• 検索結果がありません。

4 章環境ホルモンと生活環境

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "4 章環境ホルモンと生活環境"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

4章 環境ホルモンと生活環境

石橋 康弘、石橋 弘志、橘 勝康 1 節 環境ホルモンとは

環境中に放出され、あるいは存在 している化学物質が生体内に取 り込まれ、

ホルモ ン疑似作用やホルモン撹乱を引き起 こす作用を持ち、その結果、生殖機 能、中枢神経機能の異常を引き起 こすのではないかと危倶されている。これ ら

は、これまで 日常的に使用され安全と考え られてきたプラスチ ックの原料、洗 剤、農薬等の化学物質であり、内分泌撹乱化学物質 と呼ばれているが、一般的

には環境ホルモンと呼ばれている。

この問題は、シーア ・コルボーンらにより執筆され、アメ リカ合衆国で大き な話題 となった 「 OurSt ol e nFut ur e 」1) が 1 9 9 7 年 「 奪われ し未来 」2) として日 本語に翻訳されたこと、環境ホルモンが原因と考え られる野生生物の異常に関 する多数の報告が出されていること、 ヒトにおける乳がんの増加をはじめとす る健康障害の事象を環境ホルモ ンとの関連性か ら理解 しようとする考え方があ ることなどか らわが国においても社会的な関心を高めている。

環境ホルモンの定義は、いまもなお統一されたものはなく、現在で も議論さ れ変更 されている。最近、 WHO/ I PCS ( 世界保健機構/国際化学物質安全性 計画)がまとめた定義によると、「 内分泌系の機能に変化を与え、それによっ て個体やその子孫あるいは集団に有害な影響を引き起 こす外因性の化学物質又 は混合物」となっており、次世代への健康影響に重点を置いたものになってい る 。 また、環境ホルモンの数 も情報源によって異なっており、環境庁は環境ホ ルモンではないかと疑われる 6 7 の化学物質 ( 群)をとりあげており、その リス ト 3) によると、 蓑 1 に示 したダイオキシン類を始め農薬や界面活性剤、プラス チ ック製品等多 くの工業製品中に含まれる約 7 0 種が リス トアップされている。

‑ 1 5 3‑

(2)

表 1 内分泌撹乱作用を有すると疑われている化学物質

希境庁 「 SP EED' 98J より抜粋

物質名 用途 規制等

1 ダイオキシン類 ( 非意図的成生物) 大防法、廃掃法 、POPs

2 ポリ塩化 ビフェニール類 熱媒体、ル か‑a. ン紙、 7 4 年化審法一種 、7 2年生産 中止 、

( PCB) 電気製 品 水濁法、海 防法、廃掃法

3 ポリ臭化 ビフェニール頼 ( P BB) 難撚剤

4 ヘキサクロロベ ンゼン 殺菌剤 、有機合成原料 7 9 年化手法一種 、わが国では

( HCB) 未 登録 、pops

5 ペンタクロロフェノール 防腐剤、除草剤 、殺菌剤 9 ( )年失効、水質汚渦性農薬、

( pcq p) 寺剣法

6 2, フエノキシ酢酸 4 , 5 ‑ トリタロロー ‑ 除草剤 75 年失効 、毒劇法 、食 品衛生法 7 2 . フモノキ㌢酢酸 4‑ ジクロロ 除草剤 登線

8 アミトロール 樹脂の癌化剤 除草剤 、分散染料 、 75 年失効、食品衛 生法

9 アトラジン 除草剤 登録

1 0 アラクロール 除草剤 . 登魚、海 防法

l lシマジン 除草剤 衆境基準、水滴性農薬 、廃掃法、 水道法 登魚、水滴法、地下水 . 土壌 . 水質 1 2 ‑キサクロロ 殺 虫剤 ‑キサクロロシクロ‑キサンは

