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3 大学等のニーズに関する調査

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(1)

大学マーケティング戦略に基づく、

山梨県の大学における外部環境の研究

塩 沢 一 平 はじめに

大学におけるマーケティングというと、入学試験に向けてのプロモーション戦略と 考える向きも多いかもしれない。新聞の一面を買い取り大々的な広告で注目を集めよ うとしたり、テレビコマーシャルを行う大学もある。どんなにみごとなプロモーショ ンを行ったとしても、マーケットが必要としない学部学科であった場合、そのプロ モーションが徒労に終わる可能性もある。また、受験生が必要としている学部学科で あっても、優秀な受験生を逃している可能性もある。優秀な受験生が志望していたと しても、受験生の家庭の家計収入が学費に比して少ない場合、学費納入が苦しく、進 学をあきらめることが起こっている可能性もある。学費と家計の齟齬によって、優秀 が受験生を多く逃しているかもしれないのである。

共愛学園前橋国際大学では、このことを鑑み、奨学金制度を充実させ、英語の実力 がある学生の獲得に成功している。この大学は、短大を1999年に四大に改組後、偏差 値は30代と低迷し、翌年には早くも定員割れを起こしていた。しかし英語に実力があ る学生への奨学金の導入により、偏差値を10ポイント以上アップさせ、定員も確保し た。優秀な学生の確保は、真摯に勉強する大学の雰囲気を作り出すことにも成功して いる。その結果、客室乗務員を中心とする出口としての確実な就職状況も作り出して いる。マーケットの家計に注目して、優秀な学生を獲得した好例といえよう(1)

本論文では、山梨県の大学を取り巻く外部環境を、まず、上のように受験生に大き な影響を与えることが考えられる家計状況から分析を行う。次に、山梨県の、現在の 高校生が大学に対してどのようなニーズをもっているかを、アンケート調査から分析 していくこととする。

大学受験世帯の家計調査

まず、大学を受験する子どもを持つ年齢層の家計と教育に関する動向を見てみよ う。総務省の家計調査年報を用い、大学進学を考える生徒の親層に関する分析を経年 的に行った。2人以上の標準世帯で、世帯主の年齢が45〜49歳の家庭を選んだ。これ は、大学進学を考える家庭の調査として、矢野眞知『高等教育の経済分析と政策』

−103−

(2)

(1996)でも用いられている年齢層である。この調査は全国と県庁所在地との調査が ある。今回は、その両方(全国・甲府市)について、平成16年(2006)から24年(2012)

までの変化を追った(2)

まず、全国から見てみよう。グラフ1、2のように、経常収入は、平成20年ごろま でほぼ横ばいとなっており、以後急激に下降している。一方消費支出は、一貫して下 降しており、平成24年までの8年間で約6万円減少している。

授業料や教科書代などの教育費に加え、仕送りや定期代を含めた教育関係費を見て みると、グラフ3のように、既に、平成18年頃をピークに減少している。平成24年は、

平成18年に比べて、月1万5千円減少している。平成23年の一時的な上昇は、東日本 大震災の影響と考えられる。新たな制服や学習用品の購入の必要性などや被災地支援 のために学習関連用品を購入している可能性が考えられる。消費支出に占める教育関 係費の割合を見てみると、グラフ4のように、教育関係費は、実金額だけでなく、割 合としても平成18年をピークに減少傾向を示してはいる。しかし15%ほどを保ってい る。実は平成6年ごろからこの割合は15%を越えており(15.4%)(3)、減少を最小限 に食い止めようとしている姿が現れていると考えられる。

家計調査は、全国レベルだけでなく県庁所在地や川崎市などの大都市での調査も行 われている。山梨県の様子を甲府市から探ることとしよう。山梨県の経常収入は、グ ラフ5のように、平成18年をピークに減少傾向にある。平成18年から24年にかけて月 額にして、約10万円減少したことになる。年間に換算すると約120万円となり、大学

