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スポーツ観戦における感動:

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Academic year: 2022

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(1)早稲田大学審査学位論文 博士(スポーツ科学) 論文本文. スポーツ観戦における感動: プロサッカー観戦者を対象とした感動喚起の実証的検証. 早稲田大学大学院. スポーツ科学研究科. 押見. 大地. 研究指導教員:原田. 0. 宗彦. 教授.

(2) スポーツ観戦における感動: プロサッカー観戦者を対象とした感動喚起の実証的検証 目次 第1章. 研究の背景. 第1節. 緒言. 第1項. スポーツ消費者行動と感動. 第2項. 感動がもたらす効果. 第2節. 研究の目的と意義. 第3節. 用語及び概念の定義. 第1項. 感動とその他の類似表現. 第2項. スポーツ観戦における感動について. 第2章. 先行研究の検討. 第1節. 感情に関する研究. 第1項. 感情の定義. 第2項. 感情の分類. 第3項. 感情の階層性. 第4項. まとめ. 第2節. 感情と消費者行動研究. 第1項. 感情と広告効果. 第2項. 気分と消費者行動. 第3項. 感情と顧客満足の関係性. 第4項. スポーツ観戦と感情. 第5項. まとめ. 第3節. 感動に関する研究. 第1項. 国内での感動研究. 第2項. 感動とディライト. 第3項. 感動と満足. 第4項. 顧客感動・満足モデル. 第5項. スポーツ観戦における感動. 第6項. まとめ. 第4節. 心理尺度の測定法に関する研究. 第1項. 感情の測定法. 第2項. 特定取引的尺度と累積的尺度. 1.

(3) 第3項. まとめ. 第5節. 先行研究のまとめとリサーチクエッションの設定. 第6節. 研究のフレームワーク. 第3章. 研究 1. スポーツ観戦における心理的変化. 第1節. 研究目的及び仮説の設定. 第2節. 調査概要. 第1項. 研究方法. 第2項. 調査結果. 第3節. 考察. 第4節. まとめ及び研究の限界. 第4章. 研究 2. 感動の先行要因の検討: スポーツ観戦における感動場面尺度の援用. 第1節. 研究背景及び目的. 第2節. 調査概要 (分析 1):感動場面における性別・年齢・観戦回数の差の検証. 第1項. 研究方法. 第2項. 調査結果. 第3節. 調査概要 (分析 2):感動場面が感動に及ぼす影響. 第1項. 研究方法. 第2項. 調査結果. 第4節. 考察. 第5節. まとめ及び研究の限界. 第5章. 研究 3. 感動喚起の心理的メカニズムの検討:顧客感動・満足モデルの検証. 第1節. 研究背景及び目的. 第2節. 調査概要 (分析 1):特定取引的手法を用いた顧客感動・満足モデルの検証. 第1項. 研究方法. 第2項. 調査結果. 第3節. 調査概要 (分析 2):累積測定的に測定した顧客感動・満足モデルの検証. 第1項. 研究方法. 第2項. 調査結果. 第4節. 考察. 第5節. まとめ及び研究の限界. 第6章. 研究 4. スポーツ観戦において感動喚起がもたらす効果の検討: 調整変数を用いて. 2.

(4) 第1節. 研究背景・目的. 第2節. 仮説の設定. 第3節. 調査概要. 第1項. 研究方法. 第2項. 調査結果. 第4節. 考察. 第5節. まとめ及び研究の限界. 第7章. 結論. 第1節. 研究結果及びインプリケーションのまとめ. 第2節. 研究の意義と今後の課題. 参考文献 謝辞. 3.

(5) 第1章. 研究の背景. 第1節. 緒言. 第1項. スポーツ観戦者行動と感動. 「 ス ポー ツ は人 々 に 感動 を 与え る 」と は 、 スポ ー ツを 語 る上 で よ く用 い られ る 表現 で あ る 。オ リ ンピ ッ クや サ ッカ ー W 杯 で は 、数 十 億人 の 人々 が テレ ビ や イン タ ーネ ッ トを 介 し て自 ら の好 き なチ ー ム を応 援 し、 チ ーム ・ 選 手の 勝 敗や パ フォ ー マ ンス に 心を 躍 らせ る 。 本研 究 は、 ス ポー ツ 消 費者 行 動の 中 でも 「 み るス ポ ーツ 」 にあ た る スポ ー ツ観 戦 者を 対 象 とす る が、 ス ポー ツ 観 戦と そ こで 喚 起さ れ る 感情 的 要素 は 不可 避 の 関係 で あり 、 スポ ー ツ 観戦 が 持つ 特 徴の 一 つ と言 え る。 例 えば 、 Yoshida and James (2010). は 、 スポ ー ツ観 戦. は 経 験 的 で あ る と と も に 、 興 奮 や 感 動 な ど の 感 情 的 反 応 を 伴 う と し て お り 、 Holt (1995) はス タ ジア ム での 観 戦 は 、 興 奮と い った ポ ジ ティ ブ な感 情 から 失 望 や怒 り とい っ たネ ガ テ ィブ な 感情 ま で、 非 常 に広 範 囲な 感 情 を 経 験 する と して い る。 で は 、な ぜ スポ ー ツ観 戦 に おい て 、こ う した 感 情 が喚 起 され る ので あ ろ うか ? これ ら の感 情 が喚 起 さ れる 理 由と し て、 ス ポ ーツ 観 戦が 持 つ試 合 結 果の 不 確実 性 や試 合 での競争性などが挙げられている. (Bernhardt et al., 1998; Deighton, 1992;. Knobloch-Westerwick et al., 2009; Wann et al., 2001)。結果 の 不確 実 性と は、試 合結 果 が どち ら に転 ぶ かが 確 実 では な いこ と を指 し 、 競争 性 は、 個 人・ チ ー ム間 で 勝敗 を 競う こ と を指 す 。結 果 がわ か ら ない 「 手に 汗 握る 」 展 開は 人 々の 心 理的 覚 醒 を誘 発 し、 自 らが 応 援 する 選 手や チ ーム が 勝 敗を か けて 競 うこ と は 、ポ ジ ティ ブ から ネ ガ ティ ブ な感 情 まで 広 範 囲な 感 情体 験 を喚 起 す るの で ある 。 4.

(6) 戸梶 (2001a) は 、人 々 が感 動 に至 る 理論 モ デ ルを 構 築し て おり 、そ のモ デ ル は 以 下の よ うな プ ロセ ス を辿 る と して い る。 ま ず、 あ る 事象 へ の状 況 設定 が 存 在し 、 その 状 況に 関 す る知 識 やエ ピ ソー ド を 知る こ とで そ の事 象 へ の関 与 が高 ま る。 関 与 が高 ま るこ と で 人 々 が 持 つ 潜 在 的 な 願 望 (何 ら か の ポ ジ テ ィ ブ な 事 象 ) が 活 性 化 さ れ 、 そ の 事 象 へ の 感 情 移 入 ・ 共感 に よっ て 結果 に 対 する 期 待が 生 まれ る 。 次に 、 感情 喚 起を 司 る 大脳 辺 緑系 が 活性 化 さ れ、 期 待や 不 安と い っ た心 的 緊張 感 及び 心 拍 の亢 進 、血 圧 上昇 、 発 汗と い った 身 体的 緊 張 が発 生 する 。 最後 に そ の事 象 が完 結 し、 そ の 結果 が ポジ テ ィブ で あ った 場 合、 先 の緊 張 感 から 一 気に 解 放さ れ て 感動 に 至る と して い る。戸梶 (2001a) が 構 築し た枠 組 みを ス ポー ツ 観戦 で 考え て みる と 、 スポ ー ツ観 戦 が持 つ 結 果の 不 確実 性 及び 競 争 性、 ま たは 応 援チ ー ム への 関 与の 高 さは 、 期 待や 不 満を 伴 った 心 的 緊張 や 身体 的 緊張 が 発 生 す る こと が 予想 さ れ る 。戸 梶 (2001a) は あ る事 象 への 関 与度 が 高 いほ ど 感動 に 至り や す いと し て い る が 、ス ポ ーツ 観 戦者 に おい て は 、特定 の チー ム や選 手 に 対す る 心理 的 愛着 の 強 さ (Funk and James, 2001; Wann and Branscombe, 1990) が 指 摘さ れて い る。 そ して 、 応 援チ ー ムの 勝 利と い った ポ ジテ ィ ブ事 象 に よっ て 、フ ァ ンは 緊 張 感か ら 解放 さ れ、 感 動 とい っ た強 い 感情 が 喚 起さ れ る可 能 性が 示 唆 され る 。しか し なが ら 、戸梶 (2001a) が 構 築し たモ デ ルは 理 論モ デ ルで あ り、 実 証的 に 検 証が 行 われ て いな い こ とか ら 、そ の 妥当 性 及 び信 頼 性は 検 証さ れ て いな い 。 原 田 (2008) はプ ロ ス ポ ー ツ の ク ラ ブ ビ ジ ネ ス に お い て 、 商 品 や サ ー ビ ス と し て の ゲー ムや 試 合だ け を提 供 す るの で はな く 、フ ァ ン の心 の 中に 情 緒的 内 容 に富 ん だ感 動 や陶 酔 と いっ た 経験 を 提供 し な くて は なら な いこ と を 指摘 し てい る 。し か し なが ら 、 ど う すれ ば 感 5.

