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遺跡の位置と環境

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Academic year: 2021

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遺跡の位置と環境

高又逍跡は大島郡笠利町宇宿翡又1738番地、 通称高又(Tamata)にある。

笠利町の占地する陸塊は大島最北端に位附するが、 赤尾木付近の地峡によっ てわずかに大島中央部と連繋するに過ぎず、 一見独立した小),::; 嶼の観を呈して いる。 その中央を商狐(183. 6m)・淀山(175m)· 大刈山 (180.7m)の三山を連 ねた山脈が南北に走り、 半,烏を東西に分けている。

西側は笠利湾をへだてて竜郷町に対し、 平穏な内梅に面する反而、 海岸の出 入が激しく、 山丘が海岸に迫り、 大島通有のやや錯綜した景観を呈している。

第l図 高又遺跡位置図

l. 邸又逍跡

2.

宇宿貝塚

3.

大瀬迎跡

4.

宇宿港遺跡

5.

宇宿小学校逍跡

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調査の概要

一一

1976年、笠利町高又において、圃場整備事業に伴う用水路建設の際、曽畑系 と思われる沈線文土器の包含層が露出した。当調査の調査員里山勇廣(奄美考 古学会員)がこれを確認し、奄美と九州方面との関係を示す点で画期的な意義 を持つ遺跡であることを予察した。通告を受けた当研究室では、南島先史遺跡 研究の一環として今回の調査を企画し、笠利町教育委員会並びに奄美考古学会

との組織的な協力のもとに調査を遂行した。

調査は1977年7月21日から計13日間行った。調査はグリッド法により、遺跡 中央を東西に走る高又川(排水鱗)に沿って、一辺2mの方眼桝目を設定した

(第2図)。B‑1・B‑2・D‑1区から発掘を開始したが、この地点は旧地 形の変改がひどく、層序の認定に困難が予想された。よって、約20m南の旧地 形残存部に補助グリッドを設定し、それぞれ北区・南区とした。B‑1 ・B一 2 ・C−1区では遺物包含層が確認され、その性格を追求するため調査区をA

−1区に拡大し、発掘を進めた。

〔層序と遺物・遺構の検出状況〕 (第3図参照)

北区層は全部で11層確認されII〜V層が遺物包含層である。層はすべて西 に傾斜している。 I層は赫島色の粘質土層で客土である。 11層は灰黒色の砂層 である。撹乱されており、部分的にI層の粘土塊が混入する。 IⅡ層は灰黒色を 呈する砂層である。上部は削平され、 B−1区よl)西側だけに残存している。

土器片が少量出土した。Ⅳ層は黒色の砂層である。V層との色調の変化は漸移 的である。また、C−1区より東は削平されて残っていない。この層からは多 量の沈線文土器やイノシシの牙等の獣骨が出土した。 B−1 .B−2区南西部 では、下面において約5cnlの段差をもって低くなる部分がある。これは西に広 がる。さらに、この段差の上(B‑2区中央)と下(B‑1区南西部)に1ケ 所ずつ、炉趾と思われる焼けた砂の小ブロックがあり、その下面は小さく凹め

られていた。また、A−1区中央に小さな凹みが一つ検出された。なお、この

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遣 物

三 出土

1.土器(第4.5.6図第7図62〜70図版6.7)

出土土器は北区で3類、南区では4類に分類される(表1 .表2)。

北区 I類(1〜4) ローリングを受けた小片である。外器面は縦方向の 浅い凹みにおおわれているが、この凹みはいずれもその端に鋭い沈線状の溝を 持っているのが特色である。成形の際、爪を立て気味にした指頭で印象された もののようである。胎土は締まりの良い砂質で、微細な石英・角閃石を含む。

色調は灰黒色を呈する。

II類短かい沈線の組み合せを主文とし、直行する口縁と丸底を有する鉢形 の土器である。これは更に3種に細分される。 IIa (5〜7) ;口縁部の沈線文 は深く且つシャープであり、最上位に列点文を持つ。 IIb(18.19・23〜25.27・

28.32);口縁部付近に巾広の沈線文を持つ。 IIc (8〜18・20〜22.33〜37);

口縁部付近に深く且つツャープな沈線文を持つ。これらII類の胴部片は不整な 方形の区画の中を斜の短沈線で埋めるものと、横または縦の短沈線で埋めるも のがある。底部は中央部近くまで施文されるもの(33.35〜37)もある。胎土 は砂質と泥質に分けられ、前者はサンゴ・石英・雲母等の礫・粗砂を含み、黄 褐色や暗褐色を呈する。後者は暗褐色であり、サンゴのみを含むように思われ

