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山形応用地質 第22号 58‑62ページ,2002年 3月山形ニュータウン建設地 に見 られる崩壊堆積物 (予報)
山 野 井 徹 *
は じ め に
山形市 ・上山市境の西部台地 (以後 「西部台地」とい う) に は火 山砕 屑 物 が 堆 積 して い る こ とが 知 られ て い た (
I c hi mur a,1 9 5 7;
水 野,19 6 4;
藤原,19 6 7).西 部 台地
の酢川泥流 については阿子島 ・山野井( 1 9 85 )がその年代
などについて言及 しているが, これまでに堆積物その もの についての詳 しい報告はなかった. このことは, ここの台 地の表層が農耕地であった り,植生で覆われているために 詳 しい観察がで きなか らで もあった.近年,山形市の西南部か ら上 山市 にかけての久保手や小 松原の台地は山形ニュー タウンの建設のため,種 々の土木 工事がなされて きた.この際, これ まで見 ることので きな かった地下の地層などが掘削によって出現 した.現れた地 質の状況か ら,西部台地 を構成 している 「酢川泥流
」
は多 くの崩壊ユニ ッ トか らなる堆積物 であることが明 らか に なった.特 に山形市桧原側か ら,新都市開発の北東側台地 への取 り付 け道路の掘削法面 として出現 した大露頭 (以後「北東大露頭」 という)では新第三系の基盤岩の上 に,幾 つかの崩壊ユニ ッ トを見 ることがで きた. しか しなが ら, 掘削によって出現 した法面 は速やかに吹 き付 け工 によって 覆われて しまう.工事 は執筆時点ではまだ続いているが, すでに掘削でな くなった部分や,法面保護工で覆われた部 分 も多 い.本報告 ではこれ までの観察 を通 して明 らか に なった崩壊堆積物のユニ ッ トと,すでに見 ることので きな くなった場所のスケ ッチや写真 を掲げて,記録 にとどめる こととしたい.
この区域の調査 をするに当た り,工事現場への立ち入 り を許 された 日本道路公団山形工事事務所並 びに地域振興整 備公団山形総合開発事務所当局 にお礼 申し上げる.
図
‑ 1
山形ニュータウン及び 「北東大露頭」の位置図 露頭 の状況西部台地‑の取 り付 け道路 (上 山 ・山形 ・西天童線), 及びその西側の山地 (農業緑地 として利用 される部分)の 掘削 は1
9 9 8
年か ら始 まった. ここの掘削 はその土が付近 を 通過す る高速道路の盛土 として使用するため, 日本道路公 団によってなされた.山地の掘削はその土が全て盛土 に使 われたため工事中に見 ることので きた露頭 は全て消失 した.他方,取 り付 け道路 の掘削法面 はその上部か ら徐 々に現 れ
,2 0 0 2
年春 には下位の道路計画位置 まで掘 り進め られた.掘削の進行 とともに法面は上位か ら順次,吹付 け工がなさ れたために,露頭全体の地層 を一度に観察す ることがで き たわけではない. こうした北東大露頭 を中心 にした区域 を
「北東部」とし,山形市の上水道施設か ら久保手集落に至
写真
‑ 1
山形ニュータウンが建設されている西部台地を蔵王側の 「酢川泥流」台地から臨む*山形大学理学部地球環境学科
る道路 より南側で地域振興整備公団が,施工 している部分 を 「南西部
」
として分け,その地質について述べ る.この区域での基盤岩 は浮石質凝灰岩でシル ト〜細磯サ イ ズか らな り,平行菓理が発達 してい る (写真 ‑2).元来 この地域 の地表 には露出 してお らず,北方の山形市菅沢の 丘陵地 に露出す る岩質に対比 されるので,菅沢浮石質凝灰 岩累層 (以後 「菅沢層
