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データベース検索過程における初学者の特徴

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大正大學研究紀要   第九十七輯 一

データベース検索過程における初学者の特徴

今 村 成 夫

要旨

大学の図書館司書課程科目「情報検索演習」を受講 し、データベース検索について演習をおこなっている 受講者を対象に、その検索過程を観察した。受講者は 全員、既にコンピュータによる情報検索の経験があっ たが、検索に必要な知識や技能は十分とはいえず、そ の現状把握が求められる。本稿では、実際の検索過程 を観察することにより、定性的に問題点を明らかとす ることを目標とした。検証によりこうした問題点の多 くは、web サイトの閲覧や、検索エンジンによるサ イトの検索の経験が影響しているものと思われる。

1.はじめに

1990 年代頃より、学校、大学、企業、そして家庭 へもパーソナルコンピュータ(以下、パソコン)の普 及とそのネットワーク化が急速に進展した。携帯電話 やスマート・フォンなど携帯型端末の普及も著しく、

街路や駅、列車内でもこれらの機器を操作する光景を 日常的に見かける。

本学に入学してくる学生も、大学からの掲示・連絡 をはじめ、図書館資料の検索や予約処理、さらには履 修登録や教員への質問に至るまで、コンピュータを利 用しておこなうことのできる環境が整いつつある。学 生たちは、そのほとんどが日常的にパソコンや携帯端 末を利用し、さまざまな情報の収集や他者とのコミュ ニケーションをおこなうようになってきている。

ところで大学で開講される司書課程の現行カリキュ ラム中には、公共図書館をはじめとする図書館におけ る情報サービスでの活用等を視野に、情報検索のため の科目「情報検索演習」が設けられている。4 ~ 5 年 前までは、こうした授業を受講する学生の中には、パ ソコンを使用した経験が皆無に等しい者も複数名見ら れた。そのため、授業に際しては、本来カリキュラム では想定していない、パソコンの操作方法の教育等も

必要な場合があった。

しかるに現在では、パソコンの使用経験の無い学生 は皆無で、コンピュータによる検索についても、ほと んどの学生が基本的な処理は経験しており、簡単な課 題であれば、自力でほぼ解決できる。それどころか、“コ ピペ ”(copy and paste)などといった言葉が流行し、

Web サイト上の情報を検索し、盗用してレポートや 卒業論文を作成するなどの事例も指摘され、社会的な 問題になってきているほどである。また、論理演算子 を用いた検索なども、その正式な呼称までは知らない 者も多いものの、“and 検索 ”、“or 検索 ” といった一 般に通用している呼称は十分理解しており、検索処理 もおこなっているようにみえる。何年か前までは、こ うした演算子を知っている学生は少なかった。大きな 進歩であるといえる。

一方で、コンピュータを用いたこうした検索で、必 要な情報を十分に検索できない、うまくいかないと訴 える学生も少なくない。実際に課題を提示して検索処 理をおこなわせてみると、大量の検索結果にとまどっ たり、想定外の結果を提出してくる学生も少なくない。

検索処理の一連のプロセスのどこかが十分とはいえな いのであろうが、具体的にどのような段階で、どのよ うな異常が生じているのか、提出された課題だけでは はっきりしなかった。

今回、提示された課題を学生が処理するプロセスを、

教室内でリアルタイムに観察することで、問題点を定 性的にではあるが、明らかにしようと試みた。

2.コンピュータ検索のプロセスと 必要な知識・技術

コンピュータ検索のプロセスを流れ図の形式で表現 すると、以下の図1のようにあらわされる。

図書館司書として、図書館において、利用者の要求

に応じて、また自らの業務のために、有効な検索をお

こなうためには、これらの各プロセスにおけるポイン

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データベース検索過程における初学者の特徴 二

トを確認し、知識や技能の充足が重要である。

こうした業務上でのコンピュータ検索のための知 識・技能について、野末俊比古

1)

は、エンドユーザか ら現場の検索者まで含めて、表2のような項目を掲げ た。またさらに、それらを専門的内容、一般的内容、

理念的内容、実際的内容という観点から、表3のよう に、2 次元に配置を試みている。司書課程の「情報検 索演習」においては、受講生各自の検索能力に関して、

これら「中核的能力」を中心に、「周辺的能力」およ び「背景的能力」まで幅広く全般を点検する必要があ る。とりわけ、表3の「中核的能力」に関しては、実 際にコンピュータを操作して検索をおこなう上でいず れも不可欠な知識と技術であるといえる。これらに関 して、不足していたり、誤っている知識や技能を補う ことが重要であろう。

