情報と理科教育
著者 松村 佳子, 池尾 和子
雑誌名 奈良教育大学教育工学センター研究報告
巻 7
ページ 41‑49
発行年 1984‑03‑16
その他のタイトル Information for Science Education URL http://hdl.handle.net/10105/4596
松 村 佳 子・池 尾 和 子
(物理教室) (理科教育教室)
Information for Science Education by
KEDCO MATSUMURA (Department ofPhysicsノ KAZUKO Ikeo (Department of Science Education)
Abstract
All children from birth are living in a world where numerous kinds of information (Scien‑
tific, natural, educational, environmental, medical and so on) surround them. Each child is concerned with this environmental knowledge. During their growth they start to recognize, reorganize, classify and evaluate all of the information both environmental and educational.
Children doing this will mature as an important member of their culture society in this world going into the 21st century.
In this report we, as educators, tried to investigate balance between the children's de‑
velopment and the above mentioned information and also made a survey how to control the educational information for children and their laboratory works. It is the summary of our report that children's direct Scientific participation, when they actually do these experiments, is most effective and a more meaningful learning experience than the teacher s demonstration.
Key words: Information , Science education, Scientific participation
I はじめに
私達は生まれたときからいろいろな情専断こつつまれて生きている。最近特に情報ということば がよく使われるようになってきたが、その意味は使う人によって、又は受けとる人によって様々 であるように思う。従って、多様な定義のし方があると思われるが、情報とは"生活主体と、そ れをとりまく外部容体との間の情況関係に関する報せ"と考えることができる。この情報の分類 の基準も「言語系情報」と「非言語系情報」とか、 「パターン認識できるもの」と「できないも の」とに分けるとかいろいろ考えられる。さらにこれらの情報のライフタイムに注目すると、時 間、日単位、月単位、年単位などの段階に分けることができる。天気予報や交通情報などはライ フタイムが短い情報であると考えられる。ライフタイムが長い「情報」はストックされるものも あるが、中にはその目的を達すると次第に「情報」の価値を失って「データ」の状態になってし
まうものもある。科学は日々進歩し、それと競って技術も次々と発展していく。この1世紀はど の間に、真空管の時代から、半導体、ダイオードが発明されて実用化されるやいなや、IC、L SI、超LSIへと目ざましい進歩をとげ、今やコンピューターなくしては科学も産業も文化も 成立しないと言ってもいい程の時代になった。さらに未来に向けて、我々人間の情報伝達のメカ ニズムを解明しようという努力がなされており、これからは生体工学を中心とするライフサイエ
ンスの時代になるとも言われている。
このように多くの情報に包まれて生活している子供たちは、自分をとりまく情況に関する報せ を得て、これらを識別し、評価し、外部環境に応じた行動を選びながら、社会のメンバーとして の行動様式を学習して成長していく。
