未習熟者のハードリング動作
赤津隆稔*・佐藤恭子*・高野祐一*・小松 都**
西嶋尚彦***・服部恒明***・野田洋平*
(1991年9月13日受理)
Hurdling Movement of Unexperienced Hurdler
Takatoshi AKATsu, Kyoko SAToH, Yuichi TAKANo, Miyako KoMATsu,
Takahiko N豆sHI」且MA, Komei HATroRI and Yohei NoDA
(Received September 13,1991) 一
は じ め に
ハードル走は,陸上競技種目の中でも技術水準の高い運動種目である。また,ハードル走の主要 な技術は,第1ハードルまでのアプローチ,ハードリング,インターバルランニング,ラストスパ 一トで構成される。ハードル走の運動技能は,ハードリング動作の基礎となる短距離疾走能力1)に よっても異なるであろう。また,ハードリング動作は,ハードルの高さや競技者の身長によって空 中での上体前傾角度が異なる2>など,その指導には形態発育などを考慮しなければならない。関岡
3)
ェ示唆するように,学校体育における陸上運動の教材としての障害走は,競技スポーツとしての ハードル競技をそのまま縮小して取り扱うことはできない。松田4)は,学校体育における学習教材 としての障害走の主要課題は運動技術の習得であり,障害走運動は,技術の習得による記録の伸び が具体的に示されることによって,進歩の楽しさを味わうことができる特性を持っていると指摘し ている。すなわち,ハードル走の運動技術を習得することはハードル走技能の発達に大きく寄与し ており,ハードル走では運動習熟の程度に応じた技術指導,いわゆる動きづくり,が必要であると
いえる。
しかしながら,競技者を対象にしたハードル走パフォーマンスを決定する要因に関する報告では,
未習熟者を対象とする学校体育における具体的な技術指導の方法が提示されておらず,また,それ
を導出することも困難であると思われる5)6>。このような問題背景から,野田らηは女子大学生を対象として,赤津ら8}は男子大学生を対象と して,未習熟者のハードル走の運動特性を解明するために,相関分析を用いて,ハードル走パフォ
*茨城大学教育学部保健体育講座(〒310 茨城県水戸市文京2丁目1−1).
**?骭ァ立日立第二高等学校(〒317 茨城県日立市鹿島町3丁目2−1).
***?髑蜉w教養部(〒310 茨城県水戸市文京2丁目1−1).
一マンスに対するハードリング動作の関連の程度を検討した。関連の程度の高い動作は,従来の報 告によるハードル競技におけるハードル走パフォーマンスを決定する運動技術特性とは異なる傾向 であった。これによって,未習熟者に対するハードリング技術の指導方法を再検討することの必要
性が示唆された。本研究では,同様な観点から,相関分析を用いて,未習熟者(女子中学生)のハードル走パフォ
一マンスに大きく関連しているハードリング動作を明らかにすることを目的とした。方 法
1.被験者 表1 被験者の特性 被験者は,健康な中学2年生女子80名であり,学校体 項目 鞠標準雌
育の授業以外にはハードル走の運動経験はなかった。 身長{剛 漁。o 乳12表1に示されるように,被験者の身長,体重,座高及 蟹1臨 釜:器 鑑
び50m走の平均値は,それぞれ156.00cm,48.00kg,76.50 鯖(秒) a95 a弼cm,8,95秒であった。 ・珊
2.測定方法
ハードル走のコースは,スタートからゴールまでの距離を50m,スタートから1台目ハードルま での距離を13m,ハードル間の距離を6.5m,最終ハードルからゴールまでの距離を11mとし,高
