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『農家経済調査』を利用した長期経済統計の推計方法

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No. 08-F-02 『農家経済調査』を利用した長期経済統計の推計方法 ——労働投入量の推計を事例として—— 高山航希*・高橋大輔† 2008 年 4 月 東京大学大学院農学生命科学研究科 農業・資源経済学専攻 *農村開発金融研究室 博士課程2 年 E-mail: [email protected]経済学研究室

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目次

1.本稿の課題 ...1 2.労働投入量の集計 ...3 1) 推計に関する諸問題と解決策 ...3 2) 推計結果 ...5 3.農業の労働生産性の展開過程...8 4.まとめ ... 10 引用文献 ... 11 付録 ... 12 付録1 沖縄県の取り扱い ... 12 付録2 経営耕地規模区分および調査時点の調整方法 ... 12 付録3 近年の『農家経済調査』の変更点 ... 14 付録4 労働分配率の計算に必要なデータの集計方法 ... 14 付録5 労働生産性,土地生産性,土地労働比の推計に必要なデータの集計方法 ... 15

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1.本稿の課題

農業部門の中長期的な構造変化を見るためには,マクロ統計を分析することが不可欠で ある.我が国においては,『農業および農家の社会勘定』(1986 年以降は『農業・食料関連 産業の経済計算』)や『生産農業所得統計』といったマクロレベルに集計されて公表されて いる統計書に加えて,『農家経済調査報告』(1995 年から 2003 年は『農業経営統計調査報 告』,2004 年以降は『経営形態別経営統計(個別経営)』)などから得られる農家一戸あたり のデータと,『農林業センサス』や『農業構造動態調査』などから得られる農家戸数のデー タを組み合わせることによって独自にマクロ統計を集計する試みが行われてきた1.例えば, 『長期経済統計』として知られる大川・篠原・梅村編 [1966]の研究は,多様なデータを組 み合わせることによって1870年代から1963年に至るまでの長期のマクロ統計を集計した 画期的な業績であり,農業を含む日本経済の長期的動向を考察する上で現在でも貴重な基 礎資料となっている.また,戦後の日本農業に焦点を当てた研究としては,泉田 [1987] が挙げられる.泉田 [1987]は,資本ストックに関するマクロ統計の集計を中心に論じたも のであり,農業部門における資本収益率と投資収益率について『社会勘定』を利用した場 合よりも厳密な議論を展開している.これらの推計は,『長期経済統計』の延長推計を行っ たYamada [1991]や,泉田 [1987]の推計方法に基づく Kuroda [1995]などによって更新さ れており,農業部門の要素投入や技術進歩について新たな知見を与えている. 我々は,基本的には泉田 [1987]の方法に基づきつつも,データの集計方法に改良を加え ることによって,より精度の高いマクロ統計を整備することに取り組んでいる2.特に,農 区別・規模別等のより集計度の低い平均データに基づいた集計を行うことによって,全国 平均のデータを利用する際に発生する様々なバイアスを除去することが我々の手法の特徴 である.我々の採用した方法は,既存研究における推計方法に比べてはるかに大量のデー タを処理することを必要とするものであり,計算機技術の発展と普及によって初めて可能 になったものであると言える. 1 頻繁に言及する統計書については,これ以降では以下のような略称を用いる.『社会勘 定』(『農業および農家の社会勘定』),『経済計算』(『農業・食料関連産業の経済計算』), 『農家経済調査』(『農家経済調査報告』・『農業経営統計調査報告』・『経営形態別経営統計 (個別経営)』という一連の統計),『農業センサス』(『農林業センサス』,『世界農林業セン サス』),『動態調査』(『農業構造動態調査』).また,既存研究や政府刊行統計書で統一さ れていない生産額に関連する用語については,中間投入を差し引かない生産額を「農業産 出額」と,中間投入を差し引いたものを「農業生産額」として区別する.なお,農業統計 に関する基礎的な議論については,荏開津 [1985]が現在でも極めて有用である. 2 我々の推計が『長期経済統計』(大川・篠原・梅村編 [1966])ではなく泉田 [1987]の方 法に依拠していることにはいくつかの理由がある.まず,戦前・戦後の日本農業の連続性 を強調するのでない限り,余りに長期にわたる統計を一つの推計方法で整備することは, かえって指数問題などの問題を発生させることにつながる.また,『長期経済統計』は第二 次大戦前の経済統計を整備することに重点を置いているため,政府統計が豊富に刊行され ている戦後についてはより簡便かつ正確な推計を行える場合が多い.戦前と戦後について 連続した経済統計が必要な場合には,戦後について最も適切と思われる手法で統計を整備 した後に,『長期経済統計』の数値と何らかの方法で接続させるというのが妥当な方法であ ろう.本稿の付録5 ではそのような接続の方法を説明している.

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2 本稿では,『農家経済調査』から労働投入に関するマクロ統計を集計することを例として, 我々の推計方法が『農家経済調査』に関する諸問題をどのように解決するかを説明する. 労働の集計に焦点を当てるのは,資本に比べて労働は概念を定義することが容易であるた めである.『農家経済調査』を用いたマクロ統計の推計を行う場合,労働投入量以外につい ても本稿の集計方法を適用することが原則として可能である.また,これに付随して,『農 家経済調査』を利用する際の問題点,特に統計書の設計変更に伴うデータの不連続性にど う対処するかを説明する.本稿における議論は,日本農業に関するマクロ統計を集計する ための技術的問題を解決するだけでなく,『農家経済調査』に基づいて議論を行う際に注意 するべき点や,農業統計改革における『農家経済調査』の意義についても示唆を与えるこ とが期待される.

