奈良教育大学学術リポジトリNEAR
生きる力につながる国語科の授業展開に関する実践 的研究 −「ごんぎつね」の授業を通して−
著者 松川 利広, 松本 哲
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 46
号 1
ページ 1‑19
発行年 1997‑11‑10
その他のタイトル Empirical Research into the Lesson Development in the Japanese Language Aimed at Promoting the Ability to Live −Through the lessons on Gongitsune−
URL http://hdl.handle.net/10105/1536
生きる力につながる国語科の授業展開に関する実践的研究
‑「ごんぎつね」の授業を通して‑
松 川 利 広・松 本
(奈良教育大学国語教室) (平成9年4月18日受理)
才斤*
「1
1.は じ め に
今日、子供たちは、情報化、国際化、それらに伴う価値観の多様化、また核家族化、高齢化社 会の進展など、かって日本人が経験したことのない環境の中で生きている。そのような中にある 子どもたちに対して、学校教育は、子供たちが一人の人間として、変化の激しい社会の中で生涯
にわたって学び続け、たくましく生きぬくための基礎・基本となる力を育成する役割を担う責務 がある。そのために、学校教育現場における教師は、子供たちが主体的な学習の仕方を身に付け、
集団の中で認め合いながら学ぶ楽しさや成就感を味わい、また意欲的に学ぶ態度を自らの力で青 くんでいくといった、いわゆる「生きる力」につながるような「環境作り」に努めなければなら ない。
この「環境作り」という課題に対して、国語科という教科の学習指導の側面、特に教師の支援 の在り方に着目し、その解決の端緒を探ろうというのが本研究の出発点である。そこで、本研究 では、まずは現実態である実際の授業記録を第一次資料として取り扱い、そこにおける教師の支 援の実際を、先に述べた「環境作り」という観点から分析し、問題の所在を明らかにすることか
ら始めることにした。このように学校教育現場という臨床にこだわるのは、標題に掲げた「生き る力につながる国語科の授業」を構築するための実践原理は、現在の実践原理のどこをどのよう に転換することによって求められるのか、その道筋はあくまでも臨床(‑実践)に即して明らか にされなければならないと考えるからである。この立場は、その過程において導き出される実践 原理には、一般性(どの教師にも当てはまる共通性)と特殊性(教師一人一人の個別性)の二領 域が存することを認めながらも!その両者は緊密的・相補的関係にあるため、そのどちらか一方
に偏して記述してみたところで、ことの真理は実際から遊離するばかりで、実践(‑臨床)的課 題解決は得られないとの考えに基づいている。つまり本研究は「①子供たちが思いや願いを生か し主体的にかかわれるように教材を工夫する。 (参子供たちが、自分の経験、思いや願いを生かし、
想像力などを働かせて考えたり、判断したりする過程を十分に位置付けた学習指導を構想する。
③子供たちが自分の言葉で考えたり想像したりすることを共感的に理解し、支援するという考え 方に立って評価を進める。」 (『新しい学力観に立つ教育課程の創造と展開』文部省 平成5年 44‑45頁)という「新しい学力観」に立つ国語科学習指導の3つの課題に対して、松本哲という
‑‑教諭が対略し、さらに解決していくための実践原理を、 「ごんぎつね」の授業を通して明らか にしようとした実践的研究として位置付けることができる。
* 現在 奈良県添上郡月ヶ瀬村立月ヶ瀬小学校教諭
1
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松 川 利 広・松 本 哲さきに述べたような実践原理を追究するためには、できる限り授業の実際に近い内容を再現し たものを第一次資料として分析・考察するのが望ましいと考え、授業記録は、ビデオテープをも とに、一字一句、加除修正をすることなくありのままの再現に努めた。従って、言いよどみや言 い誤りなどもそのまま再現してある。かっては、授業記録の一部を掲載するのみで、国語科の授 業論が展開されることが多く、部分と全体との関係が分かりにくかったが、近年は、授業の全体 をそのまま掲載し、それを一つのテクストとしてとらえ、言語面、非言語面の双方を文脈的観点 から分析する方向に向かっているが、本研究においてもその流れを支持し、次に「ごんぎつね」
(45分)の授業の全記録を掲げることにする。
なお教材として「ごんぎつね」 (小学校4年)を選定したのは、先行理論研究、先行実践研究 が多くあり、松本教諭の授業実践を比較的容易に相対化できると考えたからである。
2.松本学級「ごんぎつね」の授業記録(1996/ll/15)
Tl :国語係さんお願いします。
ci : (u)これから国語の勉強を始めます。今週の目当ては「思いやりを持って友達の意見を しっかり聞こう」です。みなさんゆってみてください。
C2 : (全員)思いやりを持って友達の意見をしっかり聞こう。
c3 : (u) C4 : (H) C5 : (J) C6 : (E) C7 : (T) C8 : (A) c9 : (u)
自分の目当てを5班の人ゆってみてください。
ぼくの目当ては、 「うなずいて聞く」です。
と、わたしの、ちょっ、わたしの目当ては、 「話し手の方を見る」です。
わたしの目当ては、一人を、 「一人一人を見て話す」です。
えっとぼくの目当ては、 「一人一人を見て聞く」です。
えっと、わたしの目当ては、 「うなずきながら聞いてきちんと話す」です。
みなさんも一一度声に出してゆってみてください。
cio: (全員) (各自のめあてを声に出して言う。) en: (u)よろしくお願いします。
●
C12: (全員)よろしくお願いします。
T2 :あっ、お願いします。友達が目当てを言っているときにね、 Sさんがとってもいい笑顔で ね、うなずいてたのがいいなあと思いました。じゃあ今日は最後の場面、 6の場面です。開けて ますね。一番はじめの文、そのあくる日も、という文を指さしてください。いいですね。それを 読んでみますよ。そのあくる日も、ごんは栗を持って兵十のうちへ出けました。ごんが栗を持っ て兵十のうち‑出かけたその前の日、そのときの兵十の顔の表情をM君はこのように書いてくれ ましたね。せやったね。そしてえ、あとでみんなが、ごんとか兵十へ手紙を書いていってるんだ けども、ごん‑っていう題でQさんがこんな手紙を書きました。読んでみます。 「君はかわいそ うだね。だって神様と間違えられるんだもん。ぼくは栗や松茸をごめんねの気持ちで持っていっ てやるのに兵十はわかってくれないんだね。でもこれからもずっとあげていたら絶対にわかって くれるよ。そう信じてね。わたしもそうするから。」 Qさんが書いてくれました。拍手。 (全員、
パチパチと拍手をする。)ね。そしてえ、栗をごんは持ってくるんだけれども、 (間)みんなで読 んでごらん。さんはい。
C13: (全員)今、戸口を出ようとするごんをドンと撃ちました。
T3 :だれが撃ったんですか。
C14: (口々に)兵十。
T4 :兵十やねえ。何で撃ったんですか。
C15: (日々に)火縄銃。
T5 :火縄銃。昨日ちょっとね、これ、本物(ほんまもの)借りてきました。持ってみる?
