北 陸 の 植 物 第 2 0 巻 第 3 号 昭和47年9月
初島住彦*ヌルデアワブキとその近似種について
S.HATusIMA*:〃な伽s"0α0〃んα柳iMAxIM.andltsAlliance
ヌルデアワブキ(MMe/ibs池αo〃hα加iMAxIM.)は南鮮,中国中部,日本(対馬,周防)
に分布する。一方これに似たものにヤンバルアワプキ(MMe"os加αγ加沈伽MAxIM.)が あ'),これは琉球列島(奄美大島〜与那国島),台湾に分布する。またこのヤンバルアワ ブキに近いものに伊豆七島のサクノキ(〃な"Cs加α"c"加e""NAKAI)と比島産の M庖肋s汎α "α"""sELMERがある。以下これら四種の関係について述べてみたい。
小泉博士は1943年ヤンバルアワブキはヌルデアワブキの単なる島喚型で,葉がやや厚く 毛がなくなった一種の生態型に過ぎないとして両者を合併した。しかし筆者は両者をよく 比較検討した結果ヌルデアワ.ブキの小葉は殆んど無柄で,小葉の数は果枝葉で2〜5対,
非 果 枝 葉 で 6 〜 9 対 , 葉 質 は 膜 質 〜 洋 紙 質 で 通 常 両 面 に 毛 が あ る ( 中 国 産 の も の に は 無 毛 のものもある由)。しかるにヤンバルアワブキの小葉には(少くとも果枝葉で)2〜10mm 位の柄があl),小葉の数は果枝葉で5〜8対,非果枝葉で6〜12対で多<,葉質は革質で やや厚く,両面とも全く無毛である。両者の間には以上のような区別点の外に一方は亜熱 帯に生じ,一方は温帯〜暖帯産であるちがいもある。しかし花,実には別段差異は認めら れない。従って両者の間には種を分つ程の差はないが少なくとも変種的の差異は#あると思 う。両者はMAxIM.によって1867年同時に発表されたものであるが小泉博士は両者を合併 した際M.O"""/MAxIM.を起用しているので種名としてはご托:を用いなければなら ない。
一方サクノキは1922年中井博士によって別種とし'て発表されたものであるが,小葉は長 さ 5 m m 位 の 小 柄 を 有 し , 両 面 と も 無 毛 で , 殆 ん ど 全 縁 で あ る の で ヌ ル デ ア ワ ブ キ と 区 別 されたがヤンバルアワブキと比較すると殆んど区別はない。
次に比島ルゾン島産のハ4"宛αγ勿雄sELM.であるが筆者の所にELMER16297, 17086の果実の標本があト),これをヤンバルアワプキと比較したところ殆んど区別はない。
筆者は拙著琉球植物誌の中で(36頁)ヤンバルアワブキは中国本土から台湾→琉球に北 上 し た も の で 伊 豆 七 島 の サ ク ノ キ は 日 本 本 土 に 分 布 し て い た ヌ ル デ ア ワ ブ キ が 南 下 し た 型 と し た が , サ ク ノ キ の 小 葉 に 長 い 小 柄 が あ る 点 か ら 考 え こ れ は ヤ ン ノ ; ル ア ワ ブ キ が 更 に 北 進 し た 一 型 と 考 え る べ き で あ る と 訂 正 し た い 。 比 島 産 の も の は 台 湾 が 比 島 と 陸 続 き で あ っ た時代南下したものの残りであろう。
HooKERf.は氏の印度植物誌の中で印度産のM"肋s柳α"""〃な(RoxB.)MAxIM.
がヤンバルアワブキと区別ないことを述べている。これに対しREHDER及びWILsoNは
車琉球大学理工学部生物学教室DepartmentofBiology,DivisionofSciencesand Engineerings,Univer・sityoftheRyukyus
F = ハ ー 0 0 −
Septemberl972TheJournalofGeobotany Vol.XX.No.3
PlantaeWilsonianae2(1914)208でGrayHerbariumにあるMMりs加αγ加加 MAxIM.のtype(OLDHAM85,86)と印度産の"p""α の比較研究の結果両者には 次のような区別があ')明らかな別種であるとしている。
花序は中大で幅と長さはほぼ同長(長さ25cm,幅20cm)で,花序の第1側枝は有稜 で 無 毛 , 小 葉 の 上 面 は 光 沢 あ る 緑 色 , 子 房 に は 密 毛 が あ る 。 … … … M γ 加 加 比
花序は大形で長さは幅より長〈(長さ35cm〜45cm,幅25〜30cm)で,花序の第1 側枝は無稜で円く灰色で少し有毛,小葉は暗緑色,子房は無毛。…・・……・Mp""α〃
またHooKERf・は同じ書中で印度産のMz"脇と城PLANCH.がWILFoRD採集の朝鮮 産のMo〃〃α柳jと区別ないと述べ,HEMsLEYもこれに従っている。しかしREHDER及
Us、WILsoNは両者の間には次のような区別のあることを述べている。
葉の下面はやや無毛,花序の第1側枝及びそれより上方の枝は全く無毛,花は比較的大 きく,小梗は比較的長い。・・………・……・…..…・…・…・・・・………Mo〃〃""i 葉及び花序の枝には鋺色の短毛が密生し,花はやや小さく,小梗は短い。…M;I""b城 筆者の手元にある 0〃〃α加i(南鮮産,済州島島産,周防産)の花枝葉標本では両面 にあらい淡褐色の毛があり,花序の第1側枝はやや無毛であるがそれ以上の枝には褐毛が かなり散生しているからREHDER及びWILsoNがいうように全く無毛ではない。また花の 大 き さ は 花 期 の 初 期 と 終 期 頃 で か な り 異 な る か ら 比 較 は 同 一 時 期 の も の で な い と む ず か し いがハfo〃加加jでは満開直前の蕾で径2.5mm位である。
筆者は印度産の上記2種の標本を見ていないので何ともいえないが,印度産の上記の2 種 は ヌ ル デ ア ワ プ キ や ヤ ン バ ル ア ワ ブ キ に 極 め て 近 い 種 類 で あ る こ と は 間 違 な い よ う で あ
る。REHDER及びWILsoNの比較研究もおそらく少数の印度産の標本にもとずくものと思 われるので今後更に多数の広い範囲の標本の比較が望ましい。
中国産に基いて記載されたAfsi"2"s*NAKAIはHANDEL‑MAzzETT1・やREHDERはヌ ル デ ア ワ ブ キ と 区 別 な い と し て い る 。
Inl943,KoIDzuMIreducedハ姥肋s碗αγ加加ノ血MAxIM.toasynonymofM o屈如郷jMAxIM.,butaccordingtomyexaminationofthetwospeciesthey differasinthefollowinganalyticalkey.
1.Leafletsoffioweringbranchletssessileoralmostsessile,membranaceous, moreorlesspubescentonbothsurfaCes.LeafletsofHoweringbranchlets 2‑5paarswhilethoseofsterilebranchlets6‑9pairs..…..…ハf0z勉加j var.O〃〃α碗i
l.LeafletsofHoweringbranchletswithpetiolules2‑8mmlong,chartaceus orcoriaceus,glabrousonbothsurfacesfromfirst.Leafletsofflowering branchlets5‑8pairswhilethoseofsterilebranchlets6‑12pairs..…・…・・
MHo舩〃α"ivar.γ加沈め
MenOsmaoldhamiMAxlM.inBull.Acad.St.‑P6t.XII(Jun.26,1867)64;
HARA,Enum・Sperm・Jap.3(1954)120.
− 5 7 −
北 陸 の 植 物