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シンガポール経済の対外的側面

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(1)

シンガポール経済の対外的側面 4ワ

シンガポール経済の対外的側面

田 中 茂

1.序

Ir.産業構造と経済発展  1.産業構造と工業開発

2.産業構造と経済発展一ユ960〜1969年一 皿.外国貿易

 1.国際収支と外国貿易  2.貿易構造

IV.外国直接投資 V.結   語

1.序

 シンガポール経済はこれまで中継貿易を中心として運営されてきたといえよう。しかし,

1960年代以降中継貿易は不振となり,シンガポールの経済構造は大きな転換をみせはじめ ている。中継貿易が不振,衰退の一途をたどっているにもかかわらず,その経済成長は目 ざましく東南アジア諸国内では著しく高い所得水準を享受している。近年の経済成長をG

第1表  中継貿易のGDP(要素価格表示)にしめる構成比率(65年以降修正)

1960 1961

!962 1963 1964 1965 ユ966 1967 1968 1969 1970 1971 1972

G  D  P

2,046.0 2,239.8 2,371.4 2,683.8 2,700.3 3,043.4 3,365,2 3,692.1 4,257.0 4,832.7 5,657.1

6,47L2

7,300.0

中継貿易収入

38LO

388.9 378.8 441.1 286.2 307.8 349.8 408.5 538.7 666.1 683.1 703.6 694.0

中緩易/GDP

18.6%

17.3 16.0 、 ユ6.4 10.6 10.1 10.4 11.3 12.7 14.6 ユ2。O lO,9 9.5

中継貿易バランス

の年間増減率

 3.0%

 2.0

−2.6  16,4

−35.1  7.5  13.4  17.0  31.9  23.6  2.6  3.0 一ユ.4

(注) GDP,中継貿易収入の単位はIOO万Sドル。

   64年以降はインドネシア貿易からの収入は除かれている。

(出所)71年および72年の予算演説資料,ユ973年はアジア動向年鑑より算出。

(2)

DP指標でみれば,1966〜1971年の過去6年間にGDPは年平均14%で拡大し,71年に おいても国際通貨不安情勢下にもかかわらず,GDPは対前年比14%の伸び率を達成し,

その規模は64億7,120万Sドルにおよんだ。シンガポールは面積もせまく,地下資源も採 石のほかには全くない国である。それゆえ,近隣アジア諸国が国内工業開発をはかり,シ

ンガポールを中継しない直接貿易をおこなう傾向が出るにつれ,工業化を中心とした産業        1

構造の変革以外に発展の途はない。

 シンガポール政府は第1次5力年開発計画(196!〜1965年),第2次5力年開発計画

(1969〜1970年)をつうじて,港湾施設,電力,道路,水道,工業団地など社会資本の 充実といった工業化に必要なインフラストラクチュアの確立につとめてきた。その間1962 年には経済開発局(Economic Developrnent Board)を設立して工業化政策の統一をは かるとともに,創始産業法(1967年に経済拡大奨励法へ発展強化)によって外国資本の導 入を促進し,本格的な工業化を目ざしている。中継貿易のシェアの低下にもかかわらず,

シンガポール経済が高度成長を達成しているのは,政府の公共投資と民間設備投資の活発 化によるものである。資本形成率は年々増加し,ユ970年以降は20%をこえるに至っている。

第2表 国民所得勘定

1967 1968 1969 1970 1971 1972

G N P

3,962 4,568 5,239 6,140 7,001 7,918

GNP成長率

(名  目) 総資本形成

9.2%

15.3 14,7 17.2 14.O 13.0

 518.3  735.9  954.0 1,375.7

L759.3

2,155.1

総資本形成

の形成率

9.5%

42.0 29.6 44.2 27.9 22.5

資本形成率 13.1%

ユ6.1 18.2 22.4 25,1 27.2

(注) GNP,総資本形成の単位は100万Sドル。1972年のGNP成長率と資本形成率は    GNP,総資本形成の成長率よりそれぞれ算出。

(出所)Yearbook of Statistics Singapore.

 本稿においては,最近のシンガポール経済の経済発展と経済構造の変化を検討した上で,

その経済的性格上重要な意味をもつ対外的要因一外国貿易と外国資本一に焦点をあわせて,

将来経済の展望にかんしても若干の指摘を行なおうとする。

■.産業構造と経済発展

 1.産業構造と工業開発

 シンガポールの産業構造を雇用面からみるかぎりでは,先進国のパターンと類似してい る。第1図が示すように1972年では第1次産業,第2次産業,第3次産業の比率はそれぞ れ,3%,41%,56%であった。第1次産業は対GDP比率が29%(1971年)をしめるに

1.文献(4),p.528.

(3)

シンガポール経済の対外的側面 49 すぎず,大部分の食料は輸入で賄なわれている。

(ユ972年3,月末現在)

製造業

  33%

サービス業

 25%

商 22%

業 運輸通信

 9%

建設業  5%

農・漁 鉱  業

 3%

電力・ガ ス・水道

 3% サービス

      第ユ図 産業別就業人口

(注) 総就業人口は514,405入。

(出所)Monthly Digest of Statistics, Singapore.

      第3表 GDPの産業別構成 (単位:ユ00万Sドル)

1969

!970 1971 1972

GDP

4,833 5,675 6,471 7,300

農・漁業

32%

3.0 2,9

製造工業庭設業

18.6%

20.2 23.0 23.5

4.3%

5.3 5.5 7.5

商業。貿易観  光

32.0%

30.7 29.5 27.2

4.7%

4.9 5.0 5.4

軍  需 サービス 8.4%

7.4 6.5 2.8

その他

28.7%

28.5 27.6

   (注) 1972年はアジア経済動向年鑑等から試算    (出所)通商弘報1973.L16.

 しかし,家蓄業は近年自給水準をこえるほどに発展し逆に輸出されている。シンガポー ルは元来,耕地面積そのものが国土狭少のため限られている以上,工業化政策の推進によ って農業の発展はあまり期待できない。けれど生産性向上によって外貨の節約ははかる途 は残されている。

 シガポール経済においては,伝統的に中継貿易とそれに密接に関連する商業の比重は極 めて大きい。しかし,最近成長の著しいのは製造業および建設部門である。ここ6年間の 変化をみればそのことは明らかである。前者が対GDP比率で1967年の27.1%から1972年 には27.2%とほぼ安定しているのに対し,後者は1967年の20.8%から1972年には31.0%へ

と著しくそのウエイトが高まっている。したがって,第3次産業のシェアが1967年の70.7

%から1971年には66.3%へと低下した反面,第2次産業のシェアはユ967年の25.3%から 1971年には30.8%に上昇したのである。第2次産業の拡大は工業化が進行するにつれ今後        2

とも持続し,産業構造は漸次変化してゆくものと考えられる。就業人口では工業は中継貿          第4表  工業の生産構造(1972年速報数字)

       (単位:IOO万Sドル,()は構成比%)

食 品

飲料

タバコ 710.9

(13.0)

繊維 衣料 凍革 コ  ム

460.1

(8.4)

木 材

家具

 紙 305.0

(5,5)

出 版 印 刷 129.1

(2.3)

化学 化学 製品 142.6

(3.5)

石 油 団 品

金属 金属 製品    1 =L,661.51328.0

(30・6) p(6・0)

機械

1ユ1.4

(2,0)

電気 機械

688.ユ

(12.6)

輸送 機械

その他

520.1

(9。6)

356.1

(6.5)

5,412.9

(100.0)

(出所)Monthly Digest of Singapore.