(7) 動を 喚 起す る こと が 出 来る か ?感 動 喚起 の メ カニ ズ ムと は ?と い っ た事 を 実証 的 に検 証 し てい る 研究 は 少な く 、 特に ス ポー ツ 消費 者 行 動研 究 にお い ては 極 め て少 な いの が 現状 で あ る。 第2項. 感動がもたらす効果. 人々 を 感動 さ せる こ と のメ リ ット と して 、 こ れま で 主に ビ ジネ ス の 現場 で その 必 要 性 が 述べ ら れて き た。 例 え ば、 デ ィズ ニ ーラ ン ド を代 表 とす る エン タ ー テイ メ ント 業 界や 、 ホ テル ・ 旅館 等 での 感 動 的な サ ービ ス の必 要 性 が指 摘 され て おり 、 こ れま で 多く の 著書 や レ ポー ト が出 版 ・発 表 さ れて き た。 例 えば 、Mercedes-Benz USA に よれ ば 、自 社 の販 売 店 のサ ー ビス に 対し て 不 満を 持 った 顧 客は 、 同 じ販 売 店か ら 購入 ま た はリ ー スす る 確率 は わ ず か 10%、そ して 単 に 満足 し た顧 客 は 29%で あっ た のに 対 し 、感 動 した 顧 客 は 86%の 確率 で再 購 買ま た はリ ー ス した と して い る (Keinningham and Vavra, 2001)。 Whittaker (1991) は 、生産 性 の向 上 やコ ス ト の減 少 には 欠 点を 除 去 して い くこ と が重 要 とな る が、企 業と し ては 積極 的 に感 動 を作 り 出 して い くこ と が必 須 で ある と し た 。同様 に 、 今日 の ビジ ネ スに お け る目 標 は、 顧 客の 期 待 を越 え る感 動 を作 り 出 して い かな け れば な ら ない と も指 摘 され て い る (Keinningham and Vavra, 2001; Maister, 1993; Schneider and Bowen, 1999; Hicks et al., 2005)。 しか し な がら 、 感動 と いう 感 情 を学 術 的に 検 証し た 研 究は 非 常に 少 なく 、 多 くは 個 人の 経 験や 会 社 のノ ウ ハウ 等 を公 開 す るも の であ っ たり 、 概 念的 な 研究 が され た り する の に留 ま って き た ので あ る。 顧客 を 感動 さ せた 場 合 、顧 客 を満 足 させ る こ とに よ って 得 るこ と が 出来 る 顧客 ロ イヤ ル テ ィ を 、さ ら に 有 意 に 増 加 さ せる 効 果 が 指 摘 さ れ て いる (Coyne, 1989; Dick and Basu, 6.

(8) 1994)。具体 的 には 、① より 多 くの ポ ジテ ィ ブ な口 コ ミ (Torres and Kline, 2006)、② 顧客 維持 率 の高 ま り (Hicks et al., 2005; Patterson, 1997; Torres and Kline, 2006)、 ③ 再購 買 の可 能 性の 高 まり (Chitturi et al., 2008; Keinningham et al., 1999; Hicks et al., 2005) 等 が挙 げ られ る 。その 他 に 、Berman (2005) は 、潜在 的 に期 待 され る 感動 の ポジ テ ィブ な 効 果と し て 、①経 費 の軽 減 、②収 入 の増 加 、③ 長期 間 に及 ぶ 戦略 的 優 位性 の 3 つ を 挙げ て い る。 ① の経 費 の軽 減 に 関し て は、 口 コミ の 影 響に 言 及し 、 感動 に よ って も たら さ れた ポ ジ ティ ブ な口 コ ミが 喚 起 され る こと で 販売 促 進 や広 告 費の 軽 減に つ な がり 、 顧客 獲 得に 費 や す経 費 が削 減 され る と して い る。 ② の収 入 の 増加 に つい て は、 感 動 した 顧 客は 特 定の ブ ラ ンド や 企業 に 対す る ロ イヤ ル ティ が 増加 す る こと で 、商 品 やサ ー ビ スの 売 上向 上 につ な が り、結 果と し て企 業 の利 益に つ なが る とし た 。③ の長 期 間に 及 ぶ戦 略 的 優位 性 につ い ては 、 感動 し た顧 客 の割 合 が 増加 す るに こ とで 、 企 業の ブ ラン ド エク イ テ ィが 増 加 す る こと に 着 目し 、 新規 参 入し て く る同 業 他社 に 対す る 競 争優 位 性が 保 てる こ と を指 摘 した 。 その 一 方で 、 顧客 を 感 動さ せ るこ と に対 す る デメ リ ット も 指摘 さ れ てい る 。 例 え ば、 顧 客を 感 動さ せ るに は 顧 客の 期 待を 越 える こ と が重 要 とさ れ てい る こ とか ら 、既 存 の資 源 を 越え た 追加 の 投資 と 努 力が 必 要と な る。 し た がっ て 、企 業 とし て は 投資 に 見合 っ た効 果 を 獲得しなければならず、先見性と実現可能性を考慮に入れる必要があるとされている (Arnold et al., 2005; McNeilly and Barr, 2006; Kumar et al., 2001)。 Dixon et al. (2010) も同 様 に、 顧 客の 期 待 を越 え るよ う なサ ー ビ スは 、 顧客 ロ イヤ ル テ ィを 多 少増 加 させ る の みで あ り、 そ れよ り も 顧客 が 自ら の 要求 を 満 たす た めに か ける 負 担 を軽 減 する こ とに 着 目 すべ き とし て いる 。 こ れま で 行わ れ てき た 先 行研 究 や、 実 際の ビ ジ ネス 現 場で の 報告 等 を 7.

(9) 踏ま え ると 、顧客 を 感動 させ る メリ ッ トの 方 が デメ リ ット を 上回 っ て いる よ うに 思 われ る 。 しか し なが ら 、あ ら ゆ る交 換 過程 に おい て 顧 客を 感 動さ せ るの で は なく 、 企業 が 継続 的 に 行え る 範囲 内 で感 動 的 なサ ー ビス の 提供 を 目 指す 方 が望 ま しい と 思 われ る 。 これ ま で顧 客 獲得 ・ 囲 い込 み のた め の重 要 な 変数 と して 、 顧客 満 足 が用 い られ て きた が (e.g. Anderson et al., 1994; Cronin et al., 2000; Oliver, 1999)、 顧 客 満足 と いっ た 指標 だ けで は 、今 日 の厳 し い 競争 環 境を 生 き抜 く こ とは 容 易で は な い 。 近 年 Japan professional football league (以 下、 J リ ーグ と する ) に お いて も 、1 試合 平 均あ たり の J リ ー グデ ィ ビ ジョ ン 1 の 観戦 者 数が 、2008 年の 19,202 名 を 頂点 と して 飽 和状 態 に あり 、2009 年 は 18,965 名、そし て 2010 年 18,482 名と 若 干の 減 少傾 向と な って い る (J リ ーグ 公 式ホ ー ムペ ー ジ , 2012)。 競 争 的 優 位 と 収 益 を 確 保 す る た め に は 顧 客 を 感 動 さ せ る こ と が 重 要 で あ り (Rust and Oliver, 2000)、 顧 客満 足 に続 く 変数 と し て 、 感 動に 対 する 期 待 は大 き い。 サ ービ ス や 商品 の コモ デ ィテ ィ 化. 1) が進 ん だ昨 今 にお い ては 、 顧客 の 感動 は 多 くの ビ ジネ ス にお い て. キー ワ ード の 一つ に な って お り、 ス ポー ツ ビ ジネ ス にお い ても 感 動 は一 つ の重 要 な要 素 に なる こ とが 予 想さ れ る 。. 第2節. 研究の目的と意義. 本研 究 の総 合 的な 目 的 は、 「 ス ポ ーツ 観 戦に お ける 感 動の 先 行要 因 及 び感 動 が及 ぼ す 効 果 を検 証 し、 ス ポー ツ 観 戦に お ける 感 動 の 特 性 を明 ら かに す るこ と 」 とし 、 より 詳 細に は 、 4 つ の研 究 によ っ て本 研究 に おけ る 総合 的 な 目的 の 達成 を 目指 し た 。ま ず 、研 究 1 で は、 スポ ー ツ観 戦 者が ス ポ ーツ 観 戦前 後 にお い て 、ど の よう な 感情 が 喚 起さ れ るか 明 らか に す 8.

(10) るこ と を目 的 とし た 。研 究 2 では 、感 動の 先 行要 因 の検 証 とし て 、スポ ー ツ観 戦 者が 経 験 する 感 動場 面 の中 で も 、ど の 経験 が より 感 動 に影 響 を及 ぼ すの か を 明ら か にし 、 更に は 感 動場 面 の特 性 を明 ら か にす る こと を 目的 と し た。 研 究 3 とし て、感 動喚 起 の包 括 的な 心 理 的メ カ ニズ ム を構 造 方 程式 モ デ ル に よっ て 明 らか に し 、研 究 4 では 、感 動喚 起 の結 果 とし ても た らさ れ る効 果 を 詳細 に 明ら か にす る こ とを 目 的と し た 。 ビジ ネ スの 現 場に お い てそ の 必要 性 が指 摘 さ れな が らも 、 感動 に 関 する 科 学的 検 証は こ れま で 少な く 、特 に 興 奮や 感 動を 伴 うと さ れ るス ポ ーツ 観 戦者 に お ける 研 究で は 極め て 少 ない の が現 状 であ っ た 。 し た がっ て 、本 研 究 はス ポ ーツ 消 費者 行 動 研究 の 中で も 、特 に 、 消費 者 心理 に おけ る 感 情研 究 の 分 野 にお い て 新た な 知見 を 提供 出 来 ると 思 われ る 。. 第3節. 用語及び概念の定義. 第1項. 感動とその他の類似表現. 大辞 泉 によ れ ば、 感 動 は「 あ る物 事 に深 い 感 銘ま た は、 強 い共 感 を 受け て 強く 心 を動 か さ れる 事 」 と 定義 さ れ て いる 。 国 内 で感 動 に 着 目し て 研 究 を行 う 戸 梶 (2001a) に よ れ ば、 「感 動 は非 常 に強 い 感 情 で 驚 きや 喜 びと い っ た複 数 の感 情 を伴 い 、 画期 的 でま れ な場 面 で 生起 さ れる 」と し てい る 。感動 に 類す る 表現 とし て は、感激 、歓喜 等が 挙 げら れ る。特に 、 歓喜 は スポ ー ツ観 戦 に おい て よ く 用 いら れ る 表現 で ある こ とか ら も( 例え ば、 「 歓喜 の 瞬間 」 や「歓 喜 の渦 」等 )、そ れぞ れ の違 い を明 ら か にし て おく 必 要が あ る と思 わ れる 。柴 田・山 田 (2002) に よれ ば 、 感 動 、 感 激 を 一 つの グ ル ー プ に 分 類 し てお り 、 歓 喜 と は 分 け て 分 類 して い る 。感 動 や感 激 は「感 」と い う漢 字 が 入っ て いる よ うに 、 「感 じる 」と いう 意 味 が 前 9.

