ラザフォード散乱
電荷を使うので力学より電磁気や原子とかでの話ですが、力学の本に散乱の例としてよく載っているので、力学 のくくりの中で見ていきます。ちなみに、衝突はぶつかること、散乱はぶつかってどこかに飛んでいく過程までを 含めた言葉です。
散乱と言っていますが、運動方程式を解くだけです。
面倒だったのであまり図を使って説明しませんが、本やネットを探せばきれいな図はたくさんあります。
相対論的量子力学でのラザフォード散乱は
QED
の「ラザフォード散乱」で計算しています。補足として重心系の話をしています。
力学でありそうな物体同士をぶつけるという話でなく、ポテンシャルに突っ込ませる場合を考えます。なので状 況としては、質量
m
の物体を物体に対して斥力(もしくは引力)
が働いている領域にぶつけるというものです。こ の状況は固定された電荷− Q
の粒子に電荷− Q
の粒子をぶつけることに対応し(電荷なのでクーロン力が働いて
いる)、ラザフォード散乱(Rutherford scattering)
と呼ばれます。3次元で考える必要性もないので、2次元空間 とし、固定された標的の電荷の地点を原点とします。また、エネルギーと角運動量は保存している状況で考えます
(運動量は標的を固定しているために保存しない)。
粒子に力が働いている運動なので、運動方程式を解けば軌道が分かります。というわけで、クーロン力が働いて いるときの運動方程式を作って、粒子の軌道を求めます。クーロン力は電磁気の基本法則で、動径ベクトル
r
に よってF(r) = Q 2
r 2 (r = | r | )
と与えられます。1/r
2
なので、無限遠ではこの力は消えます。ちなみに、入射粒子と標的がそれぞれZ, Z ′個の素
電荷e(電子の電荷の絶対値)
を持っているならQ 2はZZ ′ e 2となります。ここでは、少し一般化するために
ZZ ′ e 2となります。ここでは、少し一般化するために
F (r) = ϵ k
r 2 (ϵ = ± 1)
とします。ϵ
= +1
のときは斥力、ϵ= − 1
のときは引力になります。kを合わせれば、ϵ= − 1
で重力とすること もできます。
2
次元座標(x, y)
において力は動径方向のみに効くとすれば、動径方向の単位ベクトルe rによって力のベクト
ルは
F (r) = F(r)e r (e r = r r )
これは中心力になっているので、ポテンシャルはU (r) = −
∫ r r0
dr ′ · F (r ′ ) = − ϵ
∫ r
∞
dr ′ · e r′ k r ′ 2 = − ϵ
∫ r
∞
dr ′ · r ′ k r ′ 3 = − ϵ
∫ r
∞
dr ′ k
r ′ 3 r ′ = ϵ k r
で与えられます。無限遠を基準とし、r0 = ∞としています。
運動方程式を作る前に、粒子の力学的エネルギー
E
と角運動量L
を与えておきます。EとL
は定義によってE = 1
2 mv 2 + U (r) , L = mr 2 θ ˙
ドットは
t
微分を表します。ぶつける粒子の位置は動径ベクトルr
で与え、質量をm、速度を v = | v |
としていま す。θはx
軸とr
との角度です(標的の粒子は固定されたポテンシャルの発生源でしかないので、エネルギーと角
運動量に運動する粒子として影響を与えない)。後のためにv
をr ˙
に置き換えます。速度ベクトル
v
は動径ベクトルr
の時間微分なので、rの単位ベクトルをe rとして
v = d
dt (re r ) = ˙ re r + r e ˙ r
e r , e θを一応求めておきます。rは、x,y
の単位ベクトルe x , e yを使って書くと
r = xe x + ye y (x = | x | , y = | y | )
これをr = | r |
で割ればr
の単位ベクトルe rになるので
e r = x r e x + y
r e y = cos θ(1, 0) + sin θ(0, 1) = (cos θ, sin θ) θ
方向の単位ベクトルe θはe rに直交し、|e θ | = 1
なので
e θ | = 1
なのでe θ = ( − sin θ, cos θ) e ˙ rはただの時間微分なので、θも時間に依存していることに注意して
˙