C16: (N・B うわあー。
T6 :ね、えっ、かなり垂たいです。この火縄銃でドン、ごんを撃ったんです。兵十が、兵十は ね、どんな気持ちで、今戸口をffほうとするごんをドンと撃ったのでしょう。グループで5分間 話し合いをしなさい。
(間) これは前みんなで考えた話題だね。がんばって話し合いしてね。
C17:ガヤガヤ(姓で話し合いをする。)
C18: (R 話し合いを終わってください。 Qさん。
C19: (Q)はい。えーっと、わたしたちの玉射ままだ話し合いがまとまっていないのでもう少し 時間をください。えーっと、 3分・・‑・。
T7 : 3分ぐらいほしい。じゃあ・‑‑、 2分間。
C20: (数人)えー。
T8 :む、無理。じゃあ、 3分。はんだら、頑張って。
(姓で話し合いをする。)
T9 :蛙長さんがまとめて発表してもらいますからよろしくお願いします。
(タイムウオッチのピピピという音がなる。) C21: (R)話し合いを終わってください。
no:はい、じゃあ、えっとね、途中かも分かりませんが、話し合いの隊形のAになってくださ い。
(机を動かす)
Til:じゃあ、 3姓、 4、 5、 1、 2でいきましょか。 3班から、どうぞ。
C22: (S)みなさんこちらを向いてください。 (小声で、 T君こちらを向いてください。)わた したちの姓は、わたしは、またいたずらをLにきたな、今度こそ逃がさないぞと思っていると思 います。 C君は、火縄銃という言葉から今日こそ殺したろうと思っていると思います。わたしも、
C君が火縄銃と言ってくれたのでわたしは、撃つのはかわいそうだけどいたずらするので撃って やろうと思っていると思います。 (T :うん。) Dさんは、今日こそ火縄銃で殺したろかと言って いました。 (T:うん。) R君はいたずらLにきたな、今度こそ撃ってやる、と思っていると思い
ます。 (T:うん。)もう1こ、わたしが、か、考えたのは、しのばせて、という言葉から静かに 見つからないように行かなくちゃと思っていると思います。
T12:うーん。
C23: (S)わたしたちの蛙の考えを分かってくれましたか。
C24: (全員)はい。
T13:よく考えましたね、このグループ。いいですよ、はいどうぞ。
C25: (K)えっと、みなさんこちらを向いてください。えっと、わたしたちの姓で決まったこ とは、わたしがうなぎをぬすみやがった、というところからおっかあの恨みだと思っていると思 います。
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松 川 利 広・松 本 哲T14:うらみね。はい。
C26: (K)えっと、 Iさんが、村、えっ、いたずらっていう言葉から村でいたずらをしている のでおれが殺してやるって思っていると思います。
T15:あっそう。
C27: K) F君は、 「ときつねが」って、と、いう言葉から、あのいたずらぎつねめ、またき たな、殺してやると思っていると思います。
T16:うーん。
T17:きつねがだね。
C28: (K と。
T18:えっ。
C29: (K と。
T19:と。
C30: (K)と。
T20:と。
C31: (K きつねが。
T21: 「ときつねが」だね。はい、はいつぎの班どうぞ。この班もよく考えましたね。
C32: (E)えっと、わたしたちの姓で話した、合ったのは、えっと、 AさんとJさんが、えっ と、 「またいたずらをLに来たな」からまたいたずらを、えっと、 Lに来たなと思っていて、えっ と、 Aさんはもうひとつ、またというところから、またなにかをぬすみにきたなで、うんと、
T君とわたしは、えっと、またというところから、いたずらをされては困る、で、 H君は、こな いだというところからもういたずらをできないようにしてやろ、やると言いました。わたしたち の姓の意見を分かってくれましたか。
C33: (全員)はい。
T22:はい、しっかりまとめて言えましたね。よく考えていますよ。はい、どうぞ。
C34: (N みなさんこちらを向いてください。えっと、ぼくたちの姓は、えっと、こないだ、
ぬ、うなぎをぬすみやがったあのごんぎつねめが、という、まっ、まっ、またいたずらをLにき たなという文から、えっと、うなぎをぬすんで、えっと、ごんぎつねがうなぎをぬすんでおっか あが死んでしまったんだあのごんぎつねめが、殺したる、というとこ、いうところと、えっと、
足音を忍ば、足音を忍ばせて近寄って、今、戸口をでようとするごんを、というところから今し かチャンスがないという(T:うーん。教師の言葉重なっている。)ようです。みなさん、ぼく たちの班の考えを分かってくれましたか。
C35: (ほぼ全員)はい。
C36! (Q 皆さん、こちらを向いてください。わた、わたしたちの蚊はわたしが、えっと「ぬ すみやがった」ということばからまたいたずらをLにきたなと兵十が勘違いしてドンと撃ったと 言いました。 M君もぬすみやがったという言葉からもういたずらをできないようにしてやると 思ったと言いました。 Uさんはいたずらという言葉からいたずらしないようにしてやろうと思っ
たと言いました。G君は、G君もぬすみやがったという言葉からおっかあのうなぎをぬすみやがっ て、殺してやる、と思っていると言いました。と、もう一つ、 Uさんが言ってくれた意見は、う なぎをぬすみやがったあのごんぎつねという言葉から今度はお返ししてやるぞと思ったと言いま した。 (定時のサイレン)わたしたちの班の考え、意見を分かってくれましたか。
C37: 全員)はい。
T23:これで全部終わりましたか。終わったね。今の姓もよ‑く考えてるし、だれだれはこう言っ たっていうことを、うまくまとめてくれましたね。えー、司会者の人うまくほんとに、みんなの 意見をよく聞いて、しっかり発表できてるの感心しました。ちょっと見てみようね。あのごんぎ つねが、と、あのごんぎつねめが、ではどうちゃいますか。
T24: 5人。はい、今、手挙げとったの立って。まったく同じ意見やったら座ってね。はい、 G 君どうぞ。
C38: (G)えっとぼくは、あのごんぎつね、 「め」が入っていたら、えーっとなんかだいぶ怒っ ているような感じで、 「め」が入っていなくって、あのごんぎつねが、だったらあんまり怒って いるようじゃないと思いました。