この研究の目的は、子供の成長に伴う自然観の発達と情報との関連を検討し、理科の授業にお けるよりよい情報交換のし方を探ることである。昨年度、小学校理科授業において実験観察導入 についての調査をし、実験形態による児童の理解度について調べた。1)今年度は具体例として小 学校3年生の単元「空気でっぽう」をとりあげて調査を試みた。その結果に基づいて考察をして
いく。
Ⅱ 子供の自然認識の発達と情報のとり入れ方
子供は生物学的な発達の段階過程を経て成長していき、2)生理的・機能的な段階があって、特 定の成長期に特定の経験・学習・教授過程などが必要であると考えられる。そのためには、子供 が成長するに連れてものの見方・考え方がどのように変化するかを知ることが大切である。そこ で、子供の成長に伴う自然認識の変化と情報との関わりをみることにする。文献3)を参考にして、
小学生を中心にみると、表1のようになる。
幼児期にみられるアニミズム的なものの見方や考え方は、この時期の子供の心的特徴もさるこ とながら、周りからのはたらきかけ(周りからの情報)の影響が大きいと考えられる。年令が進 むにつれて、友だちと一緒に行動することを通して自分の考えや行動を反省するようになる。さ らに小学校中学年(3、4年生)になると、アニミズム的に理由づけをするのではなく、身の周 りの自然的条件によって因果関係を求めようとする。行動半径が拡大され、知的好奇心が盛んに なる。高学年になると、興味の対象がミクロの世界から宇宙のようなマクロな現象にまで拡がる。
豊かな情報を得させることが大切である。一方、興味・関心のもち方に男女差が現われる。これ も親や社会の期待(社会的情報)の反映であろうか。
このように成長していく子供たちが得る情報のうちで、自然環境や家庭・社会におけるものの 他に、学校生活で、特に授業を通して得るものが子供に大きな影響を与える。授業における情報 伝達および収集には、先生や友だちとの対話の他に、教科書をはじめとする参考書・雑誌やその 他の印刷物、実験観察および教育工学機器を用いることが考えられる。最近は授業で、テレビ、
ビデオ、OHP等をはじめとする教育工学機器が多く利用されるようになってきた。欧米諸国で も幼児教育から成人教育に至るまで、広く教育情報システムの整備がはかられ、充実してきてい る4)とのことである。
表1児童の自然観および自然認識
学 年 思 考 お よび 自然 認 識 の 特徴
1. 幼 児 期 ○ 自 己中 心 的 ・主 観 的 な見 方 、 考 え方 をす る。
○ アニ ミズ ム的 自然 観 が支 配 的 であ る。
○直接 体 験 す る こ とに 興味 や関 心 を示 す が 永 続 き しな い。
2. 児 童 期 ○ 自 己中 心 的 で 非 論理 的 な思 考 をす る。
1 年 生 ○ ア ニ ミズ ム的 自然 観 が 残 る。
○具 体 的 事 物 や 現 象 に関心 を も ち、 そ の 目立 った特 徴 を 全 体 的 ・直 観 的 に と らえ る。
0 具 体 に即 し、 行動 を 通 して体 感 的 に認 識 す る。
2 年 生 l
○脱 自 己中 心 性 が み られ るが 、抽 象 的思 考 は まだ 無 理 。 l O 具 体 物 に即 して い て も、 その 逆 の 思考 操 作 は ま だ困 難 。 し0 具 体 物 に即 して い て も、 その 逆 の 思考 操 作 は ま だ困 難 。
○現 象 や 事物 の 相 違 点 を 比 較 した り、新 L rい現 象 をみ つ け る こ とは で き るが 共通 点 の 把 握 は 困 難 で あ る。
3 年 生 ○具 体 物 に即 しな が ら、 頭 の 中 で 試行 錯 誤 が で き る よ うに な る。
○ 事象 の と らえ方 が直 観 的 か ら分 析 的 に な る。
○ ア ニ ミズ ム的 自然 観 か ら現 象 論 的 自然 観 へ と移 行 す る 。
l L) 情 報 を も とに事 象 の 構 造 が と らえ られ 、 問題 把 握 、結 果 の予 想 が 可 能 に な
」 る問 題 解 決 へ の 過 渡 期 で あ る0 l
4 年 生 C)思 考 の 内 面 化傾 向 が み られ 、論 理 的 思 考 もで き る よ うに な る。
○事 物 、現 象 の 変 化 や 異 同 、因 果関 係 な ど分 析 的 把 握 が 伸 び る。
○事 象 か らの 反 応 を 情 報 と し、 先 行経 験 を想 起 して 、 新 しい事 実 と比 べ 、 問
[ 捌 孝決 を す る よ うに な る。
[
!
