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Guidelines for SP Experiment Design*

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(1)

SP調査設計のガイドライン*

Guidelines for SP Experiment Design*

三古 展弘**・Andrew DALY***・Eric KROES****

By Nobuhiro SANKO**・Andrew DALY***・Eric KROES****

1.

背景と目的

今日,SP調査は盛んに行われているが,SP 調査 設計(SP Experiment Design)の方法論は,多くの 研究者によって個別かつ断片的に提案されているの みで,統一された方法論は存在しない.本研究では,

SP

調査設計に関する既存の文献を網羅的に整理し,

適切な調査設計のための統一的な枠組みを提案する ことを目的とする.なお,議論は,今日広く使われ ている選択型

SP

調査に限定されるが,考え方は他 の

SP

調査にも拡張可能である.

2.

基本デザイン

直交デザイン(Orthogonal Design)は他のデザイ ンの元となる考えであり,以下の(1),(2)の

2

つが よく知られている.

(1)

フ ル ・ フ ァ ク ト リ ア ル ・ デ ザ イ ン (

Full Factorial Design)

フル・ファクトリアル・デザインは,属性レベ ルの総ての組み合わせを考えるデザインである.最 大 の 特 徴 は 主 効 果 (

Main Effect

) と 交 互 作 用

Interaction

) 間 で 維 持 さ れ る 直 交 性 (

Ortho- gonality)にあり,RP

データで問題となっている属 性間の重共線性(Multi-Colinearity)を避けること ができる[1].2 つのレベルを持つ

3

属性のデザイン は表1に示され,23

=8

のシナリオが存在する.

(2)

フラクショナル・ファクトリアル・デザイン

(Fractional Factorial Design)

フラクショナル・ファクトリアル・デザインは,

表1:2レベル3属性のデザイン

フル・ファクトリアル・デザインで維持されていた 交互作用における直交性のいくつかを無視した,簡 略化されたデザインである.表 1 における網掛け 部分を抜き出したデザインは,主効果以外の直交性 を無視したフラクショナル・ファクトリアル・デザ インである.フル・ファクトリアル・デザインに比 べてシナリオの数が大きく減るのが魅力である.

(3)

選択肢集合のデザイン1)

(1),(2)では,各代替案のデザインを検討した.

しかし,選択型

SP

では,選択肢集合のデザインが 必要である.ここでは,いくつかの方法を紹介する.

A)

同時法

L

レベル,M属性,N選択肢では,フル・ファク トリアル・デザインを用いると,LMN 個の質問が存 在する.ここで,いくつかの交互作用における直交 性を無視すれば,より小さなフラクショナル・ファ クトリアル・デザインが得られる.

B)

段階法

まず,1 つの代替案をファクトリアル・デザイン で構築し,それをもとに,他の代替案をデザインす る.Fold-overや

Shifting

がよく知られている[2]

C)

ランダム法

まず,1 つの代替案をファクトリアル・デザイン で構築し,そこからランダムに必要な代替案分だけ 取り出すことによって,調査を設計する.

3.

基本デザインの問題点と解決法

シナリオ 属性

1

属性

2

属性

3

1 0 0 0

2 0 0 1

3 0 1 0

4 0 1 1

5 1 0 0

6 1 0 1

7 1 1 0

8 1 1 1

*キーワーズ:調査論,意識調査分析

**学生員,修()MBA,名古屋大学大学院環境学研究科 (名古屋市千種区不老町,

TEL052-789-3730FAX052-789-3738

***非会員,RAND EuropeLeeds大学客員教授

****非会員,M. Sc.,RAND Europe

*******の連絡先は,Newtonweg 1, 2333 CP Leiden, The NetherlandsTEL+31-71-524-5151FAX+31-71-524-5191

(2)

(1)

基本デザインの問題点

基本デザインの問題点を以下に整理する.

多すぎるシナリオと質問

シナリオや質問の数が多くなりがちで,被験者 に多くの負担がかかる.疲労によるバイアスが発生 する(Fatigue Effect)[3]

つまらない質問(Trivial Questions)

表 1 の例において,どの属性でもレベル

1

0

よりも優れていると仮定すると,シナリオ

8

は他の どのシナリオよりも優れているため,シナリオ

8

を 含む選択問題は,たずねる必要のないつまらない質 問になる.推移律(Transitivity)を仮定すれば,前 の質問の答えにより,後の質問の答えを予測するこ とも可能になる[4].つまらない質問が多いと被験者 が真剣に回答するのを止めてしまう[5]

文脈制約(Contextual Constraints)

属性レベルの設定によっては,通常ではありえ ない属性レベルの組み合わせが発生する.