グラフ1 経常収入(全国) グラフ2 消費支出(全国)

グラフ3 教育関係費(全国) グラフ4 消費支出に占める教育関係費の割 合(全国)

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(3)

の年間学費に相当する分が減少したことになる。消費支出は、一貫して減少していた 全国の様子とは違い、グラフ6のように、経常収入と対応したトレースを描いている。

教育関係費は、グラフ7のように経常収入に2年ほど遅れた平成20年ごろに山を持 ち、経常収入と同じようなカーブを描いている。平成23年の落ち込みは、東日本大震 災の影響が、当年度に強く出てていると考えられる。例えば、県内企業の業況判断

D. I.は、平成22年に比べて製造業・非製造業とも20ポイント減少しており(4)、企業

倒産の負債総額も、平成23年3月は、24億11百万円(5)で、同月翌年に比べて32%も多 くなっている。

教育関係費とその占める割合は、全国では、経常収入と同じカーブを描きながら増 減している。一方山梨県は、経常収入のピークが18年であるにも関わらず、教育費や 消費支出に占める教育関係費の割合も、2年後にピークとなっている。以後、持ちこ たえられなくなり減少傾向とはなるが、収入がピークを過ぎた中でも、山梨県の保護 者は教育費を維持・向上させようと努力している。「がんばる山梨」の様子がみてと れる。

「がんばる山梨」の姿は、大学進学率からも読み取れる。24年の経常収入は、全国 55.6万円に対して山梨県が45.7万円となっており、約10万円全国よりも少ない。しか し、25年3月の大学進学率は、全国が53.2%であるのに対して、山梨県は57.4%と なっており、全国9位となっている。関東圏の埼玉県の56.5%や千葉県の53.8%より も高く、隣県長野の47.8%よりも、10ポイント近くも高くなっている。大学進学率

グラフ5 経常収入(山梨) グラフ6 消費支出(山梨)

グラフ7 教育関係費(山梨) グラフ8 消費支出に占める教育関係費の割 合(山梨)

−105−

(4)

は、全国規模で平成23年の54.4%を最高に下降傾向に あ る。山 梨 県 も 平 成23年 の 57.9%を最高に、24年は56.7%と1.2ポイント下がっていた。雇用情勢も厳しく、有 効求人倍率も24年6月に0.70となっていたものが毎月のように漸減し、12月には0.61 まで減少していた。そんな中、子どもたちは大学入学を目指し、進学率は25年3月に は、上記のように57.4%にまで、0.7ポイント上昇しているのである。苦しい中で、

進学をあきらめない「がんばる山梨」の姿がここにも表れている。

大学等のニーズに関する調査

「2」では、大学を受験する子どもを持つ親の家計と教育に関する動向を、全国と 山梨県について分析した。「3」では、実際に受験を考える山梨県内の高校生につい て、その考えを細かく調査したものの分析を行うこととする。高校生の進学に関する 考えとして非常に参考になる大規模な調査が、平成11年に山梨県で行われている。

「大学等のニーズに関する調査」で、山梨県高等教育機関連絡協議会(現大学コンソー シアム山梨)による調査である。県内高校2年生、男女250名ずつの計500名に詳細な 調査をおこなっている。その内訳は、県立普通科5校(甲府第一、甲府西、韮崎、市川、

塩山)、専門教育3校(富士河口湖・英数、甲府南・理数、桂・英語)、総合科1校(甲府城 西)、私立1校(駿台甲府・普通)となっている。この調査は、①県内大学等に関する 認識度、②大学等の情報入手経路、③希望入学試験方法、④最重視入学者選抜方法、

⑤希望進学先、⑥希望進学先所在地、⑦大学を選ぶ基準、⑧進学したい分野、など多 岐にわたった詳細な調査であった。非常に参考になる項目と考えられる。そこで、15 年弱経過した25年2月に、論文筆者も全く同じ内容の調査を行った。

