埼玉大学教養学部リベラル・アーツ叢書別冊2
仁科弘之教授退職記念論文集
言語をめぐる x 章-言語を考える、言語を教える、言語で考える-
格体制の交替の観点からみた「囲う」の意味的特徴
―壁塗り代換や餅くるみ交替を起こさない理由―
川野 靖子
埼玉大学教養学部・人文社会科学研究科
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格体制の交替の観点からみた「囲う」の意味的特徴
―壁塗り代換や餅くるみ交替を起こさない理由―
川野 靖子
【キ ー ワ ー ド 】
場 所 格 交 替 、locative alternation、 位 置 変 化 、 状 態 変化
【 要 旨 】
「 囲 う 」 と い う 動 詞 は 、 総 体 変 化 を 表 す に も か か わ ら ず 格 体 制 の 交 替 ( 壁 塗 り 代 換 お よ び 餅 く る み 交 替 ) を 起 こ さ な い 。 こ の 点 で 、 一 見 、 交 替 動 詞 の 条 件 を 記 述 し た 川 野 (2009) の 反 例 の よ う に も み え る 。 し か し 「 囲 う 」 の 意 味 的 特 徴 を 丁 寧 に 分 析 す る と 、 反 例 で は な く 、 交 替 を 起 こ さ な い 理 由 が 川 野 (2009) の 枠 組 み に よ っ て 説 明 で き る こ と が 分 か る 。
具 体 的 に 述 べ る と 、「( ~ ヲ ~ デ ) 囲 う 」 に は 「「 ヲ 格 句 の 事 物 ( 内 側 )
― デ 格 句 の 事 物 ( 外 側 )」 と い う 位 置 関 係 を 指 定 す る 」 と い う 意 味 的 特 徴 と 、「「 デ 格 句 の 事 物 → ヲ 格 句 の 事 物 」 と い う 動 き の 方 向 を 指 向 す る 」 と い う 意 味 的 特 徴 が あ り 、 こ れ ら の 意 味 的 特 徴 が 、 そ れ ぞ れ 壁 塗 り 代 換 と 餅 く る み 交 替 の 成 立 を 妨 げ る と 考 え ら れ る 。 よ っ て 、 壁 塗 り 代 換 や 餅 く る み 交 替 を 「 位 置 変 化 の 下 位 類 で あ る 依 存 的 転 位 と 、 状 態 変 化 の 下 位 類 で あ る 総 体 変 化 の 間 の 意 味 タ イ プ の シ フ ト に よ っ て 起 こ る 現 象 」 と 捉 え た 川 野 (2009) の 枠 組 み の 中 で 、「 囲 う 」 の ふ る ま い も 説 明 で き る こ と に なる 。
1 . は じ め に
次 の (1) で は 、「 塗 る 」 と い う 動 詞 が ~ ニ ~ ヲ 形 と ~ ヲ ~ デ 形 を と り 、 し か も 両 文 が よ く 似 た 意 味 を 表 す と い う 現 象 が み ら れ る 。(2) が 示 す よ う に、「 満 た す 」 も 同 じ 現 象を 起 こ す 。
(1)a.壁 に ペ ン キ を 塗 る ( ~ニ ~ ヲ 形 ) b.壁 を ペ ン キ で 塗 る ( ~ ヲ ~ デ 形 ) (2)a.グ ラ ス に 水 を 満 た す ( ~ ニ ~ ヲ 形 )
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b.グ ラ ス を 水 で 満 た す ( ~ ヲ ~ デ 形 )
こ の よ う な 格 体 制 の 交 替 現 象 は 、「 壁 塗 り 代 換 」 と 呼 ば れ て い る ( 奥 津 1981 等 )。 壁 塗 り 代 換 の 形 式 的 特 徴 を 整 理 し て 示 す と 次 の よ う に な る 。
(3) 壁 塗 り 代 換
a. ~ニ( 壁 に ) ~ ヲ( ペ ン キ を ) 動 詞( 塗 る )
b. ~ヲ( 壁 を ) ~ デ( ペ ン キ で ) 動 詞( 塗 る )
「 塗 る 」 や 「 満 た す 」 の よ う に 壁 塗 り 代 換 を 起 こ す 動 詞 が あ る 一 方 で 、 次 の 「 置 く 」 や 「 ふ く ら ま す 」 の よ う に 、 こ う し た 交 替 を 起 こ さ な い 動 詞 も あ る。
(4)a. テ ーブ ル に コ ッ プ を 置 く ( ~ ニ ~ ヲ 形 ) b.*テ ー ブ ル を コ ッ プ で 置く ( ~ ヲ ~ デ 形 ) (5)a. 風船 を 空 気 で ふ く ら ます ( ~ ヲ ~ デ 形 ) b.*風 船 に 空 気 を ふ く ら ます ( ~ ニ ~ ヲ 形 )
つ ま り 、 壁 塗 り 代 換 を 起 こ す の は 特 定 の 範 囲 の 動 詞 に 限 ら れ る の で あ る 。 川 野 (2009) で は 、「 塗 る 」「 満 た す 」 等 の 壁 塗 り 代 換 を 起 こ す 動 詞 ( 以 下 、 交 替 動 詞 と 呼 ぶ ) と 「 置 く 」「 ふ く ら ま す 」 等 の 壁 塗 り 代 換 を 起 こ さ な い 動 詞 ( 以 下 、 非 交 替 動 詞 と 呼 ぶ ) の 意 味 的 特 徴 を 比 較 し て 交 替 動 詞 の 条件 を 記 述 し 、 交 替 が起 こ る 仕 組 み を 明 らか に し た 。 本 稿 で は 、 壁 塗 り 代 換 を 起 こ さ な い 「 囲 う 」 と い う 動 詞 に 焦 点 を 当 て て 分 析 を 行 う 。「 囲 う 」 は 、 一 見 、 川 野 (2009) の 記 述 の 反 例 の よ う に み え る の で あ る が 、 実 際 に は そ う で は な く 、「 囲 う 」 が 交 替 を 起 こ さ な い 理 由 も 川 野 (2009) の 枠 組 み に よ っ て 説 明 で き る と い う こ と を 示 す1。
な お 、 ~ ニ ~ ヲ 形 と ~ ヲ ~ デ 形 の 交 替 現 象 に は 、 従 来 か ら 知 ら れ て い る 壁 塗 り 代 換 の 他 に 、 壁 塗 り 代 換 と は 交 替 パ タ ー ン の 異 な る 「 餅 く る み 交 替 」 が 存在 す る が ( 川 野 2004、2006、2009)、「 囲 う 」 は 餅 く る み 交 替 も 起 こ さ な い 。 本 稿 で は 、 そ の 理 由 も 川 野 (2009) の 枠 組 み の
1 「 覆 う 」「 詰 め る 」 も 、 一 見 、 川 野 (2009) の 反 例 の よ う に み え る が 実 際 に は 川 野 (2009) の 枠 組 み で 説 明 す る こ と が で き る 。 こ れ に つ い て は 川 野
(2013) で 論 じ た 。
130 中 で 説 明 で き るこ と を 併 せ て 示 す 。
さ ら に 、「 巻 く 」 と い う 動 詞 が 、「 囲 う 」 と 似 た よ う な 動 作 を 表 す に も か か わ ら ず 、「 囲 う 」 と は 対 照 的 に 壁 塗 り 代 換 と 餅 く る み 交 替 の 両 方 を 成 立 さ せ る こ と に 触 れ 、 な ぜ 「 囲 う 」 と 「 巻 く 」 と で そ の よ う な 違 い が 生 じ る の かに つ い て も 考 察 し たい 。