2.文献(1),p.3.

(4)

易と並ぶ2大生産部門である。生活物資のほとんどを輸入に依存するため,増加人口を扶 養し,所得水準を引きあげていくためには必要な生産物の国内加工の度合を高め,外貨の 節約をはかる輸入代替工業の育成,さらには積極的に外貨を獲得してゆく輸出指向型工業        3

の育成,発展が今後の課題である。

 シンガポールの製造業のGDPに占める比率は,196ユ年の8.3%から1972年には23.5%

に達し,東南アジア諸国の中ではその工業化比率はめざましい。こうした工業発展の成果 は経済開発計画と並行して行なわれた国内民間投資,および外国資本の導入政策として経 済拡大奨励法にもとつく投資環境の整備による所が大きいといえる。工業投資にしめる外 国資本のシェアは高まる傾向にあり,工業生産も技術集約的な高度化に門々に向っていて,

その結果付加価値が年々上昇している。今後とも工業部門でひきつづき高度成長が;期待で

第5表 製造業生産高 (従業員10人以上) (単位:1,000Sドル)

1967 1968 1969 1970 1971 1972 合

食 飲

繊 装 は 木 印 化 石 油

ノf

  身   き

 ● コ 刷 ・ 出

ノレ

・石 炭 製 ム  製

三 品 料

維 三 物

鰭 骨 品 品 その他のプラスチック製品 基

金 機 野 卑

礎 属

気 送

金 製 機 機

属 品 武 器 器

} ユ,687.2  325.6  54.9  92.5  8.4

51.9 91.1 68.5 113.8 365.4

   28.7

48.5 103.2 30.3 42.2 93.5

} 2,175.7  357.2  58.2  87.8  29.3

75.1

ユ28.2 68.5 ユ50.7  ***

540.2   * 34.8

6ユ.7 128.5 4L 6 53.2 135.5

3,213.9

 401.2   59.4   90.7   47.8

}97・1

 ユ60.3   78.3  156.9

1,ユ32.6

       47.0

72.1 159.1 49.8 122.7 259.5

3,89LO  551.4  66.4  97.6  84.4  86.0  17.9

 ユ86.5

 98.3  U2.6

1,221.8       39.5  35.2  75.5  218.0  74.6  283.0  330.0

4,699.3  577.6  70。1  94.0  128.5  122.6  23.7  ユ99.0  117.3  133.7 1,553.5   **  44.2  49.6  79.0  222.6  88.0  400.9  429.9

5,412.9  541.0  70.5  99.4  195.6  166。1  25,2  223.4  129.ユ  142.6

L66L5

42.9 90.7 237.3 1ユ1.4 688.1 520.1

(注) *はき物を含む  **はき物を除く  ***石油のみ  1972年は速報数字

(出所)YearbQok of Statistics Sin.gapore Monthly Digest of Statistics.

きる分野としては,石油精製,電子部品,造船および船舶修理があげられる。こうした産 業技術の高度化ないし組織化にあたってシンガポール経済が直面している最大の問題は,

熟練労働者の不足であり,この問題の解決が工業部門の今後の拡大をかなり左右するであ   4 ろう。一方,シンガポールはその経済の工業化の面で大きな利点を有している。それはこ れまで長年にわたって中継貿易港として各種の近代的諸施設を建設し,そしてこれらを巧 みに運営する経験と技術を習得してきたことである。これらの諸要素は経済の近代化,工

3.文献(4),P.529.

 4.文献(1),p.2.

(5)

 シンガポール経済の対外的側面       51       5 業化にとって不可欠なものであり,しかも長期的にのみ育成可能なものである。

      6  2.産業構造と経済発展一1960〜ユ969年一

 すでに前節でのべたように,シンガポール経済の高度成長パターンは,中継貿易から工 業化へと特長づけられる。こうした移行をわれわれは1960年代の経済発展を検討しながら,

より具体的にみてゆこう。1960年代の経済発展は前半(1960〜ユ967年)の緩慢な成長期と 急速な成長の後半(1968〜⊥969年)とに分けられよう。

 ユ960年代前半(1960〜1967年目における緩慢な経済成長の主たる原因としては4つあげ られる。第1にはシンガポールの政治的不安定,第2に外国貿易の停滞,第3に私的投資 の第3次産業活動への集中,第4に公共投資の非生産的部門への集中である。この期にお          第6表  シンガポールの経済成長,1959〜1969年

1959 1960 1961 1962 1963 1964

G D P 総  劇対前年

(100万Sドル)変化率(%)

     旨 1,980 2,046 2,307 2,437 2,630 2,700

3.3 12.7 5.6 7.9 2.7

一人当り所得  (Sドル)

1,260 1,250 1,367 1,406 1,476 ユ,445

変化率(%) 対前年

一1.0 9.4  2.9  5.0

−2.0

資  本  形  成

(畿万S細ヒ蛎資本瀦DP

150.6 142.4 235.1 262.1 327.3 421.0

一5.4 65.1

1L5

24.9 28.9

7.6 7。O lO.2 10.8 工2.4 15.6

!960〜1964

 年平均 (7。2)

(2・9)1 (35.9)i

1965 1966 1967 1968 1969

3,043 3,347 3,609 4,091 4,833

12.7 10.0 7.8 13.3 18.1

1,636 1,749 1,845 2,058 2,396

13.2 6.9 5.5

1L6

16.4

475.8 473.3 518.3 735.9 918.5

ユ3.0

−0.5  9.5 42.0 24.8

15.6 14.1 14.3 18.0 ユ9.0

1965〜1969  年平均

(・5.5)1 (9.3) (18.6)

   (出所)Economic Developrnent Board, Annual Reports,1963−1967 Department       of Statistics, Monthly Digest of Statistics SICCEB, December,1969;

      Apri1,1970.

      1970Budget Speech,3〃碗5丁翻65, March 10th,ユ970.ただし文献(9),

      p.66より引用

けるシンガポールの貿易取引は,経済成長にほとんど影響を与えない程停滞気味であった。

それは1つにはシンガポールの外国貿易のかなりの部分をしめる対インドネシア貿易の低 下(1962年以降)そして1965年以降の対マレーシア貿易の不振が原因である。

 すでに指摘したように,最近のシンガポール経済の順調な発展は高い資本形成率に依る 所が大きい。したがってこの10年間前半において比較的緩慢な成長にとどまったいま1っ の理由は資本形成のパターンに求あられよう。私的投資にせよ,公共投資にせよ,経済成

5.文献(4),P.549.