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2.労働投入量の集計

1) 推計に関する諸問題と解決策 生産要素としての労働量には大きく2 種類の定義がある.ひとつはある時点における労 働人口を表す労働ストック,もうひとつはある期間に投入された労働時間を表す労働フロ ーである.本稿では後者の労働フローを推計することとし,また労働フローをより具体的 に労働投入量と呼ぶことにする. 労働投入量について基礎的な統計となるのは,『農家経済調査』に掲載されている調査農 家の一年あたり労働投入量である.ここで,農業全体の労働投入量を推計する最も単純な 方法は,農家一戸あたりの労働投入量の全国平均に全国の農家戸数をかけあわせることで ある(単純ふくらまし法).しかし,この方法には3 つの問題点がある.それは,『農家経 済調査』の「上層偏奇」および「地域偏奇」という問題,そして調査農家以外の農業事業 体が統計に含まれていないという問題である3 まず「上層偏奇」とは,『農家経済調査』のサンプル農家に占める小規模農家の割合が実 際よりも少なく,また大規模農家の割合がより大きいことにより,農家一戸あたり平均値 が実際よりも大規模農家に偏るという問題である.サンプル農家の規模別割合が現実から 乖離する理由は,意図的に大規模農家のサンプル率を上げていることと,経営状況の詳細 なアンケート調査に回答する農家の割合は大規模になればなるほど大きくなることが考え られる.この問題に対しては,単純に農家一戸あたり平均値を農家戸数倍するのではなく, 階層化された経営耕地規模別の平均に対応する経営規模の戸数をかけあわせ,積み上げる ことで対処する.この方法を,以下では泉田 [1987]にならって「積み上げ法」と呼ぶ.た だし,各階層内でも上層偏奇が存在すると考えられるが,このバイアスは積み上げ法では 除去できない. 次に,『農家経済調査』の「地域偏奇」とは,『農家経済調査』は日本の各地域における 統計をまんべんなく得られるように調査サンプルを配分しているため,調査対象農家の単 純平均である「都府県」や「全国」の平均値にバイアスが生じるという問題である.この 問題は,農区ごとの平均値に「積み上げ法」を適用することによって農区別のマクロ統計 を得たうえで合計することによって解消できる. 最後に,調査農家の一戸あたり平均を農家戸数倍して得られるのは日本の「農家」全体 の値であり,「農業」全体の値ではないという問題がある.これついては,労働推計とは別 の方法によって農家に対する「調査農家以外の農業事業体の比率 k」を求め,積み上げ法 で求めた農家全体の値に(1+k)を乗じることによって対処することができる.ここで,「調 査農家以外の農業事業体の比率」を求める方法としては,マクロレベルで集計された農業 部門の生産額と,『農家経済調査』における調査農家の生産額の集計値について比率を取る ことが考えられる.ただし,生産額データに基づいて「調査農家以外の農業事業体の比率」 3 『農家経済調査』における「上層偏奇」については泉田 [1987]を参照のこと.また,「調 査農家以外の農業事業体比率k」の算出方法については泉田 [1987]と張・泉田 [1997]を 参考にしている.なお,生産額に関する『農家経済調査』の集計結果と『生産農業所得統 計』を用いてk を推計する方法は張・泉田 [1997]によって提示されたものであり,『農業 センサス』における農地経営面積の統計に基づく泉田 [1987]とは異なる.

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4 を求める際には,農家の生産額あたり労働投入量と農家以外の生産額あたり労働投入量が 等しいことを仮定していることに留意する必要がある4「農家」の生産額については,『農 家経済調査』の農家一戸あたりの「農業粗収益」を「積み上げ法」によって階層別に集計 することにより推計することができる.一方,「農業」の生産額については,『農家経済調 査』における農業粗収益に最も近いデータとして,『生産農業所得統計』における「総産出」 のデータを用いる.ただし,『農家経済調査』における「農業粗収益」には農業機械を貸し 出すことなどによる「農業雑収入」が含まれており,これは『生産農業所得統計』におけ る「総産出」には含まれないため,「農家」の生産額を推計する際には「農業粗収益」から 「農業雑収入」を差し引くことが必要になる. 以上の議論から,日本農業における労働投入量は以下の(1)式のようにして算出すること ができる.まず,「調査農家以外の農業事業体比率k」は以下のように算出される.ただし, サブスクリプトのpは地域,iは階層を表す.また,Yは『生産農業所得統計』における 「総産出」を,またNpiは『農業センサス』と『動態調査』におけるp地域・i階層の農家 戸数を,ypiは『農家経済調査』におけるp地域・i階層の農家の「農業粗収益-農業雑収 入」の平均値を表す.

1 pi pi p i Y k N y   



(1) 次に,日本農業全体の労働投入量Lは以下の(2)式のようにして算出することができる.た だし,lpiは『農家経済調査』におけるp地域・i階層の農家の労働投入量の平均値を表す.

