長崎県小浜温泉地域(1)における
地域資源の活用に関わる取り組みの現状
江村有香*・禅院昭*・秋山克史**・渡遽貴史***
StakeholderManagementofLocalResourcesinObamaHotSpringAreas,
NagasakiPrefbcture,Japan
Ⅵ1kaEMURA,AkiraZEN−IN,KatushiAKIYAMAandTakashiWAJANABE
Abstract
ThisresearchidentifiesthepresentsituationofstakeholdermanagementOflocalresourcesinObamahotspnngarea,
NagasakiPrefbcture.ThemainfindingsareaSfo1lows.1)Theuseoflocalresourcesaredi鐙己rentfordi飽rent Stakeholders.TherearefewstakeholdersthatutilizegeologlCalandhistoricalresourCeSandfolkartSbecausetheyare notrecognizedasrecreationalresourCeS.2)Thenumberofwaysthatgeologicalandhistoricalresourcesandfo1karts areusedisfewerthanothersbecausesofewstakeholdersutilizetheseresources.3)Thesegeologicalandhistorical
resourcesandfo1kartsarerarelymentionedinstakeholderlswebarticlesfortheabovereasons.Basedonthesefindings,
WePrOPOSealistofconsiderationsforreviewlnglocalresourcemanagementtoutilizegeologicalandhistorical resourcesandfo1kartsinObamahotsprlngareaS.
KeyWords:Stakeholders,GeologlCalResources,HistoricalResourCeS,Folkarts
の喪失を招き,温泉地域を画一的なものにした(山 村,2006)1)。
現在でも,温泉旅行を希望する人は多く,実際に 温泉を主たる目的とする旅行に対する要望は,他の
目的の旅行を大きく上回っている(久保田,2008)2)。そ うした情勢のもとで,旅行客を大きく増加させる温 泉地域がある一方,旅行客数が大きく減少した温泉 地域も存在する。旅行客数を大きく減少させた温泉 地域には,大規模化を進めてきた温泉地域が多く含 まれている。大規模化を進めてきた温泉地域が旅行 客数を大きく減少させた理由の一つには,画一的な 整備を進めた結果,他の温泉地域との差別化が図れ
なくなったことが挙げられる。
こうした温泉地域が差別化を図るための方策とし ては,他の地域にはなく,他地域から導入しても十
分に活かせない性質(非移転性)を有する地域資源を
用いることが考えられる。こうした地域資源を活用 し,それの普及・啓発に努めることによって,他の 1.はじめに
多くの火山を有する我が国には,温泉が湧出する 地域である温泉地域が数多くみられる。これら温泉 地域の多くは,温泉を旅行客の誘致に使っている。
そのため,観光地に占める温泉地域の割合は大きく,
観光振興上,重要な位置を占めている。これら温泉地 域は,時代とともに性格を変えてきた。かつての温泉 地域でみられた病気の治療・農閑期における農民の 療養地から観光地へと多くが変わりだしたのは,第 二次世界大戦後である。これら観光地化した温泉地 域の多くは,高度経済成長期に入ると,宿泊施設の 鉄筋化等の規模の拡大が図られた。こうした規模の 拡大は,地域の歴史や文化の軽視・地域固有の景観
* 長崎大学環境科学部・学生
** 長崎大学大学院生産科学研究科・大学院生
***長崎大学環境科学部
(受理年月日 2009年3月31日)
温泉地域にはみられない独自性が打ち出されること となり,新規旅行客の獲得,他の温泉地域からの流 入を生じさせ,状況を改善させることが期待される。
(金井,2008)3)。
このような地域資源の活用に関わる方策のあり方 を検討するためには,まず状況の改善が求められる 旅行客数が減少した温泉地域を対象に,地域資源の 活用をめぐる現状,すなわちどのような取り組みが 行われ,問題があるのかを明らかにする必要がある。
温泉地域を対象とした地域資源の活用をめぐる既存 研究としては,登別温泉の泉質や豊富な湯量,また 地獄谷・大湯沼などの自然資源を地域資源と捉えた もの(櫻井,2008)4),龍神温泉・湯の峰温泉の天神崎 に代表される豊かな海を地域資源と捉えたもの(小 阪・金井,2008)5),湯布院温泉の安らぎのある雰囲気 を醸し出すツバキを地域資源と捉えたもの(韓,2008)
6)などがある。しかし,これらの研究は温泉地域の地 域資源を提示して重要であることを述べているもの であり,先述した地域資源の活用をめぐる現状が明
らかにされていない。また,対象とされてい る温泉地域の多くは,集客に成功している
と考えられる旅行客数を増加させている地
域である。
そこで本研究では,多くの温泉地域が該 当し,集客の方策の検討が必要と考えられ る利用者を減少させている温泉地域として,
2.2.地域資源の活用に関わる現状の捉え方
本研究では,地域資源を活かした振興の取り組みに は,(1)地域資源を選ぶ,(2)選ばれた地域資源を活 用する,(3)活用している地域資源を多くの人々に知