シクロ‑キサン、 7 1年失効、販売禁止

エチルパラチオン エチルパラチオンは 7 2年失効

1 3 カルバリル 殺 虫剤 登魚、毒別法、食 品衛生法 1 4 クロルデン 殺 虫剤 8 毒別法 6 年化辛法一種 pops 、6 8 年失効、

1 5 オキシクロルデン グロルチンの代謝物 タロ/ レデンの代謝物 1 6= t r a n s ‑ /+9PJ t ' 殺 虫剤 ノナクロル は本邦未 登録 、 ‑ブタクロルは 7 2年失効 1 7 1 , 2 ‑ ジプロモ ‑ プロパン 3 ‑ タロロ 殺 虫剤 8 0 年失効

1 8 DDT 殺 虫剤 81 販 売禁止 、食品衛 生法 年化審法一種 、7 1年失効、 、POPs 1 9 DDEa ndDDD 殺 虫剤 わが国では未登録

2 0 ケルセン 殺ダニ剤 登録、食 品衛生法

‑ 1 5 4‑

(3)

4 章 環境ホルモ ンと生活環境

物質名 用途 規制等

2 2 エンドリン 殺 虫剤 81 作物残留性農薬 、水質汚濁性農薬、 毒別法、食品衛 生法 年化審法一種 、7 5 、 年失効、 P OPs

25 へブタクロル 殺 虫剤 8 毒劇 法 6 年化審 法一種 、P OPs 、7 5 年失効、

28 メソミル 殺 虫剤 登録 、毒劇 法

2 9 メトキシクロル 殺 虫剤 60 年失効

80 マイレックス 殺 虫剤 わが国では未登録 、p ops

31 ニトロフエン 除草剤 8 2 年失効

3 2 トキサフエン 殺 虫剤 わが国では未登録 、P OPS

と 3 3 トリブチルスズ 船底塗料 、漁船の防腐剤 9 0 年化審法、家庭用品法

36 アルキルフエノーノ レ 界面活性剤 の原料/分解 海 防法

3 7 ビスフエノーノ レ A 樹脂 の原料 食 品衛生法 3 8 フタル 酸 ジ ー 2 ‑ エチルヘキシル プラスチックの可塑剤 水質 関係 要覧 3 9 フタル酸ブチルベンジル プラスチックの可塑剤 海 防法 40 フタル酸ジ ‑ ∩‑ ブチル プラスチックの可塑剤 海 防法 41 フタル酸ジシクロ‑キシル プラスチックの可塑剤

42 フタル酸ジエチル プラスチックの可塑剤 海 防法 43 ベンゾ ( a) ピレン ( 非意 図的成 生物)

4 4 2 . 4‑ ジクロロフェノール 染料 中間体 海 防法 45 アジピン酸 ジ ー 2 ‑ エチルヘキシル プラスチックの可塑剤 海 防法 46 ベンゾフェノン 医薬品合成原料 、保香剤

47 4 ‑ ニトロトルエン 2 中間体 , 4‑ジニトロトルエンなどの 海 防法

‑ 155‑

(4)

