストア、介護用品店、 通 信 販 売 等 で 購 入 が で き ま す 。費 用 が か か る の で 、手 作 り す る も の と う まく組み合わせて利用してみてください。 ま た 、栄 養 補 助 食 品 を 選 ぶ 際 に は 、下 記 対 応 表 を 参 考 に 適 切 な 食 形 態 の製品を選びましょう。 < 学 会 分 類 2013 と 他 分 類 の 対 応 >. - 12 -.
(22) 栄養補助食品等の情報入手、購入方法 栄養補助食品の情報入手方法、購入方法には様々な手段があります。 し か し な が ら 多種 多 様 な 栄 養 補 助 食品 が 販 売 さ れ て お り、ご 自 身 あ る い はご家族、入所者に合った食品を選択するのは困難な場合があります。 困 っ た 場 合 は、身 近 な 医 療・福 祉 職 の 専 門 職 に 相 談 さ れる こ と を お 勧 め します。 < 栄 養 補 助 食 品の 情 報 入 手 方 法 > 情 報 の 入 手 方 法に は 以 下 の 方 法 が あり ま す 。 ① 身 近 な 管 理 栄 養士 、 看 護 師 な ど に 相談 す る 。 ⇒ 身 近 に 相 談 相手 が 居 な い 場 合 は、 「 新潟 市 保 健 所」に 電 話 相 談 す る 。 ② 近 所 の 調 剤 薬 局/ ド ラ ッ ク ス ト ア に相 談 す る 。 ③ 栄 養 補 助 食 品 メー カ ー に 問 い 合 わ せる 。 ⇒ メ ー カ ー ホ ーム ペ ー ジ を 閲 覧 す る。 / コ ー ル セ ン タ ー へ 電 話 す る 。 < 栄 養 補 助 食 品の 購 入 方 法 > 購 入 方 法 に は 以下 の 方 法 が あ り ま す。 ① 近 所 の 調 剤 薬 局/ ド ラ ッ グ ス ト ア にて 購 入 す る 。 ② イ ン タ ー ネ ッ トか ら 購 入 す る ⇒ 『 ア マ ゾ ン』『 楽 天 』 な ど の サ イト を 閲 覧 し 注 文 す る。 ③ 栄 養 補 助 食 品 を扱 う 食 品 メ ー カ ー から 購 入 す る ⇒ メ ー カ ー ホ ーム ペ ー ジ か ら 注 文 する 。/ コ ー ル セ ン ター で 電 話 注 文 す る 。 / メ ー カー 総 合 カ タ ロ グ か ら宅 配 は が き に て 注 文す る 。 参 考 ま で に、栄 養 補 助 食 品 メ ー カ ーの ホ ー ム ペ ー ジ ア ドレ ス 、コ ー ル セ ン タ ー 番 号 を 記載 し ま す 。 ① 株 式 会 社 ク リ ニコ HP:http://www.clinico.co.jp/ec/ コ ー ル セ ン タ ー: 0120- 52- 0050 ( 平 日 9:00~17: 30、 土 ・ 日 ・ 祝日 除 く ) ② テルモ株式会社 HP:http://www.e-terumo.jp/ コ ー ル セ ン タ ー: 0120-563- 255 ( 月 ~金 8:00~19:00/ 土 9: 00~ 17: 00、 日 ・ 祝 日 除 く ). - 13 -.
(23) 6.食事の姿勢と食具 食事における適切な姿勢調整は、増加している摂食嚥下障害のある人々の、口 から食べる社会的、心理的、身体的な欲求を満たすケア技術のひとつです。食事 動作が安全で且つスムーズに行えるよう食具の知識も併せて必要となります。 食事の姿勢について ①頚部屈曲位の姿勢(図1) 頚部を前屈位にすると咽頭から気管への角度がつき、食道に食べ物が流れ込み やすくなります(誤嚥しにくくなる) 。反対に、頚部伸展位では咽頭から気管の 角度が直線となり、食べ物が気管に入り込みやすくなります(誤嚥しやすくな る)。屈曲角度は、顎と前胸部の間に横指3~4本入るスペースが目安となりま す。 ②椅子、車椅子座位(図2) 横から見ると、両足底が床にしっかり着き、股関節、膝関節、足関節が約 90 度となるように設定するのが望ましい。骨盤や背が後方に倒れていると頚部が 伸展し、誤嚥しやすくなるため注意が必要です。 ③リクライニング姿勢(図3) 重力を利用し、咽頭へ食塊を送り込みやすくできます。また、気管が食道の上 になるため、誤嚥を予防する効果も期待できます。重症度に応じて、30 度、45 度、60 度で角度が選択されることが多いです。自力摂取をする場合は、45 度 以上の角度が必要となります。基本的にはリクライニング角度が低いほど易し い食形態を選択します。また、リクライニング角度とともに、頚部屈曲の姿勢 が重要となります。 食具について(図4) 一口量の調整が困難な場合や筋力低下、上肢機能に障害がある場合など、対象者 の状態に応じた用具の選択が必要となります。今回はその一部を掲載しました。. ×. 角度が直線. 食道 気管. ○. 3~4横指くらいの スペース. 図1 頚部屈曲位 - 14 -. 屈曲により角 度がつく. 食道 気管.