直交性自体の意味

Hensher

2)は,「非集計行動モデルにおいては属性

レベルの差を考慮するので,属性レベル自体の直交 性よりも,属性レベルの差における直交性が重要で ある」と指摘している.また,モデルの特定化にお いて,説明変数を非線形で導入する場合もあること を考えると,推定時における直交性を調査設計の段 階で確保することは困難である.

(2)

既存の解決法

(1)で述べた問題解決のための既存方法を,表2に

整理する.

4.

非直交デザイン

これまで示してきた直交デザインに反し,属性 間にいくらかの相関があるほうが望ましいことを示 す研究事例を紹介する.ただし,これらの方法には,

パラメータ値に関する事前知識が必要である.

(1) 比の推定

SP

調査の目的には時間価値のようなパラメータ の比を求めることも含まれるが,パラメータの推定

表2:既存の解決法

名称 説明

① つ ま ら な い 質 問 の 除 去

属性レベルの優越関係を仮定すれば,つまらない質問を特定できる.つまらない質問を除去 すれば,質問の数を減らすことができ,また,被験者が真剣に答えるのを止めさせない効果 がある.さらに推移律を仮定すれば,前の質問の答えにより後の質問の答えが予想でき,そ れらも除外できる.この操作で直交性が失われる.

②文脈制約 技術的に不可能であるなどの理由から通常では考えられないシナリオを特定できれば,これ らを取り除くことで,シナリオの数を減らすことができ,また,回答者が真剣に答えるのを 止めさせない効果がある.この操作で直交性が失われる.

③ ブ ロ ッ ク デザイン3)

デザインを,いくつかのサブ・デザインに分割することで,被験者あたりの質問を減らす.

個人の同質性を仮定すれば,元のデザインを用いたときと同じ分析ができる.それぞれのサ ブ・デザインがフラクショナル・ファクトリアル・デザインであれば,主効果の分析は依然 個人レベルで可能である.

④ 属 性 の 分 割

1

つの調査で取り扱えないほど属性数が多いときは,属性を

2

つ以上のグループに分け別々 にデザインする.ただし,信頼性の高い属性をグループ間で

1

つ以上共有させ,グループ間 の比較も可能なようにする.異なったグループに属する属性の交互作用は分析できない.

⑤ 属 性 を 属 性 レ ベ ル の 差で定義

属性を,基準となる代替案における属性レベルとの差として定義する.車と鉄道の

2

肢選択 の場合,費用の属性を車と鉄道別々に設定せずに,それらの差を新たな属性として設定する

3).デザインが小さくなり,Hensher2)の指摘する直交性問題(

3(1)

)の解決にも部分的に意味 があるが,選択肢固有変数は取り扱えない.

⑥ 属 性 レ ベ ル の 入 れ 替 え

属性レベルを入れ替えることにより,同じデザインでも被験者ごとに異なった形で提示され る.個人の同質性を仮定し,十分なサンプル数を確保すれば,元のデザインで考慮されてい ない交互作用も全サンプルレベルで分析可能である.

⑦ 質 問 の ラ ンダム抽出

質問の候補の中から,各被験者に対しランダムに取り出すことにより,各被験者の質問数を 制御できる.個人の同質性を仮定すれば,元のデザインを用いたときと同じ分析ができる.

(3)

に適したデザインが,パラメータ推定値の比を得る のに適しているとは限らない.Fowkes et al.4)は属性 間にいくらかの相関があるほうが,パラメータ推定 値の比のばらつきが小さくなることを示した.

(2) “マジック”選択確率

SP

調査においては,被験者の回答がある代替案 から別の代替案へ移る境目(2 肢選択では選択確率

50%)に関する質問が最も有効であると考えられて

きた.しかし,Toner et al.5)は,2つの選択肢共通変 数を持つ

2

項ロジットモデルにおいて,2 つの代替 案の選択確率が

0.917

0.083(“マジック”選択

確率)である場合にパラメータの分散が最小になる,

ことを示している.

