制度効果と趨勢効果 : 小選挙区制における政党投 票
その他のタイトル Party Factors under Japan's New Electoral System
著者 三宅 一郎
雑誌名 情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要
巻 14
ページ 109‑128
発行年 2000‑12‑21
URL http://hdl.handle.net/10112/00020294
関西大学総合情報学部紀要「情報研究」第1
4
号制度効果と趨勢効果:小選挙区制における政党投票
三 宅 一 郎
要 旨
有権者のレベルで,小選挙区制と「政党本位の選挙」を結ぴつけるものがあるとすれば,小選 挙区制に特有の,政府形成を目指す二つの比較的大きな政党間の対立と,両党支持者の政党投票 の促進の結びつきである.だが,政党投票率は制度の変革とは別に,以前から進行しつつある政 党支持の「衰退現象」を考慮に入れねばならない.政党支持の衰退の程度が大きく,制度変革の 影響を凌駕するほどのものか検討する必要がある.
(1)党派的対立構造と政党投票率:小選挙区制に特有の2大政党対立選挙区と無競争に近い安全選 挙区は政党投票率を昂進させる.その他のパタンは政党投票率を抑さえる働きがある. しかし,
対立構造の違いによる政党投票率の差があるとしても小さな差である.
(2)政党支持の低下とその機能テスト:政党支持機能の顕著な衰退は見られなかったが,支持強度 の若干の低下と,支持なしの増加は否定できない.政党投票率の最近の低下は,部分的に,政党 支持のこの衰退によるものであろう.
Party Factors under Japan's New E l e c t o r a l System
l c h i r o MIYAKE
A b s t r a c t
I n t h e e l e c t o r a l d i s t r i c t s where two c a n d i d a t e s from two m a j o r p a r t i e s compete w i t h e a c h o t h e r , keen c o m p e t i t i o n f o r c e s t h e s u p p o r t e r s o f t h o s e p a r t i e s t o v o t e f o r t h e i r own c a n d i d a t e s . I n t h e e l e c t o r a l d i s t r i c t s where one o f t h e major p a r t i e s e n j o y s a " s a f e " d i s t r i c t , t h e s u p p o r t e r s o f t h a t p a r t y a r e f o r c e d t o v o t e f o r t h e i r own c a n d i d a t e b e c a u s e t h e r e i s no o t h e r a l t e r n a t i v e . The a b o v e a r e r e a s o n s why J a p a n ' s new e l e c t o r a l s y s t e m might r a i s e t h e r a t e o f " p a r t i s a n ・ v o t i n g " .
However, t h e downward t r e n d o f p a r t y ‑ s u p p o r t among t h e Japanese e l e c t o r a t e i s s u p p o s e d
t o p u l l t h e r a t e o f " p a r t i s a n ‑ v o t i n g " down by a f e w p e r c e n t . T h i s a r t i c l e a t t e m p t s t o e x p l o r e
t h e f u n c t i o n o f p a r t y ‑ f a c t o r s i n t h e v o t i n g b e h a v i o r under J a p a n ' s new e l e c t o r a l s y s t e m .
110 関西大学総合情報学部紀要「情報研究」第
1 4
号2000
年1 2
月1 .
始めに( 1 )
選挙制度による党派的対立構造の相違と政党投票小選挙区制を採用すると「政党本位の選挙」になるといわれる.だが,小選挙区制と「政党本 位の選挙」を端的に結ぴつけるのは,政治エリートのレベルでも有権者のレベルでも,誤りであ る.有権者のレベルで,小選挙区制と「政党本位の選挙」を結ぴつけるものがあるとすれば,政 府形成を目指す二つの比較的大きな政党間の対立による両党支持者の「政党投票」の促進である.
これは,その他の小政党支持者による「政党投票」の抑制になるが,その結果,長期的に見てニ 大政党制かそれに近い政党制が成立するかもしれない.まず,政府形成を目指す二つの比較的大 きな政党間の対立の機能について分析する.その結果としての二大政党制への傾向についての検 討は別稿に譲る.なお, 「政党投票」とは有権者が自己の支持政党に従う投票をいい, 「候補者 投票」とは候補者評価による投票(評価得点で最高の候補者に投票)の略称である.
小選挙区制の典型的な党派的対立構造は,(a)少数の有効政党(当選を争いうる政党)間,(b)と くにそのなかの上位
2
政党の激突である.有効政党数が1
の場合,有効政党を支持政党とする人 には支持政党に投票する以外の選択肢がないので,政党投票を行うだろう.また,有効政党が政 府形成をねらう上位2
政党に限られるなら,2
政党の激突は政党投票率を高めるだろう.このように,小選挙区制の党派的対立構造は政党投票率を高めると期待できる.
これに対し,中選挙区制の党派的対立構造は,それを組み立てる要素として,(a)有効政党数に (b)同一政党からの立候補者数が加わり,より複雑である.定数マイナス 1ぐらいの有効政党数で,
そのうちの大政党は複数の候補者を立てる二重対立が,中選挙区の典型的対立構造といえようか.
有効政党数が少ないほど政党投票率が高いのは小選挙区制と同じだが,同一政党からの候補者数 が多い(特定政党による準独占の形態)と政党投票率が上昇し,少ないと政党投票率は下がる.
二つの制度の党派的対立構造のどちらが政党投票を促進するかは,直接テストしがたい.対立 構造の構成要素が異なるからである. (部分)サンプルの政党投票率を比較し,中選挙区制より
も小選挙区制で政党投票率が少しでも上昇すれば,制度の影響だと推定しよう.
