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発 展 途 上 諸 国 間 地 域 経 済 協 力 ・統 合 の展 開 過 程

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発 展 途 上 諸 国 間 地 域 経 済 協 力 ・統 合 の展 開 過 程

地域 経済 協 力 ・統 合 の生 成 とASEANの 新 た な展 開につ い て

DevelopmentProcessofEconomicIntegration amongDevelopingCountries:theCaseof

ASEANRegionalism

高 木 功

IsaoTAKAGI

1.は じめV'

2.地 域 経 済 統 合 理 論 の 展 開

3.発 展 途 上 諸 国‑協力 ・統 合 の理 論 的 根 拠

4.ASEANリ ー ジ ョナ リズ ム の展 開

域 内安 全 保 障 ・対 外 交 渉 共 同 体 か ら 経 済 協 力 共 同体 へ

5.結

1.は じ め に

第2次 世 界 大 戦 後 に お け る 「地 域 主i義」 の 台 頭 は,世 界 市 場 の 資 本 主 義 諸 国 勢 力 と社 会 主 義 諸 国 勢 力 へ の分 断 とい う世 界 政 治 経 済 の 再 編 過 程 を 背 景 と して,小 国 と化 した 西 ヨー ロ ッパ諸 国 に よ る 自己 回 復 の 政 治経 済 的 運 動 と して生 起 して き た.す なわ ち,地 域 経 済 統 合 の 進 展 は 「 地 域 的 な隣… 接 性 を 一 つ の 条 件 と しな が ら,主 と して相 対 的 な 意 味 で の 弱 小 国 に と っ て,い ず れ もそ の 経 済 的 存 立 と発 展 の 確 保 とい う 目標 か ら生 まれ た 必 然 的 な 発 展 形 態 」 と解 す る こ とが で き よ う1).こ の 今 日の ヨ ー ロ ッパ 共 同 体 に つ な が る西 欧 リー ジ ョナ リズ ム の展 開 は と りわ け,戦 後,一 挙 に政 治 的 独 立 を遂 げ た被 植 民地 諸 国 に 大 きな イ ソパ ク トを 与 え た.政 治 的 に は 続 ソに よ る世 界 の 双 極 化 の な か で再 び 新 た な 支 配 体 制 下 に 編 成

1)山 本[37]P.283.

され る過 程 と して 生 れ た 政 治 的 な 地 域 協 力 ・ 統 合 も見 られ た が,多 くは 自立 と脱 植 民 地 化

を 指 向 した運 動 と して 地 域 化 が 進 め られ た の で あ る.む しろ,地 域 的 な 協 力 ・統 合 運 動 の 主 な展 開 の舞 台 は 第3世 界 地 域 で あ っ た.ラ

テ ン・ア メ リカに お い て は,国 連 ラ テ ン・ア メ リカ経 済 委 員 会 が 地 域 統 合 の 構 想 ・計 画 に イ ニ シ ア チ ブ を と り,は や くも58年6月 「中 米 の 自 由貿 易 お よび 経 済 統 合 に 関 す る多 国 間 条 約 」 な らび に 「中 米 産 業 統 合 に 関 す る協 定 」 が 成 立 し,CACM(中 米 共 同市 場)と して第 3世 界 に お い て 初 め て経 済 統 合 計 画 が 具 体 化 され た.61年6月 に はLAFTA(ラ テ ン ・ア メ リカ 自由 貿 易地 域)が 中 南 米9力 国 よ り成 立 して い る.そ の 後,ANCOM(ア ン デ ス共 同 市 場s69年 発 足),SELA(ラ テ ン ・ア メ リ

カ経 済 機 構,75年 発 足),ま たLAFTAを 継

承 してALADI(ラ テ ソ ・ア メ リ カ 統 合 連

合,81年 発 足)が 結 成 され て い る.ア フ リカ

(2)

6。 季 刊 創 価 に お い て は,60年 以 降 に 多 くの 国 が 独 立 を 達 成 し,そ の後 数 多 くの 地 域 協 力 の 試 み が 成 さ れ て,1963年5月 にOAU(ア フ リカ統 一 機 構)が ア フ リカ諸 国 の 統 一 と連 帯 の 促 進 を 目 的 と して 結 成 され て い る.そ の 他,UDEAC (中 央 ア フ リカ関 税 ・経 済 同 盟,67年 発 足), CEAO(西 ア フ リカ経 済 共 同 体,70年 発 足), ACOWAS(西 ア フ リカ諸 国 経 済 共 同 体,75 年 発 足),CEPGL(大 湖 諸 国 経 済 共 同 体,76 年 発 足),CEEAC(中 部 ア フ リカ諸 国 経 済 共 同 体,83年 発 足)等 が 設 立 され て きた.

ア ジ ア地 域 に お い て は ど う か.や は り, ASEAN(東 南 ア ジ ア諸 国 連 合,67年 発 足), SPF(南 太 平 洋 フ ォ ー ラ ム,71年 発 足),SA ARC(南 ア ジ ア 地 域 協 力 連 合,85年 発 足)と い っ た 地 域 協 力 ・統 合 の構 想 ・計 画 が 具 体 化

され て き て い る.本 稿 で は,世 界 政 治 経 済 秩 序 の再 編 ・展 開 に お い て 今 後,大 き な 役 割 を 担 うと予 想 され る 第3世 界 諸 国 に よ る地 域 経 済 協 力 ・統 合 の 試 み を,と くにASEANに 焦 点 を 当 て て そ の 展 開 過 程 の 特 性 を 明 らか に

して ゆ きた い(第4章).特 にASEANを 含 む.ア ジ ア太 平 洋 地 域 に お い て は 経 済 の 「世 界 化 」 と 「 地 域 化 」 が 同 時 に 進 行 して お り, ASEANと い う発 展 途 上 国 地 域 機 構 は 大 き

な 制 度 的 ・質 的 変 容 に 迫 られ て お り,同 時 に ASEAN諸 国 経 済 自体 も そ の 様 相 を 大 き く 変 え て き て い るか らで あ る.こ の た め に,ま ず は地 域 統 合 の 理 論 的 な 展 開 過 程 を 概 括 し (第2章),次 い で発 展 途 上 諸 国 に よ る 地 域 統 合 ・協 力 の理 論 的 背 景 を 検 討 して ゆ き た い (第3章).

2.地 域 経 済 統 合 理 論 の 展 開

国 際 経 済 に お け る地 域 主 義 は,比 較 生 産 費

経 済 論 集Vo1.XXI,No・2

説 に 基 礎 を 置 く世 界 的 規 模 で の 国 際 分 業 の 達 成 に よ っ て世 界 全 体 の 経 済 的 厚 生 水 準 が 最 大 化 され る,と い う古 典 的 経 済 学 の 命 題 か らす れ ば,ま た この 理 想 の具 体 化 を 標 榜 して 発 足 した ブ レ ッ トン ・ウ ッ ズ体 制 か らす れ ば,こ れ に 背 反 す る性 格 を 内包 して い る.し か し「自 由 ・無 差 別 ・多 角 主 義 」 を 理 念 に掲 げ るGA TTも 正 式 に 第24条 に お い て地 域 主 義 の形 態 を典 型 的 に 代 表 す る 関 税 同 盟 と 自由 貿 易地 域 の 形 成 を 認 め て い る.た だ し,あ る特 定 の 地 域 内に 限 定 され 「自由 化 」 が 世 由 的 は 普 遍 的

自 由化 へ の 過 渡 的 形 態 で あ る と い う,GATT の 精 神 と の調 和 が 前 提 とな っ て い た.こ の 場 合,地 域 経 済 統 合 は 世 界 的 自 由 化 へ の 手 段 と

し て理 解 され る.し か し 自 由化 を 推 進 す る主 体 と して 常 に 絶 対 的 に 強 力 な 国 際 競 争 力 と生 産 基 盤 を 有 す る特 定 の 国 が 存 在 し,出 来 上 が る 自由 貿 易 体 制 か ら多 くの 利 益 を う るの も, こ の よ うな 特 定 国 で あ る こ とは 間 違 い な い.

例 え 短 期 で あ っ て も特 定 の 大 国 へ の経 済 的 利 益 の 集 中 は,世 界 市 場 へ の 支 配 力 保 持 あ る い は 自国 の 政 治 的 ・経 済 的 権 益 擁 護 を 目的 と し た 対 抗 勢 力 の 形 成 と台 頭 を 招 く こ とに な る.

この 対 抗 勢 力 は,小 国 の 場 合 に 地 域 経 済 統 合 の 形 成 と い う形 で具 体 化 さ れ る.こ の場 合, 世 界 的 自 由化 が 目的 で は な く,特 定 の複 数 の 小 国 を 含 む 地 域 の利 益 追 求 が 目的 と な り,お

の ず と域 外 へ の 差 別 と い う保 護 主 義 的 傾 向 を 強 く帯 び る こ と に な る.こ こ で は 地 域 経 済 統 合 は 保 護 主 義 的 経 済 体 制 の 一 形 態 とい うこ と

に な る.

