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在宅医療事業者の大型化の事例研究

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Academic year: 2021

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(1)公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 2015年度(後期)一般公募 「在宅医療研究への助成」完了報告書. 「在宅医療事業者の大型化の事例研究」. 申請者:白木秀典 所属機関:保健医療経営大学 保健医療経営学部 共同研究者:折笠 勉 所属機関:千葉商科大学 経済研究所. 提出年月日:2017 年 4 月 28 日.

(2) 目次 第 1 章 序論 .......................................................................................................................... 1 1.研究の背景 - 在宅医療事業者をめぐる経営環境 ................................................... 1 2.研究の目的 .................................................................................................................... 1 3.研究の方法 .................................................................................................................... 2 4.倫理規定 ........................................................................................................................ 2 第 2 章 在宅療養支援診療所 ................................................................................................ 3 1.インタビューの結果—4つのタイプ .............................................................................. 3 2.考察 ............................................................................................................................... 3 2-1 大型の機能強化型の在宅療養支援診療所 ............................................................ 3 2-2 在宅医療を行う診療所にとっての外来と訪問診療 ............................................. 4 2-3 東京都の大型在宅診療所 ..................................................................................... 6 2-4 大規模の意味 ....................................................................................................... 9 2-5 大型・在宅専門診療所とかかりつけ医 .............................................................. 11 3.小括 ............................................................................................................................. 13 第 3 章 訪問看護ステーション ........................................................................................... 14 1.インタビューの結果 .................................................................................................... 14 1-1 重症患者ケアモデル........................................................................................... 14 1-2 訪問リハビリテ―ション(以下訪問リハと呼ぶ)重視モデル ......................... 15 2.考察 ............................................................................................................................. 15 2-1 2 つのモデルの特色 ........................................................................................... 15 2-2 先行調査からみた経営モデルの要点 ................................................................. 16 3.小括 ............................................................................................................................. 18 第 4 章 おわりに................................................................................................................. 19 1.本報告書のまとめ ....................................................................................................... 19 2.今後の研究の展開 ....................................................................................................... 19 3.謝辞 ............................................................................................................................. 19 4.感想 ............................................................................................................................. 19 第 5 章 巻末資料................................................................................................................. 20 参考文献 ............................................................................................................................... 21. i.

(3) 第1章. 序論. 1.研究の背景 - 在宅医療事業者をめぐる経営環境 地域包括ケアシステムにとって在宅医療の果たす役割は極めて大きい。その担い手であ る在宅療養支援診療所は、厚労省は 2006 年の制度創設以来「量の確保」をめざし、新規参 入を促す誘導策をとってきたが、伸び悩んでおり、2015 年(平成 27 年)7 月にはその診療 所の数は対前年で減少1するまでに至っている。そのかわり在宅療養支援病院が増えたとは いえ、診療報酬が 2014 年度の改定でいわゆる同一建物への訪問の大幅減算があった影響と 考えられる。これは現在の在宅医療が「質」の時代に移りつつあることを示し、事実 2016 年度の改定では患者の重症度に応じた点数づけの創設が行われた。 かたや在宅療養支援診療所の届け出を出していない診療所による在宅医療サービス(訪 問診療や往診)の割合は、訪問診療に至ってはそのサービス全体の 52%を占めているので あるが、 「かかりつけ医」的に外来の時代から続いている患者を引き続き可能な限り診療し ていると思われ、診療所当たりの患者数は少ない。そこでこの届け出を出していない診療 所による在宅医療を支援する必要性については、以前から議論されてきたことである。ま た、経営形態に大きな影響を与える変更としては、2012 年度(平成 24 年度)改定の機能 強化型、2016 年度改定の在宅専門診療所の創設である。これも大型化を促しながら、看取 りの件数などの「質」の確保が一層強化される方向にある。 これらを別の形でみれば、初期の導入期にみられたような、在宅医療の担い手への収益 のインセンティブが次第に減少しつつあり、経営が難しくなってきたことを意味する。 一方訪問看護ステーションは、付加価値構造が診療所とは異なり、人件費率が高いので、 元々しっかりとした経営管理能力が必要とされていたが、多くは人材不足に悩んでいる状 況である。事業構造からいって収益性の点で有利とされる機能強化型の大型の事業所は株 式会社に多くみられるが、まだまだ数の上では少ない。 これまで、こうした事業者の調査については、看取り件数や往診の件数など、診療報酬 に直結する一項目ごとの比率を分析することはあったが、事業の成り立ちについての構造 的な研究は少ないので、外部の者には実際の個々の事業者がどのような経営をしているの かを理解することはむずかしい。 2.研究の目的 この研究の目的は、在宅医療の担い手である在宅療養支援診療所と訪問看護ステーショ ン(訪問リハビリを含む)に対して焦点をあて、大型化によって成長している事業構造を 分析することにある。とりわけインタビュー調査によりその特色を把握し、タイプわけす ることで、その事業の優位性の仮説を明らかにすることを目的としている。 そもそも、どの事業者も在宅事業の創業ののちに、大型化に至るまでには、事業目的を 達成するための各々の戦略をもって事業者としてヒト、モノ、カネの的確な投資を行って きており、実際にどのように調達し、どこに重点を置いて成長してきたかは、経営戦略的 に重要な要素である。と同時に、内部要因だけでなく、患者(利用者)あるいは紹介者の 支持がなければ、事業が成り立たないわけで、対象となる患者(利用者)の診療圏の大き. 1. 中央社会保険医療協議会(中医協) 「在宅医療(その1) 」平成 29 年 1 月 11 日、p27 1.

