論 説
センサスデータによる産業・ 職業別労働移動の推計
藤 岡 光 夫
は じめに
近年、経済構造の変動、さらに不況の長期化、深刻化の中で、就業構造 は大 きく変動 してきた。
いわゆる経済のサービス化や情報化の進展 を背景 に、就業者の産業、職業別構成 も大 きく変化 し、
製造業就業者の相対的減少 と卸小売業やサー ビス業就業者の増大、専門的・ 技術的職業従事者 の 顕著 な増加、等々が進行 して挙た。 とくに、製造業では、女性労働力化が進み、生産作業職 にお ける男性労働者が大 き く減少す る一方で、中高年女性労働者が急激 に増大 してきた。 このような 就業構造の変化 は、衰退分野での新規就業者の抑制や労働力の排出、成長分野での新規労働力の 吸引や転職 による労働力の流入 な どの労働移動 によって もた らされる。 これ らの労働移動 は、産 業や職業分野 によって異な り、 また性別や年齢、地域 によって も異なる特徴 をもつ。 とくに最近 は、男性中高年のホワイ トカラー層の過剰化 と転職の困難性、失業問題が社会的な問題 となって いることか ら、労働移動に関する統計研究の重要性 は一層高 まってきていると考えられる。
一方で、長時間労働や過重労働、ス トレスの蓄積な どを背景 に、男性中高年労働者の健康破壊 の問題が深刻化 し、脳血管疾患や心臓病 などの突然死 をはじめ、最近 は過労 自殺の問題 も広がっ てきている。 この ような過労死 の問題 は、生産作業職や運輸労働者などのブルーカラー層に限 ら ずホワイカラー層 も含 めて各種の産業、職業分野 に広が り、 また、女性や若い年齢層にも問題が 拡大 して きている。筆者 は、 このような労働者の健康破壊 に関 して、共同研究 を通 じて、死亡個 票の再集計 による職業別死亡統計 を用いた国際比較や年齢別死亡分析 を行 ってきた。 しか し、労 働者の健康格差の問題 を考察す る上では、他方で労働移動や就業構造の変化、労働条件の産業、
職業間格差の問題 を検討 しなければな らない。
また、職業別死亡水準の比較 をする場合、 日本の職業別死亡統計の限界 として、死亡時点の職 業や産業 しか調査 されていない問題が あ り、労働 と死亡 との関連 を検討す る上での大 きな制約 と
なっている。すなわち、労働力の流入や流出により労働移動が激 しい場合、その職業分野の死亡 水準 を労働 との関連で説明す ることが困難 になる点である。したがつて、実態 を把握す る上では、
死亡指標 とともに産業・ 職業別 の労働移動 に関する情報が必要 となる。
このように、筆者がすすめて きた労働 と健康問題 の統計研究 において も、第一 に、その背景 と なる就業構造の変動や労働条件 の変化 との関連 における労働移動の把握、第二 に、国際比較 にお ける死亡の職業間格差の評価 にお ける労働移動情報の必要性の2点か ら、詳細 な労働移動統計 は 不可欠 なデータ となる。 しか し、現状 で不U用で きる労働移動統計では、我々の関心か ら必要 とさ れる男女 0年齢別 にみた産業・ 職業別 の労働移動 を把握す ることがで きず、移動の実態 を把握す る上で限界がある。 そこで、本稿では、人 ロセ ンサスデータを用いて、男女、年齢別、産業・ 職 業別 の詳細 な労働移動の実態把握 を試 みたい と思 う。 その際、 ここでは、大量 の結果表 を要約し
て産業・ 職業別の労働移動の実態 を観察、分析する方法 として SPA(Statistical Pattem Analy―
sis)法 を用いることにする。
1.近年の労働移動の動向
バ ブル崩壊後、 日本経済の長期低迷の中で、雇用環境 は著 しく悪化 している。新規学卒者の就 職状況 の厳 しさや、 リス トラ、経営不振、倒産 な どを背景 とした男性 の中高年労働者の離職者や 失業者の増加、中高年女性労働者の雇用条件の悪化、ホームレスの社会問題化 な ど、厳 しい状況 がつづいている。 とくに、「 リス トラ」の中心部分 として、ホワイ トカラーの雇用調整問題 の深刻 化が指摘 されている①。その中で、近年、離職、転職 など、労働移動の活発化がみ られるが、まず、
既存 のデータか ら把握 された労働移動 の実態 についてみてみる。
表1の「雇用動向調査」で労働移動の推移 をみると、入職率、離職率 とともに、1994年が最低 の水準 になって以後、多少の上下変動 はみ られるものの、再 び上昇 をはじめた。バブル崩壊後 の 1993年以降では、1985年、1990年と比べ ると離職率 はほぼ同水準 にあるものの、入職率 は相対的 に低い水準 にとどまっている。その結果、入職率か ら離職率 を差 し引いた入職超過率 は、1990年、 1991年が ピー クで、以後低下 し、1994年以降 はマイナスに転 じた。
表1 労働移動 の推移 (1980年〜1999年 、男女、産業計
)
(単位 :%)
注)入(離)職率=1‑12月 の入(離)職者数÷ 1月 1日 の 常用労働者数 ×
100
入職超過率=入職率―離職率
農林漁業及び建設業 を除 く5人以上事業所 を対象、
ただ し、1991年か ら建設業 を含む
資料)労働省「雇用動向調査」
「労働力調査特別調査」
(労