地 域 経 済 統 合 に 関 す る研 究 は,そ の 典 型 的

形 態 で あ る,域 内 に は 貿 易 の 自 由化 を,域 外

に は そ の 差 別 化 を もっ て 結 成 され る 「関 税 同

盟 」 の 研 究 に お い て 主 に 展 開 され て きた.関

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March1992高 木

税 同 盟 とは第1に 加 盟 国 間 に お け る関 税 お よ びそ の 他 の 貿 易 制 限 の軽 減 ま た は 除 去 と第2 に域 外 国 か ら の輸 入 に対 し共 通 関 税 や 諸 規 制 を課 す る こ と に よ っ て 成 立 す る.「 関 税 同盟 」 理 論 の発 展 の推 移 は発 展 途 上 諸 国 に と っ て 究 め て 興 味 深 い とい え る.当 初,一 定 の 発 展 段 階 に 達 した 西 欧 諸 国 間 の 統 合 を 理 論 的 考 察 の 対 象 と し,関 税 同 盟 が 含 む 経 済 厚 生 効 果 を 静 態 的 に 明 らか に す る こ とか ら同 理 論 の 展 開 が 始 ま っ た.す な わ ちJ.V?ner[42コ に よ り,

「貿 易創 出 」 効 果 と 「貿 易 転 換 」 効 果 と い う 2つ の生 産 効 果 を 関 税 同 盟 が 持 つ こ と,そ し て 前 者 の 貿 易 創 出 効 果 が 支 配 的 な ケ ー ス に お い て の み,同 盟 諸 国 総 体 の 利 益 は 増 大 す る こ とが 指 摘 さ れ た.こ のvinerの 生 産 効 果 に よ る 同 盟 の 分 析 は,実 際 生 じる と思 わ れ る消 費 面 の 変 化 に つ い て の 考 慮 に 欠 い て い る.す な わ ち 関 税 同 盟 の 厚 生 効 果 に お け る変 化 は 供 給 源 の 変 化 とい う生 産 効 果 の み な らず 消 費 の 変 化 か ら も生 じる.需 要 の 弾 力 性 が0で な い 限 り同盟 結 成 に よ って 生 じた 相 対 価 格 の 変 化 は 必 ず 消 費 の 変 化(商 品 間 代 替)を 生 む.こ の よ うな指 摘 はMeade[17]に よ っ て 行 なわ れ,Lipsey[14コ に よ っ て詳 細 に 論 じ ら れ た.す な わ ち 貿 易 創 出 効 果 は 厚 生 を 高 め,貿 易 転 換 効 果 は 厚 生 を 低 め る とい う定 式 化 は 消 1費 効 果 の 付 加 的 考 察 に よ って 成 立 し な く な

る.そ の後,Johnson[6],Michaely[19]

に よ って 同 様 の結 論 が 導 か れ る.こ の よ うに Vinerに よ っ て 口火 を 切 られ た 関 税 同盟 の厚 生 効 果 に 関 す る議 論 は しば ら くViner理 論 の 不 完 全 性 の 指 摘 とそ の拡 大 に 向け られ て い っ た.こ の 段 階 で は 多 くの 議 論 は そ の 基 調 と して 自 由貿 易 指 向 的 な 立 場 に あ り,関 税 同盟 は 自 由化 実 現 へ の 現 実 的 方 法 と して考 え られ

功:発 展途 上諸国 間地 域経済協 力 ・統合 の展開過程 6r

て い た よ うに 思 わ れ る.実 際,Lipseyは 関 税 同盟 の 分 析 は 次 善 理 論 の 一 適 用 例 と見 な して い た.「 最 善 」(フ ァ ー ス ト ・ベ ス ト)は 自由 貿 易 に よ っ て初 め て 実 現 され る とい うの で あ る.し か しこ の よ うな 自 由主 義 指 向 的 な関 税 同盟 の 評 価 に 対 しそ の 理 論 的 根 拠 の 正 当性 を 根 本 的 に 問 うよ うな議 論 が 展 開 され る.Coo‑

per=Massel1[3]に よれ ば,(1)関 税 同 盟 の 厚 生 効 果 は2つ の構 成 要 因 に 分 析 で き る.

す な わ ち(a)関 税 引 き下 げ要 因 と(b)純 粋 貿 易 転 換 要 因 で あ る.(2)伝 統 的 関 税 同盟 分 析 の 基 準 で は 消 費 者 の 厚 生 を増 大 させ る 唯一 の 源 泉 は 関 税 引 き下 げ要 因(貿 易 創 出 効 果 と消 費 効 果 を 含 む)に あ る.(3)関 税 引 き下 げ 要 因 に よ る厚 生 の 増 大 は 無 差 別 的 な 関 税 政 策 に よ っ て も実 現 で き,関 税 同 盟 固 有 の 効 果 で は な い.こ の よ うな無 差 別 関 税 政 策 との 比 較 に お い て は,関 税 同盟 は 必 ず 純 粋 貿 易 転 換(最

も低 い コ ス トの 供 給 国 か ら高 コス ト同 盟 国 へ の 供 給 源 の シ フ ト)を 生 む こ とか ら厚 生 減 少 効 果 を 持 つ とい え る.し た が っ て 次 善 理 論 は,関 税 引 き下 げ 要 因が 持 つ 厚 生 効 果 を 対 象 とす る と きの み 妥 当 す る が,関 税 同盟 の 総 体 的 な 厚 生 効 果 は評 価 で きな い.(4)し た が っ てViner分 析 の 基 礎 を 成 す 「自 由 貿 易 的 見 地 」 は なぜ 無 差 別 関 税 政 策 よ りも関 税 同 盟 が 選 好 され るの か 明 らか に で き な い.

以 上 のCooper=Masse11の 伝 統 的 関 税 同盟 理 論 へ の 問 題 提 起 は 関 税 同 盟 が もた らす そ の 他 の3つ の 潜 在 的 な 効 果 に 注 意 を 向 け させ る こ とに な る.交 易 条 件 効 果,動 態 的 効 果 そ し て 公 共 財 の 保 護 とい う観 点 か らの 関 税 同 盟 の 効 果 で あ る。

交 易 条 件 効 果 に つ い て はMundell[20コ,

Vanek[41],そ して 根 岸[22]等 に よ っ て先

(4)

62季 刊 創 価 駆 的 分 析 が 開 始 され,そ の 後Kemp[12コ や Petith[26コ そ してRiezman[27]に よ っ て 展 開 され て きた.こ の 側 面 か らの 関 税 同 盟 の 厚 生 効 果 の 究 明 は 重 要 で あ る.Petithは 交 易 条 件 効 果 をGNP比 率 で 表 わ し,B.Bala‑

ssa),rよ る貿 易 創 出 効 果 の 実 証 的 分 析 の 結 果 と比 較 した 場 合,交 易 条 件 の 改 善 か ら得 られ る 利 益 は 貿 易 創 出効 果 の2倍 か ら6倍 に も な る と指 摘 して い る.こ こか ら,Petithは 交 易 条 件 効 果 こそ 統 合 の 主 要 な 経 済 効 果 で あ り,統 合 の 目標 の一 つ で あ る と結 論 し て い る.と ころ で,貿 易 利 益 の 分 け 前 を 決 定 す る の は,商 品 間 交 易 条 件 で は な く,生 産 要 素 の 交 易 条 件 で あ る.こ の生 産 要 素 交 易 条 件 は, 生 産 要 素 の所 得 水 準 の変 化 率 す なわ ち そ の 国 の輸 出 産 業 に お け る所 得 の 変 化 の 割 合 を,相 手 国 の 所 得 指 数 で 割 っ た も の で あ る.所 得 水 準 の 上 昇 率 の 高 い 国 は 貿 易 利 益 を 相 対 的 に 多 く享 受 し,所 得 上 昇 率 の 低 い 国 の 貿 易 利 益 は 小 さい とい う こ とに な る.す な わ ち所 得 上 昇 率 の 低 い 生 産 構 造 を 持 つ 途 上 国 に と って,国 際 的 自 由貿 易 は 富 の 公 平 化 を 実 現 す る 体 制 と は 言 え な い.な ん らか の工 業 化 を 促 進 して産 業 構 造 ・輸 出 構 造 を 転 換 す る しか な い と い え る.こ こ に も発 展 途 上 諸 国 が 保 護 主 義 的 な地 域 統 合 措 置 を 取 る論 理 の一 つ が あ る.

3.発 展 途 上 諸 国 協 力 ・統 合 の 理 論 的 根 拠

保 護 主 義 的 観 点 か ら の関 税 同盟 の 効 果 は, 関 税 同 盟 結 成 効 果 に お け る 「公 共 財 保 護 論 」 と も言 うべ き も の で あ る.先 に も述 べ た よ う にCooper=Massel1は 伝 統 的 関 税 同盟 理 論 へ の 問 題 提 起 に た い して,み ず か ら次 の よ うな 新 た な 方 向付 け を 行 な った.「 現 在 の 関 税 同 盟 理 論 は 本 質 的 に 自 由貿 易 偽 装 論 で あ るの に

経 済 論 集Vo1.XXI,No.2

対 し,必 要 と され る の は そ れ に 代 わ る保 護 政 策 の 分 析 で あ る」 と して,彼 等 は 保 護 の 経 済 理 論 の 形 成 へ と向 か うこ とを 提 唱 した2).こ の 具 体 的 作 業 はJohnson[10],Cooper=Ma・

ssell[4]に よ っ て 行 なわ れ た.こ こで は 主 にJohnsonの 議 論 に そ っ て そ の概 要 を 説 明

して お く こ とに す る.