表2 情報検索能力の一般的内容(出典:「情報検 索(データベース)教育の意義と展開」野 末俊比古.情報検索の理論と実際,p.129, 1999(論集・図書館情報学研究の歩み:日 本図書館情報学会研究委員会編; 第 19 集)

図1.情報検索のプロセス

表3 情報検索能力の構造的把握の試案(抄) (出典:

同上,p.131)

情報の概念 情報検索の概念 情報検索の種類 情報検索の歴史 一時情報と二次情報

(概念、種類、……)

データベースの概念 データベースの歴史 データベースの分類

(形態、内容、……)

データベースの流通 CD-ROM データベース オンラインデータベース 統制語と自然語 シソーラス

データベースファイルの構造

(書誌ファイル、転置ファイル、……)

検索方式

(GUI/CUI、コマンド方式、メニュー方式、……)

コマンド

(機能、利用法、……)

論理演算 フィールド指定 比較演算 近接演算 トランケーション 検索語 検索式 検索結果の評価 一時情報(資料)の入手

データベースの利用料金 ハードウェア

(パソコンと周辺機器、モデム、……)

ソフトウェア

(OS、通信ソフト、……)

ネットワーク

(インターネット、LAN、……)

CD-ROM 等(仕組、規格、……)

知的所有権等(著作権法、……)

標準化 索引法、索引語 主題分析 検索戦略

高度な/新しい検索手法

……

理論的       実際的

中核的能力

専門的

一般的

統制語と自然語 シソーラスの概念

フィールド指定 論理演算

検索式の立て方 検索語の選択 検索の手順

シソーラスの使い方

フィールド指定子 論理演算子 検索コマンド

周辺的能力

理論的       実際的 専門的

一般的

データベースの歴史 データベースの流通 データベースの分類

知的所有権

(データベース)

データベース提供システムの例 データベースの種類と特色

背景的能力 コンピュータやネットワークに関する知識・技能

(OS や通信ソフトの使い方、インターネットの概念、など)

資料・情報に関する知識・技能

(一次資料と二次資料、一次資料の入手法、図書館の役割、など)

しかるに、「情報検索演習」を受講するまでに、す でに多くの受講生が自ら、サーチエンジンによる web サイトの検索を中心に、コンピュータ検索を経験して おり、もはやはじめてではない。「検索に自信がある」

と発言する者もみられる。

 そのため本稿では、こうした観点から、実際に「情

報検索演習」を受講している受講生の事前に身につけ

ている知識や技能について、最初に観察により定性的

に把握することを試みた。

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大正大學研究紀要   第九十七輯 三

3.学生による検索プロセスの観察

観察は、担当する授業「情報検索演習」の演習時に 解説や指導に並行しておこなった。

この授業は、2年次生から4年次生が対象で、2 年次生が 80%あまりを占める。情報処理関連の受講 歴は事前調査で 10%程度である。半期 15 回で 2 ク ラスずつ開講、1 クラスの定員は 50 名。2つの学期 合計で 4 クラス、実際の受講者数は、今回は合計で 155 名となった。はじめに初回授業時に、授業のテー マや目標の説明をおこなうとともに、コンピュータ検 索の経験を質問したところ、すべての学生が経験あり と回答した。

授業は解説時間と演習時間とで構成され、演習は、

オンライン型データベースを利用しておこなう演習 と、オンディスク型データベースを使用する演習とに 分かれる。演習時間は、合計でおよそ 600 分程度で、

オンライン検索とオンディスク検索とそれぞれ 300 分程度となった。

演習の最初に、比較的平易な演習課題を提示し、各 自でできる範囲で検索をおこない、結果を報告させる とともに、各自でおこなった検索のプロセスについて 記録をするよう指示をした。これは、データベース検 索についての各自の理解度を確認し、認識させるため の最初のステップである。

授業に際し、各学生の机上には、PC セットが配置 され、学内ネットワーク経由でインターネットを構成 している。利用できるデータベースは、附属図書館で 利用できるオンライン型商用データベース(例:日外 アソシエーツ社の “BOOK PLUS” および “MAGAZINE PLUS” 等)のほか、国立国会図書館の OPAC (NDL- OPAC)、国立情報学研究所の Webcat、日本書籍出版 協会の Books.or.jp など、インターネット経由で利用 できる任意のデータベースサービスはいずれも利用可 とした。

