• 検索結果がありません。

レーザーの発振周波数制御に向けた高安定参照共振器の開発

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "レーザーの発振周波数制御に向けた高安定参照共振器の開発"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

‒ 243 ‒

レーザーの発振周波数制御に向けた高安定参照共振器の開発

管 野 敬 之  埼玉大学大学院教育学研究科

須 田 純 平  埼玉大学教育学部理科教育講座

近 藤 一 史  埼玉大学教育学部理科教育講座

大 向 隆 三  埼玉大学教育学部理科教育講座

キーワード:レーザー、ファブリー・ペロー共振器、安定化、共鳴周波数

1.はじめに

 レーザーから得られる光は、単一周波数の狭いスペクトルであり、指向性・集光性に優れてい るとともに、発振周波数を高速に制御できるなどの特徴がある1)。このような理由から、レーザー 光は医療、エレクトロニクス、物質加工など様々な分野に利用されている2)。基礎物理の分野では、

原子の分光実験へ利用されており、その成果によりミクロな世界の物理学である量子力学が飛躍 的に進展した。しかし、レーザー単体では発振周波数が時間的に不安定なので、レーザーを原子 の高分解能分光研究における光源として利用するには、その発振スペクトルを制御する技術が必 須となる3)

 レーザーの発振周波数を安定化させるには、今まで、原子ビームや温度安定化共振器を用いて レーザーの周波数をその共鳴周波数へ一致させる試みがなされてきた。原子ビームを用いる方法 では高い安定度が達成されるが、レーザーの発振周波数に応じて使用する原子を変えなければな らず、汎用性が低い。一方、共振器を用いる方法ではレーザーの発振周波数によらず使用できる ため高い汎用性を持つが、共振器長を一定に保つための温度制御を高精度で行うことが困難であ り、安定度が低い。このように、従来の方法では汎用性と安定度を両立することが困難であった。

そこで本研究では、レーザーの発振周波数安定化の方法として、原子の遷移周波数に安定化させ たレーザー光と常に共鳴している光共振器から参照信号を得る方法を提案し、実際に高安定参照 共振器を開発することを研究の目的とした。この方法の概略図を図1に示す。具体的には、ガラス の容器(セル)内に封入されたルビジウム(Rb)原子の遷移周波数に近赤外半導体レーザー(LD)

の発振周波数を安定化させ、共焦点型ファブリー・ペロー共振器の共鳴周波数をその発振周波数 に一致させる。この方法では、温度などの外的な環境の影響を受けずに常に一定である原子の遷 移周波数を基準として参照共振器の共鳴周波数を安定化させるので、その共振器の共鳴周波数は 非常に高い安定度を実現できる。さらに、共振器に用いるミラーの反射率を所望の波長に指定し て設計すれば、この共振器は発振周波数を問わずにあらゆるレーザーに対する参照信号を供給す ることができる4)。すなわち、本研究の成果により高い安定度と広い汎用性を両立するレーザーの 発振周波数安定化技術を確立できると期待される。我々はRb原子の遷移周波数に近赤外LDの発 振周波数を安定化させることに成功しており、その発振周波数の変動は100秒で0.7MHz以内に抑 えることができた5)。0.7MHzという周波数変動は、原子の吸収スペクトルの自然幅の10分の1程 度の値であり、共振器安定化のためのレーザー光として十分な性能であると言える。本研究では この安定化近赤外LDを共振器安定化のための光源として使用した。

埼玉大学紀要 教育学部,64(2):243-250(2015)

(2)

‒ 244 ‒

 本研究成果は、新しく発明された紫色域のGaN半導体レーザーへ応用する計画をしている。数 多くの原子の共鳴周波数がGaN半導体レーザーの発振波長域に存在しており、このレーザーの安 定化技術の確立は原子の量子縮退や量子状態制御の研究など、今後の学術研究を遂行するうえで 非常に重要である。

2.ファブリー・ペロー共振器の設計・製作と共振器長制御

 レーザーの発振周波数を制御するための参照信号を供給する参照共振器について、設計と製作 を行った。我々が設計した共振器は構造的に高い安定度を有する共焦点型ファブリー・ペロー共 振器で、胴体部の金属円筒の両端に高反射ミラーを取り付けたものである。その概略図を図2に 示す。本研究では共振器長制御のために近赤外LD光を用いることと、この共振器のGaN半導体 レーザーの制御への利用を予定していることから、ミラーは波長780nmと399nmの両方に対して 反射率97%に設計した。また、周囲の温度変化に伴う共振器長の変化をなるべく避けるために、