こ の場 合 の 公 共 財 の 形 態 は 特 定 の 経 済 活 動 へ の共 同 選 好 で あ る.た とえ ば,工 業 製 品 の 生 産 は工 業 品 の 個 人 的 消 費 を 通 じて 得 られ る 満 足 に 加 え て共 同 体 と して 得 る満 足 を含 む と 仮 定 され る.す な わ ち 外 国 か ら安 価 な あ る商 品 を 輸 入 す る こ とか ら得 られ る満 足 よ りも, そ の 商 品 を 自 国 で 生 産 され る と い う認 識 か ら 得 られ る満 足 を 選 好 す る とい うの で あ る.し た が っ て この 選 好 は具 体 的 に は 自国 産 業 の 保 護 とい う形 に な っ て表 わ れ,し か もそ の産 業

とそ の 生 産 品 は 公 共 財 と い え る.

Cooper=Massel1は,工 業 に 対 す る選 好 は 発 展 途 上 諸 国 に 顕 著 で あ る こ とを 指 摘 し 「我 々 の 分 析 は 特 定 の 型 の経 済 活 動一 そ れ を 工 業 と呼 ぶ に 対 し,他 の 諸 活 動 に 比 して 社 会 的 選 好 が み られ る とい う単 純 な 仮 説 を 基 礎 に して い る.」 と述 べ て い る3>.Johnsonも

「選 挙 民 は 自 由 国 際 競 争 下 よ りも一 層 大 き な 工 業 生 産 量 と雇 用 量 を 得 るた め に 政 府 行 動 を 通 して 実 質 費 用 を支 払 お うとす る とい う意 味 で 工 業 生 産 へ の 集 団 的 選 好 が み られ る.換 言 す れ ば,各 個 人 が 工 業 生 産 物 の 消 費 か ら直 接 獲 得 す る満 足 と は 別 に,選 挙 民 総 体 に 満 足 の 流 れ を 生 む よ うな 集 団 的 消 費 財 と して 考 え る こ とが で き る.」 と述 べ て い る4).こ れ が 彼 等

2)Cooper=Massel1[4]P.462.

3)Cooper=Massell[4コP.462.

4)Johnson[10](Krauss[13]所 収,P.256)

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March1992高 木

の い う 「 工 業 生 産 選 好 」 で あ る.工 業 生 産 の 選 好 が み られ る場 合 の 均 衡 条 件 は,工 業 生 産 の 集 団 的 消 費 に お け る 限 界 価 値 と保 護 生 産 に よ る個 入 的 消 費 の 限 界 費 用 が等 し くな る ま で 工 業 生 産 は 拡 大 され,そ の 結 果,実 質 国 民 所 得 は 極 大 化 され る.こ の 場 合,工 業 生 産 とい う公 共 財 の 消 費 か ら得 られ る満 足 が こ の 実 質 国 民 所 得 に 含 まれ る.

いわ ゆ る,こ の よ うな公 共 財 保 護 論 は,政 治 的 ・心 理 的 ・社 会 的 とい う非 経 済 的 対 象 の 社 会的 効 用 を 関 税 同 盟 理 論 に 導 入 して 関 税 同 盟 結 成 の 根 拠 と利 益 を 明 らか に し よ うと した もの で あ る.以 上 の 議 論 は 主 に工 業 品輸 入 国 か らな る発 展 途 上 諸 国 に よ る地 域 統 合 の 動 因 を 説 明す る もの で あ る.

地 域 統 合 現 象 を 説 明 す る論 拠 の も う一 つ の 源 泉 は,関 税 同盟 の 動 態 効 果 に も とめ られ る.

動 態 効 果 は 規 模 の 経 済,分 業 の 促 進,競 争 効 果 に よる 効 率 性 の 増 大 か らな る.こ の 動 態 効 果 は 先 進 諸 国経 済 統 合,途 上 国 経 済 統 合 の 双 方 に 期 待 され るが,と りわ け 発 展 途 上 国 に と

って 経 済 成 長 ・発 展 戦 略 と して の 地 域 的 統 合 の 効 果 は 重 要 で あ る,UNCTAD[40コ に よ って 展 開 さ れ た 発 展 途 上 国 の 発 展 ・成 長 の 諸 方 策 と して の 経 済 統 合 の議 論 は,以 下 の5つ

の 経 済 統 合 が 含 む 利 益 を 明 らか に して い る.

(1)発 展 途 上 諸 国 に 規 模 の 経 済 の 実 現 を 可 能 とす る手 段 と して の 統 合

(2)産 業 配 置 と産 業 特 化 の 利 益 を 実 現 す る 手 段 と して の統 合

(3)産 業 に お け る効 率 性 を 生 む 手 段 と し て の 統 合

(4)発 展 途 上 諸 国 経 済 の 対 外 脆 弱 性 を 減 ず る手 段 と して の統 合

(5)発 展 途 上 諸 国 の対 外 交 渉 力 を 増 大 さ

功:発 展途 上諸国 間地 域経済協 力 ・統合 の展開過程 63

せ る 手 段 と して の 統 合

そ れ ぞ れ につ い てUNCTADに よる 議 論 を 以 下 に 要 約 す る,

(1)特 定 の1次 産 品 輸 出 に 偏 っ た 生 産 構 造 を 持 つ 途 上 国 に とっ て,工 業 化 に よる経 済 構 造 の 多 様 化 は,交 易 条 件 の 不 利 化 を 回 避 す る と と もに,国 民 の発 展 へ の 期 待 に 応 え るた め に 必 要 不 可欠 で あ る.通 常,工 業 化 に よ る 産 業 の 多 様 化 と高 度 化 に は,国 内 産 業 の 育 成 を 目的 と して,国 内 市 場 を 基 礎 に 保 護 主 義 的 な 諸 政 策 とイ ンセ ソ テ ィ ブを 与 え な け れ ば な らな い.し か し一 国 の政 治 的 境 界 が 経 済 的 に もっ と も合 理 的 な 領 域 で あ る とは 限 ら ない.

ま た あ らゆ る種 類 の 生 産 活 動 に とっ て,そ の 生 産 に 必 要 とさ れ る 最 適 市 場 規 模 の 大 き さが 問 題 と な る.大 規 模 生 産 技 術 の 下 で は,多 く

の場 合,生 産 量 の 増 大 に つ れ て,生 産 コス ト は 次 第 に 低 下 す る.し た が って ま た,そ の 生 産 品 の販 路 と して の 大 市 場 が 不 可 欠 とな る.

もち ろ ん 規 模 の 経 済 は 生 産 活 動 の 性 質 に よ っ

て 異 な る.技 術 ・資 本 集 約 度 が 低 い 非 耐 久 消

費 材 を 生 産 す る場 合,こ れ は 初 期 の工 業 化 の

段 階 に 見 られ る典 型 的 な 生 産 活 動 の形 態 で あ

るが,国 内 市 場 が 適 度 な 販 路 を 提 供 す る こ と

が 多 い.ま た,プ ラ ン トの 最 適 規 模 は 産 業 に

よ って も,国 に よ っ て も異 な る.そ れ は 技 術

的 な 条 件 ば か りか,相 対 的 な資 源 賦 存 の状 態

に よ っ て も異 な る.ま た プ ラ ン ト規 模 の格 差

が そ の ま ま単 位 生 産 当 りの コ ス ト格 差 に相 応

す る もの で もな い.し か し,以 上 を 考 慮 して

も多 くの 途 上 国 が 相 対 的 に も,絶 対 的 に も非

常 に低 い 購 買 力 と した が って 狭 隆 な 市 場 しか

持 た な い こ とか ら,途 上 国 で 操 業 され て い る

多 くの 産 業 は そ の 規 模 に お い て 最 適 生 産 水 準

に は 届 か な い し,そ れ ど こ ろか 必 要 と され る

(6)

64季 刊 創 価 最 小 生 産 規 模 さ え達 成 で き な い.と りわ け基 礎 的 製 造 業(製 鉄,非 鉄 金 属,重 化 学),化 学 肥 料,パ ル プ ・製 紙,資 本 財(工 業 機 械,農 業 機 械,電 気 機 器,輸 送 機 械),耐 久 消 費 財 の 生 産 に は 特 に 大 き な市 場 が 必 要 とな る.さ ら に は,規 模 の 経 済 が 内 部 経 済 に 及 ぼ す 効 果 に 加 え,外 部 経 済 の 存 在 も重 要 で あ る.一 つ の 産 業 の 存 立 に は 一 連 の 投 入 ・産 出 を 伴 う産 業 関 連 構 造 が 必 要 で あ る.す な わ ち,内 部 経 済 の 実 現 に は 多 様 な 投 入 ・産 出 の 分 業 関 係 が 成 立 して い な くて は な ら な い.特 に,産 業 構 造 の 多 様 性 に 欠 け る途 上 国 が,国 内経 済 に 各 種 の 産 業 が 同 時 並 行 的 に 発 展 す る こ とを 望 ん だ と して も,国 内 市 場 の 制 約 は 決 定 的 で あ る.