(11) 提と さ れて い る。 中 で も感 動 は あ る 事象 に 対 して 何 らか の 感情 を 抱 き 、 そ の感 情 は喜 び や 幸福 、畏敬 等 いく つ か の感 情 が混 合 され て 生 じる 。歓喜 は、 「 喜ぶ 」とい う 意味 が 基本 で あ り、 「 非常 に 喜ぶ 事 」と いう 定 義か ら も (柴 田・山田 , 2002)、喜び の 中で も 強い 喜 びを 歓 喜 と表 現 して い ると 思 わ れる 。 つま り 、感 動 と 歓喜 の 違い は 内包 す る 感情 が 感動 は 複数 あ る のに 対 し、 歓 喜は 喜 び の感 情 一つ で ある 点 に ある 。 感 動 と 感 激 の 違 い に 関 し て 、 類 語 研 究 会 (1991) によ れ ば 、 い ず れ の 表 現 も 「 何 ら かの 原因 に よっ て 心に 深 く また は 強く 感 ずる こ と 」と し てい る 。例 え ば 、感 激 は自 身 の上 に 興 奮す る よう な 急激 な 喜 びが 直 接も た らさ れ る 場合 に 多く 用 いら れ る が、 感 動は 直 接自 分 に 関わ ら ない も のに も 意 味や 価 値を 読 み取 る 所 に始 ま り、 比 較的 持 続 的で あ ると し てい る 。 田 ら (1998) にお い て 、 感 動 は 深 く 心 に残 る が 感 激 は 一 瞬 の 心の 高 ま り と し て い る こと か らも 、効 果の 持 続性 に 違 いが あ るこ と がわ か る 。効果 の 持続 性 に関 し て は 、戸 梶 (2001a) や 小 野 (2010) も感 動 の 短 期 的 効 果 に 加 えて 長 期 効 果 を 指 摘 し てお り 、 感 動 的 な 出 来 事が 長 期的 に 記憶 に 保存 さ れ る可 能 性を 指 摘し て い る。 つ まり 、 感動 は 短 期的 及 び長 期 的効 果 の 双方 を 内包 し てお り 、 歓喜 ・ 感激 と いっ た 表 現は 短 期的 に 感情 が 高 まっ た 時に の み用 い ら れる 感 情で あ るこ と が 示唆 さ れる 。 これ ら を踏 ま えた 上 で 、本 研 究に お ける 感 動 の定 義 とし て、 「 感動 と は、非 常に 強 い感 情 で、 か つ複 数 の感 情 を 内包 し 、画 期 的で ま れ な場 面 にお い て喚 起 さ れ、 そ の効 果 は 短 期 的 のみ な らず 長 期的 に 及 ぶこ と もあ る 」と し た 。 第2項. スポーツ観戦における感動について. ス ポ ー ツ 観 戦 に お け る 感 動 を 定 義 し た 研 究 は 極 め て 少 な い が 、 押 見 ・ 原 田 (2010) は、 10.

(12) スポ ー ツ観 戦 にお け る 感動 を 8 つ の 場面 に 分 類し た。試 合の 質 にあ たる「ド ラ マ的 展 開場 面」 や 有名 選 手の 有 無 また は 選手 の パフ ォ ー マン ス に該 当 する 「 ス タジ ア ムラ イ ブ観 戦 場 面」、 「 卓越 し たプ レ ー 場面 」、 「劣 勢 から の 活 躍場 面」、 「 懸 命な 姿」、 「 ヒュ ー マニ テ ィ場 面 」 を抽 出 した 。 さら に は 、選 手 やチ ー ムに 対 す る、 観 客同 士 の熱 狂 的 な応 援 によ る 「共 鳴 ・ 一体 感 場面 」 や、 美 し いス タ ジア ム や優 れ た スタ ッ フサ ー ビス に よ る「 付 加的 要 素場 面 」 を指 摘 した 。 Greenwell et al. (2002) や Yoshida and James (2010) に よ れば 、 ス ポー ツ マー ケ ティ ング は 、コ ア プロ ダ ク トや 周 辺的 カ スタ マ ー サー ビ スに 分 類さ れ る とし て いる 。 スポ ー ツ 観戦 に おけ る コア プ ロ ダク ト とは 、 例え ば 、 選手 / チー ム のパ フ ォ ーマ ン スや ス ター 選 手 の 数 (e.g. Greenwell et al., 2002) や 、 ス タ ジ ア ム で 醸 成 さ れ る 興 奮 を 伴 っ た 雰 囲 気 (Yoshida and James, 2010) で あ る 。周 辺 的カ スタ マ ーサ ー ビス と は 、ス タ ッフ の 対応 や 会場 の 清潔 さ 等が 挙 げ られ る (e.g. Tsuji et al. 2007)。上 記 の 分類 を 、押 見 ・原 田 (2010) の感 動 場面 尺 度で 解 釈 する と 、コ ア プロ ダ ク トか ら 喚起 さ れる 感 動 場面 と して は 、共 鳴 ・ 一体 感 場面 、 ドラ マ 的 展開 場 面、 卓 越し た プ レー 場 面、 ス タジ ア ム ライ ブ 観戦 場 面、 劣 勢 から の 活躍 場 面、 懸 命 な姿 場 面、 ヒ ュー マ ニ ティ 場 面が 該 当し 、 周 辺的 カ スタ マ ーサ ー ビ スか ら 喚起 さ れる 感 動 とし て 「付 加 的要 素 場 面」 が 相当 す ると 考 え られ る 。上 記 の分 類 か らも わ かる よ うに 、 ス ポー ツ 観戦 に おけ る 感 動は 、 主に コ アプ ロ ダ クト に 起因 す る場 面 が 多 い こ と が わ か る 。押 見 ・ 原 田 (2010) に よ れ ば 、 各 感 動 場 面と 比 較 し て コ ア プ ロ ダク ト から 喚 起さ れ るド ラ マ 的展 開 場面 、 懸命 な 姿 場面 、 卓越 し たプ レ ー 場面 に おけ る 得点 が 高 く. 2) 、 さ らに は 、共 鳴 ・一 体 感場 面 は観 戦 満 足に ポ ジテ ィ ブな 影 響 を及 ぼ すこ と を明 ら か. 11.

(13) にし た 。ス ポ ーツ 観 戦 によ る 試合 結 果の 不 確 実性 や 試合 で の競 争 性 によ っ て、 様 々な 強 い 感情 が 喚起 さ れる こ と も併 せ て踏 ま える と (e.g. Bernhardt et al., 1998; Deighton, 1992)、 スポ ー ツ観 戦 にお け る 感動 は 、コ ア プロ ダ ク ト か ら 喚起 さ れる 感 動 が特 に 強い 影 響を 持 つ こと が 予想 さ れる 。し たが っ て、本 研究 で は、 「ス ポ ーツ 観 戦に お け る感 動 は、コ アプ ロ ダ クト 及 びカ ス タマ ー サ ービ ス から 生 じる が 、コ アプ ロ ダク ト によ る 影 響が 特 に強 い 」と し 、 感動 体 験の 検 証を 行 っ た。. 12.

(14) 第2章. 先行研究の検討. 第1節. 感情に関する研究. 本 節 では 、主に 心 理学 研究 で 行わ れ てき た 感 情に 関 する 先 行研 究 を 整理 す るこ と とす る。 感情 の 定義 や 分類 な ど は 、 こ れま で 多く の 心 理学 者 によ っ て研 究 が なさ れ てき た が、 研 究 者に よ って そ の解 釈 や 分類 方 法は 異 なっ て い る。 そ こで 本 節に お い ては 、 主に ① 感情 の 定 義、 ② 感情 の 分類 、 ③ 感情 の 階層 性 の 3 つ の 視点 か ら論 を 展開 し て いく こ とと す る。 第1項. 感情の定義. 感 情 を厳 密 に定 義 す るこ と は難 し く、 心 理 学に お いて も 一般 に 認 めら れ た標 準 的な 定 義 は存 在 しな い とさ れ る (大 平 , 2010)。 例 えば 、ア イ ゼン ク (1998) は感 情 を喜 び や悲 し み の精 神 状態 と 感情 を シ ンプ ル に定 義 して い る が、 Ortony et al. (1988) は 感 情を よ り詳 細 に定 義 して お り、 人 が 心的 過 程の 中 で行 う 様 々な 情 報処 理 のう ち で 、人 、 物、 出 来事 、 環 境に 対 して 行 う評 価 的 な反 応 であ る とし て い る。 さ らに 、 Sheth and Mittal (2004) は 感 情を 、 生理 的 覚醒 の 生 起へ の 意識 で あり 、 覚 醒の 後 で起 こ る行 動 的 反応 へ の意 識 、か つ 生 理的覚醒と行動双方への評価的意味への意識であるとしている。この定義に対し、田中 (2008) は テ レビ 広 告 を 見た 際 の消 費 者の 反 応 を例 に 挙げ 、 Sheth and Mittal (2004) の 定 義を 考 察し た 。ま ず 、 わく わ くす る よう な テ レビ 広 告を 見 た際 に 、 自動 的 に神 経 系統 が 覚 醒し て 胸の 動 悸を 感 じ るこ と が生 理 的覚 醒 で あり 、 覚醒 は 自分 が 好 きな 商 品が 出 てい る の に起 因 する と 意識 す る こと が 認知 的 成分 に あ たる 。 そし て 、そ の 広 告や 商 品を よ り知 り た いと 感 じる 事 を行 動 的 成分 と し、 こ うし た 一 連の 反 応や 知 覚を 楽 し さや 悲 しさ と して 意 識 する こ とを 感 情と し た 。本 研究 に おけ る 感情 の位 置 付け と して は、Ortony et al. (1988) や 13.