だが,政党投票率は制度によるばかりでなく, (多分,制度よりも)選挙の特性(勝ち戦か負 け戦か,政策争点選挙かどうかなど)で変わるのは当然である.一般に,追い風下の選挙では支 持者の政党投票率は上昇するはずである.これについてはここでは触れることはできない.また,
制度の変革とは別に,かねてから進行しつつある政党支持の「衰退現象」を考慮に入れねばなら ない.政党支持の衰退の程度とスピードが大きく,制度変革や選挙特性の影響を凌駕するほどの ものか,検討する必要があろう.これは本稿,後半の課題である.
( 2 )
使用するデータ本稿は,
JES(JapneseE l e c t i o n S t u d y ) I , JES I I
と呼ばれる,二つの大きなパネル調査に 基づく分析である111.JES I
は1 9 8 3
年の参議院議員選挙直後と同年の衆議院議員選挙の前後に実 施した3
波にわたる全国規模のパネル調査で,JES I I
は1 9 9 3
年の衆議院議員選挙の前後,1 9 9 5
制度効果と趨勢効果:小選挙区制における政党投票
1 1 1
年の参議院議員選挙直後,および
1 9 9 6
年の衆議院議員選挙前後に行った5
波(2
回の郵送調査を 含めると 7波)の全国パネル調査である.したがって,1 9 8 3
年,1 9 9 3
年,1 9 9 6
年の三つの衆鏃院 選挙を比較できる.言うまでもなく,最初の二つは中選挙区制下の選挙で,最後の一つが小選挙 区制下の選挙である.2 .
党派的対立構造と政党投票( 1 )
有効政党による党派的対立構造一般に,選挙区内における主要な政党対立は有効政党(常に当選を争いうる上位の政党)間の 対立である.候補者を立てたすべての政党を考慮に入れる必要はない.そこで,有効政党と弱小 政党(有効政党でない政党)の区別から始めねばならない.対立構造のデータとして,政党得票 率のような集計データ(客観的データ)と有権者から見た有力政党(候補者)のような個人デー タ(主観的データ)が存在する.客観的データとして過去の政党得票率などを用いるのが普通だ が,この選挙は小選挙区制最初の選挙なので,参照すべき過去のデータが存在しない.そこで,
近似値として選挙結果を用いて「有効政党」と「弱小政党」を分けることにしたい.
まず,小選挙区制の客観的データによる党派的対立構造の指標である「有効政党パタン」を紹 介しよう.全
3 0 0
選挙区のうち,われわれの分析対象となる選挙区は1 8 1
である1 2 1 ̲ 1 8 1
選挙区内の 政党を選挙結果に基づいて「有効政党」か「弱小政党」かに2
分しだ3).有効政党数は1
から3
までであった( 2 0
万以下の市,町村に有効政党1
が多く,大都市に有効政党3
が多い).表1
は 有効政党数と有効政党の組み合わせパタンのクロス表である.この表のデータの単位は1 8 1
選挙区 ではなく,選挙区内,有権者サンプルの個人ケースであることに注意していただきたい.選挙区 内の有効政党の組み合わせパタンは「自民一新進」の2党対立が最も多く,これが49
%を占める.次いで「自民一民主」 「新進一民主」のような上位政党間の組み合わせが多く, 「自民
1
党」が これに続く.共産党支持者の高い忠誠度を考えて「自民一共産」 「新進一共産」など共産党と2 大政党の対立するパタンをひとまとめにしてみたが,わずか3%に過ぎなかった.残りの組み合表
1
.選挙区内の有効政党数と党派的対立( 1 9 9 6
年) 有効政党の組み合わせパタン 有効政党数1 2 1
自民1
党9 % 2
自民一新進4 9 3
自一民/新一民1 0
4
自・新と共*3
5自・新・民
3
党6
その他の組み合わせ4 1 3
3
1 0 2
合計(%)1 3
751 2 1 0 0
N 2 8 3 1 6 1 8 2 4 8 2 1 4 9
表上の数値は全サンプルを1 0 0
とする表%.*「自民ー共産」 「新進ー共産」
1 1 2
関西大学総合情報学部紀要「情報研究」第14
号2 0 0 0
年1 2
月わせパタンは多様であるが,ケース数は少ないので,それらを「その他」としてまとめた.有効 政党数
1
の「その他」は「新進1
党」 「民主1
党」 「無所属のみ」からなる.有効政党数2
の「そ の他」にまとめられたパタンで該当ケース数が比較的多いのは「自民ーなし」 (7%),
「新進一 民主」(2%),
「自民一社民」(2%
)である.有効政党数が
1
の場合は,3
分の2
以上が「自民1
党」,有効政党数が3
の場合は,ほとんど が「自民一新進一民主」の上位3党の対立である.有効政党数が2の場合の約3分の2は「自民 一新進」 2党対立である.このように, 「自民一新進」への集中度は大きい. 「自民一新進」だ けで全ケースの約半数に達し, 「自民一新進一民主」 「自民1
党」に「新進1
党」を加えると73%
を占める.
主観的データによる指標は「勝つ可能性のある候補者」にかんする態度データ
(JESI I
調査第6
波)を用いて作成した.一番大きな対立パタンは「自民一新進」で, 「自民1
党」が同率で続 き,この2
パタンで半数近くを占める.ここでも主要な対立は自民・新進2
党間の対立に集約さ れているのは明らかである.態度データであるから, 「わからない」が多数存在する(18%
)し,「最有力候補」をあげたとしてもそれに対抗する第2の候補を答えなかった場合が少なくない
( 4 1
%にもなる).客観的な「有効政党パタン」と比べると欠損値が多いので本章では使用しない.これは第 3章で改めて紹介することにする.