さ60cmのハードルを5台設置した。撮影は,3台目ハードルの両側方30m,高さ1.Omに設置した 2台のVTRカメラ(Panasonic M900, National MS−100)及び3台目ハードルの前方30 m,高さ 1.Omに設置したVTRカメラ(National M−15)を用いて行った。撮影範囲は,3台目ハードルバ
一の中点鉛直上地上1.Omを中心とする前後(側方のVTRカメラ)及び左右(前方のVTRカメラ)4mとした。
被験者は,左右の肩峰点,上腕骨外側上穎点,尺骨頭点,腸稜点,大転子点,大腿骨外側穎点の 合計12カ所に白いマークをつけ,設定されたハードル走のコースを疾走した。スタート方法は,ス タンディングスタートとした。その時の3台目ハードルにおけるハードリングフォームを撮影し,
同時にハードル走のタイムを計測した。ハードリング動作の測定は,ビデオ映像装置(Mitsubishi HV−V5000)を用いて行った。
3.測定項目
測定項目は,赤津ら9)の用いた項目に基づいて選定した。ハードリング動作は,踏切脚が接地し
てからハードルを越え,先導脚が離地するまでとした1°)。踏切りから着地までの運動局面は,図1に示すように踏切局面,空中局面,着地局面の3つの局面に分けたlD。踏切局面は,踏切脚が接地 してから踏切脚が離地するまでとした。空中局面は,踏切脚が離地してから先導脚が接地するまで とした。着地局面は,先導脚が接地してから先導脚が離地するまでとした。測定はこれらの局面よ
り,踏切局面における踏切脚接地時,踏切脚離地時,空中局面における腰部(腸稜点)最高点時,抜き脚膝ハードル上時,着地局面における先導脚接地時及び先導脚離地時における動作,及び局面
間に見られる動作を測定した。身体を体幹部,上肢部,下肢部の3つのセグメントに区分した。各
運動局面時及び局面間にみられるハードリング動作を身体セグメントごとに細分化し,表2に示す ように,合計42の動作項目を選定した。それぞれの動作項目を用いて動作を記述するために,各項 目に2つあるいは3つのカテゴリーを設定した。カテゴリーは,視覚的,客観的に動作を判断でき
る範囲で定めた。踏切脚接地時 踏切脚離地時 腰部最高点時 抜き脚膝 先導脚接地時 先導脚離地時 ハードル上時
a
踏切局面@ b
空中局面 着地局面
e
C
d
a:上体前傾角度 b:肘関節角度 c:踏切脚膝関節角度 d:先導脚膝関節角度
e:上体と先導脚のなす角度 、
図1 ハードリング動作の運動局面及び動作項目の定義
表2 測定項目の構成
身体 運 動 局 面 セグメント
踏切局面 空中局面 着地局面 局面間 踏切脚接地時 踏切胸離地時 腰部最高時 抜き脚膝ハードル王時 先導陣接地時 先導脚離地時
体齢部 上体前傾角度顎の状態 上体前傾角度 上体蘭傾角度 上体前傾角度 上体の前傾 上体と先剃略のなす角産
腰部最高点 着地における腰の沈み 一一一〇一一゜一一一卿一一一一一一一薗一噛一一一一一一一」一一一一一一一一一一一一一一一一一の一一。一一一一一一一一一一一一一_____一______._____.一____
遡 先嚇腕の肘の状態 先尊腕の肘の状態 先導腕の肘の状態 先導腕の肘の状態 先導腕の肘の状態 先導腕の肘の高さ 先導腕の肘の高さ
後腕の肘の状態 後腕の肘の状態 後腕の肘の状態 後腕の肘の状態
両肘の前後蜘係 両肘の前後関係
一禰椰一゜層一一一一一゜一一一一一一一一騨一゜一一雪■一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一。一_一_,一______一_____一__________.