物質名 用途 規制等

49 アルデイカープ 殺 虫剤 わが国では未登録

5 0 〜 ペノミル 殺菌剤 登魚

51 キーボン( クロルヂ±ン) 殺虫剤 わが国では未登録 5 2 マンゼプ ( マンコゼプ) 殺菌剤 登偉

5 3 マンネブ 殺菌剤 登錬

5 4 メチラム 殺菌剤 7 5年失効

5 5 メトリプジン 殺菌剤 登魚、食品衛生法

5 6 シベルメトリシ 殺 虫剤 登魚、毒刑 法、食品衛生法 5 7 エスフエンバレレート 殺 虫剤 登録、寺h1 法

5 8 フエンバレレート 殺 虫剤 登魚、寺虞l 法、食品衛生法

5 9 ベルメトリン 殺 虫剤 登魚、食品衛生法

6 0‑ビンタロゾリン 殺菌剤 98 年失効

61 ‑ジネプ 殺菌剤 登魚

6 2 ジラム 殺菌剤 登魚

6 3 フタル酸ジペンチル わが国では未登録

6 4 フタル酸ジ‑キシル わが国では未登錬

6 5 フタル酸ジプロピル わが国では未登魚

6 6 スチレンの 2 及び 3 主体 スチレン樹脂の未反応物 スチレンモノマーは、海防法、 寺81 法、悪臭防止法

1)上記 中の化学物質のほか、カ ドミウム、鉛 、水銀 も内分泌 撹乱作用が疑われている。

規制等の欄 に記載 した法律 は、それ らの法律上の規制等 の対象 であることを示す。

化手法は r 化学物質の事査及び製造等の規制に関す る法律」、 大防法は 「 大気汚染防止法」、

水淘法は 「 水質汚濁防止法J、海防法は 「 海洋汚染及び海上災害の防止 に関す る法律」、廃 掃法は r 廃棄物の処理及び清掃 に関す る法 律 」、幸助法は 「 毒物及び劇物取締法」、家庭用 品法は 「 有害物質 を含有す る家庭用晶の規制 に関す る法 律 」を意味す る。

地下水、土壌 、水質の舜境基準は、各々環境基本法に基づ く r 地下水の水質汚染に係 る環 境基準 J r 土壌 の汚染 に係 る衆境基準 J r 水質汚濁 に係 る環境基準」をさす。

2) 一畳魚 、失効、本邦未登録 、土壌額官位農薬 、作物戎官位農薬、水質汚濁性農薬 は農薬取締 法に基づ く。

3) POPs は 、 r 陸上活動からの海洋環境の保護 に関する世界行動計画」において指定された残留性 有機汚染物質である。

‑ 1 5 6‑

(5)

4 章 環境ホルモンと生活環境

2 節 環境ホルモンの野生生物生態影響の実態

内分泌撹乱化学物質による野生動物への影響の代表的な例については、環境 庁の 「 外因性内分泌撹乱化学物質問題 に関す る研究班中間報告書 」4) による と、表 2に示すような生物名、場所、影響、推定される原因物質の順にまとめ ることができる。

なお、ここには原因物質が断定できない事実について も示 してある。

‑ 1 5 7‑

(6)

表 2 環境ホルモ ンの野生生物への影響

生物名 場 所 影 響 推定される原 因物質 報告者及び報告年

●貝類 イボニシ ヨーロッパ

チヂミボラ アクキガイ科 巻 貝

●魚類 ニジマス

ローチ ( 鯉の一種) サケ

カダヤシ ホワイトサッカ ー ( 鯉の一種)

●両生類 、伸 虫類 ワニ

日本 の海岸 イギリスの海岸 北西大西洋 沿岸

英国の河川 英国の河川 米国の五大湖 米国のフロリダ の河川

米国スペリオー ル湖

米国フロリダ湖

カエル、 北米 サンショウウオ

雄性化 個体数の減少 雄性化 個体数減少 雄性化 個体数減少 雌性化 個体数減少 雌雄 同体化 甲状腺過形成、

個件数減少 雌の雄化 成熟遅延

雄 のペニス燥小 化 、卵の僻化 率 低 下、個 体数 減少

個体数減 少、後 足異常( カエル)

●鳥類

カモメ 米国の五大湖 雌性化、

甲状腺腫癌 メリケン 米国ミシガン湖 卵の貯化 率の

アジサシ

●輔乳類

アザラシ オランダ シロイルカ カナダ、米国、

地 中海

ピューマ 米国

ヒツジ オーストラリア ( 1 940 年代)

クマ カナダ

低 下

個体数減少、

免疫機能の低下 個体数減少、

免疫機能の低 下 精巣停留、

精子数減少 死産の多発 、 奇形の発生 雄の雌化

有機スズ化合物 有機スズ化合物 有機スズ化合物

ノニ′ レフェノー′ レ ( 断定されず ) ノニフェノー/ レ ( 断定されず) 不明

J

パルプ工場廃水 ( 断定されず) 漂 白クラフト耕 工場 排水 ( 断定されず) DDT 等有機塩 素系 農薬

( 断定されず)

DDT、PCB ( 断定されず ) DDT、PCB

( 断定されず ) PCB

PCB 不明

Hor iguc hiTeta l ( 1 99 4)

ar y a nGW eta l ( 1 998)

Br ig htDAa ndEns DV( 1 990)

St npt e rLPeta l ( 1 98 5)