中選挙区制の有効政党指標は中選挙区制の対立構造を扱う小節(3)で紹介する.
(2) 小選挙区制の対立構造と政党投票率
小選挙区制の主要な党派的対立構造は,(1
) 2
大有効政党の激突と(2 )
有効政党が一つのみの安全 選挙区である.有権者はこの党派的対立パタンに反応するが,その反応は有効政党(の一つ)を 支持政党とするかどうかによって反対の方向を取るだろう.対象サンプル(支持政党から候補者 が立候補している選挙区で,投票意図をもつ人)を支持政党が有効政党であるかどうかで2分し た.表2は有効政党数別,有効政党パタン別,政党投票率( 1 9 9 6
年)である.支持政党が「有効 政党である」グループの政党投票率平均は86%, 「有効政党でない」は49
%で大きな差がある.これは, 「支持なし」が定義上「有効政党でない」に入ってるからであるが,支持なしを除外し ても,平均値は73%(n=124)でやはり低い141.
支持政党が有効政党であれば,有効政党数が少ないほど政党投票率は上がる.有効政党数
1
の 安全選挙区がかなり存在するのが小選挙区の特性であるが,有効政党が1
党しかないと,その政 党の支持者は自分の政党にたいする批判票を投じる意図でもなければ,他の政党は視野に入るま い. したがって,消極的にであっても,ともかく支持政党に投票するので,政党投票率は高くな る.表2
によると,有効政党1
の政党投票率は93
%で最大である.有効政党数が3党になると,選択肢が多くなり政党投票率は下がる.この値は
76
%でこれまでに上げたどの平均値よりも低い.有効政党数2の場合は,該当ケース数が多いので,有効政党の組み合わせパタンを使って細分 してみよう.第
1
グループは「自民一新進」対立であるが,第2
は「自民一民主」 「新進一民主」制度効果と趨勢効果:小選挙区制における政党投票
表
2.
有効政党数別,党派的対立パタン別,政党投票率(1996
年) 支持政党は 有効政党数 政党投票率 接戦度 有効政党か 対立パタン 平均値 平均値 有効政党である有効政党でない
1 . 93(86) 3 . 3 0 ( 1 1 3 ) 2 . 86 ( 6 0 6 ) 1 . 3 5 ( 8 5 9 )
自一新 .9 0 ( 4 3 1 ) 1 . 33 ( 6 0 6 )
自・新・民・共 .8 2 (68) 1 . 3 9 ( l l l )
その他 .7 6 ( 1 0 2 ) 1 . 4 3 ( 1 4 2 ) 3 . 7 6 ( 1 0 7 ) 1 . 2 7 ( 1 4 7 )
該当全ケース .86 ( 7 9 4 ) 1 . 5 4 ( 1 1 1 9 )
イータ係数 .
1 2 2 * * . 8 2 5 * *
. . . . . . . . . . . . ‑..................1 . 3 2 (34) 2 . 5 1 ( 1 3 5 )
3 . 6 3 ( 1 9 )
該当全ケース .49 ( 1 8 8 )
イータ係数 .1 7 2
3 . 0 3 ( 1 1 5 ) 1 . 34 ( 4 6 6 ) 1 . 28 (82) 1 . 62 ( 6 6 3 ) . 799**
接戦度は当選候補者の得票数割る次点候補者の得票数 政党投票率は回答した投票政党が,支持政党である比率
113
か「自民一共産」 「新進一共産」の対立である.それ以外の組み合わせは「その他」に一括した.
「自民一新進」対立パタンでの政党投票率は
90
%で, 「有効政党1
」の93
%に次ぐ高率である.「有効政党 2」の 3パタン中,最も競争の激しい対立である.それが政党投票を進めるのであろ う.競争度5)を表に併記しておいた.この指標は値が小さいほど競争度が厳しくなる最高値の
3.30
は「有効政党1
」の競争度平均値で,最小は「有効政党3
」の平均値,1 .27
であった(6)̲政党投票率の平均値が比較的小さいのは, 「有効政党
3
」と有効政党数は2
の「その他」パタ ンで,政党投票率の平均値は76
%である.支持政党が小政党であるか(支持なしを含めて),小 政党を含めた政党間の激しい競争が政党投票率を下げる.小選挙区制では有効政党数が比較的少なくなるので,支持政党が「有効政党でない」ケースも 中選挙区制よりも多い. 「有効政党でない」場合,政党投票率は一般的に低いが,それだけでな く,逆の反応が見られよう.一般に,自分の支持政党が「有効政党でない」と,投票に当たって 当選可能性を重視するなら,政党投票をするわけにはいかない.まず「有効政党
1
」の場合,有 効政党に投票せざるを得ない.有効政党数が複数になると支持政党に近いと感じる政党も増えて,戦略投票の機会も多くなるが,他方,自分の政党も(間違って)有効政党と見るか,激戦になる ので自分の支持政党にもチャンスがあると見て,支持政党に投票する人が増えるのではなかろう か.政党投票率は有効政党数に比例して増加しよう.
