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日本脳炎の発病と流行についての・一考察

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Academic year: 2021

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日本脳炎の発病と流行についての・一考察

   論 文 要 旨

黒  木 洋.

(2)

日本脳炎の発病と流行についての一考察

  南九州に鉛ける日本脳炎流行の実態を知り,さらに野外流行株の再検討を行  這う目的で,1966年から1968年にわたってブタに語ける抗体の陽転時期澄  よびその消長について調べるとともに,ウイルス分離を行ない分離株の性状に  ついて検討した。

  日本脳炎ウイルスの新分離株あるいは保存株間の性状差については,いくつ かの報告があるが,ヒト於よぴ動物に於ける感染状況あるいは疫学的所見と分 離株の性状との関連に吐いて検討された報告はない。

  本論文は新弱毒株の分離のいきさっと生物学的性状語よび免疫血清学的性状 についてウイルス学的に検討した結果についてのべるとともに,弱毒ウイルス 株分離の疫学的意義と日本脳炎の感染病理について考察したものである。

  疫学的調査の結果,鹿児島市に引ける流行開始時期は,年次によって差のあ ることはもとより,ブタの抗体の陽転状況とその消長にも年次によって差異の あることがみとめられた。すなわち,1967年の供試豚では一斉に抗体の陽転 がみとめられず,1966年於よび1968年目それに比べて陽転化の進行がきわ  めて緩慢であった。また,感染豚の中和抗体価於よび血球凝集抑制価はともに 低く,早期に抗体価が低下する傾向がみとめられ,他年次に比べて異なる現象  と考えられた。

 流行期のブタの血液から分離したウイルスは各年次に1株ずつ計3株で,そ れらはいずれも日本脳炎ウイルスと同定された。この分離株の性状を調べた結 果, ブタの抗体感応のわるかった1967年に分離した「谷山S−2」株は,1966 年鉛よぴ1968年の分離株に比べて鶏胎児細胞於よびブタ腎継代細胞の培養に おいて.ウイルス増殖がやや劣り,ヴイルス活性および血球凝集素の耐熱性が 弱かった。また,マウス於よびブタに皮下接種した場合,体内諸臓器に夢ける

』《ライ1レ又増殖が劣り,かつ脳感染をおこしにくく,いわゆる末梢感染性の弱いウ  イルス株と考えられた。

 従来から,日本脳炎ウイルス新分離株は,マウス於よびブタに対して末梢感 染性が強いとされており,このたびの試験に置いても「谷山S−2」株のほか

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は,いずれも末梢感染性が強く,先人の成績ともよく一致した。しかし,「谷 山S−2」株は分離当初のウイルスでありながら,末梢感染性が弱いという特 性を有していることは興味ある事実である。

 いっぽう,日本脳炎ウイルスは動物あるいは細胞で継代することにより,容 易に諸性状の変異を澄こすことが知られて誇り,分離株の弱毒性と弱毒株の野 外に誇ける存在とを直接むすびつけることは方法論的に困難をともなう。した がって今回,野外に澄ける弱毒株の存在を推定するにあたっては,できるだけ 分離当初の継代歴の少ないウイルスを用い,他の分離株と比較するという方法

を用いた。

 マウスやブタの感染試験に供試した「谷山S−2」株は,マウス誇よびブタ 腎継代細胞を用いてそれぞれ分離し,数回継代したウイルスと,さらに鶏胎児 細胞に11代継代したウイルスを使用したが,末梢感染性に鉛いてウイルスの 分離方法および継代歴による差異はほとんどなく,いずれも弱かった。また,

「谷山S−1」株(1966年分離)澄よび「谷山S−3」株(1968年分離)

のマウスあるいはブタの感染試験に於いても「谷山S−2」株と同様な継代歴 のウイル箔を使用したが,継代歴による末梢感染性には差異がなく,いずれも 強かった。すなわち,この程度の継代歴では末梢感染性に差異が生じなかった ことから,「谷山S−2」株の弱毒性は分離過程於よびその後の継代によって 弱毒化した可能性は少ないものと考えられる。

 以上のように,ブタにおける自然感染の実態を把握し,ブタの血液からウイ ルス分離を行ない,その性状について調べた結果,流行ウイルスのなかには病 原性の弱いウイルス株があること,およびそのようなウイルス株によるブタの

自然感染のある事実が明らかにされたものと考える。

 ウイルスの体内諸臓器に澄ける増殖性,いわゆる末梢感染性と免疫賦・与力と は,かなり関連の深いことが知られている。今回のマウス感染試験にみいても

ウイルス血症が検出できない弱毒株では,血球凝集抑制抗体の産生には大量:の 接種ウイルスを要したが,強毒株である「谷山S−1」株誇よび「谷山S−3」

株では少量のウイルス接種でも抗体産生をみとめた。また,ブタの感染試験に 旧いても,ほぼ同一ウイルス量を用いたにもかかわらず,接種後6日目の時点 に誇ける血球凝集抑制抗体は, 「谷山S−1」株接種豚では陽性値に達したが,

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弱毒株接種豚では抗体価は低く,陽性限界に達しなかった。

 これらのことから,1967年に於けるブタの抗体感応のわるかった要因の一 つとして,「谷山S−2」株のような弱毒株が野外に存在したことが考えられ

る。

 日本脳炎の発病要因については不明な点が多いが,著者の実験成績より日本 脳炎の発病要因の一つとして宿主側の因子のほかに,流行株の病原性をも十分 考慮する必要のあることを初めて実証したことは,日本脳炎の疫学に新たな一

つの問題を提起したことと考えられる。

 また,年次によって流行の大きさが異なることが経験されるが,今回,弱毒 株の野外に於ける存在をみとめたことにより,流行の大きさとの関連性につい ても今後考慮する必要があるのではないかと考える。しかし,弱毒株の野外に 誇ける出現機序,於よび出現頻度左どについては全く不明であり,今後研究す べき一つの課題と思われる。

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参照

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