[資料紹介] ニュー・イングランド漁業について
その他のタイトル [Material] The New England Fishing Industry
著者 柏尾 昌哉
雑誌名 關西大學商學論集
巻 1
号 3
ページ 258‑276
発行年 1956‑09‑20
URL http://hdl.handle.net/10112/00021871
2.58
問題にして見ても︑戦前のアメリカ漁獲の最盛期は大体年間
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第二次大戦以後の世界漁業の著名な現象の一っは︑あらゆる
漁業部門を通じてのアメリカの目覚ましい躍進ぶりであろう︒
現在のアメリカは世界漁業の中心的地位を占めている︒かつて
日本が占めていたいくつかの世界的な地位も今ではほとんどア
メリカによってとって代られている︒ちなみに︑漁獲高だけを
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万トソであったのが︑現在では約二五
0万 ト ン に 増 加 し て ︑
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︒
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資 料
.....
紹
介
世界の漁獲高においてその比重を大きく延して来ている︒
ところで︑現在開発されている漁場のうちで︑世界的に見て
三つの大きな漁場があるが︑これはいわゆる世界の一二大漁場と
( 1 )
して知られている︒即ち︑北海
( N o r t h S e a )
を核心とする北
大西洋一帯がその一であり︑東洋諸国の太平洋西岸一帯と沿海
州︑カムチャッカ半島︑アラスカ︑カナダ太平洋東岸を含んだ
太平洋北部一帯がその二であり︑ニュー・ファウンドラソド
( N e w , f o u n d , l e n d )
を中心とするアメリカ大西洋岸の北部一帯
がその三である︒ 柏
イ ン グ ラ ン ド 漁 業 に つ い て
一ュー・イソグランド漁業について︵柏尾︶
尾
六四
昌
哉
一ュー・イングランド漁業について︵柏尾︶ 北海を中心とする北大西洋漁場は︑その開発が最も早く︑イギリス︑フラソス︑ドイツ︑スペイソ︑デソマーク︑ノルウェ1その他の先進的な国々によって操業され︑一六世紀一七世紀頃の生産手段の高度化及び大型化を通じて一層隆盛に向い︑現在では世界で最も近代的漁業の行われている海域である︒年間漁獲高は︑一
1 ‑
0 0
万トソから四00万トソ位だといわれ︑クラ
( c o d )
とニシン
( h e r r i n g )
がその双壁であるが︑既に述べた
ように︑開発歴史の古いこととヨーロッパ諸国の競争的漁業と
は︑この漁場を資源的に早くも限界に追いこんだといわれ︑資
源保存に関する国際的協定が非常に進んでいる︒
次に︑日本漁業の活躍している北太平洋海域の漁場は︑極め
て広大であるが︑その歴史はまだ浅く︑二0世紀以後発展した
若い漁場である︒年間漁獲高は約六00万トソに達し︑ニシソ︑
サケ
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︑マス
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︑ イ ワ シ
( p i l c h a r d
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などが有名であるが魚の種類も誠に多く︑それらの資源をめぐ
って日本︑アメリカ︑カナダ︑ソ連︑韓国等が操業している︒
新しい漁場であるだけにまだ発見されない資源も考えられるけ
れども︑日本とアメリカ及びカナダの大量漁獲は既に資源保護
段階の到来を予告している︒
最後は︑ニュー・ファウンドランドを中心とするアメリカ北
六五
部大西洋岸一帯である︒ここは︑三大漁場のうちでは一番規模
が小さく︑年間漁獲高は一00万トソ位に過ぎないが︑それを
営んでいるのがカナダとアメリカ両国であることは多数の競争
国のある他の二つの漁場に比してアメリカにとっては重要な意
味を持っているといわねばなるまい︒中心魚類はクラ及びクラ
類である︒ここも資源の限界が早くから問題にされ︑アメリカ
とカナダとの間でかなり計画的な漁業対策が講ぜられている︒
さて︑アメリカ漁業はいわゆる世界一1一大漁場とどのような関
連を持っているだろうか︒北海を中心とする北大西洋漁場とは
関係がないが︑残りの二つの漁場は何れも莫大な漁獲物をアメ
リカに提供している︒まず︑北太平洋漁場では︑プリストル湾
( B r i s t o l
B a y
)
を含むアラスカ
( A l a s k a )
勿論その大陸棚全
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( 2 )
域のサケ︑マスの漁業を確保し︑次にアメリカ北部大西洋岸漁
場では︑水産資源をカナダと二分して独占している︒この世界