下肢部 踏切脚の膝の状態 抜き脚の足先の高さ 抜き脚の足先の高さ 抜き脚の足先の高さ抜き脚の膝の状態 抜き脚の抜き方 抜き脚の膝の位置 抜き脚の膝の位置 抜き脚の足先の状態
抜き脚の足先の方向
先導脚の足先の方向 先導脚の膝の状態 先導脚の膝の状態 先導脚の膝の状態 先導脚の擦の状態 先導脚の足部最高点 先溝脚の膝関節角度 先導脚の足先の方向 先導脚の上げ方
踏切地点と着地地点 の距離
踏切脚接地時における「上体前傾角度」は,耳朱点と腸稜点を結ぶ線分と,腸稜点を通る垂直線
とのなす角度とし,カテゴリーは10度以上と10度未満であった。以下, 「上体前傾角度」の定義に ついては同様とした。踏切脚離地時における「顎の状態」のカテゴリーは,頭部が後屈していれば出している,前屈し ていれば引いているであった。「先導腕の肘の状態」のカテゴリーは,肘関節角度(肩峰点と上腕 骨外側上穎点を結ぶ線分と,尺骨頭点と上腕骨外側上穎点を結ぶ線分とのなす角度とする)がほぼ 180度のものが伸びている,それより角度が小さいものが曲がっているであった。以下, 「肘の状 態」に関する項目については同様とした。「先導腕の肘の高さ」のカテゴリーは,上腕骨外側上穎 点が肩(肩峰点を通る水平線)より上方にあるか,水平方向及び肩より下方にあるかであった。以
下, 「肘の高さ」に関する項目については同様とした。 「踏切脚の膝の状態」のカテゴリーは,膝関節角度(大転子点と大腿骨外側上穎点を結ぶ線分と,腓骨外果点と大腿骨外側上穎点を結ぶ線分 とのなす角度とする)がほぼ180度のものが伸びている,それより角度が小さいものが曲がってい
るであった。以下, 「膝の状態」に関する項目については同様とした。「先導脚の足先の方向」のカテゴリーは,足先が踵を通る水平線より下方及び水平方向を向いているか,それより上方を向い
ているかであった。以下,「先導脚の足先の方向」に関する項目については同様とした。 「先導脚 の膝関節角度」のカテゴリーは,90度以上と90度未満であった。腰部最高点時における「上体前傾角度」のカテゴリーは,25度以上と25度未満であった。 「上体
と先導脚のなす角度」は,耳朱点と腸稜点を結ぶ線分と,大腿骨外側上穎点と大転子点を結ぶ線分
とのなす角度とし,カテゴリーは60度以上と60度未満であった。「腰部最高点」のカテゴリーは,腸稜点の軌跡の最高点がハードルに対して踏切側にあるか,上方及び着地側にあるかであった。
「抜き脚の足先の高さ」のカテゴリーは,足先が膝(大腿骨外側上穎点を通る水平線)より上方に あるか,膝より下方及び水平方向にあるかであった。以下,「抜き脚の足先の高さ」に関する項目
ついては同様とした。抜き脚膝ハードル上時における「上体前傾角度」のカテゴリーは,25度以上と25度未満であった。
「抜き脚の膝の位置」のカテゴリーは,抜き脚の大腿骨外側上穎点が腰(腸稜点を通る垂直線)よ
り前方にあるか,側方にあるか,腰より後方にあるかであった。「抜き脚の足先の方向」のカテゴ
リーは,足先が水平方向を向いているか,下方を向いているかであった。先導脚接地時における「上体前傾角度」のカテゴリーは,25度以上と25度未満であった。 「両肘
の前後関係」のカテゴリーは,上腕骨外側上穎点が上体に対して前後しているか,前後していない
(一方及び両方の上腕骨外側上穎点が上体の体側にある)かであった。以下, 「肘の前後関係」に
関する項目については同様とした。「抜き脚の膝の位置」のカテゴリーは,抜き脚の大腿骨外側上 穎点が先導脚(先導脚の大腿骨外側上穎点を通る垂直線)より前方及び垂直方向にあるか,先導脚
より後方にあるかであった。
先導脚離地時における「上体の前傾」のカテゴリーは,上体前傾角度が0度であるものが前傾し ていない,それより角度の大きいものが前傾しているであった。「抜き脚の足先の状態」のカテゴ
リーは,足先が接地しているか,接地していないかであった。
局面間の動作における「着地における腰の沈み」のカテゴリーは,腸稜点の軌跡が空中局面から
着地局面にかけて屈曲が見られれば沈む,ほぼ一直線であるならば沈まないであった。「抜き脚の
抜き方」のカテゴリーは,ハードル上で大腿及び下腿を水平面と平行に抜くか,平行に抜かない
(股関節を外転せずに内旋させて抜く)かであった。 「先導脚の足部最高点」のカテゴリーは,腓
