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オバマ医療改革の州レベルの実施過程

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(1)

オバマ医療改革の州レベルの実施過程

―― カリフォルニア州の「メディケイド拡大」を事例に ――

加 藤 美穂子

はじめに:本稿の目的

連邦レベルの 年オバマ医療改革法(Affordable Care Act:以下,ACA)

が全米各地域の現場で定着するには,州レベルや地方レベルの主体的で実効的 な制度設計と運営が重要かつ不可欠な前提である。前稿の加藤( )で指摘 したように,ACAを構成する重要政策の一つが「メディケイド拡大」である が,それを全米最大規模で実現するカリフォルニア州では,州政府による Medi-Cal(同州におけるメディケイドの名称)が,州内のそれぞれの郡政府を 基盤とする制度運営によって担われている。

カリフォルニア州では,それぞれの地域において多様な形で推進されるマネ ジドケア方式を軸とする州政府及び郡政府のMedi-Calの改革と拡充(費用節 約,適格要件の寛大化,網羅的な医療セイフティネットの構築)を支援するも のとして,ACAの「メディケイド拡大」を活用している。見方を変えれば,

州・地方レベルで 年代から推進されてきた医療セイフティネットの拡充 を支援する位置づけにあるが故に,カリフォルニア州では,ACAの「メディ ケイド拡大」が実現したと言える。

このような視角から本稿では,「メディケイド拡大」を積極的かつ全米最大 規模で実現してきたカリフォルニア州のMedi-Calを具体的事例として分析し,

連邦レベルのACAを州・地方政府が現場で実体的に実施し,定着させるプロ セスを検討したい。

巻 第 ・ 号 年 月

(2)

第 節 年オバマ医療改革法とカリフォルニア州の

Medi-Cal

ACA の基本構造

年に成立したAffordable Care Act(ACA)は,無保障者問題を解消する ために全米的な皆保障システムの構築を目指すものであった。ただしそれは,

全国民を統一的な社会保険制度に加入させるものではなく,雇用主提供医療保 険や個人保険を中心とする既存のアメリカの医療保障システムを前提として,

それらの入手可能性を高めた上で,それでもなお民間保険に加入できない貧困 層・低所得層に対しては医療扶助(メディケイド)を拡大するものであった 具体的には,第 に,民間医療保険に関わる改革として,個人や企業の保険 の入手可能性と保険料負担可能性を高めるための民間保険事業者への規制強化 が行われ,第 に,一定規模以上の雇用主に,被用者に対する医療保険の提供 を義務付けるとともに,第 に,逆選択を防ぐために,個人に対しても医療保 険加入を義務付けた。さらに第 に,小規模雇用主や中・低所得者向けの医療 保険を扱う公設医療保険市場(ExchangeMarketplaceと呼ばれる)を創設し,

この公設医療保険市場での医療保険購入に対して中・低所得者に税額控除によ る支援を行うこととした。そして第 に,これらの民間医療保険の加入拡大策 からも零れ落ちてしまう貧困者やワーキングプア層に対しては,医療扶助であ るメディケイドの適格要件を寛大化することで(メディケイド拡大),無保険 者を皆無にしようとした。

本稿の検討対象である,この「メディケイド拡大」についてその内容をさら に詳しくみていこう。ACAの前のメディケイドでは,所得要件を満たす貧困 状態にあっても,妊婦や児童,公的扶助受給者といったカテゴリーに関する要 件(以下,カテゴリー要件と表記)に該当しなければ,受給資格は与えられな

( ) オバマ医療改革法については,天野( ),山岸( ),中浜( ),長谷川( ),

加藤( )を参照されたい。

( ) 詳しくは,加藤( ), − 頁を参照。

香川大学経済論叢

(3)

かった。しかしACAでは,修正調整後総所得(Modified Adjusted Gross Income ;

MAGI)がFPL(連邦政府の定める貧困基準)の %までの 歳未満の全て

の個人に,メディケイドのmandatory Medicaid eligibility group(州政府がメディ ケイド連邦補助金を交付されるための義務的要件として必ず適格者にしなけれ ばならないグループ)を拡大した。この「メディケイド拡大」によって,⑴ 旧カテゴリー要件(妊婦,児童,公的扶助受給者)のいずれにも該当しないFPL

%までの被扶養未成年のいる成人(以下,成人(扶養あり)と略記)およ び被扶養未成年のいない成人(以下,成人(扶養なし)と略記)と,⑵FPL

%までの 〜 歳未満の未成年が(オバマ医療改革の前はFPL まで適格であった),新たに適格者に加わることになった。特に⑴の成人を適 格者にすることは,カテゴリー要件によって原則的に就労可能者を不適格とし てきたメディケイドの性質を大きく変えるものといえる。以下,本稿では,こ の⑴の成人グループを「新カテゴリー(成人)」と表記する。

ACAでは,「メディケイド拡大」を 年 月 日から本格的に開始する ことを州政府に求めた。また, 年 月 日よりも前に,成人への「メディ ケ イ ド 拡 大」を 実 施 し た い 州 政 府 に 対 し て は,Federal Medical Assistance

Percentage(FMAP)に基づく通常の補助率でメディケイド連邦補助金を受けな

がら実施できる選択肢も提示された(early optionとも呼ばれる)

ACAでは,この新たに加わる適格者グループに関する支出については,

年以降,通常よりも高い連邦補助率を適用する一方で,州政府が「メディ ケイド拡大」を実施しない場合には,罰則として,全てのメディケイド連邦補 助金(従来から交付されていた分も含めて)を交付しないとした。しかし,「新 カテゴリー(成人)」をメディケイドの適格者とすることに反対する州も多く,

( ) MAGIベースの所得計算において,ACAでは州政府にFPL %分の所得の控除を求 めているため,実質的にはFPL %に相当する(Stone et al. , pp. − )。

( ) Stone et al. , pp. .