T25:はい、どうぞ。
C39: (U)えっとわたしは、えっと、もし「め」がついていたら、えっとすごく普通じゃなくっ て、えっともう、えっとすごく怒っているぐらいで、 「め」がついていなかったら、えーっとえ 普通にえーと、怒っているだけだと思います。
T26:はい。
C40: (Q)んと、わたしも、 G君たちとよく似ていて、 「め」がついていたら、えーっともう 本当に殺したいぐらいめちゃくちゃ怒っているという感じがして、 (T :うーん。)) 「め」がつい ていなかったら、普通の怒り方という感じがすると思います。 (T :うん。)
T27:はい、 Sさん。
C41: (S)はい、わたしは怒っているとおんなじで、よく似ていて、 「め」がついていたらむ かついているという感じがすると思います。
T28:はい、 Kさん。
C42: (K はい、えーっとみなさんこちらをIfl]いてください。わたしは、 「め」がついていた らすごく憎んでいるっいう意味で。
T29:ん一、うん。
C43! (K 「め」がついていなかったら、ただ怒っているだけと思います。
T30:うーん。だから今みんなの、殺したかろか、憎んでるよっ、そんな感じなんだね。だれか 兵十の、その顔かいてくれない。いますぐ。どうぞ。はい、 Aさん、どや。はい、どうぞ。
C44: (A)どんな顔でもいいん。
T31:いいんですよ。ん一。こんな感じ、 (笑い)ねえ。これうまいね。すごいすごい、すごいね。
(拍手)じょうずだね。そしたらでも、この、兵十の気持ちっていうのは、この後変化していく よね。何を見た時から、兵十の気持ちは変わりはじめるんですか。
C45: (手を挙げる。)
T32:はい、 H君、お互いにあてていって。 H君。
C46: (H)はい、えーっと、ぼくは、えーつと、土間に栗がかためてあるのがっていうところ から、くっ栗を、を、見たから兵十の気持ちが変わったと思います。
T33:はい。
C47: (H) T君。
C48: (T)えっとぼくは、 H君とちょっとだけ似ていて、 (T:うん。)えっとぼくはごんが、
えっと栗を兵十のために持ってきたから(T :うん。)気が変わったと思います。 (T :うん。)
6
松 川 利 広・松 本 菅T34:何を見た時から。
C49:M君。
C50:(M)はい。ぼくもT君とか、H君とかによく似ていて、土間に栗がかためて置いてある のに、えっと置いてあるのが目についた、ついた時から、えっと気が変わっていったと思います。
T35:うん。それ以外の答えの人いますか。それ以外の人。はい、Kさん。
C51:(K)えっと、わたしは、土間に栗がかためて置いてあって、それだけだったら誰が持っ てきたかわからないから、(T:うん。)えっとごんは、えっとごんを見て入っていったのも栗を 置くためだったから、栗とごんを見て気が変わったと思います。
T36:なるほど。どちらを先見たの。
C52:(口々に)栗。
T37:栗やね。この時から変わりはじめた。じゃあね、どうしてごんはわざわざ土間に栗をかた めて置いたんでしょうか。(間‑約6秒)どうして。
C53:(考えている)
T38:栗をかためて置かなくってもバラバラでもいいんじゃないの。
T39:どうしてわざわざごんは葉をかためて置いといたの。
(約25秒後)
T40:3人だよ。3人。どうや。
T41:はい、Iさん。
C54:(I)わたしは、えっと、ばらばらに置いといたら、ひとつずつひらわなくちゃいけない から、えっとえっと、ごんは、えっとかためて栗をおいといたと思います。
C55:(T)ぼくもIさんとおんなじで、えっと、ばらばらに置いたらえっと、えーっと、とる のがめんどうくさい、から、えっと、かためて置いたと思います。
T42:うーん、まだ当たってない、当たってない人。先あてて。
C56:Uさん。
T43:はいっ、Uさん、どうぞ。
C57:(U)えーつと、わたし‑が‑、えーっと、えーっと、わたしは、えっと、ばらばらに置 いといたら、えと、ごんがばらばらにするときも、えっと、音がIij
Mlるから、えと、気づいてしま
うから、兵十が、気づいてしまうから、つと、わたしは、かためて置いといたと思います。
T44:ほお一。すごい意見だね一。
C58:H君。
C59:はい。えーっと、ぼくもT君たちと同じで、えーっと、かた、えっとばらばらにおいとく と、えと、ひょ、えっと栗をもらってうれしい気持ちなんだけど、ひらうのがえーっと、ひらう ときに、いやな気持ちになったらだめだから、えっとかためておいといたと思います。
T45:ふーん。
C60:Sさん。
C61:(S)はい。わたしは、なんでかためといたかというと、たぶん、かためておいてへんだ ら、んと一葉がころころ‑ってころがっていって、兵十にあたって、気づいてしまうかもしれな いからだと思います。
T46:へえー。
C62:N君。
C63: (N)えと、ぼくは、 H君に似ていて、えーっと、もしもえーっと栗を、うー、おいとか な、あー、かためておいとかなかったら、えっとせっかく、えっと、いいような気分になってき たのに、えと、また、えっと、怒っ、怒ってしまうからです。 (T:うーん。) Kさん。
C64: (K)えっと、わたしは、なぜ栗をかためておいたかというと、えと、もし栗がお、たく さんあったり大きかったりしたら、まとめておいたほうが、兵十に気づいてもらえると思うから、
(T :うん。)わたしは、固めて置いたと思います。 0君。
T47:ほ‑。 0君出番ですね。
C65! (0)えっと、ぼくもKさんと少しにていて、 (T :うん。)えっとか、えっとかためてお いとかなかったら、ぜんぶ、えーぜんぶ兵十がみつけられないかもしれないから、えっと、かた めておいたと思います。
T48:あー、なるほどねえ。
C66:G君。
C67! (G えっとぼくもみんなによくにていて、えっとかためておいとかなかったら、えっと 兵十は、だれかがもってきたとかそんなんじゃなくて、あっ、こんなところに栗がころがってい るだけだとかそういうふうにおもったりしたらだめだし、えっとあとで、なんかたべたりするの にも、あつめるのにもたい‑んじゃないから、かためておいといたと思います。