(15) Sheth and Mittal (2004) の 定 義を 支 持す る こと と した 。 なぜ な ら 、消 費 者行 動 研究 お い て 感 情 は 、 商 品 の 購 買 意 思 決 定 に 影 響 を 及 ぼ す と さ れ て お り (e.g. Holbrook and Hirschman, 1982; Mano and Oliver, 1993)、感情 を 単な る 精神 状 態 とす る ので は なく 、何 らか の 評価 的 意味 合 い を持 つ とす る 定義 の 方 がよ り 適切 だ と判 断 し たか ら であ る 。 感情 の 表現 に はい く つ か種 類 があ り 、例 え ば 代表 的 な表 現 とし て 、 感情 、 情動 、 気分 な どが あ るも の の、 そ れ ぞれ の 区別 は 明確 に さ れて い ない 。 しか し な がら 、 一般 的 には 「 感 情」と いう 表 現が 感 情の 状態 を 表す 総 称的 な 用 語と し て広 く 用い ら れ てい る (濱ら , 2001)。 英 語 に お い て は 、 感 情 は 一 般 的 に ”affect”や ”feeling”と さ れ 、 情 動 は ”emotion”、 そ し て 気 分が ”mood”と さ れる こ とが 多 い。これ ら の用 語を 区 別 す る 手段 と し て、感情 状 態の 持 続時 間や そ の強 さ 、意 図 等 で分 け る手 法 が知 ら れ てい る 。 例 え ば、 情 動 は、 急 激に 生 じて 短 時 間 (秒 な いし は 分 ) で 終わ る 比較 的 強い 感 情 (例 え ば 、怒 り や恐 れ 等 ) の 事を 指 し、気 分は 長 時 間 持 続 的 (数 日 か ら 数 週 間) に 生 じ る 比 較 的 弱 い 感 情 とさ れ る (濱 ら , 2001)。 意 図 で 分類 す ると 、 情動 は 意 識的 で あり 気 分は 無 意 識的 で ある と され る (Frijda, 1986)。 情動 や 気分 な どを 分 類 する 際 に特 に 重要 な 点 とし て 、情 動 は特 定 の 出来 事 や刺 激 に 対 し て喚 起 され る 感情 と さ れて い るこ と であ る ( 例え ば 、素 晴 らし い サ ービ ス を提 供 され た 際 には 顧 客は 喜 びや 嬉 し いと い った 感 情が 喚 起 され 、 逆に 質 の悪 い サ ービ ス を提 供 され た 際 には 怒 りや 不 愉快 と い った 感 情が 喚 起さ れ る 傾向 が ある )。し かし な がら 、ある 刺 激に 対 し て喚 起 され る 情動 は 個 人に よ って 異 なる こ と から 、 その パ ター ン を 完全 に 規定 す るこ と は 出来 な いと の 指摘 も あ る (Bagozzi et al., 1999)。気分 に 関し て は 、気分 は 、情動 の 影響 や 病気 や 疲労 と いっ た 身 体の 状 況、 気 温や 騒 音 、ス ト レス 環 境な ど に よっ て 影響 を 受け る と 14.

(16) され て いる (Frijda, 1986)。 本研 究 がテ ー マと す る 感動 と いっ た 感情 は 、 情動 に 分類 さ れる こ と もあ る が、 本 研究 で は、 感 情と い う言 葉 を 用い て 論を 展 開し た 。 なぜ な ら、 感 情は 総 称 的な 感 情表 現 で感 動 を 含ん だ もの で あり 、 さ らに は 、心 理 学研 究 や 多く の 心理 学 系の 図 書 にお い ても 感 情と い う 表現 を 用い た もの が 一 般的 と なっ て いる か ら であ る 。 第2項. 感情の分類. 人 間 には 、 基本 感 情 があ る とさ れ る。 基 本 感情 と は、 人 間が 生 き て行 く 上で 必 要な 感 情 であ り 、文 化 や性 別 を 超え て 人々 に 備わ っ た 感情 で ある 。 例え ば 、 Ekman (1992) は、 基 本感 情 とし て 喜び 、驚 き、怒 り 、恐 れ 、嫌 悪 、悲 し みを 基 本感 情 の ビッ グ 6 と し て挙 げ て いる 。 研究 者 によ っ て 、基 本 感情 の 数は 異 な って お り、 例 え ば Plutchik (1980) は喜 び 、 受容 、予 期、恐れ 、驚 き 、嫌 悪、怒 り、悲 しみ の 8 つ を挙 げ てい る。多く の 心理 学 者が 様 々 な基 本 感情 を 提示 し て きた が 、文 化 によ っ て 感情 の 表出 等 に違 い が ある た め一 致 した 見 解 は得 ら れて い ない 。 し かし な がら 、 本質 的 な 基本 感 情は 存 在し 、 そ れら が 結合 し たり 、 混 合することで異なった感情が生起することは、現代感情研究の主流的立場となっている (濱 ら , 2001)。例 えば 、Plutchik (1980) は、先ほ ど述 べ た 8 つ の基 本 感 情を ベ ース と して 、 混合 感 情の 円 環構 造 を 提起 し てい る 。 上 記 で挙 げ られ た 基 本感 情 に加 え 、そ の 他の 感情 も それ ぞ れの 位 置 付け が 行わ れ てき た。 Russel (1980) は 、 す べ て の 感 情 を 「 快 (pleasure) ‐ 不 快 (unpleasure) 」 と 「 覚 醒 (arousing)‐ 眠気 (sleepy)」 の 2 次 元で 表 わ し、 平 面上 に 円環 状 に 並ん で いる と する 円 環 モ デ ル (circomplex model) を 提 唱 し た (図 1)。 Russel (1980) の 円 環 モ デ ル の 他 に 、 15.

(17) Watson and Tellegen (1985) も同 様 に 2 次 元 の円 環 モデ ル を提 唱 し てお り (図 2)、双 方の モデ ル は根 本 的に は 同 じで あ るが (Bagozzi et al., 1999)、次 元を ど の よう に 定義 す るか で 多少 の 違い が 出て く る とさ れ る (大 平 , 2010)。例え ば、 「 快 (pleasure)‐不 快 (unpleasure)」 と「覚 醒 (arousing)‐ 眠気 (sleepy)」と いっ た二 次 元に 関 して は 多 くの 研 究者 で 同意 が 得 られ て はい る もの の 、 第三 の 次 元 と して 注 目 -拒 否 を挙 げ る者 や (Schlosberg, 1954)、 支 配- 服 従を 提 示す る 者 もい る (Mehrabian, 1978)。 さら に 、感 情 の分 類に 関 する 問 題点 と して 、それ ぞ れの 感 情の 分類 が 明確 で はな い 点 が挙 げ られ て いる (濱 ら , 2001) し か し なが ら、 円 環モ デ ルは シ ン プル で あり 、 感情 の 相 違を 明 らか に する う え で非 常 に有 用 とす る 意 見も あ る (Bagozzi et al., 1999)。. 本研 究 では 、 スポ ー ツ 観戦 に おい て 喚起 さ れ る感 情 のう ち 、感 動 に 着目 す るが 、 その 他 の感 情 との 関 係性 を 考 察す る 際に は 、主 に Russel (1980) の円 環 モ デ ルを 参 考に す るこ と と す る (図 1)。 Russel (1980) の 円 環 モ デ ル は 、 多 く の 研 究 者 間 で 一 致 が 見 ら れ る 「 快 (pleasure)‐不 快 (unpleasure)」と「覚 醒 (arousing)‐眠 気 (sleepy)」の 二次 元 をも と に 作ら れ てお り 、シ ン プ ルか つ 消費 者 行動 研 究 にお い ても よ く援 用 さ れる モ デル と され る 。 16.

(18) 第3項. 感情の階層性. Laros et al. (2005) は、 こ れま で の感 情 心 理学 研 究の 課 題と し て 、感 情 の構 造 と内 容 が あま り 明確 に され て い ない こ とを 挙 げ、 そ の 分類 を 行っ た 。構 造 に つい て は、 す べて の 感 情を 強 弱付 け ずに 並 列 に見 る 考え 方 (Izard, 1977) と 感 情 をい く つか のク ラ スタ ー に分 類 し、 階 層的 に 捉え る 考 え方 (Shaver et al., 1987; Storm and Storm, 1987) に分 け て考 え た。Laros et al. (2005) は 、最 上 位の 感 情を ポ ジテ ィ ブ感 情 及び ネ ガ ティ ブ 感情 と し、 次 の層 を 基本 感 情、 最 下 層を そ の他 の 感情 と し て分 類 を行 い 、そ れ ぞ れに ネ ーミ ン グを 行 っ た。 645 名 のオ ラ ンダ 人を 対 象に 、 食品 を 消 費す る 際に 感 じる 感 情 を 、 合 計 33 項 目 の感 情尺 度 から 評 価し て も らっ た 。結 果 、ポ ジ ティ ブ感 情 の下 位 層に は 、満足 (contentment)、 幸福 (happiness)、 愛 情 (love)、誇 り (pride) が位 置 され 計 19 の 感情 が 各因 子 の最 下 層 に位 置 され た 。ネガ テ ィ ブ感 情 の下 位 層に は 、怒 り (anger)、恐怖 (fear)、悲し み (sadness)、 恥 (shame) が位 置 し 、最 下 層に は 計 22 の 感情 が 配置 さ れた 。 内容 に つい て は、 感 情 は広 く 一般 的 な因 子 で ある と いう 考 え (例 え ば pleasure/arousal (Russel, 1980) や positive affect/negative affect (Watson and Tellegen, 1985) と いっ た 分類 ) と 、特 定 の感 情 に着 目 する 立 場 (Frijda et al., 1989; Roseman et al., 1996) に 分け た。 感 情は 、 ポジ テ ィ ブ感 情 とネ ガ ティ ブ 感 情と い った 大 まか な 区 別を さ れる こ とが し ば しば あ るが 、一 方 では 特定 の 感情(例 え ば、喜び 、怒 り )に 着 目し た研 究 も多 数 存在 す る 。 例え ば 、驚 き に着 目 し た研 究 (Derbaix and Vanhamme, 2003; Kumer et al., 2001) や 怒 り (Bougie et al., 2003)、感 動 (Oliver et al., 1997; Rust and Oliver, 2000) な どそ の 他 にも 困 惑や 後 悔と い っ た 研 究 が挙 げ られ る (e.g., Verbeke and Bagozzi, 2003; Tsiros and 17.

(19) Mittal, 2000)。ポ ジ テ ィブ 感 情と ネ ガテ ィ ブ 感情 と いっ た 分類 の 利 点は 、シ ンプ ル であ る ため 対 象者 の 態度 を 簡 潔に 把 握す る 上で 有 益 とな る が、 個 々の 感 情 が持 つ 意味 が 合成 さ れ るこ と で 、有益 な 情報 が消 え てし ま う可 能 性 が指 摘 され る (Bagozzi et al., 1999)。例 え ば、 同じ ネ ガテ ィ ブ感 情 で も怒 り と恐 怖 は異 質 の もの で あり 、 興奮 と 安 心も 同 様に 異 質で あ ろ う。 し たが っ て、 Soderlund and Rosengren (2004) が 指 摘す る よ う に、 感 情研 究 にお い て、 個 々の 感 情の 特 異 性か ら も、 そ れぞ れ 別 々に 扱 って 研 究を 行 う 必要 が ある と いう 立 場 が存 在 する 。 本 研 究 も 、 感 動 と い う 感 情 に 着 目 し て 研 究 を 行 う 事 か ら 、 Soderlund and Rosengren (2004) や Frijda et al. (1989) と同 様 の 立場 での 研 究と な る。 し か しな が ら、 解 釈の 容 易 さか ら 考え る と、 感 情 を分 類 する 際 には 、 Laros et al. (2005) が 指 摘す る 感情 の 内容 を 考 慮し た 分類 (e.g. positive affect/negative affect) も必 要 にな る と 思 われ る 。 し た がっ て、 本研 究 で は 2 つの 立 場 を併 用 しな が ら論 を 展 開し た 。 第4項. まとめ. 本 節 では 、 感情 の 定 義に つ いて 整 理し た 上 で感 情 の分 類 や階 層 性 につ い ての レ ビュ ー を 行っ た 。感 情 に関 す る 定義 や 分類 な どは 、 親 学問 で ある 心 理学 に お いて も 統一 し た見 解 が 存在 す る訳 で はな い 。 例え ば 、感 情 の分 類 に 関し て は、 大 きく ポ ジ ティ ブ 感情 / ネガ テ ィ ブ感 情 に分 類 する 方 法 や、 そ れぞ れ 個別 の 感 情に 着 目し た 研究 が 存 在す る 。そ れ ぞれ が 長 所と 短 所を 持 って い る こと か ら、 研 究の 目 的 に照 ら し合 わ せて そ れ らを 使 い分 け るべ き で ある 。 感情 は 個人 や 文 化的 背 景に よ って 異 な ると さ れる 一 方で 、 す べて の 人間 が 持つ と す る基 本 感情 の 存在 も 指 摘さ れ る。 し たが っ て 、感 情 を変 数 とし て 研 究に 用 いる 場 合は 、 そ 18.