以 下 で は 、 ま ず 2 節 で 、 交 替 動 詞 の 条 件 や 交 替 が 起 こ る 仕 組 み に つ い て 考 察 し た 川野 (2009) の 概 要 を 述 べ る 。 次 に 、3 節 と 4 節 で 、「 囲 う 」 が 壁 塗 り 代 換 や 餅 く る み 交 替 を 起 こ さ な い 理 由 を そ れ ぞ れ 考 察 し 、 5 節 で 「 囲う 」 と 「 巻 く 」 を 比 較 する 。 最 後 に 6 節 で 考 察 を ま と め る 。
2 . 壁 塗 り 代 換は ど の よ う な 現 象 か 2-1 壁 塗 り 代 換 を 起 こ す 動 詞 の 条 件
壁 塗 り 代 換 の ~ ニ ~ ヲ 形 と ~ ヲ ~ デ 形 は 、 一 見 、 同 じ 意 味 を 表 す よ う に み え る が 、 そ う で は な く 、 ~ ニ ~ ヲ 形 は 位 置 変 化 を 表 し 、 ~ ヲ ~ デ 形 は 状 態 変 化 を 表 す こ と が 、 奥 田 (1976) や 奥 津 (1981) 等 で 指 摘 さ れ て い る2。「 壁 に ペ ン キ を 塗 る 」「 壁 を ペ ン キ で 塗 る 」 を 例 に と る と 、 前 者 が ペ ン キ の 位 置 変 化 ( ペ ン キ が 壁 に 存 在 す る よ う に な る こ と ) を 表 す 文 で あ る の に 対 し 、 後 者 は 壁 の 状 態 変 化 ( 壁 の 様 子 が 変 化 す る こ と ) を 表 す 文 だ 、 と い う こ と で あ る 。 同 じ 「 塗 る 」 で も 、「 壁 に ペ ン キ を 塗 る 」 の 「 塗 る 」 は 位 置 変 化 動 詞 で あ り 、「 壁 を ペ ン キ で 塗 る 」 の
「 塗 る 」 は 状 態変 化 動 詞 と い う こ とに な る 。
川 野 (2009) で は こ の 見 解 を 踏 ま え た 上 で 、 交 替 動 詞 の 条 件 を 記 述 す る た め に は 、「 位 置 変 化 」 や 「 状 態 変 化 」 と い う 類 型 的 意 味 の 下 位 類 に 着 目 す る 必 要が あ る と 論 じ た 。 以下 の 例 で 説 明 し た い。
(6)a. 壁に ペ ン キ を 塗 る
b. 壁 を ペ ン キ で 塗 る ( = (1))
(7)a. テー ブ ル に コ ッ プ を 置く
b.*テ ー ブ ル を コ ッ プ で 置く ( = (4))
(8)a. 風船 を 空 気 で ふ く ら ます
b.*風船 に 空 気 を ふ く ら ま す ( = (5))
2 用 語 は 研 究 者 間 で 異 な り 、 本 稿 で い う 「 位 置 変 化 」 を 奥 田 (1976) で は
「 と り つ け 」、 奥 津 (1981) で は 「 移 動 」 と 呼 ん で い る 。 ま た 、 本 稿 で い う
「 状 態 変 化 」 を 奥 田 (1976) で は 「 も よ う が え 」、 奥 津 (1981) で は 「 変 化 」 と 呼 ん で い る 。 本 稿 で は 引 用 等 を 除 き 「 位 置 変 化 」 と 「 状 態 変 化 」 と い う 用 語を用いることとする。
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(6) と (7) か ら 分 か る よ う に 、 同 じ ~ ニ ~ ヲ 形 を と る 動 詞 ( = 位 置 変 化 動 詞 ) の 中 に も 、「 塗 る 」 の よ う に 交 替 を 起 こ す 動 詞 も あ れ ば 「 置 く 」 の よ う に 交 替 を 起 こ さ な い 動 詞 も あ る 。 ま た 、(6) と (8) か ら 分 か る よ う に 、 同 じ ~ ヲ ~ デ 形 を と る 動 詞 ( = 状 態 変 化 動 詞 ) の 中 に も 、
「 塗 る 」 の よ う に 交 替 を 起 こ す 動 詞 も あ れ ば 「 ふ く ら ま す 」 の よ う に 交 替 を 起 こ さ な い 動 詞 も あ る 。 こ れ ら の こ と は 、「 位 置 変 化 」 や 「 状 態 変 化 」 の 中 に 下 位 類 が あ り 、 交 替 動 詞 が 表 す 位 置 変 化 や 状 態 変 化 の タ イ プ と い う も の が 存 在 す る ( 逆 に 言 え ば 、 そ う し た タ イ プ に 該 当 し な い 位 置 変 化 や 状 態 変 化 を 表 す 動 詞 は 交 替 を 起 こ さ な い ) こ と を 示 し て い る 。 交 替 動 詞 の 条 件 を 明 ら か に す る に は 、 そ う し た タ イ プ を 特 定 す る 必 要 が あ る ので あ る 。
そ れ で は 、 交 替 動 詞 が 表 す 位 置 変 化 や 状 態 変 化 と は 、 そ れ ぞ れ ど の よ う な タ イ プ の位 置 変 化 、 状 態 変 化な の だ ろ う か 。
ま ず 位 置 変 化 に つ い て 、 川 野 (2009) で は 、「 塗 る 」 等 の 交 替 動 詞 と
「 置 く 」 等 の 非 交 替 動 詞 が 表 す 位 置 変 化 を 比 較 し 、 前 者 の 表 す 位 置 変 化 は 「 依 存 的 転 位 」 で あ り 、 後 者 の 表 す 位 置 変 化 は 「 非 依 存 的 転 位 」 で あ る と 記 述 し た 。「 依 存 的 転 位 」 と は 、「 対 象 が 他 の 事 物 に 依 存 的 な あ り 方 で そ こ に 位 置 づ け ら れ る 」 と い う タ イ プ の 位 置 変 化 で あ り 、「 非 依 存 的 転 位 」 は 、 対 象 の 位 置 づ け ら れ 方 が 他 の 事 物 か ら 制 限 さ れ な い タ イ プ の 位 置 変 化 で あ る 。 た と え ば 「 塗 る 」 は 、 対 象 ( 例 : ペ ン キ ) を 場 所 ( 例 : 壁 ) の 表 面 の 形 状 に 沿 っ て 薄 く 広 げ て い く と い う 動 作 を 表 し 、 位 置 づ け ら れ る 際 の 対 象 ( ペ ン キ ) の 形 状 が 、 場 所 ( 壁 ) の 形 状 に 依 存 し て 決 ま る ( 依 存 的 転 位 )。 こ れ に 対 し 、「 置 く 」 が 表 す 位 置 変 化 に は こ の よ う な 指 定 が な く 、 位 置 づ け ら れ る 対 象 ( 例 : コ ッ プ ) の 形 状 等 は 場 所 ( 例 : テ ー ブ ル ) の 形 状 等 か ら 制 限 さ れ な い ( 非 依 存 的 転 位)。