T49:うーん。あと一人だけ、じゃ、 F君。
C68: (F)えっと、ぼくはみんなとちがって、えっと、つぐないということばから、つぐない はふつうえっと、ばらばらにおいておくと、えっとそんなに、えっと、心がこもっていないし、
えっと、えー、つぐないやったら、えー、人間と人間だったら、えっと、ことばをしゃべって、
ごめんねとかゆってものをわたせるけど、えっと、きつねと人間だったら、しゃべれないから、
えっと、気持ちだけでも、えっと、相手に伝えたいから、えっと、固めて置いたと思います。
T50:は‑。なるほどね。深く考えましたね一。えー、みんなの意見を聞いて、だんだんみんな もねえ、深く考えられるようになったね、うーん、 G君もよく考えましたね。じゃあ、この、う ちのなかをみるとっていうところから、あとのところを、全員でちょっと読んでみましょう。さ ん、さいごまでいくんだよ、さんはい。
C69: (全員)うちの中を見ると、土間に栗が固めて置いてあるのが目につきました。おや、と、
兵十はびっくりしてごんに目を落しました。「ごん、おまえだったのか、いつも栗をくれたのは。」
ごんは、ぐったりと目をつぶったままうなずきました。兵十は、火縄銃をばたりと、とりおとし ました。青いけむりが、まだつつぐちから細く出ていました。
T51:気づいた後、ごんは、ぐったりと目をつぶったままうなずきました。兵十は、火縄銃をば たりと、とりおとしました。このときの、ごんと兵十の、顔の表情と、そして、心の中で思った ことはどんなことでしょうか。ワークシートに書きなさい。時間は5分間です。よ‑い、始め。
両方描くんだよ。
C70: (N)先生、ごんの顔って、ごんの気持ちですか? 顔を。
T52:顔を描いて、その時のごんが思った(ている)ことを想像して。
C71: (N)死んだ。
T53:前貼って。
T54:えー、まだ時間ありますから、他のなんか残っていることを詳しく描いてくれてもいいよ。
C72:終わって下さい。
8
松 川 利 広・松 本 哲T55:いいですか? ていねいに描いてくれましたね。
T56:じゃ一、 6人の人、前にでてきて下さい。
T57:それじゃあ、ごんから、あ、兵十からいきましょうか。全員座って。はい、兵十のそれじゃ こちらからいきましょうか。あ、こちらからいきましょうか。
C73: (N)えっと、おれはなんてことをしたんだ、と思っていたと思います。
C74: (C)えーと、ぼく、ぼくはこの顔で、ごん、おまえだったのかって思っているいる、あ のゆっていると思います。
T58:ん一。はい。
C75: (Q)わたしの顔はこれです。思っていることは、疑ったりしてごめんよ、ありがとう。
と思っていると思います。
T59:はい。
C76: (M)えーと、ぼくが描いた顔はこれです。それで思っていることはやっと気づいてくれ たんだねって描きました。
C77: (J えっとわたしは、うれしいな気づいてくれて、でももう少しはやく気づいてほしい なと描きました。
T60:はい。
C78: (E)えっと、わたしの描いたのはこれです。えっと、やっと気づいてくれたね、兵十と 描きました。
T61:はい。はい。 6人の人しっかり言ってもらったね。拍手してください。もどっていいよ。
それじゃ‑こうだけどもこの6人、まあー、ごんと兵十の表情見て友達に言いたいことないです か。 Bさん、次、 P君。
C79: (B えーと、わたしはEさんに感想をいいます。 Eさんの絵は、えっと、この文とあっ ているからいいと思いました。
T62: Eさんどうですか。
C80: (E)えーと、ありがとうございます。
T63:はい、次どうぞ。
C81: (P)えーと、ぼくはM君に質問します。なぜあれは日のとこが、へにゃ‑にゃなんです か。
C82: (M)えーと、死んだからどうなっているかわからないから、あ‑ふにゃふにゃにしとき ました。
C83: (P ありがとうございました。
T64: P君あてていって。
C84: (P) さん。
C85: (Q)はい。えーとわたしもM君に質問します。えーとあのごんは、えーと、笑っている んですか?
C86: (M)はい、ちょっと笑っています。気づいてくれたからです。
C87: (Q)ありがとうございました。 LJさん。
C88: (U)えーと、わたしはJさんのに感想をいいます。えーとわたしはJさんのことばに、
が、え、えーと、絵は安心している顔みたいだから、えー、いいと思いました。
C89: (J)ありがとうございました。
T65 :あー安心ね。
C90: J) Aさん。
C91: (A)えーとわたしもJさんのに、えーと感想、 JさんのとEさんのに感想を言います。
小百合さんは、えーと、うれしいな気づいてくれてっていってその顔にあっているし、 Eさんは やっと気づいてくれたね。だっ、涙をながしているからあっていると思いました。
C92: (J)ありがとうございます。
C93: (A) Sさん。
C94: (S)はい。わたしはJさんに感想をゆいます。 Jさんの言葉のでももう少しはやく気づ いてっていう言葉がいい言葉だなあと思いました。
T66:ね一、うーん C95: (S) Kさん。
C96: (K えーとわたしは、 Qさんの顔に感想を言います。 Qさんの顔はみんなと目が違って、
えーとマンガっぼくなくてなんか、本物の目みたいに黒い所を真ん中に描いて、えーと、まるで 囲んであるから11二夫しているなあと思いました。
C97: (Q)ありがとうございました。
T67:まだ今日一回も発表してない人いますか。まだ発表してない人いますか。いませんか。い ますか。はい、じゃ‑F君とD君と‑、 M君から。
C98: (F)えーと、 Qさんに質問します。ありがとうっていうのは、えーと、ごんが栗をくれ たからですか。
C99: (Q)はい。
ClOO: (F)ありがとうございました。
T68:それでいいんやね。君の意見もそれでわかっているんやね。はい。
ClOl: (M)えーと、ぼくもQさんに質問します。えーと、 Qさんはどうしてまゆ毛をぐにゃっ てしたんですか?