6.文献(9),pp.65〜75.に負う所が大きい。

(6)

第7表  シンガポールの外国貿易 ユ957〜1969年

年 1957 1958 1959 1960 1961 1962 1963 1964b

1965 b

1966b 1967b 1968b

 総       額

(1957年:7,570百万ドル)

ユ969b1

100.0 90.9 97.1 99.8 96.1 98.5 102.4 82.6 90.0 98.3 1Q4.3 118.5 145.1

総     量a

(1957年:17.87千トン)

ユ00.0 88.0 79.0 84.0 102.0 118.0 121.0 100.0 119.5 149.0 169.5 193.1 212.3

   (注) a Volume of cargo handled in Port of Singapore Authority wharves        and roads, both discharged and loaded.

      b Excludes trade with Indonesia.

   (出所) Economic Developrnent Board Almual Report,1964, P.1        Monthly Digest of Statistics, April 1970, Tables 7.2,8.5        ただし,文献(9),p.67より引用

長に直接影響を及ぼす生産的部門にそれらがどれだけふり向けられたかが問題となる。私 的投資は依然として伝統的な植民地的投資集中パターンを示した。すなわち,相対的に非 生産的な第3次経済活動に私的資本の大半が投下されたのである。「膨大な資本蓄積がな

されたのは事実であるけれど,それは確固たる経済発展要求にこたえるにはほど遠いほど        7

著しく非移動的であった。」

 中継貿易の不振もその一因であるが,こうした投資の集中が1960〜ユ967年期における 低い経済成長率を説明しうる決定的理由とみなすことができよう。一方,公共投資もその 例外ではない。この期における公共投資は,主として住宅建設ならびに教育投資であり,

産業基盤施設(ind1ユstrial infrastructure facilities)の創出にはさほどの注意が払われ なかった。ちなみに1955〜1965年の10年間において,住宅建設投資はシンガポールの総 固定資本形成の22%をしめたのである。これは資本形成諸形態の中で資本・産出高比率に おいて最高水準のものである。シンガポール政府の公共住宅建設計画によれば,その比率 は17:1であった。換言すれば1ドルの所得創出にユ7ドルの投資を要することになる。住 宅開発局(Eousing and Development Board)の建設計画は,その第1次期において はかなりの英断をもって大規模なものであった。

 これによってシンガポールは著しい資本形成の増加を達成しえた訳であるが,他との関 連において経済成長にほとんどインパクトを与えなかったのである。とはいえ,住宅建設,

教育面での公共投資の成果は短期的には評価しがたい性格をもっている。産業基盤施設へ

 7.文献(9),P.68.

(7)

シンガポール経済の対外的側面

53 の公共投資の中で注目すべきは,1961年から着手されはじめたジュロン工業団地(Jurong        8

industrial estate)の開発である。この種の産業基盤投資の懐妊期間は少なくとも5年で ある。そして今日ではシンガポールは,低廉かつ良質の労働力や外国資本に対する財政的 優遇措置といった優位に加えて,整備された産業基盤施設の利用可能性の点でも外国の関 心を一層ひきつけている。

 以上の理由をもってシンガポール経済は,1959〜64年ないし67年において比較的低い 経済成長率に甘んじてきたのである。第6表が示すように,GDPは1959〜1964年に年平 均72%の増加を示したにすぎない。しかし,GDPの増加率の低さは必ずしも資本形成 の低調を意味しないことは明らかである。資本形成は年率約36%で増加し,対GDP比率 ではわずか5力年で倍増したのである。こうした増大の多くは公共,私的両部門における 住宅建設開発への集中と工業基盤施設の拡充を反映するものである。

 それに対して次の5力年(1965〜1969年)におけるGDPと資本形成の動きは対照的 である。資本形成が比較的緩慢な増加を示したにもかかわらず,GDPは著しく拡大した。

とくに1967年以降のシンガポール経済の拡大は顕著であった。GDPは年平均ユ5.5%で増 大し,一人当りタームにおいてはその増加は年平均9.3%であった。しかし,その間資本 形成は先の5力年間に比べてより低い増加にとどまり,1965〜1966年にかけては絶対的 な低下さえみせたのである。この資本形成の鈍化は3つの要因に基づく。第1に分離後 シンガポールとマレーシアとの間での政治的緊張が持続し,工業財共同市場への期待がう すれるにつれ,工業部門における私的投資が減退したこと。第2に1964年の投機ブームの あおりをうけて,1965年以降私的住宅開発が鈍化傾向をたどったこと。第3に産業基盤施 設の建設が1966年越わずかであるが,減少したことである。一方これに反して,1967〜

1969年にかけて資本形成にかなりの増大がみられた。1968年には前年比42%増,1969年に おいても約25%の増加を達成し,対GDP比率ユ9%の水準におよんだ。資本形成率の急速 な上昇は,1つには観光施設建設ブーム,いま1つは資本集約的な工業開発の急速な進展 に依るものである。1967〜1969年において産業機械の輸入は150%強の増加を示し,そ の規模は,1967年の6,380万ドルから1969年には16,200万ドルに拡大した。そしてこの輸 入資本設備の大半はシンガポール国内に留保された。観光開発はほとんど国内資本で賄な われたが,新しい製造工業の開発ないし建設は主として米国,日本などの外国資本による 所が大であった。工業化の進行に伴ない,1960年代に入って工業の発展は順調な軌道にの りはじめたけれど,より本格的な広範な工業化はコ965年以降のことである。それは輸出市 場に強い関連をもった工業の発展という形であらわれている。

 1960年前後半に移ろう。後半の期間においてはその前半に比べて資本形成の増大は著し

8.ジュロン工業団地はシンガポール最大のもので,70年6月末現在では面積7,000エーカー,工場

  数317,従業員総数3万6,000人の規模に発展している。シンガポールの工業は工業団地に集中し

  ており,他にチャンギー工業団地がすでに1,000エーカー以上が開発され,将来はジュロンに匹

  敵しうる新しい工業団地として期待されうる。ジュロンは最終的には1万4,000エーカーにまで拡

  張される予定である。

(8)

く,その結果GDPは1969年には18.1%の増加であった。この成長率が1967〜ユ968年に おける日本のそれにほぼ匹敵しうる水準であることは注目に値する。さらに一人当りG:N

Pは16.4%増,額にして年三2,400ドルの水準に達した。別の指標からもこの2年聞にお けるシンガポール経済の急速な拡大がうかがえる。すなわち,シンガポールの外貨準備高 は1969年末には1965年末時の4倍の水準に達したのである。額でみれば,それは631百万