(4) さや密集度、医療依存度や年齢帯、そして地域の競合先の状況も、この戦略に影響を与え てきたはずである。 さらに大型化の実現のためには、もっとも難しいと考えられる医師・看護師をはじめと する医療技術者の獲得が不可欠である。この点については、給与などの待遇面よりも、い わゆる「働きやすさ」の要因が大きいとされている。それは具体的にはどのようなことを 示し、事業構造の構築にどのように影響を与えているのかも重要な点である。 これらの要素に注意を払いながら、様々な在宅医療のタイプ別の事業の構造を整理し、 その特色を浮き彫りにすることで、今後持続的に在宅医療に取り組むための経営の要諦の 仮説を事業毎に明らかにしてゆくことが、この研究の目的である。この研究は仮説構築の 段階までであり、次にそれを検証するための大規模な調査へ進む準備と位置付けている。 3.研究の方法 本研究で中心となる方法は、医療機関に対する事業内容についてのインタビュー調査で ある。今回研究対象とした診療所については、首都圏の機能強化型で報告者のネットワー クの中において、インタビューの許諾を得られたところとした。機能強化型の場合、施設 基準として常勤医師 3 人以上があり、それを単独で満たす単独型と連携する複数の診療所 で満たす連携型があるが、今回の研究では連携型の機能強化型の診療所を対象とした。 一方訪問看護ステーションとしては、常勤の看護師 10 人以上、複数の拠点を持つ事業 所とし、同様にインタビューの許諾を得られたところとした。実際にインタビューした所 は下記であるが、この報告書では対象を特定できるような詳細な記述は控えている。 ・機能強化型在宅療養支援診療所:4件 ・訪問看護ステーション:4件 ・在宅医療のための医師の紹介会社:1 件 ・訪問看護ステーション経営のコンサルティング会社:1 件 また本研究では業界の現状把握、あるいは論旨の組み立てをサポートする統計資料とし て、在宅診療所については中央社会保険医療協議会総会(中医協)の在宅医療についての 資料(2015 ,17)、および日本医師会の総合政策研究機構によるワーキングペーパーの、かか りつけ医と在宅医療に関する調査資料(日医総研:2017)を参考にした。さらに東京都に絞っ て、週刊朝日のまとめによる関東甲信越厚生局への届け出の開示情報の報告記事(杉村健: 2013)を参考資料とした。さらに、訪問看護ステーションについては、中医協の資料の他、 介護事業経営実態調査(2014)や全国訪問看護事業協会の調査(2014)を参考とした。 なお当初の計画では「東西の比較研究」を行う予定であったが、今回は違いの分析を行 うまでに至っておらず、首都圏の診療所と訪問看護ステーションのみを研究とした。 4.倫理規定 報告者の所属する保健医療経営大学の倫理審査委員会に対し審議を依頼した所、審査の 結果、本研究は当大学の倫理規定上審査「非該当」であり、 「審査の必要なし」との回答を 得た。. 2.

(5) 第2章. 在宅療養支援診療所. 1.インタビューの結果—4つのタイプ 今回のインタビュー先の概要を以下にタイプ別に記述する。いずれも大型の機能強化型 であり、月間患者数は 400 件以上である。別途巻末の比較一覧表にまとめている。 A がん末期患者中心タイプ 在宅療養支援診療所制度が開始される以前の 2001 年から、在宅医療に特化してきた診 療所。都内に複数の拠点を持っていたが、近年はそれらを集約して外来診療も開始し ている。大学病院等から紹介を受けたがんの末期患者が多く、平均の患者数は約 450 件で、年間の看取りは約 200 件。常勤医師は 5 人。夜間の往診のために、非常勤での チームを独自に組織している。訪問看護ステーションは併設していない。医師会の会 員である。 B 大規模広域在宅専門タイプ 2006 年に在宅医療を専門に起業した診療所で始めから広域のネットワーク構築を計画 し、現在は都内と近県に 9 か所の拠点を構え、広く首都圏をカバーできる体制を整え ている。常勤医は 26 人を数え、在宅の患者数は約 2000 件、年間の看取りは約 400 件。 このうち特定施設への訪問診療も約 40%行っている。夜間のための往診当直体制を自 社で首都圏に複数持って広く対応できるようにしている。この往診体制を他の医療機 関に契約によって提供し始めており、独自に開発したクラウド型電子カルテによって 診療情報を共有している。医師、看護師以外に医療技術者集団を準備してより専門的 な医療も提供できる体制を整えつつある。訪問看護ステーションを併設している。医 師会の会員である。 C かかりつけ医の在宅医療タイプ 1994 年に開業し、現在は都下を中心に 11 つのクリニックで大型の外来グループ診療 を行っている。そのうち本院を含む 3 拠点で在宅医療を行っている。開業当初から往 診を開業医の責務として重視しており、在宅医療はかかりつけ医の延長線にあると位 置付けている。全体では 14 人だが本院の在宅部門の常勤医は 6 人で平均の患者数は約 2000 件、年間の看取り件数は約 50 件である。夜間は専門のチームではなく、当番制 で行っている。医師会に入会している。訪問看護ステーションを併設している。 D 混合タイプ 2007 年の開業以来、外来と訪問診療の両輪で診療を行ってきた。在宅の診療所は 2 つ あるが離れており、連携による機能強化型となっている。常勤医が合計 5 名で診療に あたっており、法人としての平均の患者数は約 400 件、年間の看取り件数は約 50 件で ある。特定施設への訪問診療も含んでいる。夜間専門の往診チームを組織しておらず、 当番制。院長自ら往診にあたることも多い。訪問看護ステーションを併設。医師会に は入会していない。 2.考察 2-1 大型の機能強化型の在宅療養支援診療所. 3.

(6) 中医協の調査2によると、日本全体の診療所(ナショナルデータべースを元とした場合で あり、N=76,234)では約7割が訪問診療を行っていない。訪問診療を行っている残りの 3 割を全体(100%)としてみると、過半数(57%)は患者数が 1 件~10 件にすぎず、11 件 ~50 件まで(31%)を加えると、88%にも達する。これらは外来医療を中心に行い、かか りつけ医として以前は外来で診ていた患者が次第に外出できなくなった、などの特定の患 者に対して訪問診療を行っているものと考えられる。一方でその上の 51 件~100 件が 7%、 101 件以上は 5%となっている。このように診療所全体でみると訪問診療の患者を 101 件以 上もつ割合は 2%(5%x3 割)にもみたない。 そこで在宅療養支援診療所(在支診)だけでみると、同じく中医協の資料では、図表 1 にみられるように 10 件を超えると 100 件までは徐々にグループ毎の構成比は減ってくる一 方で、80 件以上になるとまた増えて3おり、100 件以上は約 10%に達する。今回の研究の対 象は機能強型の在宅療養支援診療所であり、すべてこの 100 件以上のグループである。. 図表 1. 2-2 在宅医療を行う診療所にとっての外来と訪問診療 診療を訪問診療と外来の構成比に分けた場合、通常は訪問件数が少ない診療所は外来の 比率が高く、多い所は外来の比率が低くなる。再びナショナルデータベースの調査による と、全国の診療所の 93%は、全レセプト件数にしめる訪問診療の比率が 5%以下(ゼロを含 2 3. 中医協総会資料「在宅医療(その3)」平成 27 年 10 月 7 日 前掲の中医協総会資料「在宅医療(その1) 」平成 29 年 1 月 11 日、p27 4.