室温における線膨張率が0.13×10-6 1/Kと極めて小さなスーパー・インバーを使用して金属円筒 を製作した。さらに、ミラーと金属円筒の間にはピエゾ素子を取り付け、共振器長をピエゾ素子 に印加する電圧で精密に制御できる仕組みにし、入射LD光に対して常に共振器を共鳴状態に維持 させることを試みた。共振器の設計上の性能は、自由スペクトル領域(FSR)が250MHz、フィネ スが51.56、周波数分解能は4.8MHzとなった。

 実際にこの共振器を組み立てた写真が図3である。この共振器の性能を、安定化近赤外LD光を 用いてチェックした。共振器にレーザー光を入射させ、ピエゾ素子に電圧をかけて共振器の共鳴 周波数を掃引させながら、共振器の透過光強度を測定して干渉フリンジを得た。これにより得ら れた結果が図4である。横軸が共鳴周波数、縦軸が透過光強度を表している。図4では2つの鋭 いピークが観測されているが、ピーク間の周波数はFSR(250MHz)であるので、それとの比較 によりピークの半値全幅(周波数分解能)を見積もると、14.3MHzという値が得られた。これは 設計値より大きな値であった。この差が生じた理由は、実際の共振器長の設計値からの差や、共 振器と入射光との間のモードマッチングの不完全などが挙げられるが、原子の自然幅が数MHz程 度であることを考慮すると、この性能でも本研究の目的を達成する上で支障ないと判断して、現 状のままこの共振器を参照共振器として使用することとした。

 次に、共振器長を何も制御しないときの共鳴周波数の変化を測定した。安定化近赤外LDから出 力された光を共振器に入射させ、透過光強度が時間とともにどの程度変化するかの結果から共鳴 周波数の変化を求めた。まず、ファブリー・ペロー共振器のピエゾ素子に直流電圧を加えて、入

図1.共振器安定化実験概略図

究ではこの安定化近赤外LDを共振器安定化のための光源として使用した。

本研究成果は、新しく発明された紫色域のGaN半導体レーザーへ応用する計画をしている。

数多くの原子の共鳴周波数がGaN半導体レーザーの発振波長域に存在しており、このレーザ ーの安定化技術の確立は原子の量子縮退や量子状態制御の研究など、今後の学術研究を遂行 するうえで非常に重要である。

2.ファブリー・ペロー共振器の設計・製作と共振器長制御

レーザーの発振周波数を制御するための参照信号を供給する参照共振器について、設計と製 作を行った。我々が設計した共振器は構造的に高い安定度を有する共焦点型ファブリー・ペロ ー共振器で、胴体部の金属円筒の両端に高反射ミラーを取り付けたものである。その概略図を 図2に示す。本研究では共振器長制御のために近赤外LD光を用いることと、この共振器のGaN 半導体レーザーの制御への利用を予定していることから、ミラーは波長780 nmと399 nmの両 方に対して反射率97 % に設計した。また、周囲の温度変化に伴う共振器長の変化をなるべく 避けるために、室温における線膨張率が0.13×10-6 1/Kと極めて小さなスーパー・インバーを 使用して金属円筒を製作した。さらに、ミラーと金属円筒の間にはピエゾ素子を取り付け、共 振器長をピエゾ素子に印加する電圧で精密に制御できる仕組みにし、入射LD光に対して常に 共振器を共鳴状態に維持させることを試みた。共振器の設計上の性能は、自由スペクトル領域

(FSR) が250 MHz、フィネスが51.56、周波数分解能は4.8 MHzとなった。

実際にこの共振器を組み立てた写真が図3である。この共振器の性能を、安定化近赤外LD 光を用いてチェックした。共振器にレーザー光を入射させ、ピエゾ素子に電圧をかけて共振器 の共鳴周波数を掃引させながら、共振器の透過光強度を測定して干渉フリンジを得た。これに より得られた結果が図4である。横軸が共鳴周波数、縦軸が透過光強度を表している。図4で は2つの鋭いピークが観測されているが、ピーク間の周波数はFSR (250 MHz) であるので、そ れとの比較によりピークの半値全幅 (周波数分解能) を見積もると、14.3 MHzという値が得ら れた。これは設計値より大きな値であった。この差が生じた理由は、実際の共振器長の設計値 からの差や、共振器と入射光との間のモードマッチングの不完全などが挙げられるが、原子の 自然幅が数MHz程度であることを考慮すると、この性能でも本研究の目的を達成する上で支 障ないと判断して、現状のままこの共振器を参照共振器として使用することとした。

1.共振器安定化実験概略図 原子

サーボ回路 半導体レーザー

光共振器 ⇒ 高安定参照共振器として利用 サーボ回路 原子による安定化

共鳴周波数の安定化

(3)