(20) うし た 背景 を 踏ま え た 上で 感 情の 位 置付 け や 結果 の 解釈 、 尺度 の 選 定を す るこ と が望 ま し いと 思 われ る 。. 第2節. 感情と消費者行動研究. かつ て 、人 々 は合 理 的 に意 思 決定 を する 存 在 とみ な され 、 感情 が 顧 客の 意 思決 定 に も た らす 影 響は あ まり 大 き くな い とさ れ てい た (チョ ー ドリ ー , 2007)。 しか し なが ら 、近 年 で は 感 情 が 消 費 者 の 意 思 決 定 や 購 買 意 図 に 及 ぼ す 影 響 の 重 要 性 が 指 摘 さ れ て い る 。 Oliver (2010) に よ れば 、 消 費 者行 動 にお け る感 情 研 究の 起 源は 1950 年 か ら 1960 年 に あた り、 主 に 消 費 者 の 動 機 に 関 す る 研 究 (モ チ ベ ー シ ョ ン リ サ ー チ ) が 中 心 で あ っ た 。 し か し な が ら、 当 時の 研 究方 法 は 科学 的 アプ ロ ーチ の 欠 如が 指 摘さ れ 、消 費 者 が何 に 動機 づ けら れ て 購買 に 至る の かを 、フ ロイ ト の理 論 から 理 論 的に 説 明し て いた 。1960 年 代中 盤 にな り、定 量的 手 法を 用 いた 感 情 研究 が 始ま り 、消 費 者 の情 報 処理 を テー マ と した 意 思決 定 プロ セ ス に関 す る研 究 がさ れ る よう に なっ た 。 そ の 後 、Holbrook and Hirshman (1982) の研 究 や シ ュ ミ ッ ト (2000) が 提 唱 し た 「 経 験 価値 マ ー ケ テ ィ ン グ 」 に代 表 さ れ る よ う に 、 顧客 の 購買 前 の意 思 決定 プ ロ セス だ けで な く、 使 用 ・消 費 過程 で 生じ る 感 情体 験 に焦 点 を当 て た 研究 が なさ れ るよ う に なっ た 。 よ っ て、 本 節 では 、 主に 1980 年 代 から 盛 んに 行 われ る よ うに な った 、 ①感 情 と 広告 効 果、 ② 気分 と 消 費者 行 動、 ③ 感情 と 顧 客満 足 の関 係 性 、 ④ ス ポー ツ 観戦 と 感情 、 に 関す る 4 つ の 研究 分 野 を概 観 する 。 第1項. 感情と広告効果. 広 告 効果 を 測定 す る 尺度 と して 、 感情 的 反 応を 測 定 す る 手法 が 着 目さ れ 、複 数 の感 情 測 19.

(21) 定尺 度 が開 発 され て き た 。中 でも 、広 告効 果 の検 証 に 強 い 影響 を 与 えた 尺 度は 、Holbrook and Batra (1987) 及び Edell and Burke (1987) が 開発 し た尺 度 とさ れる (Bagozzi et al., 1999)。Holbrook and Batra (1987) は 、先行 研 究の レ ビュ ー から 広 告 効果 を 測定 す るた め の感 情 尺度 (94 項目 ) を開 発 した 上 で、テ レ ビ CM への 感 情が 、そ の CM に対 す る態 度及 び CM に 登場 す るブ ラ ンド 態 度に 影 響を 与 え るこ と を明 ら かに し た 。 こ の 尺度 は 後に 34 項目 に 削減 さ れて い る (Batra and Holbrook, 1990)。Edell and Burke (1987) もま た、広 告に 対 する 感 情尺 度 52 項目 を 開発 し 、広 告 効果 の 予測 に はポ ジ テ ィブ 感 情及 び ネガ テ ィ ブ感 情 がと も に影 響 を 与え る こと を 明ら か に した 。 Dervaix (1995) は、Edell and Burke (1987) の 研 究を よ り 消 費状 況 に近 い 条件 下 の もと で 再検 証 し、ポジ ティ ブ 及び ネ ガテ ィ ブ な感 情 はブ ラ ンド 態 度 に影 響 を及 ぼ すこ と を 明ら か にし た。Dervaix (1995) は、従来 の 質 問紙 を 用い た 分析 に 加 え て 、対象 者 の表 情 も分 析の 視 点に 加 えた 点 で 興味 深 い 研 究 であ る。 テレ ビ CM の 視聴 行 動 に関 す る研 究 とし て、Olney et al. (1991) は 、テ レビ 視 聴で 喚 起さ れた 感 情が テ レビ 広 告 に対 す る態 度 を介 し て 、視 聴 時間 に 影響 を 及 ぼす こ とを 明 らか に し た。 そ の他 に もテ レ ビ CM や広 告 への 感 情 を 測定 し た研 究 が散 見 さ れる (e.g., Moore and Harris, 1996; Mury and Dacin, 1995; Pham et al., 2001) 。 広 告 効果 に 対す る 感 情研 究 の意 義 とし て 、 広告 へ の 反 応 や態 度 を 測定 で きる こ とが 挙 げ られ (e.g. Friestad and Thorson, 1986)、広 告へ の 感情 的 反応 は 広 告態 度 とし て 測定 さ れ るこ と が多 い (Bagozzi et al., 1999)。広 告 態 度は 、 広告 そ れ自 体 へ の 感 情 とさ れ (Batra and Ray, 1986)、Batra and Ray (1986) は、”activation”, “deactivation”, “social affection feeling”とい う 3 つ の 感情 反 応が 広 告態 度 を 予測 す る上 で 重要 な 役 割を 果 たす と した 。 そ 20.

(22) の他 、 消費 者 の製 品 に 対す る 関与 状 態に 着 目 し 、 低 関与 状 態で は 広 告態 度 に対 し て感 情 の 方が 認 知よ り も強 く 影 響を 与 え、 高 関与 状 態 では ど ちら も 影響 を 与 える と した 研 究も あ る (e.g., Miniard et al., 1990)。 広告 態 度が ブ ラン ド態 度 に影 響 を与 え る とす る 研究 も 多く な され て おり 、 例え ば 、 Mitchell and Olson (1981) 及 び Shimp (1981) は 広告 態 度が ブ ラ ンド 態 度に 与 える 影 響 を検 証 した 最 初の 研 究 であ る 。し か しな が ら 、広 告 によ っ て喚 起 さ れる 感 情が 広 告態 度 を 通し て ブラ ン ド態 度 に 影響 を 与え る のは 、 限 定的 で ある と する 指 摘 もあ る (Batra and Ray, 1986)。ま た、Stayman and Batra (1991) は 、ポ ジ ティ ブ な感 情 が喚 起 され て いる 状 況 とネ ガ ティ ブ な感 情 が 喚起 さ れて い る状 況 で 、ブ ラ ンド ネ ーム の 想 起に 違 いが 生 じる こ と を明 ら かに し 、感 情 と 記憶 の 関係 性 を検 証 し た。 広 告 効果 に 関す る 研 究の み なら ず 、消 費 者 行動 に おい て 用い ら れ た 感 情 尺度 は 多く 存 在 す る 。 例 え ば 、 PANAS. (Positive. and. Negative. Affect. scale). 、 PAD. (Pleasure-Arousal-Dominance)、Plutchik’s scale、Richin’s scale など が 挙げ ら れる 。 中 でも 、 Oliver (2010) によ れ ば、Richins (1997) が 開 発し た CES (Consumption emotion description) は 消費 者 行動 を 測定 す る上 で 最 も包 括 的で 優 れて お り 、 そ れ 以 降目 立 った 尺 度は 開 発さ れ てな い と して い る。 Richins (1997) の 尺 度は 、16 因 子 43 項 目構 造 であ り、 学生 及 び一 般 の消 費 者 を対 象 に調 査 を行 い て 尺度 の 開発 を 行い 、 尺 度の 信 頼性 及 び妥 当 性 を検 証 した 。 しか し な がら 、 弁別 的 妥当 性 に 課題 を 残し て いる こ と から 、 改善 の 余地 も 残 され て いる (Bagozzi et al., 1999)。 第2項. 気分と消費者行動. 気 分 は 長 時 間 持 続 的 (数 日 か ら 数 週 間 ) に 生 じ る 比 較 的 弱 い 感 情 と さ れ 、 よ り 強 く て 持 21.