ドルから2,445百万ドルの成長であった。それは主として現在低下傾向にある中継貿易の 一時的拡大によるものである。とはいえこのことをもってシンガポールの経済的自立(対 外的な意味での自立)をうんぬんすることは正しくない。

  皿.外 国 貿 易

      9  1.国際収支と外国貿易

 シンガポールでは最近銀行業務の著しい拡大がみられ,1972年においてはGDPに対す る金融部門の寄与率は26.6%であった。これは外資の流入に起因する。近年アジア・ダラ ー市場としてのシンガポールの躍進はめざましく,今後ともシンガポールがアジア・ダラ ー市場として成長をつづけることは確かであろう。アジア・ダラー市場は1968年バンク・

オブ・アメリカが中心地となり,アジア地域の産業開発資金調達に役立たせる目的で創設 された。従来,短期金融市場としての性格が強かったアジア・ダラ」は長;期金融へ転換を はかり始め,今ではシンガポールが国際金融市場として自立する段階にきている。アジア

・ダラーの資金量を示す各銀行のACU(アジア・ドル特別勘定)の総計は,69年末に1億 2,500万米ドルであったものが71年末には10億米ドルと飛躍的な発展をみせ,さらに72年 末には一年間で3倍の規模となり,30億米ドルをこえる市場規模に達したものとみられる。

最近では共産圏諸国もアジア・ダラー市場を重視しはじめ,金融市場の発展,整備に大き        10

な成果がみられたようである。東南アジアの金融センターとしての発展は比較的最近のこ       第8表  商業銀行資金ポジション(期末)      (単位:ユ00万Sドル)

         1967     1968     ].969     1970     ],97].     1972   1973●2月

預 金残高

貸付・割引残高

 製造業*

 建  設  一般商業

1,828.2 1,437.5  244.5  49.6  493.5

2,309.7 1,714.8  370.9  41.1  518.6

2,745.4 2,212.3  459.4  48.1  629.7

3,・94.913,745.8 2,722.113,169.7  754.8     836.8  49.7    54.0  678.6     818.5

4,736.7 4,284,6 1,079,9

 79.5  988.2

4,953.6 4,851.6

(注) *鉱業を含む,一印は不明。

(出所) Yearbook of Statistics Singapore, Monthly Digest of Singapore.

とであるから,シンガポールの外貨準備に与える効果は評価しがたい。しかし,長期的に は国際収支にかなりの貢献をしうるものと期待される。

9.この節は文献(9)に負う所が大きい。pp.105〜116参照。

lO.文献(1), P.14.

(9)

シンガポール経済の対外的側面

第9表 国際収支推計

55

(単位:100万Sドル)

1966 工967 1968 1969 1970 1971 1972 経 常 収 支

 貿易収支

 貿易外収支

 移転収支(純)

資本収支(純)

 民間(長期)(純)

 政府(長期)(純)

誤 差 脱 漏 総 合 収 支

一315

−657  705

−45  51  94

−43  133  187

一227

−910  722

−39  113  104

 9

 473  359

 一476

−1,170

 フ35  −41

 271

 ユ22

 149  753  548

 一699

−1,392

 732

 −39

 170  145

  25

 994  465

一1,905

−2,619

 738  −24  444  365   79

 1,922

 461

一2,662

−3,339

 704

 −27

 462  389   73

 3,045

 845

一3,402

 624  580

 566

(注) 一印は不明。

(出所)Yearbook of Statistics, Singapore.

90 80

 70  60  50 徳 S 40一

と30  20

10

輸入

輸出

バランス 90 80 70 60

−50

40 30 一20

−10

1966 1967 1968 1969 1970 1971 1972(年)

第2図 シンガポールの輸出入すう勢

 シンガポールの貿易収支は第9表が示すように慢性的赤字傾向にある。それゆえ,シン ガポールの国際収支困難は,この貿易収支赤字を貿易外収支の黒字や対外借款などによっ てどれだけ埋ああわすことができるかに帰着する。もとよりシンガポールの国際収支表に は対インドネシア貿易が統計化されないので,商品貿易,サービス収支についての的確な 把握は困難である。だが商品貿易収支の赤字は対インドネシア貿易を含めたとしても,そ れ程の修正をうけないであろう。公表されている収支表からは,貿易収支の慢性的な赤字 を基地,港湾,および観光収入などの貿易外収支の黒字分と在外資産の引出し,ないしは 対外借款で補填している傾向を知ることができる。この商品貿易の赤字要因については,

       へ 以下のように指摘される。第1にシンガポールの工業部門はいまなお工業財の国内需要を

(10)

第10表  シンガポールの主要商品別貿易,1964年と1969年  (単位1100万ドル)

商 品 構 成

Food&Live Animals Beverages/Tobacco Iuedible crude materia1(exc1. fuels)

Mi1ユera1 Fuels,

1ubricants, etc.

Anirnal&Vegetable Oils and Fats Chemicals

Mfctred goods class−

fied by material Machinery&Trans−

POrt eqUipment Misce11, Mnfctred articles

Commodities&

tranSaCtiOnS nOt classified according to

kind

輸  1964

入   輸   出

総馴犠引耳癖そ赫

705.5 61.6 631.9 469.7

37ユ 163.5

556.1 494.7

282.7

75.9 20.3

1.8

18.2 13。5

1.0

4.7

16.0

14.2 8.1

2.2 421.0

42.4

78L4

362.6

44.0

100.2 359.2

284.1 137.7

239.3

152

1.5

28.2 13.1

1.6

3.6

13.0

10.2

5.0

8.6

輸 入

1969

輸 出

総額物劉総劉そ赫

907.1 129ユ 889.6 983.4

73.6

306.1 1,313.3

LO89.0  428.8

123.6 14.5

2.1

14.3

15.8

L2

4.9

21.0 17.3

6.9

2.O  525.4  73.O

l,655.0

930.8

84.4 138.6

417.2 349.6 2工2.2

354.2

工1.ユ

1.5

34.9

19,6

1.8

2.9

8.8

7.4

4.5

7.5

Tota1 3,4787 1・・i2・77Lgi …i6,243.6 …14・74・・4 100    (注) インドネシア貿易を除く

   (出所)SICCEB, May 1970, PP.57−58.ただし文献(9), P,106より引用       1

みたすに至っておらず,シンガポールの工業財輸入が第10表のように絶対的にも相対的に も増大している。第2に工業製品の価格は概して原材料の価格を上回り,またその価格変 化も工業製品についてより高い。シンガポールの原材料輸出は全体の3分の2以上を占め る。第3に中継貿易の性格上,輸出額を上回る輸入がおこなわれる傾向にあり,第4にシ ンガポールは産油国との貿易において,その収支が依然として不利である。

 シンガポールの商品貿易収支の赤字を補填して国際収支の均衡を維持させているのは,

中継貿易港としてのサービス収入,観光収入,英軍基地収入,さらに外資の流入などであ る。英軍基地支出は長年にわたって,年4億〜6億ドルの規模でシンガポールのGDPの       拡大に貢献してきたが,1975年末には完全撤退することになっている。また観光収入はシ ンガポールの貿易外収支に対する貢献の度合を高めてはいるが,観光産業は元来,極めて 独立的な部門であって,他の赤字補填要因と相互関連のない性格のものである。シンガポ ール経済は,エつに先進諸国によるサービス・流通施設の利用,2つにマレーシア,イン

ドネシアを主要相手国とする中継貿易によって繁栄してきた。シンガポールには東南アジ ア地域の貿易,金融の中心として,銀行,保険,海運,港湾施設,経営代理店など各種の       11

サービス機関が集中しており,これらのあげる収入はきわあて大きい。貿易については第

11.文献(4),P.532.