‒ 245 ‒

射光に対して共振器長が共鳴条件に近づくように調節した。透過光強度が最も強くなった時点で ピエゾ素子に印加する電圧の値を固定し、透過光強度の測定を開始した。これにより得られた測 定結果が図5である。横軸が測定時間、縦軸が透過光強度を示している。測定開始後しばらくは 共振器長が入射光の共鳴条件に近い長さであるため、共振器長のごく微小な変化でも透過光強度 は速く大きく変化している。その後、共振器長が温度変化などの外的要因によって変化し、透過 光強度はゆっくり減衰しながら弱まって共振器長が入射光の共鳴条件から離れていった。透過光 強度は測定開始から50秒後にはゼロになったので、この時点で共振器長は共鳴条件から完全に外 れたことが確認できた。この透過光強度の変化を図4のフリンジと対応させると、この50秒間の 透過光強度の変化は周波数に換算して23.4MHz以上の変化に相当することが分かった。この結果 から、長時間にわたって数MHz程度の高い安定度を保つことが求められるレーザー安定化用参照 共振器としてこの共振器を用いるためには、共鳴周波数の安定化制御が不可欠であると言える。

3.ファブリー・ペロー共振器の共鳴周波数安定化

 次に我々はサーボ回路を用いてファブリー・ペロー共振器の共振器長の安定化に取り組んだ。

ここで用いたサーボ回路は、ロッキング・ポイントを設定するためのオフセット回路、P制御(比 例制御)を行うための増幅回路、I制御(積分制御)を行うための積分回路、P制御とI制御の両 者の信号を足し合わせる加算回路からなる。P制御は制御の目標値と実際の信号との差である偏差

次に、共振器長を何も制御しないときの共鳴周波数の変化を測定した。安定化近赤外LDから 出力された光を共振器に入射させ、透過光強度が時間とともにどの程度変化するかの結果から 共鳴周波数の変化を求めた。まず、ファブリー・ペロー共振器のピエゾ素子に直流電圧を加え て、入射光に対して共振器長が共鳴条件に近づくように調節した。透過光強度が最も強くなっ た時点でピエゾ素子に印加する電圧の値を固定し、透過光強度の測定を開始した。これにより 得られた測定結果が図5である。横軸が測定時間、縦軸が透過光強度を示している。測定開始 後しばらくは共振器長が入射光の共鳴条件に近い長さであるため、共振器長のごく微小な変化 でも透過光強度は速く大きく変化している。その後、共振器長が温度変化などの外的要因によ って変化し、透過光強度はゆっくり減衰しながら弱まって共振器長が入射光の共鳴条件から離 れていった。透過光強度は測定開始から50 秒後にはゼロになったので、この時点で共振器長 は共鳴条件から完全に外れたことが確認できた。この透過光強度の変化を図4のフリンジと対 応させると、この50 秒間の透過光強度の変化は周波数に換算して23.4 MHz 以上の変化に相当 することが分かった。この結果から、長時間にわたって数 MHz 程度の高い安定度を保つこと が求められるレーザー安定化用参照共振器としてこの共振器を用いるためには、共鳴周波数の 安定化制御が不可欠であると言える。

Frequency Transmission ( a. u. ) 250 MHz

14.3 MHz

Transmission ( a. u. )

Times ( s )

0 20 40 60 80 100

23.4 MHz

4. 干渉フリンジ 5. 非制御共振器の透過光強度

3. 組み立てたファブリー・ペロー共振器 ミラ

ピエゾ素子 金属円筒

2. 組み立てたファブリー・ペロー共振器の概略図 凹面ミラー

(曲率半径 300 mm)

14 mm

共振器長 300 mm 15 mm

286 mm

ピエゾ素子

スーパー・インバー

図2.組み立てたファブリー・ペロー共振器の概略図

次に、共振器長を何も制御しないときの共鳴周波数の変化を測定した。安定化近赤外LDから 出力された光を共振器に入射させ、透過光強度が時間とともにどの程度変化するかの結果から 共鳴周波数の変化を求めた。まず、ファブリー・ペロー共振器のピエゾ素子に直流電圧を加え て、入射光に対して共振器長が共鳴条件に近づくように調節した。透過光強度が最も強くなっ た時点でピエゾ素子に印加する電圧の値を固定し、透過光強度の測定を開始した。これにより 得られた測定結果が図5である。横軸が測定時間、縦軸が透過光強度を示している。測定開始 後しばらくは共振器長が入射光の共鳴条件に近い長さであるため、共振器長のごく微小な変化 でも透過光強度は速く大きく変化している。その後、共振器長が温度変化などの外的要因によ って変化し、透過光強度はゆっくり減衰しながら弱まって共振器長が入射光の共鳴条件から離 れていった。透過光強度は測定開始から50 秒後にはゼロになったので、この時点で共振器長 は共鳴条件から完全に外れたことが確認できた。この透過光強度の変化を図4のフリンジと対 応させると、この50 秒間の透過光強度の変化は周波数に換算して23.4 MHz 以上の変化に相当 することが分かった。この結果から、長時間にわたって数 MHz 程度の高い安定度を保つこと が求められるレーザー安定化用参照共振器としてこの共振器を用いるためには、共鳴周波数の 安定化制御が不可欠であると言える。