働省)によ り雇用者の変動 を雇用形態別 にみると1999年の「正規 の職員・従業員」 は3688万人であ り、前年 に比べ106万人 の減少 と2年連続減少 し、減少幅 も大 幅 に拡大 した。1998年か ら99年にかけて非 自発的理 由の離職者 は男女計で、92万人か ら103万 人 に増加 し、男性では人員整理・ 会社倒産 な どが10万人か ら15万人へ1.5倍に増大 している。労働省の、「転職者総合実態調査」 (1998年)では、全事業所 の うち、転職 による入職1年以 内 の常用労働者がいる事業所 は41.6%と なっている。 また、緊急調査 として実施 された「求職状況 実態調査」 (1998年)の結果では、離職 の主な理由は、35〜54歳で、会社倒産・ 廃業や解雇0人 員整理な ど、非 自発的理由で離職 した者の割合が多 くなっていることが分かる。民間の調査では あるが、 さ くら総合研究所社会調査部「雇用に関す るアンケー ト調査」 (1995年 、422社対象)に よると、 レイオ フ制度 について導入 を予定、検討する企業が多いことも指摘 されている。し
また、個人別の労働移動だけでな く、集団 としての大規模 な労働移動が進んでいるとの指摘 も ある。すなわち、事業統合、事業移転、企業提携な ど「従来の常識 をはるかに超 えた、大規模 あ
年 次 入職率 離職率 入職超過率
15.3 14.4
1985 14.8
16.8
15。
316。 7
1992 14.6
‑0.9
‑0.8
15。
2 ‑0.813.8 ‑1.3
1999 14.0 15.0 ‑1.0
るいは大胆 な事業の再編が起 こっている。」弱体部門の他社移管や強化部門への「 ヒ トや設備や営 業権・商標」受 け入れがすすんでお り、「事業再編 によって、労働 は企業や産業の境界 を超 えて移 動 してい く。」 とされている。ヽ
表2に よ り、男女、年齢別の入職、離職 の労働移動状況 をみると、バ ブル期の1990年前後 に各 年齢階級 とも入職、離職が もっ とも多 く、入職、離職 とも、その後減少傾向を示 しているが、入 職 の減少傾向が よ り急速であることがわか る。1990年を 100と した変化指数では、男女、年齢階 級 によって格差が大 きく、働 き盛 りの男性45〜54歳層での入職 は1995年時点で 96.8と 減少 して いるが、逆 に、離職 は 111.5と 増大 してお り、その格差が大 きい ことがわか る。女性 において も 同様 の傾向がみ られ るが、55〜64歳層では、入職が
69。
3で大幅 に低下 した一方、離職 は 122.4と 格差が一層増大 していることが特徴的である。近年の このような中高年層 を中心 とする雇用環境の悪化 と離職者数の増大 と入職者数の停滞、
失業者の増加等の厳 しい状況 を背景 に、失業なき労働移動のための対策 として、1995年に「特定 不況業種等関係労働者の雇用の安定 に関する特別措置法及び雇用促進事業団法の一部 を改正する 法律」が交付、施行 された。 この法律では、構造的要因により雇用調整 を余儀 な くされている業 種 の雇用安定 をはか り、教育訓練等 を支援す る雇用調整助成制度等 による雇用維持の一方で、「事 業転換 による新たな雇用機会の確保や出向、再就職 あっせんによる雇用機会 の確保 を通 じてで き
るだけ失業 を経 ることな く産業間・ 企業間の労働移動が行われ るようにす るとともに、労働移動 の際の能力開発への支援 を図 るための施策 を拡充す る必要がある。」 とされている
14D。
これ を受 けて労働省 と雇用促進事業団は、1996年度 に学識経験者 な どか らなる「労働移動研究 会」をつ くり、「失業 なき労働移動」円滑化のための調査研究 を行 ってきた。 それによると、「『失 業 なき労働移動』のための有効 な方策 としては、企業の系列外への出向・移籍が考 えられ る。」 と
し、従来型の企業内の配置転換や系列内出向か ら、特別の資本関係や取引関係のない企業
(異
業 種である場合が多い とされる)への出向策が打 ち出されている。主な対象は、雇用調整 を背景 に した中高年ホワイ トカラー層であ り、「おおむね40歳台後半か ら50歳台の中高年の管理職層、専 門職層 を中心 とした就業者」 とされ るK51。
この ような系列外出向は、「慢性的な人材不足 に悩 む中小企業や新たな事業展開 を行 うための人 材 を求 めている企業 においては、中核的人材 を確保す るための方策 として有効 な手段 となるもの である。」
161と
されるが、実際の雇用環境 は、 このような方向 とは逆 に非常 に厳 しい状況 にある。樋 回は、ホワイ トカラー層の中の専門的・ 技術 的職業従事者 の労働移動 について分析 し、 この 分野では専門的な技術や知識 を必要 とす ることか ら「企業 内の職種転換です ぐにこれ を補 うこと
入 職 実 数
離 職 実 数
入 職 指 数
離 職 指 数
注
)農林漁業、
資料
)労働省
表2 男女別年齢階級別入職・ 離職者数の推移 (1985年 〜1995年
)
(千人
)
(千
人 )
1990年=100
1990年=100
建設業を除 く、5人以上事業所の入・ 離職者
「雇用動向調査」
男 性 女 性
年 次 総 数 ‑19歳
20‑29
30‑4445‑54
55‑64 総 数‑19歳 20‑29 30‑44 45‑54 55‑64
19852007.9
88.9799.0 477.6
168.3150。
323.7 2168.3 393.2
802.4685。
3215.4
65.1 1986 1856.4 366.1775.8 419.5
151.0 132.7 11.52057.6 394.5 754.3 645.8
194.8 62.1 1987 1877.2310.3
773.2426.9
161.5 132.9 13.62121.6 438.4 815。 1
586.2211.9 64.9
19882169.5
384.7899.5 492.6 212.2
162.6 17.82380.1 432.8
893.1 706.0259.6
80.2 19892155.0 385,9 905。
9484.7 195。
3 165.9 17.32437.2 463.9 886.4