Pur donCEeta l ( 1 99 4)

L

ea t her l a ndI ( 1 9 9 2)

Ha ve nWHeta l ( 1 98 0)

Mc Mas t e rME・ eta l ( 1 99 1 )

Gui net t eu eta l ( 1 99 4)

Bl a us t e i nARa nd Wak eDB( 1 995) Fr yDM et a l ( 1 98 7) Moc c i aRDeta l

( 1 98 6) Kubi ikTJeta l

( 1 98 9) Re i i i nde r sPJ H

( 1 98 6)

DeGui s eSeta l ( 1 9 9 5)

Fa c e m止eC・ Feta l ( 1 995)

植物エストロジェン Be n net t sH( 1 946) ( クローバ 由来)

不明 Cat t etM( 1 988) ‑

‑ 1 5 8‑

(7)

4 葦 環境ホルモ ンと生活環境

3節 環境ホルモンの生態 に及ぼす影響

ホルモ ンは、体の状態妄一定に保つ ( 恒常性の維持)働 きを もっている。例 えば血糖値が上が るとすい臓か らインシュリンが分泌 されるため血糖値が下が る。さらに、男性ホルモ ン、女性ホルモ ンは胎児期の生殖器の形成などに深 く 関わ り、成長ホルモ ンは子供の発育 と成長に関わ っている。甲状腺ホルモ ンは 行動 と精神活動に必要である。ホルモ ンは必要な時々や状況に応 じて精巣、卵 巣などの内分泌器官か ら分泌 される。ホルモ ンの量が上昇 しす ぎると生産が抑 制 され るなど して量を調節す る機構 (フィー ドバ ック機構)があ り、ホルモ ン の働 きはコン トロールされている。 ホルモ ンの量 の過不足が起 これば、糖尿 病、子宮内膜症、乳ガ ン、男性器 ・女性器の発育異常などの病的な症状が引き 起 こされる。

これに対 して、環境ホルモ ンは体の外か ら体内に入 ってきて本来のホルモ ン と同 じように働いた り、あるいは本来のホルモ ンの働 きを妨げた りすると考え られている。例えば、工業用化学物質 PCB 、農薬 DDT 、工業用洗剤の成分が 分解 したノニルフェノール、プラスチ ックのポ リカーボネー トの原料 ビスフェ

ノール A 、塩化 ビニル製品の柔軟化剤 フタル酸エステルなどは女性ホルモ ン様 の働 きを し、農薬 DDT の代謝物質 DDE 、農薬 ピンクロゾリンなどは男性 ホル モ ンを妨げる働 きをすることが知 られている。なお、ダイオキシンはこれ とは 別の機構で間接的に女性ホルモ ンの働 きに影響を与えると考え られている。

環境ホルモ ンによって本来のホルモ ンの調節が うま くいかな くなるとさまざ まな影響がで る可能性がある。大人であれば環境ホルモ ンによるホルモ ン変化 の影響 は一時的な ものと考え られ るが、乳幼児期や特に胎児期 はホルモ ン変化 に非常 に敏感で影響を受 けると元に戻 らない可能性が指摘 されている。それ は、精子数減少、乳ガ ン、免疫低下、知能へ影響などの形で成長 してか ら現れ るのではないか と推察され次世代への影響 という視点か ら捉え られている。さ らに、ホルモ ンはごく微量で働 くので環境ホルモ ンもわずかな量で影響を与え るのではないか とも考え られている。それは従来の毒性試験 に基づ く化学物質 の安全基準でいえば比較にな らないほどの極めて低用量である。

‑ 1 5 9‑

(8)

4 節 身のまわ りにおける環境化学物質濃度

1 ) 公共用水域及び地下水中の水質謝査

内分泌撹乱作用の疑いのある物質 6 7 項 目の うち、農薬を除 く 2 2 項 目につい て、水環境中の存在状況の概況を把握するための調査5 )が行われている。本調 査は、 ,公共用水域及び地下水中の水質分析について、河川で 1 0 0 地点、海域で 1 7 地点、湖沼で 5 地点及び地下水で 8 地点の合計 1 3 0 地点について行われたもの である.分析項 目は、前述 した 2 2 項 目にスチ レンモノマー及び 1 7 b エス トラジ オールを含む 2 4 項目である。