次 に 、 状 態 変 化 に つ い て 、 川 野 (2009) で は 、「 塗 る 」 等 の 交 替 動 詞 が 表 す 状 態 変 化 と 「 ふ く ら ま す 」 等 の 非 交 替 動 詞 が 表 す 状 態 変 化 を 比 較 し 、 前 者 の 表 す 状 態 変 化 は 「 総 体 変 化 」 で あ り 、 後 者 の 表 す 状 態 変 化 は 「 自 体 変 化 」 で あ る と 記 述 し た 。「 自 体 変 化 」 が 、 対 象 そ の も の に 生 じ る 変 化 ( 対 象 の 属 性 の 変 化 ) で あ る の に 対 し 、「 総 体 変 化 」 は
「 対 象 が 他 の 事 物 を 伴 っ た 状 態 に な る 」 と い う 変 化 で あ り 、 対 象 そ れ 自 体 の 変 化 を 含 ま な い も の で あ る 。 た と え ば 「 ~ ヲ ~ デ ふ く ら ま す 」 の 場 合 は ヲ 格 句 の 対 象 が 必 ず 大 き く な る 必 要 が あ る の に 対 し ( 自 体 変 化 )、「 ~ ヲ ~ デ 塗 る 」 の 場 合 は ヲ 格 句 の 事 物 の 大 き さ が 変 わ る 必 要 は な く 、 大 き さ 以外 の 属 性 が 変 化 す る必 要 も な い ( 総 体 変化 )。
以 上 を ま と め る と 、 交 替 を 起 こ す の は 、 位 置 変 化 動 詞 の 中 で も 依 存
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的 転 位 を 表 す 動 詞 で あ り 、 状 態 変 化 動 詞 の 中 で も 総 体 変 化 を 表 す 動 詞 で あ る ( 非 依 存 的 転 位 や 自 体 変 化 を 表 す 動 詞 は 交 替 を 起 こ さ な い ) と 考 え ら れ る 。
2-2 壁 塗 り 代 換 が 起 こ る 仕 組 み
既 に 述 べ た よ う に 、 同 じ 「 塗 る 」 で も ~ ニ ~ ヲ 形 の 「 塗 る 」 は 依 存 的 転 位 ( 位 置 変 化 の 下 位 類 ) を 表 し 、 ~ ヲ ~ デ 形 の 「 塗 る 」 は 総 体 変 化 ( 状 態 変 化 の 下 位 類 ) を 表 す と 考 え ら れ る 。 つ ま り 両 者 は 動 詞 類 型 が 異 な る と 考 え ら れ る の で あ る が 、 一 方 で 、 よ く 似 た 意 味 に 感 じ ら れ る こ と も 確 か で あ る 。 よ っ て 、 ~ ニ ~ ヲ 形 の 「 塗 る 」 と ~ ヲ ~ デ 形 の
「 塗 る 」 を 単 に 別 の 動 詞 と し て ( つ ま り 同 音 異 義 語 と し て ) 捉 え る の は 妥 当 で は な い だ ろ う3。 動 詞 類 型 上 は 別 の 類 型 に 属 し つ つ 、 し か し ど こ か の レ ベ ル で共 有 す る も の が あ ると 考 え る べ き だ と 考え ら れ る 。 こ の こ と を 踏 ま え 、 川 野 (2009) で は 、「 依 存 的 転 位 と し て 解 釈 さ れ る 出 来 事 が 、 見 方 を 変 え る と 総 体 変 化 と し て も 解 釈 で き 、 か つ そ の 逆 も 成 り 立 つ 」 と い う 意 味 タ イ プ の シ フ ト に よ っ て 壁 塗 り 代 換 が 起 こ る と 論 じ た 。「 壁 に ペ ン キ を 塗 る 」 と 「 壁 を ペ ン キ で 塗 る 」 を 例 に と る と 、 現 実 世 界 の あ る 出 来 事 を 「 壁 の 形 状 に 沿 っ て ペ ン キ が 存 在 す る よ う に な る 」 と い う 依 存 的 転 位 と し て 類 型 化 し た の が 前 者 の 文 で あ り 、 そ の 同 じ 出 来 事 を 「 壁 が ペ ン キ を 伴 っ た 状 態 に な る 」 と い う 総 体 変 化 と し て 類 型 化 し た のが 後 者 の 文 だ 、 と いう こ と で あ る 。
以 上 の 川 野 (2009) の 議 論 を ま とめ る と 、 次 の (9) の よ う に な る 。
(9) 川 野 (2009) の ま と め
位 置 変 化 を 表 す 動 詞 の う ち 、 依 存 的 転 位 を 表 す 動 詞 が 壁 塗 り 代 換 を 起 こ す ( 非 依 存 的 転 位 を 表 す 動 詞 は 交 替 を 起 こ さ な い )。 ま た 、 状 態 変 化 を 表 す 動 詞 の う ち 、 総 体 変 化 を 表 す 動 詞 が 壁 塗 り 代 換 を 起 こ す ( 自体 変 化 を 表 す 動 詞 は壁 塗 り 代 換 を 起 こ さな い )。
壁 塗 り 代 換 は 、「 依 存 的 転 位 と し て 解 釈 さ れ る 出 来 事 が 、 見 方 を 変 え る と 総 体 変 化 と し て も 解 釈 で き 、 か つ そ の 逆 も 成 り 立 つ 」 と い う 、 依 存 的 転 位 と 総 体 変 化 の 間 の 意 味 タ イ プ の シ フ ト に よ り
3 英 語 等 の 他 言 語 で も 似 た よ う な 動 詞 が 同 じ 現 象 を 起 こ す こ と か ら も (e.g., smear paint onto the wall / smear the wall with paint)、 同 音 異 義 語 と は 考 え に く い 。 同 音 異 義 語 と 考 え た 場 合 、 日 本 語 で 「 塗 る 」 等 が 壁 塗 り 代 換 を 起 こ す こ と と 他 言 語 で 似 た よ う な 動 詞 が 同 じ 現 象 を 起 こ す こ と は 偶 然 だ と い う こ と に な る が 、 こ の よ う に は 考 え に く い と 思 わ れ る 。 詳 し く は 川 野 (2016a、 2016b) を 参 照 の こ と 。
133 生 じ る 現 象 で ある 。
3 .「 囲 う 」 は な ぜ 壁 塗 り 代 換 を 起 こ さ な い の か
で は 、「 囲 う 」 の 分 析 に 入 り た い 。 後 述 す る よ う に 、「 囲 う 」 は 総 体 変 化 を 表 す に も か か わ ら ず 、 壁 塗 り 代 換 を 起 こ さ な い 。 こ の 点 で 、 一 見 、 川 野 (2009) の 反 例 の よ う に も み え る の で あ る が 、 実 際 に は そ う で は な く 、「 囲 う 」 が 交 替 を 起 こ さ な い こ と は 川 野 (2009) の 枠 組 み に よ っ て 説 明 で きる と い う こ と を 示 して い く 。
な お、『 明 鏡 国 語 辞 典 』 で は 「 囲う 」 の 意 味 を 、
① 内 と 外 を 区 別 する 仕 切 り を 設 け て 、周 囲 を 取 り 巻 く
( 土 壁 で 屋 敷 を囲 う )
② ( ひ そ か に ) 妻以 外 の 女 性 を 扶 養 する ( 妾 を 囲 う )
③ ひ そ か に か く まう ( 逃 亡 者 を 納 屋 に囲 う )
④ か ば い 守 る ( お千 は 宗 吉 を 背 後 に 囲っ て )
⑤ 野 菜 な ど を 蓄 える 、 貯 蔵 す る ( タ マネ ギ を 囲 う )