e r = ( − e x sin θ + e y cos θ) ˙ θ = ˙ θe θ となります。
そうすると速度ベクトルは
v = ˙ re r + r e ˙ r = ˙ re r + r θe ˙ θ , v 2 = | v | 2 = ˙ r 2 + r 2 θ ˙ 2 (e r · e θ = 0)
これを
E
に入れるとE = 1
2 m( ˙ r 2 + r 2 θ ˙ 2 ) + U(r) = 1
2 m r ˙ 2 + L 2
2mr 2 + U (r)
ここでr
はθ
の関数になっていることを踏まえてu = 1 r
というのを導入するとdr dθ = dr
du du dθ = − 1
u 2 du dθ
˙ r = dr
dt = dr dθ
dθ dt = − 1
u 2 du dθ
θ ˙ = − 1 u 2
Lu 2 m
du dθ = − L
m
du
dθ
これらによって
E = 1
2 m r ˙ 2 + L 2
2mr 2 + U (r) = 1 2
L 2 m ( du
dθ ) 2 + L 2
2m u 2 + U (1/u) = 1 2
L 2 m (( du
dθ ) 2 + u 2 ) + U (1/u) (1)
これでエネルギーの書き換えは終わりにして、次は運動方程式を作って解を求めます。動いている粒子の位置は動径ベクトル
r
で、動径方向にしか力は作用しないので、運動方程式は単純にF(r) = m(¨ r − r θ ˙ 2 ) = m(¨ r − r L 2
m 2 r 4 ) == m(¨ r − L 2 m 2 r 3 ) u
を使った式へは¨ r = − L
m d dt
du dθ = − L
m dθ dt
d dθ
du dθ = − L
m θ ˙ d 2 u
dθ 2 = − L 2 u 2 m 2
d 2 u dθ 2 を使えば書き換えられて
F(1/u) = m( − L 2 u 2 m 2
d 2 u
dθ 2 − L 2 u 3 m 2 ) d 2 u
dθ 2 + u = − m
L 2 u 2 F (1/u) d 2 u
dθ 2 + u = − ϵ mk L 2
これの解は簡単に求められます。右辺を
0
にしたときの解はすぐにu = C 1 cos θ + C 2 sin θ = C cos(θ − ω)
C, C 1 , C 2は任意定数でω
は任意の角度です。特解はu
をθ
に依存していないとした
u = − ϵ mk L 2 があるので、足すことで一般解は
u = − ϵ mk
L 2 + C cos(θ − ω) = mk
L 2 ( − ϵ + L 2
mk C cos(θ − ω)
となります。初期条件を与えなければ
ω
は任意の位相とみなせるので(座標を回転させて好きな値を取れる)、ω = 0
として も問題がないためにω = 0
とした場合を考えて、Cを決定します。この解をエネルギーの式(1)
に入れると1 2
L 2 m
( ( du
dθ ) 2 + u 2 )
= 1 2
L 2 m
( C 2 sin 2 θ + ( − ϵ mk
L 2 + C cos θ) 2 )
= 1 2
L 2
m (C 2 sin 2 θ + m 2 k 2
L 4 + C 2 cos 2 θ − 2ϵ mk
L 2 C cos θ)
= 1 2
L 2
m (C 2 + m 2 k 2
L 4 − 2ϵ mk
L 2 C cos θ)
これとE − U = E − ϵku = E − ϵk( − ϵ mk
L 2 + C cos θ) = E + k( mk
L 2 − ϵC cos θ)
によって1 2
L 2
m (C 2 + m 2 k 2
L 4 − 2ϵ mk
L 2 C cos θ) = E + k( mk
L 2 − ϵC cos θ) 1
2 L 2
m C 2 = E + mk 2 2L 2 C =
√ 2mE
L 2 + m 2 k 2 L 4 というわけで、uは
u = mk L 2 ( − ϵ +
√
1 + 2EL 2 mk 2 cos θ)
これがF(r)
がいるときの粒子の軌道になります。
ϵ = +1
での散乱の様子を図にすると灰色の丸が入射粒子、黒丸が標的の電荷の位置で原点、θが散乱角です。r
min
は標的に最も近付いた時の長さで、θ minはそのときの角度です。bは衝突パラメータ(impact parameter)