要するに,小選挙区制に特有の 2大政党対立選挙区と無競争に近い安全選挙区は,政党投票率 を昂進させる.その他の対立パタンは政党投票率を抑さえる.この 2方向への分化が大きいのが 小選挙区制の特徴であろうり
(3) 中選挙区制の対立構造と政党投票率
中選挙区制の党派的対立構造の典型は,比較的多い数(定数マイナス
1
前後)の有効政党が対114
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月立し,大政党から立候補した複数の候補者対立がこれに加わるものであろう.小選挙区制におけ る対立構造よりも複雑で,有効政党数,その組み合わせパタンに,謙員定数と同一政党からの立 候補者数の2変数をも考慮に入れねばならない.大ざっばに言うと,議員定数と有効政党数は比 例するから,議員定数は扱わなくて良いことにしよう.また,有効政党数が比較的多いから,有 効政党の組み合わせパタンを考慮すると複雑に過ぎるので,これも省略する.つまり,有効政党 数と候補者数の 2変数で対立構造を組み立ててもよかろう.上述したように,有効政党数は少な いほど,また同一政党からの候補者数は多いほど,政党投票率は上昇するだろう.
表
3
は中選挙区制下の1983
年選挙データによるものである.1993
年調査によっても同様なデー タを作ることができるが,この年は,新党ブームによる特殊な選挙であったから,対立構造や政 党投票率の一般性に問題がある.とりあえず1983
年選挙データによる分析のみを掲載しよう.中選挙区制では
1
選挙区当たりの議員定数が多く,有効政党数は比較的多くなるので,ほとん どの政党が有効政党になる.有権者にとって支持政党が有効政党でないケースは小選挙区制と比 べてより少ない例えば,自民党はすべての選挙区で有効政党であり,自民党支持者はすべて支 持政党は「有効政党である」のカテゴリーに入る.支持政党は「有効政党でない」にあたるのは「支持なし」に多く,したがって,このカテゴリーの政党投票率は小選挙区制のそれに比べて極め て低い181.
有効政党数は相対的に多いと言っても,ごくわずかだが
1
党だけのケース,そしてかなり多く の2党のケースが見られる(この両者は併合した).それは小都市あるいは農村選挙区で,自民 党が圧倒的に強いところで見いだされる.中選挙区制でも有効政党数が少ないほど,有効政党の 政党支持者にとって投票選択肢が制約されるから,政党投票率は上がる(ただし,有効政党数による政党投票率の差は有意ではない).
表
3.
有効政党数別,自民党候補者数別,政党投票率平均値(1983
年)有効政党である
有効政党でない
有効政党数 全政党 支持者*
1
2 . 9 1 ( 2 8 0 ) 3 . 8 9 ( 1 9 4 ) 4 . 8 8 ( 2 1 1 ) 5+ . 8 7 ( 1 4 0 )
該当全ケース. 8 9 ( 8 2 5 )
イータ係数
. 0 4 6 2 . 14(37) 3 . 2 1 (34) 4 + . 32(47)
該当全ケース .2 3 ( 1 1 8 )
イータ係数 .
2 9 3
自民党 支持者
. 9 3 ( 2 1 8 ) . 9 2 ( 1 3 2 ) . 8 7 ( l l l ) . 8 4 ( 7 3 ) . 9 0 ( 5 3 4 ) . 1 1 5
表内の主要数値は政党投票率平均値(投票意図政党)
* 支持政党が選挙区内有効政党の一つである支持者
_―‑ ごく少数なので,隣接カテゴリーに併合した.
候 補 全政党 自民党 者数 支持者 支持者
1 . 8 4 ( 3 0 2 ) . 69(51) 2 . 9 1 ( 1 8 4 ) . 9 0 ( 1 4 8 ) 3+ . 9 2 ( 3 3 9 ) . 9 3 ( 3 3 5 )
. 8 9 ( 8 2 5 ) . 9 0 ( 5 3 4 )
. 1 2 8 * * . 2 3 5 * *
制度効果と趨勢効果:小選挙区制における政党投票
1 1 5
大政党は各選挙区に複数候補者を立てねば,議席の過半数を確保できないが,一人しか立てら れない選挙区も存在する.それは自党の勢力が弱くかつ,他に有力な政党(候補者)が存在する 選挙区だろう.同ー選挙区内に複数の同一政党候補者が存在すると,同一政党の候補者間の争い となって,その政党支持者は政党投票を行わないと言われる.だが,われわれのように政党投票 を政党支持と一致する投票と定義すると,同ー選挙区における同一政党の候補者数が多いほど政 党投票率は上昇する.候補者は誰であれ支持政党に投票するチャンスが増大するからである.表 の示すように,候補者が単数のときは政党投票率は84%,複数のときは9
0
%以上になる.この差 は統計的に有意である.複数候補者を多く立てるのはもっぱら自民党なので,自民党支持者のデータを表3に併載した.
自民党候補者数
1
の場合は政党投票率が69
%と特に低くなっている.自民党の弱い選挙区では,自民党支持者といえ投票の選択肢を党外に広げるからであろう.逆に,候補者数が複数であれば,
政党投票率が9
0
%をこえるところまで上昇する(9).( 4 )
選挙制度による政党投票率の違いここで,中・小選挙区制の党派的対立構造が政党投票率に与える効果の比較を試みよう.両構 造の違いは大きいが,共通する要素も存在するので,その要素に関連する政党投票率を比較しよ
ぅ
.
まず,粗い比較になるが,両調査に共通要素の一つである支持政党が「有効政党である」グル ープの平均政党投票率を比べると,中選挙区制の8
9
%にたいして小選挙区制では86
%で後者がわ ずかに低い.小選挙区制により政党投票率が平均的に急上昇するどころか,むしろ下降している.第
2
の共通要素は有効政党数であるが,小選挙区制では定数+1 ,
中選挙区制では定数ー1
が 平均的なところで,小選挙区では2,
中選挙区では2
から4
になり,両者はかなりずれる.そこ で,小選挙区の有効政党数,1 , 2, 3
に対応する中選挙区の有効政党数を「小=2‑
」 「中=3, 4
」 「大=5+
」にまとめ,政党投票率を比較しよう.表2
の中で,小選挙区制では「有効政党数1
」の93
%対中選挙区制,全支持者の「有効政党数小(2 )
」で91%, 「有効政党数2
」で86
%対88%,「有効政党数3」は76%対中選挙区,有効政党数大(5+)」87%である.この比較によると,小選 挙区制の政党投票率は低いところでより低く,高いところでより高い.すなわち,最低,最高の 差はより大きく,統計的有意確率も小さい.