と 記 述 し て い る 。 こ の う ち 、 本 稿 で 取 り 上 げ る の は 、 ① の 「 囲 う 」 で あ る 。 ① の 「 囲 う 」 を 取 り 上 げ る 理 由 は 、「 内 と 外 を 区 別 す る 仕 切 り を 設 け て 周 囲 を 取 り 巻 く 」 と い う 出 来 事 が 総 体 変 化 に 該 当 す る に も か か わ ら ず 、 壁 塗 り 代 換 が 起 こ ら な い 、 と い う 点 に よ る 。 以 下 、 本 稿 で
「 囲 う 」 と 言 った 場 合 に は 、 ① の 意味 の 「 囲 う 」 を 指 すも の と す る 。 『 明 鏡 国 語 辞 典 』 に 「 土 塀 で 屋 敷 を 囲 う 」 と い う 例 文 が 上 が っ て い る こ と か ら も 分 か る よ う に 、「 囲 う 」 は ~ ヲ ~ デ 形 を と る 。 ま た 、 こ の
「 ~ ヲ ~ デ 囲 う 」 が 表 す 「 内 と 外 を 区 別 す る 仕 切 り を 設 け て 周 囲 を 取 り 巻 く 」 と い う 出 来 事 は 、 状 態 変 化 の 中 で も 総 体 変 化 で あ り 、 自 体 変 化 で は な い 。2-1 で 述 べ た よ う に 、自 体 変 化 と は 対 象 (ヲ 格 句 の 事 物 ) そ の も の の 変 化 で あ り 、「 風 船 を 空 気 で ふ く ら ま す 」( 大 き さ の 変 化 ) の よ う な も の を 指 す ( こ の 他 、「 海 水 を 水 で 薄 め る 」( 濃 度 の 変 化 ) 等 も あ る だ ろ う )。 こ れ に 対 し 、「 屋 敷 を 土 塀 で 囲 う 」 は 屋 敷 自 体 の 変 化 を 表 す わ け で は な い (「 囲 う 」 と い う 動 作 に よ っ て 「 屋 敷 」 の 大 き さ や 形 、 そ の 他 の 属 性 が 変 わ る わ け で は な い )。「 囲 う 」 が 表 す 状 態 変 化 は
「 壁 を ペ ン キ で 塗 る 」「 グ ラ ス を 水 で 満 た す 」 と い っ た 交 替 動 詞 が 表 す 状 態 変 化 と 同 様 、「 ヲ 格 句 の 事 物 が デ 格 句 の 事 物 を 伴 っ た 状 態 に な る 」 と い う 種 類 の 変化 、 す な わ ち 総 体 変化 で あ る と 考 え ら れる 。
し か し 、 そ れ に も か か わ ら ず 、「 囲 う 」 は 壁 塗 り 代 換 を 起 こ さ な い 。 以 下 の (10) が 示 す よ う に 、「 ~ ヲ ~ デ 囲 う 」 を ~ ニ ~ ヲ 形 に す る こ と
134 は で き な い の であ る4。
(10)a. 屋 敷 を 土 塀 で 囲 う ( ~ ヲ ~ デ 形 )
. b.*屋 敷 に 土 塀 を 囲 う ( ~ ニ ~ ヲ 形 )
念 の た め 、 国 立 国 語 研 究 所 『 現 代 日 本 語 書 き 言 葉 均 衡 コ ー パ ス 』( 以 下 BCCWJ) で 「 囲 う 」 の 使 用 状 況を 調 査 し た と こ ろ 、~ ヲ ~ デ 形 と 判 断 で き る 例 が 135 例 あ っ た の に 対 し 、 ~ ニ ~ ヲ 形 と 判 断 で き る 例 は 0 例 で あ っ た5。 こ こ か ら も 「 囲 う 」 は 壁 塗 り 代 換 を 起 こ さ な い ( あ る い は 、 起 こ し に くい ) こ と が 窺 え る 。
そ れ で は 、 な ぜ 「 囲 う 」 は 総 体 変 化 を 表 す に も か か わ ら ず 壁 塗 り 代 換 を 起 こ さ な い の だ ろ う か 。 こ れ は 、「 囲 う 」 が 総 体 変 化 を 表 す と い う 点 で 交 替 動 詞 の 条 件 を 満 た し て い る も の の 、 一 方 で 、 位 置 変 化 へ の シ フ ト を 妨 げ る 意味 的 特 徴 も 有 し て いる か ら だ と 考 え ら れる 。
上 述 の よ う に 「 ~ ヲ ~ デ 囲 う 」 は 「 ヲ 格 句 の 事 物 が デ 格 句 の 事 物 を 伴 っ た 状 態 に な る 」 と い う 変 化 ( 総 体 変 化 ) を 表 す が 、 よ り 詳 し く 述 べ れ ば 、「 ヲ 格 句 の 事 物 ( 屋 敷 ) が そ の 周 り に デ 格 句 の 事 物 ( 土 塀 ) を 伴 っ た 状 態 に な る 」 と い う 変 化 を 表 す 。 こ の よ う な 意 味 的 特 徴 を 持 つ
「 ~ ヲ ~ デ 囲 う 」 を ~ ニ ~ ヲ 形 、 す な わ ち 位 置 変 化 に シ フ ト し よ う と す る と ど う な る だ ろ う か 。 ~ ヲ ~ デ 形 の ヲ 格 句 と デ 格 句 は 、 ~ ニ ~ デ 形 で は そ れ ぞ れ ニ 格 句 ( 着 点 ) と ヲ 格 句 ( 対 象 ) に な る か ら 、「 着 点 に あ た る 事 物 の 外 側 に 対 象 に あ た る 事 物 ( 土 塀 ) が 存 在 す る 」 こ と に な っ て し ま い 、 位 置 変 化 と い う 出 来 事 に お け る 通 常 の 着 点 と 対 象 の 位 置 関 係 と は 逆 の 位 置 関 係 を 指 定 す る こ と に な っ て し ま う ( 位 置 変 化 で は 通 常 、「 グ ラ ス に 水 を 入 れ る 」 の よ う に 、 着 点 に あ た る 事 物 ( グ ラ ス )
4 (10b) に つ い て 、 自 然 で は な い が 非 文 と ま で は 言 え な い と す る 人 も い る か も し れ な い 。 そ の 場 合 は 、「 囲 う 」 が 総 体 変 化 を 表 す た め 、 自 体 変 化 を 表 す
「 ふ く ら ま す 」 等 に 比 べ れ ば 許 容 度 が 上 が る と い う こ と な の だ ろ う 。 し か し い ず れ に し て も 「 ~ ニ ~ ヲ 囲 う 」 が 許 容 さ れ に く と い う 事 実 は 動 か な い と い え る 。 ま た 、 許 容 さ れ な い ( あ る い は さ れ に く い ) 理 由 が 、 本 稿 の 以 下 の 部 分 で 述 べ る 「 囲 う 」 の 意 味 的 特 徴 に あ る と い う 点 も 動 か な い と 思 わ れ る 。