(23) 続 時 間 が 短 い 情動 (秒 な い し は 分) と は 区 別 さ れ て い る (濱 ら , 2001)。 マ ー ケ テ ィ ン グに おいて、気分が消費者行動にもたらす影響を理解することは重要であるとされている (Gardner, 1985) 。 気 分 は 、 そ の 時 の 状 況 に よ っ て 変 化 し や す い も の で あ り (Isen and Shalker, 1982)、例 えば 販売 員 の表 情 や接 客 の 仕方 、天候 や 体調 に よ って も 異な っ てく る 。 Gardner (1985) は 、 消 費 者 の 気 分 は 「 想 起 」、「 評 価 」、「 行 動 」 に 影 響 を 与 え る と し て い る。 例 えば 、 ポジ テ ィ ブな 感 情状 態 の際 は ポ ジテ ィ ブな 感 情に 一 致 した 認 知的 処 理が 促 進 され る ため 、楽 しい 出 来事 を 思い 出 すと さ れ る気 分 一致 効 果 が 生 じ る (Kunda, 1999)。ま た、 ポ ジテ ィ ブな 出 来 事が 想 起さ れ るこ と で 、あ る 事象 に 対す る 評 価も 同 時に 高 まり 、 購 買行 動 につ な がる 可 能 性が あ り (Gardner, 1985)、 ポジ テ ィブ な 気分 は思 考 の柔 軟 性を 促 進し 、あ る事 象 の 記憶 再生 を 高め る とさ れ る (Hanna and Wozniak, 2001)。さら に 、ポジ ティ ブ な気 分 は消 費 者 のバ ラ エテ ィ シー キ ン グを 高 める 傾 向が あ り 、新 製 品を 試 した い と いう 意 向を 高 める と い う研 究 から も (Kahn and Alice, 1993)、 気分 が消 費 者の 認 知や 行 動 に及 ぼ す影 響 が示 唆 さ れる 。 その 他 、あ る 事 象を 想 起す る 際に は 、 ポジ テ ィブ な 気分 の 場 合、 既 存の 知 識や ヒ ュ ー リ ス ティ ッ クに 沿 っ た情 報 処理 が 行わ れ る が、 ネ ガテ ィ ブな 気 分 の場 合 、入 念 な情 報 処 理が 行 われ る とさ れ る 。こ れ は、 ポ ジテ ィ ブ な気 分 の際 は 、関 連 付 けら れ た記 憶 同士 が よ り活 性 化さ れ るこ と で 、情 報 処理 に 時間 を 要 さ な く なり 、 ネガ テ ィ ブな 気 分の 際 は、 望 ま しく な い環 境 を意 味 す るた め 、よ り 精緻 な 情 報処 理 が求 め られ る か らと 説 明さ れ る (唐 沢 , 2001)。 気 分 と消 費 者行 動 の 研究 は 、気 分 とい う 変わ りや す い性 質 のも の を 対象 と する こ とか ら 、 実験 環 境の コ ント ロ ー ルが 難 しく 、 さら に は 、実 際 の消 費 環境 と 実 験環 境 との 乖 離が 指 摘 22.

(24) され て いる (Gardner, 1985)。 し かし な が ら、 これ ま での 研 究で 気 分 が消 費 者の 認 知や 行 動に 影 響を 与 える こ と が明 ら かに な って い る こと か らも 、 気分 が も たら す 影響 は 重要 で あ り、 消 費者 行 動研 究 に おい て 重要 な 変数 の 一 つと さ れて い る 。 第3項. 感情と顧客満足の関係性. 感 情 が顧 客 満足 及 び 購買 意 図に 及 ぼす 影 響 に関 す る 研 究 は、1990 年頃 か ら行 わ れて き た。 例 え ば 、 Westbrook (1987) は 感 情 と 購 買 行 動 に 着 目 し た 最 初 の 研 究 の 一 つ で あ り 、 購 買 中 に 生 じ る 感 情 が 購 買 行 動 に 影 響 を 与 え る こ と を 明 ら か に し た 。 ま た 、 Westbrook and Oliver (1991) は 新車 購入 の ケー ス を事 例 と して 、 自動 車 を購 入 し たば か りの 125 名 に対 して 自 らの 自 動車 に 対 する 感 情と 満 足を 評 価 して も らっ た 。分 析 はク ラス タ ー分 析 を行 い、 驚き を 伴っ た 喜び 、興 味、そし て 敵意 の 3 つ の感 情 的反 応 が顧 客 満 足の 先 行要 因 とし て 強 い影 響 を与 え ると し た 。Oliver (1993) は、Westbrook (1987) の 研 究を 発 展さ せ 、感 情 が 製品 の 属性 に 対す る 満 足を 媒 介し 、 総合 的 な 満足 に 影響 を 与え る 感 情の 媒 介効 果 を明 ら か にし た 。Mano and Oliver (1993) は 、製 品 への 評価 を 実利 的 な価 値 と 快楽 的 な価 値 に分 け、 それ ぞ れに 対 する 評 価 が覚 醒 、ポ ジ ティ ブ 感 情及 び ネガ テ ィブ 感 情 を介 し て 、 製 品へ の 満 足に 影 響を 与 える と い う構 造 モデ ル を 検 証 し た。 これ ま で、 感 情が 顧 客 満足 に 及ぼ す 影響 を 検 証し た 研究 が 行わ れ て きた が 、 顧 客 満足 が 他の ポ ジテ ィ ブな 感 情 と明 確 に異 な る 変 数 で ある の かは 明 らか に さ れて こ なか っ た 。 例 え ば、 Shaver et al., (1987) に よ れば 、 顧客 満 足は 幸 福や 喜 びと い っ た快 感 情と 高 い相 関 が ある こ とを 指 摘し 、Nyer (1997a; 1997b ) は 喜び と 顧客 満 足を 同 一 因子 で ある と みな し た。 近年 で も、 Kotler and Keller (2008) は 顧 客 満足 を 顧客 の 喜び や 幸 福感 な どの 感 情的 反 応 23.

(25) と して お り 、顧 客 満 足 は 感情 的 要 素を 含 ん だ も ので あ る との 見 解 が あ る。Bagozzi et al., (1999) は 、顧 客 満足 と 快感 情 (例え ば 、喜 び や幸 せ 等 ) の 弁 別的 妥 当性 を 実証 す るこ と は 可能 で ある が 、顧 客 満 足が 他 の快 感 情 と 完 全 に独 立 して 生 じる こ と を特 定 する こ とは 難 し いと し た。 さ らに は 、 消費 環 境に よ って は 顧 客満 足 より も 他の ポ ジ ティ ブ また は ネガ テ ィ ブな 感 情を 従 属変 数 と した 方 が 、消 費 者行 動 を説 明 する 上 で よ り 有 効で あ ると し た 。Nyer (1997a: 1997b) も 同様 に、再 購買 意 図や 口 コ ミ意 図 を従 属 変数 と し た際 に 、顧 客 満足 に 加 えて 他 の感 情 を加 え る こと の 有効 性 を 指 摘 し た。 こ れら の 指摘 を 踏 まえ る と、 顧 客満 足 は 感情 的 要素 を 含ん だ 概 念と し て捉 え る 方 が 適 切で あ り、 さ らに は 、 研究 目 的に 沿 って 口 コ ミ意 図 や再 観 戦意 図 を 説明 す る変 数 とし て 、 感情 と の関 係 性も 考 慮 する 必 要が あ るこ と が わか る 。 第 4 項 ス ポ ー ツ 観 戦 と感 情 スポ ー ツ観 戦 は様 々 な 感情 が 喚起 さ れる と 指 摘さ れ てき た 。ス ポ ー ツ観 戦 の前 後 で 実 際 に喚 起 され る 感情 の 変 化に 着 目し た 研究 を 概 観す る と、Sloan (1989) は 多次 元 心理 尺 度を 用い て スポ ー ツ観 戦 前 後 の 心 理的 変 化を 、勝 っ た試 合 及び 負 けた 試 合 に分 類 し て 検 証し た。 Hirt et al. (1992) も ま た、バス ケ ット ボ ール 観戦 者 を対 象 と し て 勝 利し た 試合 と 敗北 し た 試合 に おけ る 心理 的 変 化の 検 証を し てい る 。 大友 ・ 鈴木 (2008) は 実験 室 にお い て 、 ポ ジ ティ ブ ・ネ ガ ティ ブ な スポ ー ツ場 面 を編 集 し た画 像 を見 せ 、前 後 で 感情 の 差を 検 定し て い る。 そ の他 に も、 Knobloch-Westerwick (2009) は実 験 室に お いて パ ソコ ン を用 い てフ ッ トボ ー ルの ラ イブ 映 像 を被 験 者に 見 せ、 そ の 感情 の 変化 を 時系 列 的 に検 証 した 。 すべ て の 研究 に 共通 し てみ ら れ た の は 、応 援 して い る チー ム が勝 利 また は 成 功し た 際に は ポジ テ ィ 24.

(26) ブな 感 情が 喚 起さ れ 、敗 北 ま た は失 敗 した 際 に はネ ガ ティ ブ な感 情 が 喚起 さ れ た 点 であ る。 こう し た研 究 は 、ス ポ ー ツ観 戦 から 喚 起さ れ る 感情 を 測定 す るこ と を 目的 と して い るが、 感情 を 測定 す る尺 度 や 測定 す る環 境 はそ れ ぞ れで 異 なっ て いる 。例 え ば 、尺 度 に関 し ては 、 様々 な 感情 を 測定 す る 尺度 を 用い た 研究 (Sloan, 1989; Hirt et al., 1992; 大友 ・ 鈴木 , 2008) やポ ジ ティ ブ 感 情と ネ ガテ ィ ブ感 情 と いう 大 枠で 測 定し た 研 究 (Knobloch-Weterwick, 2009) に大 別 され る 。研究 の 環境 に おい て は 、実際 に スタ ジ アム で 測定 し た研 究 (Sloan, 1989) や実 験 室を 使 っ て検 証 した 研 究 (Hirt et al., 1992; Knobloch-Weterwick, 2009; 大 友・ 鈴 木 , 2008) が ある 。 それ ぞ れの 研究 に はメ リ ット と デメ リ ット が あり 、 例 えば 、 スタ ジ アム で 調 査を 行 った 場 合、 実 際 のス ポ ーツ 観 戦環 境 で の調 査 が可 能 であ る が 、 対 象 者は 外 的要 因 (例え ば 、気 候 ・ス タ ジ アム の 雰囲 気 など ) に 影響 を 受け る 可能 性 が ある 。 一方 で 、ビ デ オ 映像 等 を用 い る場 合 、 外的 要 因の 影 響を 制 約 する こ とが で きる も の の、 ラ イブ で のス ポ ー ツ観 戦 の環 境 を再 現 す るの は 難し く なる 。 ま た、 測 定尺 度 にお い て も、 ポ ジテ ィ ブ感 情 と ネガ テ ィブ 感 情と い う 大き な 枠組 み で測 定 し た場 合 、解 釈 は容 易 で ある も のの 、 ど の よ う な種 類 の感 情 が実 際 に 変化 し たの か 、と い っ たこ と を明 ら かに す る こと は でき な い。 し た がっ て 、ス ポ ーツ 観 戦 で喚 起 され る 感情 を 測 定す る 場合 は 、調 査 目 的に 合 わせ て 調査 環 境 及び 調 査項 目 を選 定 し てい く 必要 が ある だ ろ う。 ス ポ ーツ 観 戦に よ っ て喚 起 され た 感情 が 、 満足 や 再観 戦 意図 と い った 従 属変 数 に与 え る 影響 を 検証 し た研 究 も され て いる 。例え ば、Madrigal (1995) は enjoyment と いう 因 子に happy, delight, joyful とい う 観測 変 数を 仮 定 して そ の 影 響 を検 証 し たと こ ろ、 enjoyment 25.