の二大漁場における漁獲は︑ともにアメリカにとって重要なも
のである︒太平洋のサケ︑マスほアメリカ水産罐詰業の根幹で
あるし︑大西洋のクラ︑ニッンの類は鮮魚及び冷凍魚として欠
くことの出来ないアメリカの重要な水産商品である︒そして︑
両漁場における漁獲高も略々相半ばしている︒アメリカ漁業の
全ぼうを知るためには︑この両漁場を問題にしなければ充分で
260
だが︑今ここに紹介しようとするのは︑アメリカ大西洋北部
即ちニュー・イングラソド漁業それも鮮魚及び冷凍魚をめぐっ
ての魚価及び漁夫賃銀の決定を中心とした研究に過ぎない︒勿
論︑これらの事項はそれだけでも大き過ぎる程の重要な問題で
あり︑充分深い研究がなされなければならないことはいうまで
もない︒しかし︑アメリカ漁業全体の立場から見ても︑ニュー
•イングラソド漁業はアメリカ漁業をある程度まで代表してい
ることは間違いなく︑特に鮮魚冷凍魚部門を考えるときは決定
的な重さを持っているし︑近代的罐詰業と直結する北太平洋ア
ラスカ漁業に対して多分に遅れた形態を含んでいるニュー・イ
ソグランド漁業は漁夫をめぐる特有の問題を知る上では︑その
歴史の古さと相まって極めて貴重な盗料を提供してくれる︒ニ
ュー・イソグランド地方は現在ではアメリカの最も重要が工業
地帯で︑﹁合衆国土地面積の五分の一彩以下の小地域に︑国内
( 3 )
人口の五彩以上及び工業の約一〇彩が集中している﹂といわれ
ている︒大体︑ここほアメリカ工業発祥の土地であるが︑その
昔を回顧すれば︑この地域の経済的発達のスクートは実に漁業
によって切られていたのである︒それは︑海洋漁業と世界貿易
に よ っ て 大 成 功 を 斉 ら し ︑ 一 九 一 ︱
0
年代へかけて
‑ 0年代から四 ないことはいうまでもない︒ 一ュー・イングラソド漁業について︵柏尾︶
﹂ と が 判 明 し た と 思 う ︒
( 4 )
ニュー・イソグラソド漁業王国を現出したのである︒その主動
的地位はやがて工業に譲ったとはいえ果した役割は大きかった︒
とあれ︑以上のように︑ニュー・イソグラソド漁業は︑その全
部ではないにしてもアメリカ漁業を代表するものと考えられる
ここにその一端を紹介しようとするのは︑ホワイト
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の﹁ニュー・イングランドの漁業ー価格及び賃銀
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調整に関する研究﹂
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95
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で あ る が
︑
ある程度までは前に述ぺたようにアメリカ漁業の全ぼうを代表
してくれる︒この書物は︑ニュー・イングラソド漁業を一般的
且つ包括的に取扱うとともに︑副題に示されてあるようにその
中心的視野を賃銀︑価格︑仲買い及び生産市場をめぐる諸関係
においている︒これらの点を中心に︑漁夫や船主や組合や連邦
政府の種々の対策と行動がとられて行くのであるが︑本書はこ
の関係がかなり明確に説明されていると思う︒この点について
は︑ダンロップ
(J
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nT•Dunlop)がその序文において、こ
の研究は二つの大きな長所
( me r
i t)
があると述ぺて︑一には
それが理論的分析をこえている点であり︑二にはニュー・イン
グランド漁業に対する特有な計画を討究する団体交渉作用
六六珊
一ュー•イソグランド漁業について(柏尾)
署名理論的補足六七 より適切なのではなかろうか︒ してアラスカ海域をも含めて三大漁場の一っとした方が
VI[
魚類を産しているのであるから︑これは北太平洋漁場と
VI
そ違え同系統の海流が交錯し︑漁獲も多く︑略々同種の
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産業︵漁業︶をめぐる組織の問類
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に曲tする報告が含まれ
ている点であると説き︑更に︑﹁これらの示唆は︑漁業とその
問題の真実の理解に基づいているし︑叉すべての関係団体の最
も注意深い考察に貢献するものであって︑ニュー・イングラソ
ドにおけるこの歴史的産業︵漁業︶の将来が︑その技術︑方法︑
組織の再評価
( re a
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)
によることは今更いうまでもな
い︒ホワイト教授は︑正しい視点においてこれらの可能性を見
( 5 )
出す功蹟を果した︒﹂と賛辞を送っている︒
著者の序文
近代的な産業︵漁業︶
主要な漁港
利潤分配と斗争
供給と市場問題
組織重視の問題
発展への展毀
I I
( 2
) ‑
=大漁場の一つである北太平洋礁場に関しては︑アメリ I問題への排戦 この書物の構成は︑次の八つの主要な章から成っている︒ 索引