いずれにせよ,政党投票率の違いはごくわずかであるりしかも,政党投票率は,短期的には,
選挙ごとに上下する.一般的に言って,勝ち戦では政党投票率は上昇するが,負け戦では下降す る.また,中長期的には,政党支持には下降の趨勢がある.政党投票の高低は政党支持の強弱と 密接に関連するはずであるから,近年進行している政党支持の衰退という中長期の趨勢が政党投 票率を抑さえている一つの要因に違いない.一つ一つの選挙を取って,政党投票率の高低を議論 するのは本稿の範囲外にしても,政党支持の衰退の存否とその程度については確認しておく必要 があろう.
1 1 6
関西大学総合情報学部紀要「情報研究」第1 4
号3 .
政党支持の衰退? :支持強度の弱化と支持なしの拡大( 1 )
政党支持の弱体化の三側面2 0 0 0
年1 2
月前節で,選挙制度の違いによる政党投票率の差は,あるとしても,小さいのではないかと推測 した.考えてみると,選挙制度変革は,政党支持に直接の急激な変化を及ぼさないのではなかろ うか.候補者は選挙区の境界を越えられないが,有力地方政党のない日本では,政党対立はまず 全国レベルで認知されるのであって,選挙制度変革による選挙区内の対立構造の変容を意識する 人は少数にとどまるだろう.政党の地方活動家の努力も永田町の政治家の軽率な言動によって一 挙に崩れてしまう.既成リーダ不信,イデオロギーや組織への帰属意識の弱体化による政党支持 の衰退の中長期的趨勢を確認しておかねばならない.
ーロに政党支持の衰退といっても,政党支持の作用は三つに分解することができる.
(a) 政党支持なしの増加と政党支持を保有するときは,その強度の低下,
(b) 政党支持の機能,特に,その規定性の低下,
(c) 支持なしの場合は,その党派性の機能低下.
政党支持の衰退というとき,支持なしが増えたのか,支持強度が弱化したのか,政党支持の機 能が低下したのか,支持なしの党派性がさらに減退したのか,を問わねばならない.ジャーナリ ストが良く口にする無党派層の増大には「このすべてにおいて政党支持は衰退した,したがって もはや考慮に入れる必要はない」という響きがある.しかし,
JES
調査データのこれまでの分析(例えば,三宅,
1 9 9 8 )
に基づけば,(a)の面で若干の低下はあるものの,(b ) ( c )
の政党支持の機能の 低下はないと仮定できるもっとも,JES I
とJES I I
調査はともにパネル調査で,パネル・サ ンプルには政治関心の強い人が多いという一般的傾向から逃れられないから,また本稿の支持な しの定義の特殊性から,このデータによると政党支持強度は高く,支持なしは小さくでることを 予め注意しておかねばならない.この欠点を補うために,後の小節で他の継続的調査をも参照し よう.本節では,過去
1 5
年ぐらいの間の,政党支持の趨勢を,上記の3
側面について,JES
調査デー タに基づき分析するまず,支持なしの拡大と支持強度の低下を本節の(2)以降で,政党支持の 機能,規定性について4
節で,支持なしの党派性を5
節で,それぞれ記述する.(2) 支持強度の弱化と支持なしの拡大
最近の支持強度の弱化と支持なしの拡大は,一般常識となっている.だが,
JES
調査データに よる限り,弱体化は進行しているものの,その程度は一般に言われているほどではない.まず,JES
調査による政党支持強度分布を見よう.表4
である.JESI
調査は1 9 8 3
年の参議院選挙後,衆議院議員選挙の前後調査の
3
波のパネル調査である.JESI I
は1 9 9 3
年衆議院議員選挙の前後,参議院選挙後,
1 9 9 6
年衆議院議員選挙前後調査の5
波のパネル調査である(他に郵送調査2
ある が省略).いずれも政党支持とその強度についての質問文は同じで(JES I
とJES I I
コード・プック
( 1 9 9 7 )
を参照),まず「ふだん支持している」政党を聞き,支持政党を答えた人には「強制度効果と趨勢効果:小選挙区制における政党投票
1 1 7
表
4 .
政党支持強度の消長(JES I &JES I I )
1 9 8 3
年1 9 8 3
年1 9 9 3
年1 9 9 5
年1 9 9 6
年 支持強度 参後 月qI9J
後 前 後 参後 月99 J i 後 支持なし2 4 1 9 1 9 1 6 1 4 2 3 2 0 1 8
最も弱い支持8 , 8 , , 1 0 1 0 1 0
弱い支持5 3 5 6 5 7 6 0 6 5 5 4 5 5 6 0
強い支持1 5 1 6 1 6 1 5 1 2 1 3 1 5 1 2
合計(%)1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 N 1 6 1 9 1 6 1 9 1 2 9 4 2 2 5 5 2 3 2 0 2 0 7 6 2 1 4 9 2 2 9 9
い支持」か「弱い支持」かを聞く.支持なしの場合はさらに「好きな政党」を尋ねる.これに回 答すると「最も弱い支持」とされる.それでも「好きな政党」がなければ「支持なし」となる.すなわち「強い支持」 「弱い支持」 「最も弱い支持」 「支持なし」の 4点尺度である.