検索演習に際して、教卓の PC には、授業支援シス テムが搭載されていて、各学生が検索処理をおこなう 際に、その様子を、教卓側モニターで逐一観察するこ とができる。(写真1)

今回の観察は、オンライン型データベースによるは じめの演習時におこなった。演習の問題の例を、表1 に掲げる。

写真1 教卓側の支援システムの画面例

表4 検索演習課題の例

以下の各質問に対して、利用可能な検索手段を適宜選択し、回 答しなさい。結果は指定の回答用紙に入力し、印刷して提出しな さい。なお、検索処理過程は詳細に記入すること。

1.鳥インフルエンザの国内への感染・拡大を防止する対策につ いて書かれた雑誌記事を探して紹介してほしい。

2.創造的作業をすすめる上で重要な思考方法について述べてい る図書があると聞いた。それらを 5 冊紹介してほしい。

3.青色の発光ダイオードの開発にかかわる裁判について書かれ た雑誌記事を探したい。

4.インターネット上の情報の収集と利用法について、大学生を 対象に想定して書かれた図書で、現在出版中のものを紹介し てほしい。

演習作業時の各学生の検索処理過程を、授業支援シ ステムのモニタ上で観察し、使用しているデータベース、

使用フィールド、入力された検索語や検索式、検索結 果画面、検索結果の処理プロセス等、作業全般につい て観察をし記録をした。必要に応じて、教室内を回り、

検索者の状況を直接観察した。また、授業後に提出され た検索結果についての提出物と手元の記録との照合も おこない、検索上の問題点を探った。また、必要に応じて、

当該受講者へインタビューもおこなった。

4.受講者の検索処理過程の所見

受講者の検索処理の過程を支援用モニタで観察した 結果、図1の検索プロセスの流れに沿って、以下のよ うな所見がみられた。

①検索要求の確認・分析と予備的調査

・曖昧な内容の課題文を含めているにもかかわらず、

課題の各テーマに関して、確認・質問をした者は1

名のみであった。不明な点は質問等をするよう促し

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データベース検索過程における初学者の特徴 四

ても質問者は3名ほどいたのみであった。

・課題の主題やキーワードに関して、辞典・事典等

(電子辞書やWeb上の情報源を含む)のレファレ ンスブックスを用いた予備的調査をおこなう者も見 られなかった。

②データベースの選択

・97名、およそ全体の63%の受講者が、各課題の内 容にかかわらずYahoo! JapanやGoogleなどのサーチ エンジンで検索をおこない、表示されたwebサイト 上の情報をそのまま回答用紙へ書き込んだ。インタ ビューしてみたところでは、こうしたサーチエンジ ンでの検索がすなわち、コンピュータ検索であると 考えている者が多い。

・データベース(とりわけ、インターネット経由で利 用できるオンライン型データベース)とサーチエン ジンとの区別がついていない者が多く、質問しても 相違点の理解ができない。

・データベースの選択をおこなった受講者およそ半数 が、どの問題も大学附属図書館のOPACで検索をお こなったり、webcat plusや、Amazonのサイトで在 庫情報の検索をおこなったりなど、それまでに検索 した経験のあるデータベースを検索に利用した。そ れぞれのデータベースを選んだ理由をたずねたとこ ろ、「使った事があったから」といった回答が多 かった。適切なデータベースの選択ができていない 者が多い。

・課題の内容によっては、複数のデータベースの選択 も想定できるが、実際に複数のデータベースを用い た者はいなかった。

③検索語、検索式の決定、フィールドの選択など

・大半の受講者が、課題文中に出現する単語や文をそ のままフィールドや検索窓(サーチエンジンの場 合)へ入力して検索をおこなった。

・同義語や異表記、より適切な検索語を探し複数の検索 キーを用いて検索をおこなった者はみられなかった。

・上記課題例(表4)のような各質問文を、たとえ ば、“鳥インフルエンザの国内への感染・拡大を防 止する対策について書かれた雑誌記事”のように、

そのまま入力して検索をする例も数名みられた。該 当者1名に確認すると、「いつもそのようにやって います」との答えであった。

・選択したフィールドも、データベースの場合、最 初に配置されているフィールドや、“キーワード”、

“フリーワード”といったフィールドのみを使用する 例がデータベースを利用した受講者の6割以上を占 めた。

・多くの受講者は、論理積を利用した検索式を入力し て検索しているが、この機能の意味や正式な名称 は、インタビューしてみても知らない場合が多かっ た。論理和や否定(論理差)については、知らない 者が多かった。