山梨県内の高校2年生、約250名に調査を行った。11年の調査の約半分の人数に相 当する。256人から回答を得た。内訳は、県立普通科2校(146名)、私立1校(111名)。 男子111名、女子138名、不明7名となっている。調査内容の詳細は、論文末に資料と して示したものである。今回の調査結果から、また、前回11年の調査との比較から、

山梨の高校生が考える、大学のニーズに関する考えの分析をおこなった。

3−1 県内大学等に関する認識度

まず、①県内大学等に関する認知度から見てみよう。前回11年の調査が棒グラフの 下、今回の調査が上となる(以下同じ)。グラフの項目は、下にいくほど大学を認知・

理解しているということになる(不明を除く)。調査結果から今回は、4つの大学を取 り上げることとする。

グラフ9の山梨大学は、前回に比べて、「学部学科程度は知っている」生徒が17.3 ポイント減少し(44.1%)、その分「名前だけ知っている」に移っていることがわかる

−106−

(5)

(33.9%→46.9%)。グラフ10の山梨県立大学は、「名前だけ知っている」が6割以上 であるが、「学部学科程度は知っている」が倍増して、26.2%まで上がっている。

グラフ11の山梨学院大学は、「学部学科程度は知っている」が最も多く、46.9%。

前回は、名前だけが4分の3(75.9%)を占めていたのに対して劇的な変化を見せて いる。山梨英和大学は、ほとんど変化しておらず、「名前だけ知っている」が8割近 くで(79.3%)、山梨学院の前回と同様の認知度となっている(グラフ12)。

今回調査では、私立高校の生徒が110名と比率が高いため、このバイアスが掛かっ ている可能性を考慮して、公立だけの結果も見てみた。グラフ13のように、山梨大学 では、ほとんど変化が無かった。公立・私立とも認知度は変わらない。

山梨県立大学も似たような傾向を示しているが、公立だけの場合、「学部学科程度 までは知っている」が6ポイント増えており(32.2%)、認知度が少し高いことがわか る(グラフ14)。

これに対して、山梨学院大学は、大きく傾向が異なる(グラフ15)。「名前だけ知っ ている」が10ポイント多く(53.4%)、その分「学部学科程度は知っている」が8ポイ ント少ない(38.4%)。私立バイアスが掛かっていることが分かる。先の山梨大学や県 立大学と認知度は、似たような傾向を示している。認知度は、山梨大学と県立大学の 中間となっていることがわかる。ただ平成11年度と比べると、「名前だけ知ってい る」が22ポイント減少し、「学部学科程度までは知っている」が17ポイント増加して

グラフ9 県内大学等に関する認識度(山梨 大学)(SA)n=256

グラフ10 県内大学等に関する認識度(山梨 県立大学)(SA)n=256

グラフ11 県内大学等に関する認識度(山梨 学院大学)(SA)n=256

グラフ12 県内大学等に関する認識度(山梨 英和大学)(SA)n=256

−107−

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いる。さらに「教育内容まで知っている」も4.3ポイント上昇しており、劇的に認知 度が上がっていることがわかる。

山梨学院大学に対して、山梨英和大学は、グラフ16のように、前回と比べて、公立 だけを取り出しても、認知度にほとんど変化がないことがわかる。

3−2 大学等の情報入手経路

次に②大学等の情報入手経路について見てみよう(グラフ17)。インターネットから の入手が7割を越えており(70.7%)、11年と比較すると約62ポイント増えている。パ ン フ レ ッ ト か ら の 入 手 は75%

で、前回の2倍近くに増えてい る。対して大学情報誌や進路指 導からの入手は約20ポイントも 減少している(58%→38.3%)。 東洋大学では、2013年から紙パ ンフレットを廃止することとし ているが、この結果からは、山 梨県内に関しては、まだまだ紙 ベースでの需要は大きいと考え られる。

