スリランカにおける飲料水中の
フッ素汚染の現状と対策
本山 亜友里
1・川上 智規
1*・S.K. Weragoda
2・奥川 光治
1・芹川 裕加
1袋布 昌幹
3・高松 さおり
31富山県立大学工学部環境工学科(〒939-0398 富山県射水市黒河5180)
2National Water Supply and Drainage Board, Sri Lanka(Kurunegala Road, Dambulla, Sri Lanka)
3独立行政法人国立高等専門学校機構 富山高等専門学校(〒939-8630 富山県富山市本郷町13番地) * E-mail: [email protected] スリランカAnuradhapura地区では,飲用,調理用としている井戸水にフッ素が含まれ,住民にフッ素の 過剰摂取により生じる斑状歯がみられる.また腎臓病などの健康被害も報告されており,フッ素との関係 が疑われている.そこでフッ素汚染実態把握のため2010年~2012年にAnuradhapura地区を含む8地区,計 263サンプルを分析した結果,最大で約7mg/lの井戸が存在し3地区で平均値がスリランカの飲料水基準値 を超過した.高濃度の井戸付近には,低濃度の井戸が存在する例もあった.この場合濃度に応じ用途を分 けることで健康被害を軽減できる.一方近隣に低濃度の井戸が存在しない場合,フッ素濃度低減策を講ず る必要があり,その1つとして鳥骨炭の利用を検討した.鳥骨炭製造に際し最適炭化温度は600℃であった.
Key Words : fluoride, chicken bone char, Sri Lanka, carbonization temperature
1. 緒言
スリランカは日本の南西約7,500km,インド南東方の インド洋上に位置する島国で面積は約65,600km2と北海 道の約8割の大きさである.気候は,北部と東部から南 東部にかけての海岸地帯は乾燥地域,中央高地を含む南 西地帯は湿潤地域で降雨が多く,この2地帯の間は半乾 燥地域である(図-1)1). 北部中央州のAnuradhapura地区はこの乾燥地域に属し ている.都市部では人工の貯水池を水源として水道が引 かれているが,農村部では飲料水源に地下水を利用して いる.ところがこの地区の地下水はフッ素濃度が高く, 井戸水を飲料や調理に用いている住民に斑状歯,腰や背 骨の痛みを訴えるといった健康被害が報告されている2). フッ素は適量の場合虫歯予防の効果があるとされている が,歯の形成される時期(乳幼児期)に過剰に摂取し続 けると歯の表面に斑状のシミや褐色の斑点ができ,進行 すると小孔やくぼみが生じたり,骨硬化症を引き起こす 3).この地区の農村部では中学生の約90%が歯に小さな 白い斑点が生じる斑状歯の初期症状あるいはそれより重 症の障害を持つことが報告されている2).さらに同地区 では慢性腎臓病が多発しており,井戸水中のフッ素との 関係が疑われている4) .しかしながら,慢性腎臓病に関 しては井戸水中の硬度や重金属,栄養状態なども原因と してあげられ現状では結論が得られていない4). 図-1 スリランカの気候区分と現地調査実施地区 土木学会論文集G(環境),Vol.68,No.7,III_517-III_523,2012.フッ素濃度低減策としては,一般に膜を用いる手法, 動物の骨炭にフッ素を吸着させる方法などがある5).し かしながら,農村部における住民の生活は豊かではなく 500mlのペットボトル1本が30円ほどのミネラルウォータ ーが購入できずフッ素症を患っていることや信仰心が厚 く宗教が生活に密着していることを考慮しなくてはなら ない.すなわち安価であり宗教上の問題が生じないよう な手法が求められる.スリランカにおける宗教別人口比 は仏教徒が70%と多いが,ヒンドゥー教徒やイスラム教 徒もそれぞれ10%,8.5%であり1),牛や豚の骨を用いる ことはできない.そこで現地で大量に廃棄されており宗 教上差し障りのない鳥骨を利用した方法を検討した. これまでの鳥骨炭を用いた飲料水からのフッ素除去を 目的とした研究では,フッ素濃度を0.1mg/l以下にまで低 減できることが示されており,フッ素除去剤として鳥骨 炭の有効性が確認されている6). 骨炭によるフッ素除去のメカニズムとしては,骨炭の 主成分であるハイドロキシアパタイトの水酸化物イオン がフッ化物イオンと置き換わる次に示すようなイオン交 換反応によるとされている7).