717.1272.9 89。
3 19902600.8 422.0 1086.6
564.2259.5 227.0 41.9 2921.0 519.8 1124.4 803.3 327.2
136.3 19912595.2
448.11058.3
606.8258.0
198.425.7 2990。 1 463.0 1160.9 912.4 320.6
117.62460.2
426.3 1057.9 534.1206.0
198.537.4 2944.2 499。
91160.6 831.3 303.5
129.5 19.4 1993 2269。 2365。
8983.3 470。 1 234.9
187.627.3 2510.7 446.5 966.5
704.5283.0
97.1 13.12087.5
337.6851.9
466.1230.8
172.029。 1 2287.6 327.7
913.4696.7 260.2
79.2 19952173.8 285。
6 976.1 456.8251.3
179.524.4 2348.7
283.1 1013.2630.7 314.5
94.4 12.81985
1869.5
176.4623.3 501.7 200.6 310。
7 56.82070.3
132.6907.4 581.7 263.9
159.7 25.0 19861839.7
155.5622.9 469。
3204.5 332.7 54.9
2049。 9 128.5850.6
586.9274.3
180.11750.0
147.6554.4
461.4219.6 308.8 58.4 2090.5
146.9916.1 552.9 277.9
173.8 19881940.5
166.4695。
7 477.3219.2 329。 1 52.8 2205。
8 163.2917.7 623.0
308.1 165.5 28.4 19892026.8
189.2 727.1496。 1
228.1326.3 60。 1 2364̲0 219。 1 928.4 654.6 330。
2205.3 26.3
19902358.2
183.5804.2
638.1257.6 402.9 71.7 2671.9 207.6 1180.6 694.3 329.9 218.5 41.0
2335。 4206.7 805.1 655.9 239。
2366.7 61.8 2784.6
178.91184.3
773.2371.7 240.2 36.3
19922253.6
173.4841.7
530.4244.0 392.7
71.42783.7 200。 1 1271.4 664.7 397.2
214.1 36.32279.4
193.4806.4 531.8 249。 1 391.4
107.22481.4
176.31082.8 639。
9337.4
193.7 52.1 19942280.8
165.8742.6
525.3 288.1441.0
117.92479.8
134.9 999.4681.5 352.5 265。
3 46.1 19952329,4
129.2793.7 534.5
287.1449.8 135。
12543.4
100.91114.3 630.5 365.4 267.5 64.9
1990 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
99.8
106.2 97.4 107.6 99.4 87.461.3
102.4 89.1 103.2 113.698.0 86.3
149.5 199294.6
101.097.4
94.779。
487.4 89。
3 100.8 96.2 103.2 103.592.8
95.0 192.1 199387.3 86.7 90.5
83.390.5 82.6 65.2
86.085。
986.0 87.7 86.5
71.2 129.7 199480.3 80.0 78.4 82.6 88.9
75.869.5
78.363.0 81.2 86.7 79.5
58.1 100.0 199583.6
67.789.8 81.0
96.8 79.158.2
80.454.5 90。
1 78.5 96.169。
3 126.7100.0 100.0
100.0
100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.099.0
112.6100。 1
102.892.9 91.0
86.2 104.2 86.2100。
3 111.4112.7
109.988.5
199295.6 94.5
104.7 83.194.7
97.599.6
104.296.4
107.795。
7120。
498.0 88.5
199396。
7 105.4100。
3 83.396.7
97.1149.5 92.9 84.9 91.7
92.2 102.388.6
127.196.7
90.492.3
82.3 111.8 109.5164。
4 92.865.0
84.7 98.2 106.9 121.4 112.4 98.870。
498.7
83.8 111.5 111.6 188.495。
248.6
94.490。
8 110.8 122.4 158.3ことには自ら限界」があ り、 また、 この職業分野 に他の職業分野か ら転職す る割合 は低 い ことか ら、「た とえ専門的・技術的職業従事者への需要が高 まって も、他の職業 を離職 した者 をこの職業 で吸収することは期待薄である。」と指摘 している0。 また、村上 は、情報処理技術者の労働移動 について、情報サー ビス業291社に勤務す る1831人を対象 としたアンケー ト調査の結果か ら、企 業間移動 は とくに活発 とはいえないが、「企業内の職種間移動 よりも職種 を変 えない企業間移動の 方が相対的 に多 く、35歳未満の若年層で中小企業で多い」として、中高年層 に移動 は多 くない点