( ) Sommers, Arntson, Kenney and Epstein , p. ; Centers for Medicare and Medicaid Services a), p. ; Centers for Medicare and Medicaid Services , p.

(4)

同法の合憲性を問う訴訟においても,重要な争点の一つとなった。

前 稿 の 加 藤( )で 詳 し く 検 討 し た よ う に,代 表 的 な 訴 訟(National Federation of Independent Business v. Sebelius, U. S. ))において,

連邦最高裁判所はこの「メディケイド拡大」をすべての州政府に強制するため の罰則規定を「違憲」と判断した。この違憲判決は,アメリカの民主主義にお ける三権分立のメカニズムを示す事例(連邦政府の大統領が求めて連邦議会が 可決した法律の内容について連邦最高裁が否定する)であり,また,アメリカ 民主主義において極めて重要な連邦制の州・連邦関係の観点からも,非常に大 きな意味を持った。

具体的には,ACAによる画期的な「メディケイド拡大」の実施が,連邦法 による強制ではなく,州政府の側の主体的な選択となり,前稿の加藤( でみたように, 年以後も「メディケイド拡大」を実施しない州もあれば,

本稿で取り上げるカリフォルニア州のように, 年以前に積極的に「メディ ケイド拡大」の準備を進める州もあった。すなわち,それぞれの州政府による 多様なメディケイドの制度設計と運営が維持されただけではなく,「メディケ イド拡大」を実施する州政府についても州内の制度設計と運営に関する自立性 が再確認されたのである。

以上のように, 年 月に成立したACAによって,全米規模でのメディ ケイドの適格要件の大幅な寛大化が提示され,その後の連邦最高裁判決によっ て,州政府の側の「メディケイド拡大」を実施する裁量権が再確認された。次 項以降でみるように,主体的にこの裁量権を活かして「メディケイド拡大」を 積極的に実施する最大の州がカリフォルニア州であり,アメリカ全体における 先行者かつ実験者としての役割を果たしている。本稿では,そのカリフォルニ ア州を事例として,州政府の側の自立的な制度設計と運営,さらには,州政府 及び郡政府による主体的な改革と拡充に,ACAによって増加するメディケイ ド連邦補助金を活用するプロセスを検討したい。

( ) 詳しくは,加藤( )を参照されたい。

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(5)

カリフォルニア州における全米最大規模の「メディケイド拡大」

前稿の加藤( )でみたように,ACA施行後の 月時点では 州(D. C.含む)が「メディケイド拡大」を実施し, 州が実施していなかっ た。ただし,「メディケイド拡大」の実施の有無は, 年 月時点で確定し たわけではなく,当初未実施であった州でも,その後,条件が整うことで実施 へと転じるものもある。たとえば, 年 月の時点では「メディケイド拡 大」を実施する州は 州に増加しており,その後も実施する州の数は増えて いる。

図表 は,ACAの「メディケイド拡大」の開始によるメディケイド及びCHIP 登録者数の変化を示しており,「メディケイド拡大」施行以前の 年と施行 以後の 年のデータを比較している。メディケイド及びCHIPの登録者数 は,全米では, 年 〜 月時点で平均 . 百万人であったものが,

年 月には . 百万人に増加している。

その中でも,登録者数,増加数,増加率のいずれにおいても際立っているの がカリフォルニア州である。同州では, 年 〜 月時点でも平均登録者 が . 百万人で全米最大の規模であったが, 年 月には . 百万人へと

. 百万人も増加し,その増加率は .%に達している。他の主要な拡大州で あるニューヨーク州,イリノイ州,オハイオ州をみると, 年 月時点で の登録者数はそれぞれ . 百万人, . 百万人, . 百万人であり,

〜 月からの増加数は . 百万人, . 百万人, . 百万人である。これらと 比べても,カリフォルニア州の登録者数は圧倒的な規模と増加といえる。

California Department of Health Care Services(DHCS)によると,カリフォル ニア州では,それまで成人(扶養なし)は,同州が実施するメディケイド(Medi- Calという名称)の対象外であったが,それらの成人に対して 年 月

( ) 加藤( ), 頁。

( ) ACAの公設医療保険市場が 月に開始されたことから,ACAの施行前の状 況をみるにあたり, 年 〜 月期のデータが用いられている(Centers for Medicare and Medicaid Services a), p. )。

( ) California Department of Health Care Services b), pp. .