」
と略称) としたい.ただ し, この 浮石質凝灰岩層の露頭の上方層準 でブロックとしての破 断 面 をもって茶 白色凝灰質砂岩が接 している.両者の累重 関 係 は見 られないが,茶 白色凝灰質砂岩 は浮石質凝灰岩の上 位 の層準 と推定 されるので, この地層 をここでは 「菅沢層 上部」,浮石質凝灰岩 の部分 を 「菅沢層下部」
と してお き たい.菅沢層下部 は北東大露頭 の西側法面 に広 く見 られる (写 真
‑
2).東側法面 の ものは上位 の 「グ リー ン崩 れ」の下 位 でブロ ック状 に割れた断面 を見せている.菅沢層上部 は すべて大 きなブロ ックと化 して 「グリー ン崩れ」 に覆われ ている (写真‑ 3)
. こうした基盤岩 を覆 う岩石 は最上位 のローム質層が現地性 のほかは全 てが異地性の崩壊堆積物 である. これ らの崩壊堆積物のユニ ッ トはその岩質の違い によって明瞭 に区別 さjtる.それ らは下位 より 「グリー ン 崩れ」,「オ レンジ崩れ」,「溶岩崩れ」,「赤 タフ崩れ」それ に 「風化磯崩れ」
の順 に重 なる. これ らの崩壊ユニ ッ トの 岩質については図 ‑ 2に記載 されている.西南部の崩壊堆積物 は,北東大露頭 の南側お よび西南部 一帯 に分布 してい る.前述 の北東部 の崩壊 堆積物 が各ユ ニ ッ トごとに独 自の岩質 を示すのに対 し, この区域 の崩壊 堆積物の岩質は様 々な岩体 の破砕物 を雑多 に混合 している ことを特徴 としている.西南部の崩壊堆積物の うち,数 カ 所ではユニ ッ トの境界部が認め られることか ら,岩質的に は同様であって も,複数の崩壊 で生 じた堆積物である.西 南部の崩壊堆積物 と上記の,北東部の崩壊堆積物 との上下 関係 は,北東大露頭の西側法面の南側では西南部の崩壊堆 積物が 「グリー ン崩れ」 までを覆 うことは確認で きるが,
「赤 タフ崩れ」,「風化磯崩れ
」
との関係 は不明である.た だ し,西南部の崩壊堆積物 は 「グリー ン崩れ」
か ら 「溶岩 崩れ」 までを大 きな侵食面 を隔てて覆 っているのに対 し,「赤 タフ崩れ」,「風化磯崩れ」 はその下位層 をそれほ ど大 きな侵食期 を経 て覆 ってい る もの とは思 われ ない. した が って西南部の崩壊堆積物 は東北部の崩壊岩体群の上位 に 大 きな侵食期 をはさんで,堆積 した もの と推定 される.そ こで前者 を 「古期崩壊堆積物群」,後者 を 「新規崩壊堆積 物群」と呼ぶ ことにす る.「新規崩壊堆積物群」 の岩質 は 図 ‑ 2に記載す るとお りである.両者の分布 は図 ‑
3
の地 質図に示す とお りである.なお,阿子 島 ・山野井( 1985)
が言及 した泥流堆積物 はその位置か ら 「新規崩壊堆積 物 群」
の一部 に当たる.誇頭の岩質一覧
地 質 .崩 壊 単 位 区 分 記号 岩 質 的 特 徴
[ コ
ロ ー ム 質 層Lm
構造 (褐色のローム質層 で、不明瞭な層理構造を示すo氷期の寒冷気候 と開通 して形成 された思われる 「ポ リゴン)」が数層 にわたって認められるo 亀裂新期 崩
壊堆 監 ヨ 「維 色 凝 灰 角 磯 崩 れ 」 ≡ 様々な色 の不淘汰な角磯 や円硬 とそれを支持す る基質部か らなる泥流堆積物であるo角裸は安山岩ない し玄武岩 を主体 とする巨磯が多いが、 ときに直径 が
2 m