や衝突径数と呼ばれ、無限遠から侵入して
くる粒子が何の影響も受けずに進む軌道に標的から引いた垂線の長さです(ベクトル b
の方向は標的から粒子の軌
道の方向)。θを反時計周りに取っているので、このように書くと速度ベクトルv
はマイナスになります。粒子の
軌道は求めたu
によって与えられます。
粒子が最も標的に近づく地点を求めてみます。エネルギーの式
1
2 m r ˙ 2 + L 2
2mr 2 + U(r) = E
において、第一項は常に正なので
E ≥ L 2
2mr 2 + U (r) (2)
という制限がかかります。そして、rの上限は無限大にまで取っていますが、下限は標的に最も近付く
r minです。
そうすると、L
2 /2mr + U(r)はr
が減少すると増大していくので
E = L 2
2mr 2 + U (r)
によって、(2)を満たす最小のr
を与えます。よって最近接距離r minは
E = L 2 2mr 2 + k
r r 2 − k
E r − L 2 2mE = 0
これの解はr = 1 2 ( k
E ±
√ k 2 E 2 + 2L 2
mE ) = k 2E ±
√ k 2
4E 2 + L 2 2mE
最近接距離はr min > 0
でなければいけないのでr min = k 2E +
√ k 2
4E 2 + L 2 2mE
となりますが、もっと見やすい形にできます。無限遠でのエネルギーと角運動量は無限遠での速度を
v 0 = | v 0 |
と すればE = 1 2 mv 2 0
| L | = m | v 0 | b (b = | b | ) (3)
角運動量は無限遠では粒子の速度ベクトルと衝突パラメータのベクトル
b
とが直交したものなので、こうなりま す。角運動量に絶対値をつけているのは、速度v
の向きで符号が変わるからです(v
の向きから絶対値を外せば右 辺にマイナスがつく)。この2
つは、エネルギーと角運動量が保存しているために、rmin
でも成立しているのでb = | L |
m | v 0 | = √ | L |
2mE (4)
を使うことで
r min = k 2E +
√ k 2 4E 2 + b 2
これから衝突パラメータが
0
のとき(標的と同じ線上での衝突、ようは正面衝突)
が最も標的に近づけることが分 かります。導出から分かるように最近接距離は運動方程式を解かなくても求められます。次に散乱角を求めます。運動方程式の解は
1
r = − mk
L 2 + A cos(θ + ω) (5)
とします
(ω = 0
としない)。初期条件として、θ= π
でr
が無限大になるとすればA cos(π + ω) = mk L 2 A cos ω = − mk
L 2 (6)
(5)
をt
微分すると˙
r = − Ar 2 θ ˙ sin(θ + ω) = − A L
m sin(θ + ω) (7)
無限遠での速度は
− v 0なので、θ= π
で
− v 0 = − A L
m sin(π + ω) v 0 = A | L |
m sin ω (3)
を使うとAb sin ω = − 1 (6)
と合わせることでtan ω = L 2 mbk
として、ωが決まります。また、rが最小になるときには、動径方向の速度
r ˙
は0
になるはずなので、(7)から、最 近接距離での角度θ minは
θ min = π − ω
となります。粒子が角度
θ = ϕ
で散乱したとします。そして、最近接距離での角度ω
はr minを軸に対称になっているので
(図はテキトーに書いたのでそう見えませんが、弾性散乱とするので対称)、ϕ
はω
を使うとϕ = π − 2ω
なのでtan π − ϕ 2 = L 2
mbk cot ϕ
2 = L 2
mbk (tan(ϕ + π
2 = − cot ϕ , cot( − ϕ) = − cot ϕ) (4)
を使ってエネルギーによる形にすればcot ϕ 2 = 2bE
k (8)
というわけで、散乱角
ϕ
は逆三角関数によってϕ = 2 cot − 1 2bE k
これから、散乱する角度は衝突パラメータとエネルギーによって決定されるのが分かります。
次に断面積を定義します。単に断面積と言っていきますが、散乱断面積とか衝突断面積と呼ぶこともあります。