(6)

日から「メディケイド拡大」を実施するための州法が 年 月 日に成立 した。そして「メディケイド拡大」が開始されてから最初の ヵ月( 月)で . 百万人の成人(扶養なし)が適格者として登録され, 年末 には . 百万人にまで増加した。

さらにいえば,カリフォルニア州は, 年 月 日の施行以前から「メ ディケイド拡大」を実施するearly optionを選択した 州(D. C.を含む)のう ちの一つでもあり, 年施行の数年前から積極的に準備を始めていた。こ

early optionによって, 年までに 州をあわせて約 万人の成人がメ

ディケイドに登録されたが,そのうちの . 万人がカリフォルニア州の登録

( ) 以下のearly optionを選択した州に関する説明は,Centers for Medicare and Medicaid Services a, p. )及びCenters for Medicare and Medicaid Services , p. )を参照。

なお,この 州とは,カリフォルニア州,コロラド州,コネチカット州,D. C.,ミネソタ 州, ニュージャージー州, ワシントン州である。 州政府がearly optionを実施する場合,

ACAで州計画に新たに認められた権限の範囲内で実施する方法と,さらに ウェイ バーを適用する方法とがある。 ウェイバーを用いたのは,カリフォルニア州のほ か,コロラド州,ニュージャージー州,ワシントン州である。

メディケ イド拡大

年 月 年 〜 月平均 増加数 千人

増加率 千人 全米シェア 千人 全米シェア

全米合計 .% .% .%

California .% .% .%

New York .% .% .%

Texas × .% .% .%

Florida × .% .% .%

Illinois .% .% .%

Ohio .% .% .%

Pennsylvania .% .% .%

Michigan .% .% .%

North Carolina × .% .% .%

New Jersey .% .% .%

図表 ACA 拡大によるメディケイド及び CHIP 登録者の増加

出所:Centers for Medicare and Medicaid Services b), Table A “Medicaid and CHIP : June and July Monthly Enrollment Updated September ,” より作成。

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者である。カリフォルニア州ではこのearly optionを, ウェイバーを利用 して実施しており,それが次に詳しく検討するBridge to Reformウェイバーで ある。そしてこのウェイバー・プログラムを通じて, 年 月 日から「メ ディケイド拡大」を本格的に実施するための準備作業が進められた。

それでは節をあらためて, 年の「メディケイド拡大」施行の前段階に

おける, Bridge to Reformウェイバーを通じた準備作業から検討を始め

たい。

第 節

Bridge to Reform

ウェイバー:ACA

「メディケイド拡大」の準備

カリフォルニア州による Bridge to Reform ウェイバーの申請内容 カリフォルニア州は,オバマ医療改革法(ACA)の「メディケイド拡大」や 公設医療保険市場等を 年から本格的に開始するための準備として,Medi- Calの適格者拡大と,地域の医療提供システムの合理化のための取り組み(統 合ケアシステムの構築,マネジドケア方式の拡大・強化,マネジドケア方式の 質的向上策)を段階的に進めるために Bridge to Reform という ウェイ バー・プログラム(以下,Bridgeウェイバーと略記)を 年 月に申請し た( 月に連邦保健福祉省のCenters for Medicare and Medicaid Services

(CMS)が承認)。ウェイバー制度とは,連邦社会保障法の規定に基づき,連 邦保健福祉省(U. S. Department of Health and Human Services;以下,HHS 略記)長官が特定のプログラムに関する連邦法の一部の規定を適用除外にでき る制度である

カリフォルニア州は同ウェイバーの申請書の中で,ACAが目指す方向での

「改革の先導者」という自負を持って「実験室」としての役割を果たすために,

このウェイバー・プログラムを実施するのであり,そこから得られた教訓が連

( ) 以下のBridgeウェイバーの内容については,カリフォルニア州が連邦HHSのメディ ケイド担当部局であるCMSに提出したウェイバー申請書, State of California )に よる。

( ) メディケイドのウェイバー制度の詳細については,加藤( )を参照されたい。

(8)

邦政府にとっても他の州政府にとっても有用なものになるとして,後述する革 新的な取り組みを行うと述べている

同州はBridgeウェイバーで行う主な取り組みとして,第 に,適格要件の

寛大化,第 に地域の医療インフラを強化するためのSafety Net Care Pool(以 下,SNCPと略記)の拡大,第 に,高医療ニーズの人口グループ(高齢者及 び障害者,高度医療ニーズの未成年,薬物乱用患者及び問題行動疾患患者)に 対する医療提供システムの改革(マネジドケア方式への移行の義務化,統合ケ アの構築)などを挙げている。

すなわち,ACAの「メディケイド拡大」の準備として,メディケイドの適 格者を「新カテゴリー(成人)」にも拡大すると同時に,医療支出の増加を抑 制するために,従来はマネジドケア方式の適用外であった高医療ニーズの受給 者をマネジドケア方式に抜本的に移行し,さらに,それらに伴うサービス水準 の不適当な悪化を防止するために,供給システムにおける連携体制の整備やア カウンタビリティの向上を行うという枠組みがみてとれる。このカリフォルニ

ア州のBridgeウェイバーの内容について,さらに詳しくみていこう。

− − 適格要件の寛大化

まずBridgeウェイバーにおける適格要件の寛大化は,ACAの「メディケイ

ド拡大」と公設医療保険市場が 年 月 日から完全実施となるのに先駆 けて,同州の既存の医療扶助システムをACAに整合させる作業の中で適格者 の範囲の拡大を実施するものである。前節で述べたように,ACAでは州政府 に対して, 年よりも前に新カテゴリーへの「メディケイド拡大」を実施 することを選択可能とした。カリフォルニア州では, 年のBridgeウェイ バーの前に実施していたウェイバー・プログラムを更新・拡張する形で,

ACAを州内各地の多様な医療扶助システムに定着させる準備を進めるのであ り,そのためにメディケイド連邦補助金の利用と交付要件の一部適用除外を引

( ) State of California , p. .