他に︑二四の表と八つのイグジビット
( ex h
i bi t
)
とが随所に折
込まれて論点の説明を助けている︒
本稿では︑積極的批判は一応後廻しとして︑その忠実はアウ
ト・ライソの紹介を目的とした︒従って︑叙述は︑全般的各章
別に順を追っての均等的な方法によることにした︒このため本
書の企図した問題点への突込みが足らなくなったところが目立
ちはせぬかと危惧している︒
註(1)桧山義夫﹁水産学概論﹂︱二九ーニニ五頁
今田消二﹁水産経済地理﹂︱︱‑│1一五頁
中酉永年﹁水産﹂二九ー︱︱一五頁
ヵ太平洋作北部即ちアラスカ一帯を除外している場合も
ある︒例えば︑青野氏は東洋漁場という言葉を使用して
その大いさは約六0万方浬と計算しているが︑大陸棚こ
青野寿郎﹁漁村水産地理学研究﹂︵第
2
集︶
二七
︱︱
‑│
‑︱
七
:Z62
t o
一ュー・イングランド漁業は歴史上最も豊かな天然褒源の所 向を見究めたい︒
(3
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0横溝直一邦訳﹁アメ
リカ経済地理﹂六四八頁
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邦訳﹁前掲書﹂六四八I六五〇
頁
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ここでは著者の序文
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及び第一章問題へ
の排戦
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の項を概観して︑本書の意図する方
著者の序文はかなり長文で︑三つの主要事項を含んでいる︒
第一は︑ニュー・イングランド漁業の全般的地位について論
及したもので大要次のようである︒
産であり︑全アメリカを通じて最も古い商業企業
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の基盤となったものである︒プリムス・コロニイ
の建設者達は︑漁業をするために
四頁 一ュー・イングランド漁業について︵柏尾︶
第一一は︑分析の視点について説明している︒先ず︑この研究 serve
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アメリカヘ渡って来たのであり︑事
実一七世紀一八泄紀のここの漁業は植民地支配の根幹であった︒
例えば︑塩魚
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の輸出貿易は︑ニュー・イソグラソ
ド海運商業の基盤であったし︑タラ
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が何世紀
もの間マサチューセット下院
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s )において演じた役割が卓越したものであったこ
とも事実である︒しかし︑何十年かの年月の経過は漁業の地位
を次第に低下し︑今日では︑ニュー・イソグラソド四二五万の
労働者
(w
or
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のうちの僅か五万に対して直接所得を与
えているに過ぎない︒それにも拘らず︑まだ天然資源の開発さ
れていない漁業の活躍舞台は他にいくらも残されている︒
著者のいいたいことは︑まえがきでも述べたように︑ニュー
・イソグラソドでは漁業は最早第二位的産業に過ぎないが︑依
産業を問題にするときはその代表的なものとなりうるというこ
と︑そして︑漁業はまだ開発可能の地域が多数残されているの
であるから︑ニュー・イソグラソド漁業研究の意義も叉大きい︑
というところであろう︒
の範囲を︑漁業部門のうちの僅か一部分即ちボストソ
( Bo s
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︑ 然としてアメリカ漁業の片方の足であり︑従って︑漁業という
六八
一ュー・イソグラソド漁業について︵柏尾︶ グロースクー
( G l o u c e s t e r )
︑ニュー・ペッドファッド
( N e w
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︑マサーチューセッツ
( M
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)
及びポートラソド
( P o r t l a n
d )
︑ロックラソド( R
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d )
︑メイン
( M
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)
に集荷される鮮魚と冷凍魚部分だけを対象とし︑メイソのイワ