骨外果点の軌跡の最高点がハードルに対して踏切側にあるか,上方及び着地側にあるかであった。
「先導脚の上げ方」のカテゴリーは,下腿をハードルのバーに対して直角に上げるか,外側からま わして(股関節を内旋させて)上げるかであった。「踏切地点と着地地点の距離」のカテゴリーは,
踏切地点からハードルまでの距離の方がハードルから着地地点までの距離より長いか,ハードルか ら着地地点までの距離の方が踏切地点からハードルまでの距離より長い及び等しいかであった。
「腕」及び「肘」に関する項目は,踏切脚(抜き脚)側の腕を先導腕,先導脚側の腕を後腕とし
た。
「脚」 「膝」及び「足」に関する項目は,踏切局面における踏切脚を空中局面及び着地局面にお いては抜き脚とし,他方の脚は全局面において先導脚とした。
4.統計解析の手順
42項目,85カテゴリーについて,数量化理論1類を適用して,ハードル走パフォーマンスに対す
るハードリング動作パターンの相関関係を求めた。次に,十分な精度を保ち,ハードル走パフォーマンスに関連の程度の高いハードリング動作を抽
出するために,重相関係数が0.80を下らない条件において,偏相関係数が小さい説明変量を削除し,同様の解析を行った。 轟
結 果
表3は,42項目,85カテゴリーについて数量化理論1類を用いて解析した結果を示している。解
析の結果,重相関係数は,0.95(決定係数:0.90)であった。重相関係数が0.80を下らない条件に よって同様な解析を行った結果,5項目において重相関係数は,0.83(決定係数:0.69)であった。表4は,5項目における解析結果を示している。この解析に適用された項目は,レンジの大きか
った順に,先導脚離地時の「抜き脚の足先の状態」 (1.97),抜き脚膝ハードル上時の「抜き脚の 膝の位置」 (1.24),同じく「抜き脚の足先の高さ」 (1.07),先導脚接地時の「上体前傾角度」(1.02),踏切脚離地時の「先導脚の膝関節角度」 (0.49)であった。
考 察
1.ハードリング動作とハードル走パフォーマンスとの関係
ハードリング動作項目で測定される各個人のハードリング動作パターンは,ハードル走を成就す
るために基礎的に要求されるハードリング技能を測定するものであると考えられる。ハードル走に
おいて学習者の形態や短距離疾走能力を考慮した研究では,ハードルの高さやインターバルの設定
条件に関する研究がなされ12)13),ハードリングの技術指導は重要視されなかった14}。ハードリング動作42項目と50mハードル走タイムとの間には,重相関係数が0.95という極めて高い相関関係が認
表3−1 数量化理論1類によるハードル走タイムに対するハードリング動作の関連の程度(42項目)
運動局面 動作項目 カテゴリー 基準化 レンジ 偏相関係数 カテゴリー数量 一 踏切脚接地時上体前傾角度 10度以上 0.59 L33 0.48
10度未満 一α74
■闘一r」r尋r一r−P−4r鐸r−一一■・一一r−■−7−r−r−9−r」r−P響」r6■Pd■■」r4r卿一7−7凋口・■騨一騨一r一一r」一一一■一■御一r−■一■−9」慶一P一一■−rd幽夢幽9−9一騨
踏切脚離地時顎の状態 引いている (M5 0.18 (MO
出している 一α03
先導腕の肘の状態 伸びている α06 αn α07
曲がっている ・α05
先導腕の肘の高さ 肩より上方 α02 α13
肩より下方及び水平方向一4.36E−03
踏切脚の膝の状態 伸びている 0.11 0.37 α21 曲がっている 一〇.24
先導脚の足先の方向 水平方向及び下方 0.06 α09 α06 上方 一α03
先導脚の膝関節角度 90度以上 0.90 L45 α62 90度未満 一α55
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腰部最高点時上体前傾角度 25度以上 ・α01 α02 0.01 25度未満 0.01
上体と先導脚のなす角度60度以上 α03 0.04 0.03 60度未満 一α01
腰部最高点 踏切側 一α20 1.39 α49 上方及び着地側 L19
先導腕の肘の状態 伸びている α38 0.72 0.37
曲がっている 一〇.34
後腕の肘の状態 伸びている 一〔LO9 0.27 0.12
曲がっている {M8
