直流電源回路製作実験の改善
柄 澤 孝 一 蔵 之 内 真 一 渡 邉 誠 一 古 川 万 寿 夫 青 木 博 夫 松 島 久 夫
Improvement of the Experiment of DC Power Supply Circuit
Koichi KARASAWA Shin‑ichi KURANOUCHI Seiichi WATANABE Masuo FURUKAWA Hiroo AOKI and Hisao MATSUSHIMA
キー ワー ド: 直流電源回路,電子回路製作,プ リン ト基板,エ ッチングマシー ン
1. ま え が き
電気工学科では,従来の形式化 した電気工学実験を改 善す るため,平成
5年度 より電子回路製作に重点 を置 いた実験テーマを導入 したl ) . 1 年後期には,電子 タイ マー, 2 年後期には,ポケコン制御回路,3 年前期には 直流電源回路製作
,4年後期には鉄道模型の制御回路
2)3)を実験テーマに取 り入れてい る.
平成 4年度までの電気工学実験では,電子回路製作 と いえるもの として
1年前期でのキッ トテスタ製作だけで あった.テーマのほ とん どが,3‑ 4 人 をグループ とし ての実験であ り,このグループ実験には長所がある反面, 実験 を行 う過程 において 『 役割分担』が生 じて しまい,
4,5年生で もオシロス コープなどの基本的な実験装置 を使 えない学生が多 くなってきている.
電子回路製作実験では,学生各々に回路製作を課題 と す ることにより,グループ実験における 『 役割分担』が な く,課題 をこなさなくてはならない.学生や実験担当 教官にかな りの負担はかかるが,有意義な実験 となる.
本論文は , 3 年前期で行っている直流電源回路製作の 従来の内容 と改誉 した内容について述べている.本実験 の他の電子回路製作実験 との異なる点 としては,使用す る基板にはユニバーサル基板 ( 既製品)ではな く,学生 が生基板またはポジ感光基板か らプ リン ト基板を製作す るとい うことと,いろいろな工具を用いてケースを加工 するとい うことである.
2.
改善前の直流電源回路製作の概要
図
1は直流電源回路の構成図である.
ACIOOVを トラ ンスで
AC16Vに降圧 した後,ダイオー ドブ リッジ
4Blで全波整流 し,電解コンデンサで平滑 して直流約
22Vを 得 る.この直流電圧を可変三端子 レギュレータ LM31 7 T
*平成9年度長野高専教育研究特別経費の助成 を受けて行 われ た.
++ 電気工学科助手
■■■豊橋技科大学助手
*+■■電気工学科沫師 小 暮●電気工学科助教授
■山 ●電気工学科教授 原稿受付 1998年10月 30日
で安定化す る.電圧 は
5ki lのボ リュー ムで連続 可変で きる.
ボ リューム抵抗を
RADJとす ると,出力電圧 V.は次 式で与えられる.
vo‑
1・25× (
1億 )
(1,ボ リュームを回す ことによ り出力電圧 を
1.25‑22Vま で可変 させ ることができる.
本実験は,以下に示す計画で実施 されてい る.
1 週 目 ;プ リン ト基板製作 2 週 目 :ケース ・穴あけ加工
3週 目 :組立及び動作チェック
4週 目 :実験
本実験で用いた実験テキス トを以下に示す.
2‑1
プリン ト基板製作 ( 1 )穴あけ
(a) 部品穴を
¢1で,角の穴を
¢3で穴をあける.(b) 回路パター ンの原図 ( 図 3) をコピー したもの をセ ロテープで紙フェノールの生基板に固定す る.
(C) 穴の中央にポンチを打つ.
(d) 電気 ドリルで部品穴
(¢1 )をあけてい く. ドリ ルは無理に押 し込まないで,垂直に落 とす よう に使 う.
(e) 裏側か ら穴がきちん とあいていることを確認 する.
(∫
) ハン ドドリルで角の穴 (
¢3)をあける
・¢5の ド リルでバ リをとること.
(2)
生基板‑のバターンの転写
(a) 銅箔面をエ タノールで軽 く拭いて,手の油など を落 としてきれいにす る.
(b) 原図を見ながらレジス トペ ンでパター ンを措き
写 してい く.塗 り忘れや塗 りムラな どがない よ
うに,丁寧 に措 くこと.原図中の指示に注意す
る.