断面積の言葉での定義は、散乱した粒子が入ってくる2次元面です。なので、断面積と呼ばれます。そして、ここ での定義がどんな本でも共通になっていないことに注意してください。
まず、標的に当てる粒子数の密度は
λ
として、λは単位面積当たりに毎秒λ
個の粒子(単位は、長さを L、時間
をT
とすれば、L− 2 T − 1 )と定義します。そして、散乱されて来る面が必要なので、その面を与えます。面を動径
とは無関係にしたいので、立体角を使います(下の補足 1
参照)。立体角は2
次元の面と対応し、その面に粒子が
入ってくるとします。微小な立体角をdΩ
として、それによって作られる面を通っていく粒子の数は毎秒dn
個と
します。そうすると、dnはλdΩ
に比例しているとして(dΩ
は無次元量)
dn = q(θ, ϕ)λdΩ (9)
ここでの
q
は極座標(r, θ, ϕ)
でのθ, ϕ
に依存しています(動径は無関係だから)。これの右辺を全領域にわたって
積分すれば、散乱された全粒子数になるべきなので(全空間を覆えば必ず全ての粒子を含む)、通過する全粒子数
をn
としてn =
∫ 4π 0
q(θ, ϕ)λdΩ
積分範囲を
0 ∼ 4π
にしているのは球面全体の立体角が4π
だからです。極座標では立体角がdΩ = sin θdθdϕ
なので
n =
∫ π 0
dθ
∫ 2π 0
dϕ q(θ, ϕ)λ sin θ
そして、標的に当てる粒子密度
λ
にかけたら全粒子数になるような2
次元面積σ
を定義します。そうするとσλ =
∫ 4π 0
q(θ, ϕ)λdΩ
λ
は角度依存性を持つ量ではないのでσ =
∫ 4π 0
q(θ, ϕ)dΩ
この
σ
を断面積(cross section)、そして Ω
で微分して取り出せるq(θ, ϕ) = dσ dΩ | θ,ϕ
を微分断面積
(differential cross section)
と言います。微分断面積はθ, ϕ
によって方向が指定された立体角毎の断 面積です(θ
は散乱角、ϕは方位角と言えます)。もう一つ微分断面積の定義として衝突パラメータを使った場合を見ておきます。z軸方向に粒子が入射している として、衝突パラメータ
b
とdb
の間に入る粒子数は(半径 b
の円と半径b + db
の円による幅db
の円環の面積にλ
をかける)dN = λ2πbdb
この
b
とb + bd
の間に入射してきた粒子がθ
とθ + dθ
の間に散乱するとすれば、立体角dΩ(θ) = 2π sin θdθ
に入る粒子数と同じになっているはずです
(r sin θ
の半径の円の円周に微小なrdθ
をかけた2πr 2 sin θdθ
の面積に 対応する立体角)。そうすると(9)
からλ2πbdb = q(θ)λdΩ(θ) 2πbdb = q(θ)dΩ(θ)
θ
のみに依存しているとしているのは、衝突パラメータb
は(8)
から分かるように、エネルギーが与えられている 時、散乱角のみに依存するからです。左辺はb
に関して、右辺はθ
に関して積分を取れば全粒子数にできるので、断面積は
σ = 2π
∫ ∞
0
bdb = 2π
∫ π 0
q(θ) sin θdθ
b
の考えられる全範囲は0 ∼ ∞
なので、上限を∞
にしています。最右辺がθ
のみに依存していることから立体角 でなくθ
で微分したdσ
dθ = 2πq(θ) sin θ
この形を微分断面積と呼ぶこともあります。また、bが
θ
に依存していることからdN = 2πb | db dθ | dθ
とも書けるのでdσ
dθ = 2πb | db dθ | dσ
dΩ(θ) dΩ(θ)
dθ = 2πb | db dθ | dσ
dΩ(θ) = b sin θ | db
dθ |
絶対値をつけているのは粒子数が負の値を持つわけがないからです。
すでに必要なものは揃っているのでラザフォード散乱での微分断面積を求めるのは簡単です。衝突パラメータ
b
のθ
微分はdb dθ = − k
4E 1 sin 2 (θ/2)
散乱角はϕ
でなくθ
にしています。これから微分断面積はdσ
dΩ(θ) = 1 sin θ
k 2E
k 4E
cot(θ/2) sin 2 (θ/2)
= k 2 2(2E) 2
cot(θ/2) sin θ sin 2 (θ/2) sin θ
はsin θ = 2 sin(θ/2) cos(θ/2)