C102: (Q)えーと、えーと、うって、ごんをうってしまって、えーと、土間を見たら栗がお いてあったからかなしくなってぐにゃっとしました。
C103: (M)ありがとうございました。
T69:はい、えーと、ちょっとこの顔は合わないな、このゆっていることはあわないなっていう のはありますか。(間)ちょっと、ぼくの考えとはちがうなあっていうのはありますか。(間)ちょっ と、あるの、はい、 P君、どうぞ。
C104: (P)えーと、ぼくはなに一、 M君のはおかしいと思います。
T70:どうして、ゆうたって。
C105: (P)理由はないです。
T71・ C106:バッハ一。
T72:はい、 Sさん。
ciO7: (s)はい。わたしもM君の顔がちょっとおかしいと思います。あっ、わたしは苦しん でる顔にしました。なぜかというとうって痛いのにそんな笑ってられないと思います。
C108: (M)じゃ‑苦しんでいる顔というのはどういうのですか。
T73:M君どう思う?
clO9: (s)えーと、うーん、うーん、ほんで笑ってしまったでは、あかんわ。
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松 川 利 広・松 本 暫cno: (m)わからないと思います。
T74:じゃ一、 Sさんの見せたって。
cm: (m)えーこれどんなん?
T75:このことについてなんかありますか。
C112: (M) Sさんのもへんだと思います。
T76:お互いへんないいあいして‑ね一、でもやっと気づいてくれたんだねっていう、そういう 気持ちがちょっとあらわれてるのかもわからないね一。でも苦しいね一。ほんとにね‑。まだあ りますか。はい。それじゃ‑はじめ、こんな顔をしていた兵十がごんをどんとうっちゃって栗が かためてあるのに気づいて、そして、こういうふうに変わりました。前の日に、おれはひきあわ ないなあと思ってたごんがさいごこんなふうに変わりました。
最後の文を、を書いてありますね。青いむりがまだつつぐちから細く出ていました。こういう 終わり方でごんぎつねは終わっています。これで、えー、ごんぎつねの授業、話し合いの所は今 日で終わりですね。あしたから、えー、粘土、紙粘土で、えー、印象にのこった所をつくってい くことになります。じゃ‑今日のまとめをしてください。
C113: (U)今から自分のふりかえりをしてください。
(チャイム)
T77:書けた人から立っていってください。はい、お願いします。
C114: (U)えーと、ふりかえりを‑蛙の人ゆってください。
C115: (N)えーとぼくはえーと、せん、先生方に、えーと、気にしないでやろ‑だっだって、
ぜんぜん気にしないでできたです。
C116: (B)わたしのめあては、聞き手を見て絶対うなづいてあげるで、うなづいてあげられ たのでよかったと思ったと書きました。
C117: (L)わたしのめあては、みんなの意見をしっかり聞くで、えっと、聞いてたからでき たにしました。
C118: (P)えーと、ぼくのめあては、えーと、しっかり発表しようだっ、だった。ふりかえ りは、えーと、 2回発表できた。
T78:はい。
C119: (U)先生、お願いします。
T79:はい、えーと、今日は遠くから先生方もお見えになりましたが、みなさんとてもよくがん ばれました。えー、緊張もしたかもわからないけれども、自分からすすんで手をあげて発表した のはたいへんよかったと思います。それからみんなで話し合うことで、特にこのあたり、とって も深まったね。あーしてみんなの友達の意見を聞いて、えー、深めていくことがとってもだいじ だなあと思いました。たいへんよくがんばれました。じゃ‑終わりましょ一。
C120: (U)これで国語の勉強を終わります。ありがとうございました。
C121・T80:ありがとうございました。
T8i:ありがとうございました。
3.授 業 分 析
この章では、指導者の立場から、 1章で述べた「環境作り」の観点を踏まえながら、本時の授 業展開が「生きる力につながる」内容を有していたか検証していくことにする。また、その検証 過程において問題点があれば、その解決の方向を探るように努めたいと考えている。
はじめに、授業の流れの概観する。
①本時の「開く・話す・話し合う」に関する学級と個人のめあてを確認をする。
② 「六の場面」におけるごんと兵十の心情の変化を蚊やみんなで話し合う。
③各自のめあてが達成されたか、振り返る。
②の話し合いの場面における主発間(子供側から見れば「話題」と言える。)は、以下に記す 5つ用意した。
・発間1 兵十はね、どんな気持ちで、今戸口から出ようとするごんをドンと撃ったのでしょう。
・発間2 あのごんぎつねが、と、あのごんぎつねめが、ではどうちゃいますか。
・発間3 この兵十の気持ちっていうのは、この後変化していくよね。何を見た時から、兵十の 気持ちは変わりはじめるんですか。
・発間4 栗をかためて置かなくってもバラバラでもいいじゃないの。どうして、わざわざ、ご んは栗をかためて置いたの。
・発問5 気づいた後、ごんは、ぐったりと目をつむったまま、うなずきました。兵十は、火縄 銃をばたりと、取り落としました。この時の、ごんと兵十の顔の表情と、そして、心の 中で思ったことはどんなことでしょうか。
話し合いの形態は、発間1が班と学級全体、発間2‑発問5は、学級全体である。それでは、
主発間である発問1、発間2、発問4、発間5という4つの発間ごとに、成果と問題点を分析し ていくことにする。
まず、発問1 「兵十はね、どんな気持ちで、今戸口から出ようとするごんをドンと撃ったので しょう。」に対して行われた学習活動から見ていくことにする。この発間は、 「‑から五の場面」
を振り返りながら、兵十がごんに対してどのような心情を抱いていたかをとらえさせるためのも のである。一人一人の子供が自分の考えを発表できるように配慮して、姓の話し合いの時間を取っ ている。授業記録としては残されていないが、各坊の話し合いの流れは、 ①司会者(1名)が中 心となって話題を確認する。 ②班の構成員が各々の考えを発表する。 ③司会者が中心となって班 の考えを要約する。という流れになっている。姓の全員が、話し合いの記録をとっている。従来、
班単位の話し合いは、子供が声を落として話し合う様子を蜂の羽音(バズ)に例えた「バズ・セッ ション」、 6人ずつ、 6分話し合う「六六討議」などの呼称で呼ばれているが、今回は、 「六六討 議」をアレンジした、 4人〜5人の姓で、 5分間、話し合いを行っている。
5分後、 C19の子供から「私たちの姓はまだ話し合いがまとまっていないので、もう少し時間 を下さい。」と話し合いを続けたい要求が出ている。授業における発言を、 「授業を進める発言」