5 調 査 の 詳 細 は 次 の 通 り で あ る 。『 中 納 言 』 の 短 単 位 検 索 で 語 彙 素 読 み 「 カ コ ウ 」・ 品 詞 「 動 詞 」 を 条 件 と し て 検 索 し た と こ ろ 、396 例 が ヒ ッ ト し た 。 こ こ か ら 、 動 詞 「 囲 う 」 以 外 の 用 例 (「 描 こ う 」、 名 詞 の 「 囲 い 」 等 ) や 複 合 動 詞 の 用 例 (「 囲 い 込 む 」 等 )、 ① の 意 味 の 「 囲 う 」 以 外 の 「 囲 う 」 の 用 例 、 受 動 文 の 用 例 を 除 い た 上 で 、 ~ ニ ~ ヲ 形 と ~ ヲ ~ デ 形 の 用 例 を 数 え た 。 ニ 格 句 や デ 格 句 が 現 れ て い な い 場 合 で も 、 文 脈 か ら 格 体 制 が 判 別 で き る も の に つ い て は 集 計 に 入 れ た 。 な お 、 本 稿 の 本 文 で は 「 囲 う 」 の よ う に 表 記 し て い る が 、 調 査 に あ た っ て は 漢 字 ・ 仮 名 の 別 な く 調 査 し て い る 。
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が 外 側 、 対 象 に あ た る 事 物 ( 水 ) が 内 側 に な る 。 少 な く と も 「 着 点 に あ た る 事 物 が 内 側 で 対 象 に あ た る 事 物 が 外 側 」 と い う 位 置 関 係 を 強 制 す る 位 置 変 化 動 詞 は 存 在 し な い だ ろ う )。 そ の た め ~ ニ ~ ヲ 形 が 成 立 せ ず 、 壁 塗 り 代 換が 成 立 し な い の だ と考 え ら れ る 。
ち な み に 、 壁 塗 り 代 換 を 起 こ す 動 詞 に つ い て 確 認 し て み る と 、 こ の よ う な 、 ~ ニ ~ ヲ 形 ( 位 置 変 化 ) へ の シ フ ト を 阻 害 す る 意 味 的 特 徴 を 持 つ 動 詞 は み ら れ な い 。 た と え ば 「 ~ ヲ ~ デ 塗 る ( 壁 を ペ ン キ で 塗 る )」
は 「 ヲ 格 句 の 事 物 ( 壁 ) が そ の 表 面 に デ 格 句 の 事 物 ( ペ ン キ ) を 伴 っ た 状 態 に な る 」 と い う 総 体 変 化 を 表 す が 、 こ れ を ~ ニ ~ ヲ 形 に シ フ ト さ せ る と 「 ニ 格 句 ( 壁 ) の 表 面 に ヲ 格 句 ( ペ ン キ ) が 存 在 す る よ う に な る 」 と い う 、 位 置 変 化 に お け る 通 常 の 着 点 と 対 象 の 関 係 が 得 ら れ る 。 ま た 「 ~ ヲ ~ デ 満 た す ( グ ラ ス を 水 で 満 た す )」 は 「 ヲ 格 句 の 事 物 ( グ ラ ス ) が そ の 内 側 に デ 格 句 の 事 物 ( 水 ) を 伴 っ た 状 態 に な る 」 と い う 総 体 変 化 を 表 す が 、 こ れ を ~ ニ ~ ヲ 形 に シ フ ト さ せ る と 「 ニ 格 句 の 事 物 ( グ ラ ス ) の 内 側 に ヲ 格 句 の 事 物 ( 水 ) が 存 在 す る よ う に な る 」 と な り 、 や は り 位置 変 化 に お け る 通 常の 着 点 と 対 象 の 関 係と な る 。
(9) に ま と め た よ う に 、 川 野 (2009) で は 、 壁 塗 り 代 換 が 、 位 置 変 化 の 下 位 類 で あ る 依 存 的 転 位 と 状 態 変 化 の 下 位 類 で あ る 総 体 変 化 の 間 の 意 味 タ イ プ の シ フ ト に よ っ て 起 こ る と 論 じ た 。「 囲 う 」 が 壁 塗 り 代 換 を 起 こ さ な い の は 、 こ の シ フ ト を 妨 げ る 意 味 的 特 徴 を 有 し て い る た め だ と 考 え ら れ る 。 つ ま り 、「 囲 う 」 が 壁 塗 り 代 換 を 起 こ さ な い こ と は 、
(9) の 枠 組 み の 中 で 捉 え る こ と がで き る の で あ る 。
4 .「 囲 う 」 は な ぜ 餅 く る み 交 替 を 起 こ さ な い の か
こ こ ま で 壁 塗 り 代 換 に つ い て 見 て き た が 、 冒 頭 で も 述 べ た よ う に 、
~ ニ ~ ヲ 形 ( 位 置 変 化 ) と ~ ヲ ~ デ 形 ( 状 態 変 化 ) の 交 替 に は 、 壁 塗 り 代 換 の 他 に、「 餅 く る み 交 替 」 が存 在 す る ( 川 野 2006、2009 等 )。 そ こ で 本 節 で は 、餅 く る み 交 替 と 「 囲う 」 の 関 係 に つ い て検 討 し た い 。
ま ず 、 壁 塗 り 代換 と 餅 く る み 交 替 の違 い を 確 認 し て お きた い 。
(11)壁 塗 り 代 換 ( = (3))
a. ~ニ( 壁 に ) ~ ヲ( ペ ン キ を ) 動 詞( 塗 る )
b. ~ヲ( 壁 を ) ~ デ( ペ ン キ で ) 動 詞( 塗 る )
136
(12) 餅 く る み 交 替
a. ~ニ( 桜 の 葉 に ) ~ ヲ( 餅 を ) 動 詞( く る む )
b. ~ヲ( 餅 を ) ~ デ( 桜 の 葉 で ) 動 詞( く る む )
ど ち ら も ~ ニ ~ ヲ 形 ( 位 置 変 化 ) と ~ ヲ ~ デ 形 ( 状 態 変 化 ) の 交 替 で あ る が 、 交 替 の 際 の 格 成 分 の 対 応 の 仕 方 が 異 な っ て い る 。 す な わ ち 、 壁 塗 り 代 換 で は 、 ~ ニ ~ ヲ 形 の ニ 格 句 と ヲ 格 句 が 、 ~ ヲ ~ デ 形 の ヲ 格 句 と デ 格 句 に そ れ ぞ れ 対 応 す る の に 対 し 、 餅 く る み 交 替 で は 、 ~ ニ ~ ヲ 形 の ニ 格 句 と ヲ 格 句 が 、 ~ ヲ ~ デ 形 の デ 格 句 と ヲ 格 句 に そ れ ぞ れ 対 応 す る 。 ま た 、「 塗 る 」 は 壁 塗 り 代 換 を 起 こ し 「 く る む 」 は 餅 く る み 交 替 を 起 こ す と い う よ う に 、 ど ち ら の パ タ ー ン で 交 替 が 起 こ る か は 動 詞 に よ っ て 異 な る 。 な お 、 ~ ニ ~ ヲ 形 が 位 置 変 化 の 中 で も 依 存 的 転 位 を 表 し 、 ~ ヲ ~ デ 形 が 状 態 変 化 の 中 で も 総 体 変 化 を 表 す と い う 点 は 、 壁 塗 り 代 換 を 起 こ す 動 詞 も 餅 く る み 交 替 を 起 こ す 動 詞 も 同 じ で あ る ( た と え ば 「 ~ ニ ~ ヲ く る む 」 は 、 ニ 格 句 の 事 物 ( 桜 の 葉 ) を ヲ 格 句 の 事 物 ( 餅 ) の 形 状 に 適 応 さ せ つ つ ヲ 格 句 の 事 物 を ニ 格 句 の 事 物 の 中 に 位 置 づ け る と い う 動 作 を 表 す ( 依 存 的 転 位 )。 ま た 「 ~ ヲ ~ デ く る む 」 は ヲ 格 句 の 事 物 ( 餅 ) の 属 性 変 化 で は な く 、 デ 格 句 の 事 物 ( 桜 の 葉 ) を 伴 っ た 状 態 に なる こ と を 表 す ( 総 体変 化 ))。
3 節 で は「 囲 う 」 が 総 体 変 化 を 表 すに も か か わ ら ず 壁 塗り 代 換 を 起 こ さ な い こ と を 見た が 、 実 は 「 囲 う 」は 餅 く る み 交 替 も 起こ さ な い 。