5. SP

調査設計の枠組みの提案[6]

ここでは,これまでに示した様々な方法を組み 合わせた,SP 調査設計の統一的な枠組みを提案す る(図 1).この方法に従えば,まず考慮する属性 および属性レベルを設定した後(ステップ

1),ス

テップ

2

から

9

でたずねられる項目を検討すること で調査設計が可能である.特に,一般的に受け入れ られ,推奨される方法および基準は図中においてア スタリスク付きで示される.

ステップ

1:属性および属性レベルの設定

3

つ以上の属性を含み,重要な属性には

3

つ以上 のレベルを含むことが推奨されている.属性数およ び属性レベルはデザインの大きさに大きな影響を与 える.「属性を属性レベルの差で定義(表 2⑤)」

する場合はここで検討する.

ステップ

2:属性数は 1

つの調査で扱えるか?

1

つの調査に含まれる属性数はせいぜい

6-7

個に 制限すべきであり 3),多すぎる場合は,「属性の分 割(表2④)」をすることが推奨される.

ステップ

3:直交デザインを使うべきか?

パラメータについての事前知識があり,特に興 味があれば,「比の推定(4(1))」や「“マジッ ク”選択確率(4(2))」を使うことができる.しか し,これらはまだ開発されてから日が浅いため,特 別な知識がない場合には直交デザインを使うことが 推奨される.

ステップ

4:交互作用に興味はあるか?

デザインを小さくするため,特に重要でない場 合には,可能な限り交互作用を無視することが推奨

される.交互作用に興味のない場合は,主効果のみ を考慮したフラクショナル・ファクトリアル・デザ インを用いる(図中

C).すべての交互作用,また

はいくつかの交互作用に興味がある場合は,フル・

ファクトリアル・デザインか興味のある交互作用を 考慮したフラクショナル・ファクトリアル・デザイ ンを用いる(図中

A).興味のある交互作用を考慮

するとデザインが大きくなりすぎる場合,個人レベ ルの分析を犠牲にして,交互作用の全部もしくは一 部を無視した,より小さいデザインを作成する.こ の場合,ステップ

5

で属性レベルを入れ替えること により,サンプル全体で交互作用の分析が可能とな

る(図中

B).選択肢集合は,デザインの大きさな

どを考慮し,同時法,段階法,ランダム法を使用す る(

3(3)

).

ステップ

5:属性レベルを入れ替えるか?

ステップ

4

において

B

を通り,考慮したい交互 作用をやむを得ず無視しなければならなかった場合 には「属性レベルの入れ替え(表 2⑥)」をするこ とが推奨される.それ以外の場合にも,代替案の表 示順序を変更したり,除外されたシナリオもカバー できることによるメリットも期待でき,属性レベル 入れ替えの効果については将来研究が必要である.

ステップ

6:文脈制約を考慮するか?

文脈制約に違反するシナリオの悪影響を考慮す る場合には,それらを含む質問を除外する(表 2

②).

ステップ

7:つまらない質問を考慮するか?

つまらない質問の悪影響を考慮する場合には,

それらを含む質問を除外する(表 2①).データの 信頼性チェックのため,つまらない質問を

1

つ残す 方法もある.

ステップ

8:一人あたりの質問が多すぎないか?

各被験者に対しての質問は

9-16

個程度に限定さ れることが推奨されている 6).それ以上のデザイン に対しては,「ブロックデザイン(表 2③)」か

「質問のランダム抽出(表2⑦)」が使用できる.

ステップ

9:推移律を仮定できるか?

推移律を仮定できれば,事前の質問の答えから 事 後 の 質 問 の 答 え を 予 測 す る こ と が で き る .

WinMINT

7)などを用いれば,調査実行中でも,つま らない質問を除去できる.(表2①)

6.

まとめ

(4)

本論文では,SP調査のための合理的かつ統一的 な枠組みを提案した.しかし,より適切なSP調査 のためには,パイロット調査が依然有効である.

今後の課題として,以下の分析が挙げられる.

1.

「属性レベルの入れ替え」が交互作用分析に与 える効果,

2.

「つまらない質問の除去」と「文脈制約」の考 慮がパラメータの推定に与える影響,

3.

非直交デザインの拡張性.

[1] 主効果とは各属性単独による効果であり,交互作用とは 複数の属性の組み合わせによる効果である.