Ca10(PO4)6(OH)2 +2 F⁻ → Ca10(PO4)6F2+2OH⁻ この反応は一次反応を仮定するとフッ素の除去を良く表 現できる6). 本研究では,スリランカにおけるフッ素濃度の地理的 分布を調査するとともに,フッ素濃度低減策としての鳥 骨炭の利用に際して,炭化温度や水温,粒度,量などが フッ素除去能に及ぼす影響を検討した.また,炭化温度 が吸着能に及ぼす影響を結晶構造との関連から評価した.
2. 方法
(1) 現地調査Jaffna, Mannar, Puttalam, Trincomalee, Batticaloa, Hambantota, Anuradhapura, Nuwara Eliyaの8地区(図-1)において, 2010年から2012年にかけて井戸水を採取し,その場で 孔径0.45μmのフィルターを用いろ過した後,ポリ容器に 入れて日本に持ち帰り,フッ素濃度を分析した.各地に おけるサンプル数を表-1に示す.計263サンプルの分析 を行った. (2) 鳥骨炭の製造方法 鳥骨炭の材料として,市販されている生肉(手羽元), ガラまたは惣菜の鳥足の唐揚げを購入後,身の部分を除 去したものを用いた.初めに電気炉を用いて通気状態で 250℃で1時間加熱した.この状態で保存が可能となる. 次にこの鳥骨をステンレス製の容器に入れ蓋をして空気 を遮断した状態で400~900℃の範囲で一定温度に保ち,1 時間加熱した.その後骨髄に含まれる塩化物イオン等を 除去するために,イオン交換水で洗浄後,105℃で一昼 夜乾燥させたものを鳥骨炭として実験に用いた.製造し た鳥骨炭の写真を図-2に示す. (3) フッ素除去の実験装置 現地で実際に使用することを考慮し,安価で簡易な方 法としてTea-bag方式を考案した.Tea-bag方式とは,鳥骨 炭をTea-bagの中に入れたもの(図-3(a))を作成しこれを 試料水中に浸しフッ素濃度を低減させる方法である.今 回の実験では,図-3(b) ,(c)に示すようにビーカーに試料 水としてフッ素濃度を調整したフッ化ナトリウム溶液ま たは現地で採水した井戸水を入れ,鳥骨炭入りTea-bagを 浸したうえで,スタ-ラ-で撹拌させながら,適時サン プリングを行った.サンプルは孔径0.45μmのフィルター でろ過後分析を行った. 地区 サンプル数 Anuradhapura 76 Nuwara Eliya 9 Puttalam 29 Mannar 32 Jaffna 28 Trincomalee 28 Batticaloa 31 Hambantota 30 図-3 (a) Tea-bag (b)Tea-bag 方式概略図 (c)実験装置 図-2 鳥骨炭 (a) (b) (c) 図-3’ Tea-bag ( 水 温 測 定 用 ロ ガ ー) Tea-bag ビーカー マグネット 鳥 骨 炭 スターラー 10mm 表-1 現地調査実施地区とサンプル数
(4) フッ素除去に関わる条件 以下のa)~d)の条件下でフッ素除去への影響を調べた. a)炭化時の温度 骨炭の製造時に空気を遮断した状態で加熱する時の温 度(炭化温度)の違いによるフッ素除去速度,フッ素吸 着容量ならびに結晶構造への影響を検討した. フッ素除去速度に関しては炭化温度を400, 500, 600, 900℃と変化させた時の鳥骨炭5gをTea-bagに入れ,フッ 素約10mg/lを含むフッ化ナトリウム溶液200ml中に浸し, 水温を約20℃で一定に保ち,0, 3, 21時間後にサンプリン グし分析を行った. またフッ素吸着容量に関しては吸着等温試験を行った. 後述するがフッ素除去速度の実験において,400, 500℃ では溶液が黄変し臭いもあり,飲用として適さないこと が判明した.