抜き脚の足先の高さ 膝より上方 一α24 α55 α28 膝より下方及び水平方向 α31
先導脚の膝の状態 伸びている ・α37 0、65 034
曲がっている 0.28
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抜き脚膝バー上体前傾角度 25度以上 7.13E−03 5.95昼03 ドル上時 25度未満 一〇.01
先導腕の肘の状態 伸びている 8.41E−03 0.01
曲がっている 一〇ρ1
後腕の肘の状態 伸びている 0.m O.22 α11
曲がっている 一〇.12
抜き脚の足先の高さ 膝より上方 一α13 α99 0.39 膝より下方及び水平方向 α86
抜き脚の膝の位置 腰より前方 0.20 1.11 0.37 腰の側方 α59
腰より後方 瓶52
抜き脚の足先の方向 水平方向 α18 0.23 0.12
下方 一〇.05
先導脚の膝の状態 伸びている α31 α62 α37
曲がっている 一α31
先導脚の足先の方向 水平方向及び下方 一α04 0.27 0.10 上方 α23
表3−2 数量化理論1類によるハードル走タイムに対するハードリング動作の関連の程度(42項目)
運動局面 動作項目 カテゴリー 基準化 レンジ 偏相関係数 カテゴリー数量
先導脚着地時上体前傾角度 25度以上 一〇.78 1.51 α56 25度未満 α73
先導腕の肘の状態 伸びている 一299艮03 4.01E−03
曲がっている 3.92E−03
先導腕の肘の高さ 肩より上方 Z79 3」90 α55
肩より下方及び水平方向 一{M1
後腕の肘の状態 伸びている 一〇」09 057 α07
曲がっている 0.48
両腕の肘の前後関係 前後している α96 L16 α05 前後していない 一〇20
抜き脚の足先の高さ 膝より上方 。0.15 α30 α14 膝より下方及び水平方向 0。15
抜き脚の膝の位置 先導脚より前方 0.06 α22 α11 及び垂直方向
先導脚より後方 一α16
先導脚の膝の状態 伸びている {L40 0.70 α41
曲がっている 0.30
_」r一慶綱麟一脚」騨調■−9」一綱一一[一騨一P−r−r一9−一■一r」r」r」[」膨覇ρ鐸一縄■4−一一一一一一」一隔一9畠甲」騨−騨一一騨覇口4一層一−「層一「一「一[」膠一一■一国「鋼一」一
先導脚離地時上体の前傾 前傾している 一α02 α08 α05 前傾していない α06
先導腕の肘の状態 伸びている ・α47 α67 0.30
曲がっている 0.20
両腕の肘の前後関係 前後している 一α07 α34 0.17 前後していない α27
抜き脚の膝の状態 伸びている α36 α46 α27
曲がっている 一α10
抜き脚の足先の状態 接地している 1.43 2.20 0!75 接地していない 一α77
先導脚の膝の状態 伸びている L98EO3 α00
曲がっている 一2.21尼一〇3
一■−r」7」■縄夢一■一■一[」慶一一幽r一一一r−9−r−」夢」r4摩6■−r一慶一P一一P−r一一一一一一r」r−」■・・國r一圏一一一r一一一・一一一9−r・■P−r−rρ一一一一膠一r一引r己一
局面間 着地における腰の沈み 沈む 一〇ρ6 0.16 α08 沈まない α10
抜き脚の抜き方 平行に抜く 一〇40 053 α21 平行に抜かない 0.13
先導脚の足部の最高点 踏切側 α24 α32 (M7 上方及び着地側 一α08
先導脚の上げ方 直角に上げる 1.14 2.27 0.37 外側からまわして上げる 4.13
踏切地点と着地地点 踏切地点からハードル 0.12 0.65 α29 の距離 までの距離の方が長い
ハードルから着地地点 一〇.53
までの距離の方が長い及び等しい
重相関係数:0.95
表4 数量化理論1類によるハードル走タイムに対するハードリング動作の関連の程度(5項目)
運動局面 動作項目 カテゴリー 基準化 レンジ 偏相関係数
カテゴリー数蚤 、
踏切脚離地時 先導脚の膝関節角度 90度以上 α31 α49 0.23
90度未満 一〇.18一 一 ■■■ 凹 ■■9 ■■匿 一 ●■● 一 ■■9 一 一 一 騨 幽 嗣 劇 輔 一 一 一 一 r■■ 一 梱口● ■■9 − 一 一 一 一 一 −■■ 一 ■■■ 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 ●■9 − ■■脚 _ 一