す な わ ち 「地 域 範 囲 が 広 け れ ば 広 い ほ ど,ま た そ の 経 済 資 源 が 多 様 で あ れ ば あ る ほ ど,よ り多 くの 産 業 が 最 適 条 件 の 下 で 操 業 で き る よ うに 思 わ れ る」 の で あ る5).す なわ ち 地 域 統 合 は この 規 模 の経 済 の実 現 ・利 用 を 可 能 にす

る とい え よ う.

(2)こ の こ とは ま た小 国 が 集 ま る 国 際 地 域 内 に お い て 産 業 配 置 ・分 業 が 成 され る こ と で も あ る.通 常 は 地 域 的 枠 組 み に お い て,輸 入 代 替 と工 業 化 を 推 進 す る 場 合,一 国 の 市 場 を 基 礎 とす る の に 比 べ て,は るか に 特 化 の 利 益 を 引 き出 す こ とが で き よ う.「市 場 が 大 き け れ ば 大 き い ほ ど,特 化 の 範 囲 も よ り広 くな る」 の で あ る6).小 さ な 国 の場 合,国 内 に あ らゆ る種 類 の 産 業 を 創 設 す る こ とは 望 め な い こ とか ら,地 域 的 範 囲 で の 特 化 ・分 業 か ら大 き な利 益 を得 る こ とだ ろ う.大 き な市 場 を 持 つ 国 で あ っ て も,国 内 市 場 で は 最 適 生 産 規 模 に 届 か な い 生 産 物 の輸 出 に つ い て統 合 の 利 益

5)UNCTAD[40](Ghosh[5]所 収,P.162) 6)UNCTAD[40](Ghosh[5]所 収,P.163)

経 済 論 集Vol.XXI,No.2

は 見 出 され る し,域 内 の 他 の 国 に お い て 特 化 した財 の輸 入 か ら も利 益 を 得 る.

(3)ま た 統 合 は 上 述 の 効 果 と と もに 競 争 効 果 に よ り,途 上 国産 業 の 効 率 性 を 高 め よ う.

途 上 国 の 産 業 は,国 内 経 済 構 造 の 多 様 化 の た め に,先 進 諸 国 か らの また 途 上 国 か らの輸 入 か ら厚 く保 護 され て い る.実 際,国 内市 場 に お い て独 占 に近 い 状 況 に あ る こ と も少 な くな い.し た が っ て こ の場 合,生 産 者 が 効 率 性 の 向上 に 努 力 す る よ うな イ ンセ ンテ ィブ は見 出 せ な い.競 争 機 会 の欠 如 が す な わ ち,品 質 ・ コ ス トに お い て 他 と の比 較 に さ ら され な い と い う こ とが,途 上 国 産 業 の 低 生 産 性 と高 コス トを 説 明 して い る.よ り大 き な 市 場 規 模 と資 源 利 用 可 能 性 が 見 込 まれ る 地 域 統 合 は,域 内 産 業 間 に お け る競 争 と域 外 産 業 か らの適 度 な 保 護 下 で の 競 争 を 可 能 に し,域 内 産 業 の 効 率 性 の 改 善 に 資 す るで あ ろ う.

(4)経 済 的 対 外 脆 弱 性 は途 上 国 経 済 の 大 き な 特 徴 で あ る.特 定 の 伝 統 的1次 産 品 輸 出 へ の 依 存 な らび に 特 定 の 先 進 国 市 場 へ の 集 中 的 依 存 は 途 上 国 の 経 済 的 不 安 定 性 の み な らず 政 治 的 不 安 定 を も導 く.し た が っ て,輸 出構 造 を そ の 輸 出 品 構 成 と輸 出 先 構 成 の2つ に お い て 多 様 化,分 散 す る こ とが 必 要 とな ろ う.

地 域 的 フ レー ム ワー クの な か で途 上 国 間 相 互 の 新 た な 輸 出先 の 開 発 と貿 易 量 の 増 大 を 図 る こ と に よ り工 業 化 過 程 は 加 速 し,原 材 料 や 食 糧 へ の需 要 も増 大 す る こ とに な ろ う.こ の よ

うな 域 内 貿 易 の 促 進 は 先 進 国 へ の依 存 度 を 弱 め,1次 産 品 需 要 ・価 格 の 変 動 とい う域 外 か ら く る不 安 定 要 因 に よる衝 撃 を 緩 和 す るだ ろ

う.

(5)対 外 交 渉 力 は,途 上 国 に と っ て 既 存

の 国 際 政 治経 済 秩 序 の 改 変,な らび に 新 しい

(7)

March1992高 木

世 界 経 済 秩 序 の 形 成 に 参 与 す る う1に お い て 欠 く こ とは で き な い.交 渉 力 を 構 成 す る 経 済 的 要 素 は,大 きな 輸 入 潜 在 力,す な わ ち 市 場 を 持 っ て い る こ と,そ して重 要 な資 源 ・生 産 品 の 供 給 国 で あ る こ と,を そ の 内 容 とす る.

蝦 上 国一 国 だ け で は この よ うな 条 件 を 充 足 す る こ とは 困 難 で あ る.し か し,複 数 の 諸 国 が そ れ ぞれ の 輸 入 潜 在 力 と資 源 あ る い は 生 産 品 供 給 国 の立 場 を 合 わ せ た と き対 外 交 渉 力 を 向 上 させ 得 る.た だ し対 外 交 渉 を 有 効 な もの と す る には 困 難 が 付 き纒 う.相 互 に守 るべ き経 済 利 益 の分 野 が 異 な り,ま た そ の優 先 順 位 が 各 メ ソバ ー国 に よ っ て 異 な る か らで あ る.

途 上 諸 国 統 合 の 多 くは 以 上 の よ うな 経 済 統 合 の 利 益 を 求 め て 地 域 協 力 統 合 に乗 り出 した も の とい え よ う.し か し こ の よ うな統 合 の利 益 を享 受 す るに は 多 くの 障 害 を 乗 り越 え な け れ ば な ら な い.す な わ ち,第1に 加 盟 諸 国 間 経 済 的 不 均 衡 の一 層 の拡 大 で あ る.第2に 経 済 統 合 に よ る利 益 と コス トの分 配 を め ぐる 問 題 で あ る.第3に 国 家 主 権 とそ れ に抵 触 す る よ うな 地 域 統 合 政 策 と の調 整,あ る い は 国家 レベ ル の 経 済 政 策 と地 域 統 合 政 策 の調 整 問 題 で あ る.以 上 の3つ は 先 進 国 間経 済 統 合 に も

も ち ろ ん 見 られ る 現 象 で あ る が,途 上 国 に は よ り一 層 困 難 な問 題 と な る.第4に は 国 家 と して の 社 会 的 ・政 治 的 ・経 済 的 統 合 の 未 成 熟 あ る い は 欠 如 で あ る,こ れ は 発 展 途 上 国 統 合 の 不 安 定 性 と して 反 映 され る こ と に な る7).

経 済 統 合 に よる 利 益 の 多 くは,途 上 国 一 国 で は 適 い 難 い も の で あ る.と りわ け,世 界 経 済 構 造 の 改 変 に は途 上 国 間 協 力 は 不 可 欠 で あ る.し か し,既 に 見 た よ うに途 上 国 に よ る経

功:発 展途 上諸国間地 域経済 協力 ・統合 の展開過程

7)Axline[1](Ghosh[5コ 所 収)な らび の Lizano[15]を 参 照 さ れ た い.

65

済 統 合 を 阻 む諸 困 難 の な か で,ど の よ うな 経 済 統 合 推 進 の展 開 過 程 が 可 能 で あ ろ うか,以 下 で は,発 屋 途 上 国 統 合 の代 表 的 な 試 み の 一 っASEAN(東 南 ア ジ ア諸 国 連 合)の 事 例 か ら これ を 明 らか に して み た い.な ぜ な らば, ASEANは 特 に よ り域 内 外 条 件 に恵 まれ て い た わ け で は な い し,域 内 ・国 内 に お い て上 記 の途 上 国 間 統 合 を 阻 む 諸 問 題 を や は り抱 え な が ら も究 め て 漸 進 的 に そ の協 力 分 野 を 広 げ て

きた か らで あ る.