(7) む)とごく少ない比率を示している。次の 5%~25%までが全体の 5%と一定数を占めてい る。一方で 75%を超える場合は 1%にすぎない。 (平成 28 年度改定で在宅専門診療所が認め られ、これは外来との合計比率のうちで 95%以上が在宅患者という基準である。)今回研究 の対象とした診療所で外来と在宅医療の比率をみると以下のようであった。 ① 外来を行っていない、在宅専門の診療所➡1 か所 ② 外来と並行して診療を行っているが外来の方が多い。(外来が 95%以上)➡1か所 ③ 外来と並行して診療、在宅患者の比率の方が高い。 (在宅が 50%以上)➡2 か所 図表 2. 例えば図表2では都道府県別に訪問患者の件数の大小の構成比を患者数のグループ毎に 示しているが、101 件以上の患者をもつ診療所は東京、神奈川など大人口エリアである。 一方で図表 3 のように前掲の日医総研の全国での調査(2016 年 11 月実施、N=1486) をみると、在宅医療を行っている診療所は、ほとんどが外来中心で、在宅専門はわずかに 0.3%、訪問診療中心で外来も行っている所でさえ 1.1%に過ぎない。これは医師会の会員に 対する調査であり、 「在宅医療をかかりつけ医機能の延長である」ととらえた場合のデータ である、といえよう。首都圏における在宅医療は、 「かかりつけ医の延長」とは別の機能を もっている比率が高いのでは、と思われる。. 5.

(8) 図表 3. 2-3 東京都の大型在宅診療所 首都圏に大規模な在宅医療サービス(訪問診療と往診)を行う診療所が多く存在する理 由はその市場規模であろうことは想像にかたくない。図表2をみても東京都は突出してい るし、さらに大都市圏ではこれからも市場の拡大が急速に進むといわれている。 特に機能強化型については、平成 26 年度の同一建物に対する減算前のデータであるが、 図表 4 のように厚生局へ報告の開示資料を基にすると、診療所一件当たりの患者数の平均 は約 200 件であり、大規模な所は図表 5 のように 500 件、1000 件も珍しくなかったのであ る。その後の訪問診療の伸びや、平成 26 年度の特定施設への在総管の伸び4をみても現在で も大きく減っているとは思えない。そこで訪問診療先の分類には診療報酬の区分に従うと、 在宅(居宅、個人宅)と(特定)施設があり、200 件以上の大型の場合は、施設に対する訪 問診療が多く含まれる、と想定される。 今回の調査対象の機能強化型の在宅診療所は、400~500 件が 2 件、2000 件以上が 2 件 である。1000 件を超える患者を抱える場合は拠点が複数あり、かつ施設の割合がある程度 含まれると想定される。 施設について、診療報酬の基準に基づいた同一建物という表現を用いるとすると、中医 協の資料によれば、図表 6 のように、平成 26 年度の検証部会調査で、同一建物に対する算 定が 20%未満、すなわち居宅中心のグループ(約 295 件)、と 80%以上のグループ(約 160 件)に 2 分されていることがわかる。. 4. 中医協総会資料「在宅医療(その3) 」平成 27 年 10 月 7 日、p11。 6.

(9) 図表 4. 図表 5. 施設と居宅の患者については、その疾患や治療内容について、中医協で詳しく報告され ているが、簡略にまとめると、施設は症状の軽い患者が多く、一件当たりの時間的な効率. 7.

(10) 性が高く、患者としての(登録)診察期間が長いので、平成 26 年度の大幅な減額の前から、 診療報酬としては低く設定されてきた。一方の居宅の患者は末期のがんなど重症患者が多 く、患者としての診療期間は短いが、往診や看取りも多い。従って診療単価は高くなって いると考えられる。居宅の患者については当然家族による生活上の支援が前提となってい るケースが多い。 そして図表6にみられるように、その顕著な違いは、診療所ごとの患者の数と看取りの 数の逆相関である。居宅中心の場合は、小規模ではあるが、看取りの回数(というよりも 全体に対する比率)が高い。一方、施設中心の場合は、平均患者件数が多いものの、看取 りの比率は低い。 厚労省が在宅医療を推進する理由の一つは、病院ではなく、在宅の看取りを増やすため であったが、初期の診療報酬上の推進策は徒に施設への訪問診療を増加させるだけの結果 をうみ、2014 年度改定における同一建物への訪問診療の大幅減算を生んだ。特にこの「件 数のわりに看取りが少ない」という施設中心の訪問診療の割合は首都圏の大型の在宅療養 支援診療所の一つのパターンである。 図表 6. しかし、施設のみとせずに居宅とミックスの患者層をもっている診療所にとって、施設 の患者を持つ意味は、単なる「症状の軽い患者で効率よく収益を上げる」とは別の意味で 大きいのである。それは、在宅医療の「量の確保」であり、在宅事業の安定化にとって不. 8.

(11) 可欠なものである。この「量の確保」があることによって、24 時間体制の負担を軽減させ たり、診療の効率化のためのシステム作りが可能となる。それは夜間専門の診療チームの 創設であったり、診療補助チームによるアシストを充実させたりすることである。これが 現在の在宅医療にとって規模が必要なことの意味である、と考えられる。 2-4 大規模の意味 2-4-1 休日・夜間の往診専門チーム 前掲の日医総研(2017 年)による(N=1603)と、「在宅医療を実施する上で特に大変 なこと」の上位 3 大理由は「24 時間往診体制を取ること」 「医師自身の体力」 「24 時間連絡 を受けること」であり、いかに在宅診療所にとって 24 時間の負担が大きいかがわかる。と りわけ「かかりつけ医」の担い手である小規模の在宅診療所の場合はなおさらである。 ここで、医師のリクルート会社、在宅事業者のインタビューコメントからこの点に関連 した所を拾ってみたい。 「在宅診療を常勤で希望する医師は少ない。現状は待遇で誘引している。更に 24 時間体 制、特に夜の専門部隊を別途確保していると雇用しやすい。」 (医師のリクルート会社) 「夜間の体制を昼間の訪問診療や外来の担当医師とは別の専門チームで創設したいが、 その体制構築のためには、医師や看護師、往診の支援スタッフの待機料や当直施設の 費用で年 3000 万円くらいの経費がかかる。強化型としてもひとつの医療法人でそれだ けの負担は重いので複数の医療機関と共同でシェアできないかと思っている。現在結 局は自分が夜スマホをもって待機しているケースが多い。自分の所は医師会に入って いないので、医師会が主体となった支援には期待できない。」 (在宅療養支援診療所) 「個人宅の訪問診療には募集してもなかなか医師が集まらない。施設への訪問診療の方 がまだよいが、医師の給与を考えるとうまく(効率よく)やらないと赤字になる。」 (在宅療養支援診療所) 「夜間の専門チームを非常勤で別途待機できるようになって、医師を雇いやすくなり、 辞める人も少なくなった。自分も経営者として余裕ができ、診療する人が固まったの で、非常勤にも教育ができるようになり、診療の質をあげることができた。その結果 患者の満足度もあがり、成長の踊り場を脱して患者数も増えていった。 」 (在宅療養支援診療所) すなわち、在宅医療を医師にとって負担感なく行うためには、休日・夜勤部隊を専門に もつことがもっとも望まれており、その専門部隊を維持するためには、診療所全体の売り 上げ規模がその負担を吸収できるほど大きくないと難しい。これを在宅医療における収入 で賄うためには、施設での患者がボリュームとして不可欠である、というわけである。3000 万円ともいわれるそのコスト(夜間の追う診療を加味した)を在宅患者でまかなうとする と、平均の診療単価にもよるが、200 人~300 人の患者規模が必要であるといわれている。 さらに、その施設での患者を含め在宅医療で効率よく収益をあげるためには、医師は医 療に専念することが得策であり、訪問診療に同行する看護師、運転手兼事務員などのスタ ッフも充実させて必要になってくる。施設との契約を取るためには、営業マンのような働 きをするサポートスタッフも必要であり、おのずと在宅チームが大所帯になっていき、診. 9.