表 4には,二つの衆議院選挙前後調査と二つの参議院選挙後調査の政党支持強度分布が掲載さ れている.政党支持強度の分布において,参議院選挙と衆議院選挙は明らかに異なる.参議院選 挙時のほうが支持強度が弱いのは,参議院選挙調査の性格による.二つの参議院選挙時の分布を 比べると,
1995
年調査で「強い支持」が少し減り気味だが,両者はほとんど変わらない.衆議院 選挙も同様に大きな変化はないが, 「支持なし」で最も大きいパーセント値(20%
)と「強い支持」で最も小さいパーセント値
(12%
)はともに1996
年になって現れる.過去10
年あまりの間,支持分 布に大きな差はないとしても,強い支持の減少傾向と支持なしの拡大傾向は否定しがたい.上述 したように,JES
調査はこの傾向を強く出さない偏りがあると思われるので,他の継続調査の傾 向をも参照せねばならない.それについては後述する.( 3 )
政党支持変動と安定のパタン以上 3衆議院選挙調査データを独立のクロスセクショ プ タとして比較したが,
1993
年 と1996
年の両調査はJESI I
のパネル調査の一部だから,両調査データを回答者個人単位で比較す ることができる.三年おいた二つの時点での支持強度平均値に差が見られるかどうかのテストに なる.支持強度は上に紹介した4
点尺度で,支持なしを0,
強い支持を3とコードし,平均値を
算出した.表 5の下降を表すサイン(↓)が示すように,全サンプルでも,部分サンプルでも平 均値は 3年の間に下降している.平均値の差の検定結果は, 「全サンプル」で有意である. 「全 サンプル」は当然「支持なし」を含む.支持保有者の支持強度に変化がほとんどなくても「支持表
5.
政党別,安定支持者の支持強度の変化(t
テストの結果)1 9 9 3
総選挙前→1 9 9 6
年総選挙前 政党安定支持者(I)全サンプル 支持保有 自民党 社会党 共産党
(N
) (1 1 4 9 ) ( 8 7 7 ) ( 3 9 8 ) ( 6 2 ) ( 2 6 )
政党支持強度 **↓ *↓ *↓ ↓ ↓( 1 ) 2
回とも,同一政党支持者,社会党は1996
年は社民党である.全サンプルは支持なしを含む.↓は下降を表す.社民党,共産党も下降であるが,検定結果は有意ではなかった.
*はP
< O .5
**はP<0.11 1 8
関西大学総合情報学部紀要「情報研究」第1 4
号2 0 0 0
年1 2
月なし」の増加があれば,この尺度では平均値は下がる.そこで, 「支持なし」をはずし,支持保 有者だけの支持強度3点尺度として,検定を繰り返した.その結果が「支持保有者」欄である.
この場合も平均値に差が見られる.
「支持保有者」とは 2回の調査のいずれも,支持政党を持つ人だが,この間に支持政党を変え た人も含まれている.政党支持を変更すれば支持強度は下がるかもしれない.最後に, 「安定支 持者」,つまり 2回とも同一政党支持者の支持強度の変化を見よう.この間,政党名が変わって いないのは自民党と共産党だけだが,社会党は名称が社民党に変わっただけで実質的に変化はな かったと仮定し,社会党(社民党)を加えた 3政党支持者を対象グループとする.強い政党支持 を持つと言われる共産党支持者でも,支持強度は下がっている.ただし, 2回の調査の間で有意 差があるのは,ケース数の多い自民党支持者だけであった011.
以上,政党支持強度の弱化状況を見た.安定支持者は定義上,支持政党を変えていないにして も,支持政党の変化を考えに入れないで,支持強度の変容を分析したのである.政党再編成期に 入って,政党支持が不安定になったとしばしば論じられている通り,この間,支持政党の変容も 当然に起こっているはずである.支持政党の変容をここで見ておこう.政党支持が強いと支持政 党は安定する.政党支持の安定性は政党支持態度の機能の一つである.政党支持の安定性の問題 は次の小節の課題だが,分析にパネル調査データを扱うので,ついでながら,ここで触れること にしたい.
2回の調査の政党支持分布を組み合わせると, 「同ー政党で安定」 「政党間変動」 「散発的変 動」 「なしで安定」の4カテゴリーからなる安定と変動のパタンが出現する. 「散発的変動」と は支持ありと支持なしの間の変動を意味する.
JES I
調査は3波のパネルだから, 「参議院選挙 調査一衆議院選挙前調査」 「衆議院選挙前調査一衆議院選挙後調査」のように,政党支持の変動 パタンが2
組できる.2
組のパタン分布の平均を取ったのが,表6
の第1
横行である.JESI I
調 査も最後の 3波はJES I
調査パネルと対象選挙とその順序において等しいので,同じ方法で,支 持政党変化の分布を取った.それが表の第2横行である.政党自体が生まれ消える政党再編成期 に入って,政党支持が不安定になったのは事実ではあるにしても,この安定と変容のパタンによ れば,政党支持の安定度は少し下がったが,なお半分以上の人の政党支持は安定している. 「支 持なしで安定」をも加えると3
分の2
近くが,安定しているのである.このような支持有無の変 動パタン分析では, 「同一政党で安定」の比率にやや低下がみられ, 「政党間変動」の比率が上 がったが,それも 4 ポイント程度である(三宅, 1998, 第 2 章) n~.表
6 .