を指摘 している0。
今野 は、技術者の労働移動 について、 日米英独 を比較 した結果、転職経験者比率 は日本が もっ とも低 く、日本の場合、「技術者のキャ リア意識 は年齢 を重ねるに ともない、エキスパー ト指向型 か ら管理職指向型へ と確実に移行 してい く」 と分析 している。 ここで も、中高年層の専門技術職 の転職が難 しい ことが理解で きる0。
また、管理職 について、 日経連 レポー トでは、「転職者総合実態調査」 (1998年 、労働省)を受 けて、転職者の受 け入れは、主 として中小企業で、「企業が転職者 に求 めるのは、いわゆる限口戦 力』となる経験や専門知識である」が、「採用側のニーズ と転職者の もつ能力が十分 に一致 してい ない」 ことが多い と指摘する。採用対象 となる役職 はほ とん どが一般職、専門職であ り、管理職 に対す る需要 は相対的に少な く」、「現在問題 になっている『中高年ホワイ トカラー (事務職、管 理職)の余剰問題』 は構造的な問題であ り、時間の経過 とともに『自然解消的 に解決 され る』こ
とはほ とん ど望めない ということを示唆 している。」と指摘 している
(10。
さらに、事務職 について も、 リクルー ト企画室の大久保 は、 リクルー トで発行 している求人誌の掲載件数 を比較検討 した 上、転職市場 における ミスマ ッチの問題 を指摘 し、事務職 な どでは求職の難易度が高い傾向や、25〜35歳の即戦力 に求人が集中 し中高齢者 の求人が少ない点、正社員 よリアルバ イ トや契約社 員、派遣、委託 な どの求人が多い点な どを指摘 している
(11ゝ
このように失業なき労働移動 は、現実問題 としては非常 に難 しい問題が指摘 されている一方、
成長分野 となる卸小売業やサー ビス業 な どで は、非正規雇用分野が多 く、 また受 け入れ先となる 中小企業 自体が不況の深刻化の中で、経営状態が非常 に悪化 している。
労働移動の背景 には個人的な理由以外 に企業の人員整理や倒産 な どの事情 による移動、集団的 な産業、職業転換 な ど多様 な事情 があ り、離職や入職、転職 の状況 は産業や職業、男女、年齢、
企業規模、地域 な どによつて異なる可能性がある。 したがつて、 この ような労働移動の統計的な 実態把握 には、産業、職業、男女、年齢別 のクロスデータが必要 となる。
2.労働移動統計 と既存研究
(1)わが国の労働移動統計
労働移動 に関する主要な統計 としては、「雇用動向調査」、「就業構造基本調査」、「労働力調査特 別調査」、「国勢調査」の移動集計がある。 その他、臨時、不定期の調査 もある。
1)「雇用動向調査」
「雇用動向調査」
(労
働省)は、毎年2回(上
期 1‑6月 、下期 7‑12月)に分 けて実施 され、9大 産業 に属す る5人以上 の常用労働 者 を雇用す る民営、公営及 び国営の事業所 か ら抽 出 された 14,000事業所 を対象 とする標本調査で、1年間の入職者13万人、離職者12万人 を調査す る。建 設業 は1991年か ら集計対象 に含 まれたが、それ以前 は別掲 とされていた。また、1984年以降、調 査票の離職理由欄 に「出向」の項 目を加 え、出向による事業所か らの転出の実態 を把握 している。1995年調査 においては、入職者、離職者以外 に、同一企業内の他の事業所か らの転入者5万人が 調査 された。 しか し、それはその年度の1回限 りの ものであった。
本調査の定義では、入職者は、調査期間の1年間に事業所が新たに採用した者
(同
一企業内の 配転 を除 く)とされ、①新規学卒者②一般未就業者 (これまで就業 していなかった者が新たに職 につ くこと。入職者のうち、入職前1年間に就業経験のない者。ただし学生を除 く)、
および③転 職入職者から成っている。離職者は、同じく調査期間1年間に、事業所を退職 した者や解雇され た者で、①他企業への転職者②退職後に引退 した者から成る。転職入職者は、企業を転職 した者 で、入職者のうち入職前1年以内に他企業での就業経験のある者 とされる。集計表には、産業別、性別、年齢階級別離職者及び入職者、職業別、性別、年齢階級別離職、
入職者の数が公表されている。さらに、移動前後の職業 とクロスした性別入職者数、移動前後の産 業 と、性別、年齢階級をクロスした入職者数に関する表が掲載されている。年齢階級の区分は、1993 年以降年齢5歳階級でクロスされるようになったが、それ以前は、30〜40歳代、40〜50歳代の中 高年層がまとめられていた。 また、入職者 と離職の年齢区分 も異なり、利用上の制約があった。
この統計で、我々の関心にもっとも近いものは、移動前後の産業 と性別、年齢をクロスした入 職者数で、年齢別の労働移動の実態が把握できる。たとえば、1995年 では、男性転職者で製造業 から離職 した者が、40〜44歳で32万 6千人であったが、そのうち製造業へ入職 した者は20万
8
千人であった。同 じく、45〜49歳では、30万8千人 と20万 1千人、50〜54歳では33万 7千人、
17万4千人 となっている。この ことか ら、製造業か らの離職者の中で他の産業へ移動 した者の割 合 は、40〜44歳で36.2%、 45〜49歳で、34.7%、 50〜54歳で48.4%と計算 される。
さらに、移動前後の職業 をクロスした表があ り、職業間移動が把握で きる。ただ し、年齢階級 別のクロス表 はない。 その他、事業所規模別 の移動や、雇用形態、移動理 由な どのクロス表が利 用で きる。