(12) 療所にしては、固定費が増加していく。これが在宅専門でなくても、大型の在宅診療所の 事業構造である。これはいわゆるかかりつけ医が行う、10 件程度の患者しかもたない在宅 医療とは根本的に異なってくる。 そしてこの規模の維持で最も難しいのは、現状では患者の獲得よりも(地域にもよるが 首都圏では)むしろ医師の確保である。そこで次は大型在宅診療所の要件の一つとして、 診療所当たりの医師の数を考察してみたい。 2-4-2 診療所一件当たりの常勤医師の数 前掲の日医総研の調査(2017)では、図表 7 のように強化型の在支診(N=45)の医師 数は常勤換算で 2.0 人である。機能強化型には単独型(在支診 1)と連携型(在支診 2)の 2 つがあり単独型は一つの診療所で常勤医 3 人以上、連携型は連携する診療所内で 3 人以上 である。緊急往診や看取りの実績要件も異なるが、医師の数が決定的に異なる。しかもこ の調査では看護師やそのほかの職員を含めても合計の常勤換算職員は 7.2 人であり、強化型 といってもここではこの研究が東京都で想定しているような大規模なスタッフを抱えるも のではない。これが医師会に所属している医師による「かかりつけ医による在宅医療」の 現在の姿であろう。 一方、今回この研究でのインタビュー先は、機能強化型でも 5 人、場合によっては 10 人 以上の医師を雇用している。これは特殊な例なのであろうか。少し時期が異なるが、東京 都の機能強化型の在支診のみの前掲の報告記事(杉村健:2013 年、厚生局の開示をもとに、 記入無を除くN=367)のデータを参考にしたい。下記の図表 8 のように平均で 4.5 人(常 勤医ベース)となり、医師会の調査の 2.0 人とは大きく異なる。同一建物についての大幅な 減算が導入された 2014 年度改定の前であるので、規模を縮小せざるを得なかった所もある と考えらえる。事実図表1にみられるように、2015 年には連携による強化型の診療所の数 は減少した。ただし首都圏の在宅市場の成長を考えると半分にまで縮小したとは考えられ ないので、ここでは現在も機能強化型の医師数としては同じ傾向といてもよい。 この人数の違いから、多くの常勤医を雇用している機能強化型診療所は、医師会への加 入率が低く、在宅専門あるいは外来より在宅の比重がかなり高い診療所なのではないか、 と推定される。 医師の数は、まず第一に患者数を反映している。図表 5 にあるように、厚生局のデータ からは、東京都の機能強化型の診療所の平均患者数は約 200 人であるが、医師会の調査 を 基にすると、機能強化型の場合は医師一人当たりの患者が 36.4 人であり、施設当たりの医 師が 2.0 人なので、ここから推定して計算すると、1 施設当たり 73 人、それ以外の通常の 在支診の場合は医師 1.2 人なので 21 人ということになる。この 200 人と 73 人の違いは大 きい。同じ機能強化型でも、経営のモデルとして2つの種類があるということになる。 医師が 2 人までで 50 人~100 人程度の患者を診ている診療所と 4 人強で 200 人を、ある いはそれ以上の規模の医師と患者を抱えている診療所の違いである。それは図表 6 の同一 建物の患者の比率、そして看取りの比率の大小に関係してくるのではと考えられる。. 10.

(13) 図表 7. 図表 8. 2-5 大型・在宅専門診療所とかかりつけ医 2-5-1 大型の在宅専門診療所に求められる本来の役割 平成 28 年度改定で在宅専門診療所が認められたが、その開設要件には、 「外来診療が必要な患者が訪れた場合に対応できるよう、 11.