】 −。概 念 の抽 象 的 思 考 が で き るよ うに な り、初 歩 的 な科 学 概 念 の形 成 が み られ 1
るようになる。
Ⅲ 理科授業における理解度(実験・観察導入の効果)
理科の授業において、事象からの情報を得る手段の1つとして実験観察が導入される。昨年度 我々は、奈良、大阪、兵庫、京都各府県下の小学校1年から6年担当の先生方に、実験観察導入 についての調査を行い、結果をまとめて報告した。1)それによると、実験形態としては、どの学 年も児童が個々に、又はグループで行う形態が多くとられ、教師による啓示実験のみで終る場合 は4年生以上に少しみられた。また教師の側からみた授業の目標到達度の評価は、学年が進むに っれて低下する傾向がみられた。特に演示実験と児童実験を混合した形の到達度の評価が他に比
べて低い傾向がみられた。実験観察導入の段階についても調査し報告した。
今回は、具体例として小学校3年生の単元「空気でっぽう」をとりあげ、実験観察導入の効果 を調べた。奈良、大阪、兵庫の各府県下の小学校3年生担当の先生方に、①この単元における課 題展開の順序とその課題にかけた時間数、㊥各授業の展開の中でどこに実験をもってきたか、等 についての調査をした。又、単元終了後、児童には次に示すような同一の問題に答えてもらい、
正答率と授業展開等との関連について検討した。
☆つぎのしつもんに答えてください。
Ir 空気でっぽうの前玉がとぶのはなぜでし ょう。次のア〜工の中からえらんで()
に○をつけて下さい。
ア.() 後玉が前玉にふれて、前玉をお し出す。
ィ.() おしちぢめられた空気がもとに もどろうとして、前玉をおし出す。
ウ.() 空気はおしちぢめられないので、
後玉がおされた分だけ前玉がおし 出される。
エ.() 空気はおしちぢめられるとあっ くなって、そのために空気がふく らんで、前玉がおし出される。
Ⅱ.空気でっぽうの図がかいてあります。
匡≡豪=コ
二_〕:
つつの中の空気は どのようになって いますか。図の中 に絵を書いてくだ さい。
おしぼうをおすと、つ つのなかの空気はどの ようになりますか。
図の中に絵をかいてく ださい。
ll「
3年 組 男・女(
1.からのマヨネーズの入れ物を、空気がもれな いようにして手でおしたらへこみました。
どうしてでしょうか。
つぎのア〜エの中からひとつえらんで()の中 に○をつけて下さい。
ア.日空気がうすくなったから。
ィ.日空気のかさが小さくなったから。
ウ 日空気が上や下へ行ったから。
工.日空気が入っていなかったから。
2.1のマヨネーズの入れ物で手をはなしたらも とにもどりました。
どうしてでしょうか。
つぎのア〜工の中からひとつえらんで日の中 に○をつけてください。
ア」つ空気がこなくなったから。
ィ.日空気のかさがもとにもどったから。
ウ.()空気がまん中にあったから。
工.()入れ物がもとにもどろうとしたから。
先生方に対する調査と、児童に対する調査とをまとめて、単元の課題展開と、問題に対する正 答率とを表2に示す。問題の適否、評価のし方に対する議論は様々あると思われるが、問題の正 答率と児童の理解のし方との間には、関連性があるものと考えて扱うことにする。
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啓 林 A ・一u l A − 2
ヒ 恒 心
A − 3 A − 4 B − 1 B −1 1 B − 1 良 一 1 B F 2 B 一一 2 B − 2 B − 2 B F 3 B − 3 B − 3 B − 4 C − 1 C − 1 C − 2 開 理 ス 館 〃 3 「 F l _ 2 3 4 1 − 2 仁 一 3 l 4 1 − 2 ← 3 1 2
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課 題 展 開
1 エ エ エ 〕 ォ エ エ イ イ ・ エ エ エ エ ・ ケ 工 . エ エ エ エ 工 工 ア エ 2 エ オ オ ケ エ エ 二L オ オ オ オ カ ・ ク ヰ オ オ オ オ オ エ オ エ オ 3 オ ケ ケ i シ
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I 7 8 8 5 8 7 6 9 6 7 8 0 1 0 0 8 2 4 4
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5 6 6 3 4 6 】 2 0