、まれに5mを超 える巨大な裸 を交 えるo磯 は火山 岩が主体 であるが ときに緑色凝灰岩 や頁岩のブロックを含 む し、木片の介在 も認め られるo崩壊 のユニ ツ トはい くつか認め られるが、岩質的にはほとんど変わらないoユニ ッ ト間に炭質物 に富む粘土層 を爽む場積 合があるし、下位のユニ ッ トの最上部 には風化部位 を伴 うこともあるo この位置での堆積後の風化 の進行
物群 は弱 く、著 しい赤色土化 を示す部分 は見 られないo
古
期 匡司 「風 化 磯 崩 れ」
W
基質部の多い風イヒが進 んだ玄武岩質火山岩の角硬からなる岩屑流堆積物で、基質部は不淘汰な角磯や亜 円 裸 を含むo下位 に凄す る地層 をシャープに削 り込 んで重なるo田 「赤 タ フ崩 れ
」 R
マ トリックスが卓越す る凝灰角硬岩 のブロック状の崩壊堆積物o崩壊後、 この場所で風化 して赤色土化 崩壊 したもの○
買 ヨ 「溶 岩 崩 れ
」 L
ほとん ど異質襟 を交 えない玄武岩質火山岩の岩塊か らなるo冷却節理 を残す ような巨大 ブロックか ら均 堆積 ‑な岩質の角磯の集合部 まで、ブロックの大 きさは場所 により多様o下位 をシャープに切って覆 うo
田 「オ レ ン ジ崩 れ」
0
径10‑3 0 c m
の亜 円磯 を主体 としているo磯種 はほとんどが玄武岩質火山岩であるo磯の周囲ヤマ トリツ物群 クスは酸化 してオ レンジ色 を豊 している○ごく一部に還元色 の部分 もあるO
E ∃ 「グ リー ン崩 れ 」
G
凝灰岩は書野層上部 (線色凝灰岩 のブロックを主体 とした最下位 の岩屑流で、 わずかに玄武岩質火山岩 を取 り込むo元 の線色中部中薪統) と考えられるo下位 に茶 白色凝灰質砂岩の巨大ブロックを取 り込むo塞
盤石LU 田 茶 白色 凝 灰 質 砂 岩 (菅 沢 層 上 部) S2 茶 白色 で、石英粒子 を含 む塊状の凝灰質砂岩であるo下位層 とは割断岩塊で接す るo多 くは大 きなプロツ ク状に破壊 されているが、基盤岩 の表層部の破壊 であるD ひび割れ部が粘土で充填 されている構造 もあるo
図‑2
「北東大露頭」西側法面に見られる地層のスケッチとその岩質の記録a
ら t i = = =
写真
‑ 2 「 北東大露頭」東側法面の露頭中央部 は浮石質凝灰岩 ( 菅沢層下部, sl )で現位置の基盤岩であるが,右側で 「 溶岩崩れ」 (L)に覆 われる部分 はひび割れている.「 溶岩崩れ」 (L) は基盤岩や 「グリーン崩れ」 ( G)をシャープに切 って覆 う.最上部の崩壊堆積物 として 「 雑色凝灰角磯崩れ」 (Z)が覆 うが最下位 の境界部 は炭質物 に富む泥炭質粘土 などが爽 まれていた.
最上位 は現地性のローム質土 ( Lm)が覆 うt
写真
‑3 「 北東大露頭」西側法面の露頭最下位 は現地性の基盤岩である浮石質凝灰岩 ( 菅沢層下部, sl )がわずかに露出 している.基盤の上部 にブロック化 した茶 白色凝灰質砂岩 ( 菅沢層下 部, S2 )が接 している. さらに上位 を 「グリーン崩れ」 ( G) , 「オ レンジ崩れ」 ( 0)が覆 うがこれ らをシャープに切 って 「 溶岩崩 れ」 (L)がのる← さらに上位 を 「 赤 タフ崩 れ」 (R) , 「 風化 磯崩れ」 ( W)がおおう.露頭の背後の台地 ( 元は起伏のある丘陵)ではグリーン崩れが広 く覆 い,その上位 を部分的に 「 赤 タフ崩れ」れが覆い,その上部 を 「 風化磯崩れ」が広 く覆 っていた
(写真‑ 6)参鼠 露頭左 ( 南)側 は 「 雑色凝灰角磯崩れ」 (Z)が覆 うが, この岩質の岩体 ( 新規崩壊堆積物群)はこれより南 2k mほど連続する.最上部 は現地性の ローム質層 ( Lm)が覆 う.