1

pi pi

p i L  k



N l (2) 以上のように,我々の採用した推計方法は,(1)生産額に関する積み上げ法によりkを求 め,(2)労働に関する積み上げ法による集計値に(1+k)をかけて全国値を求める,というも のである.我々はこの方法を「二段階積み上げ法」と呼んでいる.この方法の利点として は,『農家経済調査』における調査農家の対象が変更されても,推計値には大きな影響を与 えないことがある.例えば,1991 年以降の『農家経済調査』や農林業センサスでは調査対 象が販売農家に限定されており,これによって積み上げ法による労働投入量の集計値は小 さくなるが,その分だけ「調査農家以外の農業事業体の比率」が上昇するため,推計値に は結果的に大きな不連続は生じない.一方で,このような推計方法によっては,張・泉田 [1997]のように,全期間においてkを農業生産法人の比率として解釈することは不可能に なる5 4 『農家経済調査』の積み上げ集計に対応するマクロ統計が存在するならば,生産額以外 のデータを用いて「調査農家以外の農業事業体比率」を計算することも原理的には可能で ある.例えば,農地について同様の推計を行うこともできる.しかし,家族経営の農家と 農業生産法人を比較する際には,労働一単位あたりの耕地面積が一定であるという仮定よ りも労働一単位あたりの生産額が一定であると考えた方が妥当であろう. 5 「調査農家以外の農業事業体比率k 」が地域ごとに一致するとは限らないため,地域ご とにkを算出することによって「地域偏奇」をさらに抑えることも可能である.しかし, この場合には,地域ごとに積み上げた生産額データに対応するマクロ統計として,『生産農 業所得統計』の県別データを農区ごとに合計して用いなければならない.しかし,『生産農

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実際の推計作業は,地域区分を「北海道」「東北」「北陸」「北関東」「南関東」「東山」「東 海」「近畿」「山陰」「山陽」「四国」「北九州」「南九州」の13 農区(2003 年度以降は「北 海道」「東北」「北陸」「関東・東山」「東海」「近畿」「中国」「四国」「九州」の 10 農区) に分けて行った.以上のいずれの農区に含まれていない沖縄の取り扱いについては,付録 1 を参照されたい.経営規模区分は『農家経済調査』に合わせた.この際,各種統計の経 営規模区分と調査時点が必ずしも一致していないため,事前に調整しなければならない. この作業についての説明は付録2 において行う.また,近年の『農家経済調査』は幾度か の変更を経ているため,利用に当たって統計の連続性についての配慮が必要になるが,こ れについては付録3 で説明する. 2) 推計結果 「調査農家以外の農業事業体比率」の推計結果は表1 のとおりである. 表 1 調査農家以外の農業事業体比率 年度 農業生産額 (10 億円) 1+k 年度 農業生産額 (10 億円) 1+k 農家 農業全体 農家 農業全体 1960 2,123 1,963 0.92 1983 10,476 11,181 1.07 1961 2,327 2,191 0.94 1984 10,673 11,695 1.10 1962 2,346 2,473 1.05 1985 10,769 11,578 1.08 1963 2,708 2,651 0.98 1986 10,491 11,213 1.07 1964 2,955 2,951 1.00 1987 9,660 10,565 1.09 1965 3,307 3,276 0.99 1988 9,593 10,651 1.11 1966 3,688 3,720 1.01 1989 9,603 11,163 1.16 1967 4,226 4,221 1.00 1990 9,865 11,491 1.16 1968 4,405 4,453 1.01 1991 9,674 11,426 1.18 1969 4,638 4,660 1.00 1992 9,534 11,043 1.16 1970 4,677 4,642 0.99 1993 8,929 10,663 1.19 1971 4,694 4,701 1.00 1994 9,306 11,095 1.19 1972 5,352 5,338 1.00 1995 8,814 10,417 1.18 1973 6,700 6,495 0.97 1996 8,695 10,215 1.17 1974 7,968 7,996 1.00 1997 8,350 9,915 1.19 1975 9,309 9,092 0.98 1998 8,123 9,786 1.20 1976 9,747 9,499 0.97 1999 7,570 9,305 1.23 1977 9,893 10,172 1.03 2000 7,111 9,067 1.28 1978 10,132 10,395 1.03 2001 7,039 8,893 1.26 1979 9,913 10,470 1.06 2002 6,909 8,911 1.29 1980 9,442 10,376 1.10 2003 7,137 8,821 1.24 1981 10,136 10,705 1.06 2004 6,956 8,657 1.24 1982 10,099 10,755 1.06 出所: 農林水産省『農家経済調査』『農業センサス』『動態調査』『生産農業所得統計』より作成. 註: 各データの推計方法は本文参照. 1976 年度以前において,1 + kは本来ならばありえない1 未満の値をしばしばとってい 業所得統計』の「利用者のために」において説明されているとおり,この県別データには 市町村の境界を越えて取り引きされた中間生産物が控除されていないという問題がある. 実際,我々が地域別にkを推計したところ,一部の地域で長期間に渡って0 を大きく下回 る計算結果となった.

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6 る.これは統計の誤差によるものと考えられるため,この期間の1 + kはほぼ1 であると 結論づけることができる.以下の推計においても,1 + kが1 未満の値となっている年度 については1 + kは1 として評価している.また,1977 年度以降,1 + kは傾向的に上昇 している.また,張・泉田 [1997]が指摘するとおり,『生産農業所得統計』のカバー率が 100%ではないこと,『農家経済調査』から階層内の上層偏奇による上方バイアスが残って いることなどにより,kの推計値は過小に評価されている可能性がある. 前述のとおり,『農家経済調査』の農家の定義が変更されているため,全ての年度の k に一貫した解釈を与えることはできないが,期間を区切った上での議論であれば可能であ る.1990 年度までのkは,張・泉田 [1997]が論じるとおり,農業生産法人の比率と考え てよい.農業生産法人の比率は1976 年度まではほぼ 0 で,1977 年度から徐々に増加しは じめ,1990 年度には約 18%にまで上昇した.1991 年度以降の『農家経済調査』は,調査 対象から自給農家を除外した販売農家のみに対する調査であるため,同期間のkには農業 生産法人に加えて自給農家の比率が含まれている.さらに,1996 年度以降では,『農家経 済調査』に県別のデータが掲載されなくなったことにより,調査対象農家の生産額に沖縄 県の分が含まれないため,同期間の k にはさらに沖縄県の農業生産比率も含まれている. 農業生産法人の比率が上昇したことに加えて以上のような統計上の変化があったことによ り,kは1991 年度以降に大きく上昇し,2002 年度には「調査農家以外の農業事業体比率」 が約22%となっている. 次に,表1 の推計結果を用いて「二段階積み上げ法」により日本農業における労働投入 量を推計した結果が表2 である.1968 年度を除けば,労働投入量は全期間に渡って単調 に減少している.減少が特に急なのは60 年代から 70 年代のはじめにかけてであり,その 後は減少の速度が鈍化している.2004 年度の労働投入量は 1962 年度の約四分の一となっ ている.また,表2 には農業産出額のうち労働への分配率も示した.ここでの労働分配率 は,泉田 [1987]と同様に,「労働分配率=労働投入量×賃金率÷農業産出額」として計算 した.それぞれのデータの推計方法は付録4 で説明する.労働分配率は 1980 年ごろまで 低下傾向にあり,その後はほぼ横ばいとなっている.以上の推計結果は,泉田 [1987]にお ける推計値と大きく離れておらず,集計方法の違いによる推計値の差異は深刻ではない6 6 我々は単純ふくらまし法でも労働投入量を集計し,二段階積み上げ法と比較した.単純 ふくらまし法による労働投入量は,上層偏奇と地域偏奇の影響を受け,また調査農家以外 の農業事業体による労働投入量を含まないデータである.さらに,1991 年度以降は『農家 経済調査』の定義変更により,販売農家以外による労働投入量を含まない.単純ふくらま し法による集計結果の概略を示すと,1962 年度は約 191 億時間(二段階積み上げ法から の差異は+4.2%),1970 年度は約 141 億時間(同+8.4%),1980 年度は約 90 億時間(同 +1.9%),1990 年度は約 68 億時間(同-4.0%),2000 年度は約 41 億時間(同-11.0%)と なっている.

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表 2 農業労働投入量 年度 農業労働投入量 (100 万時間) 賃金率 (円/時) 労働 分配率 計 男 女 男 女 1962 18,363 8,816 9,546 73 61 44.9% 1963 17,605 8,396 9,209 87 72 48.4% 1964 16,760 7,960 8,800 98 79 46.6% 1965 15,818 7,523 8,295 107 86 43.5% 1966 15,228 7,164 8,064 117 94 41.1% 1967 14,718 6,947 7,771 129 104 37.8% 1968 14,952 6,968 7,984 154 126 43.4% 1969 13,932 6,495 7,437 169 138 41.7% 1970 13,014 6,051 6,960 198 151 43.7% 1971 12,226 5,701 6,525 222 170 46.8% 1972 11,815 5,557 6,257 251 190 45.3% 1973 11,222 5,333 5,890 296 226 42.2% 1974 10,578 5,055 5,524 393 299 42.6% 1975 10,310 4,975 5,335 444 343 40.4% 1976 10,186 4,961 5,225 470 367 40.6% 1977 9,610 4,701 4,910 534 409 39.5% 1978 9,227 4,526 4,704 555 430 38.6% 1979 8,940 4,370 4,570 578 450 38.1% 1980 8,849 4,344 4,505 613 474 40.3% 1981 8,500 4,201 4,299 645 498 39.0% 1982 8,358 4,134 4,224 676 521 40.4% 1983 8,300 4,106 4,194 699 539 40.5% 1984 8,166 4,058 4,108 719 550 38.4% 1985 7,939 3,991 3,948 733 562 37.5% 1986 7,776 3,908 3,869 763 581 39.0% 1987 7,669 3,859 3,810 759 581 40.9% 1988 7,499 3,794 3,705 776 593 41.2% 1989 7,274 3,688 3,586 799 610 39.1% 1990 7,047 3,591 3,456 829 631 38.3% 1991 6,668 3,427 3,241 859 651 37.6% 1992 6,397 3,316 3,081 910 686 39.3% 1993 6,288 3,292 2,995 942 712 42.5% 1994 5,921 3,106 2,815 960 727 38.5% 1995 5,354 2,870 2,484 982 743 38.5% 1996 5,151 2,773 2,378 1,022 771 39.6% 1997 5,056 2,731 2,325 1,062 791 41.6% 1998 4,885 2,646 2,239 1,068 794 40.5% 1999 4,710 2,560 2,149 1,069 797 41.7% 2000 4,646 2,552 2,094 1,062 796 42.1% 2001 4,524 2,523 2,000 1,063 797 42.0% 2002 4,572 2,560 2,012 1,063 799 42.7% 2003 4,340 2,424 1,915 1,063 799 40.8% 2004 4,217 2,375 1,842 1,062 799 40.2% 出所: 農林水産省『農家経済調査』『農業センサス』『動態調査』『生産農業所得統計』より作成. 註: 各データの推計方法は本文および参照.