「雇用動向調査」の結果 は、毎年公表 され、労働移動 を把握す る有効 な統計であるが、農林漁 業が対象外 となる他、1991年以前 は、建設業が別掲であつた点や、家事サー ビス、教育、外国公 務 も除外 され る点、さらに、5人未満の零細企業や 自営業者層 における動 きは対象外である点、企 業内の移動が把握で きない点 な ど、労働者 の移動全体 を対象 とした もので はない とい う限界が あ る。 さらに、標本調査であるため、男女、年齢別、産業間移動な ど詳細 なクロス表の場合 には、
標本誤差が大 き くなる可能性 もある。
2)「就業構造基本調査」
「就業構造基本調査」(総務庁)は、国勢調査 区
(約
88万調査 区)から抽出された約2万 9千 調査 区において調査が実施 され る。 この指定調査 区の中か ら約43万世帯 に居住す る15歳以上の 世帯員約110万人 を対象 としている。標本数 は多いが、離入職、転職者 を対象 とす る「雇用動向 調査」 と異な り、異動者以外 の一般就業者 も含んだ数 となっている。1年前 との「就業異動」 については、有業者 は継続就業者、転職者、新規就業者 とされ、無業 者 は、離職者、継続非就業者 とされ る。 この うち、転職者 は、1年前の勤 め先
(企
業)と現在 の勤 め先が異なる者(新規就業者 は1年前 には仕事 についていなかったが、 この1年間に現在 の仕事 についた者、離職者 は、1年前 には仕事 に就いていたが、現在 はまった く仕事 についていない者 と され る。集計表 には、継続就業者・ 転職者・ 離職者・ 新規就業者 に関す る表があ り、継続就業者の雇用 形態や産業、職業、 また転職者及び離職者 に関す る男女別の前職 の産業や職業 に関す るクロス表 がある。就業異動 に関 して、男女、年齢階級別 (15〜24歳、25〜34歳な ど6区分)の 1年前の産 業 と現職の産業、1年前の職業 と現職 の職業 のクロス表がつ くられているが、報告書 には年齢別 の クロス表 は掲載 されていない。非掲載表 は、非収録統計 として結果プ リン トによる閲覧 とされ る が、東京在住者以外では、一般 には利用が困難である。新規就業者 に関す る産業や職業のクロス 表 もあるが、いずれ も年齢 とのクロス表 はない。ただ し、継続就業者の雇用形態 に関 しては、年
齢 とのクロスはあるものの、報告書 には非掲載である。また、別掲で5年前の産業 と現職の産業、
あるいは5年前の職業 と現職 の職業 に関す るクロス表 はあるが、年齢 とのクロス表 は作成 されて いない。 また、産業 と職業のクロス表 も作成 されていない。
「就業構造基本調査」は、転職者 を対象 として前職 と現職 を比較 しているので、「雇用動向調査」
と同様 に、企業内の職業間移動が除かれ る。しか も、本調査 は5年毎 に実施 され るにも関わ らず、
公表 された主なデータは1年前 との変化 を取 り上 げているのみであるとい う制約があ り、それ以 外の4年間の詳 しい変動 を捉 えることがで きない。
3)「労働力調査特別調査」
「労働力調査特別調査」
(総
務庁)、
毎月の労働力調査 を補 うために実施 されるもので、1997年 までは、年1回(2月)、
1998年以降 は2月 と8月の年2回の調査が行われている。対象は、全国 の世帯か ら抽出 した約3万世帯の世帯員の うち、15歳以上 の約7万 5千人で、「雇用動向調査」や「就業構造基本調査」 と比較すると標本数が少ない。調査対象には、就業者、完全失業者、非労 働力人 口が含 まれ、 この うち、就業異動 に関 しては前職のある者が対象 となる。
就業異動 に関 して、転職者 は、就業者のうち過去1年間に離職 を経験 した者、新規就業者 は、
就業者 の うち、過去1年間 に新たに仕事 についた者 とされ る。 この調査 により、男女別、年齢階 級別 の過去1年間の転職者数、転職者比率が把握で きる。また、男女別 にみた前職 と現職の産業、
あるいは職業別の転職者数が掲載 されているが、いずれ も年齢 とのクロスはない。特徴 としては、
前職の離職理 由別過去1年間の転職者数があ り、雇用動向調査 よりも詳 しい分類 となっている。
非 自発的理由は、「人員整理・会社倒産 な ど」、「事業不振など先行 き不安」、「その他勤め先や事業 の都合」、「定年」な どとなっている。
4)その他の統計
「 国勢調査」(総務庁)の大規模調査 (10年 に1回)では、5年前の居住地 を調べてお り、都道 府県内あるいは相互間の転出入 を、性別、年齢、産業、職業、労働力状態等で分類することがで きる。前回は1990年で、今回2000年調査 も大規模調査であるが、10年に1回でデータが古 くな る点や 目的が過去5年間の居住地移動 に関する移動者の産業や職業などの属性 を把握する統計の ため、労働移動統計 としては利用上の制約が大 きい。
「求職状況実態調査報告」(総務庁)は、1998年に調査が実施 された臨時の調査で、「労働力調 査」の付帯調査 として位置付 けられている。 この調査 は、雇用情勢の変化 を踏 まえて実施 した緊
急調査であるとされ、1998年の 8月 と11月 に約1万世帯 の15歳以上の世帯員2万 5千人 を対象 とした ものである。 これによると、男女、年齢別の前職 の職業、離職理由別、失業期間別完全失 業者 な どが把握 されている。
その他、「労働経済動向調査」
(労
働省)は、事業所規模30人以上 を対象 とした調査で、雇用調 整等の実施方法別 に製造業 における実施事業所の割合、出向実施割合の変化が捉 えられ る。また、「雇用管理調査」
(労