したがって実験条件として,炭化温度は 600, 700, 800, 900℃とした.鳥骨炭は目開き75μmの金属 製ふるいで全通させ,粒径75μm 以下に分級したものを 脱気せず用いた.フッ素濃度10mg/lのフッ化ナトリウム 溶液50mlに鳥骨炭を0.1, 0.2, 0.5, 1.0, 2.0g 加えた.飲料水の pHを想定し、pH調整は行っていない.25℃に設定した 恒温器中で200回/分の速度で振とう後,孔径0.45μmのフ ィルターを用いてろ過し,フッ素濃度を分析した.振と う時間は鳥骨炭とフッ化物イオンの吸着平衡が成立する ことが確認された 5時間とした.分析結果より, Freundlich吸着等温式を求めた. 結晶構造に関しては,炭化温度600℃,900℃で製造し た鳥骨炭を粉末X線回折(XRD,RIGAKU MiniFlex)に より結晶化度を評価した. 結果と考察の章で詳述するが,炭化温度としては 600℃が最適であるという結果が得られたので,以下の 実験には600℃で炭化した鳥骨炭を用いた. b)水温 水温を5, 20, 40℃に変化させフッ素除去速度への影響 を調べた.鳥骨炭3gをTea-bagに入れフッ素約10mg/lを含 むフッ化ナトリウム溶液250ml中に浸し,0, 1, 3, 8, 23時間 後にサンプリングし分析を行った.水温を水温測定用ロ ガーで記録した. c)粒度 粒度の違いがフッ素除去速度に及ぼす影響を調べるた めに,篩目10mm上にとどまった鳥骨炭(粒度大)と, ペッパーミルを用いて粉砕し篩目2.5mm以下のもの(粒 度小)とで比較した.粒度大を任意に10個とったときの 質量が2.6gであったので,粒度小も同じ2.6gを秤取し, それぞれを実験に用いた.Tea-bag方式で行い,試料水と してはスリランカの井戸水220mlを用いた.0, 3, 20時間後 にサンプリングし分析を行った.粒度の違いを図-4に示 す. d)骨炭量 鳥骨炭の量を1, 3, 5, 10gと変化させ,鳥骨炭の量の違い がフッ素除去速度に及ぼす影響を調べた.鳥骨炭をフッ 素濃度約10mg/lのフッ化ナトリウム溶液250ml中に浸し, 0, 1, 3, 8, 23時間後にサンプリングし分析を行った. (6) フッ素の分析 フッ素濃度はイオンクロマトグラフを用いて分析した. (DIONEX ICS2000, 分離カラムIonPac AS18,溶離液 KOH 23-40mmol/l(グラジエント),サプレッサーASRS ULTRAIIまたはDIONEX DX-120, 分離カラムIonPac AS23, 溶離液Na2CO3 4.5mmol/l,NaHCO3 0.8mmol(イソクラテ ィック),サプレッサーASRS 300)
3. 結果と考察
(1) 現地調査 8地区それぞれの井戸水に含まれるフッ素濃度の最大 値,算術平均,標準偏差を図-5に示す. Nuwara Eliya以外の地区にはいずれもスリランカの飲 料水基準値である0.6mg/lを超える井戸が存在した. 図-4 鳥骨炭 (a)粒度大 (b)粒度小 図-5 8地区のフッ素濃度比較(単位: mg F⁻/l) 10mm (b) (a) 10mm特にAnuradhapura,Trincomalee,Hambantotaでは平均値が スリランカの飲料水基準値を超えている.Anuradhapura からTrincomaleeにかけての一帯は従来からフッ素濃度が 高 い と さ れ て い る 地 区 で あ る . し か し な が ら , Hambantotaでは従来フッ素濃度が高いという報告は無く, フッ素症が懸念される. Nuwara Eliyaでは,すべての井戸でフッ素濃度は低か った.Nuwara Eliyaを除いた他の地区では,井戸によっ て濃度に差があり,フッ素濃度が高い地区でも,近隣に 低濃度の井戸水も存在した.Anuradhapura地区の農村部 におけるフッ素濃度分布を図-6に示す. Hambantotaにおいてもフッ素濃度が0.9mg/lの井戸から 約50mしか離れていないのにもかかわらず,0.13mg/lと低 濃度の井戸が存在する例もあった. スリランカでは,水枯れに備えて一軒に複数の井戸が ある場合も多く,この場合,異なる帯水層から水を汲み 上げており,フッ素濃度の差は帯水層による違いが考え られる.また井戸の深さによる違いも考えられるが,測 定しておらず現時点ではこの点の考察は困難である. 近隣にフッ素濃度の低い井戸がある場合には,飲用と それ以外とに用途を分けて用いることでフッ素症を防ぐ ことが可能である.一方,近隣にフッ素濃度の低い井戸 が見つからない場合には,フッ素除去の手段を講ずる必 要がある. (2) 鳥骨炭によるフッ素除去 a) 炭化時の温度条件 炭化時の温度によるフッ素除去能の違いを図-7に示す. 初期濃度が若干異なっているのは400℃と900℃,500℃ と600℃という組み合わせで実験を2回に分けて行ったた めである. 21時間で0近くまで濃度が低下したのは600℃の時のみ であり,炭化時の温度はフッ素除去能に大きく影響する ことが分かった.また炭化温度を400℃,500℃とした時 は鳥骨の炭化が不十分で,実験後の溶液の色は有機物が 溶け出したために黄変し,また臭いもあり飲用には適さ ないものであった.900℃の場合にもフッ素除去能は著 しく低下した. 図-8に各炭化温度で製造した鳥骨炭とフッ素濃度の Freundlich吸着等温線を示す. 炭化時の温度の違いによりフッ素吸着容量に差が生じ, 炭化温度600℃が最も吸着容量が大きい.このように吸 着速度,吸着容量ともに600℃が最適であった.なお, 900℃の場合では,吸着能力が劣化する結果となった. また600℃と900℃の炭化温度で製造した鳥骨炭のXRD 解析の結果を図-9に示す.骨アパタイトの結晶は欠陥が 多く,ナノサイズの結晶であることから,回折線はブロ ードとなる.600℃および900℃の加熱処理の結果より, 高温で加熱を行うと結晶化が促進されているものと考え られる.以上のことより,炭化温度を変化させると,鳥 骨炭中のアパタイトの結晶構造に影響を与えると考えら れる.骨炭の炭化温度が高すぎる場合,フッ素除去が妨 げられる現象については報告があり8),アパタイトの構 造変化がフッ素吸着能を減少させるとされているが7),9), 本研究でもこれを裏付ける結果となった. 図-6 Anuradhapura地区の農村部におけるフッ素濃度分布 500m 図-8 各炭化温度で製造した鳥骨炭と フッ素濃度のFreundlich吸着等温線 0 2 4 6 8 10 12 0 5 10 15 20 25 F ⁻ (m g /l ) TIME (hr) 400℃ 500℃ 600℃ 900℃ 図-7 フッ素濃度の経時変化(炭化温度) y = 0.44x - 0.19 R² = 0.949 y = 0.40x - 0.28 R² = 0.961 y = 0.30x - 0.47 R² = 0.976 -1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 -1.2 -0.8 -0.4 0.0 0.4 0.8 1.2 lo gQ logC 600℃ 700℃ 800℃ 900℃