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3.農業の労働生産性の展開過程

以上のような長期にわたる経済統計は,マクロレベルでの日本農業の動向を把握する上 で極めて有用である.ここでは,山田 [1992]における「アジア農業の発展パターン」に関 する議論を例に取り,近年における日本農業の労働生産性の展開過程について論じる. まず,農業生産額をY,労働をL,土地をAとすると,労働生産性(Y / L),土地生産性 (Y / A),土地労働比(A / L)には次の関係が成立する.

Y L

 

 Y A

 

 A L

(3) 山田 [1992]は,この式に従って土地労働比を x 座標,土地生産性を y 座標として時系列 データをプロットすることにより,アジア農業の発展パターンについて論じている.山田 [1992]は,アジア農業に共通する発展経路として,初期には土地生産性と土地労働比が同 時に上昇し(局面I),次に土地生産性が上昇する一方で人口成長により土地労働比は減少 し(局面 II),さらには農業部門の構造調整によって土地生産性だけでなく土地労働比も 上昇する(局面III),という「S 字型発展パターン」を見出している.山田 [1992]の議論 は,1987 年までのアジア諸国のマクロ統計に基づくものであるが,現在の日本農業はどの ような局面に置かれているだろうか.本稿では,第2 節までに推計した労働投入量と別途 推計した農業生産額と耕地面積を使って,日本におけるS 字型の発展過程をフローターム で検証する.また,本稿の推計よりも前の期間については,大川・篠原・梅村編 [1966] やYamada [1991]のデータを利用し,適切と思われる方法によって本稿の統計と接続させ た.検証の対象期間は各データが利用可能な1880 年から 2000 年までの約 120 年間であ る.各データの推計方法と既存研究との接続方法は付録5 に記した. 推計結果を図示したものが図1 である.まず,1880 年から 1910 年代半ばまでは土地労 働比が減少傾向にある一方で土地生産性が上昇する左上がりのグラフとなっている.1920 年ごろからは土地労働比が上昇に転じ,グラフは右上がりとなる.1930 年ごろから 1950 年ごろにかけては,戦間期,戦中期および戦直後の混乱期にあたる.特に 1940 年代には 土地生産性も土地労働比も低下し,グラフが左下がりとなっている.第二次大戦後の1950 年ごろから減反政策が始まる1970 年ごろまで土地生産性と土地労働比はいずれも急激に 上昇した.1975 年ごろから 1980 年代はじめにかけては土地生産性が低下傾向に転じたが, その後1980 年代の終わりまでは上昇を続けた.ここまでの我々の推計結果からは,山田 [1992]の議論における S 字曲線の局面 II 以降の動向を見出すことができる. 一方で,我々の推計は2000 年にまで延長されているため,日本農業の現局面にまで議 論を進めることが可能となる.これによれば,1985 年以降では農業部門から他部門への労 働移動によって土地労働比の上昇が続いている一方で,土地生産性は完全に横ばいになっ ている.これにより労働生産性の上昇は続いているが,これは労働投入量の減少によって も土地生産性が下落しない範囲内での生産性上昇に留まっている.これは,山田 [1992] の言う「アジア型」だけでなく「ヨーロッパ型」「新大陸型」「アフリカ型」のどれにも分 類されない独特の傾向である.

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図 1 日本農業の労働生産性の展開過程:土地生産性と土地労働比 出所: 農林水産省『農家経済調査』『農業センサス』『動態調査』『生産農業所得統計』『経済計算』 『農業物価統計』,泉田 [1987],大川・篠原・梅村編 [1966],Yamada [1991],不動産研 究所『田畑価格及び小作料調』より作成. 註: 各データの推計方法は本文参照. 1880 1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 19952000 0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000 1,400,000 1,600,000 1,800,000 0.0000 0.0001 0.0002 0.0003 0.0004 0.0005 0.0006 0.0007 0.0008 土地労働比 (ha/時間) 土地生産性 (円/h a)