なのでdσ
dΩ(θ) = k 2 4(2E) 2
1
cos(θ/2) sin 3 (θ/2)
cos(θ/2) sin(θ/2)
= k 2 4(2E) 2
1 sin 4 (θ/2)
この微分断面積をラザフォードの散乱公式と言います。・補足
1
立体角の定義を示します。立体角は
2
次元の角度を3
次元に拡張したものです。2次元の角度から見ておきます。半径
r
の円があり、その円周上の円弧a
の角度θ
はθ 2π = a
2πr
から、θ
= a/r
と与えられます。これを3次元球に適用します。球なので、半径r
の球の表面上の面A
の面積をs
としてs r 2
とすることで、円弧の角度と対応させます。そうすると、Aを底面とし、そこから球の原点を頂点として繋いだ とき、その頂点での
3
次元的な角度をΩ
としてΩ = s r 2 Ω 4π = s
4πr 2
右辺の分母は球の表面積なので、円弧の場合と対応した式になります。この
Ω
を立体角と呼び、4πが球全体の立 体角となります。球面上の微小な面は極座標
(r, θ, ϕ)
ではr 2 sin θdθdϕ
これを角度で積分すれば球面上の適当な面A
になるので立体角はΩ =
∫
A
dθdϕ r 2 sin θ r 2 =
∫
A
dθdϕ sin θ
となります。積分範囲は面
A
になる範囲です。また、微小な立体角はsin θdθdϕ
です。・補足
2
ここでは出てきませんでしたが散乱において重要な重心系
(center of mass system)
について簡単に説明してお きます。重心(center of gravity)
の話は適当な本なりサイトを見れば図入りで説明されているので、一気に定義に いってしまいます。N個の粒子がそれぞれ位置r i (i = 1, 2, . . . , N )
にいて、質量m i (i = 1, 2, . . . , N )
を持ってい るとき(r iは3
次元ベクトル)、重心の位置r gの定義は
r g = m 1 r 1 + m 2 r 2 + · · · + m N r N
m 1 + m 2 + · · · + m N = 1 M
∑ N
i=1
m i r i
で与えられます。M は全質量
m 1 + m 2 + · · · + m Nです。これは3
次元ベクトルに対するものなので、例えば、x
成分は
x g = m 1 x 1 + m 2 x 2 + · · · + m N x N
m 1 + m 2 + · · · + m N = 1 M
∑ N
i=1
m i x i
となります。y, z成分でも同様です。
これらは質量が連続分布していない粒子として区別できる場合の定義で、質量が質量密度
ρ(r)
で連続分布して いる物体の重心の位置はr g =
∫
V dV rρ(r)
∫
V dV ρ(r) =
∫
V dV rρ(r)
M (dV = d 3 x = dxdydz)
と定義されます。V は物体の体積です。ようは区別できる場合での和を、連続極限として積分にしただけです。
物体が動いているときは当然重心も動くので、重心の速度
v gもあるんですが、これは速度は位置の時間微分で あることを考えれば
v g = m 1 v 1 + m 2 v 2 + · · · + m N v N
m 1 + m 2 + · · · + m N
= 1 M
∑ N
i=1
m i v i
となることが分かります。
重心を求める例として円錐を使ってみます。円錐の底面の円の半径は
a
とし、高さをh
とします。円錐の重心 はその形から明らかに、x= 0, y = 0
のz
軸上にいるはずなので、z成分だけを考えます。質量密度をρ
として位 置に依存していないとすれば、円錐の体積はπa 2 h/3
なのでz g =
∫
V dV zρ
∫
V dV ρ =
∫
V dV z
∫
V dV =
∫
V dV z πa 2 h/3
分子は円柱座標
(r, ϕ, z)
を使うと∫
V
dV z =
∫ a 0
dr
∫ 2π 0
dϕ
∫ h(1 − r/a) 0
dz rz
z
の積分範囲は、円錐の高さは底面の円の半径a
とある高さでの円の半径r
の割合に対応することから(直角三角
形だから)、このようになっています(上限を h
とすると円柱になる)。積分を実行すると∫ a 0