(24) 身体の下方へのズレに注意する! 座面の高さは、 膝が 90 度に曲 がるくらい. あごは引き気味 テーブルの高さは 腕を乗せて、肘が 90 度に曲がるくら い. 足底は床に きちんと着 く高さ. 図2 座位姿勢. ①. ②. ク ッショ ンなど を使 い、上肢、体幹の安定 性を高める。. 足底を密着させ安定 を図る. 頭が反らないように、枕やクッ ションで調整する。. ベッド可動部と膝の位置が合 っていない場合、クッションな どで調整する。. 図3 リクライニング姿勢 ③. ①長柄スプーン:柄が長いものは、介助や自力摂取がしや すくなる。スプーンの皿状部分(ボウル)が薄く小さいと、 取り込みやすく、一口量の調整も行いやすくなる。 ②曲がりスプーン:口元へ食物を運びやすい。 ③太柄スプーン:握力の弱さや指の可動域制限を補い、把 持しやすくなる。 飲みやすいコップ:鼻にあたる部分がU字型にカットさ れていることで、頚部を伸展せずに飲むことができる。手 指の筋力が弱い人は、カップが持ちやすいように持ち手が ついていると便利。. すくいやすい皿:スプーンを縁に当ててすくいやすくする ため、皿の縁が高く、内側へ弯曲している。皿にしきりが 付いているものもある。 食器を固定できない場合、滑り止めマットがあると良い。 図4 食具 参考文献 1)迫田綾子:図解 ナース必携 誤嚥を防ぐポジショニングと食事のケア 食 事のはじまりからおわりまで,三輪書店,p.6-9, p.40-45, p.54-55,p.163-166, 2014 2)聖隷嚥下チーム著:嚥下障害ポケットマニュアル,第 3 版,医歯薬出版, p.112-113,p.124-125,p.166-169,2012 3)ヘルシーネットワーク HP [http://www.healthynetwork.co.jp/] - 15 -.
(25) 7.A D L 評 価 ADL と は 日 常 生活 活 動 : Activities of Daily Living の 略 称 で す 。 ひ と り の 人 間 が独 立 し て 生 活 す る ため に 行 う 、基 本 的 で 毎 日 繰 り 返 さ れ る一連の身体的動作群のことです。主に、食事、排泄、整容(歯磨き、 洗面など)、更衣、移動、入浴などの基本的な身体動作や行為のことです。 1) 意 義 低 栄 養は ADL に 悪 影 響 を 与 え 、栄 養 状 態 の 改 善は ADL を 向 上 す る こ と も 報 告 さ れ てい ま す 。ADL の 状 態 を 把 握 す る こ と は 、栄 養 療 法 の 効 果 判 定 に も 有 用 です 。 2) 評 価 方 法 簡 便 な 方 法 とし て 、 Barthel Index が あ り ま す (表 1)。 a) 評 価 す る 動 作 項 目 以 下 の 10 項 目 を 評 価 し ま す 。 ① 食 事 、 ② 椅 子と ベ ッ ド 間 の 異 常 、③ 整 容 、 ④ ト イ レ 動作 、 ⑤ 入 浴 、 ⑥ 移 動、 ⑦ 階 段 昇 降 、 ⑧ 更衣 、 ⑨ 排 便 自 制 、 ⑩排 尿 自 制 b) 採 点 方 法 ・ 総 得 点は 100 点 。 ・各 項 目 は、 「 自 立」・「部 分 介 助 」・「 全 介 助 ま た は 不 能 」の 3 段 階 で 評 価します。 ・ 採 点 は 、 項 目に よ っ て 異 なり 0、 5、 10、15 点 と 、 そ れ ぞ れ 5 点 刻 み で 採 点 し ま す。. - 16 -.