働省)は、本社 の常用労働者30人以上規模の民営企業 を対象 とした もので、出向者の把握がで きる。
12)既存研究における労働移動統計の加工、利用の方法
労働移動統計 は、上記の ようにい くつかの種類が あるが、労働移動 の実態把握 のために、 どの ような統計 の加工・ 利用方法が用い られているかをみてみたい と思 う。
職業間労働移動の既存研究 として、まず、瀧の研究があげられる。瀧 は、「 日本 に特有な職業選 択 の行動の関係 に注 目して、職業間労働移動 を経済学の理論 か ら検討す る」ことを目的に、米国 の職業間労働移動の研究 をフォローす る一方、 自らも既存統計の加工 により日米比較 を行つてい る。瀧 は、アメ リカの労働移動 に関す る個々の職歴データか ら作成 されるパ ネルデータを用いた Greenらの職業移動マ トリックス と、 日本の「就業構造基本調査」 を用いた移動前後の職業をク ロスした表 により職業間移動 を比較 している。 また、転職者 については「雇用動向調査」の現職 と前職の職業 をクロスした転職者の労働移動 を分析 している
(1の
。 これ に先立 ち、小野 による日本 の「就業構造基本調査」 とアメ リカのセンサスを用いた職業別移動の 日米比較研究がある(10。
岡本 は、「労働力調査特別調査」の結果 を用い、就業移動 と失業 との関連 について分析 している。
それによると、各産業の1年間の転 出入 をみた場合、1992年以降、製造業での減少が大 き くなっ ているが、製造業 よりも卸小売業やサー ビス業 において「失業者や非労が発生する割合」が高い ことを示 した上で、製造業での労働力の減少が直接 に失業や非労働力人 口の増大 につなが らない ことを指摘 し、卸小売業やサー ビス業への転職 を通 じてすすんでい くことを示唆 した
(10。
既存の統計の加工 による労働移動の分析 は、 これ らの他 に、奥西や高田、小野の「就業構造基 本調査報告」 を用いた、企業の従業員規模 内・ 規模間労働移動 を分析 した研究が ある
(10。
また、公式統計ではな く、研究者集団による独 自調査 を利用 した研究であるが、「社会階層 と社会移動調 査(SSM調査
)」
データを用いて、企業規模間移動の研究 を行 つた尾高や尾嶋の研究が ある(10。
労働移動の推計 に関 しては、労働力の流出、流入の結果 としてあらわれ る就業構造と労働移動 との関連 をみるために、「就業構造基本調査」と「国勢調査」等のデータを用いて、労働移動の推
計 を行 った1987年版「労働 白書」の推計方法がある。 この推計では、「就業構造基本調査」か ら 得 られた産業間労働移動及び職業間労働移動マ トリックス・ データ と「国勢調査」データ等か ら 推計 された産業別就業者、職業別就業者数のデータをもとに、産業間の労働移動量、および職業 間の労働移動量が推計 されている
(1つ
。ただ し、 ここでは、年齢別のデータはな く、 また産業 と職 業のクロスデータ も扱われていない。職業間労働移動 を詳 しく捉 えるためには、個人の職業遍歴 に関する個票 を匿名化 して、一般 に 利用可能 な形態 にした ミクロデータの再集計が必要になるが、 日本ではその利用は特定の許可を 受 けた ものに厳 しく限定 される。筆者 には確認で きていないが、瀧の研究 によると、「アメ リカで は、NLSY(The National Longitudinal Survey of Youth)に work histOryの パネルデータが 存在 し、利用可能である」、 という
(10。
「雇用動向調査」の報告書 には、一般 に利用可能な形での労働移動者の産業 と職業 をクロスし た表 はないが、調査 自体では産業 も職業 も調査 されているので、個票の利用が可能であれば、そ の再集計 によってクロス表 は作成 しうる。労働省産業労働調査課 (当時)の自石栄司は、1985年 後半か ら1986年前半 にかけての「円高が急激 に進行 した時期」の労働移動問題 を分析するために、
1985年下期 と1986年上期 における転入職者 を対象 として「『雇用動向調査』の特別集計」を行 っ た。 そこでは、男性 の産業・ 職業別 にみた産業間、職業間労働移動のクロスデータを作成 し、 こ れにより「男子転職者の職種別 にみた産業間労働移動の実態 と、産業間移動に伴 う職種間労働移 動の実態」を分析 している
(10。
ただ し、年齢 とのクロスはない。 これは、原データが限 られた標 本数の標本調査の個票である点 を考 えれば、多重 クロスによって標本誤差が大 きくなる可能性が あ り、調査方法 自体 の限界か らやむをえない と判断される。 このデータ利用の方法は、本稿での 目的 との関連が深いが、産業・職業のクロスデータの作成 は1回き りであ り、一般 には利用でき ない。なお、労働移動や失業 に関 して、経済企画庁 において も、1987年及 び1992年の「労働力調査特 別調査」の個票
(サ
ンプル数90,341人)を用いて再集計が行われ、労働移動、失業期間 と労働者 の属性 な どに関する分析が行われている。の。日本では、 この ように労働移動統計 に関 して、行政の内部 において、「雇用動向調査」や「労働 力特別調査報告」の1回き りの部分的な個票 データの再集計 はあったが、 ミクロデータの一般的 利用 はで きない状況 にある。 また、 これ らの移動統計 は、標本調査である点か ら、詳細 なクロス 集計 をした場合の標本誤差が大 き くなるとい う問題点 もある。したがって日本の現状 においては、
本稿 の課題である産業、職業、男女、年齢別の労働移動データを作成することはきわめて困難で