[2] 元の代替案のレベルが0123レベルの場合,全属 性について011220に変えるのをShifting,そ れ以外の入れ替えを

含 め た 総 称 を Fold- overという.

[3] 2レベル,3 属性,

2 代 替 案 で は , フ ル ・ フ ァ ク ト リ ア ル・デザインを用い ると,同時法で64個,

段階法で 8 個,ラン ダム法では取り出し た回数分だけの質問 が得られる.

[4] 1 の例では,

質問 1 でシナリオ 2 3 よりも望ましか った場合,シナリオ 6 2 よりも優れて いるため,シナリオ 3 6 の比較も,つ まらない質問になる.

[5] [3]と 同 じ 例 を 使うと,同時法では 46/64, 段 階 法 で は Shifting を使うと 2/8 がつまらない質問に なる.ランダム法で は場合によるが,比 率は同時法よりやや 少ない程度である.

なお,この議論は代 替案が異なるブラン ドの場合には適用で きない.

[6] 代 替 案 が 異 な る ブランドの場合,属 性数や属性レベル数 が異なることがある.

各代替案を別々にデ ザインするか,大き いほうにあわせてデ ザインし,その一部 分を使うことで対処 可能である.

参考文献

1) 例えば,Louviere, Hensher and Swait:

Stated Choice Methods, Cambridge University Press, 2000.

2) Hensher: Stated preference analysis of

travel choices: the state of practice, Transportation 21, pp. 107 – 133, 1994.

3) Pearmain, Swanson, Kroes, and Bradley: Stated Preference Technique – A Guide to Practice (2nd Ed.), Steer Davies Gleave and Hague Consulting Group, 1991.

4) Fowkes, Wardman and Holden: Non-orthogonal Stated Preference Design, PTRC SAM, 1993.

5) Toner, Clark, Grant-Muller and Fowkes: Anything you can do, we can do better: A provocative introduction to a new approach to stated preference design, WCTR 8 at Antwerp, 1998.

6) Kroes and Sheldon: Stated Preference Methods; An Introduction, Journal of Transport Economics and Policy, pp. 11 – 25, 1988.

7) Hague Consulting Group: WinMINT 2.1 User Manual, 2001.

注記

本論文は三古展弘がフランス・ポンゼショセ大学国際経 営大学院在学中に RAND Europe Surface Transport and

Aviation Programmeで行ったインターンシップの内容をまと

めたものである.なお,参考にした文献の総てを引用する だけのスペースがないことを断っておく.

1:SP

調査設計の枠組み

1) 属性および属性レベルの設定 3属性以上*

重要な属性については3レベル以上*

「属性を属性レベルの差で定義(表2⑤)」の検討

“NO”なら,「属性の分割(表2④)」*

“NO”

「比の推定(4(1))」

“マジック”選択確率(4(2))

“YES”なら除外 (表2②)

“YES”ならつまら ない質問除外 (表2①)

せいぜい6-7属性/調査*

*:推奨されたり,一般的に広く受け入れられている方法や基準

#:フル・ファクトリアル・デザインか,興味のある交互作用を総て考慮したフラクショナル・ファクトリアル・デ ザイン

##:興味のある交互作用の一部のみを考慮したフラクショナル・ファクトリアル・デザイン

###:主効果のみを考慮したフラクショナル・ファクトリアル・デザイン +:“YES”なら「属性レベルの入れ替え(表2⑥)

++:“YES”*で「属性レベルの入れ替え(表2⑥)」が推奨される.

%:“YES”なら「ブロックデザイン(表2③)」か「質問のランダム抽出(表2⑦) 同時法 段階法

ランダム法

せいぜい,

9-16質問/人*

2) 属性数は1つの調査で扱えるか?

3) 直交デザインを使うべきか?

“YES”

4) 交互作用に興味はあるか?

最終デザイン

9) 推移律を仮定できるか?

7) つまらない質問を考慮するか?

6) 文脈制約を考慮するか?

5) 属性レベルを入れ替えるか?

同時法

A

同時法

B C

“YES”#

(個人レベル)

“YES”##

(サンプル全体)

“NO”###

ランダム法 ランダム法

段階法 段階法

+ + +

+ + + ++ ++ ++

“YES”なら除外 (表2①)

8) 一人当たりの質問が多すぎないか?

% % % % % %

参照

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