(26) (表1). 参考文献 1 ) リ ハ ビ リ テー シ ョ ン 医 学 会 : ADL 評 価 に つ い て.リ ハ 医 学, 13:315,1976 を 参 考 と し た . 2 ) 八 並 光 信 :バ ー セ ル イ ン デ ッ クス .PTジ ャ ー ナ ル ,39: 2,p165,2005 を 参 考 と し た. 3 ) 若 林 秀 隆 :リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン栄 養 ポ ケ ッ ト ガ イ ド, p1, 2015 4 ) バ ー セ ル イン デ ッ ク ス ( Barthel Index; 機 能 的 評 価 ) www.crsu.org/chears/pdf/65situmonnsi.pdf. - 17 -.
(27) 8.口腔機能の評価と口腔ケア 口 腔 は 食 べ る・呼 吸 と い う 生 命 維 持 や 、会 話 や 表 情 な ど コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 行 う た め の 重 要 な 器 官 で す 。口 腔 の 機 能 を 保 つ こ と は 、健 康 で 楽しい生活を送るための基礎となります。 【口腔の各部位の名称】. 【機能低下の所見】 1、衛生 ・食物の残渣が歯の外側や上あごに残っている ・口臭が強い ・入れ歯が汚れてヌルヌルしている 2、歯ぐき・頬粘膜 ・粘膜が乾燥してペタペタ・カサカサする ・赤み、腫れ、膿が見られる 3、舌 ・表面に厚く白い汚れや口内炎がみられる ・動きが悪い、左右差がみられる 4、咬み合わせ ・奥歯の咬み合わせが両方にない ・歯の本数が少ないが入れ歯を使っていない 5、歯科疾患 ・ 虫 歯 ( う 蝕 ): 歯 が 黒 く な っ て お り 、 穴 が 開 い て い る ・歯周病:歯を触ると揺れたり、歯ぐきが赤く腫れている. - 18 -.
(28) 口 腔 ケ ア は 歯 のブ ラ ッ シ ン グ( 歯 磨 き )だ け で な く 、舌 苔( 舌 上 の 汚 れ )や頬 粘 膜 、口 蓋 、舌 下な ど 口 腔 内 全 体 の ケ ア を 指 し、口 腔 保 清、 口 腔 機 能 維 持 向 上を 目 的 と し て い ま す。 口 腔 ケ ア を 実 施す る た め に は 口 腔 ケア 用 品 の 名 称( 図1 )や 用 途 に つ い て 知 っ て お く必 要 が あ り ま す。ま た 口 腔 ケ ア の 実 施 には 、口 腔 状 況 や 嚥 下 機 能 の 他、姿 勢 の 保 持 や 意 思 疎通 の 可 否 、認 知 症や 呼 吸 器・脳 血 管 疾 患 の 有 無、協 力 度 な ど の 状 態 か ら総 合 的 に 判 断 し 適 切な 用 品 を 選 択 し ま し ょ う 。 含 嗽( う が い ) 不 可 の 場合 は 清 拭 ( 拭 き 取 り) を し ま す 。 口 腔 ケ ア の 手 順を( 表 1 )に 示 しま す 。義 歯 は 歯 ブ ラ シや 義 歯 用 ブ ラ シ を 用 い て 流 水下 で 表 面 、内 側、ば ね ま で し っ か り 磨 き、使 用 し な い 時 は 水 中 保 管 し ます 。 ケ ア 方 法 の 詳 細は こ ち ら を 参 考 に して く だ さ い 。 新 潟 大 学 要介 護 者 口 腔 ケ ア ネ ット ワ ー ク http://www.dent.niigata-u.ac.jp/oral-care/ 図1. 口 腔 ケ ア用 品. 表1 順. 序. 目. 的. 使用用品. ①粘膜の保護. 口 唇 口 角 の ひ び割 れ 保 護. ①②③. ②義歯を外す. 義歯の清掃. ⑥⑭. ③ 含 嗽 or 清拭. 食 渣 ( 食 べ か す) な ど の 排 出. ⑤⑪⑫⑬. ④乾燥部の保湿. 乾 燥 緩 和、剥 離 上 皮 を 浮 か せ る. ②③⑤. ⑤ブラッシング. 歯 面 、 歯 間 部 の汚 れ 除 去. ④⑥⑦⑧⑨. ⑥粘膜清掃. 乾 燥 汚 れ 、 剥 離上 皮 の 除 去. ④⑤⑥⑪. ⑦ 含 嗽 or 清拭. 口 腔 内 細 菌 な どの 排 出. ④⑤⑪⑫⑬. ⑧粘膜保湿. 口 唇 口 腔 粘 膜 の保 湿. ①②③. - 19 -.