あ る と判 断せ ざるをえない。 そ こで、以下 に独 自の推計 方法 を提起 し、 それ に基づ くクロスデー タ を作成 した後 、若干 のデー タ分析 を試 みてみた い。
3.男女、年齢 階級別、産業・ 職 業別 労働移動 の推計方法
(1)推計 の 目的、方法 と限界
本推計 の目的は、 日本国内のすべての就業者 に関す る男女0年齢別、産業・ 職業別 にみた労働 移動の実態 を、 コーホー ト分析 によつて明 らかにしようとす るものである。使用す るデータは、
「国勢調査」の「男女、年齢別、産業、職業別就業者数」各年版 と「人 口動態調査」の個票再集計 による「男女、年齢別、産業・職業別死亡数」
(法
政大学 日本統計研究所、森博美、藤 岡光夫、良 永康平、金子治平)の の2種類 である。対象 とす る期間 は、オイル ショック以後 の1975年か ら、データ利用が可能 な最新年度である1995年まで とす る。
コーホー ト分析 による産業別、職業別就業者の変動分析 は、20年前の豊田の研究(221に始 まる。
筆者 は、この方法 を都道府県別 データに応用 し、産業 と職業 をクロス した階層別、地域別 コーホー ト変動分析 を行 つた。 しか し、 コーホー トの変動か ら死亡 による影響 を除去で きなかったため、
労働移動の分析 には利用が難 し く、死亡 の影響が少ない若 い年齢層 に限つて利用 をすすめた。つ。
死亡の影響 を除去す ることがで きれば移動統計 として有効 である とい う土居の指摘(20をふ まえ、
その後、職業別死亡統計の利用 により、コーホー トの変動か ら死亡要因 を除去 した社会移動のデー タ作成 を試みた。つ。 しか し、公表 された 日本の「職業別死亡統計」では産業・職業 クロスの死亡 データが作成 されていないため、職業別死亡率が、異なる産業間において も共通であるとい う仮 定 の もとでの推計 に終 り、詳細 な分析がで きなかった。 しか し、 この度、上記の ように森 を研究 代表 とす る共同研究の成果 として、法政大学 日本統計研究所か ら「人 口動態調査」の個票再集計 による男女、年齢別、産業・ 職業別死亡数及び死亡率データが公表 されたので、これを用いて、
より実態 に近い労働移動の推計 を行 うことが可能 となった。
コーホー トとは、結婚や出生 な どによる同時発生集団の ことで、ここでは、出生 コーホー ト
(同
時出生集団)の動 きを分析す ることにす る。た とえば、ある職業部門の1990年に45〜49歳であつ た コーホー トは、1995年には50〜54歳層 になってい くわけで、 この間の労働力 の変動 をみ る場 合、[1995年 の50〜54歳就業者]一[1990年 の45〜49歳就業者]で計算で きる。ただ し、このコー ホー トの変動では、労働力の国際移動、すなわち国外への労働力の流出 と国外か らの流入 はないもの と仮定 されている。実際 には、 この点 に起因する一定の誤差が生ずることになる。 また、当 該職業部門への労働力の流入 と当該部門か らの流出による社会的な移動 と死亡 による減少が相殺 された結果が表れて くることになる。そこで、以下のような方法によって、死亡要因を除去 した コーホー ト分析 を行 うことにする。ただ し、その場合で も、流入超過数や流出超過数は把握でき るが、その間の流入数、流出数 自体 は把握できない とい う限界 をもつ。 ここでは、50〜54歳コー ホー ト (1995年 時点)を例 にとる。
1995年の50〜54歳就業者数
=1990年の45〜49歳就業者+5年間の労働力流入‑5年間の労働力流出‑5年間の死亡数 したがって、 この間の労働力の流入 と流出の結果である社会的な純移動数 は、次式によって求め られ る。
5年間の社会的純移動数
=5年間の労働力流入‑5年間の労働力流出
=1995年の50〜54歳就業者数‑1990年の45〜49歳就業者+5年間の死亡数
ここで、5年間の男女、年齢別、産業別、職業別死亡数は、前述のように「人 口動態調査」の個 票の再集計 によって算出されたデータを用いることにした。ただ し、「国勢調査」の就業者数には 外国人が含 まれるが、「人 口動態調査」は日本人 を対象 とした もので、外国人 も調査 されるが集計 は別掲 となっている。本 データにおいて も死亡数 は日本人 に限定 されてお り、外国人の死亡 は除 外 され ることになる。 また、調査方法上の制約か ら、死亡者の産業、職業 は調査時点の ものであ るので、その属性が過去5年間継続 していた もの と仮定せ ざるをえない。さらに、「人 口動態調査」
の産業、職業分類 は大分類で死亡診断書 に記入する申告制 になっているため、「国勢調査」で詳細 に吟味 された もの と異なる可能性 もある。 このように、産業・ 職業別死亡数自体 に誤差が生ずる 可能性があるとい う前提の もとでの推計 となる。 この中で、 とくに影響の大 きい ものが、外国人 労働力の流入 と流出、その死亡であると考 えられる。後掲の表3‑1において就業者総数の純流出
と非就業者の純流入の値が一致 しないのはこの理由によると推察 される。
死亡 データは1975年、1980年、1985年、1990年の
4ヶ
年分 を利用で きるが、1995年について は作成 されていない。そこで、1985年か ら1990年への死亡率の変化比率 を、1990年か ら1995年 にあてはめ1995年の死亡率 を推計 し、 これ を1995年の男女、年齢別、産業・職業別就業者数 に 掛 け合わせて、1995年の死亡数 を算出 した。なお、5年間の死亡数累計 は2つの年次の各 コーホー卜における1年間の死亡数の平均 を もとめ、 これ を5倍して以下の式 によって計算 した。
1990年〜95年の5年間の死亡数累計