(14) ・地域医師会から協力の同意を得ている 又は ・ (あらかじめ規定した)地域内に協力医療機関を2か所以上確保していること。 」 とあり、医師会への入会を義務付けるものではないが、医師会を中心に組織される地域の 医療担当者との緊密な連携を条件としている。これは現在厚労省が進める地域包括ケアシ ステムの構築を前提とした場合は当然であろう。しかし前節でみたように、首都圏で在宅 医療が伸びた背景には、大型の在宅専門の診療所が地域医療とつながりの薄い、施設を中 心に看取り率の低い訪問診療の件数を増やしていった、という政策的意図に反する現象が 進行したためと思われる。特に東京都内の場合は医師会の組織率が低いといわれているの で、在宅診療所が独自に活動できた、という背景もあると考えらえる。 これまで見てきたように、在宅診療所は大きく「かかりつけ医タイプ」と「大型・専門 タイプ」に二極化していると考えられ、それぞれ果たしている機能が異なる。また、 「大型・ 専門タイプ」の中にも、施設に対する在宅医療の高いか、低いかで 2 つのタイプに分かれ ている。地域包括ケアの一環として地域医療に貢献しているのは確かに「かかりつけ医タ イプ」であり、外来患者の延長で、一診療所当たりの件数は少ないが、24 時間体制の困難 性から在宅療養支援診療所の届を出していないものの、全体の比率としては地域に根差し た在宅医療の重要な担い手の一員といえる。そこで、在宅医療に特化している大型の診療 所に求められているのは、こうした「かかりつけ医タイプ」では担えないような、在宅医 療であろう。 今回のインタビュー先において、地域の医師会において重要な役割を果たしている診療 所の理事長は下記のようなコメントをしている。 「かかりつけ医として、大型・在宅専門診療所にお願いしたいのは、手のかかる患者であ る。がんの末期患者や肺炎などの疾患、延命処置を希望する患者などが挙げられる。こう した患者は実は、首都圏で今後在宅患者として急増すると予想され、かかりつけ医だけで はとてもカバーできないのである。 」 急速な高齢化で予想される病院のベッドの不足を在宅医療で補おうとする首都圏の医療 事情が背景にあると考えられるが、大型・在宅専門診療所こそ症状の軽い患者ではなく、 病院なみの症状の重い患者を担当することが求められている、ということであろう。 2-5-2 大型の在宅診療所に必要な機能 そこで診療所でも必要な病院並みの機能とは何であろうか。 休日・夜間の 24 時間体制の専門チームについてはすでに触れた。病院より一層リクルー トがしにくい診療所の在宅担当医には、ここで別の専門チームを持つことが鍵になる。 病院並みに専門性の高い医療機能としては、今後複数の専門医をそろえたり、医師・看 護師以外の医療技術者(栄養士、理学療法士など)やケアマネやソーシャルワーカーなど のチームを自前で持つことが求められていくことになろう。また医師への診療報酬が重症 度に応じて段階的になっていくということは、平均値としては適正化される可能性が高い ので、現在は診療報酬上の評価の対象ではないが、医師の生産性を高めるために、病院と 似た医師事務作業補助者のような存在を前提としていく可能性もある。インタビュー先の A~Cまでの在宅診療所は大なり小なり病院並みのスタッフをそろえつつあり、人材への 投資があった上で、生産性をたかめながら収入の拡大が同時に進んでいる。. 12.

(15) 一方で病院と在宅医療が異なる点は、在宅医療における空間的な距離である。病院の中 であれば共有できる患者の情報も在宅医療では難しい。今回のインタビュー先でも常勤医 の多いタイプの診療所では、同じ診療所内での情報共有のためにも独自のクラウドシステ ムを開発している。とりわけ休日・夜間専門のチームが稼働する場合は普段の主治医とは 異なる医師が診療するケースが普通で、緊密な情報の共有は質の高い医療の前提条件とな る。 3.小括 この章では大型の在宅療養支援診療所について、インタビューと他の研究や報告をもと に、そのタイプと特色、今後必要な機能等について述べてきた。特に東京都では全国とは 異なる大型の診療所が多く特異なことがわかる。はじめにあげたインタビュー先とは必ず しも同じではないが、ここで以下に4つのモデルに分けて、その構造的な優位性について の仮説をまとめる。 まず、①「看取りとしての居宅(個人宅)の在宅医療に特化」モデルである。大学病院 などの大病院からの紹介を受けて、多くのがんの末期中心の患者を看取る診療所である。 在宅医療の一つの理想形であるが、大型でこうした事業が成立しているのは、東京に人口 が集中し、大学病院などの多くの大規模な急性期病院が集中しているからであろう。イン タビュー先のAタイプの診療所があてはまる。構造的な優位性として、この分野への特化 と、先行していたための経験値、高い信頼性があると考えられる。 次は②「大型の施設中心の在宅専門診療所」モデルである。これは東京都や首都圏の特 異なところであるが、徐々に厚労省の点数減による締め付けが厳しくなり、在宅専門の事 業としては構造的な利点が少なくなり、縮小の傾向にある。これが連携型の機能強化の在 宅診療所が減少している原因であろう。今後は単純な事業拡大ではなく、地域包括ケアの 一員として、地域の医療機関との連携を強めることが事業の安定につながるが、その場合 は病院並みの重症者への対応能力を高める必要がある。 その次は③「かかりつけ医の延長としての在宅医療」モデルである。これは本来地域の 小規模の診療所が行っており、大型の「かかりつけ医集団」というのは例が少ないが、イ ンタビュー先のCタイプのように、大型でグループ診療を行っている場合にありうる。た だしこれは在宅医療としての優位性というよりも、外来のグループ診療の土台の上での強 みではないかと思われる。 そして④「外来と在宅を両輪で行っている」モデルがある。インタビュー先のDタイプ である。このモデルを実践しているケースは多いと思われるが、どちらかに大きな規模が あればよいが、それが十分でない場合、在宅医療における休日・夜間の専門チームを構築 するだけの収益上の余裕がなく、医師のリクルートにおいて不利である。規模の拡大を目 指すのでなければ、現状維持でも一定の収益をあげていけるが、規模の拡大にはこの点が 弱点となる。 こうしたモデル同士が連携して協同で休日・夜間チームを持てればよいはずで、もとも と連携による機能強化型はそれを前提として創設されたものと思われるが、結局は当番制 になるために、医師会が取りまとめたとしても、意外に広まっていないようだ。そこで、 Bタイプの診療所のように、夜間専門のチームを広域で立ち上げて、強化型の連携先でな. 13.

