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FEM 解析を用いたスラブ付き外ダイアフラム形式柱梁接合部の
力学的挙動に関する研究
作本 尚弥 1. はじめに 本研究は,外ダイアフラム形式柱梁接合部の設計法 を確立することを目的としている.筆者はこれまで, コンクリートスラブ(以下,床スラブ)の存在が外ダ イアフラム形式柱梁接合部の構造性能に与える影響を 確認するために,中空柱および CFT 柱について床ス ラブ付きト字形部分架構試験体による載荷実験を実施 し,文献 1)を参考に床スラブの影響を考慮して仮定 した接合部の応力状態に対する全塑性曲げ耐力算定式 の誘導を行った 2).算定式による計算結果は,実験結 果を1 割程度過小評価しており,概ね良い対応を示し たが,文献 1)はノンダイアフラム形式を対象にした もので,外ダイアフラム形式を対象とした本研究にお いて,仮定した応力状態が妥当なものであるかの検討 は行っていない.また,文献 3),4)を参考にした床 スラブの有効圧縮耐力を,外ダイアフラム形式を対象 にした本研究に用いる妥当性についての検討も行って いない. そこで本研究では,3 次元非線形有限要素法(以下, FEM)解析を行い,実験結果と解析結果の剛性,耐力 の比較および接合部周辺の応力伝達機構について考察 し,接合部全塑性曲げ耐力算定法の妥当性を検討する. 2. 実験概要 図1 に外ダイアフラム詳細,図 2 に床スラブ付きの 試験体,表1 に試験体一覧を示す.試験体はすべて外 ダイアフラム形式のト字形部分架構試験体であり,実 験変数は床スラブおよび充填コンクリートの有無とす る.柱,梁,外ダイアフラムの鋼種および形状は全試 験体に共通であるが,床スラブ付きの試験体V-S およ び C-S に関しては直交梁(BH-300×120×6×12) を設け,文献 3)を参考に,設計上完全合成梁とする ために,梁上および直交梁上に頭付きスタッド(13@ 100 h=60)を取り付けている.外ダイアフラムは角形 鋼管と脚長 10mm の両面隅肉溶接により接合されて いる.試験体はすべて接合部が先行して降伏するよう に設計されている.また,スラブ幅は文献 3)の有効 幅(750mm)を十分に満たす 1000mm とし,スラブ 内にはかぶり厚さ30mm の位置に,長辺・短辺方向と もに100mm ピッチで異形鉄筋(D10)を配筋してい る(図2). 外ダイアフラム(SN490B) td (mm) hd (mm) Bd (mm) a (mm) 12 40 120 120 ※td:外ダイアフラム板厚 hd:外ダイアフラムせい Bd:外ダイアフラム端部幅 a:外ダイアフラム出寸法 表 1 試験体一覧 試験 体名 柱 (BCR295) 梁 (SN490B) 床スラブ 充填コン クリート V-N □-200×9 BH- 300×120×6×12 無 無 V-S 有 無 C-N 無 有 C-S 有 有 40 120 45° 図 1 外ダイアフラム詳細 図 2 試験体(V-S) A断面 10 00 60 60 PL-12(SN490B) 外ダイアフラム 14 00 25 13 50 25 52 5 30 0 52 5 BH- 300× 120× 6× 12(SN490B) □ - 200× 200× 9(BCR295) 1500 A 1800 50 0 1860 1450 85 @100 @100 @ 10 048- 2 3. 解析概要 3.1 解析モデル 図3 に解析モデルの一例(C-S)を示す.柱,梁,充 填コンクリートを8 節点ソリッド要素,床スラブを 4 節点シェル要素とし,鉄筋は床スラブと節点を共有さ せ,完全付着とした軸力部材として2 節点トラス要素 を用いる.床スラブ付き試験体において,床スラブが 梁の変位に追従するように,スタッド位置ではスラブ 厚中心と梁上フランジ板厚中心位置を剛体要素で接続 している.床スラブと柱,柱と充填コンクリートとの 間には接触要素を用いており(図4),各接触要素間の 距離が 0.01mm 以下になると接触判定し抵抗を示し, 乖離応力=0 つまり節点応力が負から正の値になった 時に乖離を示すものとしている.なお,摩擦は無視し ている.柱の両端の治具および加力点位置では剛体要 素としており,実験と同様に柱下側をピン,上側をピ ンローラー支持となるように境界条件を与えている. 試験体の対称性(図3 の XZ 面)を考慮し,1/2 モデル として対称面の節点のY 方向変位を拘束している. 3.2 材料特性モデル 表 2,3 に解析に用いた材料特性を示す.鋼材は引 張試験から得られた応力-歪関係を真応力-対数歪関 係に換算した後,多直線近似したものを用いる.板厚 およびヤング率は公称値を用いている.塑性域におけ る構成則はvon Mises の降伏条件,連合流れ則および 等方硬化則に基づいている.コンクリートは図5 に示 すように,引張側はひび割れ発生後のひずみ軟化を考 慮し,圧縮側は圧縮強度に達した後,その強度を維持 するものとする.ひび割れ後のせん断力保持率は 0.5 と す る . 