調査結果の中間報告によると、 4・ Tt ブチルフェノール類、ノニルフェノー ル、 4‑t オ クチルフェノール、 ビスフェノール A 、 2 , 4 1 ジクロロフェ ノール、フタル酸 ジー 2 ‑エチルヘキシル、スチ レンモノマー及び 1 7 b‑ エス トラジオールは 、1 3 0 地点の内 1 0% 以上の地点で検出されている。高頻度で検 出された化学物質はノニルフェノールであり、採水地点の 7 6 % (最高検出濃度 7・ 1 〟g/ L) か ら検出されており、次いで ビスフェノール A が 6 8 % ( 最高検出濃 度 0 . 9 6 F l g/ L) 、 4‑t オ ケチルフェノールが 6 2% ( 最高検出濃度 1 . 4 F L g/ L) 、 1 7 b ‑エス トラジオールが 6 1 % ( 最高検出濃度 0 . 0 3 5 F L g/ L) 、フ タル酸 ジー 2

‑エチルヘキシルが 5 5% ‑ ( 最高検出濃度 9 . 9 〟g/ L) であった と報告 されてい る 。

本調査 は、調査地点、調査回数、調査時期などが限定 されたものであるの で、結果が調査対象物質の存在状況を必ず しも代表 している訳ではない。 しか し、水道原水を含めこれ らの化学物質が広 く環境中に存在 している事実が改め て明らかになったということで、今後の調査結果をふまえた上で、早急な対策 が必要 となるであろう。

2) 魚類中の ビテロジェニ ン濃度の測定

・環境ホルモ ンは、主に女性ホルモン ( エス トロジェン)の受容体に結合する ことにより、女性ホルモ ン様作用を示す ことがわかっている。 ビテロジェン は、卵黄に含まれるリンタンパク質の前駆体であり、 リン酸のほかに、糖、脂 肪、カルシウムを含むタンパク質である。雌動物の肝臓では、エス トロジェン によって ビテロジェン遺伝子の転写が促進され、その合成が増加する 6). ビテ

ー 1 6 0‑

(9)

4 章 環境ホルモ ンと生活環境

ロジェニ ンは、正常の雄動物ではほとんど合成されないため検出されないが、

大量のエス トロゲ ン暴露により誘導 されることが知 られている

この ビテロ

ジェニ ンを内分泌撹乱作用の生物学的指標 として用い、特に、魚類を中心 とし た野生生物の影響の有無を評価する手法が注 目されている 7・8)。

我 々の研究 グル ープは、高速液体 クロマ トグラフィー ( HPLC) 及 び ELI SA 法を用いて、各種魚類の血発車 ビテロジェニ ンを計測することによる スクリーニ ングを行 った 9 1 0)。 その結果、養殖マダイ、天然マダイ及び天然 コイ中の雄血祭中か らビテロジェニ ンが検出され、養殖雄 ビテロジェニ ンの濃 度 は 、0 . 0 2・ 0 . 1 6 mg/ mL であったことか ら、女性ホルモ ン様作用を示す物質 への暴露が懸念される。

3) 食器及び飲料缶か らの溶出量の調査

学校給食で使用されているポ リカーボネー ト食器や飲料用缶か らの ビスフェ ノール A の溶出が憂慮されている。多 くの飲料用缶か らは 、1 0 ・ 1 0 0 p pb の ビス フェノール A が検出されている 1 1・1 2) 。ポ リカーボネー ト食器か らは、使用時 の温度が高いほど溶出量が多 く、新品よりも中古品か らの溶出量が多いことが わかっている。また、溶出 した濃度で比較すると、電子 レンジ加熱はほぼ 9 5 ℃ 処理に相当 し、傷により表面積が増加することや新 しい面が露出することによ りビスフェノール A の溶出量が増えることなどか ら、電子 レンジや熱湯を使用 する容器の使用について注意が必要である事実が明 らかになりつつある。繰 り 返 し溶出試験を行った結果、容器か らの溶出量は漸次減少 したという報告があ る。また、各国のほ乳瓶類の溶出試験を行 った結果、どの容器で も 1 0 p pb 前後 の ビスフェノール A が検出されており、その一方で、乳首の材質 も問題 となる であろうと考え られる。