Frequency Transmission ( a. u. ) 250 MHz

14.3 MHz

Transmission ( a. u. )

Times ( s )

0 20 40 60 80 100

23.4 MHz

4. 干渉フリンジ 5. 非制御共振器の透過光強度

3. 組み立てたファブリー・ペロー共振器 ミラ

ピエゾ素子 金属円筒

2. 組み立てたファブリー・ペロー共振器の概略図 凹面ミラー

(曲率半径 300 mm)

14 mm

共振器長 300 mm 15 mm

286 mm

ピエゾ素子

スーパー・インバー

図3.組み立てたファブリー・ペロー共振器 次に、共振器長を何も制御しないときの共鳴周波数の変化を測定した。安定化近赤外LDから 出力された光を共振器に入射させ、透過光強度が時間とともにどの程度変化するかの結果から 共鳴周波数の変化を求めた。まず、ファブリー・ペロー共振器のピエゾ素子に直流電圧を加え て、入射光に対して共振器長が共鳴条件に近づくように調節した。透過光強度が最も強くなっ た時点でピエゾ素子に印加する電圧の値を固定し、透過光強度の測定を開始した。これにより 得られた測定結果が図5である。横軸が測定時間、縦軸が透過光強度を示している。測定開始 後しばらくは共振器長が入射光の共鳴条件に近い長さであるため、共振器長のごく微小な変化 でも透過光強度は速く大きく変化している。その後、共振器長が温度変化などの外的要因によ って変化し、透過光強度はゆっくり減衰しながら弱まって共振器長が入射光の共鳴条件から離 れていった。透過光強度は測定開始から50 秒後にはゼロになったので、この時点で共振器長 は共鳴条件から完全に外れたことが確認できた。この透過光強度の変化を図4のフリンジと対 応させると、この50 秒間の透過光強度の変化は周波数に換算して23.4 MHz 以上の変化に相当 することが分かった。この結果から、長時間にわたって数 MHz 程度の高い安定度を保つこと が求められるレーザー安定化用参照共振器としてこの共振器を用いるためには、共鳴周波数の 安定化制御が不可欠であると言える。

Frequency Transmission ( a. u. ) 250 MHz

14.3 MHz

Transmission ( a. u. )

Times ( s )

0 20 40 60 80 100

23.4 MHz

4. 干渉フリンジ 5. 非制御共振器の透過光強度

3. 組み立てたファブリー・ペロー共振器 ミラ

ピエゾ素子 金属円筒

2. 組み立てたファブリー・ペロー共振器の概略図 凹面ミラー

(曲率半径 300 mm)

14 mm

共振器長 300 mm 15 mm

286 mm

ピエゾ素子

スーパー・インバー

図4.干渉フリンジ

次に、共振器長を何も制御しないときの共鳴周波数の変化を測定した。安定化近赤外LDから 出力された光を共振器に入射させ、透過光強度が時間とともにどの程度変化するかの結果から 共鳴周波数の変化を求めた。まず、ファブリー・ペロー共振器のピエゾ素子に直流電圧を加え て、入射光に対して共振器長が共鳴条件に近づくように調節した。透過光強度が最も強くなっ た時点でピエゾ素子に印加する電圧の値を固定し、透過光強度の測定を開始した。これにより 得られた測定結果が図5である。横軸が測定時間、縦軸が透過光強度を示している。測定開始 後しばらくは共振器長が入射光の共鳴条件に近い長さであるため、共振器長のごく微小な変化 でも透過光強度は速く大きく変化している。その後、共振器長が温度変化などの外的要因によ って変化し、透過光強度はゆっくり減衰しながら弱まって共振器長が入射光の共鳴条件から離 れていった。透過光強度は測定開始から50 秒後にはゼロになったので、この時点で共振器長 は共鳴条件から完全に外れたことが確認できた。この透過光強度の変化を図4のフリンジと対 応させると、この50 秒間の透過光強度の変化は周波数に換算して23.4 MHz 以上の変化に相当 することが分かった。この結果から、長時間にわたって数 MHz 程度の高い安定度を保つこと が求められるレーザー安定化用参照共振器としてこの共振器を用いるためには、共鳴周波数の 安定化制御が不可欠であると言える。