(29) 9.薬の種類、薬と食事の関連 薬の形を剤形といいます。剤形は素錠、カプセル、顆粒など様々なものがあ り、薬の成分が効果的に働くよう作られています。また服用しやすいように工 夫された薬もあります。服用しにくい場合は、かかりつけ医・薬剤師に相談し て別の剤形に変更してもらうようにしましょう。 種. 類. 特. 徴. 徐放錠. 少しずつ溶けていくことで、長時間薬の効果が持続します。 服用回数を減らすことが出来ます。. 口腔内崩壊錠 (OD 錠). 水なしで服用できる錠剤で、唾液によって錠剤が崩壊しま す。D 錠とよばれる剤形もあります。D 錠とは、「速崩錠」 といい、少量の水で服用します。. チュアブル錠. 噛み砕いて服用する薬です。. 舌下錠. 舌の下に入れ、唾液で溶かす薬です。急速に吸収され、他 の飲み薬より早く効果が発現します。. 腸溶錠. 胃で溶けず腸で溶けるように設計された薬です。胃酸で効 果が弱くなる薬や、胃を強く刺激する薬に使用されます。. <簡易懸濁法> 簡易懸濁法とは、錠剤やカプセルを粉砕・開封せず、そのまま温湯に入れ崩壊 懸濁させることです。主に経管栄養を施行されている患者様に使用しますが、 嚥下障害のある患者様にも有用です。薬よっては簡易懸濁法に適さないものが あるので、薬剤師に確認してください。. 1回分服用量の 薬をカップに入 れる. およそ55℃の 温湯20mLを 入れよくかき混 ぜる. 10分間静置する 必要により、とろ (写真:10分後) み剤を付加する. - 20 -.
(30) <食事による薬剤への影響について> 薬には「薬-薬」、「薬-食物」の間で相互作用、いわゆる飲み合わせというも のがあります。服用した薬がした想定した効果より減弱したり、逆に増強して 副作用が発現することがあり、注意が必要です。 食. 品. 薬. 飲み合わせによる弊害. アルコール. 抗不安薬・睡眠薬. グレープフル ーツジュース. 降圧薬(カルシウム拮抗薬) 抗てんかん薬 脂質異常症治療薬. 納豆. 抗凝固薬(ワルファリンカリウム) 薬剤の作用減弱. クロレラ. 抗うつ薬. 薬剤の副作用増強 薬剤の作用増強. 緑黄色野菜. 牛乳 ミネラ ル含有食品. 甲状腺疾患治療薬 骨粗鬆症治療薬. カフェイン. テオフィリン製剤. 抗生物質. 薬剤の作用減弱 薬剤の副作用増強. <薬が及ぼす食事への影響について> 薬の中には味覚異常や、口渇などの副作用があり、食事摂取に影響を与えるも のがあります。新しい薬を飲み始めた際や、増量した場合に注意が必要です。 気づいたことがあれば、かかりつけの医師、薬剤師に相談して下さい。 症. 状. 薬. 味覚異常. 降圧薬(ACE阻害薬)抗がん剤 利尿薬 など. 口渇. 抗コリン薬. 歯茎が腫れる. 降圧薬(カルシウム拮抗薬). 入れ歯が合わない. 抗てんかん薬. 飲み込めない むせる. 抗コリン薬 抗精神病薬 筋弛緩薬 など. 胃が痛い. ステロイド薬. 抗うつ薬. 利尿薬. 抗甲状腺薬. など. など. 解熱鎮痛薬. - 21 -. など.