110
柄浮草一 ・蔵之内真一 ・波速誠一 ・古川万寿夫 ・青木博夫 ・松島久夫
図 1 直流電源 回路の構成図
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図2 電源 の回路図
(C) 出来上がった ら,もう一度原図 と比べて,間違 いのないことを確認す る・( 注)レジス トペ ンは 乾燥 しやすいので,キャップを開けっ放 しにし ない.
(3)
エ ッチング
(a) 基板 に描いたパ ターンが乾燥 していることを確 認す る.パ ター ンに色の薄い ところや切れてい
るところがあったら修正す る.
(b) 30‑400C
に暖めたエ ッチング液をパ ッ ドに入 れる.( 注)エ ッチング液は服につ くと着色 して 取れなくなるので注意す ること.また, ビニー ル手袋を して作業すること.
(C) 基板の銅箔面を下にして,基板をエ ッチング液
図3 回路パ ターンの原図 (改善前)
図4 ケース加工図
に浮かべ る.
20‑30分でほぼ銅箔部が溶けて パ ター ンが残 る.あま り浸 し続 けるとパターン の部分まで溶けて しま うので注意す る.
(a) パ ターン部だけきれいに残った ら,基板を良く 水洗いする.
(e)
エタノールでパ ター ンに残った レジス トをこす り落 として,きれいにす る.
(f
) もう一度,原図 と良 く見比べてパターンのつな がって しまった ところな どがないか どうかを確 認する.もしパターンが くっついて しまった ら, カ ッターで銅箔を削 り落 とす.
(g) 表面の汚れをよく除いてか ら,銅箔の腐蝕を防 ぐフラックスを塗 る.
2‑2
ケース穴 あけ加工
(1)
図
4を参照 して,穴を開ける位置をマークす る.底板 に固定す る トランス,基板の穴はまだあけない.
(2)
マー クした位置がずれないよ うに,慎重にポンチを 打つ.ポンチは軽 く‑ こむ程度で十分である.
(3)¢5
の ドリルで, とりあえず穴を開けてい く.
(4)
リーマーを使って,所定の大きさまで穴を広げる・実 際に部品を当てながら,大きく開けすぎない ように 注意す ること.
(5)
やす りと ドリルの刃を使 ってバ リを とる・ ドリルは 刃物なので軍手を して,十分に気 をつけること.
2‑3
組 立
回路図 ( 図 2) を見なが ら基板 に部品をはんだ付けし てい く.
( 1) ダイオー ド,発光ダイオー ド,電解 コンデンサの極性 に十分注意す ること.
(2)
放熱板 と三端子 レギュレータ ( LM31 7 T)の間に絶 縁シー トを入れ,M3のプラスチ ックネジで止める.
その後,基板に取 り付ける.
(3)
ダイオー ドブ リッジの足 ( +,‑,〜)に気をつける こと.
2‑4
動作チェック
各部分を十分 に点検 して
,OKな らスイ ッチ を
OFFにしてコンセン トを入れ る.ボ リュームを反時計方向に いっぱいに回しておいて ,S W を
ONにす る.以下の項
目について確羅せよ.
(1)LED
が点灯す るか ?
(2)
出力端子にテスタを接続 して電圧をチェックす る・目
・ 盛
Oで
1.25‑
1.5V, 目盛
100で
22‑ 23Vにな ることを確認する.
2‑5
実額及び報告
( 1 ) ボ リュームツマ ミを回 して (
VADJを変化 させて), ボ リュームダイヤルの 目盛 に対す る V.を測定せ よ.
(2)
Voが
5Vになるように,ボ リュームツマ ミを調整す る. AC コー ドをスライダックにつないで入力電圧 を
0‑ 100Vまで変化 させた ときの VAC
,VDC,VADJ
及び V.の電圧 をオシロス コープで測定せ よ.
また,任意の入力電圧に対す る各部の電圧波形をス ケ ッチせ よ.
(3)
全波整流,半波整流について調べ よ.
(4)
電源回路を製作 した感想 を書け ( 1 ページ以上)・
2‑6
実額に対す る学生の感想 ( 平成
9年度) 本実験の レポー トには,他の レポー トと異なる点 とし て感想
(A4,1ページ以上)の課題がある.