4.ASEANリ ー ジ ョナ リズ ム の 展 開 域 内安 全 保 障 ・対 外 交 渉 共 同 体 か

ら経 済 協 力 共 同 体 へ

ASEANそ の もの の動 態 を 「リー 一ジ ョナ リ ズ ム」 と して 把 握 す る の は,ASEANが 脱 植 民 地 化 と世 界 政 治経 済 秩 序 に 積 極 的 に 参 加 す る主 権 獲 得 へ の運 動 とい う第2次 世 界 大 戦 前

・大 戦 後 か ら今 日 まで の ア ジ ア地 域 に お け る 大 きな 政 治 経 済 的 潮 流 の 中 で 生 成 して きた か らで あ る.Suriyamongkol[31]は,東 南 ア ジ ア諸 国 間 の リー ジ ョナ リズ ム の 動 因 に つ い て 以 下 の よ うに 述 べ て い る.「 リー ジ ョ ナ リ ズ ム の 潜 在 的 利 益 は 一 部 の 東 南 ア ジ ア に お け る指 導 者 に と っ て政 治 的 誘 因 を持 つ.こ の 誘 因 の根 拠 は,形 式 的 な 経 済学 的 論 理 に あ る と い うよ り も,第3世 界 の 政 治 経 済 的 発 展 の 状 態 とそ の 動 態 に 見 出 され る よ うに 思 わ れ る.

あ る地 域 の発 展 途 上 諸 国 間 に お け る水 平 的 連

帯 は,歴 史 の進 展 に お い て 一 つ の 分 岐 点 を 表

わ す.植 民 地 主 義,新 植 民 地 主 義(従 属 化)

の 下 で は,国 際 的 水 準 に お け る垂 直 的 分 業,

垂 直 的 統 合 化 が,そ の趨 勢 で あ った 。 国 際 貿

易 に お い て,途 上 国 は 原 材 料 の 供 給 者 で あ

り,先 進 国 は工 業 品,資 本財 の輸 出 者 で あ

(8)

66

季刊 創 価 経 済 論 集

Vol.XXZ,No.2 表1東 南 ア ジ ア ・リー ジ ョナ リズ ム の 歴 史 的系 譜

1g47.3.23‑4.2AsianRelationsConference(ア ジ ア 関 係 会 議)

ア ジ ア諸 国 に よ る最 初 の 会 議.29力 国 が 参 加.独 立 を 目前 に 控 え た ア ジ ア諸 国 が 独 立 後 の 連 帯 協 力 の 必 要 性 を 意 識 し て開 か れ た 非 政 府 レベ ル の 国 際 会 議.「 わ れ わ れ ア ジ ア 人 は, 余 りに 長 い 間,西 欧 の 官 廷 や 宰 相 た ち に 対 す る請 願 者 で あ り続 け た 、 … … 自分 自身 の足 で す っ くと立 ち 上 が り,お た が い に 協 力 す る用 意 を し よ うで は な い か」 「ア ジ アが ア ジ ア 自 身 の役 割 を 演 じな け れ ば 平 和 は あ りえな い 」 ネ ル ー

民 族 独 立 ・反 植 民 地 主 義 ・ア ジ アの 連 帯 を 強 調.

194g.1.20‑23ニ ュ ー デ リー会 議(ア ジ ア 独 立 諸 国 会 議)

エ ジ プ ト ・エ チ オ ピア を 含 む15力 国 の参 加 に よ り開か れ た 初 め て の ア ジ ア ・ア フ リカ政 府 間 会 議.バ ソ ドン会 議 開 催 の基 礎 とな る。 主 に 戦 後 の西 欧 諸 国 に よ る再 侵 略 行 動,特 に オ ラ ソ ダ の イ ソ ドネ シア に 対 す る 軍 事 行 動 に 抗 議 し 「イ ソ ドネ シ アに 関 す る 決 議 」 を 採 択.

ま た 国 連 に お い て 協 力す る こ とを確 認 国 連 に お け るAAグ ル ー プ結 成(1950.12)に 通 じ る.

1955.4.18‑24Asian‑African会 議,(バ ン ドソ会 議)

「バ ン ドン会 議 は 歴 史 的 な 出 来 事 で あ った.… … 新 しい ア ジ ア ・ア フ リカ の 台 頭 を表 現 す る も ので あ り,世 界 人 口 の半 ば を 占め る人 々 の世 界 の 諸 問 題 に 対 す る政 治 的 意 志 を 宣 言 し た ので あ る.」 ネ ル ー

「こ の会 議 は,人 類 の歴 史 上 初 め て の 有 色 人 種 の イ ソ タ ー ・コ ン テ ィネ ン タ ル(大 陸 間) な 会 議 で あ る.」 ス カ ル ノ

バ ン ドン10原 則(『 世 界 平 和 と協 力 の推 進 に か ん す る宣 言』 に 記 載)

1956.1

1960.7

1961.7.

)))))12004FOAb

)7

基 本 的 人 権 お よび 主 権,国 連 憲 章 の 目的 と原 則 の 尊 重 す べ て の 国 家 の主 権,領 土 保 全 の尊 重

す べ て の人 種 の平 等 と大 小 を 問 わ ず す べ て の 国 家 の平 等 の承 認 他 国 の 内 政 へ の 介 入,干 渉 を 差 し控 え る こ と.

国 連 憲 章 に 合 致 す る諸 国 家 の個 別 的 あ るい は 集 団 的 自衛 権 の尊 重.

a)大 国 の特 定 の利 益 に 役 立 て らるた め 集 団 的 防 衛 の 諸 協 定 の利 用 を 差 し控 え る こ と.

b)い か な る 国 も他 国 に 圧 迫 を 加 え る こ とを 差 しx..る こ と,

い か な る 国 の 領 土 保 全,あ るい は政 治 的 独 立 に た い し て,侵 略 行 為,脅 迫,あ る い は カ の 行 使 を し な い こ と.

8)あ ら ゆ る 国 際 紛 争 は,国 連 憲 章 に 従 っ て,交 渉,調 停,仲 裁 あ る い は 裁 定 の よ うな 平 和 的 方 法,な ら び に 当 事 国 の 選 ぶ そ の 他 の 平 和 的 方 法 で 解 決 す る こ と.

9)相 互 利 益 と協 力 の 推 進.

10)正 義 と 国 際 的 義 務 の 尊 重.

「東 南 ア ジ ア 友 好 ・経 済 条 約(TheSouthEastAsiaFriendshipandEconomicTreaty:

SEAFET)」 の 創 設 構 想.マ ラ ヤ ・ラ ー マ ソ首 相,フ ィ リ ピ ソ ・ガ ル シ ア 大 統 領 共 同 声 明 発 表.そ の 内 容 は,経 済 ・文 化 ・科 学 技 術 ・教 育 の 諸 問 題 に わ た り,マ ラ ヤ ・ フ ィ リ ピ ソ ・イ ソ ドネ シ ア ・タ イ ・南 ベ トナ ム ・ビ ル マ ・ ラ オ ス ・カ ソ ボ ジ ア の 諸 国 が 構 成 国 と し て 構 想 さ れ て い た.

「東 南 ア ジ ア 国 家 連 合(TheAssociationofSouthEastAsianStates:ASAS)」 構 想 。 マ ラ ヤ ・ ラ ー マ ソ 首 相 に よ る.マ ラ ヤ ・フ ィ リ ピ ン ・イ ソ ドネ シ ア ・ ビ ル マ ・ ラ オ ス ・カ ン ボ ジ ア ・ 日本 が 構 成 国 と し て 考 え ら れ て い た.

3「 東 南 ア ジ ア 連 合(TheAssociationofSouthEastAsia:ASA)」 結 成.マ ラ ヤ ・ ラ ー マ ン首 相.フ ィ リ ピ ン ・セ ラ ノ 外 相 の イ ニ シ ャ テhブ に よ る.マ ラ ヤ ・フ ィ リ ピ ソ ・タ イ か ら構 成 さ れ る.「 い か な る 域 外 大 国 あ る い は 大 国 ブ ロ ッ ク と も け っ し て 結 び 付 い て は い な い し,他 の い か な る 国 へ の 対 抗 に 向 け て い る わ け で も な い.共 同 の 努 力 を 通 し て,こ 地 域 の 福 祉 と経 済 的 ・社 会 的 ・文 化 的 進 展 を 促 進 す る こ とを 目 的 と す る 東 南 ア ジ ア 諸 国 の 自 由 連 合 で あ る.」(バ ン コ ク 宣 言)

(9)

March1992 高 木 功:発 展 途 上 諸 国 間 地 域 経 済 協 力 ・統 合 の展 開 過 程 表1東 南 ア ジ ア ・ リー ジ ョナ リズ ムの 歴 史 的 系 譜(つ づ き)

67

X962.5

1963.8.5

1967.8.8

ASAの 目的

1)経 済 ・文 化 ・科 学 ・行 政 分 野 に お け る友 好 的 な協 議,協 力,相 互 援 助 の た め の有 効 な 機 構 の設 立.

2)協 力 国 の 国 民 と官 吏 の た め に 個hの 国 に 教 育 的 ・職 業 的 ・技 術 的 ・行 政 的 訓 練 研 究 施 設 の提 供 す る.