Frequency Transmission ( a. u. ) 250 MHz

14.3 MHz

Transmission ( a. u. )

Times ( s )

0 20 40 60 80 100

23.4 MHz

4. 干渉フリンジ 5. 非制御共振器の透過光強度

3. 組み立てたファブリー・ペロー共振器 ミラ

ピエゾ素子 金属円筒

2. 組み立てたファブリー・ペロー共振器の概略図 凹面ミラー

(曲率半径 300 mm)

14 mm

共振器長 300 mm 15 mm

286 mm

ピエゾ素子

スーパー・インバー

図5.非制御共振器の透過光強度

(4)

‒ 246 ‒

に比例した制御信号を発生させる制御で、その増幅率は回路に使用する抵抗の値で決まる。また、

I制御は偏差を積分した値に応じた制御信号を発生させる制御で、積分の時定数は回路に使用する コンデンサーの値で決まる。P制御だけでは定常偏差が残ってしまうため、I制御を併用すること で高精度な制御を可能にしたものがこの制御回路である。回路の製作にあたっては、どのような 増幅率と時定数の値で制御がうまく行えるかを実際の実験の中で明らかにするため、数種類の抵 抗やコンデンサーをスイッチで選択できるようにした。製作したサーボ回路の回路図を図6に示す。

サーボ回路からの制御信号を参照共振器に取り付けたピエゾ端子にフィードバックし、共鳴周波 数がロッキング・ポイントに収束するように制御を行った。参照共振器の共鳴周波数安定化実験 の配置図を図7に示す。

 まず、安定化近赤外LDからの光を参照共振器へ入射し、共振器長を繰り返し掃引させながら透 過光強度をモニターし、図4と同様のフリンジを得た。次に、この信号をサーボ回路の入力端子 からオフセット回路に入力し、その出力信号をオシロスコープで観測しながらオフセット移動し、

図6.サーボ回路の回路図 3.ファブリー・ペロー共振器の共鳴周波数安定化

次に我々はサーボ回路を用いてファブリー・ペロー共振器の共振器長の安定化に取り組んだ。

ここで用いたサーボ回路は、ロッキング・ポイントを設定するためのオフセット回路、P 制御 (比例制御)を行うための増幅回路、I 制御(積分制御)を行うための積分回路、P 制御と I 制御 の両者の信号を足し合わせる加算回路からなる。P 制御は制御の目標値と実際の信号との差で ある偏差に比例した制御信号を発生させる制御で、その増幅率は回路に使用する抵抗の値で決 まる。また、I 制御は偏差を積分した値に応じた制御信号を発生させる制御で、積分の時定数 は回路に使用するコンデンサーの値で決まる。P 制御だけでは定常偏差が残ってしまうため、

I 制御を併用することで高精度な制御を可能にしたものがこの制御回路である。回路の製作に あたっては、どのような増幅率と時定数の値で制御がうまく行えるかを実際の実験の中で明ら かにするため、数種類の抵抗やコンデンサーをスイッチで選択できるようにした。製作したサ ーボ回路の回路図を図6に示す。サーボ回路からの制御信号を参照共振器に取り付けたピエゾ 端子にフィードバックし、共鳴周波数がロッキング・ポイントに収束するように制御を行った。

参照共振器の共鳴周波数安定化実験の配置図を図7に示す。

まず、安定化近赤外LDからの光を参照共振器へ入射し、共振器長を繰り返し掃引させながら 透過光強度をモニターし、図4と同様のフリンジを得た。次に、この信号をサーボ回路の入力 端子からオフセット回路に入力し、その出力信号をオシロスコープで観測しながらオフセット 移動し、ゼロ点即ちロッキング・ポイントを設定した。その後、共振器長掃引を停止し、制御 を開始するためあらかじめ共鳴周波数をロッキング・ポイントに近づけたあと、安定化制御回 路の出力端子からの出力信号をピエゾ素子に印加した。

1 kΩ 1 kΩ

1 kΩ

1 kΩ

1 kΩ

1 kΩ

1 kΩ

1 kΩ

1 kΩ 100 kΩ

100 kΩ 100 kΩ

0.1~4.7 kΩ

0.01~10 μF Vin

Vout

6.サーボ回路の回路図

-15 V

1 MΩ

1 kΩ

LF356N

LF356N LF356N

LF356N

図7.ファブリー・ペロー共振器の安定化制御実験配置

作製した回路で選択可能な全ての抵抗とコンデンサーの組み合わせでの実験を行ったとこ ろ、今回の実験では増幅回路では増幅率を0.01に、積分回路では時定数を0.068 s にして制御回 路のスイッチを入れたとき、透過光強度が一定の強度にロックされ、最も透過光強度の変動が 小さく、即ち共鳴周波数の変化が最も小さかった。このときの測定の結果を図8 (a) に示す。