シ罐詰業
( s a r d i n e
c a
n n
i n
g )
などのような優秀な貿易漁業部
門及びボストソに中心をおくあらゆる漁業仲介業は一応除外す
る旨を記した後で︑次のように説いて行く︒
吾々は︑分析の中心視点を︑大西洋漁夫連合
( A t l a n t i F i c ,
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ーその組織と船主
( v e s
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及び魚
の買 手︵ 安
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r )
並びにこれらのグループが発展させ遂行
して来た政策との関連'ーに合わすものである︒吾々の議論は︑
基本的経済的特質と産業の問題に照応しながら展開されて行く
のであるが︑中でも漁夫がレイ
( l a y
)
と呼ばれる賃銀支払のシステムの下に働いているということは最も注目に値する︒この
レイ制度の下に︑漁夫は漁獲物と操業期間の費用価値を分担し︑
従って︑漁業が成功のときにはレイ制度は﹁純粋に利澗分配﹂
( p u r e p r o f i t , s h a r i n g )
の象徴となりうるのである︒だからこ
の場合︑レイ制度は︑企業利潤がえられたとき定賃銀に追加分
配されるアメリカ他産業の利潤分配協定
( p r o f i t , s h a r
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・
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m e
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)
よりも更に大きく先んじているのである︒漁夫は
六九
第一章では︑ニュー・イングランド漁業がその将来の発展途 連合を通じて︑船主と︑漁獲物価値の分配分及び操業費用の分担分の決定を契約する︒ところで︑漁夫とその連合にとって重要なのは︑漁獲物価値決定のためのバイヤーとの交渉である︒吾々の研究は︑この利害関係上の両当事者特に連合によって発展させられた政策の批判に及ばなければならない︒漁夫がしばしば故意に限定生産したのは何故であろうか︑バイヤーが連合
( p
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a k
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g a r r ,
の圧力に抗して主要市場の価格作製協定
a n
g e
m e
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)
を変更しようとしたのは何故であろうか︑等々の
問題が解明されなければならないし︑叉︑これらの政策ほ果し
て賢朋妥当なものであっただろうかということも考えなければ
ならない︒吾々はこれらの問閣に答えるために︑外国競争との
問題を遥入しつついくつかの提案を提供するのである︒
以上で著者の分析視点は明示されたと思うが︑何といっても
実際的政策の批判分析にまで論及されていることは大きな特徴
であり︑アメリカ漁業の実態を知る上で極めて有益である︒
第三は︑この政策を実際に担当し実施し且つこの研究に協力
してくれた人々或はグループに対する感謝とその名前が列挙さ
れている︒これは実に厖大な数に及んでいるのでここでは省略
した
い︒
264
ラソドをその第一流の供給地としているのは事実である︒一九 ほとんど全地域の梱抱魚類の生産高を製造し︑ニュー・イソグ 即ち︑三百年もの長い間︑ニュー・イソグラソド漁業はアメ リカ商業の最も活澄な檜舞台に立って来た︒一六六
0年のボス
トソとグロースクーは世界的クラの供給地としてニュー・イソ
グラソド海洋貿易の基盤を形成したし︑一八世紀にはニュー・
ペッドファッドの捕鯨船は公海
(h ig
s e
ha )
へ遠く操業に出か
けていた︒しかし︑この三百年間は︑漁業の性質そのものと並
んで漁夫の生活
( li f e )
を徹底的に変えてしまったことも忘れ
てはならない︒即ち︑漁夫は最早かつてのように小さな船と頼
りない漁具でお天気まかせの危険極まりない冒険的英雄的漁業
に乗出す必要はなくなった︒だが︑生命の安全は保償されても︑
生活の安全は保償されていないのである︒しかし︑ともかくも
現在では︑ボストソ︑グロースクー︑ニュー・ベッドファッド︑
マサーチューセッツ︑ボートランド︑ロックラソド︑メイソが︑
五一年には︑アメリカ国内向梱抱鮮魚及び冷凍魚の八〇彩即ち
一六五百万ボンドに達する額が︑ニュー・イソグランドから流
出した︒これら主要漁港からの漁夫ほ︑ニュー・イングランド 上に横たわる四つの重要問題に直面していることを指摘してい る ︒
一ュー・イソグラソド漁業について︵柏尾︶
海岸にもたらされる全魚類及び貝類の年問重驀の約三分の二価