と「内容にかかわる発言」に分類した場合、この発言は、 「授業を進める発言」にあたる。子供 自らが時間延長の要求ができることは、子供自身が主体的に授業に参加していることの表れとし て受け正めることができよう。
その後、 5名の姓の代表者が、それぞれの姓で話し合ったことを全体の場で報告している。こ の5人の発言を詳しく分析してみると、 C36の子供の発言が、聞き手を意識した分かりやすい表
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松 川 利 広・松 本 哲硯であることが分かる。まず「わたしが、えっと、ぬすみやがった、という言葉から、またいた ずらをLに来たなと兵十が勘違いしてドンと撃ったと言いました。」と自分が発言した内容を説 明している。そして、 「○○君もぬすみやがったという言葉からもういたずらをできないように してやると思ったと言いました。」 「○○さんはいたずらという言葉からいたずらしないようにし てやろうと思ったと言いました。」 「○○君もぬすみやがったという言葉からおっかあのうなぎを ぬすみやがって、殺してやると思っていると言いました。」と、根拠を示す言葉を本文中から抜 き出し、理由を示す文節として挿入しながら、友達の発言を端的に要約して、全体の場で伝達し ている。 「○○君は、 ○○という言葉から○○と思ったと言いました。」という話型にあてはめた 発言ではあるが、主述関係がきちんと整っているので、聞き手にとって分かりやすい発言となっ ている。
話し合いの場面で大切にされるべき基本的なことは、 「一一人‑Ill‑人が自分の考えを相手に伝えら れる。」ということである。その意味からも、 C36の発言は、姓の考えを代表して伝える際のモ デルと言える。しかし、他の4名の子供の発言は、話し合った内容を第三者に伝える際の発言と しては、課題が残る。そのことを、 4姓の代表者の発言C25 「えっと、わたしたちの蚊で決まっ たことは、私がうなぎをぬすみやがった、というところからおっかあの恨みだと思っていると思 います。」 C26 「えっと、 00さんが、村、いたずらっていう言葉から村でいたずらをしている のでおれが殺してやるって思っていると思います。〕」 C27 「00君は、ときつねがって言葉から、
あのいたずらぎつねめ、またきたな、殺してやると思っていると思います。」 C25、 C26、 C27 はIu‑J‑人物)をもとに、考察を進める C25の発言は、 「私たちの姓で決まったことは」と前置 きし、その後、 「00が00と思っていると思います。」という文末表現で自分と2人姓員の考え を報告している。このように、基本話型の習得には個人差があり、それに対応した学習指導を施 そうとすると、本時のような一斉型授業では限界があることが分かる0
そもそも、この話し合いは、兵十の心情を考えさせるために行ったものであり、一人一人の多 様な読みが保証されなければならないが、それを「決まった」という言葉を用いて報告している 実態に照らしてみると、 「文学教材の読み」と学級会活動における話し合いとの差異が十分子供 たちには認識されていないことに気付かされる。この子供(C2^、 C26、 C27)には、話し合う ことは「結論を導きHけこと」 「立場を一つにすること」という意識があり、無意識的に、発言 の中にこの言葉を使ったのではないかと考えられる。話し合いは、結論を専きLLlけためだけに行 われるものではない。特に、文学教材の授業においては、お互いに自分の考えを述べ合い、それ ぞれが自分の立場で受けl上め、姐噂し、そこに「いい考えだね。」 「ぼくは、気づかなかったよ。」
と意味付けをし合うことにより、話し合いをする意味が生まれてくるのである。自分の思いを言 葉にすることができた、そして、それが、友達から認められ、意味付けをされて言葉が返ってき た、このような経験を適して、子供たちは集団の中で認め合いながら学ぶ楽しさ、対話の楽しみ を感じ取っていくのではないかと考える。
話を授業の実際に戻すと、この子供自身も、何とか、既習のある話型にあてはめて話そうと努 力するのではあるが、思うように、自分の思いがうまく言語化できなくて困惑するばかりである。
さりとて、姓員の考えを明快に伝達する構文が見当たらない。分かりやすく話したいのだが、ど うもうまくいかないというジレンマを本人が抱いていると思われる。このような子供に対して、
どのような導きをすればよいのだろうか。まず、本人に「私は、班の代表として、みんなの意見 を伝える時に、どうもうまくいかない。」というように具体的な課題を意識させることが大切で
あろう。自分の課題が明確になることによって、学習への意欲が喚起されるからである。 「健全 な自己評価は、健全な他者評価によって育まれる。」という言葉もあるように、教師は、適切な 時に適切な内容を子供に示すことを、子供の主体性を重んじることに固執するあまり、恐れては ならない。確かな学力を子供に保証することも教師の責務であり、子供がたくましく生きていく ための基礎となるからである。ただし、この示すタイミングは、子供の問題意識の流れに添うも のでないといけないことは言うまでもない。また、課題の意識化の他に、次のような個に対応す る指導も考えられる。この場合、 「AさんがBさんの話を聞いて、 Cさんにその内容を伝える際 の話し方」を身につけることが課題となる。
本時の授業記録を見ると、指導者が、この子供の発言に対して、直接、評価したり指導したり している言葉はなく、姓全体に対して、 T21 「この姓もよく考えましたね」とほめているだけで ある。佃の変容を考えるならば、指導者自身が、伝達の言い方として適切かどうかという観点を 持ち、瞬時に、この子供の力を見極めることが必要であったのではないだろうか。そして、 「思っ ていると思いますという話し方で、いいのかなあ?」と聞き返せば、 「○○君は、 ○○と思って いると言いました」 「○○君からは、 00という考えが出されました」などのいくつかの伝聞の 言い方を見つけ出したのではないだろうか。一般的に、 「話し合う力そのものを育てる授業と、
話し合いを実際にする授業とは、分けて考えなければいけない。」と言われているが、このよう な実態を目の当たりにする限り、小学校においては、実際に話し合う場面でも、教師による直接 的な指導の必要性を感じる。また、本時において、指導する時間が兄い出せない場合は、翌日、