グラフ13 県内大学等に関する認識度 公立 高校のみ(山梨大学)

グラフ14 県内大学等に関する認識度 公立 高校のみ(山梨県立大学)

グラフ15 県内大学等に関する認識度 公立 高校のみ(山梨学院大学)

グラフ16 県内大学等に関する認識度 公立 高校のみ(山梨英和大学)

グラフ17 大学等の情報入手経路

−108−

(7)

3−3 希望入学試験・最重要選抜法 続いて、③希望入学試験方法と④最 重視入学者選抜方法について見てみよ う。

グラフ18のように、③は、平成11年 では「学力検査を主体とした一般入 試」が5割近くを占めていた(49%)。 しかし、今回の調査では、約20ポイン ト減少している。対して、「調査書・

面接等を主体とした推薦 入 試」は、

32%から20ポイント以上上昇して、過 半数の55.1%となっている。こちらの 入試方法を望む形にシフトしているこ とがわかる。

私立を除いてみた公立高校だけを見 ても傾向は、変わらない。グラフには 示さないが、私立よりもさらに「調査 書・面接等を主体とした推薦入試」を

望んでおり、63.0%となっている。推薦試験までで進学先を決めてしまいたいと考え ている生徒が3分の2近くに達しているのである。AO入試は、あまり支持を得られ ていないこともわかる。

④の選抜方法は、学力が4%ほど上昇して、29.3%と3割弱となっている。公立高 校だけを取り出しても似たような傾向となっており、平成11年と比率もほとんど変 わっていない(学力=24.7%、人物=57.5%、特技=4.1%、諸活動=11%、その他=0.7%、

不明=2.1%)。学力を重視した選抜方法は、上のように4分の1か、それ以上の生徒 が望んでいることもわかる。大学の基礎学力の向上には、入り口として、この25%の 生徒をまず獲得する手段を考える必要があると考えられる。

3−4 希望進学先・希望進学先所在地

次に、⑤希望進学先と⑥希望進学先の所在地を見てみよう。グラフ20のように、平 成11年には68%と圧倒的に多かった国立志望は、今回の調査では、40ポイント以上減 少している(22.3%)。公立大学志望者は、ほとんど変化が見られない。対して私立大 学を第一志望としている生徒は、10.0%から30ポイント近く増加していることが分か る(39.5%)。専門学校も4.1%から14.1%と10ポイント増加しており、あなどれない

グラフ18 大学等への希望入学試験方法

グラフ19 大学等へ希望する最重視入学者選抜 方法

−109−

(8)

数字である。

グラフには示さないが、公立高校だ けを取り出した場合も国立離れの傾向 は 顕 著 で、志 望 者 は17.1%に 過 ぎ な い。公立大学志望が15.8%、私立大学 志望者は32.9%となっており、国立大 学の2倍近く私立大学志望がある。専 門 学 校 を 志 望 し て い る 生 徒 も2割

(19.9%)となっている。専門学校も 競合校と考えられる私立大学の場合、

専門学校に対する自らの大学の強み・

弱みもしっかり確認して対処する必要 がある。例えば、専門学校を志望して いる生徒に対して、その専門学校を卒 業したときに、大学卒業と収入に差が あるのかないのか、アルバイトと比べ て給与にどれくらいの差があるのか、

さらに将来大卒を採用条件にしている 企業に就職する方法が絶たれる可能性 など、さまざまな情報を得て、比較し て示すことも大切となるだろう。

⑥希望進学先の所在地は、平成11年 に比べて県内が10ポイント以上増え、43.4%となっている。東京都の志望は、5ポイ ントほど減少して31.3%となっている。グラフには示さないが、公立高校のみの場 合、県 内 傾 向 が さ ら に 高 ま り、5割 を 越 え た54.1%と な っ て い る(東 京 都 は、