(11)

シンガポール経済の対外的側面 57

第11表  シンガポールの近隣諸国ないし他の諸国との外国貿易,1959年と1969年       (単位:%)

地 域

イ ン  ド ネ シ ア マ   レ  一   シ  ァ

タ イ/インドシナ 地域サブ・トータル*

そ    の    他 ト   一   タ   ル

1959

輸入輸出隔出入

29.1 25.8  4.6 59.7 40.3 100.0

 3.8 25.1  4。4 33,9 66.1 100.0

17.3 25.5  4.5 47。6 52.4 100.0

1969

輸入輸出1轍入

21.4 17.6  2.4 41.5 58.5 100.0

14.4 19.6

U.7

47.0 53.O lOO.0

ユ8.5 18.5  6.3 43.7 56.3 100.0

   *ブルネイを含む。

(出所)文献(9),p. llOより引用

1ユ表が示すように,シンガポールのインドネシア,マレーシア両国との貿易は,1959〜

1969年の動向において貿易総額比でみるかぎり,対インドネシア貿易がわずかに増大して いるものの,おおむね低下傾向にあるといえる。中継貿易の低下パターンは,マレーシア

躬簾罷欝嫌∵黒藻芋笑繍窮鷲野晒1を酵駕窮

個の市場への供給という高コスト操業を余儀なくされたのである。

 さて,ユ960年にはGDPにしめるシェアがユ8.6%であった中継貿易が,1972年には9.5

%と10%台をわる程の不振をたどっている。この不振の理由としては次のような点が指摘 される。第1にもとよりシンガポール経済にしめる外国貿易の役割は,かなり大きい。こ のことはシンガポールが伝統的に近隣…諸国の一次産品を先進諸国へ再輸出する反面,先進 諸国の工業製品を輸入して近隣i諸国へ中継輸出する東南アジア諸国と先進諸国との間の貿 易の中継基地であったことに由来する。しかし,最近ではGDPに貢献する貿易の役割は 年々低下している。こうした貿易のウエイトの低下は,中継貿易の持続的な減少に起因す るものであるが,中継貿易の不振の理由としては,次のような点が指摘される。第1に,

ゴム・パーム・オイルなど一次産品の国際価格が低落したに伴ない,かつては総輸出額の 40〜50%をしめていたマレーシア,インドネシアとのそれらの貿易が減退したこと。第2 に世界貿易構造の変化によって,先進国・低開発国間の貿易が相対的に低下していること。

第3にマレーシア,インドネシアをはじめとして近隣…諸国が,これまでのシンガポールを 経由した貿易取引から,自国の港をつかう直接貿易の促進につとめていること。第4に長

;期的にみれば,近隣諸国の工業開発ないし工業化が進行するにつれ,ますますシンガポー

ルを中継しない直接貿易をおこなう傾向が強まると予想される。さらにまた工業化政策の

促進によって,先進諸国の企業進出および経済援助が活発化するにつれ,これに伴なう機

械設備,原材料部品など資本財,中間財の輸入増加も先進諸国との直接貿易を今後とも促

進させる効果をもつであろう。

(12)

 このような中継貿易に対する経済依存度が弱まっているにもかかわらず,シンガポール の外国貿易依存度は必ずしも低下していない。けだし,中継貿易にかわるシンガポール経 済の新しい推進力は輸出指向型工業の創設に求められるのであり,その成果はまだ小規模 ではあるが国内製品の輸出増大となって現われはじあている。シンガポールの貿易形態を 類別すると,シンガポールの貿易は,輸入してそれを再輸出することにより利ざやをかせ ぐ貿易取引,すなわち中継貿易一加工貿易と輸入したものをそのまま再輸出する単なる中 継だけの非加工貿易からなる一の他に,留保輸入および国内生産物輸出の3形態で構成

されている。留保輸入(Retained Import)は総輸入のうち国内使用にあてられるべき部 分である。したがって工業化政策の商品貿易面でのかかわりは,工業化に伴なう原料品お よび機械設備の輸入増を,所得水準の上昇による消費財輸入増に加えて中継貿易による収        12

入と国内生産物の輸出で賄ないうるか否かという問題として生じてくる。

 貿易部門の内部構成は工業化がすすむにつれ,中継貿易から直接貿易へと移行しつつあ る。ちなみに197ユ年の貿易(輸出入)増加率9.6%のうち中継貿易の増加寄与分は3.6%

で,国内生産物輸出のそれは6%であった。この結果,GDPにしある比率は中継貿易が 1970年の12.○%から71年には10.9%に低下したのに対し,国内生産物貿易は両年をつうじ

ほ触回している・近年では製造羅のうちおよそ4・繍出に向けられるに至

っている。

      14

 さてシンガポールの1960年代における外国貿易は次のように要約されうる。第1に貿易 収支のより深刻な赤字基調である。第12表から明らかなように,赤字幅は1960年の8%か

第12表  シンガポールの貿易収支と貿易赤字,1960〜1969年 (単位:100万ドル)

年1輸 入  輸 出i貿易赤字 赤字幅(%)

1960 1961 1962

!963

1964 1965 1966 1967 1968 1969

(1969)

 4,077.7  3,963.3  4,035.8  4,279.0  3,478.7  3,807.2  4,065.4  4,406.4  5,083.8  6,243.6

(7,943.6)

 3,477.ユ  3,380.5  3,416.8  3,474.5  2,771.9  3,004.1  3,374.0  3,490.5  3,890.7  4,740.7

(5,540.7)

 600.6  582.8  619.0  804.5  706.8  803.1  691.4  915.9

 1,193.1  1,502.9

(2,402.9)

 7.9  7.9  8.3 10.4 11.3 11.8  9.5 12.1 13.3 13.7

(1.79)

  (注) ユ964年以降は,インドネシア貿易を含まず。1969年の(数値)は,インドネシア貿      易を含む推計値である。

  (出所)Monthly Digest of Statistics,1964〜1970.5〃読5丁伽65,6th March,1970.

      ただし,文献(9),p.ユ05より引用 12.文献(4),p.531.

13.文献(1),p.23.