国語科の時間に、個別、小集団を単位とした、取り立て指導を行い、次の時間の話し合いの場面 で、 C25を意図的に指名し、その成長ぶりを教師が認め、自他共に喜び合う場を設定することに より、学んだことが実際の場面で生きたという喜びを味わわせることができる。つまり、基本的 な技能を身につける練習をした後で、それを、話し合うという実際の授業の場繭で確かな力とし て身に付けさせていく方法を講じるのである。このような手だてによって、子供は時間を迫った 自分自身の成長(‑変容)に自信と喜びを抱くことができ、ひいては学ぶ意欲を高めることがで きると考える。教師には、その場に応じた共時的(l朋寺的)な導きと、時間の経緯に沿った適時 帆(継続的)な淳きとが求められているのである。
以上、 「話し合い」というのはどんな意味を持つのか、話し方に課題を残す子供に対して、ど のような導きをすればよいかということについて、考察をした。
それでは、次に、発間2 「まず、あのごんぎつねめがとあのごんぎつねでは、どうちゃいます か。」という話題に対して、どのように子供が話し合いを進めたか見てみよう。
この発間は、予め、準備していたのではなく、姓の代表者の発表を開いていると、 「め」に着 目した発言がなかったので、急速、発問したのである。
言葉からイメージ化させるには、次のような、いくつかの具体的な手だてが必要だと思う。
①言葉の有無で、どのようにイメージが違うか。
(2)類義語と比べて、どのようにイメージが違うがo
・笠他のどの言葉とつながりから、その言葉のイメージをえがく。
今回は、 ①の手だてで、 「兵十のごんに対する気持ちの強さ」をイメージ化させようとしたの である。つまり、接尾語の関係に着目し、 「め」の有無でイメージがどう違うかという対比的な 見方を育てたいという思いから、発問したのである。
この発問に対しては、時間がなかったので、 4人の子供を指名した。
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松 川 利 広・松 本 哲まず、 C38は、 「めが入っていたら、えーっとなんかだいぶ怒っているような感じで、めが入っ ていなくって、あのごんぎつねがだったら、あんまり怒っているようじゃないと思いました。」
と発言し、 「だいぶ怒っている」 「あんまり怒ってるようじゃない」と、対比した言い方をしてい る。続いて、 C39は、「もし、めがついていたら、えっとすごく普通でなくって、えっともう、えっ とすごく怒っているぐらいで、めがついていなかったら、えーっとえ普通にえー、怒っているだ けだと思います。」と発言している。 「ものすごく普通でなくて」と、 C38の考えとは違う表現を まず行い、その後、 C38に影響された「ものすごく怒っているぐらい」とよく似た表現を繰り返 している。ここには、 C38の影響を受けつつも、何とかして自分の言葉で話そうという努力が見 られる。 C40は、 「わたしも、おくたにくんたちとよく似ていて、めがついていたら、えーっと もう本当に殺したいぐらいめちゃくちゃ怒っているという感じがして、めがついていなかったら、
普通のおこり方という感じがすると思います。」と発言している。 「○○君たちとよく似ていて」
と、前に発言した2人の発言を受ける形で、 「本当に殺したいぐらい」という「ごんぎつねめ」
につながりのある他の言葉と結びつけて、発言している。 C41は、 「めがついていたらむかつい ているという感じがすると思います。」と、 「怒っている」という言葉を使わないで、 「むかつい ている」という新たな言葉で、自分の思いを表現している。以上のことから、 C38からC41まで の4名の子供は、発想は同じだが、つとめて、自分の言葉で言い表そうと努力していることが分 かる。また、しっかり友達の意見を聞き、それに関連づけたり、新しく付加したりしながら、話
し合いを展開していることも認められる。
しかし、これら5人の発言は、 「あのごんぎつね」と「ごんぎつね」との言葉の比較をしてい るだけで、物語の展開、つまり、時間の流れをふまえながら、この問いに答える姿勢に乏しい。
兵十のごんへの思いを時間軸で見るとするならば、あらすじに即して、次のような発言が期待で きるのではないだろうか。 「村人にいたずらをし、兵十がおっかあのために取ろうとしたうなぎ も逃がしてしまって、兵十は、ごんのことをいまいましいきつねと思うようになった。その憎々 しさを表すために『め』がついていると思う。それほど、兵十の気持ちは、だんだん高ぶってき ているのだと思う。 『め』がないと、この時の兵十の思いはうまく伝わらないと思う。」つまり、
局面だけに目を奪われ、そこに時間軸に基づいた兵十の気持ちの変化が付加されていないのであ る。呼称の変化を追うことは、人間関係の変化を追うことである。このような時間軸に沿った呼 称の変化を見ることの観点を持った子供は、自ずから、次の「ごん、おまえ」という呼称の変化 に気づいていくであろう。このように、物語を場面ごとに区切って思考させると、子供の思考も 場面ごとに限定され、分断されてしまう傾向にあるようである。この場合、子供には、 「六の場面」
が「‑一から五の場面」の延長にあるということを強く意識をさせるような支援が必要であったよ うに考えられるが、一一万において、場面ごとに詳しく読むことが、子供の思考の実態にそぐわな いことの表れとして受けl上めることもできよう。以上、子供は自分の言葉で話そうと努力してい るが、その発言は、物語の展開、時間の経過を意識したものではないので、つねに、子供も教師 も時間軸を意識して、授業に臨まなければならないということを述べた。
次に、発問4 「どうして、ごんは、わざわざ、土間にくりを固めて置いたのでしょうか。くり を固めて置かなくても、バラバラでいいんじゃないの。どうして、ごんは、くりを固めて置いた の。」という話題をもとに展開した話し合いを考察していくことにする。
この発問に対して、 C54、 C55、 C57、 C59、 C61、 C63、 C64、 C65、 C67、 C68という10 人が発言している。この10人の発言を要約すると、次の①から⑲に置き換えられる。
① ばらばらに置いといたら、 (兵十が)ひとつずつひらわなくちゃいけないから。
② ばらばらに置いたら、 (兵十が)取るのがめんどうくさいから。
③ ごんが(栗を)ばらばらにすると、音が出る。すると、兵十が気づいてしまうから。
④ ばらばらにおいとくと、 (兵十が)ひらう時に、いやな気持ちになったらだめだから。
⑤ 固めて置いて‑んだら、くりがころころ‑ってころがっていって、兵十にあたって、気づい てしまうかもしれない。
(む もしも、くりを固めて置いとかなかったら、(兵十が)いい気分になってきたのに、また、怒っ てしまうから。