( ) State of California , p. .

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(9)

き続き求めたのである。

具体的には,カリフォルニア州ではBridgeウェイバーの前身である

Hospital Financingウェイバー( ウェイバー,期間は 年 月〜

年 月)のもとでHealth Care Coverage Initiative(以下では, HCCI 略記)という適格要件を寛大化する実験プログラムを 郡に限定して実施し ていた。それを, 年の新たなBridgeウェイバーでは, の全ての郡に拡 大することの承認を,連邦HHSに求めた。

Hospital Financingウェイバーの HCCIプログラムの以前にも郡レベ ルの救急医療を中心とする医療扶助(適格要件等の制度設計にバラツキがあっ た)は存在したが, HCCIプログラムは,FPL %までの無保障の

歳の成人( 歳以上のメディケア適格者と,既にメディケイド及びCHIP に適格な者を除く)という適格要件の統一化をした上で,初期診療や予防を中 心とする組織的ケア(Patient-Centered Medical Home等)に移行させようとす るものであった。

HCCIプログラムでは,競争的プロセスを通じて 郡が選定され

(Alameda郡,Contra Costa郡,Kern郡,Los Angeles郡,Orange郡,San Diego 郡,San Francisco郡,San Mateo郡,Santa Clara郡,Ventura郡),その 郡に は ヵ年( 年 月 日〜 年 月 日)で年間 百万ドルまでの連 邦資金が交付されると共に,地域のニーズや医療提供体制に適したHCCIプロ グラムを設計できる大きな柔軟性が与えられた。それぞれの郡の制度設計にお ける適格要件や給付内容などの主な部分は,Medi-Calの要件に適合する形で 共通していたが,他方では各郡政府が適格要件に独自の制約を追加することが でき,また,HCCIプログラムへの適格者の登録プロセスやMedical Home アクセス保障のためのプロバイダー網,プログラムの評価データの収集等につ いてもばらつきがあった

( ) 以下の 年のHospital Financingウェイバーに関す る 説 明 は,State of California

, pp. , − )による。

( ) Hospital Financingウェイバーについては,California Health Care Foundation )も 参照されたい。

(10)

そこで Bridgeウェイバーでは,第 に,FPL %までの無保障の 成人(扶養あり,および,扶養なし)への適格要件の寛大化であるHCCIプロ グラムを,州内の全 郡に拡大し,第 に,各郡政府が多様な形で設計・運 営する医療扶助システムを,ACAの「メディケイド拡大」や公設医療保険市 場の連邦ルールと整合させるために必要な標準的な枠組みを構築するとした。

そして第 に,ACAの「メディケイド拡大」と公設医療保険市場が本格的に 開始する 年 月 日からは,この新ウェイバー・プログラムの登録者の うち,FPL %の者はMedi-Calへと移行して連邦補助金の適格者となり,

FPL %の者は州の公設医療保険市場の登録者へと移行することが計画 されていた。

なお,Bridgeウェイバーの申請時点で,カリフォルニア州は,州内の のうち少なくとも 郡はこの新ウェイバー・プログラムに参加する見込みを 示しており,また実際にも,後述のように, 年 月時点で 郡がこのプ ログラムに参加している。

すなわち,カリフォルニア州では, 年の「メディケイド拡大」に向け た実質的な議論や準備が先行して進められており,内実を伴った具体的な必要 性と提案がこのウェイバー申請で示されていると考えられる。逆に言えば,連 邦政府側にとって,そのような州・地方政府側の主体的なイニシアティブと努 力と説得的な見込みが前提にあるからこそ,連邦法の主要規定を免除してで も,カリフォルニア州によるそれらの取り組みを支援することが認められるの であろう。

− − Safety Net Care Pool(SNCP)の拡大 次に,SNCPの拡大についてみていこう

Hospital Financingウェイ バーの下で実施されていたSNCPの主な取り組みは,第 に,地域の医療セイ

( ) State of California , pp. .

( ) State of California , pp. , .

( ) State of California , p. .

( ) State of California , pp. .

香川大学経済論叢

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フティネット・システムを強化するために,公立病院や民間セイフティネット 医療機関に対する支援の拡充と運用の柔軟化であり,第 に,特定疾病(ガ ン,エイズ,精神医療等)の医療ニーズへの支援策の強化であった。

Bridgeウェイバーでは,このような地域医療セイフティネットの支

援策であるSNCPについて,一層の強化が目指された。具体的には,上記の地 域医療セイフティネットや州の特定疾病対策制度の支援の一層の拡充ととも に,Delivery System Improvement Pool(DSIP;セイフティネットの医療ケアの 供給システムを強化するために,ケアシステムの連携強化,Patient-Centered

