医 師 の 職 業 生 活 の 社 会 学 的 分 析
一 病 院 医 師 の 場 合 一
4、 野 能 文
序
現 在, 医 療お よ び医師lctsす る社 会 的 関 心が かつ てない 程高 くなう て い る が, 筆 者は.これ まで プ
ロ フ ェ ッ シ ョ ン の典型と しての 医 師の 職業生 活 を 社 会 学的 に 研究してきて い る。
こ のた び, 医 師を病 院 とい う医 療 事 業の職 場で働くエ リート的なプロ フ ェ ッ シ ョ ン ー専門職 として
とらえて, 医 師が どのような職業生 活 を 送 り, どの よ う な意 識 を 持っ て い るか を究 明し ようと して, 病 院医 師の職 業 生 活の 社 会 学 的 質 問 紙調 査 を 行 ない, そ の結 果を 分析し た。
この研究 対象の医 師は,周 知の よ うに,非常に早 くからプ ロ フ ェ ッ シ ョ ン = 専 門 職と して の地位を 確 立し て来た職業であっ て, 医 師 職は様々 の点でプロ フ ェ ッ シ ョ ン の条件を備えて い る よ うに思 われ る。 例えば,医 師職は, A .フ レクス ナーの挙げた専 門 職 基 準 すなわ ち,知的 活動 性, 学究 性,高度
な教 育訓練お よ び 公衆の利 益に 敏 感なこ と 等 を満た してい る。
こ のような 医師の中で, 特に病 院 医飾を 調査 対 象に選んだ。 病 院医 師 とは, 病 院 勤 務医 が おもで ,
病 院 開設者も含ん でい る。
この選択の 理 由の まず 第 1は, 病 院 医 師の数が最 近個 人開 業 医==診 療 所 開 設 者の数 を上 回る ように な。 て 来て い る。とであ薯. まt。, 病 院 医 師の大 半を占める繊 勤 務 医 と診 蔚 勤務医と か ら成る勤
務 医は. 診療に従 事 する医 師の50% 以 上 を 占めて来てい る。 今 後 もこ の病 院 勤務 医 を中心 とする勤務 医の増 加の傾向が続い て い くもの と予 想 さ れるの である。 すな わち, 開 業 資 金の膨 大 化や開業希 望の 勤務 医の割 合の低 下傾寄, な どの 理 由で,開 業 医は余り増 加し ;C くいけれ ども, 病 院 勤 務 医の需 要は
小さ くない た めである。
第 2の選 択 理由は, 病院医師の社 会 学的調査 が余り行な わ れてい ない こ と で ある。 す な わちs 開 業 医に 関 しては, 意 識 調 査や実 態 調 査が医 師 会な どによ っ て 比 較的 よ く行 な わ れて い るけれ ど も,医 師 会へ の加 入 率の比 較 的 低い病 院 医師の調査は余 り行な わ れてい ない の で ある。 そ して,今ま で行な わ れた医 師 会主体の調査 は, 診 療 行 為 者側の 立場か ら 医 師の活 動と意 識を 調べ た もの で, 余 り社 会 学 的
では な か っ た ように思 われ る。
また, 病院管理学的ア プロ ーチの病院医師の調 査 研 究が行なわれて来て い る が, 社会的 行 為と社会 一 1 一
一
開係に焦点を当て る社 会 学 的アプ ロ ーチ で は ない の で,今 回の社 会 学 的アプロ ーチ の調 査 研 究は,意 義があるといえ る.