4過の実験 を振 り返ってもらい, 自由に書いて もらっている.
平成
9年度に行った学生に感想を書いてもらった.全
体 として 『物作 り』 とい う点では,他の実験に比べて充
実していた とい う感想が多 くあった.ケース加工につい
1 1 2 柄浮草一 ・蔵之内真一 ・波速誠一 ・古川万寿夫 ・青木博夫 ・松島久夫 ては本実験で一番大変であった とい う感想が多 くあった.
電気工学実敬 では.
1年後期に
5週の電気工事士実習 と
2年前期 に
8週の機械工学実験実習を除いてはほ とん ど 加工 とい うことは行 っていないため と思われ る.プ リン ト基板製作については, 自分でパター ンを描 き,基板 を 作 るとい う点では,興味 を持てた とい う感想 が多 くあっ た. しか しなが ら,以下のよ うな感想 もあった.
(1) 下書 きが うま くいかず,エ ッチング液で余分な ところを落 とした ときに,必要な ところも少 し落ちて し まった.
(2)
基板 に下絵 を描 くことを雑にや って しまったた め,あ とで苦労 した.
(3) 線が太かった り,細かった り曲がった りした.
この よ うに レジス トペ ンで回路パ ター ンを直接描 く こ とは非常に難 しいだけでな く,む らができて しまい, エ ッチングの後のパ ター ンの修正にかな りの学生が時間 を費や していた.また,パター ン不良を気づ かずに動作 チェック時に トラブル を起 こす学生 も多かった.そのた め
,4週の実験時間内で終了す る学生が数人で,ほ とん どの学生が放課後や空き時間を使わなければ,終了で き ない状態であった.
3.
改善後の直売電源回路製作の概要 前節のよ うに, レジス トペ ンでパ ター ンを基板に直接 描 き,限 られた時間内で完成 させ ることは兵軽しい.この よ うな間舷点を改善す るために,平成
9年度 に購入 した ライ トボックス
(MODELBOX‑WI O:図
5)とエ ッチ ングマ シーン
(MODEI.ES‑600:図
6)を用いてプ リン ト基板 を魁作す るこ とに した.回路パター ンの設計につ いては,可約に
CjW(PCBE)で作 り,学生 を以下の手 順に典 申させることに した.
改善 したプ リン ト兆 収徽
爪印分の尖歓テキ ス トを以下 に示す.
3‑ 1
プリン ト基板製作
( 1)感光基板‑のプ リン トパ ター ンの鮭′ 1 ‑ i
紙 フェノー/ レのポジ感光曲板 (
100mm ×150mm)の 感光面に図
7の回路バ ター ンの シー トをのせ, ライ
トボ ックス
(MODELJ30X‑WIO)で
4‑5分間感 光 させ る.
(2)
現像
(a)
現像バ ッ トにぬ るま陽 ( 約
200cc)と現像剤 を 混ぜ て約
40oCの現像液 を作 る.
(b) 感光後,パ ター ンを上に して現像液 に基板 を沈 める.
(C)
現像が終わるまで,容器 ごと液を動か し続 ける.
(d) パ ター ンが くっき り現れ,回路以外 の感光剤が 完全に溶けた ら,引き上げて水洗いす る.
( 3)検査 ・修正
図
5ライ トボックス
図
6エ ッチングマシーン
図
8回路パターンの原図
2( 改善後)
エ ッチングす る前に,パター ンの検査 を行い,パ ター ン切れや,不安 なところは レジス トペ ンで修正す る.
(4)
エ ッチ ング
(a)
エ ッチングマ シー ン
(MODEI.ES‑600)に修
正 した基板 を斜 めに入れ る.マ シー ン内では,
O P 且
○ 0 正 二
㌘ i O E : i く つ ○
0
0
○G = :
l E : A o
Fl . . I: A I I I I
図
7回路バターンの原図 ( 改善後)
400C
程度 に温め られたェ ッテング液が基板 に 吹 きかけ られ,/くター ン ( 黒い部分)以外の銅 箔部が溶 けてパ ター ンが凍 る.
(b)
基板 をよく水洗 いす る.
(C) エタ ノールでパ ター ンに残 った レジス トを落 と して きれ いにす る.