(13)a. 屋 敷 を 土 塀 で 囲 う ( ~ ヲ ~ デ 形 ) b. *土 塀 に 屋 敷 を 囲 う ( ~ ニ ~ ヲ 形 )
(13) が 示 す よ う に 、 ~ ヲ ~ デ 形 の (13a) を 餅 く る み 交 替 の パ タ ー ン で 交 替 さ せ た (13b) は 不 適 格 な 文 と な り 、 交 替 が 成 立 し な い の で あ る
6。
そ れ で は 、「 囲 う 」 は 総 体 変 化 を 表 す に も か か わ ら ず 、 な ぜ 餅 く る み 交 替 を 成 立 さ せな い の だ ろ う か 。
6 3 節 で 述 べ た よ う に 、BCCWJ に お け る 「 囲 う 」 の 用 例 調 査 で は 、 ~ ヲ ~ デ 形 が 135 例 あ っ た の に 対 し ~ ニ ~ ヲ 形 と 判 断 で き る 例 は 0 で あ っ た 。 つ ま り
(13b) の よ う な 用 例 は 、 今 回 の 調 査 の 範 囲 で は 見 ら れ な か っ た 。
な お 、 中 に は (13b) の よ う な 例 を 非 文 と ま で は 言 え な い と す る 人 が い る か も し れ な い が 、 そ の 場 合 も 、 注 4 に 述 べ た の と 同 じ 理 由 で 、 本 稿 の 議 論 の 決 定 的 な 支 障 に は な ら な い と 考 え ら れ る 。
137
3 節で は 、「 囲 う 」 が 壁 塗 り 代 換を 起 こ さ な い 理 由 につ い て、「 ~ ヲ ~ デ 囲 う 」 の 表 す 「 ヲ 格 句 の 事 物 ( 屋 敷 ) が そ の 周 り に デ 格 句 の 事 物
( 土 塀 ) を 伴 っ た 状 態 に な る 」 と い う 総 体 変 化 を 、 壁 塗 り 代 換 の ~ ニ
~ ヲ 形 に シ フ ト さ せ る と 、「 着 点 に あ た る 事 物 ( 屋 敷 ) の 外 側 に 対 象 に あ た る 事 物 ( 土 塀 ) が 存 在 す る 」 と い う 、 位 置 変 化 に お け る 着 点 と 対 象 の 位 置 関 係 と し て は 不 自 然 な 位 置 関 係 が 強 制 さ れ る た め で あ る と 論 じ た 。 し か し 餅 く る み 交 替 の 場 合 は 、 ~ ヲ ~ デ 形 の ヲ 格 句 が ~ ニ ~ ヲ 形 の ヲ 格 句 に 対 応 し 、 ~ ヲ ~ デ 形 の デ 格 句 が ~ ニ ~ ヲ 形 の ニ 格 句 に 対 応 す る た め 、 ~ ニ ~ ヲ 形 に シ フ ト さ せ る と 「 着 点 に あ た る 事 物 ( 土 塀 ) の 内 側 に 対 象 に あ た る 事 物 ( 屋 敷 ) が 存 在 す る よ う に な る 」 と い う 自 然 な 位 置 関 係 が 得 ら れ る 。 つ ま り 「 ~ ヲ ~ デ 囲 う 」 が 持 つ 「 ヲ 格 句 の 事 物 ( 屋 敷 ) が そ の 周 り に デ 格 句 の 事 物 ( 土 塀 ) を 伴 っ た 状 態 に な る 」 と い う 意 味 的 特 徴 は 、 餅 く る み 交 替 の 成 立 を 妨 げ る 要 因 に は な ら な い の で あ る 。 実 際 、 餅 く る み 交 替 を 起 こ す 「 く る む 」 も 、「 囲 う 」 と 同 様 、
~ ヲ ~ デ 形 に お い て 「 ヲ 格 句 の 事 物 ( 餅 ) が そ の 周 り に デ 格 句 の 事 物
( 桜 の 葉 ) を 伴っ た 状 態 に な る 」 とい う 内 容 の 総 体 変 化を 表 す 。
よ っ て 「 囲 う 」 が 餅 く る み 交 替 を 起 こ さ な い 理 由 は 別 に あ る こ と に な る が 、 そ れ は 、「 ~ ヲ ~ デ 囲 う 」 が 「 デ 格 句 の 事 物 が ヲ 格 句 の 事 物 の 方 に 動 か さ れ る 」 と い う 動 き の 方 向 を 強 く 指 向 す る 点 で あ る と 考 え ら れ る 。「 A を B で 囲 う 」 と い っ た 場 合 、 A は 固 定 し た ま ま B の 方 を 動 か し て 「 囲 う 」 動 作 を 行 う と 考 え る の が 一 般 的 だ ろ う 。「 屋 敷 を 土 塀 で 囲 う 」 の よ う に ヲ 格 句 の 事 物 ( 屋 敷 ) が 動 か し づ ら い も の で あ る 場 合 は も ち ろ ん の こ と 、「 鳥 か ご を 段 ボ ー ル で 囲 う 」 の よ う に ヲ 格 句 の 事 物
( 鳥 か ご ) が 動 か せ る 物 の 場 合 で も 、 ヲ 格 句 の 事 物 は 固 定 し た ま ま で デ 格 句 の 事 物 ( 段 ボ ー ル ) の 方 を 動 か す と い う 動 作 を イ メ ー ジ す る の が 通 常 だ と 思 わ れ る 。 つ ま り 「 ~ ヲ ~ デ 囲 う 」 は 、 そ の 語 彙 的 意 味 に お い て 、「 デ 格 句 の 事 物 → ヲ 格 句 の 事 物 」 と い う 動 き の 方 向 を 強 く 指 向 す る と 考 え ら れ る の で あ る 。 そ し て こ れ を 餅 く る み 交 替 の ~ ニ ~ ヲ 形 に シ フ ト さ せ る と 、「 着 点 に あ た る 事 物 ( ニ 格 句 の 事 物 ) が 対 象 に あ た る 事 物 ( ヲ 格 句 の 事 物 ) の 方 に 移 動 す る 」 と い う 、 位 置 変 化 に お け る 通 常 の 移 動 の 方 向 と は 逆 の 方 向 を 指 向 し て し ま う こ と に な る た め 、 餅 く る み 交 替 が 成 立 し な い の だ と 考 え ら れ る ( 位 置 変 化 で は 通 常 、 対 象 に あ た る 事 物 が 着 点 に あ た る 事 物 の 方 に 移 動 す る 。 少 な く と も 「 着 点 に あ た る 事 物 が 対 象 に あ た る 事 物 の 方 に 移 動 す る 」 と い う こ と を 強 制 す る 位 置 変 化 動詞 は 存 在 し な い だ ろう )。
ち な み に 、 餅 く る み 交 替 を 起 こ す 「 く る む 」 に つ い て 確 認 し て み る と 、 こ の よ う な ~ ニ ~ ヲ 形 へ の シ フ ト を 妨 げ る 意 味 的 特 徴 は み ら れ な
138
い 。「 餅 を 桜 の 葉 で く る む 」 と 言 っ た 場 合 、 餅 を 桜 の 葉 の 方 に 持 っ て い っ て く る ん で も よ く 、 桜 の 葉 を 餅 の 方 に 近 づ け て く る ん で も よ い 。 つ ま り 「 ~ ヲ ~ デ く る む 」 は ヲ 格 句 と デ 格 句 の 事 物 間 の 動 き の 方 向 に 関 し て 無 指 定 で あ り 、 そ の た め ~ ニ ~ ヲ 形 へ の シ フ ト が 阻 害 さ れ る こ と が な い の だ と いえ る 。