Medical Homeの拡大,慢性疾患のマネジメントの拡大,連携強化のための医

療情報技術への投資等)の創設などである。

− − 高医療ニーズ・グループに対する医療提供システムの改革

高医療ニーズを持つが故に出来高払方式(Fee-for-Service ; 以下,FFSと略 記)を適用してきた人口グループに対しても,マネジドケア方式を通じても適 切な医療ケアを提供できるように統合的なシステムを構築することが目指され た。高い医療費を伴う当該人口グループをマネジドケア方式に移行すること で,長期的なMedi-Cal支出の伸びを抑制することも目指しており,そうして 捻出した財源によって「メディケイド拡大」が図られることになる。該当する 人口グループとしては,第 に,(メディケアを持たず,Medi-Calのみにカバ ーされる)高齢者及び障害者(Seniors and Persons with Disabilities;以下,SPD と略記),第 に,メディケアとメディケイドの二重適格者である高齢者及び 障害者,第 に,高度医療ニーズの未成年,第 に,問題行動疾患患者及び薬 物乱用患者,が想定されている。

( ) 具体的には,Breast and Cervical Cancer Treatment programCalifornia Children Services programGenetically Handicapped Persons programや,Expanded Access to Care Program Aids Drug Assistance Programや,County Medical Services ProgramMedically Indigent Long Term Care Programや無保険者への精神医療サービスがある(State of California

, p. )。

( ) State of California , pp. .

(12)

Bridgeウェイバー申請書では,第 のSPDについては,マネジドケア方式 への加入の義務付けを拡大するとしており(ただし,既存の適用除外制度は継 続),加入義務化にあたっては,まず,既存のマネジドケア・プランをベース として,州政府が定めるSPD向けの新基準を満たすよう修正されたプランに 登録させることが予定された。さらに,郡政府がそれぞれの地域の状況に即し た代替的なケアを構築してSPDに追加の選択肢として提供することも可能に するとした。

第 の二重適格者は,貧困かつ複数の長期ケアを必要とし,メディケイドと メディケアの支出の大きな部分を占めるグループである。カリフォルニア州は,

二重適格者への医療提供システムを合理化・改善するために,一つには,メ ディケイド(Medi-Cal)とメディケアを一体的に制度運営するために必要な連 邦ルールの規制緩和を求め,もう一つには,二重適格者に対応できるマネジド ケア方式や在宅・コミュニティ・ベースの統合ケアシステムを構築し(急性医 療,ロングタームケア,在宅・コミュニティ・ベースケアなどの連携体制),

二重適格者をFFS方式から移行させるパイロット事業の開始を提案した。

第 の高度医療ニーズの未成年と第 の問題行動疾患患者及び薬物乱用患者 については,この 年のウェイバー申請時点では具体的な内容は提示され ておらず,後に改めてこれらの つのグループに関するウェイバー・プログラ ムの修正を連邦HHSに申請するとした。Bridgeウェイバー申請書によると,

これら グループについても州内の計画策定作業は開始しているが,まずは

Bridgeウェイバーの承認後にSPDと二重適格者に関する取り組みと,新カテ

ゴリーの「メディケイド拡大」の準備に注力することを意図したものとしてい る。

( ) State of California , pp. .

( ) たとえば 年時点で,全米で,二重適格者の支出は全メディケア支出の %,メ ディケイド支出の %を占める(State of California , p. )。

( ) State of California , pp. . 将来的には,第 のSPDグループの供給システ ムとの統合を計画している(State of California , pp. − )。

( ) State of California , p. .

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連邦 CMS による 年 Bridge ウェイバーの承認

カリフォルニア州のBridgeウェイバーは 年 月 日に申請され,連邦 HHSCenters for Medicare and Medicaid Services(以下,CMSと略記)が同年 月 日にはそれを承認し, 月 日から 日の期間 についてその実施を認めた。CMSからのウェイバー承認通知書(Approval

Letter)では,Bridgeウェイバーの意図( 年の「メディケイド拡大」の準

備)について賛同し,そのための制度設計の大枠を認める旨が,簡潔に述べら れている。ここでは,その原文の抄訳を示しておこう。

第 に,前の実験的プロジェクトにおいて特定の郡で実施されていたFPL %まで の成人( − 歳)の適格化を継続・拡充し,それを財政的に可能な他の郡にも拡大す ることを認める。この実験的プロジェクトに参加する郡政府は,受給者自己負担の軽 減や,提供医療サービスの拡大(プライマリー・ケア,予防ケア,入院医療,精神医 療や処方箋薬)を行うことが求められる。このような郡を基盤とする制度システムの 上で実施される適格者の拡大は,(ACA実施の:引用者) 年における一層の拡大 につながる経過的措置であり, 年 月の「メディケイド拡大」への移行は継ぎ目 のない形で実施されるものとする。

第 に,高齢者及び障害者のマネジドケア方式への移行を義務化することを許可す る。高齢者及び障害者向けの(医療や介護ケア: 引用者)ネットワークを備え,適切 なケアへのアクセスを保障する多数の保護策を含めるものとする。

第 に,この実験的プロジェクトによる節約から生じる財政資金は,Safety Net Care Pool(SNCP)に振り向ける。予算は, 年間で . 億ドルから . 億ドルへの増額 となり,公営病院や医療提供者による医療サービスを支援するために使用される。具体 的には,州政府は,インフラ投資補助金やSNCPの中にDelivery System Reform Incentive

Pool(カリフォルニア州のBridgeウェイバー申請書のDSIPを変更したものと思われ

る:引用者)を新たに創設できる。

第 に,Delivery System Reform Incentive Poolは,カリフォルニア州内の公営病院に おける医療サービス向上とコスト節減の促進を目的として,インフラ投資や技術革新 や特定対象者向け対策(population focused improvement)などを対象とする。

( ) Centers for Medicare and Medicaid Services a).