支持の変動と安定性*分布:2
調査データ比較 支持の変動と安定のカテゴリー同一政党安定 政党間変動 散発的変動 なしで安定 計 (N)
JES I
調査データ5 9 % 1 2 2 0 9 1 0 0 ( 1 5 0 7 ) JES I I
調査データ*5 5 1 6 2 0 9 1 0 0 ( 1 3 1 8 )
*三宅,
1 9 9 8 ,
表1 ‑ 3
の一部を再掲した.参議院選挙調査一衆議院選挙前調査の間の変動と衆議院選挙前調査一後調査の間の変動の平均
制度効果と趨勢効果:小選挙区制における政党投票
119
( 4 ) J E S
以外の調査データによる政党支持分布の変化JES
調査は学術的パネル調査だから,回答者に政治関心が高く,党派的な人が多いという偏り があるかもしれない.そこで,これを補うため,継続調査である,明るい選挙推進協議会(明推 協)調査と朝日新聞政党支持調査結果を紹介しておきたい.どちらも,JES
調査より,支持なし の増大と支持強度の低下を明瞭に示すことができる.まず,明推協調査から
80
年以降の衆議院議員選挙時(直後)の政党支持強度分布を,表7に掲 げる. 「最も弱い支持」というカテゴリーがあるのは 2回だけなので,これは「支持なし」に算 入すると, 「強い」支持者は80
年代の20
%台から93
年以降は10
%台に減少し, 「支持なし」は1980
年の30
%そこそこから,上下しながら,1996
年に39
%に達している.1 0
%前後の変動率でJES
調 査よりかなり大きい.表7 推協調査による政党支持強度の消長
8 0 8 3 8 6 9 0 9 3 9 6
年 支持なし*3 0 2 1 2 7 3 1 3 6 3 9
最も弱い支持**1 1 1 0
弱い支持
4 1 4 8 4 0 4 6 4 5 4 5
強い支持2 9 2 0 2 3 2 3 1 9 1 6
合計(%)1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 N 1 6 1 9 1 2 9 4 2 2 5 5 2 3 2 0 2 1 4 9 2 2 9 9
*「分からない」を含む.
**「最も弱い支持」は第
1
質問で,支持なし,分からない,と答えた人に,さらに質問し,好きな政党を答えて貰った場合である.
朝日新聞の政党支持調査では支持政党を引き出すために「好きな政党は?」と聞くが,これに 対し, 「好きな政党なし」と回答した人の比率は,
1986
年に実施した複数の調査平均で23‑25
%で あった.宮沢内閣時代の1993
年には35‑36
%に増加したさらに,村山内閣時代の1995
年には39‑
43
%となった. 「好きな政党なし」は明らかに増え続けており,この10
年間に1 5
%ぐらいの増大 である.このように,調査によって変化の程度は異なるが,いずれも「政党支持衰退」の傾向を 示している.4.
政党支持の態度と行動にたいする規定性機能政党支持強度の低下が大幅でないとしても,その機能が失われれば,政党支持の働きはない.
上述した政党支持の安定性も一つの機能である.この節では,諸機能のうち,態度と行動にたい する党派的規定性を取り上げ,検討する.態度にたいする規定性とは「帰属の程度が強ければ強 いほど,その人の政治的事象にたいする評価と認知の方向は帰属政党と一致するようになる」(三 宅,
1 9 8 9 , 1 0 1 )
ことである.規定される態度(従属変数)として扱うのは,投票決定因として重 要視されている「政党評価」 「政策近似政党」 「候補者評価」であるが,理論的に,実証的に同じことの繰り返しになるので,説明を政党評価にたいする規定性だけに絞る.
1 2 0
関西大学総合情報学部紀要「情報研究」第14
号2 0 0 0
年1 2
月( 1 )
政党評価にたいする規定性政党評価は感情温度計による各党への好意度である.
1 9 8 3 , 1 9 9 3 , 1 9 9 6
各年の選挙前調査デー タによる比較であるから,どの年でも存在した自民党,社会党(社民党),共産党を対象政党と し,その評価について,全サンプルを「対象政党支持者」 「支持なし」 「他党(対象政党以外の 政党)支持者」の 3グループ間の比較を行う.当然ながら, 「対象政党支持者」は対象政党を甘 く評価し, 「他党支持者」は辛く評価する.評価尺度の5 0
点が中立点であるが,前者の評価平均 点は60
点前後,後者は40点以下になるのが普通である.支持なしはこれらの中間だが,平均点50
点以下で「他党支持者」に近い.支持方向の規定度はイータ係数竺として表したが,上述のデー タパタンが出現するか否かで,規定機能が働いているかどうかを判定することも許されよう.支 持者による評価得点平均が下がって50
に近づくと危険レベルにあるとすると,1 9 9 3
年の自民・社 会2
党はそれに当たる.1 9 9 3
年は新党プームで,与党の自民党はもとより,野党でも既成政党の 評判は落ちた.それがこの年のデータに反映している.しかし,1 9 9 6
年には多かれ少なかれ以前 の状態に回復した.次に, 「対象政党支持者」をその支持強度(「強い」 「弱い」 「最も弱い」)によって3分し て,同じく政党評価平均値の比較を行う.紙幅の都合から,支持強度別の表は省略せざるを得な いので,表
8
の右上の部分表に当たる1 9 9 6
年自民党評価のケースだけを取り出して, 「支持・支 持なし・不支持」比較と, 「強い・弱い•最も弱い」支持強度比較の関連を表 9 に例示した.政 党支持強度と政党評価は比例する.つまり強い支持者ほど自分の支持する政党を甘く評価する.表
9
の自民党評価得点の例のように,支持強度が強いと平均値が80点前後,弱いと6 0
点前後にな るが,5 0
点を割ることは滅多にない.これが通常のパタンである.1 9 9 3
年の弱い自民党支持者の 自民党評価平均点はこのラインを割り,4 8
点であったが,これは例外のようである.また,1 9 9 6
年の社民党支持者の平均値の差の検定結果は有意でなかった.これは,機能低下ではなく,支持 強度カテゴリー別評価差が小さかった(みな同じぐらい高い)ためである.政党評価にたいする 政党支持の規定効果は弱化しつつあるとはいえない041.( 2 )
投票決定にたいする規定性政党支持とその強度は党派的行動を規定する.次に,投票決定に対する政党支持の規定効果を,
政治的態度にたいする規定効果の分析と同じ方法で行った.表
1 0
は3
政党支持者の支持政党(対 象政党)への投票率である門支持者の支持政党への投粟率は低くても70
%を超えている.支持 なしや他党支持者の対象政党への投票率は極めて低いもっとも,党勢が順調なときは, 「支持 なし」を始め, 「他党」支持者からも票を得ることができる.反対に,逆風の時には, 「他党」支持者はもとより,支持なしも離れてしまう上,支持者集団もバラバラになる.