dr
∫ 2π 0
dϕ
∫ h(1 − r/a) 0
dz rz = 2π
∫ a 0
dr 1
2 rh 2 (1 − r a ) 2
= πh 2
∫ a 0
dr (r + r 3 a 2 − 2r 2
a )
= πh 2 ( 1
2 a 2 + 1
4a 2 a 4 − 2 3a a 3 )
= πh 2 12 a 2 よって、円錐の重心は
z g = πa 2 h 2 12
3 πa 2 h = h
4
このため、円錐の重心は高さのみによって決定されるのが分かります。次に散乱の問題を扱うときに取る座標にも触れておきます。実験との対応を取っている座標を実験室系と言っ て、実験の観測者を基準にした座標系です。ようは観測者側の都合による座標系なので、扱いやすいように設定 した方がいいだろうということで、通常実験室系と言ったときは物体をぶつける標的が静止しているように取り ます。ぶつける物体と標的を球とし、完全弾性衝突で、標的が衝突時に全く動かないと仮定すれば、散乱角を求め るのは非常に簡単です。完全弾性衝突のために衝突の前後で速度が変わらないので、標的に当てる角度を指定す れば、ただの角度の計算として求められます
(壁に斜めに球体をぶつけたのと同じ動きをする)。実際には、標的
も衝突後に動くようにするので、話はここまで単純ではないです。しかし、状況を実験室系より単純にする方法があり、それが重心系です。これは重心の位置を基準とする座標
系です
(重心と一緒に動く座標系)。つまり、重心が原点となります。重心系での物体の状況を見るために、質量
が
m A , m Bの物体A.B
を用意して、実験室系においてそれぞれの位置がr A , r B、速度がv A , v Bとなっていると
v A , v Bとなっていると
します
(イメージしやすいように途中まで一般化せずに 2
つとしておきます)。実験室系と言っていますが、どちらかを静止させる必要性がないので、適当なところを原点に取っている座標系と思ってください
(原点に標的がい
て、他に2
つ物体がいると思えばいい)。このときの重心の位置r gと速度v gは
r g = m A r A + m B r B
m A + m B
, v g = m A v A + m B v B
m A + m B
重心系での
A, B
の位置をR A , R Bとすると、実験室系での位置r A , r Bとの関係は
r A = R A + r g , r B = R B + r g
そして、重心を基準に考えるので、重心に対する
A
とB
の速度(重心に対する相対速度)
としてV A = v A − v g , V B = v B − v g
というのが与えられ、重心系での速度となります。これ以降、相対速度と言ったときは重心に対する相対速度
V i を指すことにします。
A
とB
の質量と位置の積を考えてみると(M = m A + m B )
m A r A + m B r B = m A (R A + r g ) + m B (R B + r g ) = M r g + m A R A + m B R B
これとは別に
M r gを変形すると
M r g = (m A + m B )r g = (m A + m B ) m A r A + m B r B
m A + m B
= m A r A + m B r B
この2
つの比較から
m A R A + m B R B = 0
ということが分かります。この性質は重心系での一般的なもので、N個ある場合では
∑ N
i=1
m i R i = 0 (10)
となります。時間微分しても右辺は
0
のままなので、相対速度でも同様に∑ N
i=1
m i V i = 0 (11)
よって、重心系での速度
(相対速度)
による全運動量は0
です。これが衝突の問題を考えるときに重心系が便利な 理由になっています。例えば、物体A, B
が重心系で運動量P A , P Bを持っていたとすると
P A + P B = 0
そして、運動量保存が成立しているなら、Aと
B
が衝突した後でも全運動量は0
です。つまり、衝突後の運動量 をP A ′ , P B ′ とすれば
P A + P B = P A ′ + P B ′ = 0
よりP A ′ = − P B ′
となります。これは
A