3)経 済 ・文 化 ・教 育 ・科 学 分 野 にお け る共 通 の 利 益 ・関 心 事 に 関 す る情 報 の交 換.

4)東 南 ア ジ ア 研 究 の推 進 に お け る協 力.

5)加 盟 国 各 国 の 天 然 資 源 の 有 効 利 用,農 工 業 の発 展,貿 易 の 拡 大,輸 送 通 信 施 設 の 改 善 そ し て一 般 的 な 国民 の 生 活 水 準 の 引 上 げ.

6)国 際 商 品 貿 易 問 題 の研 究 に お け る協 力

7)°r・ 的 に は,既 存 の 国 際 機 構 ・政 府 機 関 の 作 業 に よ り効 果 的 に 貢 献 す る と とも に, 当 連 合 の 目標 と 目的 の達 成 の た め に お た が い に協 議 ・協 力す る こ と.

ラ ー マ ン首 相 「マ ラヤ ・シ ン ガポ ール に英 領 ボ ル ネ オ3国(北 ボ ル ネ オ ・サ ラ ワ ク ・ブル ネ イ)を 加 えた マ レイ シ ア連 邦」 構 想 発 表.(1962.8英 ・マ の両 国 政 府 の協 定 と し て推 進 され る こ とに な る.1963.9.16「 マ レイ シ ア連 邦」 成 立.た だ し ブル ネ イを 除 く.) rMAPHILINDO」 ス カ ル ノ大 統 領,ラ ーマ ソ首 相,マ クパ ガ ル大 統 領 に よる マ ニ ラ の 会 議 で 発 足.イ ン ドネ シ ア ・マ レ イ シ ア ・フ ィ リピ ン に よ る 「大 マ ラヤ 同 盟 」(Greater MalayanConfederation)の 形 成 を 提 唱.目 的 は マ レ イ シ ア連 邦 の 成 立 に 関 わ る3国 の対 立 を 解 決 す るた め に 作 られ た.63年9月 に マ レイ シ ア連 邦 が 成 立 した と き,イ ソ ドネ シ ア

は マ レ イ シ ア連 邦 を 紛 砕 す る た め に対 決政 策 を 取 り,フ ィ リピ ソは 外 交 関 係 を 停 止.し し イ ソ ドネ シ アが 初 め て東 南 ア ジ ア地 域 主 義 の概 念 に 向 け て動 い た 重 要 な転 換 点 と して 意 義 が 深 い.

「東 南 ア ジ ア 諸 国 連 合(TheAssociationofSouth‑EastAsianNations:ASEAN)」 成.イ ン ドネ シ ア,マ レイ シ ア,フ ィ リピ ン,シ ン ガ ポ ー ル,タ イ の5力 国 か ら構 成 され

て い た が,1984年1月7日 に ブル ネ イ を加 え て,現 在6力 国か らな る.

主 な 目的:a.平 和 的域 内 関 係 の 創設.b.域 内 協 力 関 係 に よ る各 国経 済 の開 発 の 促 進 ・ c.地 域 的 自律 性 ・強 靭 性 の獲 得.

資 料:Mahapatara,C.[15],Haas,M.[6],岡 倉E22]等.

る.こ れ は 発 展 途 上 に あ る 東 南 ア ジ ア 諸 国 間 の 相 互 交 流 は,各 国 の 域 外 諸 国 と の 相 互 関 係 に 比 し て,そ の 地 理 的 近 接 性,歴 史 的 ・社 会 的 類 似 性,あ る い は 経 済 的 同 質 性 に も か か わ ら ず,そ の 重 要 性 は 劣 る,と い う こ と を 示 唆 し て い る.リ ー ジ ョナ リ ズ ム の 誘 因 は そ れ が 従 属 と垂 直 的 統 合 の 形 態 を 破 る 方 途 と な り う る と こ ろ に あ る 」8).

東 南 ア ジ ア ・ リー ジ ョ ナ リ ズ ム は,す で に 1947年 に お い て,欧 米 に よ る 帝 国 主 義 支 配 か ら 逃 れ 自 由 を 達 成 す る た め の 協 調 運 動 の 形 成 を 試 み た ビ ル マ の ア ウ ン 。サ ン将 軍 に よ る

東 南 ア ジ ア 同 盟 」構 想 に 見 出 せ る9).こ の 「東 南 ア ジ ア 同 盟 」 に は イ ソ ドネ シ ア,タ イ,イ

ン ド シ ナ,マ レ ー,ビ ル マ が 含 ま れ て い た.

ア ジ ア 地 域 に 拡 大 す れ ば,イ ソ ド初 代 大 統 領 ネ ル ー の 主 導 の も と,よ り広 い 地 域 内 に お け る 経 済 協 力 を 協 議 す る 場 を 与Yる た め に1947 年 に ア ジ ア 関 係 会 議 が29力 国 の 参 加 を 得 て 開 催 さ れ て い る.こ の 流 れ は1949年 の ニ ュ ー デ リ ー 会 議 を 経 て,1955年 に 開 か れ る 「人 類 史 上 初 め て の 有 色 人 種 の 大 陸 間 会 議 で あ る 」 バ

8)Suriyamongkol[31]p.5.

9)Mahapatara[16コpp.la‑17.

(10)

68季 ソ ド ソ 会 議 へ とつ な が る.こ の 会 議 で 採 択 さ れ た バ ソ ドン10原 則,お よ び 「反 植 民 地 主 義 」

「経 済 発 展 」 を 指 向 す る と い う 第3世 界 連 帯 の 基 礎 に あ る2つ の 原 則 は,東 南 ア ジ ア ・ リ ー ジ ョナ リズ ム に も 流 れ て い る と 考 え ら れ る.東 南 ア ジ ア ・ リ ー ジ ョ ナ リズ ム の 系 譜 に つ い て は,こ こ で は,表1に あ る よ うに 簡 単 な 概 括 に と ど め て お く.東 南 ア ジ ア に お け る 地 域 的 協 力 ・連 帯 の 試 み は こ の よ う に 幾 度 と な く行 な わ れ て き た がASEANの よ うに 協 力 分 野 が 広 範 囲 に お よ び,ま た そ の 長 い 存 続 期 間 を 誇 る 地 域 協 力 機 構 は こ れ ま で な か っ た.ま た 何 よ り も,ASEANの 存 在 は 東 南 ア ジ ア 」 地 域 を 国 際 政 治 経 済 場 裡 に お い て 受 動 的 地 域 か ら 主 体 的 地 域 に 変 え,ま た 同 地 域 を 実 体 的 地 域 概 念 と し て 決 定 づ け た と 評 価 で き る.さ ら にASEANは,い よ い よ ア ジ ア 地 域 諸 国 統 合 が これ ま で 経 験 し な か っ た 新 た な 地 域 経 済 統 合 の 段 階 に 進 む べ き 局 面 に 達 し た と 判 断 し て よ い と 思 わ れ る.さ て そ の 前 に, 経 済 統 合 の い ろ い ろ な 形 態 に つ い て 説 明 し て お く.地 域 経 済 統 合 と い っ て も 域 内 自 由 化 と 域 外 差 別 化 の 水 準 に よ っ て い くつ か の 典 型 的 な 形 態 に 分 け られ る 。Jovanovi6[8コ に よ れ ば,理 論 上,少 な く と は 二 国 間 に お け る 国 際 統 合 に お い て7つ の 形 態 が 考 え られ う る10).

・特 恵 関 税 協 定(PreferentialTariffAgre‑

ement):締 約 国 相 互 の 貿 易 に 賦 課 さ れ る 関 税 率 を,第 三 国 と の 貿 易 に 賦 課 さ れ る 関 税 率 よ り も 低 くす る と い う取 り決 め.

・部 分 的 関 税 同 盟(PartiaiCustomsUnion):

加 盟 国 は 相 互 の 貿 易 に 課 し て い た 当 初 の 関 税 率 を そ の ま ま保 持 し,第 三 国 と の 貿 易 に 関 し て は 域 外 共 通 関 税 を 導 入 す る.

10)Javanovic「8コPP.8‑10.

集Vo1.XXI,No.2

・ 自 由 貿 易 地 域(FreeTradeArea):加 盟 国 相 互 の 貿 易 に 賦 課 さ れ る あ ら ゆ る 関 税 な ら び に 量 的 制 限 を 撤 廃 す る.加 盟 各 国 は そ れ ぞ れ の 第 三 国 と の 貿 易 に つ い て の 関 税 ・規 制 は 保 持 し た ま ま で あ る.原 産 地 規 定 が こ の 協 定 の 基 礎 と な る.こ の 規 定 が 加 盟 国 の 中 で 相 対 的 に よ り低 い 対 外 関 税 を 持 つ 国 へ 第 三 国 の 財 が 流 入 し,他 の 加 盟 国 へ と 再 輸 出 さ れ る こ と を 阻 止 す る か ら で あ る.

