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てんかん研究の現況と問題点

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Academic year: 2021

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金沢大学十全医学会i雑誌 第77巻 第2号 191−192 (1968)

191

一㌧一ミ.一」ミ7鳥レーミir一≒レー鳥r一}禽r、 r旨r 4ミ7一ミr一ミレ」亀r飛レ今r一ミ7 r」r鳥r角レーちし要レーミレ・鳥r・〜莞r令r〜一驕レーミ」・網レ〜一ミ7莞r」鴇」腎P一ミr一ミレ4㌧一

教授就任特別講演要旨

てんかん研究の現況と問題点

一実験てんかんの自家知見を中心として一

金沢大学医学部神経精神医学講座

        大  塚  良

b一毛r一も朔旨r」亀げ亀亀亀一電レ」ミトーミ幽「莞r舟Lr一ミr一㌧4雪}一ミレ、一㌧4㌧、、哨r一電レ」 r』・一ミP一ミ階 曳」ゴー亀山レ 画≒r一遍r馬「」r旨傷亀r鴨レー㌣

 神経精神医学の領域において,精神分裂病ととも に,最も重要な疾患であるてんかんは,すでに長い研 究の歴史を持ちながら,なおその本態が明らかにされ ていないのみか,国際的な疾患の概念規定さえなし得 ない現状にある.このことがてんかん研究の困難iさを 最も象徴的に表現しているように思われる.

 ζζで,てんかん研究の歴史について簡単に触れて おきたい.11世紀の初頭Avicenna 1)が epilepsy という名称を用いてからすでに10世紀に近い年月を経 ているが,科学の名にぶさわしいてんかん研究がはじ まったのは,前世紀の末端である.初期のてんかん研 究の主流をなしたのは形態学であり,すでに前世紀の 終一りには,てんかん脳に著明な形態学的変化のある群 とほとんど変化のみられない群が見出され,前者を症 候性てんかんsy1ηptomatische Epilepsie,後者を真 性てんかんgenuine oder kriptogene Epilepsie

:と呼んだ.しかしその後,真性てんかんと呼ばれたも のの脳にも,詳細に観察すれば,脳病変が存在すると 主張する研究者が現われ,真性てんかんに対する従来 の学説は訂正され,真性てんかんを慢性進行性脳疾患 とする考えが本世紀初頭の主流をなした,

,しかし,ζの考えも定説化するまでには至らず,

Foerster 2)のとなえた痙奪準備性Krampfbere圭レ schaftなど,脳の機能的障碍説に共鳴する温々が多 くなり,てんかんへの形態学的接近には限界のあるこ とが次第に明らかとなった.

 てんかんの形態学的研究で今日結論的にいえること は,てんかん脳には痙蛮の結果起った変化,古い搬痕 あるいは発育異常に由来する変化,ならびに合併症ま たは死戦期のものと考えられる3種類の病変が混在す るが,真にてんかんの病因と考えられる疾病特異的な 変化は存在しないということである.

 つぎにてんかんの研究の主流をなしたのは神経生理 学的方向である.かつてJackson(1873)3)が んかんとは,機会的,急激,過剰,急速かつ局所的な

灰白質の発射の呼称である と定義した,てんかん に対する推測を今日では電気生理学的方法によって実

証している.

 近年のてんかんの臨床ならびに研究においで,脳波 記録は欠くことのできない極めて有力な手段であり,

最近の約30年間に累積されたてんがんの脳波知見は膨 大なものであるとともに,脳波皐録なしにてんかんを 論ずることはできなくなっている.

 しかしr方,てんかん患者に極めて高い頻度でみら れる異常波も,てんかん患者のみに特有であるとはい い切れない.このことは,今日一般にてんかん性異常 波と呼ばれているものも,畢直するところ,脳のある 興奮状態を表現する指標にすぎず,疾患としてのてん かんの本質とどの程度の相関をもつかは,俄かには決 めがたい.

 てんかん性異常波の定義も区々であるが,今日最も 広く用いられている表現は,Lennox 4)の提唱した 発作性脳律動異常paroxy6mal cerebral dysrhy・

thmiaという述語である. しかしごの述語の意味も 極めて漠然としており,棘波,鋭波,棘徐波結合,乱 波一高波結合,高電位徐波,鋸歯状波など様々な現象 が包括されている.このうちてんかん患者に最もしば しばみられ,かつ最も特徴ある所見は棘波要素であ り,てんかんの大発作をはじめとする各種の発作型に

おいて認められる.

 われわれは家兎の新皮質5)〜13),古皮質14、・15)なら

びに外側膝状体16)を連続電気刺激して,二三の連続 よりなる発作波を誘発し,それらの発作波の発現機制 を神経生理学的に検索して若干の知見を得ている.そ の詳細は末尾に付した自著ならびに協同研究者諸氏の 論文を参考にして頂くことにして,ここではその知見 の一部門項目として簡単に述べておく.