横軸は時間、縦軸は参照共振器からの光の透過光強度を表している。図8 (b) は共鳴周波数制 御実験の開始時に得た干渉フリンジである。図8 (a) を見ると、制御開始前後で透過光強度の 変動の様子が変化し、特に制御後には一定の範囲内に強度変動が抑えられていることが分か る。このまま100 秒間制御を行いながら透過光強度の測定を続けていったところ、透過光強度 は制御開始直後と変わらず一定の強度を保ち続けたため、安定化制御が達成されていることを 確認できた。

次に、透過光強度の変化を共鳴周波数の変動に換算し、共振器の共鳴周波数の安定度の評価 を行った。図8 (a) における測定開始から100 秒間の透過光強度の変化の幅を、図8 (b) におけ る干渉フリンジの強度と共鳴周波数の関係と比較することで、周波数の変動に換算した。その

結果、図8 (a) における強度の変化は3.3 MHz の周波数の変動に相当することが分かった。原

子の自然幅が数 MHz であることを考えると、この共振器の共鳴周波数の変化である 3.3 MHz 以下という安定度は原子分光用安定化参照共振器の性能として十分な性能であると言える。ま た、この100 秒の測定の後もさらに制御を続けたところ、最大15 分にわたってその間も透過 光強度に大きな変化は見られず、周波数の変化も最初の100 秒間と同じ3.3 MHz 以内にするこ とができた。制御開始から 15 分後の 100 秒間の透過光強度の変化を図8 (c) に示す。

フォトダイオード

7.ファブリー・ペロー共振器の安定化制御実験配置

オシロスコープ 波長計

光チョッパー ガラス基板

Rbセル

ロックイン増幅器

サーボ回路 安定化半導体レーザー

アイソレーター

フォトダイオード

直流電源

ファブリー・ペロー共振器 ピエゾ素子 オシロスコープ

サーボ回路 加算回路

(5)

‒ 247 ‒

ゼロ点即ちロッキング・ポイントを設定した。その後、共振器長掃引を停止し、制御を開始するた めあらかじめ共鳴周波数をロッキング・ポイントに近づけたあと、安定化制御回路の出力端子か らの出力信号をピエゾ素子に印加した。

 作製した回路で選択可能な全ての抵抗とコンデンサーの組み合わせでの実験を行ったところ、

今回の実験では増幅回路では増幅率を0.01に、積分回路では時定数を0.068sにして制御回路のス イッチを入れたとき、透過光強度が一定の強度にロックされ、最も透過光強度の変動が小さく、

即ち共鳴周波数の変化が最も小さかった。このときの測定の結果を図8(a)に示す。横軸は時間、

縦軸は参照共振器からの光の透過光強度を表している。図8(b)は共鳴周波数制御実験の開始時 に得た干渉フリンジである。図8(a)を見ると、制御開始前後で透過光強度の変動の様子が変化し、

特に制御後には一定の範囲内に強度変動が抑えられていることが分かる。このまま100秒間制御を 行いながら透過光強度の測定を続けていったところ、透過光強度は制御開始直後と変わらず一定 の強度を保ち続けたため、安定化制御が達成されていることを確認できた。

 次に、透過光強度の変化を共鳴周波数の変動に換算し、共振器の共鳴周波数の安定度の評価を 行った。図8(a)における測定開始から100秒間の透過光強度の変化の幅を、図8(b)におけ る干渉フリンジの強度と共鳴周波数の関係と比較することで、周波数の変動に換算した。その結果、

図8(a)における強度の変化は3.3MHzの周波数の変動に相当することが分かった。原子の自然 幅が数MHzであることを考えると、この共振器の共鳴周波数の変化である3.3MHz以下という安 定度は原子分光用安定化参照共振器の性能として十分な性能であると言える。また、この100秒 の測定の後もさらに制御を続けたところ、最大15分にわたってその間も透過光強度に大きな変化

何も制御をしなければ、前述の通り我々の参照共振器の共鳴周波数は50 秒で 23.4 MHz も 変動したが、安定化制御を行った結果、15 分が経過しても共鳴周波数の変動を3.3 MHz 以内 に抑えることができた。この共鳴周波数制御は、Rb原子の遷移周波数に対して発振周波数を安 定化した近赤外LDの発振光をもとにして行っているため、温度などの外的要因によらず高安定 な共鳴周波数を維持できるものと見なすことができる。また、この共振器に用いるミラーの反 射率は、安定化近赤外LDの発振波長である780 nm とそれ以外の所望の波長で設定することが できるので、様々なレーザーの波長に対応することができる。したがって、ここで高安定化し た参照共振器を利用することで、様々なレーザーの発振周波数を高い安定度で制御することが 可能になると考えられる。これらの結果から、原子の自然幅程度に高安定でいろいろなレーザ ーへの適応範囲が広い、レーザーの発振周波数安定化における参照信号発生のための高安定参 照共振器を開発できたと結論付けられる。