値の六分の五を揚陸し︑それによってこの領域は︑年々のアメ
リカ合衆国とアラスカの全漁獲物の重量と価値の約二
0彩を供
給する程の機能を持っている︒が︑ニュー・イングラソド漁業
センクーによって享有される主導権は難攻不落というには程遠
︵ 表 1 )
アメリカ合衆国及びニュー・イングラソドにおける 梱抱鮮魚及び冷凍魚生産高
19
29
11
95
11
¥‑
い
。 即 ち
、 四 つ の 主 要 な 問 題 が 将 来 に 横 た わ っ
て い る 。 そ れ は
Iア メ リ カ 総 iニュー・イングランド生産 年 度 生 産 高 高
(百万ボンド) (百万ボソド)1 彩
1929 84.4 73.5 87 1930 80.0 68.5 85 1931 65.6 54.3 82 1932 52.0 41.7 80 1933 58.9 48.9 83 1934 73.6 59.6 81 1935 107.1 86.6 80 1936 121.5 103.5 85 1937 113.4 92.8 82 1938 117.2 98.8 84 1939 131.3 111.1 84 1940 126.6 107.7 85 1941 176.5 152.6 86 1942 172.9 144.4 83 1943 158.6 122.0 76 1944 172.3 139.3 86 1945 204.9 160.6 78 1946 188.5 152.9 81 1947 185.0 156.6 84 1948 193.5 155.5 80 1949 194.0 155.3 80 1950 191.5 150.5 78 1951 205.5 164.7 80 Donald J. White, "Ibid", P. 15, Table 4
七 〇
次の事項である︒
利澗分配に関する問題
水産資源の枯渇化の問題
市場の困難性の問題
外国との競争の問題
第一の利潤分配に関する問題では︑正規の定賃銀を受けとっ
ていないニュー・イソグラソド漁夫は︑いわゆるレイ制度と呼
ばれる賃銀支払制度の下で働いているが︑この制度は︑漁夫と
船主との間の漁獲物価値及び操業費用分担の問題と市場におい
てバイヤーとの間で決定される魚価の問題とを含み︑漁夫︵漁
夫連合︶︑船主︑バイヤーをめぐっての複雑困難な事柄が山積
しているということが述べられている︒例えば︑漁夫と船主と
の問の利澗或は費用分担をめぐっての分裂︑魚価決定における
バイヤーの優位性︑魚が埠頭販売されるまで賃銀が支払われず︑
金が集められるまで漁獲の大いさが分らないというような奇怪
な現象︑何れも適切な解決が得られなければならない問遁であ
る︒この問題は更に第五章で詳細に述べられている︒
第二には︑魚資源の枯渇化が取上げられている︒ニュー・イ
ソグラソド漁業も主要魚姿源の枯渇化は例外ではなく︑最近は
益々それが激化している︒勿論︑主要でない魚類がまだ獲りつ
4 3 2 ー
一ュー・イングランド漁業について︵柏尾︶ か得られない︒
七
(g ro un d'窟
h) 特に ハ
くられていないのも事実であるが︑それすらも過度漁業
(h ea vy
控s
hi ng )
の圧力で日一日と減少して来ている︒だから︑ニュー
•イソグラソドでは、市場操作を通じて重要魚資源の保護育成
を外国漁業者をも包含して実施している︒そ共にも拘らず︑ニ
ュー・イソグラソドの重要魚資源は枯渇化を続けている︒ニュ
ー・イソグラソドにとって最も深刻なのは︑先ず︑ボストン特
産でありこの地域で最も価値ある底魚
( 6 )
ダック
(h ad do ck )
の減少であり︑次には︑グロースクー及び
ポートラソドの冷凍加工業の頼みの網
(m ai n‑ st ay )
であるス
( 7 )
ズキ
( re d
f is h
)
の欠乏であり︑最後には︑ニュー・ベッドファ
ッドの最も価値ある特産品であるカレイ・ヒラメ類
( ye l
l ow t
a il
茫o
un de r)
の不足である︒これら主要魚類の衰源不足は︑一日
当り漁業生産力を次第に減少し︑これを補うためには︑ニュー
•イソグランド海域におけるより一層の乱獲かより遠い海域へ
のより長い操業かの二つに一っしか残っておらず︑何れにして
も生産のより高いコストを招来し困難ほ増大する︒とあれ︑ニ
ュー・イソグランド漁業ほ魚資源から見て甚だ悲観的見通しし
第三には︑市場の困難性の問題をとり上げ今やニュー・イソ
グランドの利益はうち勝ちがたい市場障害に遭遇していると述
266 べている︒著者は大体次のような四つの事項にその原因を求め
ているようである︒
先ず︑獣肉
(m
ea
t)
に対する圧倒的偏好が魚肉に対する需要
を著しく限定していることである︒例えば︑一九四九年には︑
アメリカ合衆国における獣肉消費高は頭割りで一四六ボンドで
あったのに、鮮魚及び冷凍魚のそれは僅か六•五ボソドに過ぎ
ず︑しかも︑その傾向は今も変っていない︒
次に︑魚肉を愛用する消費者の中にも叉偏好があり︑彼らは
ニュー・イソグラソド産の僅かの魚種を愛用するに過ぎない︒
例えば︑一九五
0
年の愛用魚種(h
ad
do
ck
,
r ed f