とB
は衝突後に、逆向きに同じ運動量で遠ざかっていきます。これはかなり分かりやすい状況です
(実験室系では衝突後は異なった方向、異なった速度になる)。
次に角運動量と運動エネルギーを見ます。実験室系での全角運動量
L
は、角運動量の定義によって(物体の数は N
個だとします)L =
∑ N
i=1
m i (r i × v i )
これを重心系での位置と速度に置き換えると
L =
∑ N
i=1
m i (R i + r g ) × (V i + v g )
変形していくと
L =
∑ N
i=1
m i (R i × V i ) +
∑ N
i=1
m i (R i × v g ) +
∑ N
i=1
m i (r g × V i ) +
∑ N
i=1
m i (r g × v g )
=
∑ N
i=1
m i (R i × V i ) +
∑ N
i=1
(m i R i ) × v g +
∑ N
i=1
r g × (m i V i ) + M (r g × v g )
=
∑ N
i=1
m i (R i × V i ) + M (r g × v g )
(10)
と(11)
によって二行目の第二項と第三項は消えます。この結果から実験室系での全角運動量は、第一項での 相対速度による角運動量(重心系での各物体の全角運動量)
と、第二項での全質量を持った重心の角運動量との和 に書き変わっていることが分かります。運動エネルギーでも実験室系での
T = 1 2
∑ N
i=1
m i v i 2
を同様に変形していくと
T = 1 2
∑ N
i=1
m i (V i + v g ) 2
= 1 2
∑ N
i=1
m i (V i 2 + v g 2 + 2V i · v g )
= 1 2
∑ N
i=1
m i V i 2 + 1 2
∑ N
i=1
m i v g 2 +
∑ N
i=1
m i (V i · v g )
= 1 2
∑ N
i=1
m i V i 2 + 1 2 M v 2 g
というわけで、全角運動量と同じように、相対速度による運動エネルギーと重心の運動エネルギーの和になります。
物体を
2
つに限定して重心系での2
体の衝突での便利な性質を示します。運動量、角運動量、運動エネルギー は上での話を2
つの物体だけに限定すればいいだけですが、換算質量(reduced mass)
と呼ばれるµ = m A m B m A + m B
を導入するとさらに便利になります
(数学での調和平均の 1/2)。換算質量によって、相対速度は
V A = v A − v g = v A − m A v A + m B v B
m A + m B
= m A v A + m B v A
m A + m B − m A v A + m B v B
m A + m B
= m B
m A + m B
(v A − v B )
= µ m A
(v A − v B )
= µ m A
v (v = v A − v B = V A − V B )
同様に
V B = v B − v g = − µ m B
(v A − v B ) = − µ m B
v
これによって全角運動量は
L = m A (R A × V A ) + m B (R B × V B ) + M (r g × v g )
= µ(R A × v) − µ(R B × v) + M (r g × v g )
= µ(R A − R B ) × v + M (r g × v g )
= µ(r × v) + M (r g × v g ) (r = r A − r B = R A − R B )
運動エネルギーは
T = 1
2 (m A V A 2 + m B V B 2 ) + 1 2 M v 2 g
= 1
2 (m A µ 2
m 2 A + m B µ 2
m 2 B )(v A − v B ) 2 + 1 2 M v 2 g
= 1 2 ( 1
m A
+ 1 m B
)µ 2 (v A − v B ) 2 + 1 2 M v g 2
= 1 2
m A + m B
m A m B
µ 2 (v A − v B ) 2 + 1 2 M v 2 g
= 1
2 µv 2 + 1 2 M v g 2
重心の角運動量と運動エネルギー部分は変わりませんが、物体の角運動量と運動エネルギー項が速度