23.3%)。今までのさまざまな調査では、7割以上が県外の大学を志望しているとい われてきたが、今回の高校2年生の調査からは、地元志向が高まっていると考えられ る。また、近時のNHKによる調査でも、大学の所在地と同じ都道府県から進学して くる生徒が10年前と比べて増加していると答えた大学は、61%に上っており(減少し ていると答えた大学は27%)、同様の傾向を示している(6)。南関東への志望者は、平成 11年よりも2ポイントほど上昇している(19%)。神奈川も進学先として考える生徒

が若干増えているものと考えられ、少し注意する必要があろう。

3−5 大学を選ぶ基準

⑦の大学を選ぶ基準を見てみよう(グラフ22)重視している内容は、「就職に有利な グラフ20 希望進学先(1位)

グラフ21 希望進学先の所在地(1位)

−110−

(9)

こと」「学部・学科内容が充実 していること」が8割を越えて い る(81.3%、80.5%)。「資 格 を取得できること」も伸びてい る(65.0%→69.5%)。伸 び が 一 番大きいのは、「コミュニケー ション力やマナーを養成できる こ と」で13.6ポ イ ン ト。「自 宅 から通学できること」で、12.5 ポイント上昇。ここにも地元志 向が表れている。次に「教育内 容や方法に特 色 が あ る こ と」

で、11ポ イ ン ト 近 く 伸 び て い る。

大学は、社会人に必要な汎用

的な力と、個性をもった特色ある教育を行うことが重要視されていることとなる。

3−6 進学したい分野

最後に⑧の進学したい分野を見てみよう。この項目は、複数回答が可能で、3つま で選べることとなっている。平成11年と比べて、どの分野も選択が極端に少なくなっ ていることがわかる(グラフ23)。生徒が、高校2年生の段階で進学先をかなり絞って 考えていることが、はっきりわかる。選択が半分以下になっている分野も見られる。

その中で、法学・経済学分野が増加していることがわかる。私立高校のバイアスを考 えて公立高校のみで比較しみると、生活科学が前回よりも増加していることがわかる

(グラフ24)。選択が高い分野は、県内に該当する学部学科がある場合が多い。例え ば、平成11年に36.9%が志望していた教育学部は、山梨大学に設置されている学部で ある。また、保健衛生分野に志望が多いのは、平成11年当時は山梨県立看護大学、現 在は山梨県立大学看護学部が想定される学部学科となる。生活科学の場合、山梨学院 大学に平成22年に健康栄養学部管理栄養学科が設置されたため、志望者が増えた可能 性がある。

また、経済学分野は、公立高校のみの比較の場合、13%から11%に減少している。

しかし、減少の幅は2ポイントと非常に少ない。他の分野が大きな減少幅を見せてい る中でのこの減少幅は、経済学分野がある程度進学分野として支持されていることを 物語っていると考えられるだろう。対して、私立を含めると増加していた法学分野

(12.6%→12.9%)は、公立高校のみに限定すると、大きく減少しており、他の分野と グラフ22 大学等を選ぶ基準

−111−

(10)

同様の傾向を示していることが分かる。

むすび

以上のように、山梨県の大学をとりまく外部環境の分析を、家計と生徒の調査から 行ってきた。そこからは、山梨県の大学へのさまざまな示唆が表れていると考えられ る。

家計に関しては、全国規模では、消費支出が一貫して減る中で、教育費の割合は 減ってはいるものの15%を維持していた。一方、山梨県の経常収入は、平成18年を ピークに減少傾向にあり、24年までに、年換算120万円減少している。そんな中でも、