 1.発作波のpatternは,それを発現する組織構 造と密接な関係があるが,連続刺激によって発作波を 発現する過程は,現象学的に極めて類似している.、す

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なわち,刺激の連続に伴って1次反応波が消失し,つ いでこれと性質の異なった2次反応波が出現すること が必要である.後者をわれわれは 発作性反暦応波 convulsoid responseと呼んでいる13).

 2.発作波の形は皮質の層構造により規定され,表 面記録で単純な二相波としてみられる発作波も,皮質 皿〜V層では陰性波似下N.W,と略す)(20−30 msec)後陽性波(以下A. P.と略す)(数10 msec)

ならびに陰性波の上昇相に重畳する陰性棘波(以下 N.S.と略す)(5msec)の3要素から成り立ってい

る13).

 3.この発作波を構成する3要素と単位発射の相関 々係を観察すると,発作波の発現によって発射頻度の 増加するものが極めて多いが,一部には発作波に無関 係に発射するものや,却って発射の抑制されるものも みられる.このうちのexcitatory typeの単位発射 をみると,ほとんどすべてN.W.の相に一致して発射 し,A. P.の相ではほとんど完全に抑制される.また N.S.とは一定の相関を示さず,しかもN. S.は尖 端樹枝状突起の最も密な皿〜V層の間でのみ記録さ

・れる.

 4.発作波の各構成要素に対する薬物の作用機転の 差をみるため}こ,各種convulsantおよび depre・

ssantを局所適用した。このうちstrychnineは陰性 波N.W.の振幅を著しくますが,∫陰性棘波N. S.

ならびに後陽性波A.P.にはほとんど作用せず,

GABAおよびCocainはいずれの要素をも抑制す る.ことにGABAはN. W.の極性を変化させ,

しかもその変化は可逆的である.

 5.単位発射と発作波各要素との相関,薬物の作用 態度などを基礎として,発作波を構成する前記の3要 素は,おのおの陰性波N.W.が興奮性後シナプス電 位EPSPs,後陽性波A. P.が抑制性後シナプス電 位IPSPs,陰性棘波N, S.が尖端樹状突起の集合性 活動電位であろうという推測を下している.

 以上述べたわれわれの実験結果ならびに,文献的知 見をも総合して,実験的発作波は主として興奮性後シ ナプス電位の集合したものであり,これに抑制性後シ ナプス電位ならびに樹状突起の集合電位が参加して発 現していると考えて大過はないようである.しかしこ の背景をなす化学的過程,あるいは前記の発作波を発 現するための神経回路の形態学的証明は未だ得られて いない.

 てんかん研究の現況をみて結論的にいえることは.

疾患としてのてんかんが解決される日があるとすれ ば,それは神経生理,形態学ならびに神経化学の接点

において可能であろうということである.

  協同研究者:

   道下忠蔵原藤卓郎,吉村博任,岸 嘉典,

   小野啓安,中川昌一郎,福井 悟,万丸章三,

   風間興基,福田 孜,岡 一朗,江畑敬介  本要旨の内容は1968年6,月30日,昭和43年度十全同 窓会総会において口演した.

1)秋元波留夫=てんかん学,医学書院,(1964)

より引用.     2):Foerster,0.3Dtsch.

Z,Nervenheilk.,94,15(1926).       3)

、Jackson,」.正し: Selected writings of John Huhlings Jackson.:LondQn,(1931)..    4)

Lennox, W. G.&Cobb, S.:EpilepsyζSau・

nders, Baltimore,(1928).   5)1岸 嘉典:

精神経回,62,1574(1960).    6)Ots腿ka,

R.,Kishi, Y., Yoshimura,正【., Ono, H.,

M:ichischita,、C. and Schimazono, Y.3 Neu・

rologia medico−chirurgica,・2,89(1960).

7)Otsuka, R., K:ishi, Y., Om, H.,Nak:agawa,

S.and.Shimazono, Y.= Proceed. Xth Ann.

Meet. Jap. EEG Soc, and XIVth Ann. Meet.

of Jap. EMG. Soc.:33(1961).     8)

Otsuka, R., Kishi, Y., Ono, H。,:Fukui, Sり Nakagawa, S. and Shimazono, Y.3 Proc.

of the XIIth Ann. Meet. of the Jap. EEG

Soc.55(1963).         9)Otsuka, R.,

Kishi, Y., Fukui, S., Nakagawa, S., M:an・

maru, S. and Fukuta, T.3 Proceed. of the XIIIth Ann. Meet. of the Jap. EEG Soc.1(19

64).   10)大塚良作:てんかん学一臨床・

基礎一365医学書院,(1964).       11)

小野啓安:精神経誌,66,478(1964).

12)Otsuka, R., Fukui, S., Kazama, K., M:a・

nmaru, S., Fukuta, T., Oka,1. and Schima・

zono, Y.3Proceed. of the.XVth Ann. Meet.

of the Jap. EEG Soc.150(1966).     13)

万丸章三3精神経誌,69,682(1967)。

 14)Harafuji, T.3 Folia psych量at. Neurol.

Jap.,13,34(1959).     15)吉村博任=

精神滋雨,63,738(1961).        16)

 M:ichischita, C.: Folia psychiat. Neuro1.

 Jap.,10,84 (1956).

参照

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