(14)

第 に,発達障害者向けプログラムや医療後進地域向け医療人材養成プログラムへ の連邦資金投入がある。

そして連邦政府のCMSは,カリフォルニア州が上記の取り組みを進めるた めに必要となる,連邦法の規定の適用除外について具体的に通知をしている。

たとえば,Bridgeウェイバーにおいて適用除外となる規定としては,第 に,

連邦社会保障法のSection の「選択の自由(Freedom of Choice)」規定,

第 にSection ⒜ ⑴ の「適用地域についての差別の禁止(Statewideness)」

規定,第 に,Section ⒜ ⑽ )の「給付の総額・期間・範囲と適用集団 の差別の禁止(Amount, Duration, and Scope of Services and Comparability)」規 定などがあった。

第 の「選択の自由」規定は,州政府がメディケイド適格者に対して,サー ビス供給者に関する「選択の自由」を与えることを求めるものである。Bridge ウェイバーでは,プログラムの登録者に対して,マネジドケア方式への登録を 義務化して選択肢を特定のマネジドケア組織に限定するため,この連邦法の規 定の適用除外を求めていた。

第 の「適用地域についての差別の禁止」規定は,州政府に対して,メディ ケイド給付の総額・期間・範囲が,受給者の居住地に関わりなく州域全体で同 じであることを求めるものである。カリフォルニア州ではそれぞれの郡政府ご とに,「新カテゴリー」への適格性の拡大と提供されるマネジドケア・プラン を設定するので,この連邦規定の適用除外が必要であった。

第 の規定は,メディケイド給付の総額・期間・範囲について適格者間の公 平性を求めるものであり,メディケイド連邦補助金において州政府が必ず適格

( ) Centers for Medicare and Medicaid Services b).

( ) このほかにも,Section ⒜ ⑸ のSingle State Agency規定や,Sections ⒜ ⒀ と

Payment to Providers規定が免除された。

( ) ウェイバーによって適用除外となる主な連邦法の規定の説明については,Herz を参照。

( ) Herz , p. .

( ) Herz , p. .

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者に含めなければならない人口グループに提供されるサービスを,他の適格者

(同区分の適格者や異なる区分の適格者)よりも不利な内容にすることを禁じ るものである。Bridgeウェイバーでは,高齢者及び障害者に対してマネジドケ ア方式の義務化を進める際に,他より有利な給付が提供されることもあるた め,この連邦法の規定の適用除外が必要とされた。

以上,Bridgeウェイバーの申請と承認の段階についてみてきたので,次に,

実際のBridgeウェイバーに基づく取り組みの検討に入ろう。

Bridge to Reform ウェイバーの主な取り組み

ここで依拠する資料は,California Health Care FoundationによるA Bridge to Reform : California’s Medicaid Section Waiverという報告書(以下では

Bridge報告と略記)であり,それが刊行された 月は,同ウェ

イバーが承認された 年からACAの「メディケイド拡大」が実施される 年の中間であった。すなわち,カリフォルニア州においてACAの「メディ ケイド拡大」の実施への過渡的な作業を,同ウェイバーの下で進めている時期 であった。

同報告では,Bridgeウェイバーの主要政策として,①LIHP(Low Income

Health Program,ACA以前のメディケイドの経済要件を上回る階層の医療困窮

者に対する郡政府運営の医療扶助),②DSRIP(Delivery System Reform Incentive Pool,公営病院等のセイフティネット機関へのインフラ改善の助成金),③高 齢者及び障害者のMedi-Cal受給者のマネジドケア方式移行義務化( 郡にお いて義務化;メディケアとの二重適格者は除く),④CCS(California Children’s

Service)パイロット事業(高度医療の未成年のMedi-Cal移行事業)をあげて

いる。

既述のように,①のLIHPについては, 年からのACA「メディケイド 拡大」の施行よりも前の期間に,州内の全郡政府において,FPL %までの

( ) Harbage and King .

( ) Harbage and King , pp. .

(16)

階層の成人( − 歳のアメリカ国籍者及び合法滞在者;なおMedi-Cal適格 者を除く)を対象として,連邦補助金を投入して郡政府運営の医療扶助制度を

LIHS設立 DSRIP SPDマネジドケア

移行義務化

未成年の CCS事業

Alameda ○*

Contra Costa ○*

Fresno

Kern ○*

Los Angeles ○*

Merced COHS

Monterey COHS

Orange ○* COHS

Placer

Riverside

San Berardino

Sacramento

San Diego ○*

San Francisco ○*

San Joaquin

San Luis Obispo COHS

San Mateo ○* COHS

Santa Barbara COHS

Santa Clara ○*

Santa Cruz COHS

Stanislaus

Tulare

Ventura ○*

その他

実施郡の合計

図表 郡レベルの Bridge ウェイバー実施状況( 年 月末)

出所:Harbage and King , p. より作成。

備考:* 年ウェイバーによる先行郡である。

(17)