5 節 ヒ トで憂慮されている事項

現在、 ヒトへの環境ホルモンの健康影響については、環境ホルモン曝露量の 評価が不十分で内分泌撹乱化学物質曝露 と健康影響 との因果関係が証明された 研究報告はほとんどない。 しか し、環境ホルモ ン曝露との因果関係が疑われて

いる例には、

‑ 1 6 1‑

(10)

1 ) 精液の質の低下、精子奇形率の上昇 2 ) 精巣ガン、前立腺ガンの増加

3) 子宮内膜症、不妊症

4) 子宮ガン、卵巣ガン、乳ガ ン 5) 外部生殖器の発育不全、停留皐丸 6) アレルギー、自己免疫疾

7 ) I Q 低下、性同一性障害 8) パーキンソン病

などがあるが、生殖内分泌系への影響のみならず免疫系 ・神経系などの疾病ま で含まれている。

日本では1 9 9 7 年より国際共同研究の一環 として、妊娠のパー トナーを用いた 調査が川崎 ・横浜地域で行われており、全国数カ所でも検討を開始する予定と なっている。また、環境庁は健常男性 ( 1 8 ・ 3 6 歳)の精子数の実態調査に着手

し、地域差 もふ くめて今後 3 カ年で総合的に検討することになっている。帝京 大 ・医学部の押尾 らは 、2 0 歳代の平均精子濃度 ( 4 5 . 8×1 0 6 ml )と平均連動率 ( 2 7 . 2%)は 4 0 歳代のそれ ( 平均精子濃度 : 7 8 . 0×1 0 6 m l 、平均連動率 : 2 8 . 0

%)を比較 し若年層の精子濃度が低下 してることを指摘 している。一方、聖マ リア ンナ医大の岩本 は、平均精液量 ( 2 0 代 : 3 . 3m1 、3 0 代 : 3 . 2m1 、4 0 代 : 3 . 7ml 、平均3 . 2 ml ) 、平均精子濃度 ( 2 0 代 : 1 1 4 . 2×1 0 6 m1 、3 0 代 : 1 0 6 .7 × 1 0 6 m1 、4 0 代 : 8 3 .7×1 0 6 ml 、平均 : 1 0 7 . 9×1 0 6 ml 、最低0 : 5×1 0 6 ml か ら最 高81 8 .0×1 0 6 m l まで分布)精子運動率 ( 2 0 代 : 5 8 . 8%、3 0 代 : 5 6 .7%、4 0 代 : 5 6 . 2% 、平均5 6 . 8%)を報告 し、札幌医科大泌尿器科のグループも 1 9 7 5・ 1 9 8 0 年に札幌市で検討された結果 と 1 9 9 8 年 9・1 0 月に行 った健常男性 ( 1 8・3 6 歳)の精子数の実態調査結果を比較 したところ精子濃度に大きな変化はなかっ たと報告 した。

̲ 年 ̲ 鶴 精 液 量 精子濃度 ( ( ×1 0りm 平均値) 精子濃度 ( l ) (x1 0 6 / 中央値) m l ) . . A 2 4 . 2+4 .1 2 . 8+1 . 2 7 0 . 9+4 7 .3 6 2

B 2 4 . 2+5 . 4 2 . 9+1 . 3 7 9 . 6+4 9 .3 7 5

‑ 1 6 2‑

(11)

4 章 環境ホルモ ンと生活環境

また、環境庁の研究班によって ヒト胎児のへその緒 ( 膳帯)血中の環境化学 物質濃度の調査が行われてい る

それによるとダイオキ シン類や PCB 類、

DDT 類 、BHC ・クロルデ ン類、及び重金属 ( 鉛、カ ドミウム、水銀)がさい 帯及びさい帯血より検出された。

6 節 内分泌撹乱作用を考える上での留意点

ヒ トに対する内分泌撹乱化学物質の影響については仮説の段階であるが、性 ホルモ ンの作用機構 は魚か らヒ トまで類似 してお り、 これ ら生殖異常や発育障 害は実験動物を用いて再現が可能であるので、野生生物や実験動物でおきるこ