塑 性 域 に お け る 構 成 則 は , 線 形 Mohr-Coulomb の破壊基準(内部摩擦角=37°)に従うもの とする. 表 3 コンクリートの材料特性 部位 試験 体名 圧縮強度 (N/mm2) 引張強度 (N/mm2) ヤング率 (N/mm2) スラブ V-S 33.5 3.2 30343 C-S 20.6 2.3 24396 CFT C-N 40.0 4.0 27518 C-S 40.8 4.1 30689 ※充填コンクリートの引張強度は割裂試験を行っ ていないため圧縮強度の1/10 とした 表 2 鋼材の材料特性 試験 体名 部位 鋼種 公称板厚 (mm) ヤング率 (N/mm2) 降伏応力 (N/mm2) 引張強さ (N/mm2) V-N V-S 外ダイアフラム 梁フランジ SN490B 12.0 205000 381 529 梁ウェブ SN490B 6.0 395 548 角形鋼管 BCR295 9.0 412 481 スラブ内鉄筋 SD295 - 330 490 C-N C-S 外ダイアフラム 梁フランジ SN490B 12.0 205000 354 528 梁ウェブ SN490B 6.0 400 549 角形鋼管 BCR295 9.0 403 445 スラブ内鉄筋 SD295 - 355 501 ※溶接部の材料特性は,外ダイアフラムと同様とした 図 4 接触要素の定義 変形体-鋼管柱 変形体- 充填コンクリート θb V 図 6 変形の定義 X Z Y 図 3 解析モデル(C-S) 鋼管柱 梁ウェブ 梁フランジ 充填コンクリート 鉄筋 床スラブ 図 5 コンクリートの材料特性 σ σcr Esoft=Ec/5 ε σc 圧縮 Ec 引張
48- 3 3.3 解析条件と変形の定義 本 解 析 に は 汎 用 非 線 形 構 造 解 析 ソ ル バ ー MSC.Marc20125)を用いた.加力は床スラブが圧縮を 受ける一方向単調載荷とし,梁先端部の鉛直変位が 60mm となるまで強制変位を与えた.収束計算の手法 としては,Newton-Raphson 法を用いている. 図6 に変形の定義を示す.梁回転角 θbは梁の変形角 から梁の剛体変形角を除いたもので,梁端モーメント Mbは加力点と鋼管表面の間の距離と加力点荷重の積 で定義される値である. 4. 解析結果 4.1 梁端モーメントMb-梁回転角θb関係 図7 に梁端モーメント Mb-梁回転角θb関係の骨格 曲線を実験結果を点線,解析結果を実線で示す.降伏 耐力の実験値と解析値を▼および▽,全塑性耐力の実 験値と解析値を●および◯で示す.ここで,降伏耐力, 全塑性耐力はそれぞれ初期剛性の1/3,1/6 接線剛性時 の耐力とした. 図7 から,接合部の降伏後では解析値は実験値を下 回るが,剛性・各耐力は概ね良い対応を示しており, 本解析方法が妥当であるとわかる. 4.2 接合部周辺の応力状態 図8 に接合部が全塑性耐力に達した時の接合部周辺 0 100 200 300 400 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 b(×10-2rad) Mb(kN・m) 0 100 200 300 400 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 b(×10-2rad) Mb(kN・m) (a)V-N (b)V-S 0 100 200 300 400 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 b(×10-2rad) Mb(kN・m) 0 100 200 300 400 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 b(×10-2rad) Mb(kN・m) (c)C-N (d)C-S 図 7 梁端モーメントMb-梁回転角θb関係 の相当応力コンター図を示す.試験体V-N では,梁ウ ェブせい中心位置を基準にして,ほぼ上下対称なコン ター図となっている.試験体V-S は試験体 V-N と比 較して,床スラブが付くことによる中立軸上昇で,引 張側の応力が大きくなり,圧縮側の応力が小さくなっ ていることが分かる.また,主に床スラブの上面側で 鋼管フランジに対して抵抗することで,床スラブ上面 位置において鋼管フランジが局部変形し高い応力を示 している.試験体C-N は充填コンクリートによる拘束 で圧縮側の鋼管フランジがほぼ変形しないため,引張 側と比較して圧縮側の鋼管フランジの応力は小さくな っている.また,中空柱試験体と比較して回転中心が 上側ダイアフラム位置近傍に移動するので鋼管フラン ジの引張領域が大きくなり,梁ウェブが取り付く位置 においても高い応力を示している.試験体C-S は試験 体C-N と比較して,床スラブが付くことによる中立軸 上昇で,引張側の応力が大きくなり,圧縮側の応力が 小さくなっていることが分かる.また CFT 柱試験体 は床スラブがない状態でも圧縮側の鋼管フランジがほ ぼ変形しないので,中空柱試験体と比較して圧縮側の 鋼管フランジの応力が床スラブの有無でほとんど変わ らない結果となったと考えられる. (a)V-N (b)V-S (c)C-N (d)C-S 図 8 接合部全塑性耐力時の相当応力コンター図 床スラブ 存在領域 床スラブ 存在領域 :実験値 ▼:降伏耐力実験値 ●:全塑性耐力実験値 :解析値 ▽:降伏耐力解析値 ◯:全塑性耐力解析値 0 200 400 (N/mm2)