4.まとめ

レーザー制御用高安定参照共振器を開発するため、共振器の共鳴周波数の安定化制御実験を行っ

Transmission ( a. u. )

Times ( s ) 100

0 3.3 MHz

Frequency 250 MHz

14.3 MHz

( a ) ( b )

8. ファブリー・ペロー共振器安定化実験 (a) 制御開始後100秒間の共振器透過光強度, (b) 共振器長掃時干渉フリンジ, (c) 制御開始15分後の共振器透過光強度

Times ( s ) 0

Transmission ( a. u. )

( c )

100

図8. ファブリー・ペロー共振器安定化実験(a)制御開始後100秒間の共振器透過光強度,

(b)共振器長掃時干渉フリンジ,(c)制御開始15分後の共振器透過光強度

(6)

‒ 248 ‒

は見られず、周波数の変化も最初の100秒間と同じ3.3MHz以内にすることができた。制御開始か ら15分後の100秒間の透過光強度の変化を図8(c)に示す。

 何も制御をしなければ、前述の通り我々の参照共振器の共鳴周波数は50秒で23.4MHzも変動 したが、安定化制御を行った結果、15分が経過しても共鳴周波数の変動を3.3MHz以内に抑える ことができた。この共鳴周波数制御は、Rb原子の遷移周波数に対して発振周波数を安定化した近 赤外LDの発振光をもとにして行っているため、温度などの外的要因によらず高安定な共鳴周波数 を維持できるものと見なすことができる。また、この共振器に用いるミラーの反射率は、安定化近 赤外LDの発振波長である780nmとそれ以外の所望の波長で設定することができるので、様々な レーザーの波長に対応することができる。したがって、ここで高安定化した参照共振器を利用す ることで、様々なレーザーの発振周波数を高い安定度で制御することが可能になると考えられる。

これらの結果から、原子の自然幅程度に高安定でいろいろなレーザーへの適応範囲が広い、レー ザーの発振周波数安定化における参照信号発生のための高安定参照共振器を開発できたと結論付 けられる。

4.まとめ

 レーザー制御用高安定参照共振器を開発するため、共振器の共鳴周波数の安定化制御実験を行 った。何も制御しなければ50秒で23.4MHzの周波数変動を起こしていた共振器の共鳴周波数で あったが、制御開始後、共振器からの透過光強度を測定してその共鳴周波数が安定化されている ことを確認できた。さらにその周波数変動を求めたところ100秒間の制御で3.3MHz以下の変動幅 にまで安定化できたことが分かった。この値はRb原子の自然幅の半分程度の値であり、レーザー 制御用高安定参照共振器として十分な性能を備えていると考えられる。また、15分の制御を行っ ても、初めの100秒間と変わらず共鳴周波数の変化を3.3MHz以下に抑えることができた。レーザ ーを分光実験用の光源として使用して吸収スペクトルなどを得るには数十秒程度の時間があれば よく、この15分という時間はそれらの実験のために十分な時間であるので、この共振器は高い安 定度を有する実用的な参照共振器であると言うことができる。さらに、この共振器はミラーの反射 率を所望の波長で設定することができ、様々な波長で発振するレーザーに対応できるため、汎用 性も高い。したがって、本研究でのファブリー・ペロー共振器の共鳴周波数安定化により、これ まで実現が困難であった高い安定度と汎用性を兼ね備えた参照共振器が実現できた。

 しかし、現状では参照共振器を安定化制御できる時間が15分程度に限られていることが一つの 課題として挙げられる。制御回路に使用しているオペアンプ(LF356N)の出力が15Vまでである ため、制御回路から出力できる出力信号も最大で15Vである。そのため、参照共振器の周囲の環 境が大きく変化し、共鳴周波数を安定化しておくのに15V以上の信号での制御が必要になったと きに、この制御が正常に機能しなくなることによって生じていると考えられる。したがって、参照 共振器を断熱材で囲み、急激な温度変化を避けることで、制御可能な範囲内での共鳴周波数変化 に抑えることが可能になると考えられる。他にも、今回使用したピエゾ素子は最大で150Vまで印 加することが可能であるので、今回よりも高電圧の制御信号を発生できる電子回路部品(特に高 電圧駆動のオペアンプ)を使用することや、ピエゾ素子を複数個接続して使用することなどによ り共振器長の可動範囲を広くすることも対策として考えられる。