抜き脚膝バー 抜き脚の足先の高さ 膝より上方 一〇.14 1.07 α34
ドル上時 膝より下方及び 0.93
?ス方向
抜き脚の膝位置 腰より前方 0.49 1.24 α41
腰の側方 一α55腰より後方 一〇.20
「 」■「 ■■r 鰯■「 帽幽「 6暉「 圃■「 引■「 一 ■■「 ■■置 闘■「 ●■「 噛隔霞 鰯 ■■r ■■r 一 一r −r ■■r − 一 ■■r ■■7 ■■r ■■置 一 一 」■r ■■r 」■r 」■r 」■r ■■r 」聰■r ■o幽r ●■匿 ■■匿 唱■「 ■■膨 引■■ 一 ■■瞳 ■闘r 傭 曜■r ■■r 帽■r − _
先導脚着地時 上体前傾角度 25度以上 一α52 1.02 0.45 25度未満 0.50
一 一 引■● 一 ■■■ 一 ■9 一 一 ■■隔 鱒 幽 ■■■ 一 一 一 ■一 ■■隠 一 一 一 鰯関● o■齢 一 咀■■ 一 ■■■ ■咀■ 一 一 ■■● 一 一 ■■陰 ●■匿 一 ■■r − 一 一 唱■■ 一 一 電■匿 葡 一 隔 _ _ _
先導脚離地時 抜き脚の足先の状態 接地している 1.28 1.97 0.68
接地していない 一〇.69重相関係数:α83
められた。このことより,ハードル走技能は,ハードル走を成就するために要求される運動技能の 1つであると考えられるハードリング技能が大きく関与していることが推測された。
2.未習熟者に特徴的な動作
表5は,未習熟者のハードリング動作を特徴的に示すと考えられる動作項目を示したものである。
「踏切脚離地時における先導脚の膝関節角度が90度未満」であることは,膝から身体をリードし,
疾走スピードを減ずることなくハードリングを行うための動作であると考えられる。一般に,踏切 における先導脚の動作は,ランニング動作と同様に前上方へ膝から高く引き上げ,下腿が振り出さ
れないようにするとされ,Bill l5}は,踏切におけるこの動作の重要性を強調している。「抜き脚膝ハードル上時における抜き脚の膝の位置」は,一般に,ハードル上では抜き脚の膝の位置は腰の側 方にあり,先導脚がハードルを完全に越えた後,膝から前方に引き出すべきとされ,本研究におい ても同様の傾向を示した。また,「抜き脚の膝が腰の後方」に位置する動作も,ハードル走パフォ 一マンスに対して正の相関を示した。しかし,この動作は,先導脚の接地を遅らせ,インターバル ランニングの第1歩を短くしてしまう危険性を含んでいると考えられる。「先導脚接地時における
上体前傾角度」は,ディップ動作のタイミングと関連し,一般には25度前後とされている。しかし,本研究においてディップ動作はほとんど見られず,「上体前傾角度が25度以上」であることが,ハ
一ドル走パフォーマンスに対して正の相関を示した。このことは,上体前傾角度を十分保つことに
より,着地での減速を抑える動作となっていると考えられる。以上のような,一般的なハードル競
技者におけるハードリング技術指導の着眼点に関する項目は,未習熟者においても同様の傾向を示
していた。すなわち,これらの動作は,未習熟段階において成就すべき動作であると考えられる。「ハードルに対して,遠くから踏切り,近くへ着地する」「先導脚をハードルに対して直角に上
げる」 「腰部最高点や先導脚の足部最高点がハードルの手前にある」 「抜き脚をハードルと平行に抜く」などの一般的なハードル競技者に見ちれるハードリング動作に関する項目は,未習熟者のハ
一ドリング動作を特徴的に示すと考えられる項目には含まれなかった。すなわち,未習熟者におい ては,競技者レベルでの着眼点がそのまま当てはまらないものもあると考えられる。
「先導脚離地時において抜き脚の足先の状態」は,レンジが最も大きい動作項目であった。そし て,「足先が接地していない」ことがハードル走パフォーマンスに対して正の相関を示した。一般 に,着地動作はよりスムーズにインターバルランニングへ移行することが大切であり,インターバ
ルランニングは全力疾走に近いフォームで行われることが理想とされる。また,T. R. Nickson l6)が述べるように,ハードリングフォームも疾走フォームにできるかぎり近いべきとされる。すなわち,