大学進学率は高い。24年に下がった進学率も雇用情勢が悪い中、持ち直している。「が んばる山梨」の家計が見てとれる。しかしこのまま経常収入が減少していった場合、

「がんば」り切れずに、進学からおりる家庭が増える可能性がる。学力的には進学が 可能な生徒がいても、大学4年間の学費を捻出できない場合がでてくる可能性があ る。この場合、私立大学に競合する、修了年限が短い専門学校を選択する生徒が増え る可能性がある。また、そもそも平成18年から減少した分の120万円分は、有利子奨 学金や教育ローン、学生のアルバイトで補填されている可能性もある。アルバイトの 増加は、学生の学習環境を悪化させることとなり、有利子奨学金や教育ローンは、卒 業後の生活水準を下げることとなる。いずれにせよ大学としても、奨学金充実やアル グラフ23 進学したい分野 グラフ24 進学したい分野 公立高校のみ

−112−

(11)

バイトの代わりになり且つ教育効果がある、キャンパス・ワークの創設・拡充が望ま れよう。

経常収支の減少は、生徒の志望傾向にも影響を与えている可能性もある。大学を選 ぶ基準のトップは、グラフ22で見たように、「就職に有利なこと」で81.3%であった。

入学前から4年後に着実に収入を得ることを見据えて大学を選択しようとしている。

また、山梨県内の大学を第一志望とする生徒は、グラフ21のように、平成11年に比べ て10ポイント以上増え、43.4%となっている。東京私大教連の調べによると、自宅外 通学者への仕送りの月平均は、8万9500円であり、税込年収に占める「入学の年にか かる費用」の割合は、年収の3分の1を越えるという(34.2%)(7)。平成24年度まで に減少した経常収入は、仕送り額にも匹敵する額であり、家計収入を考慮して、自宅 外通学をあきらめている生徒も、県内志望者の増加に関連している可能性がある。た だ、グラフ22「大学等を選ぶ基準」の「生活費など経済的な負担が少ないこと」は、

46.5%から43.4%と微減している。グラフ23のように、経済学や生活科学といった、

学びたい分野が、山梨県内の大学に設置・整備されたために、県外に出る必要がなく なったことも考えられる。より細かな調査が必要と考えられる。

グラフ22からは、他の情報も読み取れる可能性がある。「3−5」で触れなかった 増加した項目を見てみると、「技術・技能を習得できること」が、5.8ポイント増加

(45.4→51.2)している。先述した高い割合を示していた「資格を取得できること」

(69.5%)とも考え合わせると、実学系への関心が高まっていることがわかる。一方

「一般的教養を習得できること」も7ポイント増加(26.2→33.2)しており、教養系 への関心も高まっている。前述した「コミュニケーション力やマナーを養成できるこ と」の増加13.6ポイント(17.7→31.3)とを合わせて考えると、大学への期待は、専 門的な知識を高めるだけでなく、教養人養成への期待も高まっていることがわかる。

新卒に即戦力となる専門知識が求められていないということは、既に2008年の中教審 答申にも以下のように示されている。

大学が学生に身に付けさせようとする能力と、企業が大学卒業生に期待する能 力が乖離しているとの指摘もなされている。近年、「企業は即戦力を望んでい る」という言説が広がり、学生の資格取得などの就職対策に精力を傾ける大学が 目立っている。しかしながら、実際に企業の多くが望んでいることは、むしろ汎 用性のある基礎的な能力であり、就職後直ちに業務の役に立つような即戦力は、

主として中途採用者に対する需要であると言われる(8)

ジェネリックスキルと教養を身につける(例えば、リベラルアーツを学ぶ)学部・学 科も一定の支持を得られる可能性がある。このあたりも、より詳細な調査分析が必要

−113−

(12)

と考える。

2002年から、実用英語検定2級取得者には、4年間学費を免除する制度を導入し(現在 では、一年間のみ)、現在は、「資格特待制度」として情報処理技術者試験合格者や日商 簿記検定2級合格者も対象としている。現在、前橋国際大学の偏差値は49(代々木ゼミ ナール)となっている。