・関 税 同 盟(CustomsUnion):加 盟 国 相 互 の 貿 易 に 関 す る 関 税 な ら び に 量 的 制 限 を 撤 廃 す る と 同 時 に 第 三 国 と の 貿 易 に つ い て は 共 通 域 外 関 税 を 課 す る.加 盟 国 は 貿 易 と 関 税 に 関 す る 国 際 交 渉 に は 単 一 の 主 体 と し て 臨 む.

・共 同 市 場(CommonMarket):関 税 同 盟 に 加 え て,生 産 要 素 の 自 由 な 移 動 が 可 能 と な る.第 三 国 と の 生 産 要 素 の 移 動 に つ い て は 共 通 の 規 定(規 制)を 設 け る.

・経 済 同 盟(EconomicUnion):共 同 市 場 の 他 に,さ ら に 財 政 ・金 融 ・産 業 ・地 域 ・交 通,そ の 他 の 経 済 政 策 を 調 和 ・一 致 させ る,

・完 全 経 済 同 盟(TotalEconomicUnion):

単 一 の 経 済 政 策 と経 済 に 関 す る 大 き な 権 限 を 持 つ 超 国 家 的 な 連 合 政 府 を 持 つ に 至 っ た 同 盟.

こ の 中 で も5つ の 典 型 的 な 経 済 統 合 の 形 態 と そ の 内 容 に つ い て ま と め る と 表2の よ うに な る.

以 上 の よ う な,経 済 統 合 の 諸 形 態 の な か で も 現 在 の と こ ろ,ASEANは 「特 恵 関 税 協 定 」

し か も 部 分 的 な そ れ を 域 内 諸 国 間 で 結 ん で い る に 過 ぎ な い.方 や 同 じ発 展 途 上 国 間 統 合 の 試 み の 一 つ,ラ テ ン ・ア メ リ カ 地 域 の ケ ー ス で は 共 同 体 発 足 の 当 初 か ら 野 心 的 に 自 由 貿 易

(11)

March1992高

功:発 展途 上諸国 間地 域経済協 力 ・統合 の展開過程 表2経 済 統合の代 表的な形態

69

・貿 易 に つ い て 関 税 と 量 的制 限 の撤 廃

・共 通 域 外 関 税

・生 産 要 素 移 動 の 自由

・経 済 政 策 の協 調

・経 済 政 策 の完 全 統 一

[形 態1]

自 由貿 易 地 域

0

[形 態2]

関 税 同 盟

○ ○

[形 態3]

同 市 場

○ ○ ○

[形 態4]

同 盟

○ ○ ○ ○

[形態5]

完 全経済 同盟

○ ○ ○ ○ ○

出 所:M.N.Jovanovic[8コ,PP.9‑10に よ る.

地 域 の 結 成 期 限 を 設 定 し て 統 合 に 乗 り出 し て い る.こ れ は 東 南 ア ジ ア 地 域 に く ら べ て ラ テ ン ・ア メ リ カ 地 域 に は 域 内 諸 国 間 に 紛 争 要 因 が 少 な く,文 化 的 遺 産 の 共 通 性 が 見 ら れ る か ら で あ る.し か し,こ の ラ テ ソ ・ア メ リ カ 地 域 の 統 合 計 画 も,加 盟 国 間 の 経 済 格 差 を 起 因 とす る 域 内 に お け る 経 済 統 合 利 益 の 不 均 衡, 国 内 政 策 と 地 域 統 合 政 策 の 間 の 調 整 が 困 難 で

あ る こ と か ら停 滞 す る こ と に な る.ASEAN は,加 盟 国 間 の 機 構 の 規 則 ・ 目標 ま た そ れ に 至 る 里 程 表 を 定 め た 条 約 調 印 と い う手 続 き に よ っ て 発 足 した の で は な く,極 め て 強 制 力 の 弱 いASEAN設 「宣 言 」 に よ っ て 発 足 を み て い る.ま た 当 初 は 常 設 の 中 央 事 務 局 を 欠 い て い た.し た が っ てASEANは 正 式 な 国 際 的 政 府 間r"̲̲と し て は 認 め られ な い,と う見 解 も み られ た.ASEAN結 成 当 初 の こ の よ う な あ り方 の 背 景 に は,発 足 当 時 の 域 内 諸 国 間 関 係 な ら び に こ れ に 対 応 す る 政 治 文 化 と

し て い わ ゆ る̀AsianWay'が あ っ た と い え る11).す な わ ち1963年 の マ レイ シ ア 連 邦 の サ バ ・サ ラ ワ ク地 域 を 含 ん で の 成 立 に 起 因 す る,フ ィ リ ピ ン の マ レイ シ ア に 対 す る サ バ 地 方 の 領 有 権 主 張 に よ る 両 国 間 の 紛 争,国 交 断 絶,イ ン ドネ シ ア の 対 マ レ イ シ ア 「対 決 」 政

11)̀AsianWay'に つ い て はHaas[6]PP.1‑

22,[7コpp.236‑82.を 参 照 さ れ た い .

策,マ レイ シ ア か らの シ ンガ ポ ー ル の 分 離 ・ 独 立 と い った 一 連 の 域 内 諸 国 間 紛 争 ・対 立 が 60年 代 の 同 地 域 を 支 配 し て い た の で あ る.こ

の よ うな 領 域 紛 争 も途 上 国 間 協 力 ・統 合 の大 き な 障 害 の 一 つ で あ る.し か し,65年 の9.

30事 件 に よ る ス カ ル ノ体 制 の 崩 壊 とス ハ ル ト に よる 権 力 掌 握,66年 の フ ィ リ ピ γに お け る マ ル コス 政 権 の 成 立 に よ り域 内政 治 関 係 は 大 き な変 化 の契 機 を得 る こ とに な る.ASEAN 結 成 を 促 した 要 因 を 外 的 要 因(国 際 環 境 要 因)

と内 的 要 因(各 国 の 国 内要 因)に 分 け れ ば, 外 的 要 因 と して は 大 き く2つ 挙 げ る こ とが で

き よ う.(1)歴 史 的 経 験 か ら来 る 米 国 ・中 国

・ソ連 とい っ た超 大 国 の 帝 国主 義 ・覇 権 主 義 へ の 反 発 と これ ら大 国 間 の 覇 権 争 い に よ る直 接 的 影 響 を 回 避 しな けれ ば な らな い こ と か ら,独 自 の 自助 的 対 外 政 策 が 必 要 と され て い た.(2)そ の た め に 当時 の 国際 地 域 統 合 ・協 力 の運 動 は地 域 諸 国 に大 き な発 展 の機 会 を与

}て くれ る もの と期 待 され た が

,そ れ ま で は 同 地 域 に お け る地 域 協 力 の 試 み は 域 内 諸 国 間 の 不 信 感 と対 立 か ら実 を 結 ば な か った.し か し地 域 内 の紛 争 ・対 立 関 係 を 緩 和 し,新 た な 地 域 秩 序 を もた らす よ うな地 域 的 フ レー ム ワ ー クの 形 成 を 各 国 は 望 ん で い た .

内 的 要 因 と して は 以 下 の よ う に な ろ う.

(1)イ ン ドネ シ アは ス ハ ル ト政 権 へ の 移 行 に

(12)

7。 季刊 創 価 よ り,「対 決 」 政 策 の転 換 とそ の 関 心 を ア ジ ア ・ア フ リカ地 域 か ら足 下 の東 南 ア ジ ア地 域 に移 し,同 地 域 に お け る リー ダ ー シ ップ の獲 得 に 関 心 を しめ す よ うに な る.ま た 国 内統 合 に お い て経 済 開 発 が 最 優 先 課 題 と な りそ の た め に も地 域 的 経 済 協 力 機 構 の 設 立 を 望 ん で い た.(2)タ イ はSEATOに 代 表 され る 欧 米 先 進 国 に 依 存 した 安 全 保 障 ・経 済 の維 持 に 変 わ り うる 地 域 協 力 機 構 の 結 成 を 模 索 し て い た.ま た 地 域 協 力 機 構 の形 成 か ら得 られ る で あ ろ う経 済 的 利 益 は 国 内 の 安 定 に 寄 与 す る も の と期 待 され た.(3)マ レイ シア は57年 に マ ラ ヤ連 邦 と して 独 立 して 以 来 す べ て の域 内諸 国 と対 立 ・紛 争 要 因 を は らむ 唯 一 の 国 で あ る こ とか ら,域 内諸 国 間 関 係 の 改 善 に よ り国 内 統 合 ・開 発 に 集 中 し,さ ら に は イ ン ドネ シア の参 加 に よ り初 め て お た が い に 利 益 的 な 枠 組 を 共 有 す る こ とが 可 能 とな る と同 時,対 外 的 に 中立 主 義 政 策 を 追 及 で き る と考}た.(4)

フ ィ リ ピ ンは,米 比 軍 事 基 地 協 定(47年),米 比 相 互 防 衛 条 約(51年),SEATO(54年)そ

して 経 済 援 助 を とお して の過 度 な米 国 へ の 政 治 経 済 的 依 存 を 脱 して 東 南 ア ジ ア地 域 国 家 と

して の帰 属 意 識 の形 成 を 追 及 して い た し,ま た 地 域 機構 へ の 参 加 か ら長 期 的 な経 済 利 益 を 期 待 して い た.(5)シ ンガ ポ ー ル は65年 に マ ラ ヤか ら分 離 ・独 立 した もの の,無 資 源,小 人 口,商 業 都 市 国家 とい う制 約 条 件 の 中 で は 孤 立 して は存 続 で き な い.し た が っ て,天 然 資 源,労 働 力 と生 産 品 市 場 の 確 保 の た め に

ど うして も周 辺 の主 に マ レー系 国 家 との 共 存 を 可 能 とす る地 域 的 枠 組 み を 必 要 と し て い た12).