i sh ,
c o
d ,
y el ,
は︑ボストン︑グロースクー︑ニュー・ベ
l ow t
a il flounder)
ッドファッドに揚陸された四億八四八
0
万ボソドの魚の五分の︱︱一に達している︒他の極めて多くの魚種に対する需要は実に少
ない
三番目は︑宗教上或は慣習上から︑魚肉需要が一週問中の一 ︒
日︵金曜日︶と四旬祭
(L
en
te
n
se
as
on
) の四
0
日間に傾斜して集中することである︒この傾斜集中は今なお北東アメリカの
高度消費地帯において根強く行われている︒
最後に︑魚の分配制度は小売価格
( r e t
a i l
p ri c
e )
の高い比率
に呑まれる傾向があることである︒︱︱
1 0
%ないし四
0
%の卸売 一ュー・イングランド漁業について︵柏尾︶価格
(w
ho
le
sa
le
ma
rk
up
)
の高騰と五
0
形ないし一00
形に
及ぶ小売利鞘は︑ニュー・イングラソドでは遥常のことなので
ある
以上が市場の困難性として著者の述べた要旨のとりまとめで ︒
ある
さて︑第四に︑外国との競争の問題が残っている︒カナダを ︒
はじめアイスラソド或は他の北の国々からの魚の輸入は︑アメ
リカ合衆国市場においてニュー・イソグラソド梱抱魚類の阪売
を危胎に陥れている︒ここの特産である底魚類の輸入が一九三
九年から一九五一年の問に八一︱
1 0
%も急増し︑アメリカ市場に
おける外国魚の比率が一九三九年の約二
0
分の一から一九五一年の約三分の一へと急上昇したのはこの事実を物語っている︒
競争国の多くは︑その経済が漁業により多くの重要性を認め︑
漁夫賃銀
( ex ,
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p ri c
e )も安く︑しかも漁場に近接してお
り︑より新鮮なより良質な魚を安いコストで獲っている︒アメ・
リカ合衆国も遠洋漁業の発展と魚価の安定を早急に図らなけれ
ばならない︒
以上四項目に分けて述べたのが︑ニュー・イングランド漁業
の将来に横たわる難関である︒著者は第二章以下においてその
解決に対する暗示ないしは勧告の一端を与えたいと思うと述べ
七
一ュー・イングランド漁業について︵柏尾︶
てい る︒
註
( 6
)底魚類は︑大陸棚或はその近くにすむ魚類であり︑四季
を通じて漁獲される点が特徴的である︒普通はこの中に︑
ハダック︑クラ︑スズキ︑ヘイク
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︑黒クラ
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l ,
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k)
︑ホワイテイング
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) ︑カレイ・ヒラメ︑等
を含んで考えられている︒なお︑﹁
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k,
ha
ke
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は何れもクラ科に属する魚でニュー・
イングラソド最大の資源とされて来た︒
( 7 )
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er
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﹂といわれてしるの
は︑大体日本でスズキと呼ばれる魚を指すもので︑ロッ
クラソドの特産品である︒
第二章は︑近代的産業としてのニュー・イングランド漁業を
漁法︑冷凍冷蔵︑加工行程︑輸送技術等の方面からかなり多角
的に把握しようと試みている︒
先ず︑漁場と魚種
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に関して︑この
海城が屈曲の多い海岸線を持ち浅瀬に恵まれて︑クラ類
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h )
或ほ底魚類
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u nd e
r )の絶好の漁場であ
るとともに︑サ.^︵
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)と貝類
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)
などにも富ん
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七
でいることを再び指摘してから漁法の説明に移る︒
漁法
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h in g
me