1 調 査 の 概 要
1) 調 査 対 象
調 査対 象は.大 阪 府 内の一般 病 院の常勤 医師317人である。 317の標本抽 出 につ い て は, 次のよ うに 行な っ た。
ま ず. 大 阪府 内の,医育 機 関 附 属病院を除く一般 病 院の中か ら,規 模お よ び経 営 形態の 点で層 別抽 出し て11病 院 を 選ん だ。 す なわ ち,100床未 満の病院 5病 院,100床以 上500床 未 満の病 院3病院, 500
床 以 上の病院3病 院である。 ユ976年末の全 国 統計では,100床 未 満の病院に常 勤 医 師の18.4%,100床 以 上500床 未満の病院lc45. 5%, 500床 以 上の病 院に36.1%が勤 務して い る ために, こ の ように抽 出し たっ
ま た,経 営 形態 別構 成は,1976年 末の全国統 計で は, 医療 法 人が 29.0%, 公益 法人 が4。1%,公 立
が12.7%,公 営 (済 生 会や 日赤な ど) が約4%, また 個入 病 院が38.9%で あ るの で,医療 法人 3病院,
公 益 法人 1病 院, 公 立 3病 院, 公営 1病 院, 個 人病院 3病 院を 選んだ。
これ らの病 院は, 地 域的に いえば, 大阪市 内の 5病 院と大阪府下の 6病 院で ある。
これ ら計11病院の堂勤医師317人 全 員 を 今 回の調査対 象と した。
なお, この病 院 医 師の居 住 地は. 大阪府が中 心で ある が,兵 庫県, 奈 良 県お よ び京 都 府に ま た が っ
てい る。
2) 調 査 方 法
調 査 方 法は質問紙 法で あり, 20の質問項 目から なる 調 査 票 を,大 阪 府 内の一般病 院の 中か ら層 別 抽 出し た11病 院で ,常 勤医 師 317人全 員に配 布 した。 回
収は郵 送 法によっ た。 表 1 医師の年「c「e
3) 調 査 期 間
調 査は. 昭 和53年 (1978年) 8月18日から9月4 日 まで の,盆 明けの期間に行な っ た。
4) 回 答 数
回答 数はIS4であ る。し たが っ て 回 収率は58.04%で あ る。
こ の 184という 回 答数の意味であるが, 調 査封 象が 職 業, 医療 業 務 形 態およ び学 歴の 点で同 質で あ るの で,
適 当 な 数で ある とい え よ う。
ま た.回収 率58%の意味であるが, 昭和43年 (1968
年 )の 9月に車田博士の行なっ た病 院医 師の 全 国的規 模で の郵 送 調 査の回 収率が27.6%で あっ たの で, 今 回
の 謁 査の回 収 率はまずまずといえ よ う。
年 齢 層 医師数 %
25 歳 〜 29 歳 38 20.7 30 歳 〜 34 歳 23 12.5 35 歳 〜 39 歳 30 16.3
40 歳 〜44 歳 重7 9.2 45 歳 〜49 歳 15 8.2
50 歳 〜 54 歳 33 17.9
55 歳 〜 59 歳 17 9.曾
60 歳 〜 64 歳 5 2.7 65 歳 〜 69 歳 2 1.i
70 歳 以 上 4 2,2
計 184100 .0 一 2 一
回答者の代表性を検討し て お くと, 回答者の病 院 規 模 別の比率は,病 院の規 模 別の配 票率とほとんど違っ
て い な か っ た。 す なわち, 100床未満の病 院の医師に 、
5.6% 配っ て, 6.e% 回 収で き, ユoe床以 上500床未満の 病院の 医 師 に28謹% 配っ て, 26.6% 回 収で き, まtc
500床 以 上の病 院の医 師に 66.3%配 っ て, 67.4%回 収 で き た。 した が っ て, 回 答 者は,配 票した調 査対象の 医 師 を正確に代 衰 して い るといえ る であろ う。
5) 回 答し た 医師の 属 性 ま ず, 医 師の年齢層’
は, 表1で示される ように, 20
代が 20.7%, 30代が28.8%, 40代が17.4%, 50代が
27.1%そ して60歳 以 上 が6.0%で ある。
平 均 年 齢は約42歳である。 これ は, 1976年 末の厚 生 省の医 師 統 計 諷 査にお ける, 全 国の病 院 医 師の平均年 齢よ り幾分若い。
医 師 経 験 年 数は, 表2で示 される が, 3年 未 満の人 は12.5% で あり, 7年未満の人は全 体の29.3%, ま た
10年 以 上の人 は全 体の61.9%いる。 20年 以 上の人 は全 体の 39.1%であ り,30年以上の人が14.1% もい る。 医 師の経 験 年 数の短い人 が比 較 的 少な く, ベ テ ラン の人 が比 較 的 多い。
病 院の 勤 続 年 数は,表3で示 さ れる よ うに, 3年 未 満の人が40.8%で あ り, 10年以 上 の 人 が31.0%である。
一番短い 1年未 満の 人は15.8%で,一番 長い20年 以上
の人 が14.7% もい て,勤 続 年 数の長さ は様々 で余り偏 り が ない。
診療科 目 は,表4で 示さ れ る が, 内科が29.3%で一 番 多 く, 外 科が次に多くて 14.1%で あ り,三番目 は産 婦人科と皮膚 科・泌尿 器科で共に 8.2%である。 これ は.全 国の病 院 医 師の診 療 科目 別構成率, 内 科 医 約 22.9%, 外科 医約14.4%,産 婦人科 医 約7,1%, 皮 膚 科・泌尿器科医約4% (1976年 末で の厚 生省の 医師統 計 調 査 によ る)に ほ ぼ対応 してい る。