b)水温 水温の差によるフッ素除去能への影響を図-10に示す. 5℃では除去速度は小さかった.しかしながら20℃と 40℃ではほとんど差がなく,水温を上げても20℃以上で あれば処理時間の短縮にはつながらなかった.Nahumら は牛骨炭を用いて水温を変化させた際の吸着等温実験を 行っているが,水温15℃から35℃の間では吸着容量には ほとんど変化が無いことを報告しており10),除去速度や 吸着容量には一定以上の水温であれば大きく影響しない ものと考えられる. ここで炭化時の温度600℃,水温20℃の場合について フッ素除去反応に1次反応を仮定し,実験開始時のフッ 素濃度をC0 mg/l,実験開始t時間後の溶液中のフッ素濃 度をCt mg/l,aを定数とすると,Ctの経時変化は次式で表 現できる. Ct=C0e-at aの最適値を最小二乗法で求め,実験開始時のフッ素濃 度の10.1mg/lを代入すると, Ct=10.1e-0.190t が得られた.この式を用いて,現地調査を行ったサンプ ルの中で最もフッ素濃度が高かった7.0mg/lから,スリラ ンカの飲料水基準値である0.6mg/lまで低下させるのに要 する時間を求めると,約13時間かかるという結果が得ら れた.処理に長時間が必要であり,処理時間の短縮が求 められる. c)粒度 粒度の差によるフッ素除去能への影響を図-11に示す. 粒度が小さい方が除去速度が大きいという結果が得られ た.一次反応を仮定すると,粒度大と粒度小それぞれで Ct=1.69e-0.193t Ct=1.69e-0.278t が得られた.これらの式から,7mg/lから0.6mg/lに濃度が 低下する時間を求めると,12.8時間と8.8時間であった. 約3割の時間短縮が達成できたが,粒子の表面積(細孔 を考慮しない場合)ほどの差は見られず,大幅な処理時 間の短縮にはつながらなかった. d)鳥骨炭の量 骨炭量の違いによるフッ素除去能への影響を図-12に 示す. 一次反応を仮定し7mg/lから0.6mg/lまで低下させるのに 要する時間を求めると,骨炭量が1, 3, 5, 10gのものについ てそれぞれ約55, 19, 11, 4時間であり,骨炭量を増やすこ とは大きな時間短縮につながった. 図-11 フッ素濃度の経時変化(粒度) 0 2 4 6 8 10 12 0 5 10 15 20 25 F ⁻ (m g /l ) TIME (hr) 1g 3g 5g 10g 図-12 フッ素濃度の経時変化(鳥骨炭量) 図-9 XRD測定結果 0 0.4 0.8 1.2 1.6 2 0 5 10 15 20 25 F ⁻ (m g /l ) TIME (hr) 粒度大 粒度小 0 2 4 6 8 10 12 0 5 10 15 20 25 F ⁻(m g /l ) TIME(hr) 5℃ 20℃ 40℃ 図-10 フッ素濃度の経時変化(水温) 0 500 1000 1500 2000 0 10 20 30 40 50 60 In te ns it y 2θ (b) 900℃ 0 500 1000 1500 2000 0 10 20 30 40 50 60 In te ns it y 2θ (a) 600℃
(3) 現地での適用 現地にて,農村部における各家庭では薪の使用が一般 的であり,骨炭の製造に必要な600℃を保つことは困難 である.しかしながら,住宅には煉瓦が使用されており 焼成の際に使用する窯やNGOの活動でドラム缶を用い た簡易な炭化炉づくり,炭焼きの方法が指導されている 11)ことから,これらを利用して鳥骨炭を製造し,各家庭 に配布する方式が考えられる. またこれまでケニヤやインドにおいて,活性アルミナ を吸着剤として上下二段になった容器の上段に吸着剤を 詰め,小さな穴を通じてゆっくり下段に処理水がたまる ようなシステムが開発されている5).同様のシステムに 鳥骨炭を導入するか,あるいは本研究で採用したティー バッグ方式を用いたフッ素除去法が適用可能である.