(d) ア ク リル板 カ ッターでエ ッチ ング した基板か ら
6枚分の娼板 を切 り取 る,( 注)エ ッチ ング液は 服につ くと, V色 して取れ な くなるので注者す る こと.また. ビ=‑ル・ T ‑ 1 損 を して作業す ること.
(5)
穴あけ
部品穴を
¢1の ミニハン ドドリルで , 角の穴を ¢3 の
‑ ン ドドリルであける.
(6)
組み立て
基版 に部品を半田付け した
臥図 8にお いて.斜稚の 部分 にはメ ッキ線 を過 し.
瀬佃 は I t l i ・ m Hけす る.端 板の表側 にメ ッキ線 を
Icm
f■l'.瓜目 してお く ( ; R牧
(2)で必要になる).
図 9
は製作 されたプ リン ト基板 に部品を 、 早m付 け した 写真 であ る.図
10は完成 した直流髄液 であ る.
3‑ 2
実験 に対す る学生の感想 (平成
10年度)平成
9年度 と同様 に平成
10年度 に実験 を行 った草 生 に感想 を番いて もらった.その中で,プ リン ト基板魁作 につ いての感想 を以下に示す.
(1) 今 までは, メ ッキ線 でユ ニバーサル基板 の蕪側 に 面 倒 な配線 を しな くてはいけなかったが,プ リン ト基
板 ではその手間が省 ける.
(2) プ リン ト基板 が で き るまでの 流れ が 良 く分 か った.
(3)
基板 か ら自分で作 る とい うことでけっこ う ドキ ドキ したが,以外 と簡単に楽 しく作 ることが出来た.
(4)
今までは部 品間を接続す るのにメ ッキ線 を使 っ ていかに きれいに曲げ るかなんて事 を悩みなが ら作 って いた記憶があ る.それ を考 えるとプ リン ト基板 は楽 だ と 思 う.
以上の よ うに, ライ トボ ックスとエ ッチ ン グマ シー ン を用いてプ リン ト題板製作の改善を図った ことに よ り短 時間で良好 なプ リン ト基板が魁作できるよ うにな り,ほ
図
9半田付けされたプ リン ト基板
114
柄浮孝一 ・蔵之内真一 ・波速誠一 ・古川万寿夫 ・青木博夫 ・松島久夫
図1
0 完成 した直流電源 とん どの学生が時間内で実験が終了 してい る.
4.
む す び
本論文では,直流電源 回路製 作の改善前後 の概要につ いて述べ,学生に課題 と して与えた感想 をま とめた.
改善前 のプ リン ト基板艶作では,手な きで回路パ ター ンを描 くことについ ては,学生が興味を持 って取 り組 ん でいたが,出来上が った回路の不良による トラブルが多 か った.
改善後のプ リン ト基板製作 については,短 時間で効率 よ くプ リン ト基板 を製作 できる反面,製作には機械 によ るところが多 いため,改善前 よ り学生のプ リン ト基板製 作‑ の興味を低下 させた感 じがす る.
プ リン ト基板製作の改善に関わ らず,ケー スが小 さく, 配線 が難 しい,出力電流 があま り取れず,使用 目的 を制 限 させて しま うとい う感想があった.
今後の課題 としては以下の ことがあげ られ る.
(1) 本実験では,回路パ ター ンの原図 を事前に用患 してお いたが ,CA D を用いて学生各々に作 らせ る. 4 過の実験では回路パ ター ンを作 らせ る時間が ないが,也 の実験テーマ との調整,または,電気製図 との調整 によ
り英現できる と考 え られ る.
(2)
出力電流 を
1Aまで とれ るよ うにす る,現状の 構成 では,ケースが小 さく,放熱板 もケー スに合わせ て いるため,出力電流が制限 されてい る.ケー スと放熱板 をひ とまわ り大 きい ものを使用す ることによ り,出力電 流 を多 く取れ ,また,配線 にゆ とりがで き,製作時間 を 軍縮す ることが期待 で きる.
参 考 文 献
1 ) 古川万寿夫,柄将孝一
,戚之内其‑、大博幸造,宮 崎敬,甘 木伸夫,知野照倍, 山田達朗,松 島久夫, 畑宏 :" 長野高専屯気工学科における工学実験実習 の改 替, "高噂教育 第
18号, pp.
193‑200,1995.2)