⑦ もし、くりがたくさんあったり、大きかったりしたら、まとめて置いた方が、兵十に気づい てもらえるから。
⑧ 固めておいとかなかったら、全部、兵十が見つけられないかもしれないから。
⑨ 固めておいとかなかったら、兵十が、だれかがこんな所にくりがころがっているだけだと思っ たりしたらだめだし、集めるにも大変だから、国めておいといた。
⑲ つぐないということばから、考えた。ばらばらにおいておくと、そんなに心がこもっていな い。つぐないやったら、人間と人間だったら、ことばをしゃべって、ごめんねとか言って物を わたせるけど、きつねと人間だったら、しゃべれない。気持ちだけでも、相手に伝えたいから、
固めて置いた。
上記の発言は、次のように4つに分類できる。
兵十がどう思うかに焦点を当て ごん自身の身の安全から考えた
①e@(亘)(亘X9
、丸さ'、
・気づいてほしいというごんの切ない願いから考えた発言 一 一〜‑・・‑(令
・ 「つぐない」という言葉から、ごんと兵十の心の適い合いを考えた発言‑・‑㊨
これらの発言は、ただ思いつきを羅列しているのではない。兵十の目、ごんの目、兵十とごん を外から見た目という3つの視点に基づき、いろいろな層から発言しているのである。このよう に、子供から多様な発言が自主的になされたことは、成長した事実として認められる。
しかし、この話し合いからもマイナス面を4点ほど指摘できる。
1点目は、子供が一生懸命考えた個々の考えを、全体の場で深められなかったということであ る。もし、この発問を中心に授業を展開するとすれば、次のような流れが考えられる。子供の発 言を先に分類した4つの観点で整理しながら、板書をする。 ‑類型化されたの考えの特徴を一言 で言わせる。
く発間例) 「だれの立場に立って、考えているのですか。」一子どもの発言を認めながら、認識の 特徴を教師がまとめる。 ‑友達の発言を聞いて、 「新しく学んだこと」 「友達の考えの良さ」をも とにして交流を深める。 (発問例) 「友達の発表を聞いて、どう思いますか。」 ‑反対意見があれば、
話し合いをさせる。
このように、子供からHは:意見をそのまま放置しておくのではなく、ここぞという時にくさび を打てる力量が教師には求められている。「私が発言したことは、けっして無駄にはならなかった。
先生は、個々の考えを生かして、一段、高まったところへ私たちを導いてくださる。そして、そ のことで、自分自身も高まった。」と子供自身が自覚できるような、教師の導きが必要である。
2点目は、 1時間の授業における学習課題の数はどうかということである。前述したような授 業展開をすれば、この発間1つで、 45分は必要であろう。また、この発間から広げていけば、
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松 川 利 広・松 本 暫「ごんと兵十の心の変容をとらえる。」というめあてに迫ることも、十分可能である。 1時間の 授業における学習課題は、厳選しなければならない。
3点目には、自分たちの生活経験をふまえた読みができていないということである。もし、子 供に「ふだん、物を固めて置く時って、どんな時?」とたずねたとしたら、 「きれいにする時」
「気づいてほしい時」 「整理する時」などの自分たちの経験を振り返ることであろう。 「ごんぎつ ね」の世界という文脈において、言葉のイメージをえがかせる場合、個々の子供の生活経験に根
ざした言葉のイメージを大切にした学習指導が求められているのである。文学教材の場合、生活 経験を読みに反映させることを、レベルの低いこととせず、読みの原点はそこから始まるという 意識へと転換を図る必要がある。これぞ、個人差に対応した授業作りの原点であると考える。
4点目は、いろいろな物の見方・考え方を併記・網羅する形で授業を終えるのではなく、それ らをメタ認知的にとらえようとする姿勢を身に付けさせるような手だてを講じることができな かったということである。 「自分たちは、それぞれの興味・関心により、個別的に見ていたが、
物の見方・考え方には、ある種の系列があるのだなあ。今日の授業では、人の所作や行動を見る 時は、その人物の内側の視点からと、外側から視点から見ることができるのだ。今度、作品を読 んだ時は、一度、別の見方で考えてみよう。」というような態度を育てていくことにより、その 教材だけにとどまらず、他の教材を読む場合にも、応用力のある子供に育っていくものと思われ る。
以上、多様な考えが出された事実と、多様な考えの生かし方、学習課題の数量的な問題、生活 経験をふまえた読み、物の見方・認識方法について述べた。
最後に、発間5 「気づいた後、ごんは、ぐったりと目をつむったまま、うなずきました。兵十 は、火縄銃をばたりと、取り落としました。この時の、ごんと兵十の顔の表情と、そして、心の 中で思ったことはどんなことでしょうか。」について考察を進めたい。
「ごんぎつね」の授業は、話し言葉を中心に進めたいとの考えから、具体性のある話題が好ま しいと判断した。そこで、多くの子供が自分の思いを表現でき、楽しく授業に参加できることを 願って、絵画法を取り入れた。兵十やごんの顔を各場面の学習の終わりに書くことを適して、心 の変容をとらえさせようとしたのである。
それでは、顔の表情を絵に表したものをもとに、 6名の子供がどのような発言をしたのか、分 析することにする。まず、兵十の顔を描いた3人の発言は次のようなものである。
C73「おれはなんてことをしたんだ、と思っていた。」C74「ぼくはこの顔で、ごん、おまえだっ たのかって思っている。」 C75 「私の顔はこれです。思っていることは、疑ったりしてごめんよ、
ありがとう。」これらの子供の発言は、黒板に貼った顔を示しながら、兵十の気持ちを述べてい るのであるが、次のような課題が横たわっている。まず、先ほども述べたが、その発表内容が物 語の展開をおさえたものではなく、きわめて、場面的・局面的であるということが挙げられる。
次に、その発表の仕方が形式的で、自分がそこに表現したかった内容とできあがった顔の表情と を結びつけたものでないことも指摘できる。例えば、 「私は、兵十の目を垂れ下がっているよう に書きました。それは、兵十が自分につぐないをしてくれたごんを打ってしまって、大変悔しい 思いをしたことを表すために、目に上夫をしたのです。」というように言えば、絵画と自分の思 いが、 「ごんぎつね」という作品の内容から離れずに、うまく表現できるものと考えられる。さ らに、その発表が形式的なものに終わっていることが、後の意見交流が深まらなかった一要因に もなっている。そのことは、 C79「○○さんの絵はこの文とあっているからいい。」や、 C96「○