④検索の実行

・各データベースごとにマニュアルが準備されていた り、あるいは、ヘルプ画面で使用法の説明を表示さ せて見ることができるが、こうした使用法の説明や ヘルプ画面を確認し、機能や各フィールドへ入力す る文字列の書式等をしらべた受講者はいなかった。

(今回の調査の対象ではないが、CD-ROM版のデー タベース(オンディスクデータベース)を利用して の演習の際にも、指示をするまで、添付の説明書を 読む者はいなかった。)

⑤検索結果の評価・検討

・検索結果(資料に関する二次情報)を確認し、その 適否の判別をただしく行えず、ノイズと思われる資 料を含めて、画面に表示された資料を単純に書き写 して提出した受講者が、30%程度みられた。

⑥検索結果の加工・印刷等および検索結果の提供

・今回の演習では、検索結果を指定されたフォーム上 へ入力して提出をするよう求めた。フォームは、単 純な枠線からなる表形式であった。しかし、こうし たフォームへ適切に貼り付け、フォントやポイント 数の調整や書式の整理をおこなうなどの作業ができ なかった者が10%程度見られた。

・データベース上のデータと著作権の関連について は、インタビューをしてみたところ、図書や雑誌、

新聞などと異なり、パソコン上であるのでよくわか らないと答えた学生がほとんどであった。(このた め、情報検索演習の授業でも、公衆送信権やデータ ベースの著作権について、解説をしている。)

5.コンピュータ検索の初学者にみら れる検索処理上の特徴

今回の調査を通じて、「情報検索演習」の受講生の

(5)

大正大學研究紀要   第九十七輯 すべてが、受講開始前までに、既にコンピュータ検索

の経験があると回答しており、コンピュータ検索の普 及には、驚かされるばかりである。しかし、実際に検 索をおこなった場合、そうした受講生でも、的確な検 索とはほど遠い状況にあることが示された。このよう な検索者の場合、主として

①データベースと Web サイトを検索するサービスで あるサーチエンジン(検索エンジンまたは検索サイ ト)との区別がつかない。

②データベースを選んだ場合でも、適切なデータベー スの選択ができない(過去に使用経験のあるデータ ベースを再び用いている)。

③フィールドの選択が十分できない。

④取扱説明書やヘルプ画面を読まない。

⑤主題などの確認をしない。

⑥検索語や検索キーの選定が不十分。質問をそのまま 無造作に入力する例もみられた。

⑦論理積を利用した検索式(“ 検索語(スペース)検 索語 ” の形式での命令)を入力して検索しているが、

この機能の意味や正式な名称は、インタビューして みてもよくわからないと答える場合が多かった。

といった特徴が共通にみられた。

このような状況にかかわる要因として、社会におけ る web サイト閲覧やサーチエンジンでの検索の普及 が、コンピュータ検索の普及に大きな貢献をしている 一方で、マイナス面でも影響を与えていることが考え られる。

予備的知識なしでも、また、説明書き(ヘルプ、マ ニュアル)などを読まずにでも、だれでも、無造作に 思いついたことば(単語)をもとに、ハイパーリンク をたどり、あるいは言葉や文を検索窓へ入力して命令 すれば、何かしら検索できる、というサーチエンジン や web ページの特長とその気軽さは、インターネッ ト技術やコンピュータ検索を社会に大きく普及させる 上で多大な貢献をしていることは確かである。

しかし一方で、こうした検索では、現状では、固有 名詞等による検索を除けば、ノイズや漏れが極端に多 くなりがちである。ノイズに関しては、サーチエンジ ンでの検索でも実感することは容易であるが、漏れに ついては、サーチエンジンでも、またデータベースの 場合でも、蓄積された情報の母集団がブラックボック スであり、検索処理の過程もコンピュータ内でおこな われブラックボックスであることから、漏れについて

の認識(知覚)も評価も困難である。実際、情報検索 演習の授業においても、検索結果がゼロ件と出力され た場合や、少ない件数である場合に、そのデータベー スに本当に該当レコードが無いものと思い込んでいる 受講者は少なくなかった。一般のエンドユーザによる 日常の web ページ検索では、このような状態でも一 定の有用性はあろうが、職務上などで、必要な情報を 有限個、的確に短時間に検索する上には、問題が残さ れることになる。