(16) くても契約ベース広く委託を受ける形の存在意義がある。普段から委託を受けた患者の診 察をしているわけではないので、患者情報の共有化の問題は残るが、この④のモデルの弱 点を補う仕組みであるといえるであろう。・. 第3章. 訪問看護ステーション. 1.インタビューの結果 以下にインタビューを行った大型の訪問看護ステーションの中から、経営上の優位性の 構築において特色のある2つのモデルについて報告する。 1-1 重症患者ケアモデル (1)基本的な経営の構造 ・医療保険による患者に多く対応できるようにする。(少なくとも約 50%) 。 ・患者には初回に管理者が独自のアセスメントを行い、終了計画のある目標を設定する。 (患者の身体の状況や動作確認、家族の介護への関わり方や、今後の目標設定等) ・その後はチーム制をしき、チーム内の看護師が共同で担当する。責任は管理者。 ・拠点の管理者には訪問業務を制限し、一定の時間は拠点管理に従事させる。 ・本部の役割はその管理者を支援、育成し、フォローアップすること。 ・1つの拠点の人員は 10 人~25 人を基本単位とする。 ・採用は第 2 新卒の若手中心とし、子育て等働きやすい環境を作って支援、育成する。 ・給与は年 400 万円程度からとし、人件費率を 65~70%に抑えることが目標。 (2)患者(利用者像) ・難しい患者でも断らずに引き受ける。 (もちろん高い看護スキルの裏付けが必要) ・ターミナル、神経難病、小児等、医療保険の患者は訪問回数の制限が介護保険と異なる。 ・ケアマネからの紹介などで患者を確保し、訪問実施期間も 90 日以内が多く回転が早い。 (3)重要な経営管理事項 ・チーム制なので、1 人で担当する責任という心理的な負担をやわらげている。 ・新人看護師のリクルート、育成においてもチーム制が有利。 ・管理者になりたくない人も多いが、管理者をめざせるように本部が手助けする。 ・事業モデル例は1つのステーションで、管理者込で 6 人、月商 500 万円を目標とする。 ・患者 1 人1か月 12 万円。50 人で 600 万円。看護師 1 人月に 100 万円の収入を目標。 ・1 日 5 件、1 件あたり 1 万円として看護師1人が 1 日 5 万円X20 日で 100 万円の生産性。 ・介護保険のみの場合と違って、患者 1 人の月の単価は高くなる。(訪問回数も多い) ・拠点を中心に半径 3 キロまでを電動自転車で回り、コストと時間を抑え、遠い患者は 他の拠点でカバーするか、他の事業者に紹介する等、極力増やさないようにする。 ・夜間はオンコール制のもちまわり。夜間の出動を少なくするように昼間に工夫。 ・看護師は概してモチベーションが高いのでそれを落とさないように、サポートする。 ただし、生産性を落とさないようにシステムを作ってそれに従って動いてもらう。 ・本部はこれらを管理するのが役目であり、これが本社管理費の意味。 ・市場が伸びており、患者が密集して居住、看護師が雇える、という首都圏の都会での 前提条件の下での事業モデル。地方や過疎地では異なるモデル。. 14.

(17) 1-2 訪問リハビリテ―ション(以下訪問リハと呼ぶ)重視モデル (1)基本的な経営方針 ・訪問看護ステーションとして、特に訪問リハに重点を置くタイプ。 ・首都圏では訪問リハの需要は急成長しており、今後ともしばらく成長が続く。 ・訪問リハは標準化しやすい変動費型ともいえる事業モデルで、PT等のリハビリの技術 者(以下リハ職と呼ぶ)を雇用し、一定の訪問数をこなすと収入が安定的に期待できる。 ・訪問看護ステーションとして 24 時間体制や看取りにはどちらかというと消極的。 (2)訪問リハのシフト ・リハ職の働き方は標準で 1 人 100~110 回訪問/月。8 時間勤務、AM2 件、PM4 件。 キャンセルを1割程度想定して、平均的に 1 日 5 件として月 20 日勤務で達成可能。 ・介護報酬は 60 分プラン週 2 回を標準とし 1 回 9200 円。60 分プランだと 10%減額にな るが、移動が少なくて効率がいい。但しその枠のケアプラン上限内での確保が前提。 ・訪問リハの移動は電動自転車とし、これで回れる距離の利用者に限定する。 ・遠方へはサテライトを作っていくと、拠点と利用者の距離が近くなり、訪問に有利。 サテライトではステーションと違って常駐看護師の配置に柔軟性。 ・サービス提供期間は平均5~6ヶ月と短い。目標を達成するとリハビリのサービスは停 止。月に4~5%は入れ替わる。目標達成の他に、転居、入院等でサービス停止もある。 (3)理学療法士等の雇用 ・理学療法士への給与は月 75 件までを固定給、追加分は歩合にして加増する。 ・待遇は、件数により変わる。30 万/月→360 万/年. (契約社員の場合) プラス歩合分。. 件数により月給 40 万円もありうる。人件費率は高くなるが赤字にはなりにくい。 ・看護師よりもリハ職の方が採用しやすい。ネットや専門学校の先輩・後輩ルートで雇用。 ・病院での経験を経た 20 歳代後半の理学療法士が採用の中心。男女比 50%。 ・PTの研修を充実させている 。新卒も採用し、1 年間 OJT 研修もしている。 ・小さな事業所より大規模な方がキャリアを積むのに適しているので雇用に有利。 2.考察 2-1 2 つのモデルの特色 機能強化型の訪問看護ステーションは「1」と「2」を合わせると平成 28 年 12 月の調査 では、全国に 404 件5登録があるが、首都圏に特に多く、東京都で 46 件、神奈川県で 39 件、 埼玉県で 28 件、千葉県で 14 件であり、1 都 3 県で全国の 31%を占める。このうち、常勤 看護師が 5 名以上で足りる「2」の割合が半分以上である。 同じく機能強化型の場合は、平成 26 年の調査では医療保険のみの患者の比率が 30%を超 え、別表7の難病の患者の割合も 20%と、機能強化型でない訪問看護ステーションと比べ て診療に特色がある。今回インタビューを行った重症患者ケアモデルは更に医療保険のみ の患者の比率が高い。これを実行するためには、介護保険による患者の比率が 80%を超え ているステーションとは異なる看護師のリクルートや育成、経営管理の面でのシステム構 5. 中医協総会平成 29 年 1 月 11 日「在宅医療(その 1)」 、p74 15.