4. 結論
現地調査により,フッ素濃度が高い地区でも帯水層の 違いといった条件により濃度差が大きく,濃度の低い井 戸が近くに存在する場合もあることが分かった.したが って濃度の低い井戸が近隣にある場合は飲用,調理用と してそちらを使用し,近隣に濃度の低い井戸がない場合 には鳥骨炭を利用したフッ素除去策を講じることによっ てフッ素症が軽減できる. 鳥骨炭の最適炭化温度は600℃であった.水温に関し ては,20℃以上であれば時間短縮にはつながらず,粒度 についても大幅な時間短縮にはつながらなかったが,鳥 骨炭の量を増やすことにより時間短縮が可能であった. 謝辞:本研究は富山県立大学研究協力会,住友財団,科 学研究費(23404003)の助成を受けて実施した. 参考文献 1) 独立行政法人土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際 センター:土木研究所資料 スリランカにおける水災害に 関する要因分析,ISSN 0386-5878 土木研究所資料 第 4069 号, pp.13-15, 20072) Tennakoon, T.M.M.H.: Prevalence of dental fluorosis in the district of Anuradhapura, Sri Lanka, Proc. of the 4th International Workshop on Fluorosis Prevention and Defluoridation of Water, 2004
3) Sorg, T.J.: Treatment technology to meet the interim primary drinking water regulations for inorganics, Journal of American Water Works Association, 70(2), 1978
4) Dhammika M., Dissanayake, Kithsiri B. Jayasekera: Could Water be the Cause of the Chronic Kidney Disease of Unknown Origin in Sri Lanka? ,Water Resource Research in Sri Lanka, pp.143-152, 2011 5) Maurice S. Onyango, and Hitoki Matsuda: Fluoride Removal from Water
Using Adsorption Technique, Fluoride and the Environment, Vol.2, Chapter 1, 2006, Elsevier Science
6) 川上智規, 本山亜友里, 芹川裕加, 袋布昌幹:鳥骨炭を用いた 飲料水からのフッ素イオンの除去, Journal of Ecotechnology
Research, Vol. 16, No.2, pp.71-74, 2011
7) Kaseva, M.E.: Optimization of regenerated bone char for fluoride removal in drinking water: a case study in Tanzania, Journal of Water and Health, 4(1), pp.139-147, 2006
8) Naohito Kawasaki, Fumihiko Ogata, Tominaga and Isao Yamaguchi: Removal of Fluoride Ion by Bone Char Produced from Animal Biomass, ,
Journal of Oleo Science, 58, pp.529-535, 2009
9) Aaron S. Posner, Bone mineral and the mineralization process, Bone and Mineral Research, Vol. 5, (ed. William A. Peck), Chapter 2, 1987, Elsevier Science
10) Nahum A. Medellin-Castillo, Roberto Leyva-Ramos, Raul Ocampo-Perez, Ramon F. Garcia de la Cruz, Antonio Aragon-Pina, Jose M. Martinez-Rosales, Rosa M. Guerrero-Coronado, and Laura Fuentes-Rubio:Adsorption of Fluoride from Water Solution on Bone Char, Ind.
Eng. Chem. Res. 46, pp.9205-9212, 2007
11) スリランカ復興開発NGOネットワーク:外務省委託 平成16年度NGO活動環境整備支援事業
「国別NGO研究会(スリランカ)」報告書,
第4章 スリランカにおける各参加団体の活動状況,pp.43-76 (2012.5.25受付)
Fluoride Contamination in Drinking Water in Sri Lanka and Fluoride Removal by
Using Chicken Bone Char
Ayuri MOTOYAMA
1, Tomonori KAWAKAMI
1, S.K. WERAGODA
2,
Koji OKUGAWA
1, Yuka SERIKAWA
1, Masamoto TAFU
3and Saori TAKAMATSU
31
Dept. of Environmental Engineering, Faculty of Engineering, Toyama Prefectural University 2
National Water Supply and Drainage Board, Regional Support Centre 3
Dept. of Ecomaterials Engineering, Institute of National Colleges of Technology, Toyama National Colleges of Technology
Groundwater is indispensable source of drinking water for the residents of the central north province of Sri Lanka such as Anuradhapura region. Many residents suffer from dental fluorosis and skeleton fluorosis due to high concentration of fluoride in drinking and cooking water. Spatial distribution of the fluoride concentration was investigated in 8 regions in Sri Lanka. The fluoride concentration was found to be quite different even between adjacent wells. This fact indicates that the residents can select wells for drinking water according to the fluoride concentration to reduce adverse effects of fluoride on their health. However, when the residents are not able to access wells with low concentration of fluoride nearby, fluoride should be removed. We propose fluoride removal by chicken bone char since it is a low cost material, and it would be acceptable from a religios point of view. It was found that the optimum carbonization temperature was 600℃ to remove fluoride.