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4.まとめ

我々は,農業部門の総算出データから「調査農家以外の農業事業体比率 k」をもとめ, 『農家経済調査』から得た農家の労働投入量に1 + kを乗じる,という「二段階積み上げ 法」によって日本農業全体の労働投入量を計算した.言うまでもなく,この「二段階積み 上げ法」は労働投入量だけではなく,『農家経済調査』に掲載されている各項目に対応する マクロ統計の集計に応用することが可能である.大川・篠原・梅村編 [1966]や泉田 [1987] の現在に至るまでの影響力を考えても分かるとおり,日本農業のマクロ統計を整備するこ とは,他産業と農業との比較や農業部門の長期的構造変化の分析をする際に極めて有効で ある.分析者が関心のあるマクロ統計が統計書に記載されていない,あるいは統計書のデ ータに問題がある場合でも,『農家経済調査』という他に類をみない詳細な統計書からマク ロ統計量に接近することが可能である.こうしたことから,今後の農林統計改革の中で『農 家経済調査』の枠組みを維持していくことは,現在の農業政策の立案に貢献するだけでな く,未来の世代が日本農業の発展過程を分析する際の基礎資料を残していくためにも不可 欠であると言える. 本稿に残された今後の課題としては,日本農業に関する労働投入量以外のマクロ統計の 整備が挙げられる.我々は現在,農業生産,中間投入,土地,資本の推計を進めており, 『農家経済調査』に依拠することができない場合のマクロ統計の集計方法についても検討 している.また,日本農業の生産性上昇の傾向について議論するためには,本稿の第3 節 のようなグラフによる議論だけでなく,Yamada [1991]で行われているような指数理論に 基づく総合生産性の検討も有効であろう.

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引用文献

[1] 張文・泉田洋一「農家以外の農業事業体の産出シェアの推計」,『農業経済研究別冊 日 本農業経済学会論文集』,pp. 145~147,1997 年. [2] 荏開津典生『農業統計学』,1985 年,明文書房. [3] 泉田洋一「資本及び投資の収益率に関する理論的・実証的研究」『宇都宮大学農学部学 術報告特輯』,第44 巻,1987 年.

[4] Kuroda, Y., ―Labor Productivity-Measurement in Japanese Agriculture, 1956–90,‖

Agricultural Economics, Vol. 12, No. 1, pp. 55~68, 1995.

[5] 大川一司・篠原三代平・梅村又次編「農林業」『長期経済統計:推計と分析』,第 9 巻, 1966 年,東洋経済新報社.

[6] 山田三郎『アジア農業発展の比較研究』,1992 年,東京大学出版会.

[7] Yamada, S., ―Quantitative Aspects of Agricultural Development,‖ in Y. Hayami and S. Yamada eds.,The Agricultural Development of Japan: A Century’s Perspective, Tokyo: University of Tokyo Press, 1991.

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付録

付録 1 沖縄県の取り扱い 沖縄県は,1972 年の返還後の統計しか入手できないこと,『農家経済調査』における 13 の農区のいずれにも含まれていないことから,データの取り扱いに注意が必要となる場合 がある.ここではその対処方法について説明する. まず,沖縄県がどの農区にも含まれていないことから,沖縄県のデータを必要とする場 合は農区別ではなく県別のデータを利用して推計する.ただし,県別の経営耕地規模別デ ータは『農家経済調査』等に掲載されていないため,積み上げ法ではなく単純ふくらまし 法,つまり県別の平均値に農家戸数をかけ合わせることにより計算する. 次に,『生産農業所得統計』の「総産出」の値は,1975 年まで沖縄県が含まれていない. したがって,歴年基準である「総産出」を付録2 で説明される方法で年度換算すると,1975 年度の計算結果は沖縄県を含む統計と含まない統計の加重平均値となってしまう.しかし, 1977 年版の『生産農業所得統計』には 1976 年の沖縄県を含むデータと含まないデータの 両方が掲載されていることから,1975 年度の「総産出」を計算する際には沖縄県を含まな いデータを使い,1976 年度の計算には沖縄県を含むデータを使えばこの問題を避けること ができる.『農家経済調査』のデータを積み上げる際には,『生産農業所得統計』に合わせ て,1975 年度までは沖縄県を除き,1976 年度以降は沖縄県を含めればよい.この結果, 本稿が集計したデータに沖縄県が含まれるのは1976 年度以降となる. なお,沖縄県の男女別労働投入量は『農家経済調査』に掲載されていない.このため, 男女合計の労働投入量を推計した上で,沖縄県以外の 13 農区における労働投入量の男女 比率を使って沖縄県の労働投入量を男女別に分解した. 付録 2 経営耕地規模区分および調査時点の調整方法 本稿の推計では,『農家経済調査』から規模別統計が入手できる中で最も集計度が低いデ ータである農区別の統計を用いている.また,農区別・経営耕地面積別の農家戸数は『農 業センサス』と『動態調査』から得ることができる.ただし,これら3 つの統計は経営耕 地規模の区分が一部で異なっており,また調査時点もまちまちである.よって,積み上げ 法による推計を行うためには,まず規模区分の調整を行った上で,調査時点の調整を行う 必要がある. 経営耕地規模の区分調整は,『農家経済調査』の区分に『農業センサス』と『動態調査』 の区分を合わせる形で行う.例えば,2000 年の『農家経済調査』には北海道の経営耕地面 積1~2ha の農家一戸あたり平均値と 2~3ha の平均値があるのに対し,2000 年のセンサ スには1~3ha の農家戸数の合計値しか掲載されていない.この場合には,2001 年と 1999 年の『動態調査』に1~2ha と 2~3ha の農家戸数があることを利用して,センサスにお ける戸数を以下の方法によって分割する.まず,2001 年と 1999 年において 1~3ha の農 家戸数の合計に対する1~2ha の農家戸数の割合を計算し,これを直線補間することによ って2000 年の割合を推計する.さらに,この割合を 2000 年センサスの 1~3ha の農家戸 数に乗じることによって,2000 年の 1~2ha・2~3ha の農家戸数を推計することができ る.ただし,『動態調査』の調査時点は毎年の1 月 1 日であるのに対して,『農業センサス』