14.文献(1),pp.22〜29参照。

(13)

 シンガポール経済の対外的側面       5g らユ969年には約15%の水準に達し,貿易外収支によってカバーしきれない規模であった。

第3に東南アジア諸国から先進諸国へ,そしてマレーシア,インドネシアへと貿易構造の 国別構成が変化した。第4にこうした貿易方向の変化と相まって,近隣…諸国からの輸入シ

ェアが低下する一方,近隣諸国への輸出シェアが増大した。それと併行して地域外貿易に おいては全く逆の現象がみられた。すなわち,非東南アジア諸国からの輸入シェアは拡大 したものの,輸出シェアは縮少した。最後に指摘しうるのは,対外的な要因として伝統的 な英国,マレーシアの経済的影響力の支配から米国,日本,インドネシアへとその重点が 移行したことである。

 商品貿易収支の赤字は,これといった資源がなく工業が未発達で,不振とはいえいまだ 中継貿易に依存しているシンガポール経済の構造的要因によるものである。輸出面では近 隣…諸国の直接貿易の推進,そして輸入面では工業化に伴なう機械部品,建設資財などの需 要の増大と所得水準の上昇に伴なう消費財輸入の増加を考慮するならば,今後ともこの赤 字傾向はつづくものと考えられる。さらに貿易外収支の中心項目である基地収入が撤退に よって著しく減少するであろう。1970年代前半の経済成長をスロー・ダウンさせうる以上 のマイナス要因は,結局輸出産業育成による国内製品の輸出促進,積極的な外資の導入な どをつうじて,貿易収支および資本収支の赤字補填能力を高めることにより克服せねばな らないだろう。

      14

2.貿易構造

  ① 輸入の国別・商品別構成

 シンガポールの主要相手国別・商品別輸入額は次の表のとおりである。国別構成をみる と,シンガポールの輸入は特定の数力国一西マレーシアと先進諸国一への集中に特長がみ

第13表  シンガポールの相手国別輸入 (単位:100万Sドル)

1969 1970 1971 1972

西マ レ 一 シ ア

東マ レー シア 日       本 米       国 英       平 中       国 ク ウ ェ 一  ト オース トラ リア 西       独 台       湾

1,089.7  306,6

!,018.9  494.2  421.3  418.5  347.9  241.3  212。2  81.8

1,117.5  286.1 1,458.0  814.8  569.0  385.5  360.5  340.5  253.2  126.8

L138.7  304.8 1,699.5

LlO2.3  633.5  406.7  392.3  367,7  339.8  148.6

L180.6  327.O l,874.7 1,339.7  635.9  399.2  n.a.

 385.9  368.8  n.a.

輸入総副 6・243・61 7・533・81 8・664・・1 9,537.9

(注) 輸入総額はその他諸国を含む。

(出所)Monthly Digest of Statistics. Yearbook of Statistics, Singapore.

(14)

第14表  シンガポールの商品別輸出入 (単位:100万Sドル)

食料 品・動物 飲料・タ バ コ 原料(鉱物性燃料と 食用を除く)

鉱物性燃料・潤滑油

動植物性油脂

化   学   品 原 料 別 製 品

機械・輸送機丁

半   製   品 そ   の   他

・96glユ97・巨97■・972

 525.4  73.O L655.0  930。8  84.4

 ユ38.6

 417.2  349.6  212.2  354.5

 549.6  71.5 L430.3 822.7 140.2 128.9 423.0 520.8

.248.Q

420.8  541.9  69,0

1,190.3

1,145。7

208.0 184.6 534.6 740.5 343.4 413.3

 554.3  65.9

1,132.5

1,168.0

 150.7  218,8  595.6 1,220.6

 497.0  545.9

輸 入

ユ969}・9・・1・97ユiユ972

907。1 129.1 889.6 983.4 73。6 306.1 L313.3

1,089.0

 428.8  123.6

 950.4  127.8  858.9 1,014.9

 126.0  386.9 1,650.9

1,718.5

 538.7  160.9

 984.1  137.3  781.6 1,240.7

 197.0  437,2 1,848.9

2,209.0

 644.8  183.4

1,Q36.6

 128.2  822.5 1,385.2

 148.9  501.7 1,914。5

2,648,2  728.0  224.1    (注) ユ972年忌輸出総額6,149,300,000Sドル

         輸入総額 9,537,900,000Sドル    (出所)Monthly Digest of Statistics, Singapore.

い出される。とくに米国からの輸入の増加は著しい。1972年の実績では,日本,米国,西 マレーシア,英国の上位4自国で輸入総額の52.7%をしあている。そのうち先進諸国との 貿易ではすべてシンガポールの入超となっている。近隣…諸国の中で最も関係のふかいマレ 西一シアからの輸入は,中継貿易不振のため近年頭打ちであり,1970年以降は西マレーシ アにかわって日本が第1の地位をしめているのが注目される。対インドネシア貿易は1966 年の貿易再開後拡大しはじめ,最近では1963年のコンフロンテーション以前の水準を上回

るまで回復した模様である。

 1972年の輸入の商品別構成は第工4表で示されている。主たる輸入品目は機械・輸送機 器(全体の27.8%),原料別製品(20.ユ%),鉱物性燃料・潤滑油(14.5%)などである。

注目されるのは第1位をしめる機械・輸送機器の輸入動向である。それは!967年時に比べ,

      第15表  シンガポールの主要貿易商品        (単位:100万Sドル)

輸 出(再輸出を含む)

ll

輸 入

1・96gi・97・1・97・1・97211 [・9691197・1・9坤972 生   ゴ  ム

機械・輸送設備 香  辛  料

コ  一  ヒ  一

製     材

1,403  350

 94

 111

 47 L162  521  126

 92  54

943 741 123 65 76

8431 1,221  125

 46 ・・51i鉄

生   ゴ  ム 機械・輸送設備    米 綿  織  物    鋼  板

6541 1,089  113  196  105

 564

L719

 103  188  149

 469 2,209

 89

 154  135

 477 2,648  126  151  158

(注) 1972年の輸出総額,輸入総額は第14表の(注)を参照。

(出所)Monthly Digest of Statistics, Singapore.