5 .「 囲 う 」 と 「 巻 く 」 の 比 較
最 後 に この 5 節 で は、「 囲 う 」 と 「 巻 く 」 を 比 較 した い 。 先 に 引 用 し た 『 明 鏡 国 語 辞 典 』 の 「 囲 う 」 の 意 味 の 説 明 に 「 内 と 外 を 区 別 す る 仕 切 り を 設 け て 、 周 囲 を 取 り 巻 く 」 と あ り 、「 巻 く 」 と い う 動 詞 が 使 わ れ て い る こ と に も 見 ら れ る よ う に 、「 囲 う 」 と 「 巻 く 」 の 表 す 意 味 に は 似 た 部 分 が あ る 。 し か し 、「 囲 う 」 が 壁 塗 り 代 換 も 餅 く る み 交 替 も 起 こ さ な い の に 対 し、「 巻 く 」 は ど ち ら の交 替 も 成 立 さ せ る (川 野 2011)。
(14)a. 包 丁 に さ ら し を 巻 く
b. 包 丁 を さ ら し で 巻 く ( 壁 塗 り 代 換 )
(15)a. さ ら し に 包 丁 を 巻 く
b. 包 丁 を さ ら し で 巻 く ( 餅 く る み 交 替)
つ ま り 、「 囲 う 」 と 「 巻 く 」 は 、 似 た 意 味 を 表 す に も か か わ ら ず 、 格 体 制 の 交 替 の 可 否 に 関 し て 対 照 的 な ふ る ま い を 見 せ る の で あ る 。 以 下 で は 「 囲 う 」 に 関 す る 前 節 ま で の 分 析 を 踏 ま え つ つ 、 な ぜ 「 囲 う 」 と
「 巻 く 」 に こ のよ う な 違 い が 生 じ るの か を 考 察 す る 。
既 に 述 べ た よ う に 、「 囲 う 」 は ~ ヲ ~ デ 形 は と る が ~ ニ ~ ヲ 形 は と ら な い 。
~ ヲ ~ デ 形 ~ ニ ~ ヲ 形
*屋 敷 に 土 塀 を 囲 う ( ×壁 塗 り 代 換 )
屋 敷 を 土 塀で 囲 う
*土 塀 に 屋 敷 を 囲 う ( ×餅 く る み 交 替 )
こ れ に 合 わ せ る 形 で 「 巻 く 」 の ふ る ま い を 整 理 す る と 次 の よ う に な る 。
~ ヲ ~ デ 形 ~ ニ ~ ヲ 形
包 丁に さ ら し を 巻 く ( 壁 塗 り 代 換 )
包 丁 を さ らし で 巻 く
さ らし に 包 丁 を 巻 く ( 餅 く る み 交 替 )
139
つ ま り 「 ~ ヲ ~ デ 囲 う 」 は 壁 塗 り 代 換 の ~ ニ ~ ヲ 形 に も 餅 く る み 交 替 の ~ ニ ~ ヲ 形 に も 交 替 さ せ ら れ な い の に 対 し 、「 ~ ヲ ~ デ 巻 く 」 は ど ち ら の ~ ニ ~ ヲ 形 に も 交 替 が 可 能 だ と い う こ と で あ る 。 な ぜ こ の よ う な 違 い が 生 じ るの だ ろ う か 。
3 節 で は 「 囲 う 」 が 壁 塗 り 代 換 を 起 こ さ な い 理 由 に つ い て 、「 ~ ヲ ~ デ 囲 う 」 の 表 す 総 体 変 化 が 「 ヲ 格 句 の 事 物 ( 屋 敷 ) が そ の 周 り に デ 格 句 の 事 物 ( 土 塀 ) を 伴 っ た 状 態 に な る 」 と い う も の で あ り 、 そ こ に 含 ま れ る 「 ヲ 格 句 の 事 物 ( 内 側 ) ― デ 格 句 の 事 物 ( 外 側 )」 と い う 意 味 的 特 徴 が 妨 げ と な っ て 、 壁 塗 り 代 換 型 の ~ ニ ~ ヲ 形 へ の 交 替 が 不 成 立 に な る と い う こ と を 述 べ た ( な お 、 こ の 意 味 的 特 徴 は 餅 く る み 交 替 を 妨 げ る 要 因 に は なら な い (4 節 を 参 照 の こ と))。 こ れ に 対し 「 ~ ヲ ~ デ 巻 く 」 の 表 す 総 体 変 化 は 二 通 り の 解 釈 が 可 能 で あ り 、「 ヲ 格 句 の 事 物 ( 包 丁 ) が そ の 周 り に デ 格 句 の 事 物 ( さ ら し ) を 伴 っ た 状 態 に な る 」 と い う 出 来 事 と し て 見 る こ と も 、「 ヲ 格 句 の 事 物 ( 包 丁 ) が そ の 表 面 に デ 格 句 の 事 物 ( さ ら し ) を 伴 っ た 状 態 に な る 」 と い う 出 来 事 と し て 見 る こ と も で き る 。 前 者 の 場 合 は 「 ニ 格 句 の 事 物 ( さ ら し ) の 内 側 に ヲ 格 句 の 事 物 ( 包 丁 ) が 存 在 す る よ う に な る 」 と い う 位 置 変 化 に シ フ ト し て 餅 く る み 交 替 が 成 立 し 、 後 者 の 場 合 は 「 ニ 格 句 ( 包 丁 ) の 事 物 の 表 面 に ヲ 格 句 の 事 物 ( さ ら し ) が 存 在 す る よ う に な る 」 と い う 位 置 変 化 に シ フ ト し て 壁 塗り 代 換 が 成 立 す る こと に な る の で あ る7。
「 ~ ヲ ~ デ 囲 う 」 も 「 ~ ヲ ~ デ 巻 く 」 も 似 た よ う な 動 作 を 表 す が 、 決 定 的 な 違 い は 、「 囲 う 」 で は ヲ 格 句 と デ 格 句 の 二 つ の 事 物 間 に 空 き が あ る の に 対 し て 「 巻 く 」 で は 二 つ の 事 物 が 密 着 す る と い う 点 だ ろ う 。 こ の 違 い が 、「 ~ ヲ ~ デ 巻 く 」 で の み 、「 ヲ 格 句 の 事 物 が そ の 表 面 に デ 格 句 の 事 物 を 伴 っ た 状 態 に な る 」 と い う 解 釈 を 生 じ 、 こ れ に よ り 「 巻 く 」 に お い て のみ 、 壁 塗 り 代 換 が 成立 す る の だ と 考 え られ る 。
ま た 、4 節 で は 「 囲 う 」 が 餅 く る み 交 替 を お こ さ な い 理 由 に つ い て 、
「 ~ ヲ ~ デ 囲 う 」 が 「 デ 格 句 の 事 物 を ヲ 格 句 の 事 物 の 方 に 動 か し て 囲 う 動 作 を 行 う ( デ 格 句 の 事 物 → ヲ 格 句 の 事 物 )」 と い う 動 き の 方 向 を 強 く 指 向 す る た め に 餅 く る み 交 替 型 の ~ ニ ~ ヲ 形 へ の 交 替 が 不 成 立 に な
7 「 包 丁 を さ ら し で 巻 く 」 を 「 さ ら し の 内 側 に 包 丁 が あ る 」 と い う 出 来 事 と し て 見 る 場 合 は 、「 餅 を 桜 の 葉 で く る む 」 に お け る 「 餅 」 と 「 桜 の 葉 」 の 関 係
( 桜 の 葉 の 内 側 に 餅 が あ る ) と 同 じ こ と に な り 、 餅 く る み 交 替 が 起 こ る 。 一 方 「 包 丁 を さ ら し で 巻 く 」 を 「 包 丁 の 表 面 上 に さ ら し が あ る 」 と い う 出 来 事 と し て 見 る 場 合 は 、「 壁 を ペ ン キ で 塗 る 」 に お け る 「 壁 」 と 「 ペ ン キ 」 の 関 係