E 喝
♯
蓉
写真 : 4 久保手台地東緑の泥流( 雑色凝灰角磯崩れ) 中にあった安山岩の大石
写真‑ 5 小松原台地を広 く覆 う 「 雑色凝灰角磯崩れ」 (Z)
写真
‑6 「 北東大露頭」の背後 ( 西)の丘陵下に広 く分布するグリーン崩れ
(G)とそれを覆 う「 風化磯崩れ」( W)と赤タフ崩れ
(R),( 現在は果樹園)
写真
‑ 7 小松原台地を広 く覆 う 「 雑色凝灰 角磯崩れ」 (Z)の堆積状況
写真
‑ 8 「 北寛大露頭」東側法面北側で下位 層 ( G,0) をシャープに切 る「 溶岩崩れ
」(L)
写真
‑ 9 「 北東大露頭」西側法面北端で最下部にブロック状に現れた茶白色凝灰質砂岩 ( 菅沢層下部 ,S2 ) とそれを巻 き込んでのる 「グ
リーン崩れ
」 (G).露頭の最上部は 「 赤 タフ崩れ
」 (R)と 「 風化磯崩れ」 ( W)で覆われている,
6 2
山 野 井 徹須 川 泥 流
酢 川 泥 流 は
Su‑ka wa mud f l o w
と し てI c hi mur a ( 1 9 5 7 )
の命名によるが,その内容の記載 はない.その後, 水野( 1 9 6 4 )
,藤原( 1 9 6 7 )
は上 山市 の竜王橋付近 のボーリング柱状図を引用 して泥流が複数回生 じていたことを述 べている.ただ し,これ らはボー リング資料や地形以外, 露頭の地質により酢川泥流の岩質が言及 されているわけで はな. また, これ らのボー リングは残念 なが らコア堀であ るか否かが明 らかでないので,そ うしたデー タに基づ く解 釈の評価 は定 まらない.他方,最近,酢川泥流地形上での 地質調査で,小倉北東の酢川周辺では基盤の緑色凝灰岩の 上 に
1 5 ‑2 0m
の火砕流堆積物,その上位 に泥流堆積物がの るな どのユニ ッ トが確認 される とい う (本 田康夫氏談).今後,酢川に沿って詳 しい調査がなされれば,前述の山形 ニュー タウンの崩壊堆積物のユニ ッ トとの関係が明 らかに な り,蔵王温泉火山の崩壊 の歴史 をより一層明 らかにする ことが可能になろう.
引 用 文 献
阿子島 功 ・山野井 徹
( 1 9 8 5 )
蔵王火山西麓の酢川泥流 の発生年代.東北地理,3 7,1 5 9‑1 6 5 .
藤原健蔵
( 1 9 6 7 )
上山盆地 における泥流堆積 と盆地の埋積 過程.東北地理,1 9,1 5‑2 2.
I c hi mur a
,Ta ke s hi( 1 9 5 7 )Ge o l og i c a l I nve s t i ga t i o nso nt he Za oVo l c a no e s .Ⅰ VRyu‑ z a nVo l c a no.Ea r t hqua kel ns t . Uni v.To kyo,3 5,Pa r t3,5 7 3‑5 9 3 .
水野
裕 ( 1 9 6 4)
蔵王山麓に於 ける火山砕屑流の地形 につ いて.弘前大学教育学部紀要,1 3 ,2 3‑3 2 .
写真
‑1 0
「北東大露頭」の掘削中に見 られた 「 溶岩崩 れ」の中心 部.多数の割れ目を伴いなが らも明確 に冷却節理を残 している
道路掘削法
面
tr北東大藩凱
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西蔵王高原
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