る。32は九州系の移入土器であろう。

Ⅲ類(47〜59) 尖底の壺形土器である。口唇直下と頚部に凸帯を巡らし、

その凸帯上に先端を叉状に尖らせた半裁竹管状の施文具で刺突を施す。頸部の 凸帯下には数本を単位とする沈線文が縦と斜方向に施されている。器壁は薄く 内外器面は主にナデ調整されているが、擦痕も見られる(57)。内器面にはハケ

目調整の例(56)もある。なおこの類は南北両区から出土している。

南区 Ⅳ類内外器而に貝殻条痕が施され、口縁部は直行で断面は舌状を

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3.貝製品及び貝類(第9図78〜87図版8下)

78はタケノコガイ科の巻貝の体層と殼口を研磨している。本例は南西諸島中 部圏に出土例が多い。垂飾品か。79はタマガイ科の巻貝を研磨して穿孔したも のである。用途は不明。80はイモ貝の螺塔部を利用した垂飾品であろう。殼頂 部は研磨されて平滑面が残る。81はツタノハガイ科の貝の殼を体軸に対して水 平に断ち、切断面を磨いたもののようである。ただし、この科に属する貝の殻 は水平に割れる屈性があり、本例が製品であるかどうか疑問が残る。82は円錐 形を呈するサラサバテイを体軸に対して水平に切断し、研磨を施して貝輪とし たものである。径4n,1nの小孔を内面から穿孔している。組合式貝輪か。83は内 面・外面ともによく研磨されている。 ミミガイ科か。84は全体の屈曲度から、

シャコガイ製であろう。中央部と上部に両面から穿孔している。中央部小孔の 推定径は9mm、上部の小孔は長径2.5mmである。85〜87は夜光貝製貝匙の完成 品(85)と未完成品(86.87)である。85は殻の内外面と周縁を磨いた後、基 部の両側に挟りを入れている。86.87は殻を匙の形に打ち欠き、基部や周縁を わずかに磨いた段階の未完成品である。破損したため製作を断念したものと思

われる。

出土貝類(主要なもの) :アクキガイ科・イトユキボラ科・イモガイ科.タ カラガイ科(ハナマルユキガイ) ・サラサバイ科(スガイ) ・フネガイ科(ベニエ ガイ) ・ソデガイ科(マガキ) ・フタバシラガイ科(イセシラガイ)・ リュウキュウ マスオガイ科(マスオガイ) ・マルスタ㈱レガイ科(リュウキュウアサリ、アラス ジケマンガイ、ホソスジイナミガイ) ・ニシキウズガイ科(サラサバテイ、イシ ダタミ) ・アマオブネガイ科(キバアマガイ、カノコガイ) (柴尾)

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四ま と め

今回の発掘調査の結果をまとめると次のようになる。北区ではⅣ層に曽畑系

姓1

土器(II類)が多量に出土し、その下面で曽畑系土器とヤブチ式土器(I類)

が同じレベルで出土した。さらに、曽畑系土器に伴う炉祉やピット等の遺構を 確認した。この層(北区Ⅳ層)の14C年代の測定値(試料は貝)はN‑31074450=t

90Y.B.P.である。なお、ヤブチ式土器については、その出土状態から曽畑系 土器との時間的距離を推定することは困難であった。Ⅲ層から検出された土器

雌2

は河口氏の面繩前庭式に相当する。

南区ではⅣ層とV層より条痕文土器(Ⅳ類) ・前記のⅢ類土器・宇宿上層式土

雛3

器(Ⅵ類)等の遺物の他、炉趾を検出した。Ⅳ層では宇宿上層式土器・ IⅡ類土

舷4

器・V類土器が併出したが、V類は河口氏の嘉徳1 ・ 11式に相当する。南区出 土の条痕文土器については、宝烏大池遺跡(1973年当研究室調査)や沖繩県室

肢5

川遺跡等でそのリ郡lが報告されており、大池遺跡では4820±95Y.B.P.の14C年

代測定値が得られている。

小規模な調査であるにかかわらず、薩南諸島以南において曽畑系文化の生活 面とそれに伴う遺椛が検出されたのははじめてであり、今後の研究に資すると ころがあろう。また南西諸島の土器の編年にも若干のデータを加えることがで きた。

この調査は奄美考古学会の参画したはじめての組織的な調査であった。学会 員は研究の方法等をある程度修得することができた。また、当研究室との協力 態勢もできあがった。文化財の保護や研究に奄美考古学会の今後の活躍が期待

される。その意味で、今回の訓在は奄美先史学の研究に小さな画期をなしたも

のと勘案される。 (安部)

註l 国分直一、三島格「ヤブチ式土器」水産大学校研究報告人文科学篇10 1965 註2 .3 . 4河口貞徳「奄美における土器文化の編年について」鹿児島考古9 1974 註5高宮廠衛他r室川貝塚第1〜3次発掘調査概報」沖国大考古2沖繩国際大学文学部

考古学研究室1978

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