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有効長延伸に伴う分岐器移設計画と施工実績

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Academic year: 2022

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有効長延伸に伴う分岐器移設計画と施工実績

東日本旅客鉄道(株)東北工事事務所 正会員 ○太田 修一 東日本旅客鉄道(株)東北工事事務所 穂積 拓哉

1.はじめに

秋田新幹線「こまち」は、平成 24 年度末から新 型高速車両 E6 系の営業運転を開始する予定である。

新型車両は先頭車両形状とシートピッチ拡大の変 更で、現行のE3系より1編成あたりの座席数が減 少するため、現行6両から1両増結して7両編成で 運行する。秋田新幹線7両化工事は、この編成長増

(21.2m)に対応するため関係各駅の地上設備改修 を行うものである。

奥 羽 本 線 羽 後 境 駅 で は 、 線 路 有 効 長 を 現 行 の 169m から200m へ延伸するため、分岐器を既設位 置より起点方に新設した後、配線変更を行い、旧分 岐器を撤去する計画である。

本報告では、狭隘な現場条件と限られた施工間合 いにおいて実施した標準軌片開き 12#分岐器の挿入 を主とした切換工事の計画と実績について述べる。

2.切換工事概要

羽後境駅の切換工事概要を示す。(図-1)駅構内は 幹本線と幹上り1番線があり、単線区間におけるす れ違い可能駅となっている。ステップ1では、5日 間の列車徐行運転措置をとり、夜間作業にて新分岐 器挿入箇所の道床をバラスト土のうへ置き換える事 前作業を実施し、新分岐器を挿入する。ステップ 2 では、7日間の徐行措置に加えて幹上り1番線の使 用停止措置後に、配線変更と旧分岐器の使用停止を 行うとともに軌道回路と架線調整を行い新分岐器へ の切換を実施する。ステップ3では、5日間の徐行 措置にて旧分岐器を撤去し棒線化する。

その後、起点方信号設備を移設し線路有効長を 200mとするものである。

3.施工条件

本工事の施工条件として、新分岐器挿入箇所が狭 隘であることと、新幹線の運行を確保するために、

限られた施工間合いで確実に作業を完了しなければ ならない。新分岐器挿入箇所に関しては、基準に定 められた施工基面幅を確保するため、新たに土留擁 壁を延伸する工事が必要とされる程、作業スペース に余裕がない状況であった。

また、新幹線の定時運行を確保するため、通常の 作業は営業運転終了後から初列車までの 23:39〜

5:57(6時間18分)で計画しなければならない。

4.分岐器敷設方法の検討

本工事で用いる標準軌片開き 12#分岐器は、全長 45m、最大幅4.5mと大型であるため、限られた作業 スペースの中でどのように事前組立から挿入までの 一連の 作業を行うかが 施工のポイント となった。

計画策定にあたり、3つの案を検討することによって、

計画の深度化を図った。(図-2)

第 1 案は、分岐器をポイント部+リード部、クロ ッシング部の 2 つに分割して挿入し、最終的に一組 の分岐器として機能させる工法である。これは、当工 事事務所が奥羽本線新青森駅構内で施工した実績が あり、極端に間合いが少ない場合に有効である。しか しながら、施工日数が増加する点と分岐器全体として の品質確保方法が課題として残った。

第 2 案は、組立に必要なスペースが充分に確保で きる駅構内用地を使用し、事前組立後に複数の台車に よりレール上を走行させて、縦移動した後に、山越器 により取り降ろす工法である。事前に全体を組み立て られる点が評価できるが、羽後境駅では、約400mの 縦移動が必要となるうえ、縦移動時に信号設備等の既 存設備が支障することが課題として残った。

第 3 案は、横取り一括挿入を基本とするが、営業 線建築限界を支障する分岐器部品の事前組立をやめ、

当夜作業時間内に設置する工法である。新たに仮設ヤ ードの造成等が必要とされるが、最小のリスクで施工 可能と判断できたため、当現場では第 3 案を採用し た。

5.施工計画の深度化による課題

施工計画の深度化に伴い、以下の検討課題があげら れた。

(1)作業ヤードの確保

横取り挿入を行うには、分岐器を組み立てるため や、資機材を搬入するために作業ヤードを必要とす る。当現場では、用地幅の制約や電架柱等の設備も あることに加え、直近に土留擁壁による約1.5mの 図-1 配線変更概要

キーワード:線路切換、分岐器挿入

先:仙台市青葉区五橋一丁目11 東日本旅客鉄道株式会社 TEL 022-266-9667

現分岐器 幹本

幹上1

12#片

SG保守基地線 12#片 秋田方

( 現行 ) 踏切

現有効長 196m 大曲方

新分岐器

( ステップ1 )