48- 4 5. 接合部全塑性曲げ耐力算定式の妥当性の検討 図9 に柱・床スラブ間に作用する支圧力の推移,図 11 に接合部全塑性耐力時の上側ダイアフラムの垂直 応力分布(ダイアフラムの表裏の応力の平均)を示す. 図9 中には,接合部全塑性耐力時の支圧力を●で,中 空柱,CFT 柱におけるスラブの有効圧縮耐力3),4)(そ れぞれ740kN,493kN)を点線で示す.筆者が提案し た,床スラブの影響を考慮した接合部全塑性曲げ耐力 0 100 200 300 400 500 600 700 800 step C(kN) 図 9 支圧力の推移 図 10 応力測定位置 -400 -300 -200 -100 0 100 position(mm) (N/mm2) 鋼管角部位置 dy -400 -300 -200 -100 0 100 position(mm) (N/mm2) 鋼管角部位置 dy (a)V-S (b)C-S 図 11 上側外ダイアフラムの垂直応力分布 (1)V-S (2)C-S (1)V-S (2)C-S (a)既往の研究2) (b)修正後 図 12 接合部の応力状態 図 13 支圧力の作用位置 算定式で仮定した接合部の応力状態では,接合部全塑 性耐力よりも床スラブの有効圧縮耐力が大きい試験体 V-S では上側ダイアフラムは圧縮力を負担せず,床ス ラブの有効圧縮耐力が小さい試験体C-S では上側ダイ アフラムが圧縮力を一部負担するものと仮定している (図12(a)).しかし,図 9 から接合部全塑性耐力時 の支圧力は試験体V-S では 408kN,試験体 C-S では 458kN であり,仮定した床スラブの負担力 682kN, 493kN(図 12(a))を下回っている.また,図 11 か ら試験体V-S では鋼管角部で,試験体 C-S では鋼管角 部と平板部で高い応力を示しており,上側ダイアフラ ムが圧縮力を一部負担すると考えられる. 解析から得られた支圧力および接合部全塑性時の梁 端モーメント Mbを用いて,梁ウェブは応力を負担し ないものとして,釣合条件から上下のダイアフラムの 負担力を求めると,図12(b)のような応力状態にな る.ただし,支圧力の作用位置は図 13 に示す鋼管フ ランジに作用する支圧力分布から得られる重心位置 (ダイアフラム板厚中心から60.5mm,63.9mm)とし た.文献 2)から試験体 V-S,C-S の接合部全塑性耐 力の計算値はそれぞれ682kN,739kN で,図 12(b) の下側ダイアフラムの負担力と比較して 3%程度の差 異であり,概ね妥当な応力状態といえる.つまり,応 力状態を仮定する際には床スラブの支圧力や上側ダイ アフラムの負担量に関してより深い考察が求められる. 6. まとめ 本研究では,床スラブのついた外ダイアフラム形式 柱梁接合部を対象としたFEM 解析を行い,以下の知 見を得た. 1) FEM 解析から得られた結果は,実験結果を概ね評 価することができた. 2) 解析から得られた支圧力より,筆者が提案した接 合部全塑性曲げ耐力算定式における床スラブの支 圧力は過大評価であることを明らかにした. 3) まとめ 2)より,上側の外ダイアフラムが圧縮力 を負担していることを示した.それを考慮して応 力状態を仮定する必要がある. 参考文献 1) 森田耕次 他:箱形断面柱―合成梁無補強接合部の力学的挙 動に関する研究-鋼構造半剛接合部の耐震性能に関する研 究-,日本建築学会構造系論文集,第463 号,pp.115-124, 1994.9 2) 作本尚弥 他:床スラブのついた外ダイアフラム形式柱梁接 合部の力学性能評価,日本建築学会九州支部研究報告集, pp361-368,2015.3 3) 日本建築学会:各種合成構造設計指針・同解説,2010.11 4) 日本建築学会:鋼構造限界状態設計指針・同解説,2010.2 5) MSC.Software:MSC.Marc Volume A Theory and User
Information,2011 始点 σ 23.75mm 終点 682kN 682kN 493kN 739kN 246kN 408kN 703kN 727kN 269kN 295kN 458kN 229.5 kN・m 236.8 kN・m 227.1 kN・m 238.5 kN・m 48.5 mm 288 mm 60.5 mm 288 mm 63.9 mm 288 mm 63.9 mm 60.5 mm ① ② ① ② 0 40 80 120 160 C(kN) 支圧力分布(V-S) 支圧力分布(C-S) 合力(V-S) 合力(C-S) 回転中心 V-S C-S 角 形 鋼 管 柱