平成15年(2005)以前の教育費が家計に及ぼす影響については、まとめたことがある

(「短期大学のマーケティング戦略序説―山梨県の短期大学の外部環境分析―」『桜美林 大学国際学論集Magis』第10号 2005/12)。

前掲

業況判断D. I.は、景気について「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業

の割合を引いた数値を差す。数値は、日本銀行甲府支店発表の月例業況判断D. I.をもと にした。

東京商工リサーチ甲府支店調べ。

NHKが全国の主な大学201校に対して行ったアンケート。168校が回答。2014年2月1日 放送。

『私立大学新入生の家計負担調査 2012年度』(2013年4月)。

中教審『学士課程教育の構築に向けて(答申)』(2008年12月)。

別掲 『大学等へのニーズに関するアンケート調査』

※本論文は、平成24年度山梨学院大学特別研究助成金の研究成果に基づくものである。研究 にあたり、アンケート調査に協力下さった高校生のみなさん、担任の先生方、調査を許可 して下さった校長先生に、厚く御礼申し上げる。

−114−

(13)

大学等へのニーズに関するアンケート調査

平成25年2月

このアンケートは、平成11年10月に、山梨県高等教育機関連絡協議会(現大学コン ソーシアム山梨)によって行われた「大学等へのニーズに関するアンケート調査」を 簡略化したものです。現在の高校生が大学や短期大学に求める内容を把握するため、

皆様のご意見等をお伺いするものです。また、当時の調査から10年以上を経て、高校 生の大学等へのニーズがどのように変化しているかを把握するためのアンケートで す。

本アンケート調査の内容は、秘密を厳守し、個別の調査結果を公表したり、他の目 的に利用することは一切ございませんので、ご多用のところ誠に恐れ入りますが、ご 協力くださいますよう、よろしくお願いいたします。

なお、この調査は、山梨学院大学特別研究助成金を得て、山梨学院大学経営情報学 部教授塩沢一平が、個人研究として行うものです。

《あなた自身について、お伺いします。》

問1 あなたの性別について、当てはまるものを1つ選んで番号に○をつけて下さい。

1 男 2 女

《大学等について、お伺いします。》

※大学等とは、大学、短期大学、専修・各種学校のことをいいます。

問2 あなたは県内の大学及び短期大学について、どの程度御存じですか。aからl のそれぞれの項目について、当てはまるものを1つ選んで○をつけて下さい。

全く知らない 名前だけ 知っている

学部学科程度は 知っている

教育内容まで 知っている

a 山梨大学 1 2 3 4

b 山梨県立大学 1 2 3 4

c 都留文科大学 1 2 3 4

d 山梨学院大学 1 2 3 4

e 帝京科学大学 1 2 3 4

−115−

(14)

問3 あなたは大学等の情報をどのようにして入手していますか。当てはまるものす べてを選んで番号に○をつけて下さい。

1 大学情報誌 2 パンフレット 3 インターネット 4 新聞・テレビ 5 大学ガイダンス 6 高校の進路指導 7 塾・家庭教師等からの情報 8 近親者からの情報

9 友人からの情報 10 その他( )

問4 あなたは大学等への入学試験方法として、どのような方法を希望しますか。当 てはまるものを1つ選んで番号に○をつけて下さい。

1 学力検査を主体とした一般入試 2 調査書・面接等を主体とした推薦入試

3 面接等をもとに個性や意欲など総合的に評価するアドミッションオフィス

(AO)入試

4 その他( )

問5 あなたは大学等への入学選抜方法について、何を重視してもらいたいとお考え でしょうか。当てはまるものを1つ選んで番号に○をつけて下さい。

1 学力 2 人物 3 特技

4 諸活動 5 その他( )

《進学について、お伺いします。》

問6 あなたが進学を希望する先はどこですか。当てはまるものを上位3つまで選ん で下の欄に番号を記入して下さい。また、その所在地も同様に記入して下さい。

f 身延山大学 1 2 3 4

g 山梨英和大学 1 2 3 4

h 健康科学大学 1 2 3 4

i 放送大学 1 2 3 4

j 大月短期大学 1 2 3 4

k 山梨学院短期大学 1 2 3 4

l 帝京学園短期大学 1 2 3 4

−116−

(15)