 また、3.3MHzであった共鳴周波数の変動幅は、大部分の原子の吸収スペクトルの自然幅が数

(7)

‒ 249 ‒

MHz程度であることを考慮すると、原子分光実験用高安定参照共振器としては十分な性能ではあ るが、さらに抑制することができれば一層性能のよい参照共振器を実現することができる。この問 題点については、安定化制御回路に使用している増幅回路の増幅率や積分回路の時定数の値の組 み合わせを詳しく探索して実現できると考えられる。また、この変動が図5のような温度変化によ る共鳴周波数の変化に比べて短い時間での細かい振動であることから、その原因が参照共振器に 伝わる機械的な振動であると考えられる。したがって、免振機能のついた実験台を用いることや 参照共振器の支持部分に緩衝材を挟むことなどにより外部から参照共振器に振動が伝わるのを遮 断することによって今後改善できると考えている。

謝辞

 本研究は科学研究費補助金基盤研究(C)(課題番号 22500800)の補助を受けて行われた。ここに謝 意を表する。

参考文献

1) 櫛田孝司:「光物理学」(共立出版 1983年) pp.10-11

2) 平田照二:「わかる半導体レーザーの基礎と応用」(CQ出版社 2001) p.13

3) 中澤孝男、中野博之、上野 隆、佐藤 孝、榛葉 實:「磁気光学効果を用いた半導体レーザーの周 波数安定化と飽和吸収分光光学系」(電子情報通信学会論文誌C-1 Vol.J76-C-1 No.8 1993)pp.285- 293

4) 須田純平:「紫色半導体レーザー用高安定参照共振器の開発」(平成23年度埼玉大学教育学部理科専 修卒業論文)

5) 上敷領静香、大向隆三、兵頭政春、近藤一史:「交差共鳴を用いたレーザーの発振周波数制御」(埼玉 大学紀要(教育学部)第62巻1号、2013)pp.241-248

(2015年3月9日提出)

(2015年6月3日受理)

(8)

‒ 250 ‒

Development of highly stable reference cavity to control laser oscillation frequency

KANNO, Takayuki

Graduate School of Education, Saitama University

SUDA, Junpei

Faculty of Education, Saitama University

KONDO, Hitoshi

Faculty of Education, Saitama University

OHMUKAI, Ryuzo

Faculty of Education, Saitama University

Abstract

We propose a novel and versatile technique to accurately control laser oscillation frequency.

We also developed a highly stable reference cavity, which is essential for this purpose. We built a confocal Fabry-Perot cavity with a frequency resolution of 14.3 MHz as a reference cavity, whose mirrors have a reflectivity of 97 % for wavelengths of 400 and 780 nm. The resonant frequency of this reference cavity was stabilized by the 780 nm- laser light, whose oscillation frequency was locked to the cross-over resonance of the

85

Rb atoms obtained by saturation spectroscopy. The res- onant frequency of the free-running cavity drifted 23.4 MHz in 50 seconds. However, the stability of the resonant frequency was improved as a result to 3.3 MHz over a period of 15 minutes by controlling the cavity length to keep the 780 nm- laser light resonant in the cavity. This stability was enough to generate the reference signal to maintain the frequency of another laser for high resolution spectroscopy. Our method is applicable to the preparation of a light source to perform experiments on quantum information processing, future frequency standards, and so on.

Key Words : laser, Fabry-Perot cavity, stabilization, resonant frequency

参照

関連したドキュメント

A Study on Vibration Control of Physiological Tremor using Dynamic Absorber.. Toshihiko KOMATSUZAKI *3 , Yoshio IWATA and

 第一の方法は、不安の原因を特定した上で、それを制御しようとするもので

WAV/AIFF ファイルから BR シリーズのデータへの変換(Import)において、サンプリング周波 数が 44.1kHz 以外の WAV ファイルが選択されました。.

ADF5902 は、24GHz 電圧制御発振器(VCO)を内蔵した 24GHz トランスミッタ(Tx )モノリシック・マイクロ波集積回路.

概要・目標 地域社会の発展や安全・安心の向上に取り組み、地域活性化 を目的としたプログラムの実施や緑化を推進していきます

ある周波数帯域を時間軸方向で複数に分割し,各時分割された周波数帯域をタイムスロット

パスワード 設定変更時にパスワードを要求するよう設定する 設定なし 電波時計 電波受信ユニットを取り外したときの動作を設定する 通常

充電器内のAC系統部と高電圧部を共通設計,車両とのイ