(18) 築がコストを極端に増大させることなく必要である。医療保険における訪問看護の実施件 数は、いわゆる訪問看護ステーションの方が多く、医療機関による訪問看護の実施件数は 訪問看護ステーションの約 3 分の1である。そして訪問看護ステーションの従業者数は、 半分以上が 5 人以下であるが、10 人以上で 16%、7 人以上も加えると 32.8%となり、徐々 に大規模化が進んでいる。1事業所当たりの従業者数も、平成 27 年には平均で 6.5 人、常 勤看護師の数も 4.8 人となってきている。 また、厚労省老人保健局による委託調査6 (2013 年、N=1231)では、看護職員の規模 が大きくなるにつれ、介護保険の比率が 67.9%(2.5 人~3 人)から 61.1%(7.5 人以上) まで徐々に減少していって(平均は 65.2%)おり、規模が大きな所ほど医療保険の患者の 取り扱い比率が高い、という傾向にある。医療的な処置が必要な患者の訪問看護ステーシ ョンへの期待は大きく、それが今後の訪問看護ステーションの目指す方向であろう。 また訪問看護ステーションに所属する医療技術者の職種は、この 15 年で看護師の比率が 減少してきてリハ職が増えており、平成 27 年度の調査では、理学療法士と作業療法士を合 わせると 19%を占めている7。ただし、後述するが、訪問リハに特色のある訪問看護ステー ションは、例えば 5 人の総従業者のうち 20%である 1 名のリハスタッフを雇用しているケ ースは少なく、5 人の看護師に対し 10 人のリハ職を雇うなど、リハスタッフの規模が大き いのが特色で、その規模でもって採用や育成、訪問のシステム化、標準化を進めることに よって優位性を築いていると考えられる。それらの大規模にリハ職を雇用している所を含 めて全体で平均すると 19%ということになる。 2-2 先行調査からみた経営モデルの要点 2-2-1 訪問単価と人件費率 訪問看護ステーションにとって、訪問1回当たりの収入は、平成 26 年介護事業経営実態 調査によると、7,864 円である。これは介護保険の利用者が多いケースを平均していると思 われ、訪問看護費の 30 分以上 60 分未満の料金(単位)前後の価格になっている。一方医 療保険の場合は、月間の訪問看護管理療養費(機能強化型であれば月の初日に 12,400 円、 2 日目以降は 2,980 円)に訪問の度に基本療養費(週 3 回まで 5,550 円)が加えられるので、 週 3 回を前提としても月に約 12 万円となる。これを 12 回でわると 1 回約 1 万円であり、 単価として 20%以上の違いがある。さらに他の加算があるとさらに単価はあがると考えら れ、これは今回の重症ケアモデルのインタビュー先のモデルに近い。 さらに同調査8によると、月の延べ訪問回数が 100 回、200 回、300 回、400 回と増える ごとに、1 回の訪問収入は下がっていくものの、収支差額は赤字から黒字に転換している。 これは、上記と同じことを意味する。すなわち、月の訪問回数が多い規模の大きな所ほど、 1 回当たりの収入が固定している介護保険ではなく、管理療養費+基本療養費の医療保険の 比率が高く、訪問回数が増えると 1 回の訪問当たりの単価は落ちるものの、全体の収入は 6. 7 8. 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「訪問看護の基盤強化に関する調査研究事業報 告書」 平成 24 年度老人保健事業推進費等補助金老人保健健康増進等事業、 2013 年 3 月、 p46。 中医協総会平成 29 年 1 月 11 日「在宅医療(その 1) 、p65。 厚生労働省老人保健局「平成 26 年介護事業経営実態調査結果」 、p32。 16.

(19) 高くなるということである。そして規模の大きな所=月の延べ訪問回数が多い所ほど、収 支の差額(利益)は大きいのである。この調査では 200 回を超えると黒字化し、400 回を 超えると 8.7%の収支差額となっている。 更に月の延べ訪問回数のレベルごとに一人当たりの人件費や人件費率をみると、訪問回 数が上がるにつれて、一人当たりの人件費は上がっていくが、逆に人件費率は下がってい くことがわかる。これは規模の大きな所ほど、医療保険の比率が高く、多くの給与を払い ながらも、経営としては安定していることを示す。逆にいえば小規模のところは、介護保 険の比率が高く、給与面でいくら節約しても経営が楽にならない実態を示すのである。 2-2-2 訪問業務サポート インタビュー先において、大規模訪問看護ステーションにおいて、 「管理者が訪問業務に 追われすぎず、管理のための時間がしっかりと取れるように本部が指導している。」という コメントがあった。同じく平成 26 年介護事業経営実態調査によると、月の延べ訪問回数が 多い所ほど、一人当たりの訪問件数が多くなることは当然として、その一人当たりの訪問 件数は規模が大きくなるほど、看護職員のみで割った商と全職員で割った商のギャップが 大きくなっている。 (図表9)つまり、これは訪問件数の多い所ほど看護師以外の事務やサ ポート業務のスタッフを置いて、固定費への投資をするものの、訪問業務のサポートをし て経営効率を上げていることを示している。こうした固定費への投資ができない規模の小 さな所は、各人の工夫にもかかわらず、構造的に経営に違いがでる、ということである。 図表9. 2-2-3 リハ職の生産性 全国訪問看護事業協会「訪問看護の質確保と安全なサービス提供に関する調査研究事業 17.

(20) FAX 調査」 (平成 26 年 3 月調査)によると、5,212 件の訪問看護ステーションのうち、リ ハ職がゼロの所が 2,731 か所で 52%、0~5 人(平均 1.3 人)が 2,254 か所で 43%をしめ、 全体の 95%を占めている。リハ職がいない所がほとんである、しかしリハ職が 5 人~9 人 の場合は全従業者の 76%がリハ職、10 人を超えると全従業者の 95%がリハ職(平均 16.2 人)という実態である。一部の訪問看護ステーションに訪問リハに特化している所があり、 前述のように、そこが全体で 19%をしめるリハ職の平均値を形成していることがわかる。 その訪問リハビリテーションの業務については、 「標準化しやすく、計画性が高い」とい うインタビュー結果であったが、同じく介護事業経営実態調査によると、看護職とリハ職 の一人当たりの訪問件数にはかなりの差がある。平成 23 年の調査(N=242)では職員全 体では 126.7 件であるが、PT/OTのみに絞ると、172.4 件となっている。また平成 26 年 の調査では、職員全体では 108.6 件であるものの、PT/OTのみに絞ると、123.7 件であ る。これには訪問時間や訪問単価が反映されていないものの、件数だけをみると計画的な 訪問が行いやすく、標準化しやすい業務、ということを裏付けている。給与も実態として はリハ職の方が看護職よりも低く、経営効率が高いようで、先の全国訪問看護事業協会の FAX調査でも、 「リハ職の在籍人数が大きな所ほど、黒字の率が高い」という報告がされ ている。 3.小括 訪問看護事業は医師による訪問診療と付加価値構造が大きく異なるので、黒字経営のた めには十分な経営管理のマインドやスキルをもって、サービス提供の効率性に留意するこ とが非常に大切である、との仮説をもつにいたった。 「重症患者ケアモデル」は、医療必要度の高い患者の看護を受け持つことで患者当たり の単価が高くなるモデルである。もちろんその事業モデルのためには、高い看護スキルが 求められるので、組織全体で質の高いサービスの提供体制を常に磨いておく必要がある。 効率性の点では、たとえばチーム制をしくことで職員の代替性を高め、患者の満足度を 落とすことを防ぎながら、シフトの効率性や若手の育成に役立てることができる。また、 本部のサポートにより、経営管理の徹底に留意し、規模の拡大に必要な管理者の育成につ なげることができる。 「訪問リハ重視モデル」は介護保険の枠内で標準化によって効率性を高める事業である。 1 日に訪問する件数やサービス内容をあらかじめ計画でき、訪問看護に比べて緊急の訪問 は少ないと考えられる。また単価については介護保険の規定により、週の訪問回数よりも 1 回の訪問時間を(必要性がある場合)長くとって、単価を上げる方法も効果がある。 さらにサービス提供者についていえば、リハ職の雇用やその人的な管理が看護職に比べ て困難性が低いであろうことが挙げられる。そして労働意識の点で比べるとインセンティ ブをつけて就労することに看護職ほど抵抗がないと考えられることも重要なファクターで ある。この点は医療技術職としてのモチベーションのあげ方に、看護職とは異なる側面が あると考えてよいであろう。 ただしいずれもが、首都圏において需要の伸びが期待でき、人口が密集しているので、 距離的に訪問効率の高い市場である、という前提があり、他の地方でも同様とは限らない。. 18.