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の調査時点は毎年の2 月 1 日であるため,センサスの調査時点に合わせるために前後の年 の『動態調査』について13 ヶ月:11 ヶ月の加重平均を取る必要がある.また,各統計の 経営規模区分が一致しない別の例として,『農家経済調査』には北海道の 5~7ha と 7~ 10ha の平均値があるのに対して,『農業センサス』と『動態調査』には 5~7.5ha と 7.5 ~10ha の農家戸数しか掲載されていないという場合がある.この場合には,規模区分が 一致する年が無いため,割合を前後年からの直線補間で求める方法は使えない.このため, 5~10ha の農家戸数分布が一様であると仮定し,5~7.5ha の農家戸数を 4/5 倍して 5~ 7ha の戸数とし,残りの 1/5 を 7.5~10ha の戸数に加えて 7~10ha の戸数とした.さら

に別の例として,2004 年の『農家経済調査』の北海道では 0~5ha の平均値しか表示され ていない一方,2003 年では 0~2ha,2~3ha,3~5ha の 3 つに分けられた平均値しか表 示されていないというケースがある.後述するように,この期間の『農家経済調査』は後 で歴年表示を年度表示に変換する必要があるため,予め前後年で区分を揃えておかなけれ ばならない.この場合,まず『農業センサス』および『動態調査』から,後述する方法で 2003 年中央(7 月 1 日)時点の 0~2ha,2~3ha,3~5ha の各農家戸数を計算しておき, それをウェイトとして0~2ha,2~3ha,3~5ha の各平均値を加重平均し,2003 年の 0 ~5ha の平均値とした.以上 3 つの方法を利用して,経営耕地規模の区分調整を行った. 規模区分調整に続いて調査時点の調整を行う.『農家経済調査』の調査期間は,1994 年 までは年度(各年4 月~翌 3 月)であるのに対して,1995 年以降は暦年である.また,『農 業センサス』の調査時点は各年2 月 1 日であり,『動態調査』の調査時点は 1969 年までは 前年の12 月 1 日,1971 年からは各年 1 月 1 日である.本稿では会計年度を基準に推計を 行っているため,1995 年以降の『農家経済調査』と,全期間の『農業センサス』と『動態 調査』について調整を行う必要がある.例えば,1995 年以降の『農家経済調査』について は,1995 年のデータと 1996 年のデータの加重平均を 9:3 の割合で取ることによって, 1995 年度のデータとすることができる.2004 年以降の『農家経済調査』では「北関東」 「南関東」「東山」「山陰」「山陽」「北九州」「南九州」の6 農区(以下では旧 6 農区と呼 ぶ)のデータが無くなり,代わりにそれらが統合された「関東・東山」「中国」「九州」の 3 農区(以下では新 3 農区と呼ぶ)のデータのみの掲載となったが,新 3 農区のデータは 2003 年までの『農家経済調査』にも掲載されているため,2002 年度までの年度換算デー タは 2003 年までの旧 6 農区のデータを使って計算でき,2003 年度以降の年度データは 2003 年以降の新 3 農区のデータを使って計算できる.この結果,2002 年度までは日本全 国で13 農区(「北海道」「東北」「北陸」「北関東」「南関東」「東山」「東海」「近畿」「山陰」 「山陽」「四国」「北九州」「南九州」),2003 年度以降は 10 農区(「北海道」「東北」「北陸」 「関東・東山」「東海」「近畿」「中国」「四国」「九州」)に分けられたデータが手に入る. また,『農業センサス』と『動態調査』については,年度データにあわせて,各年度中央(10 月 1 日)にそろえる必要がある.これも,『農業センサス』と『動態調査』の調査時点が 異なることに注意して,前後の年のデータを直線補間することによって年度中央の農家戸 数を求める. (1+k)の分子である『生産農業所得統計』の「総産出」は歴年表示であるため,年度表示 に換算しておく必要がある.換算は,前述の1995 年以降の『農家経済調査』と同様,9: 3 の加重平均を取ることで行った.