(15)

シンガポール経済の対外的側面 61 1972年の総輸入額は3倍強の水準に拡大した。製造品の輸入は,第1に先進諸国の工業製 品の中継貿易の地位の低下,第2にシンガポールの工業化に伴なう国内需要の増大を背景

として,輸出に比して著しく伸びている。また激増している産業機械類(電気機器を除く)

の輸入のうち留保輸入分は,70年においては約3分の1であった。

  ②輸出の国別・商品別構成

 シンガポールの対マレーシア輸出は依然としてかなりの高水準を維持してはいるが,マ レーシアの直接貿易規制政策と新税制措置によって影響をうけ,1972年にはシンガポール の最大貿易相手国の地位は,西マレーシアにかわって,米国と日本がしめるに至った。輸 出の国別構成は輸入に比べるとほとんど特化パターンを示していない。第1位米国(1972 年輸出実績の15.4%),以下西マレーシア(14.8%),日本(6.4%)香港(6.1%)とつ づいている。統計では明らかにされていないが,南ベトナムへの石油製品の輸出が行なわ れている。それと同様に,対インドネシア輸出はユ億米ドルに達するものと推定されるが,

今後のインドネシアの工業発展に伴ない,国産品の輸出促進と直接貿易が行なわれる傾向 にあるので,対インドネシア輸出はまず繊維製品をはじめとしてかなり落ち込むものと推 測される。

第16表 シンガポールの相手国別輸出 (単位:100万Sドル)

1969 1970 1971 1972

西マ レ 一 シ ア 東マ レ 一 シア 米       国 日       本 瓦       国 香       港 ソ       伊 欝ース トラ リア 中       国 西       独

タ         イ

779.5 3Q8.4 508,5 336.3 273.7 工43。0 129。1 123.0 174.8 114.6 177.8

688.7 351.0 527.3 361.6 324.4 193.9 142.4 160.ユ 69.4 136.2 156.7

841.8 386.8 634.8 379.8 333.6 289.0 115.7 257.3 46.5 113.8 159.4

907.2 370.1 949.3 392.4 339.4 373.4 101.6 294.9 57.6 171.4 214。2

輸出総劉 4・74…i 4・755・81 5,731.3 6,!49.4

(注) *輸出総額にはその他を含む。

(出所)Monthly Digest of Statistics, Singapore.

 国内製品の輸出は最近とみに増加しているが,シンガポールの輸出はなおも再輸出比率 の高い構造をもっている。商品別シェアは1972年においては,機械・輸送機器20.O%,鉱 物性燃料,潤滑油類19.O%,原料ユ8%となっている。原料の主品目は生ゴムであり,鉱物 性燃料の大半が石油製品でしめられる。いまなおこの2品目が中継貿易の2大品目である

ことに変りはない。一連のゴム価格低下のため,ユ969年以降原料品目の輸出額は減少して

いる。日本などの合成ゴムとの不利な競争,マレーシア等近隣…諸国の直接貿易の傾向から

(16)

考えて,シンガポールのゴム輸出が次第に低下してゆくことは否めない。これに対し,石 油製品の輸出はベトナム戦争のデスカレーションの影響という短期的マイナス要因もあっ て一時的な減退をみたけれど,三々に回復してゆくだろう。

  ③わが国との貿易

 1973年のわが国とシンガポールとの貿易は,輸出が前年比32.6%増となり,東南アジア への輸出の4位をしめた。一方輸入は前年比84.4%増と激増した。この結果貿易バランス は,一層わが国の出超傾向を強めた。輸入の激増はシンガポールの工業化の進展に伴なっ て,加工製品の輸入が増加しているためであり,73年は2.6倍の増加を達成した。なかん づく電気機械を主とする機械機器が6L8%増,繊維製品はさらに5。1%と増加しているの が目立っている。

        第17表  日本の対シンガポール貿易       (単位:100万米ドル)

年 睡 顧1輸 出  輸 入  バラ ンス

1963 1964 1965 1966 1967 1968 1969 1970

ユ971

1972

134 141 157

ユ72 196 270 379 510 622 823

112 114 124 ユ42 ユ60

209 313 423 508 702

22 27 33 30 36 61 66 87 114 121

十 90 十 87 十 91 十112 十124 十148 十247 十336 十394 十581    (出所)外国貿易概況

 しかし,長期的にはシンガポールからの輸入の商品構成は,ほとんど変化がみられない。

ちなみに1960年と1972年を比較すると,構成比は原料品が2L8%から4.1%へ,鉱物性燃

        第18表  わが国のシンガポールからの輸入     (単位:1,000ドル)

商品懐

旧 別

総 食 原

鉱 上

天 物 石 機 繊

 料  料  然  性  油 記  以  械  維

燃 製 機 製

計 品 品 ム

料 回 外 器 品

再輸入,特殊取扱品

1971 1972

113,892  2,065  7,761  1,561 93,637 93,637 10,429  4,367   544  1,204

ユ20,939  4,110 10,557

 685

86,560 86,560 19,712 10,794

 L928

 1,597

1973 223,002  7,425 15,904  1,977 148,335 148,335 51,338 17,468  9,785  3,634

対前年比(%)

184.4 180.7 150.6 288.6 171.4 17工.4 260.4 ユ61.8 507.5 227.6

(出所)通商白書

(17)

シンガポール経済の対外的側面 63 料(石油製品)が70.1%から7L6%へというように鉱物性燃料のウエイトが若干高まって       15

いる動向がうかがえるにすぎない。

 輸出においては商品別で機械機器が33.9%増で輸出の47.7%をしめ,その増加率も大き く49.2%であった。輸送機器が船舶増加を中心として42.8%増となり,一般機械,電気機 械も増加した。わが国の対シンガポール貿易が大幅な出超であるのは,中継貿易のウエイ

トが低下しつつあるとはいうものの,シンガポールの国内生産物の輸出がいまだ少ないこ とに起因する。わが国の重化学工業品の輸出が次第にウエイトを高めているのに対して,

輸入のほとんどが依然として原燃料である。世界貿易の基本的傾向からみれば,前者が後 者を貿易拡大幅で上回っている。それゆえ,今後ともわが国の出超幅が拡大することは確

かであろう。

第19表 わが国のシンガポールへの輸出 (単位:1,000ドル)

論「\組

総 食 止

 料  燃 合成 ゴ

石 油 製 工  業 繊  維

出 品 料

ム 品 品 品 非金属鉱物製品 そ  の

重化学工業

化 金

1幾

 学  属

非鉄 金 金属 製

械  機

 般機 電気 機

輸送機

品 品 品 品 鋼 属 品 器 械 械 械 再輸出,特殊取扱品

1971 507,988

12,203  8,114

 521

 4,299 182,207 142,148  8,729 31,329 303,553 24,456 112,048 84,456  8,187 19,405 167,048 69,580 49,626 35,961  ユ,909

1972 701,500

12,471  3,982

 491

 2,784 173,752 125,585 11,324 36,843 501,878 34,703 135,507 93,746  8,585 33,174 331,667 113,244 76,523 123,645  9,415

1973 929,874

18,666  5,406

 810

 3,167 209,052 136,419 16,443 56,188 691,477 50,113 197,395 159,195  8,864 29,334 443,968 ユ25,379 114,601 176,576  5,272

対前年比(%)

132.6 149.7 135.8 165.0 113.8 120.3 108.6 145.2 152.5 137.8 144.4 145.7 169.8 103.2 88.4 133.9 110.7 149,8 142,8 56.0

(出所)通商白書

IV.外国直接投資

 シンガポール経済を支える中継貿易が不振の一途をたどっているため,政府は1961年以 来経済開発局を中心として,経済の自立化,工業化をはかってきている。1960年代初めの 工業化政策は「創始産業法」のもとで,労働集約的産業を中心とした輸入代替工業および

15.文献(1),P.30.

