反応拡散走化性系の定常問題に対する解の分岐
著者 西丸 奨真
URL http://hdl.handle.net/10236/00027156
2017年度 修士論文要旨
反応拡散走化性系の定常問題に対する解の分岐
関西学院大学大学院理工学研究科 数理科学専攻 大崎浩一研究室 西丸奨真
1 はじめに
我々の住む自然界において,シマウマの表皮に縞模様,貝殻の表面に螺旋模様,蜂の巣の 六角形構造などの多種多様な模様が存在する.パターン形成のメカニズムには複雑なものが あり,これらの模様は複数の効果の相互作用によって起こっている.
生物のパターン形成の効果の一つとして,走化性が挙げられる.走化性とは,化学物質の 濃度勾配の高い方向に向かう性質のことである.例えば,大腸菌のコロニー形成が挙げられ る.大腸菌は化学物質を分泌しており,餌が少なくなると化学物質の濃度が高いところに一 定の間隔を空けて集まることで空間パターンを形成する.
本研究では,走化性の項が入る3因子の空間2次元におけるDeneubourg系を用いて定 常パターン解の分岐現象について取り組む.社会性昆虫であるシロアリの造巣過程を表現し たDeneubourg系は以下である:
∂u
∂t = ∆u−χ∇ ·(u∇w) + 1−µu in Ω×(0,∞), δ ∂v
∂t =−v+u in Ω×(0,∞),
τ∂w
∂t = ∆w−w+v in Ω×(0,∞),
∂u
∂ν = ∂w
∂ν = 0 on ∂Ω×(0,∞),
u(x, y,0) =u0(x, y), v(x, y,0) =v0(x, y), w(x, y,0) =w0(x, y) in Ω.
上の式において,u(x, y, t), v(x, y, t), w(x, y, t)はそれぞれ,働きアリの密度,巣の堆積物 質の密度,堆積物質から放出される化学物質の濃度を表す.
2 Deneubourg 系に対する分岐解の存在
Deneubourg系の定常問題は,次のように定式化される:
F(u, v, w, χ) :=
∆u−χ∇ ·(u∇w) + 1−µu
1
δ(−v+u)
1
τ (∆w−w+v)
=0, (1)
F :Hν2(Ω)×L2(Ω)×Hν2(Ω)× R→L2(Ω)×L2(Ω)×L2(Ω).
ただし,Ω = (0, πl)×(0, √π
3l) (l >0), Hν2(Ω) :={
u ∈H2(Ω) : ∂u∂ν = 0 on ∂Ω} .
分岐パラメータを走化性係数χ >0とし,χが十分小さいときには安定であるような自明 解(u, v, w) = (µ1,µ1,µ1)からの分岐問題を考える.自明解(u, v, w) = (µ1,µ1,µ1)まわりで作 用素F を線形化すると,線形化方程式:
F(u,v,w)(χ)
p q r
=
∆p−µp− χµ∆r
1
δ(p−q)
1
τ (q+ ∆r−r)
=0 (2)
を得る.線形化方程式の解は,フーリエ級数を用いて
p(x, y) q(x, y) r(x, y)
=
∑∞ m,n=0
pmn
qmn rmn
Φmn と表される.ただし,Φmn(x, y) := cos (lmx) cos (√
3lny). これを(2)に代入することで 線形化問題はフーリエモード(m, n)に関する次の方程式に帰着される:
−(Mmn+µ) 0 χMµmn
1
δ −1δ 0
0 τ1 −τ1(Mmn+ 1)
pmn
qmn rmn
=0.
ここで,Mmn :=l2(m2+ 3n2). ここまで準備することで,分岐点候補 χ = µ(Mmn+ 1)(Mmn+µ)
Mmn (=:χmn)
を 得 る こ と が で き る .本 研 究 で は ,dim KerF(u,v,w)(χmn) = 1 の 場 合 ,Crandall-
Rabinowitz[1] の局所分岐定理を適用すると,(1)においてストライプ,四角形パターンに
対応する自明解から分岐する非自明解
u(s) v(s) w(s) χ(s)
=
1 µ1 µ1 µ
χmn
+s
pmn pmn
1 0
Φmn+s2
e u(s) e v(s)
e w(s)
e χ(s)
が存在することを示した.ここで,(u(s),e ev(s),w(s),e χ(s))e ∈X×Rはsに関する滑らかな 関数であり,pmn=Mmn+ 1 = χmnMmn
µ(Mmn+µ). また,dim KerF(u,v,w)(χmn) = 2の場合,
六角形パターンに対応する自明解から分岐する非自明解の存在についても証明した.
参考文献
[1] M. G. Crandall and P. H. Rabinowitz, Bifurcation from simple eigenvalues, J. Funct.
Anal. 8 (1971), 321-340.
[2] E. Nakaguchi, K. Noda, K. Uemichi and K. Osaki, Global-in-time existence and asymptotic behavior of solutions to a chemotaxis model for the nest building of termites, preprint.