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14 付録 3 近年の『農家経済調査』の変更点 『農家経済調査』は,1992 年度版,1995 年版,2004 年版で大きな変更があった.変更 点のうち本稿で行った推計に関わるものをここで解説する. 平成4 年度版では,調査対象農家が販売農家に限られるようになった.小規模な自給的 農家が調査対象から外れたため,1992 年度以降のデータはそれ以前のデータと連続しない. 一方,『農業センサス』と『動態調査』は1990 年に同様の定義変更を行っている.この結 果,1990 年と 1991 年において,『農業センサス』『動態調査』と『農家経済調査』との間 で調査対象農家の定義が異なってしまう.この問題に対し,1990 年については,1990 年 の『農業センサス』と1991 年の『動態調査』で別途集計されている自給的農家戸数をそ れぞれ「販売農家」の最小規模区分の戸数に加えることで経営耕地規模別の自給的農家戸 数を計算でき,ここから付録2 で説明する方法で 1990 年度中央の全農家戸数を計算すれ ば,調査対象農家の定義を合わせることができる.1991 年については,『農家経済調査』 1992 年度版に掲載されている 1991 年度の販売農家に限った平均値を利用することで定義 を合わせる. 1995 年版では,調査対象期間がそれまでの会計年度基準から歴年基準に改められた.し たがって,本稿では平成7 年以降について,歴年基準のデータを会計年度基準に変換した. その手順は付録2 で説明した. 2004 年版からは,経営耕地規模別階層の区分が変更された.したがって,そのままでは 2003 年と 2004 年の平均値から 2003 年度の平均値を推定することができない.この問題 への対処方法は付録2 で説明した.また,「南関東」「東山」「山陰」「山陽」「北九州」「南 九州」の6 農区のデータが掲載されなくなり,代わりにそれらが統合された「関東・東山」 「中国」「九州」の 3 農区のデータしか利用できなくなった.この問題についても付録 2 で対処方法を解説した.2004 年版での変更点としては,補填金・助成金が新たに農業粗収 益の中の農業雑収入に組み入れられるようになったことも挙げられる.そのため,農業粗 収益に不連続が生じている.しかし,本稿では農業粗収益から農業雑収入を除いたものを 農家の生産額として利用しているため,この不連続について特別な処理を行わなくても農 家生産額の連続性は失われない.また,平成 16 年版以降の『農家経済調査』は独自の調 査を行わず,『営農類型別経営統計』の経営形態別・営農類型別・営農類型規模別・都道府 県別に区分した階層ごとの平均値に,直近の『農業センサス』から分かる標本抽出率の逆 数をウェイトとした加重平均を取ることによって販売農家の一戸当たり平均を求めるよう になった.しかし,調査対象農家の定義や調査方式は変化していないため,データの連続 性は維持されていると考えられる. 付録 4 労働分配率の計算に必要なデータの集計方法 ここでは,労働分配率の計算に必要な農業産出額と賃金率の推計方法について説明する. 農業産出額は『経済計算』から 2000 年度の固定価格表示のものを利用した.賃金率は 泉田 [1987]と同様に,農林水産省『農業物価統計』における男女別1日あたり臨時雇賃金 を,男女別1日あたり家族労働時間で除したものを使用した.1 日あたり家族労働時間は, 『農家経済調査』の家族農業労働時間を家族農業労働日数で除してもとめた.ただし,1995 年以降は『農家経済調査』に家族農業労働日数の記載がないため,1985~1994 年度の 1

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日あたり家族労働時間の計算結果がほぼ横ばいであることに注目して,1991~1994 年度 の1 日あたり家族労働時間の平均値を 1995 年度以降の 1 日あたり家族労働時間とした. 付録 5 労働生産性,土地生産性,土地労働比の推計に必要なデータの集計方法 ここでは,労働生産性とその土地生産性と土地労働比への分解に必要なデータ,すなわ ち農業生産額・労働投入量・土地投入量に関する統計の推計方法について説明する.この ために,我々はまず本稿の計測期間である 1962 年度以降について必要な統計を整備した 上で,1963 年まで計測されている『長期経済統計』(大川・篠原・梅村編 [1966])および それを延長することによって1985 年まで計測されている Yamada [1991]に接続させる, という作業を行った.なお,Yamada [1991]のデータが 5 年移動平均であるのに合わせて, 本稿が推計したデータにも移動平均を取った. まず,土地投入量には水田換算した作付面積を用いた.1960 年度以降については,『耕 地および作付面積統計』の田畑別作付面積を利用し,それ以前ではYamada [1991]の推計 値を用いた.Yamada [1991]のデータのうち戦後の部分は『耕地および作付面積統計』に 基づいているため,両者の値は 1960 年度で一致する.そして,不動産研究所『田畑価格 及び小作料調』の1998~2002 年における水田に対する畑の地代の全国平均値の比率を畑 作付面積に乗じることにより水田換算された畑作付面積を求め,それを水田作付面積と合 算し,水田換算作付面積を得た. 1960 年以降の農業生産額のデータは,『経済計算』の農業産出額から中間投入を差し引 くことにより得られる.これ以前のデータについては,『長期経済統計』の 1936~1938 年平均価格による固定価格表示の農業粗付加価値額を1960~1963 年度の平均倍率で接続 して,1880~2000 年度の生産額データとした. 1962 年度までの労働投入量の推計方法は本稿の第 2 節で論じたとおりである.1961 年 度までの労働投入量は,Yamada [1991]におけるフローの総労働時間のデータを利用し, これを本稿で推計したデータに接続させる.そのために,Yamada [1991]を直線補間した ものを,Yamada [1991]の 1960 年度の値と本稿の 1958~1962 年度の平均値との倍率で, 本稿のデータに接続させた.

表 2  農業労働投入量  年度  農業労働投入量 (100 万時間)      賃金率 (円/時)  労働  分配率 計 男 女     男 女  1962  18,363   8,816   9,546     73   61   44.9%  1963  17,605   8,396   9,209     87   72   48.4%  1964  16,760   7,960   8,800     98   79   46.6%  1965  15,818   7,523   8,295
図 1 日本農業の労働生産性の展開過程:土地生産性と土地労働比  出所:  農林水産省『農家経済調査』『農業センサス』『動態調査』『生産農業所得統計』『経済計算』 『農業物価統計』 ,泉田  [1987],大川・篠原・梅村編  [1966],Yamada [1991],不動産研 究所『田畑価格及び小作料調』より作成.  註:  各データの推計方法は本文参照.  188018901900191019201930 19401950 1960 1965 1970 19751980 1985 1990 1995 2

参照

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