(27) から 満 足へ の 影響 が 明 らか と なっ た 。 さら に は、 Kao et al. (2007) はバ ス ケッ ト ボー ル 観戦 者 が観 戦 中に 生 じ る感 情 や 、 試 合へ の 関 与度 が 満足 度 や再 観 戦 意図 、 口コ ミ 意図 に 与 える 影 響を 検 証し 、 Kuenzel and Yassim (2007) は クリ ケ ット 観 戦者 にお い て joy (喜び ) と い う 感 情 が 満 足 及び 再 観 戦 意 図 に 与 える 影 響 を 検 証 し た 。 隅野 ・ 原 田 (2005) は 、 サ ッ カー 観 戦者 が 試合 中 に 感じ た 感情 が 満足 や 再 観戦 意 図及 に 与え る 影 響を 検 証し 、 楽し み 、 誇りや怒りといった感情がポジティブな影響を及ぼすことを明らかにした。隅野・原田 (2005) は 、感 情 の測 定 方法 と して こ れま で の 試合 経 験を 通 して 感 じ た感 情 を評 価 して も ら う 方 法 (累 積 的 測 定 手 法 ) と 、 そ の 日 の 試 合 で 感 じ た 感 情 を 評 価 し て も ら う 方 法 (特 定 取 引的 測 定手 法 ) の 2 つ を併 用 して 検 証を 行 っ てい る 。 ス ポ ーツ に よっ て 喚 起さ れ る感 情 のみ で は なく 、 スポ ー ツと ス ポ ーツ 以 外の 他 業種 に お いて 喚 起さ れ る感 情 を 比較 し た研 究 とし て は 、Gantz et al. (2006) の研 究 が挙 げ られ る。 Gantz et al. (2006) は 、テ レビ 映 像 を 刺 激と して 用 い、 スポ ー ツの 他に 、コ メ ディ や リア リテ ィ ーシ ョ ー、 ド ラ マ、 ア ニメ ー ショ ン 、 トー ク ショ ー を研 究 対 象と し 、 ス ポ ーツ は 他 のエ ン ター テ イメ ン ト 業界 と 比較 し て、 よ り 感情 的 な反 応 がみ ら れ ると し た。 そ の他 、 チ ーム に 関す る 情報 の 提 供に よ って 喚 起さ れ る 感情 が 、そ の 後の 認 知 や行 動 に及 ぼ す影 響 を 検証 し た研 究 もみ ら れ る (Kwak et al., 2011)。 第5項. まとめ. 本 節 では 、 ①感 情 と 広告 効 果、 ② 気分 と 消 費行 動 、③ 感 情と 顧 客 満足 の 関係 性 、④ ス ポ ーツ 観 戦と 感 情、の 4 つの 研 究ト ピ ック を 中 心と し て先 行 研究 の レ ビュ ー を行 っ た。それ ぞれ の 研究 に おい て 、 感情 を 測定 す る尺 度 を 開発 し それ ら を用 い て 様々 な 感情 の 変化 や 、 26.

(28) 消費 者 の態 度 や意 図 に 及ぼ す 影響 の 検証 が 行 われ て いる が 、ど の よ うな 刺 激が 特 定の 感 情 を 喚 起 す る の か 、 と い っ た 視 点 を 持 っ た 研 究 は 多 く は さ れ て い な か っ た 。 Kwak et al. (2011) の研 究 のよ う に 、実際 の マー ケ ティ ン グ活 動 に有 用 な情 報 を 提供 す るた め には 、操 作的 な 刺激 に 対す る 効 果を 測 定す る 研究 の 蓄 積が 必 要で あ ると 思 わ れる 。 また 、 国内 に お ける 感 情と 消 費者 行 動 に関 す る研 究 はほ と ん ど散 見 され ず 、特 に ス ポー ツ 観戦 に 着目 し た 研 究 は 隅 野 ・ 原 田 (2005) を除 き 極 め て 少 な い の が 現 状 と 思 わ れる 。 感 情 は 文 化 的 背 景や 環境 に よっ て 異な る こ とも 指 摘さ れ てい る こ とか ら も (濱 ら , 2001)、日 本 国内 に おけ る 感 情研 究 の蓄 積 が望 ま れ る。. 第3節. 感動に関する研究. 本 節 では 、 感動 に 関 する 研 究の レ ビュ ー を 行っ た 。感 動 に関 す る 研究 は 国内 に おい て は 極め て 少な く 、学 術 論 文と し て掲 載 され て い る論 文 は数 え る程 度 し か存 在 しな い 。海 外 に おい て は、感動 に 相当 する と 考え ら れる デ ィ ライ ト(delight)と い う感 情 に着 目 した 研 究 は行 わ れて お り、 主 に はサ ー ビス マ ーケ テ ィ ング や マー ケ ティ ン グ 研究 の 分野 で 取り 上 げ られ て いる 。本 節 では 、第 1 項 でま ず 国内 扱 われ る 感動 に 関す る 研 究を 概 観し 、 そ の 知見 を整 理 する 。続 い て、第 2 項 では 感 動と そ の 類似 の 英語 表 現と 思 わ れる デ ィラ イ トと の 類 似点 や 相違 点 に関 し て 、先 行研 究 をも と に考 察す る 。第 3 項 では 、感動 と 満足 の 概念 の 違 いを 考 察す る 。こ れ ま で顧 客 の口 コ ミ意 図 や 再観 戦 意図 を 示す ロ イ ヤル テ ィに 与 える 変 数 とし て 、顧 客 満足 と い う概 念 が用 い られ て き たが 、 近年 感 動と い う 概念 が 着目 さ れて き た こと か ら 、その 違 いを 明確 に する 必 要が あ る と思 わ れる 。第 4 項 で は 、海外 で ディ ラ イト 27.

(29) の概 念 を用 い て検 証 さ れて い る顧 客 感動 ・ 満 足モ デ ルに 関 する 研 究 を概 観 し、 こ れま で 得 られ た ディ ラ イト に 関 する 知 見を 整 理す る こ とと し た。 第 5 項 では 、ス ポー ツ 観戦 に おけ る感 動 に関 す る研 究 を レビ ュ ーし 、 その 知 見 と課 題 を整 理 する 。 第1項. 国内での感動研究. 国 内 にお い て 、感 動 とい う 感情 に 特化 し た 研究 と して は 、戸梶 (2001a) の研 究 が挙 げ ら れる 。戸 梶 (2001a) は 、大 学生 を 対象 と して 定性 的 なア ン ケー ト 調 査を 継 続し て 行い (戸 梶 , 1997; 1998; 1999a; 1999b; 2000a; 2000b; 2001a; 2001b)、感 動 喚 起の 理 論モ デ ルを 構 築し た 。戸梶 (2001a) は 、感 動 の種 類 を 、喜 びを 伴 う感 動 、驚き を 伴う 感 動 、悲 し みを 伴 う感 動 、尊 敬を 伴 う感 動 の 4 つに 分 類し た 。喜び を 伴う 感 動は 、何 らか の ポジ テ ィブ な 事 象が 起 きる こ とが 前 提 とさ れ たモ デ ルで あ る 。特 徴 とし て 、① 結 末 に至 る まで の プロ セ ス に関 す る知 識 を有 し て 関与 度 が高 く 、② あ る 事象 が 完結 す るま で の 途中 経 過に お ける 、 結 末の 成 否に 対 する 期 待 と不 安 があ る 、③ 事 象 がポ ジ ティ ブ に完 結 し たこ と によ る 心身 の 緊 張と 緩 和 、の 3 つを 挙 げて お り 、それ ら が揃 う事 で 感動 が 喚起 さ れ ると し た 。悲し み を伴 う感 動 に関 し ては 、 辿 るプ ロ セス は 同じ で あ り、 ネ ガテ ィ ブ事 象 を 含む が 、そ れ が直 接 自 分と は 関わ り がな い こ とを 前 提条 件 とし て 挙 げて い る。 驚 きを 伴 っ た感 動 に関 し ては 、 ス トー リ ー性 の ある 場 合 と ス ト ーリ ー 性の な い 場合 に 分け て いる 。 ス トー リ ー性 の ある 場 合 に関 し ては 、喜 びを 伴 う 感動 と ほぼ 同 じプ ロ セ スで あ る が 、主 観的 生 起 確率 が 低い 事 象 (意 外性、希少性) であることを特徴とした。ストーリー性のない場合に関しては、①感覚的 な美 、 荘厳 さ など と の 遭遇 、 ②日 常 的に 見 過 ごし て いた 事 象へ の 気 づき 、 を特 徴 とし た 。 これ は 、自 然 美や 芸 術 作品 等 に接 し た際 に 喚 起さ れ る可 能 性が あ る とし て いる 。 尊敬 を 伴 28.