( 壁 の 表 面 上 に ペ ン キ が あ る ) と 同 じ こ と に な り 、 壁 塗 り 代 換 が 起 こ る 。 詳 細 は 川 野 (2011) を 参 照 。
140
る と い う こ と を 述 べ た 。 こ れ に 対 し 「 ~ ヲ ~ デ 巻 く 」 に は 、 こ の よ う な 意 味 的 特 徴 が み ら れ な い 。 た と え ば 「 包 丁 を さ ら し で 巻 く 」 と 言 っ た 場 合 、 広 げ た さ ら し の 上 に 包 丁 を 載 せ て 巻 く 動 作 を 行 っ て も よ い し
( 包 丁 → さ ら し )、 包 丁 の 方 に さ ら し を 持 っ て い っ て 巻 く 動 作 を 行 っ て も よ い ( さ ら し→ 包 丁)。 つ ま り 先 に 4 節 で み た 「 く るむ 」 の 場 合 と 同 様 、「 ~ ヲ ~ デ 巻 く 」 は 二 つ の 事 物 間 の 動 き の 方 向 に 関 し て 無 指 定 な の で あ り 、 し た が っ て ~ ニ ~ ヲ 形 へ の 交 替 が 妨 げ ら れ な い の で あ る 。 似 た よ う な 動 作 を 表 す 「 ~ ヲ ~ デ 囲 う 」 と 「 ~ ヲ ~ デ 巻 く 」 で あ る が 、
「 デ 格 句 の 事 物 → ヲ 格 句 の 事 物 」 と い う 動 き の 方 向 を 語 彙 的 に 指 向 す る か 否 か が 異 な っ て お り 、 こ れ が 決 定 的 な 要 因 と な っ て 餅 く る み 交 替 の 成 否 が 分 か れる の だ と 考 え ら れ る。
以 上 の よ う に、 川 野 (2009)、 及び 、 本 稿 の 3 節 、4 節 の 議 論 を 踏 ま え る と 、「 囲 う 」 と 似 た 動 作 を 表 す 「 巻 く 」 が 、 な ぜ 壁 塗 り 代 換 も 餅 く る み 交 替 も 成 立さ せ る の か が 説 明 でき る 。
6 . ま と め
「 ~ ヲ ~ デ 囲 う 」 が 総 体 変 化 を 表 す に も か か わ ら ず 壁 塗 り 代 換 も 餅 く る み 交 替 も 起 こ さ な い の は 、「 囲 う 」 の 持 つ 、( ⅰ )「「 ヲ 格 句 の 事 物
( 内 側 ) ― デ 格 句 の 事 物 ( 外 側 )」 と い う 位 置 関 係 を 指 定 す る 」 と い う 意 味 的 特 徴 と 、( ⅱ )「「 デ 格 句 の 事 物 → ヲ 格 句 の 事 物 」 と い う 動 き の 方 向 を 強 く 指 向 す る 」 と い う 意 味 的 特 徴 が 、 総 体 変 化 か ら 位 置 変 化 へ の シ フ ト を 妨 げ る た め だ と 考 え ら れ る ( よ り 厳 密 に 述 べ れ ば 、( ⅰ ) の 意 味 的 特 徴 は 壁 塗 り 代 換 型 の シ フ ト を 妨 げ 、( ⅱ ) の 意 味 的 特 徴 は 餅 く る み 交 替 型 の シ フ ト を 妨 げ る )。 つ ま り 、「 囲 う 」 が 交 替 を 起 こ さ な い こ と は 、「 ~ ニ ~ ヲ 形 と ~ ヲ ~ デ 形 の 交 替 は 、「 依 存 的 転 位 ( 位 置 変 化 の 下 位 類 ) と し て 解 釈 さ れ る 出 来 事 が 、 見 方 を 変 え る と 総 体 変 化 ( 状 態 変 化 の 下 位 類 ) と し て も 解 釈 で き 、 か つ そ の 逆 も 成 り 立 つ 」 と い う 意 味 タ イ プ の シ フ ト に よ っ て 起 こ る 」 と し た 川 野 (2009) の 記 述 か ら 説 明 で き る と い え る 。 本 稿 で は 、 一 見 、 反 例 の よ う に も み え る 「 囲 う 」 に つ い て も 、 川 野 (2009) の 枠 組 み の 中 で 説 明 が 可 能 で あ る こ と を み た 。
参 考 文 献
奥 田 靖 雄 (1976)「 言 語 の 単 位 と し て の 連 語 」 教 育 科 学 研 究 会 国 語 部 会 ( 編 )
『 教 育 国 語 』45, 麥 書 房
奥 津 敬 一 郎 (1981)「 移 動 変 化 動 詞 文 ― い わ ゆ る spray paint hypallage に つ い て ― 」『 国 語 学 』127, 国 語 学 会
141
川 野 靖 子 (2004)「「 桜 の 葉 に 餅 を く る む 」 と 「 餅 を 桜 の 葉 で く る む 」 ― 壁 塗 り 代 換 と の 関 連 性 ― 」『 香 椎 潟 』50, 福 岡 女 子 大 学 国 文 学 会
川 野 靖 子 (2006)「 現 代 日 本 語 に お け る 位 置 変 化 構 文 と 状 態 変 化 構 文 の 交 替 現 象 ― 格 成 分 の 対 応 の 仕 方 ― 」『 日 本 語 の 研 究 』2-1, 日 本 語 学 会
川 野 靖 子 (2009)「 壁 塗 り 代 換 を 起 こ す 動 詞 と 起 こ さ な い 動 詞 ― 交 替 の 可 否 を 決 定 す る 意 味 階 層 の 存 在 ― 」『 日 本 語 の 研 究 』5-4, 日 本 語 学 会
川 野 靖 子 (2011)「 壁 塗 り 代 換 と 餅 く る み 交 替 の 両 方 が 可 能 な 動 詞 ― 「 巻 く 」 と 「 埋 め る 」 の 分 析 ― 」『 文 藝 と 思 想 』75, 福 岡 女 子 大 学 文 学 部 紀 要
川 野 靖 子 (2013)「 現 代 日 本 語 の 動 詞 「 詰 め る 」「 覆 う 」 の 分 析 ― 格 体 制 の 交 替 の 観 点 か ら ― 」『 埼 玉 大 学 紀 要 ( 教 養 学 部 )』48-2.
川 野 靖 子 (2016a)「 壁 塗 り 代 換 は 、 な ぜ ヴ ォ イ ス の カ テ ゴ リ ー に 入 ら な い の か 」『 埼 玉 大 学 紀 要 ( 教 養 学 部 )』51-2.
川 野 靖 子 (2016b)「 壁 塗 り 代 換 は 体 系 的 な 文 法 現 象 で あ る ― 山 田 昌 裕 (2004)
「 壁 塗 り 代 換 (spray paint hypallage) ― 文 法 現 象 の 存 在 を め ぐ っ て ― 」 へ の 反 論 と し て ― 」『 小 出 慶 一 教 授 退 職 記 念 論 文 集 , こ と ば の 本 質 を 求 め て ( 埼 玉 大 学 教 養 学 部 リ ベ ラ ル ・ ア ー ツ 叢 書 別 冊 1)』
北 原 保 雄 ( 編 )(2002)『 明 鏡 国 語 辞 典 』 初 版 , 大 修 館 書 店
付 記
本 稿 は 、 科 学 研究 費 補 助 金 ( 基盤 C、 課 題 番号 26370527) に よ る 研 究 成 果 の 一 部 であ る 。
( 埼 玉 大 学 人 文社 会 科 学 研 究 科 准 教授 )