着地においてはランニング動作と同様に膝や足首をしっかり伸ばし,後方ヘキックした後離地する。
そして,身体が両脚とも接地しない瞬間が見られる。ハードル競技者においては「抜き脚の足先が 接地している」動作は見られず,ハードル競技者の一般的なハードリング技術の着眼点とされてい
ない。大学生を対象とした,野田ら17)や赤津ら18)の研究においてもこの動作は見られなかった。徳 永19)は障害走のつまずきの原因に,ハードルを越えることと走ることが一連の動作としてなされないことを指摘している。また,学習教材としてのハードル走において学習者が疾走状態を維持して
いくことは大変難しく2°),未習熟者のハードリング動作においては着地後スムーズにインターバル ランニングに戻れないとされている21)。この原因には,ハードリング動作やその基礎となる短距離疾走能力,あるいは脚筋力が関連していると考えられる。これらのことから,「抜き脚の足先の状 態」は,未習熟者(女子中学生)の特徴的なハードリング動作として重要視すべき動作であること
が推測された。「抜き脚膝ハードル上時における足先の高さ」は,一般に抜き脚は大腿,下腿,足部を水平にす るとされる。よって,足先は膝と水平になることが原則となる。しかし,本研究では,「足先が膝 より上方にある」ことが,ハードル走パフォーマンスに対して正の相関を示した。このことは,抜 き脚の動作が習得されておらず,抜き脚の膝を下方に向けている(縦抜き)ことや,踏切位置が近 すぎていることなどによると考えられる。また,抜き脚の膝が下がってしまうことは,着地におい て抜き脚の膝を前方に出すための動作を妨げる。あるいは,縦抜きになることによって足先がバー ドルに接触しやすくなり,より高く跳び上がらなくてはならないと考えられる。各人における一連 のハードリング動作のなかに見られるこれらの各動作は選択的であり,個人によって多様である。
運動習熟段階の向上という観点から,未習熟者に見られる抜き脚の動作は技術指導によって消失す
ることが望ましい動作であると考えられる。「抜き脚」の動作に関する項目が3項目見られ,未習熟者において「抜き脚」の動作が重要であ
ることが推測された。山本22)が,学習教材としての障害走において抜き脚の技術指導が不必要であ るという主張とは異なる傾向であったと考えられる。女子中学生に特徴的に見られた5項目は,大学生を対象とした研究において特徴的に見られた動
作と同様な動作項目は見られなかった。以上のような考察から,未習熟者(女子中学生)のハードリング動作の特徴をまとめると,踏切
りにおいて先導脚の膝を十分に屈曲し(膝関節角度90度未満),空中動作において抜き脚の膝を腰
の側方及び後方に引きつけ,先導脚接地時において上体前傾角度を25度以上にし,先導脚離地時に おいては抜き脚の足先が接地していない動作である。よって,未習熟者に対する運動習熟の程度に 曜じたハードリング技術指導は,未習熟段階において成就すべき動作を主要な観点とした指導,空
、
?ナの抜き脚動作の個人差への配慮,及び着地動作を疾走フォームに近づける指導が有効であるこ
とが考えられた。表5 未習熟者のハードリング動作の特徴
運動局面 身体セグメント 動作項目 未習熟者 ハごドル競技者a 踏切脚離地時 下肢部 先導脚の膝関節角度 90度未満 90度未満
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抜き脚膝バー 下肢部 抜き脚の足先の高さ 膝より上方 膝と水平
ドル上時 下肢部 抜き脚の膝の位置 腰の側方及び後方 腰の側方
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先導脚接地時 体幹部 上体前傾角度 25度以上 25度前後b
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先導脚離地時 下肢部 抜き脚の足先の状態 接地していない 接地していない
a:ハードル競技者の一般的なハードリング動作
b:ハードルの高さや個人によって差がある
ま と め