6 3 5 1 6 4 6 7 4 2 6 3 全 問 正 解 2 5 4 6 4 0 3 9 2 5 4 1 5 中 1 5 1 2 5 2 2 7 3 4 2 6 2 4 3 2 4 9 1 1 3 7
上段において、A・B・Cは調査対象校の属する府県を示す。次の数字は対象校に、最後の数字は学級の別に対応する。 (A−1、A−2はそれぞれ同一の指導者により授業が行われた。)柚N 蒲淋泡溺付和羽灘
ここで、課題展開の欄のア〜ナは、以下に示す授業展開課題例に対応する。表2の上段におけ るA、B、Cは、調査校の属する府県を示し、次の数字は対象校の別に、最後の数字は学級の別 に対応する。
〔授業展開課題例〕
ア・身の回りには、空気が存在することを確めよう。
ィ.ポリ袋を使って、空気の存在と性質を確めよう。
ウ・ボールを使って、空気の性質を考えよう。
エ・空気でっぽうを作ろう。
オ.玉をもっとよく飛ばすには、どのようにすればよいだろう。
カ.押し棒を押すと、中の空気は、どのようになるだろう。
キ.圧し縮められた空気は、どのような働きをするだろう。
ク,圧し縮められた空気で、前玉が飛ぶのはなぜだろう。
ケ.前玉は、何の力で飛ぶのか考えよう。
コ・空気が縮んだり、広がったりする様子を観察しよう。
サ.空気は引き伸ばすこともできることを調べよう。
シ.圧し縮められた空気の様子、押し返す力の様子を調べよう。
ス,水でっぽうを作ろう。
セ.水も空気のように圧し縮められるか調べよう。
ソ.空気と水の性質の違いを考えよう。
夕.プラスチックの入れ物に水、空気を入れて、てっぽうを作り、比べてみよう。
チ.空気と水の縮まり方を比べてみよう。
ツ、空気と水の違いを利用して、ロケットを飛ばそう。
テ.空気と水の性質をまとめよう。
ト.空気でっぽうで遊びながら、水と空気の性質をまとめよう。
ナ.その他
3府県下の調査対象校の使用教科書は、すべて啓林館出版のものであった。しかし、授業時間 数は、6−10時間とまちまちであり、課題展開順序も様々で、教科書どおりの展開がなされてい るものは見られなかった。児童に対する問題Iの正答率は、どのクラスもかなり,高く、単元の指 導目標がよく徹底されていると見てよいであろう。しかし、空気でっぽうの後玉を押した時に、
内部の空気の体積が小さくなり、その空気がもとの状態にもどろうとして、前玉を押し出すとい うことの理解が十分なされているかどうかは、問題Ⅲとの関連から少し心細い結果が得られた。
全問正解の率の高いクラスは、これらのことがよく理解されていると考えてよいであろう。
全問正答率の高いクラスと、低いクラスとの授業展開を比較してみた。正答率は、展開時間数 の多少・課題展開にはよらず、各時間の授業展開のちがいによるとみられる。表3に正答率の高 い例と低い例との比較を示す。
帥∽ 渾塑禦慧芸道簸
l l 良 い 例 憩 い 例 授 業 の 課 題 授 業 時 間 中 課 題 授 業 時 間 中 適 し 時 問 ・ 展 開 の 実 験 展 開 展 開 の 実 験 展 開 1 エ B B B エ ・ 力 A B B 1 1 i l l l l l 2 オ A B B オ A B l l l [ I l 】 3 ケ B I B A l ケ B A [ 4 シ B − B r A − コ ・ シ 。 B , − 。 5 セ B B B セ B A r [ 6 ソ , B , B , , 夕 l B j l A i 7 夕 B B r B チ − B L A 1 − 8 チ 1 A l l l フ  ̄ 1 1 1 9 ツ , B B B , ナ 】 l [ ト 1 0 フ  ̄ l 】 l F 1+ + + + 】 l l
良 い 例 悪 い 例 授 業 の 課 題 授 業 時 間 中 課 題 授 業 時 間 中 通 し 時 間 展 開 の 実 験 展 開 展 開 の 実 験 展 開 1 エ A , B − B エ [ A I B [ A l 2 オ ー B − B 】 B 。 オ A , B − A 3 オ ・ キ − B − A 】 A − ケ A , B , A , 4 ケ ・ カ ・ ク 】 A I B I A ト キ ] fミ 】 A i 5 コ ・ シ [ A I B − A r シ A , B , A F 6 セ ・ ソ ー A B , B セ A − , A [ 7 夕 B B − A l ソ ボ I l 8 ツ ・ テ ] B I A [ B l ト B l l l 9 1 1 】 l 1 i l 1 0 l r [ ! 1 i