12#片

新分岐器挿入

分岐器挿入

( ステップ2 ) 線路切換、曲線整正

線路切換

曲線整正

( ステップ3 ) 旧分岐器撤去

旧分岐器撤去、棒線化

改修有効長 200m

IV-5

土木学会東北支部技術研究発表会(平成23年度)

(2)

落差がありヤードとしては不十分であった。

(2)新分岐器使用開始までの安全性の確保

本工事では、新分岐器挿入から 2 週間後に配線 変更を実施し、その時点で新分岐器使用開始、旧分 岐器使用停止となる。その間、新分岐器のトングレ ールは鎖錠金具で固定するとともに、短マクラギと 犬クギで固定する計画だったが、関係者から更なる 安全性の確保が求められた。

(3)作業間合いの確保

ステップ 2 の配線変更では、軌道、信号、電力 の各系統が作業を実施するため、営業運転終了後の 通常作業時間帯では作業時間が不足することが判 明した。

6.課題への対策

上述した課題に対して、現場状況の精査および関係 各所との協議、調整の結果以下の対策を取った。

(1)作業ヤードの造成

分岐器事前組立を可能とするため、施工基面と同 レベルまで盛土を行った。作業スペースの拡大はも とより擁壁部の落差解消が図られ、安全性と効率性 が向上した。また、用地的に盛土が不可能な箇所は、

古まくら木を組み合わせるなどして組立用足場と した。

(2)モーターの事前設置

新幹線の分岐器挿入工事であり、更に万全を期す ことにした。そこで、施工手順を変更し分岐器転換

機(モーター)を事前組立工程に組み入れて分岐器 挿入後速やかにモーターによる機械的鎖錠ができ るようにした。これにより、鎖錠金具の設置とあわ せて三重の安全対策を取ることが出来た。(図-3)

モーターを設置するためには、長まくら木を設置 する必要があるが、当該線の建築限界を支障しない よう端部をバラストに埋設する方法を取った。

(3)幹上り1番線使用停止措置

当夜の作業時間を可能な限り短縮する計画に加 えて、羽後境駅での最終すれ違い運行後に、幹上り 1番線を使用停止措置とする協議を行った。これに より、営業運転終了前に当該線に着手出来、6間合 い(316分)という大幅な作業時間拡大が図られた。

7.施工結果

分岐器挿入(ステップ1)当夜は、営業列車終了後 に、事前作業で施工した置換土のう袋を撤去し、既設 レールとまくら木を撤去した。道床高さ調整後に、分 岐器を横滑りさせるための移動ローラー装置を設置 し、所定の場所まで一括横移動させた。その後、レー ル山越器で取り降ろして位置を調整後に道床バラス トを投入して締め固めを行い、所定時間内に作業を完 了した。

線路切換(ステップ2)は、線路切換班と曲線整正 班を編成し、幹上り 1 番線使用停止後に着手した。

ステップ 1 と同様に、事前作業で置換土のう袋を施 工していたため、両施工班ともに所定時間内に作業完 了し、信号、電力工事へ引き渡すことができた。

8.まとめ

本報告では、新幹線の定時運行を確保しながら、

狭隘な作業条件のもとで行った一連の線路切換工 事について述べた。特に新分岐器挿入は、3案とも かなり具体的な施工方法まで詳細に検討を進め、最 終的には最もリスクの少ない方法で無事施工完了 したことが評価できると考える。

現在、羽後境駅においては、各種設備の仕上げを 行い使用開始を待つが、7両化工事の関係各駅の線 路有効長延伸工事は引き続き実施していく。

今後も秋田新幹線 7 両化工事の完成に向けて、

安全でより良い設備の構築に努めていきたい。

図-2 分岐器挿入計画

図-3 分岐器鎖錠概要

大曲方 秋田方

電架柱 電架柱

①ポイント部+リード部 横移動⇒縦移動

②クロッシング部 横移動

土留擁壁

新分岐器

幹本

幹上1 SG保守基地線

本線(NG)

上1(NG)

秋田方 踏切

12#片

②横移動⇒縦移動 ①事前組立

保守ヤード 移動距離 400m

大曲方

大曲方 秋田方

電架柱 電架柱

①ポイント部+リード部+クロッシング部 一括横移動

土留擁壁

支障物及 び建築限界支障箇所

分岐器組立て 電架柱

土留擁壁 一括横移動 山越器 据付

盛土工

①鎖錠金具 ②犬クギ止め

③モーターによる機械的鎖錠 第 1 案 分割挿入

第 2 案 縦移動挿入

第 3 案 一括横移動挿入

土木学会東北支部技術研究発表会(平成23年度)

参照

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