(18)

軽工業化をめざしていた。しかし,1965年完全独立後は,①中継貿易依存の経済構造から の脱却,②マレーシア,インドネシアなど近隣…諸国がめざしている工業化とは別のものに かえる必要性を重視し,シンガポールが東南アジア諸国の中では,世界的な経済用語とな

っている英語が通用する国であるため,教育,技能水準が近隣…諸国より高いという利点を 生かして,工業面では高度工業国家の建設へと方向を転換しつつある。それにはかなりの        16

資本,技術が必要であり,外国資本の進出に対しては種々の優遇策を講じている。

 もとより外国資本の流入は,国情の安定と利潤,とりわけ利潤送還の保証に依る所が大 きい。これらの点でシンガポール政府は外国の直接投資に対して,かなり有利な環境創出 につとめた。すなわち,物理的インフラストラクチュアの整備がはかられ,また財政およ        17

び課税面での優遇措置が施行された。前者はとくに産業団地施設の拡充,電力・ガス供給 の改善,運輸・通信施設の大幅な改善などに重点がおかれた。

 シンガポールの投資環境の有利な面は,中継貿易港としての経験,さらに工業化への基 礎的条件の整備をつうじて各種の近代的サービス・流通施設を容易に利用できる点にある。

まず工業用地はほとんど政府によって造成され,進出企業の取得しやすい価格に抑制され ている。また電力の供給量は年率15%で増加しており,その上近隣…諸国に比べて電力料金 は廉価である。とりわけシンガポールにおける進出企業の立地条件で有利なのは,道路・

港湾施設であり,これらは輸入面では原材料の入手可能性および輸出面では流通の点でシ ンガポールでの立地に優位性をあたえる。労働供給の点では比較的高い教育水準を反映し て,組織化された質の良い労働力が豊富ではあるけれど,賃金水準からみれば,安い労働 力供給という優位をもっているとは必ずしもいえない。1968年,新雇用法と労使関係法の 制定によって,労働条件の整備が着手されて以来労働事情は安定しているものの,米国のIO 分の1,日本の3分の1といわれるシンガポールの平均賃金はたしかに先進諸国との間で はかなりの格差がみられるものの,東南アジア諸国の中では香港についで高賃金の地位に ある。そして急速な工業化に伴ない熟練労働者の不足(現在約70万の労働者のうち,IO万        18

人が外国人労働者である。)と部門聞労働移動の促進は,賃金上昇を加速化せしめている。

 一方,投資環境としての他のマイナス面は,なかんづく原材料の海外依存度が高いこと である。主要部品を輸入にたよっているかぎり,コストの低下には限界があり,労働賃金 の上昇をカバーするのが困難になっているのが現状である。例えば造船業を例にとると,

材料費が総コストの70〜80%をしめる新造船部門に比べて,原材料コストよりもむしろ労 働コストのシェアが高い修繕部門が相対的に価格面で有利なのである。シンガポールの投 資環境においてこの原材料の輸入依存度が高いという特質は極めて重要な意味をもってい る。けだし,高い生産コストの大部分は主として輸入原材料によるもので,多くの場合そ

  16.文献(1),p.14.

  17.これらについては「経済拡大奨励法」(Economic Expansion Incentives Act)を見    よ。oノ;文献(1), PP.40〜53.

  18.文献(1),p.17.

(19)

シンガポール経済の対外的側面 65 第20表  シンガポールに対する国別外国投資額  (1972年6月現在)(単位:100万Sドル)

寸 言 オ 西

     国      国 ラ  ン  ダ      独

618 (33.0%)

344 (18.4%)

328 (17.5%)

53(2.8%)

そ の

港 本 門

 106( 5.7%)

 113(6.0%)

 3!2(16.6%)

1,874 (IOO.0%)

(出所)Far Eastern Economic Review,1973.8.!3

の比率は80%に配している。したがって高い購買力をもつ新市場を開拓するとともに既存 市場の拡大をつうじて,単位生産物あたりの労働コスト節約をはかることが,原材料コス トの引下げ対策となると思われる。シンガポール経済は近隣…諸国の中ではその購買力水準 はかなり高い地位にあるけれど,国内市場規模は小さく,進出企業にとってシンガポール 国内市場向け販売はコスト面で比較的不利である。このように高い原材料コスト,労働力       19

および国内市場の狭さの点で,輸出指向型産業の進出が望まれる。

 最後にシンガポールにおける外国資本進出状況に論を移そう。すでにみたように,シン ガポールの工業発展における外国資本の貢献する度合は,極めて大きい。製造業における 外国投資は1972年6月末で総固定資産総額(累積投資額)で18億7,400万Sドルに達し,

第21表  シンガポールに対する業種別外国投資額(1970年12月現在)

       (単位:100万Sドル)

石       油

金属・運輸機器

電  子  機  器 化       学 繊       維 紙  ・出   版

555 (54.6%)

ユ43 (14.1%)

82 ( 8.1%)

59 ( 5.8%)

37 ( 3.6%)

33 ( 3.2%)

非 食

金 属 鉱 ム・皮  の  計

物 品 革 他

  30(3.0%)

  28(2.8%)

  26 ( 2.6%)

  23(2.3%)

工,O16(100.0%)

(出所)WEIS. Arc Report, No.204

第22表  シンガポールに対する各国の海外投資 (外国投資固定資産総額,製造業)

(1・・万USド・レ)11967 1968 1969 1970 1971

E

英 西

オ フ そ

   計    国    本    C    国    独

タ リ ア ラ ン ダ ラ ン ス の  他

99.0(100.0)

8.8(  8.9)

10.ユ( ユO。2)

48.4(48.9)

27,8( 28.1)

0.3(  ○.3)

20.3( 20.5)

31.7( 32.0)

148.3(100.0)

17.3( 11.7)

ll.1( 7,5)

60.5( 40.8)

33.7( 22.7)

 0.3(  0.2)

26.5( 17.9)

59.4( 40.1)

196.0(100。O)

42.8( 21,8)

ll.8(6.0)

74.2( 37。9)

39.9( 20,4)

 0.3( 0.2)

34.0( ユ7.3)

67.2( 34.3)

325.0(100.0)

112.1( 34.5)

22.2( 6.8)

131.7( 40.5)

65.0( 20.0)

 1.0(  0.3)

 3.0( 1.0)

59.8( ユ8.4)

 2,6( 0.8)

59.ユ( 18.2)

517.6(100.0)

164.8( 31.8)

35。5( 6.9)

20工.2( 38.9)

96.7( ユ8.7)

 6.9( 1.3)

 4.0( 0.8)

90.1( ユ7.4)

 3.3( 0.6)

l16.].( 22.4)

   (出所)シンガポールEDB1971年製造業調査年次報告書

19.文献(1),pp.17〜19参照。

参照

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