1 9 9 6
年の社民党 支持者はその典型で,社民党候補への投票率は,わずか27%で,自民党,民主党などへの投票と 同率程度という低さであった.強い支持者 (N=6のみ)の社民党投票率は高いけれども,社民党 支持の投票規定性は機能していなかったと判断せざるをえない.制度効果と趨勢効果:小選挙区制における政党投票
1 2 1
支持者グループ内の支持強度3グループ間の支持政党投票率平均値の比較分析でも同様で,強 い支持者の投票率は高く,弱い支持者のそれは低い.
1983
年自民党支持者のイータ係数が相対的 に小さいのは,弱い支持者でも自民党投票率が高かったからで,パタンに狂いがあったわけでは ない.支持政党の投票規制機能は,1996
年の社民党支持者を除けば,十分に機能しているといえ よう.支持政党の働きは投票意図にたいする場合も同じである.表
8 .
政党支持(強度)の政党評価(感情温度計尺度)に対する規定性 対象政党自民党
支持政党 自民党 支持なし 他党
1 9 8 3
年6 8 ( 7 5 5 ) 4 6 ( 2 4 4 ) 4 1 ( 5 0 8 )
1 9 9 3
年5 6 ( 9 7 8 ) 3 9 ( 3 1 2 ) 3 2 ( 8 7 0 )
合 計5 5 ( 1 5 0 7 ) 4 4 ( 2 1 6 0 )
イータ(自ー他) .5 8 0 * * . 5 2 3 * *
イータ(強一弱) .4 2 9 * * . 2 9 3 * *
...........................................
社会党 社会党.......................
6
..3
..(
..2
..3
..7
..)
......................
5
..4
..(
..3
..1
...9
.)
,支持なし
4 5 ( 2 3 4 ) 3 8 ( 3 0 1 )
他党4 3 ( 9 7 8 ) 3 4 ( 1 4 9 0 )
合計4 6 ( 1 4 4 9 ) 3 8 ( 2 1 1 0 )
イータ(自ー他) .4 1 1 * * . 3 6 1 * *
イータ(強一弱) .
2 8 3 * * . 2 7 5 * *
.......................................................................................................
共産党 共産党
72(68) 66(70)
... ... 支持なし3 5 ( 2 2 0 ) 2 8 ( 2 8 8 )
他党2 7 ( 1 1 2 7 ) 2 3 ( 1 6 4 3 )
1 9 9 6
年6 8 ( 8 7 2 ) 4 7 ( 3 7 9 ) 4 4 ( 8 1 3 ) 5 5 ( 2 0 6 4 ) . 5 2 7 * * . 3 9 0 * *
..............
5 8 ( 2 0 0 ) 4 0 ( 3 6 5 ) 3 6 ( 1 4 3 1 ) 3 9 ( 1 9 9 6 ) . 3 2 8 * * . 1 2 4
..............
6 8 ( 1 1 3 )
3 6 ( 3 5 9 ) 2 7 ( 1 5 2 2 )
合 計3 0 ( 1 4 1 5 ) 2 5 ( 2 0 0 1 ) 3 1 ( 1 9 9 4 )
イータ(自ー他) .4 3 9 * * . 3 7 1 * * . 4 2 8 * *
イータ(強一弱) .3 5 6 * * . 4 9 6 * * . 3 4 5 * *
表上の主な数値は政党評価得点の平均値.1 9 9 6
年の社会党は社民党と読み替え.イータ(自ー他)は表の「自民支持」 「支持なし」 「他党支持」 3グループでの,
一元配置の分散分析による.
イータ(強一弱)は支持政党支持者を「強い支持」 「弱い支持」 「最も弱い支持」
に3分したときの,一元配置の分散分析による(次表
8‑1を見よ).
表
9 .
自民党支持・不支持およぴ 支持強度別,自民党評価平均(1 9 9 6 )
自民支持
6 8 ( 8 7 2 )
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・‑・・・・・・・・・.ー・
強い支持
8 1 ( 1 6 4 )
弱い支持6 5 ( 6 4 3 )
最も弱い支持
5 9 (65)
···..一ヽ—···•···
支持なし
4 7 ( 3 7 9 )
他党支持4 4 ( 8 1 3 )
合計5 5 ( 2 0 6 4 )
イータ(自•他) .5 2 7 * *
イータ(強弱) .3 9 0 * *
イータ(自ー他) ;イータ(強一弱)に ついては前表 8の注を参照