とはヒ トで も十分起 こりうると考え られる。野生生物への影響が出ている事実 は、少なか らず ヒ トで も同 レベルの化学物質を吸い込んだり、触れたり、会 し た りしていることを暗示 しているわけであり、 ヒ トははかの生物よりも生体防 御系がより高度に発達 しているために、影響が顕著に出てこないとも考え られ る。 しか し、胎児期 ( 胎盤や脳血液関門のバ リア)や乳幼児期においては、成 人には完備されている生体防御系が十分発達 していなか ったり、かえって感受 性が高いことが心配 される。環境ホルモンは、本当にごく ・極微量で体内の脂 肪に長 く蓄積 した場合、その後何年 も作用 し続ける化学物質群 と性の分化 ・成 熟が行われる一時期に作用 してはっきり症状が現われるまで長期間かかる物質 群 とに分けられる。一般には、ホルモ ン作用は一次的なもので、体内の正常な ホルモ ンは必要なときに必要なだけ働 くものであるが、胎仔期に作用するもの は一過性の もでな く、一生を通 じて遺伝子機能をプログラム して しまうものも ある。そのため、胎児や幼い子供たちへの環境ホルモ ン作用 として、大人に なってか らの健康への影響、特に生殖異常が心配 されている。

7 節 環境ホルモ ンに対する日々の心が け 一予防原則の考え方か ら‑

1) 環境ホルモ ンは脂肪蓄積性の化合物が多いため、余分な動物性脂肪食品の 摂取を控える。

‑ 1 6 3‑

(12)

2 ) 食品を直接プラスチ ック容器や塩 ビ系及び添加剤を含有す るラ ップで包ん で加熱 ( 電子 レンジ)す ることは控え、陶器製や耐熱ガラス製の容器や無 添加 ラップを使用する。

3) 日常生活において安易に使い捨て商品を購入せず、ゴ ミ排出め減量化を念 頭に置 き、分別収集への努力なども心がける。

4) 全てのプラスチ ック製品が有害成分を含んでいるわけではな く、すべての 材質が内分泌撹乱作用が調査 されているわけではないので、安易に代替品 を使 うのではな く、一定の使用基準の もとにそれぞれ有効に使い分ける。

5) ゴ ミの減量化や リサイクルの観点か ら、プラスチ ックの材質についての理 解を深めるとともに、胎児や乳幼児 ・成長期の子 どもへの影響を重要視 し て予防原則の考え方か ら、プラスチ ック容器 と食品の相性に注意する。

6) こまめな手洗いの励行、鹿用な殺虫剤の使用の禁止。

7) 子供への 自然素地の玩具の供与。

現在、環境ホルモ ンに関す る情報及び技術の交換のため( =、企業、行政及 び大学等研究機関、いわゆる産 ・学 ・官が協力 して環境ホルモ ン問題を解決 す るためのネ ッ トワークを構築 している。環境ホルモ ンに対す る対策は、開 始鹿階であ り、今後、食生活を含めた、現在、われわれが慣れ親 しんでいる

「 便利で豊かな生活」を支えて きた人造の化学物質 とのつ きあい方やライフ スタイルを見直す時期にきている。

参考文献

1 ) The o Co l bP r n , Di a nne Duma no s ki , Jo hn. Pe t e r s o n My e r s ,

̀ ̀ OurS t o l e nFu t ur e" , USA 、1 9 9 5.