(21) 第4章. おわりに. 1.本報告書のまとめ 首都圏は在宅医療市場の規模が大きく、成長を続けているので、大規模な事業者が多く 誕生し、現在の保健医療制度の下で創意工夫することで独自の事業モデルを構築し、さら に成長を遂げている例が多い。診療報酬制度自体も通常 2 年に 1 回改定されるが、在宅事 業はまだ若い事業であり、首都圏などの大都市の動きに対応する面も大きく、変動が激し くなっている。従ってこの首都圏における動向を研究することは、この事業の将来の動向 を予測する上でも大変重要である。 この研究はそうした首都圏の在宅医療の事業者へのインタビューを通じて、いくつかの 有効な経営モデルをピックアップし、その構造を明らかにするために行った。従ってここ に記述されていることが全てではないが、いくつかの有力なモデルの概要についてその仮 説を提示したつもりである。 要約すると、いずれのモデルも結局は、 「患者や医療関係者の信頼、経営規模、高付加価 値、標準化、高い生産性、低コストなどの要因により優位性を築いて、それを維持・拡張 する努力を続けている」という経営学的には定石のセオリーに従っている、といってよい。 ただし医師・看護師・PTなどの医療技術者は、倫理性が高く、独自のモチベーション の向上スイッチに訴える必要がある点には注意すべきであろう。 2.今後の研究の展開 この研究の趣旨については、3 月 24 日に東京で「医療経営実務セミナー」として、一般 向けの発表を行い、医療機関や在宅医療事業に興味のある業界人の参加があった。 今回のいくつかの仮説モデルは、主として直接の医療提供者側だけのインタビューに基 づいており、周辺の関係者への取材は行っていない。今後はさらに広い範囲の関係者への 取材を経て、今後大規模調査など実証的な研究へと進めたいと考えている。例えば地域包 括ケアシステムの担い手としての、病院の医療連携室や介護事業者などである。 また対象地域を首都圏以外の地方にも広げて、首都圏に対応した現在の制度の問題がど のように地方に影響を及ぼしているのか、についても研究を進めてゆきたいと考えている。 3.謝辞 この研究は公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団の助成を受けて行われた。貴重な研 究の経験の機会を与えていただいた同財団のご厚意に対し、ここに御礼申し上げる。 4.感想 この研究を完了しての感想としては、やはり「研究機関 1 年」の短さである。特に当初 は在宅事業者として、在宅診療所及び訪問看護ステーションの両方をとりあげただけでな く、東日本と西日本で比較しようと試みたが、時間的に余裕がなく、その点は断念せざる をえなかった。それでも当初の締め切りには間に合わず、事務局の皆様にご迷惑をかけ、 大変申し訳なく思っている。ただし、首都圏での大規模な事業者への制度の対応が全国の 在宅事業に及ぼす影響については、大変興味深いテーマと考えており、今後の研究課題と して取り組んでゆきたい。. 19.

(22) 第5章. 巻末資料. インタビュー先の在宅療養支援診療所のタイプ. A. B. D. かかりつけ医の在宅. 混合型. タイプ. がん末期患者中心. 在支診. 連携強化型. 連携強化型. 連携強化型. 連携強化型. 月平均患者数概算. 500. 2,000. 2,000. 400. 年間の看取り件数概算. 200. 400. 50. 30. 5. 26. 14. 5. あり(非常勤中心). あり(非常勤中心). なし(当番制). なし(当番制). 1. 9. 3. 2. 外来の比重概算. 20%以下. 5%以下. 95%. 40%. 特定施設の比重. 0. 40%内外. NA. NA. 常勤医師数 夜間専門チーム 在宅の拠点数. 大規模広域在宅専門. C. ・独自のカルテシステ ・計画的に首都圏に広 ・かかりつけ医の延長とし ムを開発 域な拠点を整備 ての位置づけ 特記事項. ・がんの末期が多い. ・契約した在宅医に夜 ・医師会を通じて地域の ・夜間は院長自ら対応 間の往診を提供 夜間往診をアシスト することも多い. ・大学病院からの紹介 ・連携先に電子カルテ が多い システムを提供 訪問看護ステーション の併設 医師会への入会. ・外来と在宅の両輪. ・大規模グループ外来. ・夜間往診体制の構築 に難しさ. なし. あり. あり. あり. Yes. Yes. Yes. NO. 20.

(23) 参考文献 1. 厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会資料。 ・在宅医療(その 1)2015 年 2 月 18 日。 ・在宅医療(その 2)2015 年 5 月 27 日。 ・在宅医療(その 3)2015 年 10 月 7 日。 ・在宅医療(その 4)2015 年 11 月 11 日。 ・在宅医療(その 1)2017 年 1 月 11 日。 2. 朝日新聞MOOK「自宅で看取るいいお医者さん」朝日新聞出版、2015 年 7 月。 3. 杉村健「 『自宅で平穏死』をかなえる在宅医療」『週刊朝日』2013 年 8 月 9 日号、朝日 新聞出版。 4. 厚生労働省老人保健局「平成 26 年介護事業経営実態調査結果」平成 26 年 4 月調査。 5. 「特集:地域全体をつなぐ機能強化型訪問看護ステーション」、『訪問看護と介護』 、医 学書院、2016 年 7 月号。 6. 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「訪問看護の基盤強化に関する調査研究事業報 告書」 平成 24 年度老人保健事業推進費等補助金老人保健健康増進等事業、 2013 年 3 月。 p30~35。 7. 日医総研ワーキングペーパーNo. 378「かかりつけ医機能と在宅医療についての診療所 調査結果(2016 年 11 月実施) 」 、日本医師会総合政策研究機構日本医師会保険医療部、 2017 年 2 月。 8. 全国訪問看護事業協会「訪問看護の質確保と安全なサービス提供に関する調査研究事業 FAX 調査」2014 年 3 月。. 21.

(24)

図表  4
図表  8

参照

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