本研究は,未習熟者(女子中学生)のハードル走パフォーマンスに大きく関連しているハードリ ング動作を明らかにすることを目的とした。被験者は,ハードル走の競技経験のない健康な女子中 学生80名であった。50mハードル走タイムに対するハードリング動作の関連の程度を解析するため に,42項目のハードリング動作について数量化理論1類を適用した。解析した結果,結論は以下の
とおりである。(1)ハードリング動作項目と50mハードル走タイムとの間には高い相関が認められ,ハードリン グ動作によって測定されるハードリング技能は,ハードル走パフォーマンスに大きく関与している
ことが推測された。(2)未習熟者のハードル走パフォーマンスに大きく関連しているハードリング動作は, 7
・踏切脚離地時に先導脚の膝関節角度が90度未満である
・抜き脚膝ハードル上時に抜き脚の膝が腰の側方及び後方にある
・先導脚接地時の上体前傾角度が25度以上である
・先導脚離地時に抜き脚の足部が接地していない であった。
(3)未習熟者のハードリングにおいて,消失することが望ましいと考えられる動作は,抜き脚膝
ハードル上時に抜き脚の足先が膝より上方にある,であった。
注
1)J.Singh, Hurdling is Sprinting , Tノαcκ《覧、F7θ 4ρ㍑απ87 y Rεy陀w,85−2(1985), p.47.
2)金原勇編著『現代スポーツコーチ全集・陸上競技のコーチング(1)』(大修館書店,1976),pp.308−324.
3)関岡康雄編著『陸上運動の方法』(同和書院,1987),pp.87−121.
4)松田岩男「楽しく効果的な障害走の指導」『学校体育』36−6(1983),pp.12−18.
5)学校体育研究同志会編『学校体育叢書・陸上競技の指導』(ベースボール・マガジン社,1972),pp.13−16.
6)三条俊彦・小口正行「小学校高学年のハードル走指導に関する研究」『信州大学教育学部紀要』49(1983),
PP.21−33.
7)野田洋平・服部恒明・小磯香「ハードル走におけるクリアランス動作パターンの多変量分析」『茨城大学教
育学部教育研究所紀要』22(1990),pp.81−96.
8)赤津隆稔・野田洋平・服部恒明・佐藤恭子「男子未習熟者におけるハードル走のハードリング動作パターン
とタイムの関係」『茨城大学教育学部教育研究所紀要』23(1991),pp.73−82.
9)赤津隆稔・野田洋平・服部恒明・佐藤恭子,同上書,pp.73−82.
10)T.Ward and Daniel M., Temperal and Kinematic Facts on 110m Hurdling:High Level Performers ,
τ7αcκ (覧 」F7814 gωαπ8ア y Rθり θw, 82−2 (1982), pp.30−32.
11)金原勇編著,前掲書,pp.308−324.
12)伊藤宏「小学校高学年における50mハードル走の設定に関する実験的研究」『静岡大学教育学部研究報告』
13(1981),PP.39−41.
13)三条俊彦・小口正行「小学校高学年のハードル走指導に関する考察」『信州大学教育学部紀要』47(1982),
PP.29−41.
14)古藤高良編著『体育授業シリーズ・陸上競技指導ハンドブック』(大修館書店,1981),pp.118−128.
15)B.Schnier, Hurdling,7搬cん&」町ε14 g雇απ84y R6り∫θw,86−4(1986), pp.15−16. −
P6)T.R. Nickson, A Logical Approach To Improve Hurdling Technique ,τ朋cん6と」町ε14ρ照πεr y R8_ 1 view,82−2,(1982), pp.30−32.
17)野田洋平・服部恒明・小磯香,前掲書,pp.81−96.
18)赤津隆稔・野田洋平・服部恒明・佐藤恭子,前掲書,pp.73−82.
19)徳永隆治「障害走の初歩的なつまずきと指導のポイント」『体育科教育』38−12(1990),pp.41−43.
20)関岡康雄「競技としての陸上競技と授業としての陸上競技」『体育科教育』31−6(1983),pp.15−18.
21)宮丸凱史「ハードルを跳び越せない子」『体育科教育』30−11(1982),pp.54−57.
22)山本貞美『体育科扱いにくい単元の教え方・陸上運動編』(明治図書,1984),p.85.