(31) 10.摂食嚥下評価・嚥下訓練について 嚥下機能の低下は加齢、歯の欠損、噛む力や嚥下に必要な筋力が低下するこ とによっておこります。嚥下障害になると誤嚥の危険性が増すだけではなく、 栄養不足や脱水症になる可能性もあります。嚥下機能は体調など日々の状態に よって変化します。安全に楽しく食べるために、嚥下評価、機能維持・改善の ための嚥下訓練を行う事が大切です。 1.摂食嚥下評価 1. 認知機能. ・意識レベルは清明か ・意思疎通や従命は可能か ・食事への意欲はあるか. 2. 食 事. ・飲食中のむせはあるか、どのような種類の食品でむせるのか ・食事の前半でむせるか、後半でむせるか ・口腔内に残留していないか ・流延はないか. 3. 頚 部. ・頚部が後屈していないか. 4. 口腔状況. ・歯(義歯を含む)はそろっているか. 5. 口腔・ 咽頭機能. ・口はしっかり開けたり閉じたりすることができるか ・食物の咀嚼は十分にできているか ・舌を動かすことができるか. ・衛生状態は保たれているか. 6. 発声・構音 ・食べた後、声がゴロゴロ湿り気のある声になっていないか ・鼻にかかったような声になっていないか 7. 呼吸機能. ・痰はからんでいないか ・咳をする力は十分にあるか. 【スクリーニング検査】 ※資料①参照 ・反復唾液嚥下テスト(RSST)-30 秒間の間に何回、唾液を飲み込むことがで きるかをみる。3回未満であれば問題あり。(図 1) ・改定水飲みテスト(MWST)-シリンジ(またはスプーン)で冷水3mlを飲 ませる嚥下があるか、むせはないか、湿声はないかを確認。(図 2) 口腔内に水を 入れる際に咽 頭に直接流れ 込むのを防ぐ ため、舌背に は注がず、必 ず口腔底に水 を入れてから 嚥下してもら う. (図 1). (図 2) - 22 -.
(32) 2.食事形態の選択 ※資料②参照 <食事中の観察のポイント> ・食べる量が少なくなっていないか ・しっかり噛むことができているか ・舌でつぶせているか ・むせはないか 上記のポイントを参考に、飲み込みに問題のある方や食事について悩みがあ る方は、資料②を参照し適切な食事形態を選択してください。 3.嚥下訓練. ※資料③参照. Ⅰ. 基礎訓練 (間接訓練)食物を用いない訓練 Ⅱ. 基礎訓練 および摂食訓練. Ⅲ. 摂食訓練 (直接訓練)食物を用いた訓練. ・嚥下体操 ※参考資料④参照 ・アイスマッサージ ・歯肉マッサージ. …など. ・氷なめ ・息こらえ嚥下 ・顎突出法 ・咳嗽訓練 ・K-point 刺激. …など. ・嚥下の意識化 ・頚部回旋(横向き嚥下) ・交互嚥下 ・食品調整 ・一口量の調整 ・体幹角度調整 ・健側傾斜姿勢(健側を下にした側屈位 または傾斜姿勢) ・複数回嚥下 …など. <参考資料ホームページ> 資料① 摂食嚥下障害の評価【簡易版】2015 http://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/18-1-p55-89.pdf 資料②「スマイルケア食」 http://www.maff.go.jp/j/shokusan/seizo/kaigo.html 資料③「訓練法のまとめ(2014 版)日本摂食・嚥下リハビリテーション学会」 http://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/18-1-p55-89.pdf 資料④「藤島式嚥下体操セット」 浜松市リハビリテーション病院ホームページより参照 http://www.hriha.jp/section/swallowing/gymnastics/. - 23 -.
(33) 2016年度勇美記念財団助成研究. 「在宅高齢者に対する食事療養支援を目的とした 多職種共通教育プログラムの開発」 2017年 6 月. 発 行. 研究代表者. 新潟医療福祉大学 健康科学部. 永井. 徹. 共同研究者. 齋藤 泰晴 坂井 邦彦 椿 淳裕. 研究協力. 新潟高齢者の栄養と摂食を支える会(e3). みどり病院 新潟臨港病院 新潟医療福祉大学. 堂井 真理、石月公美子、坂井麻由美、鈴木. 朋美、. 高橋. 忍、庭山. 孝子、. 内藤. 舞、遠藤沙保里、熊倉. 渡辺 美幸、吉原. 雅幸、吉田可奈子、藤田. 里美、長谷川雄司、. 喬、武田. 安永、小林. 千穂、. 池田 則子、小池由起江、笠原. 純子、北林. 紘、. 高橋 洋平、田宮. 亘、坂井沙耶花、高橋. 昌裕、. 岩森. 紅、澤田. 大、米山. 周矢.
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