記入事項 1 位 2 位 3 位 希 望 先

所 在 地

〈選択項目〉

希望先

1 国立大学 2 公立大学 3 私立大学

4 国立短期大学 5 公立短期大学 6 私立短期大学

7 専修・各種学校 8 その他( )

所在地

1 山梨県 2 東京都

3 北海道・東北 4 北関東(群馬、栃木、茨城)

5 南関東(埼玉、千葉、神奈川) 6 信越(長野、新潟)

7 東海(静岡、愛知、岐阜、三重) 8 北陸(富山、石川、福井)

9 近畿(滋賀、京都、奈良、大阪、兵庫、和歌山)

10 中国・四国・九州・沖縄 11 海外

問7 あなたが大学等を選ぶ基準について、当てはまるものを全て選んで番号に○を

つけて下さい。 (複数回答可)

教育内容等に関 すること

1 学部・学科内容が充実していること 2 教育内容や方法に特色があること 3 教育レベルが高いこと

4 教授陣が優れていること

経歴の蓄積に関 すること

5 資格を取得できること 6 技術・技能を習得できること 7 一般的教養を修得できること 8 専門知識を修得できること

9 コミュニケーション力やマナーを養成できること 大学のイメージ

等に関すること

10 伝統があること 11 知名度が高いこと 12 就職に有利なこと

大学の環境等に 関すること

13 自宅から通学できること 14 親元を離れて生活ができること 15 自然環境がよいこと

16 大都市にあること 17 施設が充実していること 18 学費が安いこと

19 生活費など経済的な負担が少ないこと

その他

20 近親者のすすめ 21 学校の先生のすすめ 22 自分の学力に合っていること

23 その他( )

−117−

(16)

1 人文科学 (文、人文、比較文化、現代文化、現代社会、日本文化、学芸、文教育、文 芸、法文、文家政、哲、宗教など)

2 外国語学 (外国語、国際、国際言語文化など)

3 社会学 (社会、社会福祉、人文社会、人間社会、社会情報、現代社会、産業社会など)

4 法 学 (法、国際政治、国際政経、行政、行政社会、総合政策、政策科学、法経など)

5 経済学 (経済、政治経済、経営、商、国際経済、経済情報、経営情報、経営科学、

国際経営、国際商、商業経済、流通科学など)

6 教育学 (教育、学校教育、保育など)

7 国際学 (国際関係、国際、国際文化など)

8 総合科学 (教養、人間、人間科学、人間関係、人間文化、人間環境、総合人間、総合 科学、文理、情報、総合情報、情報科学、情報文化など)

9 生活科学 (家政、生活、生活環境、人間生活、生活科学、栄養、食品栄養など)

10 芸 術 (芸術、芸術工、工芸、造形、デザイン、美術、音楽など)

11 理 学 (理)

12 工 学 (工、理工、基礎工、生産工、情報工、環境情報、環境理工、環境、開発工、

システム工、生物工、芸術工、工芸、繊維など)

13 農・水産学(農、水産、生物生産、生物資源、園芸、酪農、農獣医、海洋など)

14 医 学 (医、歯)

15 薬 学 (薬)

16 保健衛生 (保健、保健福祉、保健衛生、保健科学、保健医療、医療衛生、医療福祉、

衛生、看護、看護福祉、環境保健、体育、スポーツ健康、健康科学など)

17 その他 ( )

問8 あなたが進学したいと考えている分野について、当てはまるものを3つ以内で

選んで番号に○をつけて下さい。 (複数回答可)

《大学等への期待について、お伺いします。》

問9 県内の大学等に望むことがありましたら、自由にご記入下さい。

ご協力ありがとうございました。

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