医 師の職 階は,表 5で示され る が,管理職が29.3%, 中間 管理職が23.9%, 一般職が46.8%である。 ただし,
こ こ の中 間 管理職と は.医長 以 上の地 位にいて も,病 院の企画,運営,管理を審 議 する会議で の議 決 権の な
一 3 一
小 野 :医 師の職業生 活の社 会学的 分析 表2 医 師経 験 年 数
医師 経 験 年 数 医 師 数 %
1年 未 満 2 1.1
1年 以上3年 未 満 21 ユ1.4 3年 以上 7年 未 満 31 16.8
7年以 上10年未 満 16 8.7 10年以 上20年未 満 42 22.8 20年以 上30年未 満 46 含5.0
30年以 上 26 14.1
計 184100 .0
表3 勤務 病 院の勤続 年 数
「「 ¶
勤務 病 院の勤続 年 数 医 師 数 %
1年 未 満 29 15.8
1年 以 上3年 未 満 46 25.0 3年以 上・?年未満 36 19.6
7年以 上10年未満 16 8.7
ユ0年以 上20年 未 満 30 16.3
20年以上 27 14.7
計 18410 .0
表 4 診 療 科 目
診 療 科 目 医 師 数 %
1. 内 科 54 29.3
曾.小 児 科 14 7.6 3.精 神 科 ・神 経 科 13 7.1
4.外 科 26 14.1 5.産 婦 人 科 15 8.2 6. 眼 科 13 7.1
7.耳 鼻 咽 喉 科 10 5.4
8.皮膚 科 ・泌 尿 器科 15 8.2 9. 整 形 外 科 8 4。3 10.放 射 線 科 8 4.3 11. そ の 他 の 科 8 4.3
計 184100 .0
一
いクラス をさすこと と し た。
勤務病 院の 規模は, 表6で示される が,20床 以 上100
床 未満の病 院が 6.O%, 100床 以 上500床 未 満の病 院が
26.6%, また500床 以 上の病 院が67.4%で ある。 これ を 全国の病 院の常勤 医師の病 院 規 模 別 構 成 比 率
と比べ てみると, 1DO床 未 満 め 病 院の 医 師の 構 成比率 と100床以上500床 未 満の病 院の医 師の構 成 比 率が低 く)
’
500床 以上の 病 院の 医師の 構成比率が高い (1976年末
』
の厚 生 省の医 療 施設 調 査で は, 500床 以 上の 病 院の医 師の構 成 比 率は,全 国平 均で36.1%で あ っ た)。 以上が 回答 者の属 性で あっ た。
皿 調 査 結 果 と 分 析
1) 医師 職選 択動機
医師とい う職 業 を選択 した動機は. 表7で 示 さ れ る。 第1位は 「自分に適しt 仕 事だ か
ら 」で 22. 4%である。 第 2位は 「親が 医師だ っ た か ら」で16.8%,第3位は
「医 師に対するあこが れ が強か っ た か ら」で14.1%, 第 4位は 「親に勧め ら れたから」で13.6%.第5位は 「安定
して い る から」で6.5%,第6位は 「人 のた め に な る か ら」で4.9%で あ る。
「経 済 的に高い収 入が期 待で き る か ら」とい う 選 択動 機の医 師は誰 もいな かっ た 。 し か し,複 数 回 答 式に すれ ば, 何 人か は この動 機を挙 げたで あろ
う。
「親に勧 め られ 」で 医 師 を 選ん だ 人
の 場 合, その12% は親が 医 師 で あ っ
た。
房師 職の選択 動 機 を もっ と精 密に分
表5 職 階
職 階 医 師 数 %
管 理 職 中 間 管 理 職
一 般 職
54d48629.323
.946
.8
計 184100 .0
表 6 勤 務 病 院の規 模
勤 務 病 院の規 模 医 師 数 %
20床 以上〜100床 未 満
100床 以 上〜500床 未 満
500床 以 上
ユ149
ユ24
6.026
.667
,4
計 184100 .0
表 7 医 師職選択 動 機
医 師 職 選 択 動 機 医師 数 %
1.安定して いる から 12 6,5
2. 自分に 適 し た仕事だ から 41 22.4「
3.経済 的に高い収 入 が 期 待で きるから 0 0.0
4.社会的地位が高いか ら 3 1.6 5.親に勧められたか ら 岔5 13.6 6.親 が 医 師 だっ たか ら 31 16.8 7. 医師に対 するあこがれが強かっ た か ら 26 14.1
8.人の た めになる か ら 9 4.9
9. 近窺が病 気だっ た か ら 8 4.3
10. 医学に興味が あっ た から 4 2.2
ユ1。 その他の動 機 19 10.3
12. な ん と な く 6 3.3
計 184100 .0
析 する た め に, 医 師職選択 動 機と年 齢と を クロ ス集 計し た結 果が表8で ある。
各 年 齢 層の間で選 択 動 機に違いが み られ,20代と30代で は,第1位は共に 「自分に適した 仕事だ か ら」で ある が,40代で は第1位は 「親が医 師だ っ た か ら」であり, 50代で は第1位は 「親に勧め られ た か らj である。 60歳 以上では第 1位は 「親に勧め られ た から」で あ り,その割 合が か な り高く36.3
− 4 一