図書館司書が利用者の求めに応じてコンピュータで 情報検索をおこなう場合、現状の実用検索システムの 多くでは、前節で掲げた流れ図に沿って、多くの事項 について留意しつつ、慎重かつ丁寧に検索作業をおこ ない、少しでも漏れやノイズの少ない検索をおこなう ことが要求される。しかるに、Web サイトの利用や サーチエンジンの利用に慣れ、こうしたサーチエンジ ンでの検索が “ 標準的 ” であると理解していると、な かなかなじめない場合が見られ、演習中に面倒である と、腹をたてる者もみられた。

また、今回の授業の受講生を観察していて、検索課 題の課題文をそのまま入力し、コンピュータ(パソコ ン)に “ 検索依頼 ” をしているようにも見える者が複 数名いた。ブラックボックスで、さまざまな形式の情 報の処理を自動でこなすコンピュータに、知能を感じ るユーザは未だに少なくないようであるが、こうした ことと、サーチエンジンによる検索の普及が、相乗効 果をもたらしているようにも感じられる。初等中等教 育をはじめ、大学での情報リテラシーの授業などでも、

情報検索というとサーチエンジンによる検索を主体に 取り上げている例が多いように感じられるが、サーチ エンジンとデータベース検索と、双方の理解を促す努 力も必要ではないかと思われる。

なお、担当する「情報検索演習」授業時には、検索 過程ばかりでなく、データベースの構築過程(情報の 蓄積過程)がどのようにおこなわれるか、また、コン ピュータ上での検索処理のプロセスについても、簡単 な説明をおこなっている。これらの解説を聴いた前後 では、コンピュータ検索に対する姿勢が大きく変わ る受講生も少なくない。受講後に、感想を求めたとこ ろ、「コンピュータ検索のしくみがこれほど原始的で、

検索作業がこれほど面倒なものであるとは思わなかっ た」といった感想を記している受講生も見られた。現 行の「情報検索演習」のカリキュラムでは、専ら検索 者側からの視点でのみカリキュラムが組まれている。

情報の蓄積過程と検索処理過程とを分離し、主に蓄積

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データベース検索過程における初学者の特徴 六

過程についてのみ授業をおこなっている現在のカリ キュラムが、こうしたコンピュータ検索の特性の理解 度にも影響を与えているように思える。この点につい ては、小田光宏

2)

は、以下のように言及している。

情報検索の定義にも関連することであるが、内 容の範囲の問題がある。すなわち、 「省令 97」(著 者注:現行の司書課程カリキュラム)の中心的な 科目は、コンピュータを用いたデータベース検索 に限定されていた。しかし、1960 年代には、パ ンチカードシステムやファイリングシステムをも 含めた情報検索の原理的な解説も技能としてとら えられている。しかも、検索そのものの技術だけ ではなく、情報の収集と蓄積にかかわる技術との 連関が意識されていた。そうした状況と比較する と、現行制度のもとでは、情報検索技能が矮小化 される危険性を孕んでいる。

2010 年 度 の 図 書 館 法 改 正 に と も な い、 来 年 度 2012 年度より、あたらしい司書課程カリキュラムが 実施されるが、コンピュータ検索に関連する授業を展 開するにあたっては、データベースや検索システムの 理解、情報蓄積過程への理解にも留意をする必要があ るといえよう。

6.おわりに

本稿では、本学で実施されている司書課程授業の「情 報検索演習」を対象に、受講生の検索プロセスを観察 することにより、授業実施上のいくつかの問題点を再 確認できた。今後は、こうした初学者の検索プロセス について、さらに定量的な検証をおこなってみたい。

文献

1)「情報検索(データベース)教育の意義と展開」.

野末俊比古.情報検索の理論と実際,p.129 ~ 153, 1999(論集・図書館情報学研究の歩み:日 本図書館情報学会研究委員会編; 第 19 集 2)「図書館情報学教育における情報検索技能の育成:

教育科目の位置付けを中心に」小田光宏,同上,

p.154 ~ 174

3) 「文科系のための情報検索入門: パソコンで [ 漱石 ] にたどりつく」.安永尚志,国文学研究資料館編.

平凡社,1996.

4)「 情 報 検 索 の 考 え 方 」. 緑 川 信 之. 勉 誠 出 版,

1999.

5)データベース利用教育ガイド:大学におけるデー タベース利用教育システムのプロトタイプ作 成」.[ 日外アソシエーツ編 ].日外アソシエーツ.

1993.

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