以 上 の よ うな非 常 に複 雑 な発 足 時 の 背 景 か 12)SukrasepX30]pp.4‑II.

経 済 論 集Vo1.XXI,No.2

らは,域 内 に お い てASEANと い う 地 域 機 構 の 果 た し うる機 能 は や は り限 られ ざ るを 得 な い.む しろ,域 内関 係 の 調 整 ・対 立 緩 和 と 平 和 的 域 内 関 係 を 創 出す る こ とが 最 も枢 要 な ASEANの 果 た す べ き役 割 だ った と考 え られ る.そ れ が 域 内諸 国 に と っ て 国 内統 合 と国 内 開 発 へ の 専 心 を 可 能 とす る条 件 で あ るか らで

あ る.

ASEANは した が って 徹 底 して,域 内 協 力 に つ い て は漸 進 主 義 を 採 用 した.ま た,そ う せ ざ る を 得 な か っ た と い}よ う.歴 史的 な 不 信 と憎 悪 を緩 和 し,相 互 の 「 協 力 の習 慣 と連 帯 感 」 を 養 い なが ら,発 足 後 数 年 間,少 な く と も71年 まで はASEAN協 力 の た め に 組 織 の整 備,協 力 分 野 の 調 査 ・確 定 と い う課 題 に 取 り組 まね ば な らな か った.漸 進 主 義 と と も に,意 志 決 定 方 式 と して 恐 ら くマ レー社 会 の 伝 統 に 根 ざす 全 会 一 致 方 式 とな る べ く対 立 す る 問 題 は 話 あ え る条 件 が 整 うま で非 公 式 に 交 渉 し,ま ず は 係 争 点 の 少 な い 問 題 か ら話 し合 っ て 解 決 して ゆ くや り方 を 取 っ た.

ASEAN諸 国 が 初 め て 実 体 を 持 つ 政 治 協 力 機 構 と してASEANを 世 界 に認 識 さ せ た の は,1971年 に ク ア ラル ソ プ ー ル で 開 か れ た 非 公 式 外 相 会 議 で 採 択 され た 東 南 ア ジ ア地 域 の

「平 和 ・自由 ・中 立 地 帯 宣 言 」(ZOPFAN宣 言)で あ る.ZOPFAN宣 言 以 来,ASEAN 諸 国 は 域 内 ・域 外 の 基 本 的 条 件 の 変 化 か ら, 対 外 関 係 に お い て 共 同 行動 を 駆 使 し始 め る.

域 内 の 変 化 とは,(1)各 国 が 輸 出 主 導 型 の 外

向 的 経 済 政 策 採 用 へ の転 換 に よ り急 速 な 経 済

成 長 を 経 験 し始 め て い た こ と,(2)域 内諸 国

間 に よ うや く信 頼 関 係 が 醸 成 され て き た こ

と,(3)地 域 機 構 と して のASEANの 政 治

的 ・経 済 的 有 効 性 とそ の 可 能 性 が メ ンバ ー諸

(13)

March1992高 木

国 間 に よ っ て確 認 され て きた こ とを 内容 とす る.域 外 に お い て は(1)1973年 のOPECの 運 動 に よ る オ イ ル 価 格 の 高 騰(2)1975年 に お け る イ ン ドシナ 共 産 勢 力 の 勝 利,(3)そ れ に と もな う米 軍 の 東 南 ア ジ ア か ら の 撤 退, (4)1976年 以 降 の 中 国 に よる 現 代 化 政 策 へ の 取 組 み,(5)米 中,日 中 間 の 国 交 正 常 化 とい っ た 一 連 の 国際 環 境 に お け る変 化 が 見 ら れ た14).

ASEAN諸 国 は 次 第 に 日本,EC,オ ー ス ト ラ リア との 交 渉 に お い て,一 国 で事 に あ た る よ り も,潜 在 的 な集 団 交 渉 力 をASEANに よ っ て実 現 す る こ とに よ り,最 も効 果 的 に 政 治的 ・経 済 的 目的 を達 す る こ とが で き る と い うこ とを確 認 し始 め た の で あ る.76年 の3月 に はASEANは 加 盟 各 国 を 特 定 の 先 進 諸 国 お よ び 国 際 機 関 との調 整 ・交 渉 の窓 口 と して 定 め て い る.す なわ ちASEANの 先 進 諸 国

との 「 対 話 」 関 係 網 の 形 成 で あ る.

こ の よ うにASEAN諸 国 は 国際 政 治 経 済 環 境 の変 化 に ま さ に対 応 しな が ら,ま ず は 既 に挙 げ た発 展 途 上 諸 国 統 合 の 利 益 の 一 つ 対 外 交 渉 力 の増 大 をASEANを 通 して 獲 得 した こ と に な る.さ ら に,政 治 経 済 的 に は この 交 渉 力 を背 景 と して 域 外 勢 力 か ら の影 響 力 を な る べ く緩 和 し,特 定 勢 力 へ の 依 存 を 減 らす こ とに よっ て,す な わ ち 世 界 的 な 広 が りの 中 で 複 数 の先 進 諸 国 ・地 域 と の経 済 関 係 の 強 化 と 経 済 依 存 方 向 の 分 散 化 に よっ て 対 外 脆 弱 性 を 減 じて い った の で あ る.こ れ は,た だ し発 展 戦 略 と して の途 上 諸 国 地 域 統 合 の 利 益 と して 見 込 まれ る域 内 諸 国 間 の 貿 易 関 係 強 化 増 大 に よ る対 外脆 弱 性 の 緩 和 で は な い.こ れ ま で の ASEAN発 展 段 階 か らす れ ば,こ の 方 向 は 正

功:発 展途上諸 国間地域経 済協力 ・統 合 の展 開過程

14)高 木[32]PP.202‑3.

71

しい とい え る.域 内各 国 の市 場 を 開 発 途 上 国 が た とえ 域 内協 力 の枠 組 の 中 で あ って も簡 単 に域 内諸 国 に 開放 す る こ とは しな い し,開 発 初 期 の段 階 で開 放 した と して も対 外 脆 弱 性 を 減 ず る ほ ど の効 果 は な い と考 え る.さ らに 域 外 に 依 存 す る産 業 を 短 期 の うち に,資 本 と技 術 力 に 欠 け て い る状 態 で 域 内代 替・ 生 産 化 す る こ とは 出 来 な い.域 内 に 産 業 資 本 と技 術 力 が な い こ とか らま た 外 資 に 頼 ら ざ る を 得 な い か らで あ る.む しろ,先 進 国市 場 へ の 依 存 を 分 散 化 しな が ら世 界 全 体 を 市 場 と した ほ うが 発 展 戦 略 と して現 実 的 とい え よ う.

UNCTADが 挙 げ る残 る3つ の地 域 経 済 統 合 の 経 済 的 効 果 と生 産 ・輸 出 構 造 の 多 様 化 に よ る対 外 脆 弱 性 の 克 服 とい う政 治 経 済 的 効 果 が,ASEANと い う枠 組 を 通 して実 現 して き た か ど うか とい う と,否 と言 わ ざ る を 得 な い.で は,地 域 統 合 機 構 と して のASEAN の機 能 欠 如 を示 して い るか とい う とそ うで は な い と考 え る.む しろ,こ れ ら の純 経 済 的 あ る い は 政 治 経 済 的 な統 合 の利 益 は発 足 当初 か ら これ ま で のASEAN諸 国 各 経 済 の 成 熟 段 階 と国 際 政 治 経 済 環 境 の 中 で は 引 き 出せ な い 要 素 で あ った と考 え られ る.

既 に 述 べ た よ うに,ASEAN結 成 の動 機 が 域 内諸 国 間 関 係 の 改 善 と域 内 安 全 保 障 秩 序 の 形 成 とい う極 め て 政 治 的 な 課 題 もち ろ ん,こ れ ら の要 素 は 国 内 経 済 開 発 を 可 能 とす る前 提 条 件 で あ る に あ った し,ASEAN 発 展 の過 程 も対 外 交 渉 力 と対 外 的 政 治 的 結 束 に よる 国 際 市 場 ・援 助 の 獲 得 に お け る そ の 有 用 性 の 確 認 か らは じ ま っ た こ とか らす る と, ASEANは 大 い に そ の 効 果 を発 揮 した とい え

よ う15).む しろ 発 展 途 上 国地 域 統 合 の 発 展 過

15)山 影[36コ を 参 照 さ れ た い.

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