2 ) シーア ・コルボー ン、ダイア ン ・ダマノスキ、 ジョン ・ピーターソン ・ マイヤーズ、長尾力訳\ " 奪われ し未来"、期泳社、東京、1 9 97 ‑ 3) 環境庁、 " 外因性内分泌撹乱化学物質問題への環境庁の対応方針につい

て‑環境ホルモ ン戦略計画 SPEED 、9 8 ‑"、1 9 9 8 年 5 月

4 ) 環境庁 リスク対策検討会監修、 " 環境 ホルモ ン ▲ 外因性内分泌撹乱化学 物質問題に関する研究班中間報告書"、環境新聞社、東京、1 9 97

‑ 1 6 4‑

(13)

4 章 環境ホルモ ンと生活環境

5 ) 田中宏明、 ̀ ̀ 水環境における内分泌撹乱化学物質の実態調査"、水環境 学会誌 、2 2(8) 、6 2 9 ‑6 3 2( 1 9 9 9 )

6 ) Mat ubar a T.e t .a l , Comp. Bi oc he m. Phys i c al , 1 0 9 , 5 4 5 ( 1 9 9 4 ) .

7 ) Fol mar L.C. e ta l . , Env i r on. He al t h Pe r s pe c t , 2 0 4 , 1 0 9 6 ( 1 9 9 6 ) .

8 ) Yamanaka S. e t al . , Bi os c i e nc e Bi o t ec hnol ogy and Bi oc he mi s t r y ,6 2 , 1 1 9 6( 1 9 9 8 ) .

9 ) 石橋康弘 、e ta l . 、 「 HPLC を用いた ビテロゲニ ン分析の内分泌撹乱化 学物質調査への応用」 、第 3 3 回 日本水環境学会年会講演集、 p. 3 8 9

( 1 9 9 9 )

1 0 ) 石橋弘志 、e tal . 、「 モノクロナール抗体を用いた各種魚類血発車ビテロ ゲニ ンの分析」 、第 3 3 回日本水環境学会年会講演集 、p. 3 9 0( 1 9 9 9 ) l l ) TakaoY. e ta l . , Fas tSc r e e ni ng Me t hodf orBi s phe no IA i n

Env i r onme nt al Wat e r and i n Food by Sol i d‑Phas e Mi c r oe xt r ac t i on ( SPME),Jpn.∫.He al t hSc i e nc e , 4 5( 1) , p. 3 9

( 1 9 9 9 ) .

1 2 ) 高尾雄二 、e ta l . 、 " 食品缶内面塗料か らの ビス フェノール A の溶 出' '、第 8 回環境化学討論会講演要旨集 、3 2 8 ‑3 2 9( 1 9 9 9 )

‑ 1 6 5‑

表 1 内分泌撹乱作用を有すると疑われている化学物質 希境庁 「 SP EED' 98J より抜粋 物質名 用途 規制等 1 ダイオキシン類 ( 非意図的成生物) 大防法、廃掃法 、POPs 2 ポリ塩化 ビフェニール類 熱媒体、ル か‑a
表 2 環境ホルモ ンの野生生物への影響 生物名 場 所 影 響 推定される原 因物質 報告者及び報告年 ●貝類 イボニシ ヨーロッパ チヂミボラ アクキガイ科 巻 貝 ●魚類 ニジマス ローチ ( 鯉の一種) サケ カダヤシ ホワイトサッカ ー ( 鯉の一種) ●両生類 、伸 虫類 ワニ 日本 の海岸 イギリスの海岸 北西大西洋 沿岸英国の河川英国の河川米国の五大湖米国のフロリダの河川米国スペリオール湖 米国フロリダ湖 カエル、 北米 サンショウウオ 雄性化 個体数の減少雄性化個体数減少雄性化個体数減少雌

参照

関連したドキュメント

中・長期(亜急性・慢性)毒性は、一定期間投与した後被検動物を解剖し、病理的に細胞に有

26 −  − 神戸常盤大学紀要  第 4 号 2011 27 − 

さらにはこれらの結果をふまえて,より積極的に生活環境や

社会的領域においては,われわれの社会を 構成するあらゆる側面が,企業の環境になり

•  土壌とは、地球の陸地表層または浅い 水の下にあり、岩石の風化や水、風など

日立小形カセットテレコおよびカセット付ラジオ

2.4 環境モニタリングの評価(総括)

2.今後の課題 ASEAN の環境分野の今後の課題を整理するうえで,吉野 (2 0 1 2)