設置し,上述の HCCIプログラムを修正しながら州内全域に展開する ものである。

年 月末時点のBridgeウェイバーの郡別の実施状況を図表 でみる と,第 に,カリフォルニア州全体の 郡の中で 郡がLIHPを実施してい る。その中で*印が付いているのが,先行的な 郡(LIHPの前身である HCCIプ ロ グ ラ ム を 既 に 実 施 し て い たLos Angeles郡,Alameda郡,San

Francisco郡,San Diego郡等)であり,後述のように,大都市地域に位置する

先行的な郡である。第 に,DSRIP(医療セイフティネットのインフラ整備等)

についても,その先行的な 郡を中心に 郡で実施され,第 に高齢者及び 障害者の受給者のマネジドケア方式への移行の義務化は,すでに義務化してい COHS型(後述,図表 )のOrange郡等を除いて,図表 に掲げられた 郡で実施された。また,第 に未成年向け高度医療のCCSに関するMedi-Cal マネジドケア方式への移行実験事業はAlameda郡,Los Angeles郡,Orange郡,

San Diego郡,San Mateo郡の 郡で行われていたが,それらもすべて上記の

先行郡である。

( ) また③や④については,本稿で後に詳しく検討するMedi-Calにおけるマネジドケア方 式への全面的転換の準備的な意味を持つと評されている(Harbage and King , pp.

.)

( ) DSRIPは,医療セイフティネットのインフラ整備や医療供給システムの改善や緊急医

療の充実を目的として州内の の公営病院(郡病院とカリフォルニア州立大学病院)に 連邦補助金を投入するものであった。公営病院の患者の %が,Medi-Cal受給者か無保 障者であった。対象公営病院は改善計画書を提出して,改善の進捗段階に応じて成果評 価を受けながら連邦補助金を交付されるが,郡政府及び公営病院からの資金負担が条件 となった。DSRIP参加病院の具体的事例としては,UCLA大学病院における初期診療従 事者のトレーニング・プログラム,San Mateo郡医療センターの初期診療追跡システ ム,Alameda郡医療センターの外科手術時感染対策等があった(Harbage and King , pp. − )。

( ) CCSプログラムは,未成年の高度医療(心臓病,がん,血友病,鎌状赤血球病等)を 対象としており(高度医療以外につ い て は,CCS登 録 者 の %がMedi-Cal, %が

Healthy Families, %が民間保険でカバーされた),当該治療についてはCCSで支払わ

れ(FFS方式),財源は連邦政府・州政府・地方政府が負担する。 年度において 歳未満児は 千人, . 億ドル, 歳以上が 千人, . 億ドルであった。ただ

し,このBridge報告の 年 月の時点では,Medi-Calマネジドケア方式への移行実

験事業はまだ実施に至っていない(Harbage and King , pp. − )。

(18)

すなわち, 年ウェイバーによる先行的な実験を行った大都市部の先行 郡が軸となって Bridgeウェイバーによる改革を実施し,それが

年のACA「メディケイド拡大」の本格実施の準備となるという道筋が読み取

れる。

Low Income Health Program(LIHP)

それでは,本稿の主題であるACAの「メディケイド拡大」を 年に実 施するための準備として最も重要なLIHPの創設について詳しく検討しよう。

先に述べたように, BridgeウェイバーのLIHP 年ウェイバー による先行 郡で実施された HCCIプログラムを拡充するものであっ たが,さらに,その HCCIプログラムも,カリフォルニア州法の規定 によって州内の全 郡政府に要請される「無保障者のラストリゾート」とな る多様な郡営医療扶助を制度的な前提としていた。したがって,先行 郡以 外においても,それぞれ郡政府による多様なセイフティネット(医療サービス の内容,適格要件等にはかなりのばらつきが存在)が実施され,また,医療サ ービスの供給についても,公営の病院や医療機関が担う方式の郡もあれば,民 営医療機関での診療に代金を支払う方式の郡もあり,両方式を併用する郡もあ る。また,初期診療や予防医療や慢性疾患よりも,急性疾患や救急医療が中心 であった。

先行 郡の HCCIプログラムやそれ以外の郡におけるセイフティ ネット制度における制度設計のばらつきと比較して, Bridgeウェイバー によるLIHPは以下のような特徴を有していた。第 に,LIHPの参加はそれ ぞれの郡の任意とされたが,実際には 年 月時点で 郡が参加しており

(図表 ),LIHPの費用の半分に連邦補助金(federal Section waiver funds)

が投入され,残りの半分が郡政府負担である(Medi-Calとは異なって,州財 政資金の負担はない)。

( ) Harbage and King , p. .