らせるという 3段階があると考えた。上記の捉え方 を踏まえ,本研究では,地域資源の活用に関わる取 り組みの現状を,(1)選ばれている地域資源(3つの段 階の(1)に対応),選ばれた地域資源の活用方法((2)に 対応),(3)宣伝している地域資源((3)に対応)から明ら かにした。
3.方法
3.1.研究対象地域の概要
小浜温泉地域を擁する雲仙市小浜町は,島原半島 の西側に位置し,人口は11,571人,面積は50.8平方 knである(図−1)。
夕日の美しさで知られる橘湾を臨む小浜温泉の泉 質はナトリウム塩化物泉であり,その湯量は豊富で,
熱量は日本一と称されている。
小浜温泉地域を取り上げ,地域資源の活用 に関わる取り組みの現状を明らかにする。
明らかにした結果をもとに,利用者数を減 少させている温泉地域の地域資源の活用の 方策を検討することを目的とする。
図−1研究対象地域の位置
温泉は古くから利用されており,1637(寛永13)年 には海岸の湯「小浜温泉」が記録の上に記されてい る。1892(明治25)年には33軒の旅館が軒を連ねてい た(山口ら,1988)8)。1919(大正8)年には年間利用者が 30万人にのぼったが,1931(昭和6)年頃から財界の 不況や戦争の影響を受け利用客は減少した。また,戦 時中の塩不足に対応するため,補助金制度が設けら れ製塩工場が急増した。それを受けて,1941(昭和16)
年から温泉熱製塩が盛んとなった。しかし,製塩によ る温泉の枯渇が問題となり,1961(昭和36)年から温 泉の保全のため,製塩業は廃止された。その後 1962(昭和37)年には国民保養温泉地域に指定され,
2.研究の枠組 2.1.地域資源の定義
永田(1988)7)は,地域資源は3つの特徴を有すると 指摘している。
(1)非移転性
他の地域から導入しても十分に活かせないこと。
(2)有機的連鎖性
資源同士が密接なつながりを持っており,ある資 源が独立して成立することは難しいこと。
(3)非市場性
貨幣に換算することが難しい。そのため,貨幣を介 して調達することが難しいこと。
本研究では,上記の3つの特徴を有するものを地
域資源として,本研究の対象とした。
小浜温泉地域は,団体旅行客を主要旅客とした観光 地域へと変貌を遂げていった。しかし,1990(平成2)
年の雲仙普賢岳における噴火が発生した後,観光客 数は大幅に減少した。図−2は,1975(昭和50)年から
2005(平成17)年にかけての小浜温泉地域の利用者の
推移を表したものである。1.はじめにでも述べたよ うに,1990(平成2)年の観光客数が約400万人なのに 対し,2005(平成17)年は約250万人と150万人ほど 減少していることがわかる。
こうした情勢を受けて,長崎県や雲仙市では観光 振興に向けて様々な取り組みを行っている。たとえ ば長崎県では,長崎県観光振興基本計画において小 浜温泉地域を重点支援地区に指定している。長崎県 観光振興基本計画とは,長崎県にとって重要な産業 である観光の振興促進のため,2006(平成18)年10 月に制定された長崎県観光振興条例において策定が 義務付けられたものであり,観光振興に関わる目標 や実現に向けた具体的な取り組みを示すものである。
重点支援地区とは,地域ごとの特性を活かした魅力 ある観光地づくりを促進する地区に指定されるもの である。現在,重点支援地区として5市町が指定され
3.2.データの取得
データの取得は,文献,報告書,インターネット 等を用いた関連資料の収集と小浜温泉地域の振興に 関わる主体へのヒアリングにより行った。以下では,
ヒアリングの進め方について説明する。
3.2.1.対象主体の選定
対象主体を選定するにあたり,小浜温泉地域にお いて利用客の増加に向けて地域資源の活用に関わる 主体を整理した。図−3は,地域資源の活用に関わる 主体の捉え方を表したものである。本研究では,小浜 温泉地域において地域資源の活用に関わる主体を,
まず旅館業者と支援組織の2つに分けた。そのうち 旅館業者については,運営主体の属性に応じて,地 方自治体等の公的セクターである公的旅館業者と,
民間セクターである民間旅館業者に分けた。支援組 織については,運営主体(公的セクター・民間セクタ
ー)と主たる対象領域(狭域(小浜町)・広域(島原半島
全域))の違いに着目して,計4つのタイプに分けた。
本研究では,以上計6タイプを,小浜温泉地域の 地域資源の活用に関わる主体と捉えた。
ており,小浜温泉地域では「熱量日本一!小浜 温泉復活プロジェクト〜そぞろ歩いてスロース テイ(時間消費型観光)血小浜〜」を計画名称 として,熱量日本一のギネス申請に向けた徹底 的なプロモーションの展開などが計画されてい る。(長崎県,2007)9)
また,雲仙市では基本計画の政策の1つとし て「地域資源を活かした観光の振興」が掲げら れ,体験型観光の推進など多様な観光ニーズに対応
した魅力的な観光地づくりが推進されようとしてお り,今後の展開が期待される。(長崎県雲仙市企画課,
2007)10)
図−3 主体の捉え万
上記の捉え方を踏まえ,本研究では,小浜温泉地 域の地域資源の活用に大きく関与すると考えられる 行政・旅館業者型,民間・旅館業者型,狭域・民間・
支援組織型,広域・民間・支援組織型の計5つの主 体にヒアリングを行うこととした。このうち旅館業 者一民間型については,開設年次が新しいもの,古 いものそれぞれ1つずつ選定した。
3.2.2.対象主体の概要 i)行政・旅館業者型
行政・旅館業者型としては,国民宿舎である旅館 Aを選定した。Aは,1965年に開業した。部屋数は21 で,部屋料金は6785円(1泊2食付き)と小浜温泉地 域内にあっては比較的廉価な料金設定となってい
る。
ii)民間・旅館業者型
(利用客数)
4.500,000 4,000′000 3,500′000 3,000′008 2,500,000 2.000,000 1.500,000 1,000′000
500′008
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