※ A:演示実験 B:児童実験ここで良い例とは、全問正答率の高いクラスの授業展開例で、悪い例は全問正答率の低いクラ スに対するものの一部をとりあげた。正答率が高いクラスは、低いクラスよりも、児童による実 験活動が多くとり入れられている傾向がみられる。教師が潰示して説明する場面が多いと、児童 の自由な思考、柔軟な発想が妨げられるように思われる。むしろ、児童にいろいろな活動をさせ、
体験をさせて、その中でのポイントを教師が上手にまとめれば、児童は暗記的な理解にとどまら ず、応用性、発展性のある理解が得られるものと考えられる。児童は日常生活でカラーグラビア やテレビアニメに慣れているので、まとめや説明の折には、教育工学機器を使って、視覚的にも 興味をひくような工夫をすればより効果的であろう。
小学校3年生は、前節で述べたように、まだ具体物に即して思考していく段階にある。今回の 調査から、児童実験のとり入れ方が少なくて説明の時間を多くとった例では、児童の理解度が低 下するような結果が出たが、児童の発達段階からみると、頭の中だけで思考し、理解していくの には無理があったのであろう。事象に直接働きかける時間を十分にとり、自分たちの活動を通し て事象から情報を得る方が、演示実験等間接的な働きかけや言妻による説明などから情報を得る よりも効果的であると考えられる。児童の活動する時間を十分にとり、自らの活動の中で規則性 や系統性をみつけ出していくような指導をすれば、低学年の児童にも高学年になって学習するこ とがらの理解の基礎ができることは、2年生の「おもりで動くおもちゃ」の授業例5)からもみら れる。理科授業において、学年に応じた実験・観察のとり入れ方が授業展開を考える上で大切な 要素であることが、昨年度の我々の調査1)からもうかがえる。
Ⅳ まとめと今後の課題
情報で未来を占うこともできるという。理科の授業において、情報は自然のしくみ、自然の中 の法則性を理解する目的で収集され、子供たちに与えられる。その情報の中には、すでに確立さ れてゆるがないものもあれば、日々変化し進歩していくものもある。先人たちの手により築き上 げられた成果の上にさらに新しいものが積み上げられていくのである。情報量は減ることなく増 加する一方であると見てよいであろう。これらの多くの情報をいかに処理し、授業展開の中で子 供の発達に応じて、いかに有効に活用するかが、未来の科学を担う子供たちの教育のための大切 な課題の1つであろう。
前回および今回の調査から、理科授業における情報交換の1つである実験・観察の導入のし方 が、児童の理解に影響を及ぼすことがわかった。特に低学年の場合には、児童自身が活動し、体 を動かすことにより様々の現象を理解していくような形の指導が効果的である。また、どの学年 の場合にも、児童の活動を通して、教師が適切な助言をし、ポイントをおさえてまとめをしてい くことが大切である。まとめや説明をする場合には、目の前の現象と概念との結びつきをよりわ かりやすくするために、教育工学機器を上手に使用すると、より効果が上るものと考える。
末武国弘6)によると、日本の学校では教育機器をほとんど使っていないところが多いのが現状 のようである。彼は「現場の学校の授業で一番大切なのは、学習者である子供達と教授者である 先生方との問の心と心とのコミュニケーションを良くすることが重要課題であり、それには、補 助としての教具、教材と、それの上手な使い方が必須である。ところが、現在の教員養成機関で ある各大学の教員養成学部、あるいは教職課程の講義の中には、教育方法、教育工学が開かれて
いても理論的なものが多く、実技が伴わないのが残念である。」と述べている。教育工学機器を活 用することが、教育現場で多くの情報をより効果的に活用できる1つの方法であると考える。本 学においても教育工学センターの実践的な活用を期待したい。
参考文献
1)松村佳子・谷U広美: 授業展開と児童の理解のし方 奈良教育大学教育工学センター研究報 告 NG6 (1983)。
2)姥谷米司:塀代理科教育大系・4 序章(1978)(東洋館出版社)。
3)森 一夫他:現代理科教育大系・4(1978)(東洋館出版社)。
4)坂元 昂: 欧米の教育工学の現況 科学教育研究 Vol.6 (1982)。
5)松村佳子・池尾和ト岩橋恭子: 小学校における授業展開と児童の理解の仕方 日本理科教 育学会研究紀要 Vol.23 No.2(1982)。
6)未武国弘: 日本の教員養成機関をこのままにしてよいのか 科学教育 NG39(1983)。