(30) う感 動 では 、 通常 で は 出来 な いよ う な素 晴 ら しい 行 為が 起 こっ た 際 に喚 起 され る とし て お り、 人 物や 何 らか の 高 度な 技 術 等 に 対し て 感 動が 喚 起さ れ る と し た 。 感動 の 特徴 と して は 、 喚起 さ れて か らの 継 続 時間 は 比較 的 長く 、 そ の余 韻 は長 期 にわ た る可 能 性を 示 唆し 、 怒 りや 恐 れと い った 感 情 との 結 びつ き は低 い と して い る。 感 動す る 条 件と し ては 、 「 感 情移 入・共 感 でき る こと 」、 「 人 情に 関 する こ と」、 「 一 生懸 命 な/ 健 気な 姿」、 「努 力・苦 労の 成 就」、 「期 待・希 望が 実 現 す るこ と」、 「 その 事 柄に 没頭 し てい る こと 」、 「意 外・ 予 想外 な こと 」、「 周囲 に 同じ 状 態の 人 が いる こ と」、「 通常 で は /自 分 では で きな い こ と 」、「 興 味 ・ 関 心 の あ る こ と 」、「 今 ま で に な い 経 験 で あ る こ と 」 等 を 挙 げ て い る (戸 梶 , 2001a. p361)。戸梶 (2001a) は、欧米 に おけ る心 理 学で の 感動 研 究 の少 な さを 指 摘 し て お り 、感 動 とい う 名詞 が 英語 圏 にな い ため で は ない か と推 測 して い る 。戸梶 (2001a) が 行 っ た研 究 の限 界 とし て は 、 分 析 の対 象 は主 に 映 画を 鑑 賞し た 際に 生 じ る感 動 の モ デ ル化 を 行 って お り、 さ らに は 、 実証 的 検証 を 行っ て い ない こ とか ら 、 他 の 現 象に 適 用す る ため の 外 的妥 当 性の 検 証が 不 十 分な 点 であ る 。 戸 梶 (2001a) 以 外 で 感 動 に 関 し て 研 究 を 行 っ た 研 究 を 概 観 す る と 、 佐 伯 ら (2006) は 、 大学 生 を対 象 とし て 児 童期 の 感動 体 験尺 度 を 構築 し (1 因子 11 項 目)、 小学 生 に対 し て感 動体験の効果が児童らの自己効力感・自己肯定意識に及ぼす影響を検証した。大出ら (2009) は 、 音楽 を 聞 い て感 動 した 際 に発 す る 言葉 を 感動 語 とし 、 そ れら を 150 語 収 集し た上 で 、上 位 ・中 位 ・ 下位 に 階層 的 に分 類 し た。 具 体的 に は、 下 位 を 12 の グル ー プに 分 類し 、例え ば、 「 心を 奪 われ る」、 「 グ ッと 来 る 」と い った 言 葉 を 配 置 した 。中位 で は、下 位 のグ ル ープ を 7 つ に ま とめ 、そ れら を「 魅了 」や「興 奮 」と い った 単語 に 集約 し 、 最後 に 29.

(31) 上位 に 、3 つの 分 類「 受容 的」、「 表 出的 (正の 感情 )」、「 表 出的 (負・中立 の 感情 )」に ま とめ た。 抽 出し た 中位 の 因 子を 用 いて 、 様々 な 曲 を視 聴 して も らい 、 そ れぞ れ の曲 に 対し て 各 因子 の 得点 を 算出 し て 分析 を 行っ た 結果 、 曲 によ っ て喚 起 され る 感 動評 価 は異 な るこ と が 明 ら か と な っ た 。 感 動 に 関 す る 研 究 は 、 佐 伯 ら (2006) や 大 出 ら (2009) の 研 究 で 見 ら れ たよ う に、 音 楽聴 取 時 の体 験 を調 査 した も の や、 児 童の 感 動体 験 に 関す る 効果 を 検証 し た もの が いく つ か見 ら れ るが 、 ほと ん ど研 究 が 進ん で いな い のが 現 状 であ る 。 さ ら には 、 佐 伯 ら (2006) が開 発 し た 尺 度 は 、 小 学 生を 対 象 と し た も の で あり 、 成 人 を 調 査 す る には 適 して お らず 、大 出 ら (2009) の 尺 度は 、感 動 した 際に 発 す る 言 葉を 収 集 して は いる も のの 、 興奮 や 覚醒 と いっ た 感 情を 表 す言 葉 も混 在 し てお り (ドキ ド キす る 、興 奮す る 等)、感 動 を 適切 に 評価 で きて い る かは 定 かで は ない 。 上 記 が国 内 で感 動 に 着目 し て行 わ れた 主 な 研究 と 思わ れ るが 、 研 究数 が 少な い 理 由 の 一 つと し て、感 動と い う 感情 が ポジ テ ィブ な 感 情で あ ると い う事 が 考 えら れ る。今 田 (2002) は、 心 理学 に おい て は 、不 幸 な状 況 を幸 福 に する と いう 切 迫性 ・ 緊 急性 か ら、 ネ ガテ ィ ブ な感 情 が主 に 中心 と な って 研 究さ れ てき た 背 景を 指 摘す る 。し か し なが ら 、近 年 ポジ テ ィ ブ心 理 学. 3) への 関 心は 高ま っ てお り. (島井 , 2006)、 今 後感 動 とい っ たポ ジ ティ ブ な感 情 の. 解明 が 進ん で いく こ と も予 想 され る 。 第2項. 感動とディライト. 英 語 に お い て 感 動 に 該 当 す る と 考 え ら れ る 単 語 と し て は ”move”, “inspire”, “impressive”, “touch”, と い っ た 動 詞 や 形 容 詞 な ど が 考 え ら れ る が 、 名 詞 と し て の 表 現 を 持つ も のが 少 ない 。 し かし な がら 、 ディ ラ イ トと い う単 語 は名 詞 と して の 役割 を 持ち 、 さ 30.

(32) らに は 他動 詞 とし て の 機能 を 持ち 、 他人 を 大 喜び さ せる と いう 意 味 を持 つ 。 デ ィ ライ ト の 訳語 に 関し て は、 感 動 や歓 喜 が充 て ら れ る こ とが 多 いが 、 研究 者 に よっ て その 見 解は 一 致 し て い な い 。 デ ィ ラ イ ト は 喜 び (joy) 及 び 驚 き (surprise) の 混 合 感 情 と さ れ て い る (Plutchik, 1980)。 デ ィ ライ ト を扱 っ た論 文 は 、Plutchik (1980) の 定義 に 基づ い て研 究 が 行わ れ てい る が (e.g., Oliver et al., 1997; Finn, 2005)、Kumar et al. (2001) はデ ィ ライ トの 構 成要 素 とし て 驚 きは 必 ずし も 必要 な い ので は ない か 、と の 仮 説を 検 証し た 。ダ ン ス ショ ー を鑑 賞 した 観 客 に対 し 、 シ ョ ーで 喚 起 され た 感情 の 組み 合 わ せを 検 証し た 結果 、 驚 きを 強 く感 じ てい る 人 の方 が 、感 じ てい な い 人に 比 べて デ ィラ イ ト する と いう 傾 向に 有 意 差は 見 られ な かっ た 。Plutchik (1980) が定 義 した「delight = joy + surprise」と いう 結 果 を支 持 する 結 果も 一 部 では 得 られ た 一方 で 、一 定の 覚 醒と 喜 びの 感 情 が喚 起 され る こと で、 ディ ラ イト が 喚起 さ れ る事 を 明ら か にし た 。つま り 、デ ィラ イ トに は 2 種 類あ る とし 、驚 きを 伴 うも の と、 驚 き を伴 わ ず喜 び のみ の デ ィラ イ トが 存 在す る こ とを 示 唆し た 。 し か し なが ら 、Magnini et al. (2011) は TripAdvisor.com と いう イ ンタ ー ネ ット サ イト か ら旅 行 ブロ グ の内 容 分析 を 行 い、デ ィラ イ トを 表 現す る言 葉 に驚 き が含 ま れ ると 結 論付 け てい る。 現在 の とこ ろ 、Kumar et al. (2001) が 指摘 した 驚 きを 伴 わな い デ ィラ イ トを 支 持す る 研 究は 多 くな い こと か ら も、 Plutchik, (1980) の定 義 が主 流 であ る と 考え ら れる が 、興 味 深 い研 究 とい え る 。例 え ば 、戸 梶 (2001a) は 驚 きを 伴 う感 動 の他 に 、喜び を 伴う 感 動や 、悲 しみ を 伴う 感 動、 尊 敬 を伴 う 感動 の 存在 を 指 摘し て いる こ とか ら も 、 驚 き を伴 わ ない 感 動 の可 能 性は 十 分考 え ら れる 。さら に 、Schactel (1959) は、喜 びの 種 類 とし て 、”magic joy” と”real joy”の 存 在を 指 摘し て いる 。双 方 とも に、喜び の 感情 を 表す が、驚き の 感情 の 有無 31.

(33) にそ の 違い が ある 。”magic joy”は 、驚 きの 感 情を 伴 い 、人 が 予期 し てい な い達 成 や望 み が 叶え ら れた 際 に喚 起 さ れ、達成 の プロ セ スに 努力 等 は伴 わ ない と さ れる 。”real joy”は 、必 ずし も 驚き の 感情 を 伴 わず 、 他人 も しく は 本 人の 継 続的 な 努力 が 付 随し て おり 、 その 望 み が叶 え られ た 際に 喚 起 され る とし て いる 。 Kumar et al. (2001) は 、マ ネ ジメ ン トの 視 点 で考 え ると 、顧客 に 対 して 継 続的 な 努力 や 活 動を 行 う事 で 、”real joy”を 感じ て もら う 事を 目指 す のが 望 まし い 事 を指 摘 して い る。なぜ なら 、予 期 せぬ 出 来事 を期 待 する ”magic joy” は再 現 性を 期 待で き な いた め マネ ジ メン ト の 対象 と はな り にく く 、 継続 的 な努 力 や活 動 に より 得 られ る ”real joy”は、 企 業努 力 次第 で 再 現可 能 であ る と判 断 し たか ら であ る 。 小野 (2010) は デ ィラ イト を「 感 動」と 訳し てい る が 、感 動 とデ ィ ライ ト の類 似 性に つ いて 、 詳細 に 考察 し た 研究 は これ ま で見 ら れ ず 、 デ ィラ イ トに つ い てそ の 定義 を 述べ た 研 究は 見 られ な い 。マ ー ケ ティ ン グ研 究 にお い て 、Oliver et al. (1997) は 、”customer delight” と い う 概 念 を 用 い て 、 ”customer satisfaction” と の 関 係 性 を 検 証 し て い る 。 ”customer delight”と は 、 顧 客 満 足 と は 別 の 概 念 で 顧 客 ロ イ ヤ ル テ ィ に 影 響 を 及 ぼ す と さ れ て お り 、 消費 者 の期 待 をは る か に上 回 る結 果 が得 ら れ たと き に発 生 する 、 驚 きの 感 情を 伴 うポ ジ テ ィブ で 非常 に 強い 心 理 的反 応 (Rust and Oliver, 2000) と され て い る。Rust and Oliver (2000) の 定 義と 戸 梶 (2001a) の 感動 の 定義 を比 較 する と 、非常 に 強い 情 動で あ るこ と と、 驚き や ポジ テ ィブ な 感 情を 伴 うこ と は共 通 要 素で あ り、 消 費者 の 期 待を は るか に 上回 る 結 果が 得 られ た とき に 発 生す る (Rust and Oliver, 2000)、画期 的 でま れな 場 面で 生 起さ れ る (戸 梶 , 2001)、と い う 特徴 は 関連 が ある こ と が予 想 され る 。 Berman (2005) や Rust and Oliver (2000) は ”customer delight”が 喚 起 さ れ た 経 験 は 長 期 的 に 記 憶 に 保 存 さ れ る こ と 32.

参照

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