=(1990年の45〜49歳死亡数+1995年の50〜54歳死亡数
)÷
2×5
以上の ような方法で、男女、年齢別、産業 0職業別 にみた労働移動 のデータを得 ることがで き る。 しか し、上述のように、 コーホー ト分析 による労働移動 データは、流入数、流出数のそれぞ れのデータを表示 してはお らず、流入数か ら流出数 を差 し引いた流入超過数 (あるいは流出超過 数
)、
つ まり純移動数であ り、その点 に、本 データの基本的制約がある。そのため、流入 と流出に 大 きな差がない場合 は、両者が相殺 された結果があらわれ、特徴 を分析す ることがで きない限界 がある。 さらに、外国人の国際移動や死亡 の影響 も無視 しているな ど、誤差が生ず る可能性があ る。しか し、本データは、 日本 に居住するすべての者 を対象 とす るセンサスデータをもとにした推 計であることか ら、既存の統計が対象外 とす る農林漁業 をはじめ、すべての産業、及び、同 じく 対象外 となっていた 自営業者層 を含 めた移動 を把握することがで きる。 さらに同一企業内の配置 転換 な どによる職業移動 も含 まれ ることになる。 したがつて、同一の方法で、全就業者 を対象 と して比較が可能 な点 に特徴があ り、誤差 はあるものの、類似のデータがない中で、利用価値があ る と判断 される。 これ らのデータは就業構造 の変動 を把握す る基礎 データ とな り、 また「雇用動 向調査」や「就業構造基本調査」 な ど既存の労働移動統計 と併用 して利用す ることによ り労働移 動の実態 を詳細 に把握す る上で役立つ と考 えられる。なお、 ここで は、既存の労働移動統計で用 い られ る「入職」、「離職」の概念 と区別するために、産業や職業 を変更す る、すべての労働移動 を含む概念 として流入 と流出 という言葉 を用いる。
t‑5年か らt年への5年間の男女、年齢階級別、産業・職業別の各 コーホー ト変動 による労働力 の流入 と流出の結果 としての流入超過数、及び流出超過数、すなわち純労働移動数 と純移動率 を 求 める一般式 は、以下の ようになる。
MO‑5〜
0,日
,Sk=E(。,
,S,k E(t̲5) ,S,k‑5+(D(t̲5ヽ■,s,k‑5+D ゝ.,s,k))÷ 2×5
R(t̲5〜t),
,S,k=M(t‑5〜t),lj,鋳 k÷
E(t̲5ヽlj,S,k‑5×
100(ただ し、純労働移動数M、 純移動率R、 就業者数E、 死亡者数D、 産業部門
i、
職業部門j、
性 別s、
年齢階級の級開始値k)υ)SPA法による推計結果の表示方法
推計結果 は、産業 と職業のクロスで、非就業者 を含めて155個の指標がで き、 さらに男女 0年 齢階級で7o歳未満 までを対象 として も、その20倍、つ まり3100個の指標、 さらに1975年か ら 1995年まで、5年間毎の期間が4つあ り、12400個の指標がで きる。純労働移動数 と移動率 に関す る2種類 の表 をつ くると24800個もの指標がで きることになる。この ままでは指標が膨大過 ぎて、
観察や分析が難 しいので、 これ らの多様 な指標 を要約 して一括表示で きる方法 としてSPA(Sta‐
tistical Pattern Analysis統計的パ ター ン分析)法による表示 を用いた。の。
SPA法は、原データを量的分類 によるクラスデータ
(級
分類 データ、すなわ ち、0〜9%、10〜 19%、 20〜29%などのような量的分類 より作成 された分類 データ)や、質的分類 によるカテ ゴ リー (類型)データに変換 し、 これ らを組み合わせたパターンデータによって複雑な指標や多 次元 データを要約 し、これを用いて上ヒ較分析 を行 う方法である。SPA法の利用 に関 して、従来 は 主 としてカテゴ リーデータを用いていたが、それでは情報損失が大 きい ことか ら、 ここでは、原 データの もつ意味 をで きるだけ損なわずに要約する方法 としてクラスデータによるパターンデー タを作成す ることにした。
関連す る方法の一つに、質的産業連関分析の方法
(2の
がぁるが、個別指標 の変換データであるた め情報損失が大 きい とい う問題がある。一方、カテゴ リーデータの組み合わせによるパターンデー タの作成 は、イギ リスの質的データ分析の研究ではUdo Kelleら によって研究が進 め られてい る。め。 しか し、 この方法ではクラスデータの利用はなされていない。筆者 らは、これ とは別に戦 前か らの 日本 における丸山博の研究 を継承発展 させ、 より早い時期か ら独 自に本方法の研究開発 をすすめ、すでにILO統計局 において公表 した ところである。9。
これ らのSPA法をめ ぐる既存研究 との関係や理論的研究 に関 しては、別稿で解説する。
ここでは、男女、年齢5歳階級別、産業・ 職業別純労働移動数や純移動率 について、原指標の 意味 を損 なわない形で、それぞれ1、 2、 3などのクラスデータに変換 した後、各年齢階級のク ラスデータを若い順 に組み合わせて113などのパ ター ンデータ とした。純労働移動数については、
30歳以上の純労働移動数 は概ね10万人未満であるので、原数値の絶対値 を四捨五入 して1万人 を単位 とす る1桁の離散値 に変換 した。すなわち、1.5万人以上2.5万人未満 は
2、
2.5万人以上 3.5万人未満 は3、
な どのように純移動数 を量的にクラス分 け(階級分類)し、それぞれ を1、 2、3、 のような1桁の数字 に置 き換 えたわ けである。9万人以上 については、すべて9に変換 した。
なお、20〜24歳、25〜29歳の純移動数 は、学卒新規入職者の影響が大 きく10万人 を超 えるので、