香川大学経済論叢

(19)

第 に,参加する郡は,連邦政府が定める要件を順守する必要がある。適格 対象者は,FPL %までの成人( − 歳)であり,その適格者はさらに次 の つのグループに分けられる。 一つは,Medicaid Coverage Expansion(以下,

MCEと略記)グループであり,FPL %までの成人無保障者であり,参加す る郡政府はそのすべてを適格としなければならない。もうひとつはHealth Care Coverage Initiative(以下, HCCI)グループで あ り,FPL %を 上 回 る成人無保障者であるが,FPL %を限度として所得要件の上限を郡政府が 裁量的に設定できる。なお, 年ウェイバーのLIHPの前身である ウェイバーによって,上述の先行 郡で実施されていた医療扶助の適格者拡 大が HCCIプログラムであったので, ウェイバーによる適格者区 分については HCCIグループとすることで混同を回避したい。

第 に,LIHPの適格グループの中でMCEグループは, 年のACA

「メディケイド拡大」施行時にMedi-Calに移行することが予定され,その移行 時には適格審査が省略される。

第 に,MCE登録者への給付内容は, 年からのACAの「メディケイ ド拡大」で予定される内容とほとんど同じである(ただし予防サービスや慢性 病対策等は除外される)。 Bridgeウェイバーの目的が「メディケイド拡 大」への円滑な移行の準備であったことから,一定の統一化への方向性が盛り 込まれたといえよう。

( ) Harbage and King , p. . なお,郡政府は,救急医療の連邦基準(限定的ではあ

るが精神医療も含む)や,医療サービスの地域的及び時間的な利用可能性の基準(初期 診療の利用可能性( 分以内あるいは マイル以内),緊急初期診療予約( 時間以 内),特殊診療( 日以内),通訳等の要件)を満たすことも求められ,これらの要件を 満たせない場合には連邦補助金が削減されるという規定もあった(Harbage and King

, pp. − )。

( ) Harbage and King , p. . なお, HCCIグループは公設医療保険市場で

の民間医療保険購入に移行することが予定された。また 年 月時点で, 千人の 成人の医療困窮者がLIHPに登録されており,その %が上記の先行 郡に居住して いた。また,LIHP登録者の %がFPL %までのMCEグループであった(Harbage and King , pp. − )。

( ) Harbage and King , p. .

(20)

すなわち, 年ウェイバーが 年ウェイバーの準備となり, ウェイバーが 年メディケイド拡大の準備になっているのだが,逆からい えば,その 年ウェイバー及び 年ウェイバーを通してカリフォルニア 州政府および主力の郡政府が推進してきたMedi-Cal改革の流れの上に,

年のACAの「メディケイド拡大」が実施されるような形で調整が行われたと みることもできる。この点については,後に考察したい。

図表 で 年 月時点のLIHPの実施状況をみよう。後出の図表 で確 認できるように,Los Angeles郡やSan Diego郡を中心とする州内南部の都市 地域と,San Francisco郡を核とする州内中部のBay Areaの都市地域で実施さ れており,上述の 年ウェイバーの先行 郡が中心となっている。先行 郡では,既に 年ウェイバーの下で医療供給者ネットワークの整備が進 んでいたが,それ以外の郡では,初期医療と精神医療の連携などが ウェイバーの下で進められた。

例えば,Los Angeles郡では,精神医療ホーム等で精神医療専門家が初期医療

に従事する状態を改善するために,精神医療専門家と初期医療専門家を同じ場 所に揃える形の再編を進めており,同様の再編が,Alameda郡やContra Costa 郡やSan Diego郡で進められている。

( ) 高齢者及び障害者のマネジドケア方式への移行の義務化も,ACAの「メディケイド 拡大」への準備として重要な意味を持っていた。すでに義務化していた郡もあったが,

それまでFFS方式とマネジドケア方式との選択が可能であった郡においてもマネジドケ ア方式加入の義務化が進められた。 Bridge報告は,Bridgeウェイバーによる高 齢者及び障害者のマネジドケア方式への移行の推進について,カリフォルニア州の

Medi-Calにおけるマネジドケア方式への全面的転換を軸とする「メディケイド拡大」の

ための準備としての重要性を指摘している(Harbage and King , p. )。この側面 はメディケイドにおけるロングターム・ケア(介護サービスも含む)にコミュニティ型 マネジドケア方式という大きな問題の本質的な検討に発展するテーマであり,今後の課 題としたい。

( ) Harbage and King , p. .

香川大学経済論叢

(21)

第 節

Medi-Cal

のマネジドケア方式における多様性

第 節で検討した Bridgeウェイバーによる準備を経て, 年に ACAの「メディケイド拡大」を施行した後のカリフォルニア州のMedi-Cal ついて,郡レベルの運営における地域的多様性をみていこう。ここでは,カリ フォルニア州政府の中でMedi-Calを運営するCalifornia Department of Health Care Services(DHCS)の報告書California’s Fee-for-Service Medi-Cal Program Health Care Access Monitoring Plan, September (以下では, DHCS 報告と略記)に依拠して,検討していきたい。

実施年月日

MCEの所得 上限(対FPL の%)

HCCIの所得 上限(対FPL の%)

MCE 登録者数

HCCI

登録者数 登録者合計

Alameda 年 月 日

Contra Costa 年 月 日

Kern 年 月 日

Los Angeles 年 月 日

Orange 年 月 日

Riverside 年 月 日

San Berardino 年 月 日

San Diego 年 月 日

San Francisco 年 月 日

San Mateo 年 月 日

Santa Clara 年 月 日

Santa Cruz 年 月 日

Ventura 年 月 日

その他 年 月 日

実施郡 郡合計

図表 LIHP 実施状況( 年 月 日)

出所:Harbage and King , p. より作成。

備考: 月時点ではHCCIを未実施の郡であるが, 月 日〜 日の間に既に新HCCIに申請済みのFPL %を超える個人が記載されている。

図表 郡別のマネジドケア組織
図表 郡別のマネジドケア方式の型

参照

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