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od
)の中心は今や大小トロール漁業にあ
る︒今では︑ボストジを中心に大活躍する大型の汽船トロール
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︑グロースクー︑ニュー・ペッドファッド︑
ボートランドを本拠とする機船底曳
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oo
de
nd
ra
gg
er
) によ
って︑この海域一帯の底魚類は獲りつくされんとしている︒
大体︑トロール漁法がアメリカで採用されはじめたのは︑一
九00年頃のことで︑この普及はたちまち従来からの帆送スク
( 8 )
ーナー
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ch
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漁業による釣漁を不振化し
た︒このトロール漁法がニュー・イングランドにおいてはじめ
五年に建造したスプレイ号
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he
Sp
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が皮切りであった︒
以後︑トロール漁業はここでも急激に発展したが︑他方叉激し
い反対も多かった︒即ち︑釣漁夫やスクーナー船主は︑トロー
ル漁法が漁場を破懐し彼らの漁具を無力化するというのであっ
た︒これに対して︑無制限無計画なトロール操業は魚演源の枯
渇化を招来するとして︑合理的制限の必要が唱えられ︑ために︑
カナダ︑ニュー・ファウンドランド等に協力を要請するに至っ
ている︒しかし︑大勢は次第にトロール漁業に移行し︑一九二
五年には︑この海域で一00隻のトロール漁船が現われ︑スク て成功したのほ︑魚仲介商ニール
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oh
n
R•Neal}が一九〇
268
ーナー漁船は機船底曳
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ab
y
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r or
r d
ag
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r)
へ移行す
るか或は廃莱してしま/た°現在では︑これらの漁船はほとん
どラジオ及び無線機を装備して常に市場と連絡をとっているし︑
一九五二年以降は魚群探知機
(r
ad
ar
)
が普及化して来た︒今
日の大型トロール汽船は︑1
一五
万な
いし
︱︱
1 0 万ポンドを収容す
る冷蔵室と一七人の漁夫を持っているし︑機船底曳でも半分の
容盤を保つ冷蔵室と一
0
人内外の漁夫を有している︒冷蔵
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冷蔵業も一九00年頃にはニュー・イングラソドに導入され︑
従来の塩魚
( s a l
t
f i s h
)
の地位を奪ってしまった︒いな︑より
獲得した︒それは更に一九一八年に︑ヨーロッパから一層優秀
な冷蔵機
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zi
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を移入し︑これが普及
することによって益々重要な地位を占め︑漁業に対して大きな
功蹟を果したのである︒
エ
( f i l
l e t i
n g )
︵ 表
の問題も近代的漁業の一要素である︒
加工の進歩も忘れてはならない︒食用加工の築頭は︑切身加
の進歩である︒これが魚商品の流通上に与えた
便宜は甚だ大きい︒
冷蔵︑加工と並んで輸送問題も重要な事項である︒一九三〇
年以来︑トラックによる輸送が発達し︑一九四
0
年で
は︑
大きな漁区における操業とより広い範囲にわたる市場をも併せ
一ュー・イソグラソド漁業について︵柏尾︶
(表2)ボストソ及びマサチューセッツからの鮮魚冷凍魚輸送 1940
輸 送 方 法 (100万ボンド)
距 離
トラック 1貨 車 1船 舶 l 計
ボ ス ト ン 地 帯 50
│
50
200浬 30 10 40
201
500浬 18 42 60 501
1,000浬 32.4 3.6 36 1,000浬 〜 22.5 7.5 30
計 152.9 i 10 53.1 216
Donald J. White, "Ibid," P.16, Table 5
2 )
のようにその距離においてもその広さにおいても叉その景
においても圧倒的重要性を持っている︒空中轍送
( a i r
f re i
g ht )
の出現は第二次大戦以後のことに属する︒
七四